JP2019104704A - 芳香環を有するアルデヒド化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし近年、より一層効率的で工業的な大量生産にも適する方法が求められている。例えば、石油を原料とすれば最終的に大気中の二酸化炭素濃度を高めることになる一方で、これまで廃棄されていたようなバイオマスはカーボンニュートラルな材料であることから、これを用いれば大気中の二酸化炭素濃度を高めることにはならない。より具体的には、多糖類からなるバイオマスの分解により5−ヒドロキシメチルフルフラールやフルフラールなどが得られ、これらを原料としてフラン単位を含む高分子材料を製造することが検討されている。例えばバイオマス由来の5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化してジホルミルフランを製造し、高分子材料の原料とすることが考えられる。
そこで本発明は、芳香環を有するアルデヒド化合物をより一層効率的に製造することができ、アルデヒド化合物の工業的な大量生産にも適する方法を提供することを目的とする。
以下、本発明を示す。
炭化水素溶媒中、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ニトロキシルラジカル化合物および窒素酸化物を混合する工程、および、
上記混合工程で得られた混合物に酸素含有ガスを添加し、上記芳香族化合物のヒドロキシメチル基を酸化する工程を含むことを特徴とする方法。
[2] 更に、上記酸化工程後、反応液を冷却して上記アルデヒド化合物を結晶化する工程、および、
上記結晶化工程で生じた上記アルデヒド化合物の結晶を母液から分離する工程を含む上記[1]に記載の方法。
[3] 上記芳香環が複素芳香環である上記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 上記ニトロキシルラジカル化合物がピペリジン−1−オキシル誘導体である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 上記窒素酸化物が、硝酸、硝酸塩、一酸化窒素および二酸化窒素から必須的になる群から選択される少なくとも一種である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 上記炭化水素溶媒が芳香族炭化水素溶媒である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
1.混合工程
本工程では、炭化水素溶媒中、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ニトロキシルラジカル化合物および窒素酸化物を混合することにより混合物を得る。
本工程では、上記混合工程で得られた、少なくとも炭化水素溶媒中、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ニトロキシルラジカル化合物および窒素酸化物を含む混合物に酸素含有ガスを添加し、上記芳香族化合物のヒドロキシメチル基を酸化してホルミル基とし、芳香環を有するアルデヒド化合物を生成させる。
本工程における酸化反応により、上記原料芳香族化合物のヒドロキシメチル基はホルミル基に酸化され、芳香環を有するアルデヒド化合物が生成する。
本工程では、上記酸化工程後の反応液を冷却し、目的化合物であるアルデヒド化合物を結晶化する。当該反応液には、上記の通り、酸化反応後に一般的な後処理を施したものも含まれる。また、当該反応液をある程度濃縮してもよい。
本工程では、上記結晶化工程の結晶を母液から分離して回収する。分離手段は特に制限されず、濾過や遠心分離などの常法を用いることができる。
内容積100mLのオートクレーブ中、濃度が5質量%となるよう5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF,2.5g)をトルエン(47.5g)に添加し、更に4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル(4AA−TEMPO,0.106g,5−HMFに対して2.5モル%)と1N硝酸(2.07g)を加え、密封した。酸素含有ガスとして5容量%酸素ガスと95容量%窒素ガスの混合ガスを100mL/minの速度で反応液に流通させつつ、オートクレーブの出口部分の背圧弁を用いてオートクレーブ内の圧力を1.0MPaに調整した。反応液を500rpmで攪拌しつつ85℃で2.5時間反応させた。イチネンジコー社製の酸素濃度計で出口酸素濃度を測定し、酸素の消費が確認されなくなった時点を反応の終点とした。
反応後、Agilent社製のガスクロマトグラフ(カラム:DB−1701,検出器:FID)を用いて反応液を分析し、原料転化率、ジホルミルフラン(DFF)の収率、選択率、DFF生成速度、触媒回転数(TON)を算出した。なお、有機溶媒であるトルエンに対する硝酸の量の比が小さいため、水層と有機層を分離せずに反応液を希釈して分析した。また、DFF生成速度は、1モルの4AA−TEMPOが5−HMFを酸化することで1時間あたりに生じたDFFのモル数を表し、触媒回転数は、1モルの4AA−TEMPOが5−HMFを酸化することで生じたDFFのモル数を表す。結果を表1に示す。
また、反応液を氷浴で約1時間冷却した。冷却後の反応液を、ADVANTEC社のNo.5C濾紙とブフナー漏斗を使って減圧濾過し、結晶を回収した。得られた結晶をガスクロマトグラフィで分析したところ、純度98%超のDFFであることが確認された。また、DFFの回収率は72.4%であった。
上記実施例1において、酸素含有ガスの酸素濃度を10容量%に変更し、反応時間を1.5時間に変更した以外は同様にして反応を行ない、原料転化率などを算出した。結果を表1に示す。
上記実施例1において、溶媒をトルエンからアセトニトリルに変更し、反応時間を3時間に変更した以外は同様にして反応を行ない、原料転化率などを算出した。結果を表1に示す。
上記実施例1において、溶媒をトルエンから酢酸に変更し、反応時間を2時間に変更した以外は同様にして反応を行ない、原料転化率などを算出した。結果を表1に示す。また、反応後の反応液を上記実施例1と同様に氷浴で約1時間冷却したが、結晶の析出は認められなかった。
溶媒として有機酸溶媒である酢酸を用いた場合(比較例2)には、アセトニトリルを用いた場合に比べて結果は改善したが、目的化合物であるDFFの収率が83.7%であるなど、工業的な大量生産などのためにはまだ満足できるものではなかった。
それに対して溶媒として炭化水素溶媒であるトルエンを用いた場合(実施例1,2)には、収率や選択率が約95%を超えるなど、非常に良好な結果が得られた。
また、溶媒として炭化水素溶媒であるトルエンを用いた場合(実施例1)には反応液から目的化合物であるDFFの結晶が得られたが、溶媒として酢酸を用いた場合(比較例2)では反応液を冷却するのみではDFFは析出しなかった。
上記実施例1において、実施規模を100倍にして反応を行なった。但し、酸素含有ガスの流量は、圧力損失を考慮して3L/minとした。また、実施規模から酸素の消費速度が実施例1,2に比べて早いため、酸素含有ガスの酸素濃度を5〜18容量%の範囲で調整した。結果を表2に示す。
また、濾液を濃縮し、有機層に溶解していたDFFを更に回収した。生成した反応液中のDFFに対する回収DFFの合計回収率は、90.7%であった。
Claims (6)
- 芳香環を有するアルデヒド化合物を製造するための方法であって、
炭化水素溶媒中、ヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ニトロキシルラジカル化合物および窒素酸化物を混合する工程、および、
上記混合工程で得られた混合物に酸素含有ガスを添加し、上記芳香族化合物のヒドロキシメチル基を酸化する工程を含むことを特徴とする方法。 - 更に、上記酸化工程後、反応液を冷却して上記アルデヒド化合物を結晶化する工程、および、
上記結晶化工程で生じた上記アルデヒド化合物の結晶を母液から分離する工程を含む請求項1に記載の方法。 - 上記芳香環が複素芳香環である請求項1または2に記載の方法。
- 上記ニトロキシルラジカル化合物がピペリジン−1−オキシル誘導体である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 上記窒素酸化物が、硝酸、硝酸塩、一酸化窒素および二酸化窒素から必須的になる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 上記炭化水素溶媒が芳香族炭化水素溶媒である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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