JP5845040B2 - 精密鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材及びそれを用いた精密鋳造用鋳型の製造方法に係り、特に、ロストワックス法により製作される精密鋳造用鋳型の初層として好適に用いられ、美しい鋳肌を持つ鋳物の経済的に有利な製造を可能とする、球状の耐火性粒子からなる精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材、及びそれを用いて初層を形成してなる精密鋳造用鋳型の製造方法に関するものである。
従来から、ロストワックス法による精密鋳造用鋳型の造型においては、先ず、微粒子状の骨材を懸濁させたバインダを含むスラリーにて、製品形状に対応した形状を有する蝋型(ろう模型)の表面を被覆して、スラリー層を形成した後、そのスラリー層の表面にスタッコ材を散布して、乾燥することにより、かかる蝋型の表面に、第一のセラミックシェル層が形成される。その後、再度、スラリーによる被覆を行ない、その形成されたスラリー層にスタッコ材を散布して、第二のセラミックシェル層が形成される。そして、かかる作業を数回繰り返すことによって、セラミックシェル層を複数層積層形成した後、蝋型を加熱溶融して除去し、更に焼成することにより、目的とする精密鋳造用鋳型が、製造されている。なお、鋳物は、かかる蝋型の取り除かれた鋳型の空洞部分に、所定の金属溶湯(高温で溶融した鋳物材料)を鋳込むことにより、生産されることとなる。
ところで、このロストワックス法による精密鋳造用鋳型の製作に際して、一般的に用いられるスタッコ材としては、シャモット粒、ムライト粒、アルミナ粒、シリカ粒、ジルコニア粒、ジルコン粒等があるが、その中でも、ジルコン粒が広く使用されてきている(日本鋳物協会精密鋳造研究部会編、「精密鋳造法」、日刊工業新聞社、昭和59年1月発行、第31−36頁(非特許文献1)及び特開昭61−289944号公報(特許文献1)等参照)。
しかしながら、スタッコ材として用いられるジルコン粒は、高温の金属溶湯と反応し難く、また鋳物への差込み等も惹起され難いことから、美しい鋳肌を容易に得ることが出来る特徴があり、また熱膨張も比較的小さいところから、得られる鋳物の寸法精度も良い等という特徴を有しているのであるが、かかるジルコン粒は、また、その比重が大きいために、造型して得られる鋳型の重量が重くなって、複雑形状品の製造が困難となる他、天然に大量に産出するものではなく、且つその産地も偏在しているところから、鋳型用材料としての使用が困難となりつつある。更に、使用済み鋳型からジルコン粒を回収して、再利用しようとした場合において、ジルコン粒はZrO2 とSiO2 とを化学成分とするものであるために、通常、スタッコ材として共に用いられるAl23 系成分との化学組成のコントロールが難しく、その結果、使用済み鋳型の再利用は全く行なわれていないのが、実情である。
そこで、そのような問題を解決するために、ジルコン粒を用いない精密鋳造用鋳型が提案されている。例えば、特開2005−324253号公報(特許文献2)や特開2003−225739(特許文献3)には、ムライト粒又はアルミナ粒を用いた例が示されているのであるが、それらは、ただ単に、ジルコン粒を排除した鋳型を製造しただけに過ぎないものである。しかし、そこで用いられるムライト粒やアルミナ粒は、ジルコン粒より溶融温度は高く、耐熱性に優れるものの、溶湯との反応性はジルコン粒に比して劣るために、精密鋳造鋳物の製造時にスタッコ材の差込み等が発生し、滑らかな美しい鋳肌を有する鋳物を得ることが困難であるという問題を内在するものであった。
特開昭61−289944号公報 特開2005−324253号公報 特開2003−225739号公報
日本鋳物協会精密鋳造研究部会編、「精密鋳造法」、日刊工業新聞社、昭和59年1月発行、第31−36頁
ここにおいて、本発明は、かくの如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、従来の如きジルコン粒を用いることなく、美しい鋳肌を有する鋳物が有利に得られる精密鋳造用鋳型を経済的に有利に製造することの出来る精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材、及びそれを用いた精密鋳造用鋳型の製造方法を提供することにある。
そして、本発明者等は、そのような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、鋳物の鋳肌に大きな影響を与えるのは、鋳型を構成する複数のセラミックシェル層のうち、金属溶湯に接する最内層、つまり最初に形成されるセラミックシェル層(初層という)であり、そしてそのような層を形成するスタッコ材として、特定割合のアルミナ及びシリカを含んで構成される球状耐火性粒子であって、特定の粒子径、見掛気孔率及び円形率を有するものを用いることが有効であり、またそれによって鋳型の強度が向上せしめられて、積層されるセラミックシェル層の積層数を低減せしめ得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、上記した課題又は明細書全体の記載から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載乃至はそこに開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1) 鋳型壁が複数のセラミックシェル層にて積層、構成されている、ロストワックス 法による精密鋳造用鋳型を製造する方法にして、それらセラミックシェル層のうち 、金属溶湯に接する最内層を、Al23:50〜95重量%、SiO2 :5〜50
