JP7134136B2 - 使用済み鋳物砂の再生処理方法および再生処理用焙焼炉 - Google Patents
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Description
従来、水ガラスが付着した使用済み鋳物砂を再生するために、使用済み鋳物砂を焙焼して水ガラスを無害化する技術が知られている。この技術に関して、例えば、特許文献1、2には、以下のような方法が示されている。
また、特許文献2には、水ガラスが付着した使用済み鋳物砂を少なくとも200℃で熱処理する方法が示されており、熱処理は好ましくは300~1000℃で行われること(段落0045)、熱処理は流動床で行ってもよいこと(段落0051)、熱処理により水ガラスが低反応性のガラス質になること(段落0031)、などが記載されている。
しかし、高温で焙焼して水ガラスがガラス化すると、砂粒子どうしが固着しやすくなり、焙焼炉内で砂が塊状に固まる(固結する)などのトラブルが発生する危険がある。一方、焙焼温度を低く抑えると、脱水縮合しか生じないため可溶性ナトリウムの不溶化の進行が遅くなり、効率的な処理を行うことができない(或いは水ガラスを十分に無害化することができない)などの問題を生じる。
すなわち、従来法のように焙焼炉において使用済み鋳物砂を単純に焙焼するだけでは、(i)焙焼温度を高くすると水ガラスのガラス化により砂粒子どうしが固着し、焙焼炉内で砂が塊状に固まる危険がある、(ii)焙焼温度を低くすると水ガラスの脱水縮合しか生じないため、効率的な処理を行うことができない、のいずれかの問題が避けがたい。
[1]水ガラスが付着した使用済み鋳物砂を再生処理する方法であって、
焙焼炉(a)内で使用済み鋳物砂の流動層(x)を形成し、焙焼炉(a)内に放射されるバーナー火炎(f)を熱源として、流動層(x)を形成する使用済み鋳物砂を焙焼する焙焼工程を有し、
該焙焼工程では、バーナー火炎(f)を流動層(x)のうちの上部領域にのみ接触させ、バーナー火炎(f)が接触しない流動層(x)の下部領域のうちの、少なくとも一部の領域の温度を300~650℃とすることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理方法。
[2]上記[1]の再生処理方法において、焙焼工程の前に、使用済み鋳物砂を乾式磨鉱する磨鉱工程を有することを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理方法。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの再生処理方法において、焙焼工程では、焙焼炉(a)内において、焙焼炉(a)の側部に設置されたバーナーの先端から斜め下方に向けてバーナー火炎(f)が放射されることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理方法。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの再生処理方法において、使用済み鋳物砂が、鋳物砂に水ガラスを含む粘結剤を添加して型に入れ、熱処理により固化させて得られた鋳型から生じたものであることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理方法。
使用済み鋳物砂が投入され、底部から吹き出される流動化ガスにより使用済み鋳物砂の流動層(x)が形成される焙焼室(1)と、
該焙焼室(1)内に熱源となるバーナー火炎(f)を放射するバーナー(2)を備え、
該バーナー(2)は、焙焼室(1)内に形成される流動層(x)のうちの上部領域にのみバーナー火炎(f)が接触するように設けられることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理用焙焼炉。
[7]上記[6]の再生処理用焙焼炉において、バーナー(2)が炉体の側部に設置され、焙焼室(1)内において、バーナー(2)の先端から斜め下方に向けてバーナー火炎(f)が放射されるようにしたことを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理用焙焼炉。
[8]上記[6]または[7]の再生処理用焙焼炉において、使用済み鋳物砂の連続焙焼を行う焙焼炉であり、焙焼室(1)内に使用済み鋳物砂を定量供給するための鋳物砂投入口(3)と、焙焼室(1)内で流動層(x)を形成する使用済み鋳物砂の一部を焙焼済みの鋳物砂として定量排出するための鋳物砂排出口(4)を備えることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理用焙焼炉。
また、本発明において、焙焼前の使用済み鋳物砂を乾式磨鉱することにより、焙焼による効果(水ガラスの脱水縮合とガラス化)を損なうことなく、鋳物砂の強度を高めることができる。
図1は、本発明で使用される焙焼炉aと、この焙焼炉aで行われる本発明の焙焼工程の一実施形態を示している。
