JP2019107676A - 鋳型用粘結剤含有砂、その製造用の原料砂、鋳型及び原料砂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
鋳型用粘結剤含有砂は、骨材(砂)と、粘結剤と、滑剤とを含んでいる。ここで、粘結剤には、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂)を硬化剤(例えば、ヘキサメチレンテトラミン)で硬化させた樹脂が使用されている。また、滑剤には、ステアリン酸カルシウムが一般的に使用されている。
シェルモールド法では、粘結剤と硬化剤とに臭気の強い有機物が使用される。この臭気は、作業環境及び工場周辺の環境に好ましくない影響を与えることがあった。
ところで、鋳物工業の分野においても、資源枯渇や産廃物規制の問題から、一旦鋳造に使用された鋳型廃砂から原料砂を再生して、再度、鋳造に使用することで、廃棄される鋳型廃砂量を減少させることが検討されている。
無機系造型法に使用された鋳型廃砂は、再生することが困難であるとされていた。しかし、鋳型用粘結剤含有砂の製造時及び造型時の臭気を低減することが近年強く求められるようになり、再生技術の提案がなされるようになってきている(例えば、特表2010−519042号公報:特許文献1、特開2015−51446号公報:特許文献2)。
特許文献1の実施例では、粉砕と熱処理により、特許文献2の実施例では、水中での攪拌により、鋳型廃砂から原料砂への再生が行われている。
前記原料砂が、140mg/L以下の0.05M−HCl水溶液に対するナトリウムイオン溶出濃度を示し、
前記原料砂が、鋳造後に生じる鋳型廃砂に由来する人工砂及び/又は天然砂であることを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂が提供される。
また、本発明によれば、骨材と、粘結剤とを含む鋳型用粘結剤含有砂であって、前記骨材が上記原料砂を含み、前記粘結剤が無機酸のナトリウム塩を含むことを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂が提供される。
また、本発明によれば、上記鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂の製造方法であって、鋳造後に生じる鋳型廃砂を、乾式磨鉱工程、湿式磨鉱工程及び焙焼工程の順に付すことで原料砂に再生することを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂の製造方法が提供される。
(a)鋳型廃砂が、無機酸のナトリウム塩を含む粘結剤を使用した鋳型用粘結剤含有砂に由来する。
(b)粘結剤が、ケイ酸ソーダを含む。
(c)ナトリウムイオン溶出濃度が、50〜130mg/Lである。
(d)原料砂が、1.35以下の粒形係数を有する
更に、無機酸のナトリウム塩が、ケイ酸ソーダであり、原料砂100質量部に対して、0.8〜2質量部含まれる場合、再生しても十分な鋳型強度をより示し得る鋳型用粘結剤含有砂を提供できる。
原料砂は、骨材と、粘結剤とを含む鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料として使用される。加えて、原料砂は、鋳造後に生じる鋳型廃砂に由来する人工砂及び/又は天然砂である。つまり、本明細書での原料砂は、再生砂であるともいえる。
原料砂は、140mg/L以下の0.05M−HCl水溶液に対するナトリウムイオン溶出濃度を示す。このナトリウムイオン溶出濃度では、鋳型強度の低下を抑制できる。その理由について、次のように発明者等は推測している。即ち、ナトリウムイオン溶出濃度が140mg/Lより多いことは、粘結剤由来成分が再生された原料砂の表面に多く残存していることを意味している。そのため、原料砂の凹凸が粘結剤由来成分により多くかつ大きくなる。この原料砂を用いて鋳型を作製した場合、骨材(原料砂由来)間の粘結剤の膜厚が薄くなる。その結果、鋳型強度が低下することになる。また、原料砂の凹凸が多くかつ大きくなることにより、骨材の充填性も低下することになる。