重量%、及びその他の酸化物:0〜15重量%からなり、見掛気孔率が4.2%以
下で、且つ粒子径が0.05〜0.3mmであって、円形度が0.80以上である
球状の耐火性粒子からなるスタッコ材を用いて形成する一方、該最内層よりも外側
の少なくとも一つのセラミックシェル層を、該球状耐火性粒子及び/又はその他の
アルミナ/シリカ系粒子をスタッコ材として用いて形成することを特徴とするロス
トワックス法による精密鋳造用鋳型の製造方法。
(2) 前記球状耐火性粒子が、主結晶鉱物としてムライト結晶又はムライト及びコラン ダムの混合結晶を含有していることを特徴とする前記態様(1)に記載の精密鋳造 用鋳型の製造方法
(3) 鋳型壁が複数のセラミックシェル層にて積層、構成されている、ロストワックス 法による精密鋳造用鋳型を製造する方法にして、それらセラミックシェル層のうち 、金属溶湯に接する最内層を、Al 2 3 :50〜95重量%、SiO 2 :5〜50
重量%、及びその他の酸化物:0〜15重量%からなり、見掛気孔率が4.2%以
下で、且つ粒子径が0.05〜0.3mmであって、円形度が0.80以上である
球状の耐火性粒子に対し、その他のアルミナ/シリカ系粒子の少なくとも1種類を
、10重量%以下の含有量となる割合において混合せしめてなるスタッコ材を用い
て形成する一方、該最内層よりも外側の少なくとも一つのセラミックシェル層を、
該球状耐火性粒子及び/又は該その他のアルミナ/シリカ系粒子をスタッコ材とし
て用いて形成することを特徴とするロストワックス法による精密鋳造用鋳型の製造
方法。
(4) 前記耐火性粒子の見掛気孔率が、4%以下である前記態様(1)乃至前記態様( 3)の何れか1項に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法。
) 鋳型壁を構成するセラミックシェル層を形成するために用いられるスラリーに、 バインダとして、コロイダルシリカ、エチルシリケート、又はコロイダルアルミナ からなる無機バインダが配合されていることを特徴とする前記態様(1)乃至前記 態様(4)の何れか1項に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法。
) 前記スラリーに、骨材として、アルミナ/シリカ系粒子の少なくとも1種類が懸 濁せしめられていることを特徴とする前記態様(5)に記載の精密鋳造用鋳型の製 造方法
) 前記スラリーに、骨材として、ジルコン系粒子の少なくとも1種類が懸濁せしめ られていることを特徴とする前記態様(5)に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法
このように、精密鋳造用鋳型、特にロストワックス法による鋳型の製造において、かかる鋳型を構成する複数のセラミックシェル層の初層(最内層)に、本発明に従う精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材を用いることにより、そのような鋳型を用いて製造される鋳物の鋳肌の荒れを防ぐことが可能となり、以て美しい鋳肌を持つ鋳物を有利に得ることが出来ると共に、セラミックシェル層の強度の向上が効果的に図られ得て、セラミックシェル層の積層数の低減にも有利に寄与し得ることとなったのである。
ところで、精密鋳造用鋳型を用いて鋳造を行なう際には、鋳込み時に金属溶湯と接する内側部分の表面特性、つまり、精密鋳造用鋳型の製造過程において、蝋型が除去されることによって形成される空洞の内面部分の表面特性が、鋳物の出来上がりを左右することとなる。言い換えれば、蝋型に最初に散布するスタッコ材(第1層のセラミックシェル層)の特性が、最も重要となるのである。なお、その後、同様にして、第2層目以降のセラミックシェル層が順次重ねて形成されるのであるが、最外層のセラミックシェル層へ向かうに従って、少し粒径の大きいスタッコ材が散布されて、バックアップセラミックシェル層が形成されることとなる。つまり、特に、第1層のセラミックシェル層から数層に亘るセラミックシェル層に用いられるスタッコ材は、あらゆる面において、これまで一般的に用いられてきたジルコン粒より優れた特性を持つことが要求されるのである。
このため、本発明にあっては、Al23 の50〜95重量%とSiO2 の5〜50重量%を主成分として含み、またその他の酸化物は、合計で0〜15重量%含むような、化学組成を有すると共に、実質的に粒子径が0.05〜0.3mmのものからなると共に、見掛気孔率が5%未満であり、更に円形度が0.80以上である球状の耐火性粒子にて、スタッコ材を構成したのであり、これによって、その比重が軽いことにより、鋳型造型作業においては、優れた作業性が実現され得ると共に、その得られた鋳型を用いた鋳造工程においては、鋳造後の鋳物の鋳肌が美しく、欠陥の少ない且つ寸法精度に優れた精密鋳造用鋳物を、有利に製造することが可能となったのである。また、かかる鋳型は、基本的にAl23 とSiO2 を材質とするものであるところから、そのような鋳型の使用済みのものを回収して解砕し、粒状化することにより、再びスタッコ材等としての利用も可能となるのである。なお、そのような耐火性球状粒子は、一般に、主結晶鉱物としてムライト結晶又はムライト及びコランダムの混合結晶を含有するものとなっているのである。