この焙焼炉aは、使用済み鋳物砂(以下、単に「鋳物砂」、「砂」という場合がある。)が投入され、底部から吹き出される流動化ガスにより使用済み鋳物砂の流動層xが形成される焙焼室1と、この焙焼室1内に熱源となるバーナー火炎fを放射するバーナー2を備えている。
バーナー2は、焙焼室1内に形成される流動層xのうちの上部領域にのみバーナー火炎fが接触するように設けられる。本実施形態のバーナー2は、炉体の側部に設置され、焙焼室1内において、バーナー2の先端から斜め下方に向けてバーナー火炎fが放射されるようになっている。このようにバーナー2の先端から斜め下方に向けてバーナー火炎fが放射されるようにする場合、通常、バーナー火炎fの放射方向は、水平方向に対する下向きの傾斜角が25~35°程度であることが好ましい。
また、この焙焼炉aは、バーナー火炎fが接触しない流動層xの下部領域のうちの一部領域(最下部領域)の温度を制御するために、当該領域の温度を測定する温度計5と、この温度計5による測定温度に基づき、バーナー2の燃焼条件(燃料ガスおよび/または支燃ガスの供給量など)や流動化ガスの供給条件(供給量など)を制御する制御手段6(制御装置)を備えている。
また、バーナー2の先端からのバーナー火炎fの放射方向も特別な制限はないので、例えば、バーナー2の先端から水平方向または斜め上方に向けてバーナー火炎fが放射されるようにしてもよい。
また、バーナー2を炉体の周方向または/および上下方向で間隔をおいて2つ以上設け、それぞれからバーナー火炎fが放射されるようにしてもよい。
バーナー2からはバーナー火炎fが焙焼炉a内に放射され、このバーナー火炎fを熱源として流動層xを形成する鋳物砂を焙焼するが、バーナー火炎fは流動層xのうちの上部領域にのみ接触させ、下部領域には接触させない。一方、バーナー火炎fを接触させない流動層xの下部領域のうちの、少なくとも一部の領域(通常、最下部領域)の温度を300~650℃、好ましくは300~600℃に維持する。
ここで、流動層xの下部領域のうちの少なくとも一部の領域とは、通常、最下部領域であり、この最下部領域の温度を300~650℃(好ましくは300~600℃)に温度管理することが好ましい。この流動層xの最下部領域は任意に決めることができるが、流動化していない静止状態での砂層(固定層)の上面sよりも下側とするのが好ましい。
なお、流動層xのなかで、上記300~650℃(若しくは300~600℃)に温度管理される領域以外の領域の温度は650℃超(若しくは600℃超)であってもよい。
焙焼炉aによる使用済み鋳物砂の焙焼はバッチ処理で行ってもよいが、本実施形態では、連続処理(連続焙焼)で行われる。このため、焙焼室1内に鋳物砂投入口3から使用済み鋳物砂が供給(一般には定量供給)されつつ、流動層xを形成する鋳物砂の一部が焙焼済み鋳物砂として鋳物砂排出口4から排出(一般には定量排出)される。このような連続処理では、鋳物砂を焙焼室1内に一定時間滞留させる必要があるが、鋳物砂の焙焼室1内での滞留時間は、鋳物砂投入口3からの使用済み鋳物砂の投入速度または/および鋳物砂排出口4からの排出速度を調整することで制御することができる。
また、焙焼室1内で生じたバーナー2の燃焼排ガスは、流動化ガスとともに排気口7より炉外に排気される。
また、バーナー2の先端からのバーナー火炎fの放射方向も特別な制限はなく、バーナー火炎fの放射方向は水平方向、或いは斜め上方としてもよい。
また、炉体の周方向または/および上下方向で間隔をおいて設けられた2つ以上のバーナー2からバーナー火炎fを放射し、これら複数のバーナー火炎fを流動層xの上部領域に接触させるようにしてもよい。
この磨鉱工程は、砂粒子どうしの摩擦によって、砂粒子の表面に付着した粘結剤(鋳型として使用する際に添加され、砂粒子の表面に付着した水ガラスなどの粘結剤)などによる付着物の角を機械的に削り落とし、砂粒子の形状を球状に近づけるために行うものであり、通常、使用済み鋳物砂を機械的撹拌(研磨)手段により乾式で強撹拌(研磨)することにより行う。磨鉱手段としては、例えば、ロータリーリクレーマー(日本鋳造(株)製)、ハイブリッドサンドマスター(日本鋳造(株)製)、アイリッヒミキサー(日本アイリッヒ(株)製)などを用いることができる。
磨鉱工程を有する場合には、焙焼工程の前に磨鉱工程を実施する必要がある。これは焙焼工程後に磨鉱工程を実施した場合、せっかく焙焼工程で水ガラスをガラス化した固化層(不活性な層)が削り取られ、活性な層が露出してしまうからである。
測定された強度を、真球に近い形状を有する市販の鋳型用アルミナ系骨材(合成ムライト)「エスパール」(商品名、山川産業(株)製)の強度と比較し、「エスパール」の強度を“1”としたときの相対強度(エスパール相対強度)を求めた。その結果を図3に示す。なお、図3において「廃砂」とは未処理の使用済み鋳物砂のことである(後述する図4~図10、表2、表3においても同様。)
この再生処理を施した鋳物砂と再生処理前の鋳物砂について、可溶性Na量の指標であるpH、図4と同様の粒形係数、図3と同様のエスパール相対強度を調べた。その結果を図6~図8に示す。なお、鋳物砂のpHは、砂20gにイオン交換水を50ml加えて、スターラーにて20分撹拌してから10分静置した後、pH計により測定した。