原料砂のナトリウムイオンは、主として粘結剤(特に、ケイ酸ソーダ)に由来するため、鋳型廃砂から再生により原料砂を得る際の経済的な観点から、その溶出濃度は50mg/L以上であることが好ましい。50mg/L以上とすることで、過再生による原料砂の割れのような変形に由来する骨材の充填密度の低下及び鋳型強度の低下を抑制できる。
ナトリウムイオン溶出濃度は、50〜130mg/Lであることが好ましく、60〜120mg/Lであることがより好ましく、70〜110mg/Lであることが更に好ましく、80〜100mg/Lであることが特に好ましい。
原料砂は、人工砂及び/又は天然砂である。人工砂及び天然砂は、特に限定されず、アルミナ砂、ケイ砂、ジルコン砂、クロマイト砂、MgO・SiO2系砂及びこれら砂の混合砂等が挙げられる。アルミナ砂には、Al2O3以外にSiO2、Fe2O3、Cr2O3、CrO2、MgO、CaO、K2O、TiO2等の他の成分が含まれていてもよい。
特に、人工砂は、天然砂より価格が高く、より再生が望まれているため、原料砂は鋳型廃砂に由来する人工砂であることが望まれる。人工砂の中でも、Al2O3とSiO2とを含む合成ムライト及び/又は合成コランダムを含むアルミナ砂としての人工砂であってもよい。合成ムライト及び合成コランダムは、アルミナ(Al2O3)40〜90質量%、シリカ(SiO2)60〜10質量%から構成されていてもよい。またアルミナとシリカの割合は、それぞれ40〜90質量%と60〜10質量%であってもよい。合成ムライト及び合成コランダムには、アルミナ及びシリカ以外に、Fe2O3、Cr2O3、CrO2、MgO、CaO、K2O、TiO2等の他の成分が含まれていてもよい。人工砂に占める合成ムライト及び/又は合成コランダムの割合は、50質量%以上とすることができる。
粒度分布は、JISの鋳物砂の粒度試験方法(Z2601)に準じて測定した値をいう。この方法を概略説明すると、例えば、ふるいの呼び寸法が30μmのふるいの上に1180μmのふるいを重ね、1180μmのふるいの上に原料を載せ、ロータップ型ふるい機のようなふるい分け機械を使用し、2つのふるい間に残ったものを、粒度分布30〜1180μmの砂と称する。
なお、上記粒形係数は、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて算出した値を意味する。すなわち、粒形係数とは1g当たりの実際の砂粒の表面積を理論表面積で割った値を意味する。理論表面積とは、砂がすべて球であると仮定した場合の表面積をいう。従って、粒形係数が1に近いほど球に近い形状であることを表している。
なお、原料砂と鋳型用粘結剤含有砂の単位体積あたりの表面積、粒形係数及び粒度分布は、ほぼ同じである。
(i)磨鉱工程
磨鉱工程により、鋳型廃砂の表面に存在する粘結剤(例えば、水ガラス)由来成分を除去する。
磨鉱は、乾式磨鉱でも、湿式磨鉱でも、両磨鉱を組み合わせてもよい。
乾式法には、砂を高速気流により装置内で上昇させ、衝突板に衝突させることによって、砂粒相互の衝突と摩擦により磨鉱処理するサンドリクレーマー、高速回転するローター上に砂を投入し、その遠心力で生ずる投射砂と落下する投入砂との間で起こる衝突と摩擦によって磨鉱処理する高速回転するロータリーリクレーマー、砂粒同士の摩擦を利用して磨鉱処理するアジテーターミル等を用いた方法が挙げられる。
一方、湿式法には、例えば、羽を回転させたトラフ内の砂粒相互の摩擦によって磨鉱処理するトラフ磨鉱機を用いた方法が挙げられる。
磨鉱は乾式と湿式とをこの順で組み合わせることが好ましい。組み合わせることで、再生された砂からのナトリウムイオン溶出濃度を所定範囲に容易に調整できる。磨鉱時間は、例えば5分〜2時間とし得る。
磨鉱工程で得られた磨鉱砂は、焙焼工程に付される。
焙焼工程は、400〜1000℃の範囲の温度下で行うことができる。磨鉱砂を焙焼工程に付すことで、磨鉱砂に含まれる粘結剤に由来する成分を硬化できる。硬化させることで、ナトリウムイオンの溶出が抑制された砂を得ることができる。
焙焼工程の温度が400℃より低い場合、十分に硬化できないことがあり、その結果、再生された鋳型用粘結剤含有砂(再生砂)による鋳型強度が低下することがある。また、1000℃より高い場合、硬化は十分行えるが、再生砂を構成する無機成分の種類によっては、再生砂の表面が溶融することで砂同士が凝集することがある。より好ましい温度範囲は400〜800℃、更に好ましい温度範囲は500〜800℃である。