ここで、耐熱性に関し、従来からスタッコ材として用いられてきているジルコン粒は、JIS−R−2204(1999)に規定されるゼーゲルコーン耐火度において、一般的に、SK37(1825℃)を示すものである。このため、本発明において用いられるスタッコ材は、それと同等、或いはそれ以上の耐火性を持つ必要があるところ、本発明に従って、特定のAl23 含有量及びSiO2 含有量を主成分とし、これに、更に、場合によりその他の酸化物の所定量を含む、一般的に、ムライト結晶又はムライト及びコランダムの混合結晶を主結晶鉱物として含む粒子は、SK36(1790℃)〜SK39(1880℃)を示し、一般的な鋳物砂(ジルコン粒)と同等の耐火度を示すものである。そして、そこでは、その他の酸化物の含有量を10重量%以下とすることにより、更に優れた耐火性を付与することが出来るところから、特に好ましくは、その他の酸化物の含有割合は、0〜10重量%とされることとなる。
なお、本発明に係る精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材を構成する耐火性の球状粒子において、Al23 の含有割合が95重量%を超えるようになると、従って耐火性球状粒子中のSiO2 の含有割合が5重量%よりも少なくなると、耐熱性は向上するが、コランダム(Al23 )結晶の生成割合が急激に増加するようになる。而して、コランダム結晶は、ムライト結晶に比し、熱膨張が大きく、そのため粒子の熱膨張が大きくなって、出来上がり鋳物寸法のバラツキや鋳型の割れ等に悪影響を及ぼすことになる。一方、耐火性球状粒子中のAl23 の割合が50重量%未満となり、従ってSiO2 の割合が50重量%よりも多くなると、耐熱性が低下し、精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材としての耐熱性を維持出来なくなるのである。従って、本発明においては、好ましくは、Al23 :50〜90重量%、SiO2 :10〜50重量%の組成が有利に採用されることとなるのである。
しかも、本発明においては、上述の如き組成を有する耐火性の球状粒子の中でも、より緻密化されたものが用いられ、それによって、セラミックシェル層の強度が有利に向上せしめられ得て、最終的な精密鋳造用鋳型全体としての強度の向上が図られ得ることとなるところから、そのような鋳型を構成するセラミックシェル層の積層数を低減せしめることが可能となるのである。そして、その結果、鋳型の造型に際して、その工程の削減を可能ならしめて、経済的に有利に鋳型を得ることが出来ることとなる。そのために、本発明にあっては、JIS−R−2205(1992)に規定される「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」に準じた方法で求められる見掛気孔率が5%未満、好ましくは4%以下である耐火性の球状粒子が、用いられることとなるのである。
ところで、スタッコ材は、公知の如く、目的とする製品形状に対応した形状を有する蝋型に対して、その表面を被覆するように形成したスラリー層上に散布されて、そのスラリー層に付着せしめられることによって、セラミックシェル層を形成するものであるところから、その付着したスタッコ材の厚みが、セラミックシェル層の厚みに近似することとなる。本発明においては、そのようなセラミックシェル層を与えるスタッコ材が、粒子径が0.05〜0.3mmからなる耐火性の球状粒子にて、実質的に構成されるようにしたのである。即ち、0.05mm未満の粒子径の粒子や0.3mmを超える粒子径の粒子を実質的に含まない耐火性の球状粒子が、スタッコ材として用いられることとなるのである。なお、かかるスタッコ材(耐火性球状粒子)の粒子径が0.05mm未満となると、粒子が小さくなり過ぎて、スラリー上に粒子は付着し易いものの、その付着した粒子の上に、新たな粒子の付着が惹起され難く、その結果、形成されるセラミックシェル層の厚さが薄くなってしまう問題がある。一方、粒径が0.3mmを超えるような粒子を用いると、鋳造して得られる鋳物の鋳肌に凹凸が惹起され易く、それによって肌荒れを招く等の原因となる。
さらに、本発明において、スタッコ材として用いられる耐火性の球状粒子は、その形状が真球に近いものであることが、好ましい。そして、その真球の度合いを示す方法としては、粒子の二次元画像から、画像解析装置を用いて測定を行ない、円形度として示す手法を採用することが出来る。具体的には、よく知られているように、円形度=円形面積相当周囲長/粒子投影像輪郭周長=[2√(πS)]/L(但し、S:投影された粒子の面積であり、L:粒子投影像輪郭周長である)として求められる値において、かかる円形度が、本発明では、0.80以上である粒子が用いられることとなるが、好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上である粒子が、有利に用いられることとなる。なお、そこで、個々の粒子は、それぞれ円形度にバラツキがあるところから、無作為に抽出した粒子100個の円形度を、それぞれ測定し、その平均値にて示されるものである。そして、そのような円形度が、0.80未満となると、耐火性の球状粒子の形状が球状性を保てなくなり、鋳込んだ後の鋳物の鋳肌の美しさが損なわれ易くなるのである。つまり、鋳物の鋳肌をより美しく保つためには、円形度が0.80以上であることが必要となるのである。また、粒子の形状として、望むべきは球体であるが、突起部分がなく丸みを帯びた形状であれば良く、ラグビーボール形状等の粒子であっても、円形度が0.80以上であれば、何等差し支えない。