また、再生処理を施した鋳物砂と再生処理前の鋳物砂について、粒度分布とAFS(粒度指数)を調べた結果を表3及び図9に示す。
これらによれば、再生処理を施した鋳物砂は可溶性Naを評価するpHが十分に低いレベルまで低下しており、鋳物砂に付着した水ガラスは脱水縮合とガラス化により適切に無害化されていることが判る。また、粒形係数と強度も十分に満足する結果となり、粒度分布も廃砂と変わることなく再生処理されていることが判る。
図10は、本発明の再生処理方法の一実施形態の処理フローを示しており、搬入されてきた塊状物を含む使用済み鋳物砂(廃砂)は、まず、粉砕設備bで粉砕処理される(粉砕工程)。この例では、粉砕設備bは、一次粉砕を行うジョークラッシャーb1と、二次粉砕を行うハンマークラッシャーb2で構成されている。粉砕設備bで粉砕処理された使用済み鋳物砂は篩装置cにかけられ、その篩下(例えば篩目600μmの篩下)が磨鉱工程に送られ、篩上は粉砕工程に戻されて再度粉砕処理される。磨鉱工程に送られた使用済み鋳物砂は、アイリッヒミキサーなどの磨鉱機dで乾式磨鉱された後、焙焼炉aに送られて焙焼される。この焙焼炉aにおいて、上述したように鋳物砂に付着した水ガラスが無害化され、再生処理された鋳物砂(焙焼砂)が得られる。
b 粉砕設備
b1 ジョークラッシャー
b2 ハンマークラッシャー
c 篩装置
d 磨鉱機
1 焙焼室
2 バーナー
3 鋳物砂投入口
4 鋳物砂排出口
5 温度計
6 制御手段
7 排気口
8 風箱
9 ガスノズル
10 ガス供給口
11 燃料供給系
12 支燃ガス供給系
13 流動化ガス供給系
14a,14b,14c 流量調整弁
x 流動層
f バーナー火炎
Claims (8)
- 水ガラスが付着した使用済み鋳物砂を再生処理する方法であって、
焙焼炉(a)内で使用済み鋳物砂の流動層(x)を形成し、焙焼炉(a)内に放射されるバーナー火炎(f)を熱源として、流動層(x)を形成する使用済み鋳物砂を焙焼する焙焼工程を有し、
該焙焼工程では、バーナー火炎(f)を流動層(x)のうちの上部領域にのみ接触させ、バーナー火炎(f)が接触しない流動層(x)の下部領域のうちの、少なくとも一部の領域の温度を300~650℃とすることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理方法。 - 焙焼工程の前に、使用済み鋳物砂を乾式磨鉱する磨鉱工程を有することを特徴とする請求項1に記載の使用済み鋳物砂の再生処理方法。
- 磨鉱工程の前に、塊状物を含む使用済み鋳物砂を粉砕処理する粉砕工程を有することを特徴とする請求項2に記載の使用済み鋳物砂の再生処理方法。
- 焙焼工程では、焙焼炉(a)内において、焙焼炉(a)の側部に設置されたバーナーの先端から斜め下方に向けてバーナー火炎(f)が放射されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の使用済み鋳物砂の再生処理方法。
- 使用済み鋳物砂が、鋳物砂に水ガラスを含む粘結剤を添加して型に入れ、熱処理により固化させて得られた鋳型から生じたものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の使用済み鋳物砂の再生処理方法。
- 水ガラスが付着した使用済み鋳物砂を再生処理するための焙焼を行う焙焼炉であって、
使用済み鋳物砂が投入され、底部から吹き出される流動化ガスにより使用済み鋳物砂の流動層(x)が形成される焙焼室(1)と、
該焙焼室(1)内に熱源となるバーナー火炎(f)を放射するバーナーであって、焙焼室(1)内に形成される流動層(x)のうちの上部領域にのみバーナー火炎(f)が接触するように設けられるバーナー(2)と、
該バーナー(2)の燃焼条件と前記流動化ガスの供給条件を制御することで、バーナー火炎(f)が接触しない流動層(x)の下部領域のうちの、少なくとも一部の領域の温度を300~650℃に制御する制御手段(6)を備えることを特徴とする使用済み鋳物砂の再生処理用焙焼炉。 - バーナー(2)が炉体の側部に設置され、焙焼室(1)内において、バーナー(2)の先端から斜め下方に向けてバーナー火炎(f)が放射されるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の使用済み鋳物砂の再生処理用焙焼炉。
- 使用済み鋳物砂の連続焙焼を行う焙焼炉であり、焙焼室(1)内に使用済み鋳物砂を定量供給するための鋳物砂投入口(3)と、焙焼室(1)内で流動層(x)を形成する使用済み鋳物砂の一部を焙焼済みの鋳物砂として定量排出するための鋳物砂排出口(4)を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の使用済み鋳物砂の再生処理用焙焼炉。
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