焙焼工程の雰囲気は、磨鉱砂に含まれる粘結剤を硬化できさえすれば、特に限定されず、通常、酸素を含有する雰囲気中(例えば、空気中)で行われる。
連続式の流動焙焼装置には、種々の構成の装置が知られている。例えば、砂が流れる方向と砂を流動させるための空気が流れる方向とが交差する構成の装置、両方向が対向しかつ平行な構成の装置が挙げられる。この内、熱効率を考慮すると後者の装置が好ましい。特に、砂が流れる方向が重力の方向と同じであり、空気が流れる方向が重力の方向と逆方向である構成の装置は、熱効率が高く、焙焼用の燃料を低減できるため好ましい。
(1)磨鉱工程に付す前に鋳型廃砂を粉砕機にかけてもよい。粉砕機にかけることで、廃砂の凝集体を解砕できるので、鋳型廃砂から再生砂を取り出す収量を増やすことができる。
(2)磨鉱工程に付す前に鋳型廃砂を磁気選別機(マグネットセパレータ)にかけてもよい。磁気選別機にかけることで、廃砂に含まれる鋳造残渣を除去できるので、鋳型廃砂から再生砂を取り出す収量を増やすことができる。
(4)焙焼工程に付された砂を、分級工程に付すことで、所望の粒度分布の再生砂に分級してもよい。
鋳型用骨材は、骨材と、粘結剤とを含む。
(1)骨材
骨材は、上記原料砂を主として含む。原料砂の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
上記原料砂以外に含みうる砂としては、新砂や、ナトリウムイオン溶出濃度未調整の砂が挙げられる。
粘結剤は、無機酸のナトリウム塩を含むことが好ましい。粘結剤は、無機酸のナトリウム塩以外に、粘土、シリカゾルや、ナトリウム塩以外の硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等を含んでいてもよい。粘着剤は、無機酸のナトリウム塩を50質量%以上含むことが好ましく、無機酸のナトリウム塩のみからなることがより好ましい。
無機酸のナトリウム塩としては、ケイ酸ソーダ(水ガラス)が好ましい。ケイ酸ソーダは、一般式:Na2O・nSiO2(nは0.5〜4.0を表す。)で表される。具体的には、ケイ酸ソーダとしては、ナトリウム酸化物と二酸化ケイ素とのモル比(上記一般式におけるnの値)によって、分類され、オルトケイ酸ソーダ[Na4SiO4(Na2O・0.5SiO2:n=0.5)]、メタケイ酸ソーダ[Na2SiO3(Na2O・SiO2:n=1)]、ケイ酸ソーダ1号[Na2Si2O5(Na2O・2SiO2:n=2)]、ケイ酸ナトリウム2号[Na4Si5O12(Na2O・2.5SiO2:n=2.5)]、ケイ酸ソーダ3号[Na2Si3O7(Na2O・3SiO2:n=3)]、ケイ酸ソーダ4号[Na2Si4O9(Na2O・4SiO2:n=4)]等が挙げられる。
上記表面積を有する人工砂は、天然砂より粘結剤量を少なくすることができる。そのため、ナトリウムイオン溶出濃度を上記範囲に容易に調整できる。
特に、粘結剤が無機酸のナトリウム塩としてのケイ酸ソーダである場合、粘結剤は、原料砂100質量部に対して、0.8〜2質量部含まれることが好ましい。含有量は、1〜1.5質量部であることがより好ましく、1.1〜1.4質量部であることが更に好ましい。
鋳型用粘結剤含有砂は、無機酸のナトリウム塩の硬化を促進させるための促進剤を含んでいてもよい。例えば、ケイ酸ソーダ用の促進剤としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これら促進剤は、ケイ酸ソーダを構成するシラノール基と反応することで、ケイ酸ソーダの硬化を促進すると考えられる。
促進剤は、効果促進の効率を高めるために、微粒子状であることが好ましい。その粒径は、例えば、300μm以下としてもよい。
(4)硬化剤
鋳型用粘結剤含有砂は、無機酸のナトリウム塩を硬化させるための硬化剤を含んでいてもよい。例えば、ケイ酸ソーダ用の硬化剤としては、ダイカルシウムシリケート、有機エステル等が挙げられる。
なお、ケイ酸ソーダ用の硬化剤としては、炭酸ガスも使用でき、炭酸ガスを使用する場合は、鋳型用粘結剤含有砂は予め硬化剤を含まなくてもよい。
鋳型用粘結剤含有砂は、公知の方法で製造できる。例えば、骨材となる人工砂をミキサー中で混合しつつ、ミキサー内に粘結剤を投入することにより、粘結剤と骨材との混合物を得る。ここで、鋳型用粘結剤含有砂が促進剤及び/又は硬化剤を含む場合、最初に促進剤及び/又は硬化剤をミキサー内に投入し、その後、粘結剤を投入することができる。なお、粘結剤は、骨材の全表面又は一部表面を被覆していると考えられる。