ところで、上記のような本発明に従う精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材を製造するに際して、その製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の各種の耐火性粒子の製造方法が、何れも、適宜に採用され得るところである。例えば、珪砂、珪石、耐火粘土、粘土鉱物、クレー、カオリン、バン土頁岩、ボーキサイト、アンダリューサイト、カイアナイト、シリマナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、仮焼アルミナ等の、ムライト結晶又はムライト及びコランダムの混合結晶を形成する耐火物原料を、Al23 及びSiO2 の組成が、上記した特定の割合となるように、適宜に組み合わせて、泥漿を調製した後、かかる泥漿を、スプレードライヤー法にて球状に造粒したり、或いはかかる泥漿を脱水乾燥した後、造粒機により球状に造粒した後、ロータリーキルンやトンネルキルン、シャトルキルン等の焼成炉にて焼成することにより、製造することが出来る。
また、上記したような、所定形状の粒子を造粒した後、焼成することによって、耐火性の球状粒子を得る方法以外にも、例えば、上記せる如き耐火物原料を、高温加熱炉内で溶融状態にした後、加圧空気にて吹き飛ばすことにより、耐火性の球状粒子を得るようにしたり、或いは公知の火炎溶融法等によって、耐火性の球状粒子を得るようにすることも、可能である。
さらに、そのような耐火性の球状粒子は、前記した耐火物原料からの造粒物として製造されるものに限られるものではなく、天然の砂粒を球形状に加工することにより得られるものを用いるようにしても、何等、差し支えない。例えば、Al23 :50〜95重量%、SiO2 :5〜50重量%、及びその他の酸化物:0〜15重量%からなる天然の耐火性材料であって、上記した所定の見掛気孔率を有するものを、粉砕、整粒し、次いでロータリークレーマー、サンドシャイナ、サンドフィッシャー、ハイブリタイザー等の研磨機を用いて砂の表面を研磨することにより、鋭角部を除去して球状化した後、篩い分けすることによって、得られるもの等も、用いられ得るのである。
そして、本発明に従う精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材にあっては、上記したような耐火性の球状粒子に対して、更に、その他のアルミナ/シリカ系粒子の少なくとも1種が、必要に応じて混合せしめられていても、何等差支えない。なお、そのようなスタッコ材が、最内層(第1層)のセラミックコーティング層(セラミックシェル層)を形成するために用いられる場合には、かかるその他のアルミナ/シリカ系粒子は、10重量%以下の含有量となる割合において、混合せしめられることとなる。このその他のアルミナ/シリカ系粒子の含有量が多くなり過ぎると、相対的に、耐火性の球状粒子の含有量が少なくなり過ぎて、耐火性の球状粒子による、上述せる如き優れた特徴が有利に発揮され得ず、かかるスタッコ材を用いて製造された鋳型により鋳造される鋳物において、差込みや焼付き(融着)等による肌荒れが発生したり、また鋳肌の表面粗度が粗いものとなってしまう恐れがあるからである。これに対し、その他のアルミナ/シリカ系粒子を含有するスタッコ材が、最内層よりも外層側の、第2層目以降のセラミックコーティング層(セラミックシェル層)を形成するために用いられる場合には、その含有量は、特に限定されない。けだし、第2層目以降のセラミックシェル層は、鋳造時に、金属溶湯に直接に接触せず、得られる鋳物の鋳肌を形成する面ではないところから、かかるその他のアルミナ/シリカ系粒子の含有量が多くなっても、それにより鋳造される鋳物の鋳肌の美醜に与える悪影響は少ないからである。
また、上記したその他のアルミナ/シリカ粒子とは、上記した本発明に従う耐火性の球状粒子以外の、アルミナ粒子、シリカ粒子及びアルミナ−シリカ粒子を指し、アルミナ及び/又はシリカを主成分として含有する耐火性酸化物粒子であって、例えば、珪砂、珪石粒、クリストバライト粒、トリジマナイト粒、クオルツ粒、溶融シリカ粒、シャモット粒、焼成カオリン粒、ムライト粒、アルミナ粒、仮焼アルミナ粒、焼結アルミナ粒、溶融アルミナ粒、コランダム粒等が破砕されて、0.05〜0.3mm程度の大きさの粒子とされたものが、単独で、或いは組み合わせて、用いられることとなる。また、その粒子形状は、球状に限られるものではなく、角張った形状のものであっても良く、何等限定されるものではない。
ところで、本発明に従う精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材を用いて、精密鋳造用鋳型を製造するに際しては、例えば、以下のようにして行なわれることとなる。
先ず、従来と同様にして、目的とする鋳物の形状を有する蝋型を多数作製し、そして、それら作製された蝋型の適数個を、湯口、湯道、堰の部分となる蝋型と共に、一体的に組み立てることにより、ツリーを製作する。
次いで、かかるツリーを、撹拌機にて撹拌することによって懸濁状態とされたセラミックスラリー中に浸漬(ディッピング)することにより、ツリー(蝋型又はろう模型)表面に、スラリーを被覆せしめる。
なお、そこにおいて用いられるスラリーは、本発明にあっては、特に限定されるものではなく、従来から、ロストワックス法(インベストメント法)において、セラミックシェル層を形成するために用いられて来ている公知の各種のスラリーが、何れも、適宜に選択され得るものであるが、好ましくは、コロイダルシリカ又はエチルシリケートからなる無機バインダを用い、それを、必要に応じて、水やアルコール等の媒体に配合して、調製されてなるものが、有利に用いられることとなる。