粘結剤は、溶液の形態でミキサー中に投入されてもよい。粘結剤が、例えば、ケイ酸ソーダである場合は、水溶液の形態を取り得る。水溶液中には、吸湿剤としてナトリウム含有物が含まれていてもよく、シリコンオイルのような界面活性剤が含まれていてもよい。
(1)鋳型用骨材の製造
骨材となる人工砂として、エスパール#60(山川産業社製:単位体積当たりの表面積3300cm2/cm3、粒度分布53〜600μm、粒形係数1.03、アルミナとシリカを合計で94質量%(アルミナ77質量%及びシリカ23質量%)含み、合成ムライトを40質量%、合成コランダムを10質量%含む)を使用した。この再生に付されていない人工砂を新砂と称する。人工砂をケンウッドミキサーに入れ、人工砂100質量部に対して0.65質量部の促進剤(ASKケミカルズ社製プロモーターTC5000:粉体)を添加し人工砂を攪拌(ミキサー回転100rpm、攪拌時間45秒)することで、促進剤と骨材の混合物を得た。次に骨材100質量部に対して1.2質量部の粘結剤(ASKケミカルズ社製イノテックHC2000:液状)を添加し人工砂を攪拌(ミキサー回転100rpm、攪拌時間45秒)することで促進剤と粘結剤と骨材の混合物(鋳型用粘結剤含有砂)を得た。
得られた鋳型用粘結剤含有砂を用いて、以下の手順で曲げ強度を測定した。曲げ強度は、鋳型強度を示す指標とした。
(a)測定用テストピース(試験片)の作製
JACT試験法SM−1曲げ強さ試験法(JIS K 6910対応)に準じて、テストピースの曲げ強度を測定した。具体的な測定条件を下記する。
深さ25.4mm、幅25.4mm及び長さ130mmの凹部を2つ有する下金型と、その蓋としての上金型を用意した。下金型と上金型とを110℃±3℃に加熱した後、凹部を約180gの鋳型用粘結剤含有砂で満たした。ホットエアーブロー(温度200℃、圧力0.3MPa×40秒)により、2個の曲げ強度試験用のテストピースを作製し、1時間後に各測定法でその強度を測定して、個々のテストピースの曲げ強度を得た。
60°の先端角度、1.5Rの最先端の曲率、長さ10mm以上の1対の凸部を、長さ方向が平行であり、間隔が100mmになるように配置したテストピース載置台に、テストピースを載置した。テストピースの上面の中央に、60°の先端角度及び1.5Rの最先端の曲率を有する加圧クサビを用いて荷重を加えた。荷重を加えることで、テストピースが折れた時点の荷重値を記録した。この荷重試験を2本のテストピース毎に行った。
σfb=3×L×P/2×W×h2
(式中、σfbは曲げ荷重(MPa)、Lはテストピース載置台の1対の凸部の間隔(10cm)、Pは荷重値(N)、Wはテストピースの幅(2.54cm)、hはテストピースの高さ(2.54cm)である)
曲げ強度(MPa)は、2本の曲げ荷重の平均値とした。
再生は、乾式磨鉱工程、湿式磨鉱工程、焙焼工程を表1に記載のように組み合わせて行った。
乾式磨鉱工程は流動層を具備した乾式鋳物砂再生装置(日本鋳造社製ハイブリッドサンドマスター形式HSM1340)を使用し、砂投入量で300kgのバッチ処理、ローター212の回転数2400rpmの条件で行った。
焙焼工程は、図1に示すJFE継手焙焼炉(JFE継手社製JTR−G−1型)を使用し、焙焼温度を450〜550℃、焙焼炉内流動差圧を4.5MPa、砂投入量を2.5t/時間の条件で行った。図中、1は焙焼炉、2は粉砕物投入口、3はバーナー、4は流動床、5は熱交換器、6は砂流動用空気入口、7は冷却用空気入口、8は流動クーラー、9は砂排出バルブ、10は空気ノズル、11は流動差圧計、12は排ガス出口を意味する。
湿式磨鉱工程は、図2に示すトラフ磨鉱機(直径609.4mm×長さ1517mm、8枚の攪拌羽根(インペラー)、山川産業社製)を使用し、負荷電流を130A、砂投入量を5t/時間、投入砂に対する水分量を5〜10質量%、攪拌羽根の回転数を86rpm/分、攪拌羽根の取り付け角度を45°、攪拌羽根1枚の面積を49100mm2とする条件で行った。図中、21はトラフ磨鉱機、22はトラフ、23は攪拌羽根、24は焙焼砂投入口、25は再生砂排出口、26はバネ、27は蓋、28は継手、29は回転軸、30は減速機、31はモーターを意味する。