ここで、無機バインダとしてのコロイダルシリカには、粒子径が3〜200nm程度の超微粒子の無定形シリカが分散媒に対して安定的に分散されてなるものが、一般に用いられることとなる。中でも、そのようなコロイダルシリカとしては、特に、シリカ粒子径が3〜30nm程度であり、且つ20〜40重量%程度の濃度で分散せしめられてなるシリカゾルが、好ましく用いられるのである。また、エチルシリケートとしては、テトラエチルオルソシリケートやエチルシリケート40、エチルシリケート28等が好ましく用いられることとなる。
また、前記スラリーには、骨材として、上述せる如きアルミナ又はシリカを主成分として含有する耐火性酸化物からなるアルミナ/シリカ系粒子やジルコン系粒子の少なくとも1種が懸濁せしめられていることが、望ましい。なお、かかるアルミナ/シリカ系粒子やジルコン系粒子をスラリーに懸濁せしめる場合には、粒子をスラリー中で沈降させることなく、安定的に浮遊・分散せしめるために、その粒子径は、0.2mm未満のものであることが好ましく、より好ましくは、0.1mm未満のものである。また、かかるアルミナ/シリカ系粒子やジルコン系粒子は、スラリー中、40〜90重量%程度の割合において懸濁せしめられていることが望ましい。
さらに、前記スラリーに対しては、従来からロストワックス法(インベストメント法)において用いられている公知のスラリーと同様に、各種の界面活性剤やゲル化促進剤等の配合剤が、必要に応じて、適宜に含有せしめられることとなる。
そして、本発明に従う精密鋳造用鋳型の製造にあっては、そのようなスラリー中に浸漬(ディッピング)せしめられたツリー(蝋型)を、スラリーから引き揚げた後、かかるツリーを被覆し、付着するスラリーが乾かないうちに、上述せる如き本発明に従う精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材が振り掛けられる(スタッコイングされる)のである。なお、このスタッコ材の振り掛けに際しては、従来から公知の振掛け方法が、何れも適宜に採用され、例えば、スタッコ材を雨状に落すことによって振掛けを行なう落下式振掛け法や、ツリーを容器内に収容し、容器の底部から吹き出される空気によって、スタッコ材を浮遊させることにより振掛けを行なう固体流動床式振掛け法等を採用して、目的とするスタッコイングが行なわれるのである。
その後、かかる本発明に従うスタッコ材の被覆されたツリー(蝋型)を、自然乾燥や機械乾燥を行なうことによって、最内層となる第1層目のセラミックコーティング層が形成される。そして、セラミック・シェルモールド法によれば、かかる第1層のセラミックコーティング層の形成された蝋型に対して、更に、上記と同様にして、ディッピング、スタッコイング及び乾燥からなる一連のコーティング層形成工程を複数回(4〜10回)繰り返すことにより、蝋型上に、複数のセラミックコーティング層(厚さ:約3〜10mm)が積層、形成されることとなる。
このように、本発明の対象とする精密鋳造用鋳型の製造にあっては、上述せる如き本発明に従う精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材を用いて、最内層(第1層)のセラミックコーティング層を形成し、そして、かかる一層のセラミックコーティング層が形成されたツリー(蝋型)に対して、更に、コーティング層形成工程を複数回繰り返すことにより、鋳型壁となる複数のセラミックコーティング層を積層形成するのであるが、そこにおいて、最内層よりも外側の少なくとも一つのセラミックコーティング層は、スタッコ材として、前記耐火性の球状粒子及び/又はその他のアルミナ/シリカ系粒子を用いて形成することが望ましい。
すなわち、鋳造時に金属溶湯に接して、得られる鋳物の鋳肌面を形成するセラミックコーティング層(セラミックシェル層)は、最内層(第1層)のセラミックコーティング層であるところから、かかる最内層のセラミックコーティング層(セラミックシェル層)を形成せしめるスタッコ材としては、本発明に従う精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材を用いる一方、最内層よりも外側のセラミックコーティング層については、本発明に従う耐火性の球状粒子の他にも、前記したその他のアルミナ/シリカ系粒子やそれらの混合物等が、適宜に用いられ得るのであり、それにより、得られる精密鋳造用鋳型において、上述せる如き優れた効果が、経済的に有利に得られることとなるのである。
なお、より好ましくは、本発明に従う精密鋳造用鋳型の製造に際して用いられる精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材は、最内層のセラミックコーティング層から最外層のセラミックコーティング層へ向うに従って、その粒子径が、順次大きくされることとなる。これにより、鋳造時に溶湯と接して、鋳物の鋳肌面を形成する、内層側の表面粗度を低くして、得られる鋳物の鋳肌を、有利に、差込み等の欠陥のない、滑らかな美しいものとすると共に、得られる鋳型の強度を、有利に向上させることが可能となるのである。
次いで、そのようにしてツリー(蝋型)上に積層形成された複数のセラミックコーティング層を、オートクレーブ内にて120〜150℃程度に加熱することにより、蝋型を溶融、除去し、更にその後、蝋型の除去された複数のセラミックコーティング層を、焼成炉内において、800〜1100℃の温度にて30分〜1時間焼成することにより、複数のセラミックシェル層からなる精密鋳造用鋳型が得られるのである。
そして、上述のようにして製造された精密鋳造用鋳型を用いて、鋳物を製造するに際しては、蝋型が除去されて出来た鋳型の空洞部分に、金属溶湯を流し込むことにより、鋳物が製造されることとなるのであるが、本発明にあっては、かかる鋳物の鋳込方法は、何等限定されるものではなく、例えば、置注ぎ法や反転加圧法、吸引鋳造法、遠心鋳造法等の従来から公知の手法が、何れも有利に用いられる。