工程(1)と同様にして鋳型用粘結剤含有砂を製造し、工程(2)と同様にして曲げ強度を測定した。得られた曲げ強度を表1に示す。
また、表1には、未再生砂(鋳型廃砂)、新砂及び再生された人工砂のナトリウムイオン溶出濃度を併せて示す。ナトリウムイオン溶出濃度の測定は、以下の手順で行った。単位体積当たりの表面積、粒度分布、粒形係数、アルミナとシリカの含有割合は、再生された人工砂と新砂とでほぼ同じであった。
なお、鋳型廃砂は、実際に鋳物の製造に使用した廃砂ではなく、その製造を想定した模擬砂を使用した。模擬砂は、以下のようにして得た。
まず、上記(1)鋳型用骨材の製造と同様にして、新砂から鋳型用粘結剤含有砂を得た。この鋳型用粘結剤含有砂を用い、上記(2)(a)測定用テストピース(試験片)の作製と同様にして、テストピースを得た。このテストピースを上記(3)鋳型用粘結剤含有砂の再生と同様に乾式磨鉱工程、湿式磨鉱工程、焙焼工程に付して再生砂(この再生砂を再生砂1と称する)を得た。なお、乾式磨鉱時間は15分、焙焼温度は300℃とした。
次に、再生砂1を、上記新砂と同様にして、鋳型用骨材の製造、テストピース作製、鋳型用粘結剤含有砂の再生を8回繰り返すことで、再生砂9を得た。
更に、再生砂9を、上記新砂と同様にして、鋳型用骨材の製造、テストピース作製に付し、得られたテストピースを約3mm以下の径の解砕片になるまで解砕することで、模擬砂を得た。
(1)内標準溶液及び標準溶液の作製
・内標準液(Y:50mg/L)
関東化学社製イットリウム標準原液(Y:1000mg/L、原子吸光分析用)25mLを全量フラスコ500mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Na:100mg/L)
関東化学社製ICP発光分光分析用標準溶液IV(Na:1000mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Na:20mg/L)
標準溶液(Na:100mg/L)20mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Na:10mg/L)
標準溶液(Na:100mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
・標準溶液(Na:1mg/L)
標準溶液(Na:10mg/L)10mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた。
内標準液(Y:50mg/L)20mLを全量フラスコ100mLにとり、標準溶液(Na:20mg/L)、標準溶液(Na:10mg/L)、標準溶液(Na:1mg/L)をそれぞれ標線まで加えた。併せて、別に空実験として内標準液(Y:50mg/L)20mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた標準溶液を調整した。併せて、別に空試験として内標準溶液(Y:50mg/L)20mLを全量フラスコ100mLにとり、精製水を標線まで加えた標準溶液を調整した。これらを島津製作所社製ICP発光分光装置(ICPS−8100)にて測定し、ナトリウムイオン溶出濃度と指示値との関係線(検量線)を作成した。
供試砂50gを300mLポリエチレン製ビーカーにとり、精製水50mL及び0.1mol/L塩酸溶液50mLを加えマグネチックスターラーにて1時間攪拌する。攪拌後、JIS P 3801ろ紙(化学分析用)に規定されたガラス繊維ろ紙によりろ過した。ろ過後、溶液を再度、ADVANTEC社製メンブランフィルター(孔径0.45μm)にて吸引ろ過し、試料溶液(原液)とした。併せて、別に空試験として300mLポリエチレン製ビーカーに精製水50mL及び0.1mol/L塩酸溶液50mLをとり、同様の操作を行った。
内標準溶液(Y:50mg/L)10mLを全量フラスコ50mLにとり、試料溶液(原液)を標線まで加え、島津製作所社製ICP発光分析装置(ICPS−8100)にて測定した。得られたナトリウムイオン濃度と空試験の濃度の差をナトリウムイオン溶出濃度とした。なお、ナトリウムイオン溶出濃度が検量線の測定範囲を超える場合には、測定範囲内となるように試料溶液(原液)を精製水にて希釈、調整し、試料溶液(希釈液)を得、内標準溶液(Y:50mg/L)10mLを全量フラスコ50mLにとり、試料溶液(希釈液)を標線まで加え、再度、島津製作所社製ICP発光分析装置(ICPS−8100)にて測定し、ナトリウムイオン溶出濃度を得た。試料溶液(希釈液)を測定した場合には、得られたナトリウムイオン濃度と希釈率の積より空試験の濃度を差し引いた値をナトリウムイオン溶出濃度とした。