このような本発明に従う精密鋳造用鋳型を用いて鋳造された鋳物にあっては、上述したように、鋳造時に溶湯と接して、得られる鋳物の鋳肌面を形成する、精密鋳造用鋳型の最内層のセラミックシェル層が、本発明に従う精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材を用いて構成されているところから、そのようなスタッコ材を構成する耐火性粒子における、Al23 及びSiO2 からなるムライト結晶又はムライトとコランダムの混合結晶の有する優れた耐火性によって、得られる鋳物の鋳肌が、焼付き(融着)等による肌荒れのない、美しいものとなる一方、その優れた熱膨張特性によって、鋳物の寸法精度が有利に高いものとなると共に、鋳型の切れや割れ等の発生が有利に防止されて、欠陥品の発生が、有利に抑制せしめられ得ることとなる。
しかも、本発明にあっては、上記精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材が、特定の粒子径を有する球状の耐火性粒子であるところから、得られる鋳型の鋳肌が、差込み等による肌荒れがなく、また表面粗度の低い、滑らかなものとなると共に、見掛気孔率の低い緻密な構造のものであるところから、最内層を与えるセラミックシェル層の強度が有利に高められ、以て、鋳型の内面(鋳肌を形成する面)の崩壊による鋳肌の荒れのない、美麗なものとなるのである。
そして、そのような本発明に従う精密鋳造用鋳型は、また、上記のようにして鋳物が鋳造された後、ジョークラッシャーやロールブレーカー等の粉砕機により解砕され、更に篩い分けされて、回収され、回収粒として、再び、鋳型の造型に用いられることも可能となる。例えば、目的とする精密鋳造用鋳型を製造するに際して、前記アルミナ/シリカ系粒子に代えて、或いはそれと共に、スタッコ材として、或いはスラリーに懸濁せしめられる骨材として、有利に用いられ得るのである。
このように、本発明に従う精密鋳造用鋳型にあっては、それを構成する精密鋳造用鋳型製造用スタッコ材が、ジルコン粒を必須とせず、ムライト結晶又はムライトとコランダムの混合結晶の主結晶鉱物からなるものであって、その鋳型成分の殆どが、アルミナとシリカとから構成されており、化学組成のコントロールが容易であるところから、鋳造作業後の鋳型の回収粒の再利用が容易であり、また、それを廃棄する際にも、放射性物質を含むジルコン粒を含むものではないところから、そのコストが、ジルコン粒を含むスタッコ材を用いて製造された鋳型に比して、有利に低減され得ることとなるのである。
なお、本発明に従う精密鋳造用鋳型を用いて鋳造される金属溶湯としては、公知の各種のものを、その対象とすることが出来るが、特に、本発明の上記した特徴は、金属溶湯として炭素鋼やCr−Mo鋼、低合金鋼等の溶湯を用いた場合において、より一層有利に発揮され得ることとなる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
例えば、上述の実施形態においては、本発明に従う精密鋳造用鋳型は、セラミック・シェルモールド法によって製作されているが、本発明に従う精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材は、そのようなセラミック・シェルモールド法以外にも、例えば、容器内に充填した耐火材によるバックアップを行なって鋳造する、ソリッド・モールド法による精密鋳造用鋳型の製造にも、有利に用いられ得るものである。そして、そのようなソリッド・モールド法により得られる精密鋳造用鋳型にあっても、上記したような優れた効果が、同様に実現されるのである。また、そのようなソリッド・モールド法によって精密鋳造用鋳型を製造する際には、本発明に従う精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材は、バックアップ用の砂としても、有利に用いられ得るのである。
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、Al23 源原料として水酸化アルミニウム、SiO2 源原料として粘土鉱物を用い、それら原料を粉砕、混合して泥漿を調製し、スプレードライヤー法にて球状の造粒物を造粒した後、得られた造粒物をロータリーキルン内で焼成せしめ、更にその焼成物をジョークラッシャー及びロールブレーカーを用いて解砕し、篩い分けすることによって、下記表1に示される如き化学組成、見掛気孔率、粒子形状及び円形度を有する耐火性の球状粒子No.1を、精密鋳造用初層鋳型製造用スタッコ材として準備した。また、原料の種類やその配合割合並びに焼成条件等を変化させることによって、下記表1に示される如き種々の化学組成及び見掛気孔率、円形度を有する耐火性の球状粒子No.2〜4及びNo.11〜13を、それぞれ準備した。
さらに、スタッコ材として、上記の球状粒子と共に、或いはそれに代えて用いられる、その他のアルミナ/シリカ系粒子として、表1に示される如き化学組成及び見掛気孔率を有するムライト粒、アルミナ粒、シャモット粒及び溶融シリカ粒を、篩い分けにより、所定の粒度において得た。
なお、それら準備された各粒子の化学組成は、X線回折測定による結晶相の同定を行なうことによって求められたものであり、そしてX線回折測定の結果から、球状粒子No.1、2は、ムライト結晶から主として構成され、また、球状粒子No.3、4は、それぞれ、ムライト及びコランダムの混合結晶を主結晶鉱物として有するものであることを確認した。更に、球状粒子No.11、13にあっては、ムライトを主結晶鉱物とし、球状粒子No.12においては、主結晶鉱物がコランダム結晶であることを認めた。