上記測定により得られた結果を表1に示す。また、表1の結果を図3にも示す。
促進剤を使用しないこと以外は実施例1と同様にして鋳型用粘結剤含有砂を得た。得られた鋳型用粘結剤含有砂を用いて、実施例1と同様にして、テストピースを作製し、このテストピースを用いて新砂の曲げ強度を測定した。測定後、テストピースを実施例1と同様にして再生に付した(再生条件:乾式磨鉱30min+湿式磨鉱+焙焼550℃)。再生された人工砂を用いて、実施例1と同様にして曲げ強度を測定した。また、実施例1と同様にして、新砂と再生された人工砂のナトリウムイオン溶出濃度を測定した。上記測定により得られた結果を表2に示す。
粘結剤を1.5質量部の東曹産業社製1号ケイ酸ソーダN2に変更し、促進剤を使用しないこと以外は実施例1と同様にして鋳型用粘結剤含有砂を得た。得られた鋳型用粘結剤含有砂を用いて、実施例1と同様にして、テストピースを作製し、このテストピースを用いて新砂の曲げ強度を測定した。測定後、テストピースを実施例1と同様にして再生に付した(再生条件:乾式磨鉱30min+湿式磨鉱+焙焼550℃)。再生された人工砂を用いて、実施例1と同様にして曲げ強度を測定した。また、実施例1と同様にして、新砂と再生された人工砂のナトリウムイオン溶出濃度を測定した。上記測定により得られた結果を表3に示す。
Claims (9)
- 鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂であって、
前記原料砂が、140mg/L以下の0.05M−HCl水溶液に対するナトリウムイオン溶出濃度を示し、
前記原料砂が、鋳造後に生じる鋳型廃砂に由来する人工砂及び/又は天然砂であることを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂。 - 前記鋳型廃砂が、無機酸のナトリウム塩を含む粘結剤を使用した鋳型用粘結剤含有砂に由来する請求項1に記載の鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂。
- 前記粘結剤が、ケイ酸ソーダを含む請求項1又は2に記載の鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂。
- 前記ナトリウムイオン溶出濃度が、50〜130mg/Lである請求項1〜3のいずれか1つに記載の鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂。
- 前記原料砂が、1.35以下の粒形係数を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂。
- 骨材と、粘結剤とを含む鋳型用粘結剤含有砂であって、前記骨材が請求項1〜5のいずれか1つに記載の原料砂を含み、前記粘結剤が無機酸のナトリウム塩を含むことを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂。
- 前記無機酸のナトリウム塩が、ケイ酸ソーダであり、前記原料砂100質量部に対して、0.8〜2質量部含まれる請求項6に記載の鋳型用粘結剤含有砂。
- 請求項6又は7に記載の鋳型用粘結剤含有砂に由来し、鋳物の形状に対応する空間を囲う骨材と前記骨材を互いに固着する粘結剤とから構成されることを特徴とする鋳型。
- 請求項1〜6のいずれか1つに記載の鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂の製造方法であって、鋳造後に生じる鋳型廃砂を、乾式磨鉱工程、湿式磨鉱工程及び焙焼工程の順に付すことで原料砂に再生することを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂の製造用の原料砂の製造方法。
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