また、各粒子の見掛気孔率(%)は、JIS−R−2205(1992)に規定される「耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」に準じて求められたものであり、更に、円形度は各粒子の二次元画像から、画像解析装置を用いて測定を行ない、先の式:[2√(πS)]/Lにより求めたものであって、無作為に抽出した粒子の100個の円形度を、それぞれ測定して、その平均値にて示されている。
Figure 0005845040
次いで、精密鋳造用鋳型製造用スラリーに懸濁せしめられる骨材として、ムライト粒、アルミナ粒、溶融シリカ粒、ジルコン粒を、それぞれ、粉砕し、篩い分けることによって、45μm以下又は100μm以下の粒子とし、それを、単独で又は組み合わせて、それぞれ、バインダとしてのコロイダルシリカに混合、懸濁せしめることにより、各種の精密鋳造用鋳型製造用スラリーを調製した。なお、スラリー中における骨材の全含有量は、70重量%とし、またコロイダルシリカの含有量は、30重量%とした。
−鋳型1−
ほぼ略矩形状の蝋型(横35mm×縦150mm×高さ10mm)を用意し、それを、下記表2に示される組成のスラリー中にディッピングした。次いで、蝋型を被覆するスラリーが乾かないうちに、上記で準備された粒度が0.1〜0.2mmの球状粒子No.1をスタッコイングし、その後、40℃で120分間の乾燥を行なうことにより、第1層(最内層)のセラミックコーティング層を形成した。
次いで、その得られた第1層のセラミックコーティング層が形成されてなる蝋型に対して、更に、表2に示される組成のスラリーを用い、またスタッコ材として、球状粒子No.1の粒度の異なる(0.1〜0.3mm)ものを用いること以外は、第1層のセラミックコーティング層の形成の場合と同様にして、ディッピング、スタッコイング及び乾燥を行なった。そして、それを3回繰り返すことにより、第2層〜第4層のセラミックコーティング層を積層形成した。
さらに、上記で得られた4層のセラミックコーティング層の形成せしめられた蝋型に対して、表2に示される如くコロイダルシリカ中に骨材として溶融シリカ粒(45μm以下)が分散されてなるスラリーを用い、またスタッコ材として、粒度が0.3〜0.7mmのムライト粒を用いること以外は、第1層のセラミックコーティング層の形成の場合と同様にして、ディッピング、スタッコイング及び乾燥を行なった。そして、それを4回繰り返すことにより、第5層〜第8層のセラミックコーティング層を積層形成した。
その後、かかる8層のセラミックコーティング層が積層、形成された蝋型を、900℃で5分間加熱することにより、蝋型を溶融、除去せしめ、次いで、その蝋型の除去されたセラミックコーティング層を、1100℃で90分間焼成することにより、8層のセラミックシェル層から一体的に構成された鋳型壁を有する鋳型1を得た。
そして、その得られた鋳型1内に、1650℃の鋳込み温度で、300系ステンレスの溶湯を鋳込み、溶湯の凝固後、型ばらしを行ない、粒度#100のコランダム粒子にてサンドブラストをかけることにより、砂落しをして、鋳物1を得た。
かくして得られた鋳物1について、鋳型1との寸法差〔(供試品の縦長さ−蝋型の縦長さ)/(蝋型の縦長さ)×100〕を、寸法差の一番大きい箇所の寸法を測定することにより、算出した。その結果を、下記表2に併せて示す。
また、鋳物1の表面粗さ(Ra)を、表面粗さ計(株式会社東京精密製、サーフコム)により測定した。得られた結果を、下記表2に併せて示す。
さらに、その得られた鋳物1及びかかる鋳物1の鋳造に用いた鋳型1(セラミックシェル層)を、目視にて観察し、肌荒れや差込み、焼付き、鋳型の切れや割れ等の鋳造欠陥の調べ、表面状況を評価した。その結果を、下記表2に併せて示す。
加えて、鋳型との寸法差、表面粗さ及び鋳造欠陥の有無を総合的に勘案し、鋳物製品として実用上問題がない場合は○とし、問題がある場合は×として、評価を行なった。その結果を、下記表2に併せて示す。
−鋳型2〜5−
第1層〜第8層のセラミックコーティング層を形成するために、各種のスラリー及び各種のスタッコ材を、下記表2に示される組み合わせにおいて用いて、上記鋳型1の場合と同様にして、鋳型2〜5を、それぞれ作製した。次いで、それら鋳型2〜5を用いて、それぞれ、炭素鋼又はCr−Mo鋼(金属溶湯)の鋳造を、鋳込み温度:1630℃にて行なうことにより、鋳物2〜5を得た。
そして、その得られた鋳物2〜5について、それぞれ、鋳物1と同様にして、鋳型との寸法差、表面状況、表面粗さ(Ra)を測定し、またそれらの結果を基に、総合評価を行なった。それらの結果を、下記表2に併せて示す。
Figure 0005845040
−鋳型6〜9−
第1層〜第8層のセラミックコーティング層の形成のために、下記表3に示される如きスラリーとスタッコ材との組み合わせにて、上記鋳型1の場合と同様にして、目的とする各種の鋳型6〜9を作製した。次いで、それら得られた鋳型6〜9を用いて、それぞれ、金属溶湯:Cr−Mo鋼又は低合金鋼の鋳造を、鋳込み温度:1630℃又は1650℃において実施し、それぞれ、目的とする鋳物6〜9を得た。
そして、それらの鋳物6〜9について、先の鋳物1の場合と同様にして、それぞれ、鋳型との寸法差及び表面性状(表面状況、表面粗さ:Ra)を調べ、更に、それらの結果に基づいて、総合評価を行なった。その結果を、下記表3に併せて示す。
Figure 0005845040
−鋳型11〜16−
第1層〜第8層のセラミックコーティング層を形成するために、下記表4に示される如き各種のスラリー及び各種のスタッコ材を組み合わせて用い、先の鋳型1の場合と同様にして、それぞれ、目的とする鋳型11〜16を作製した。次いで、それら得られた鋳型11〜16を用いて、金属溶湯(300系ステンレス、炭素鋼、Cr−Mo鋼又は低合金鋼)の鋳造を、鋳込み温度:1630℃又は1650℃において実施することにより、それぞれ、鋳物11〜16を得た。
そして、それら得られた鋳物11〜16について、それぞれ、先の鋳物1と同様にして、鋳型との寸法差及び表面性状(表面状況及び表面粗さ:Ra)を調べ、更に、それらの結果に基づいて、総合評価を行なった。それらの結果を、下記表4に併せて示す。
Figure 0005845040
表1及び表2〜表4の対比から明らかなように、第1層(最内層)のセラミックコーティング層(セラミックシェル層)を構成するスタッコ材として、本発明に従う見掛気孔率と粒度の球状粒子No.1〜No.4を用いて得られた鋳型1〜9にて鋳造された鋳物1〜9にあっては、何れも、鋳型との寸法差が小さく、寸法精度が優れていると共に、鋳肌の表面状況が良好であって、肌荒れや差込み、焼付き等の鋳造欠陥も無い、滑らかで美麗な鋳肌であることが認められた。しかも、それら鋳型1〜9は強度にも優れており、そのセラミックコーティング層(セラミックシェル層)の積層数を少なくすることが可能であると判断された。
一方、第1層(最内層)のセラミックシェル層を構成するスタッコ材として、粒子径が0.3mmよりも大きな粒子を含む球状粒子No.1を用いて、得られた鋳型11の鋳造品である鋳物11にあっては、鋳肌の肌荒れが起きていることが認められた。また、第1層のセラミックシェル層を構成するスタッコ材として、粒子径が0.05mmよりも小さな球状粒子No.1が用いられた鋳型12にあっても、それを用いて得られた鋳物12において、鋳肌表面への鋳型の焼付きが生じて、鋳肌の肌荒れが惹起されていることを認めた。
また、鋳型の第1層(最内層)のセラミックシェル層を構成するスタッコ材として、Al23 の含有量やSiO2 の含有量が、本発明の範囲外となる球状粒子No.11〜12や、円形度の低い球状粒子No.13を用いて得られた鋳型13〜15にあっては、そのような鋳型の鋳造品である鋳物13〜15において、何れも、鋳型との寸法差が大きく、また、肌荒れが生じて良好な鋳肌表面を得ることが出来ないことが明らかとなった。更に、第1層(最内層)のセラミックシェル層を構成するスタッコ材として、本発明に従う球状粒子以外の、その他のアルミナ/シリカ系粒子(ここでは、ムライト粒)が10重量%よりも多い割合において混合せしめられているものを用いて得られた鋳型16にあっても、鋳肌表面への鋳型の焼付きが認められ、その結果、肌荒れが生じていると共に、鋳型との寸法差においても大となることが認められた。

Claims (7)

  1. 鋳型壁が複数のセラミックシェル層にて積層、構成されている、ロストワックス法による精密鋳造用鋳型を製造する方法にして、それらセラミックシェル層のうち、金属溶湯に接する最内層、Al23:50〜95重量%、SiO2 :5〜50重量%、及びその他の酸化物:0〜15重量%からなり、見掛気孔率が4.2%以下で、且つ粒子径が0.05〜0.3mmであって、円形度が0.80以上である球状の耐火性粒子からなるスタッコ材を用いて形成する一方、該最内層よりも外側の少なくとも一つのセラミックシェル層、該球状耐火性粒子及び/又はその他のアルミナ/シリカ系粒子をスタッコ材として用いて形成することを特徴とするロストワックス法による精密鋳造用鋳型の製造方法
  2. 前記球状耐火性粒子が、主結晶鉱物としてムライト結晶又はムライト及びコランダムの混合結晶を含有していることを特徴とする請求項1に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法
  3. 鋳型壁が複数のセラミックシェル層にて積層、構成されている、ロストワックス法による精密鋳造用鋳型を製造する方法にして、それらセラミックシェル層のうち、金属溶湯に接する最内層を、Al 2 3 :50〜95重量%、SiO 2 :5〜50重量%、及びその他の酸化物:0〜15重量%からなり、見掛気孔率が4.2%以下で、且つ粒子径が0.05〜0.3mmであって、円形度が0.80以上である球状の耐火性粒子に対し、その他のアルミナ/シリカ系粒子の少なくとも1種類を、10重量%以下の含有量となる割合において混合せしめてなるスタッコ材を用いて形成する一方、該最内層よりも外側の少なくとも一つのセラミックシェル層を、該球状耐火性粒子及び/又は該その他のアルミナ/シリカ系粒子をスタッコ材として用いて形成することを特徴とするロストワックス法による精密鋳造用鋳型の製造方法。
  4. 前記耐火性粒子の見掛気孔率が、4%以下である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法
  5. 鋳型壁を構成するセラミックシェル層を形成するために用いられるスラリーに、バインダとして、コロイダルシリカ、エチルシリケート、又はコロイダルアルミナからなる無機バインダが配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法
  6. 前記スラリーに、骨材として、アルミナ/シリカ系粒子の少なくとも1種類が懸濁せしめられていることを特徴とする請求項5に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法
  7. 前記スラリーに、骨材として、ジルコン系粒子の少なくとも1種類が懸濁せしめられていることを特徴とする請求項5に記載の精密鋳造用鋳型の製造方法
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