JP2019104247A - 塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム - Google Patents

塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムに関するものであり、少なくとも片側の表層にポリエステルA層を有するフィルムであって、前記ポリエステルA層の表面の5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm2)と平均間隔RSmを特定範囲に制御することにより、塗工品位、加工時の剥離性、搬送性を有することから、機能性材料等を塗工して機能性材料層の薄膜(機能性薄膜)を得るための工程基材として特に適している塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムに関するものである。【解決手段】少なくとも片側の表層にポリエステルA層を有するフィルムであって、前記ポリエステルA層の表面における5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm2)が500以上4000以下、かつ平均間隔RSmが15000nm以上35000nm以下である塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムに関するものである。
熱可塑性樹脂フィルムは、各種特性に応じて、光学用途、包装用途、工業材料用途などで幅広く使用されている。また、工業材料用途においては、半導体や回路部材を製造するための工程基材として熱可塑性樹脂フィルムが使用されており、例えば、回路部材形成の際に使用される離型フィルム(例えば、特許文献1や特許文献2)や磁性シート等の製造工程におけるスラリー状の機能性材料を塗工する基材フィルム(例えば、特許文献3)が提案されている。
特開2016−97522号公報 特開2016−175229号公報 特開2014−162163号公報
しかしながら、特許文献1に見られるようなフィルムの場合、大粒子径の粒子を基材層と表層の両層に添加し離型性を向上させているが、粒子径が大きく、両層へ粒子を添加しているため、表面粗さの制御が難しく、表面に粗大な突起ができやすくなりスラリー等を塗工する際に塗工欠点ができやすくなったり、大粒子径の粒子が基点となり加工時の張力で破断しやすくなる場合があった。
特許文献2や特許文献3に見られるようなフィルムの場合、表面の凹凸形状が不足しており、塗工したスラリー等の機能性薄膜を剥離し、重ねて焼成した後に、焼成機能性薄膜を剥離する際の剥離性が不十分となる場合があった。
本発明では上記の欠点を解消し、機能性材料等を塗工して機能性材料層の薄膜(機能性薄膜)を得るための工程基材として使用した際に、塗工性、加工時の剥離性、搬送性を良好とすることが可能なフィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 少なくとも片側の表層にポリエステルA層を有するフィルムであって、前記ポリエステルA層の表面における5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm)が500以上4000以下、かつ平均間隔RSmが15000nm以上35000nm以下である塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
(2) 前記ポリエステルA層表面の平均傾斜勾配SΔa−1(rad)が、0.25rad以上0.45rad以下である(1)に記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
(3) 前記ポリエステルA層表面で測定したエア抜け時間が0.5秒以上600秒以下である(1)または(2)に記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
(4) フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとした場合に、フィルムを180℃で5分熱処理を行った後の方向X、方向Yのいずれにおいても引裂抵抗(N/mm)が2N/mm以上20N/mm以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
(5) フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとした場合に、フィルムを180℃で30分熱処理を行った後の方向X、方向Yのいずれにおいても熱収縮率(%)が−1.0%以上7.0%以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
(6) 機能性材料スラリーをシート化する際の工程用途に用いられる(1)〜(5)のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムのA層表面に樹脂層を設けた積層体。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、塗工性や搬送性を維持しながら、加工後の剥離性を良好にできることから、機能性材料層の薄膜(機能性薄膜)を得るための塗工工程の基材として使用した際に、機能性薄膜の特性、品位を向上させる効果を奏する。
表面粗さ曲線を模式的に示す図である。
以下、本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
本発明は塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムに関する。ここで、本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムを構成するポリエステル系樹脂とは、主鎖における主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル系樹脂は、通常ジカルボン酸あるいはその誘導体とグリコールあるいはその誘導体を重縮合反応させることによって得ることができる。
本発明では、耐熱性、寸法安定性、経済性の点から、ポリエステルを構成するグリコール単位の60モル%以上がエチレングリコール由来の構造単位であり、ジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸由来の構造単位であることが好ましい。なお、ここで、ジカルボン酸単位(構造単位)あるいはジオール単位(構造単位)とは、重縮合によって除去される部分が除かれた2価の有機基を意味し、要すれば、以下の一般式で表される。
ジカルボン酸単位(構造単位): −CO−R−CO−
ジオール単位(構造単位): −O−R’―O−
(ここで、R、R’は二価の有機基)
なお、トリメリット酸単位やグリセリン単位など3価以上のカルボン酸あるいはアルコール並びにそれらの誘導体が含まれる場合は、3価以上のカルボン酸あるいはアルコール単位(構造単位)についても、同様に、重縮合によって除去される部分が除かれた3価以上の有機基を意味する。
本発明に用いるポリエステル系樹脂を構成する、グリコールあるいはその誘導体としては、エチレングリコール以外に、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。中でも、耐熱性、取り扱い性の点で、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。
また、本発明に用いるポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸あるいはその誘導体としては、テレフタル酸以外には、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体としてはたとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。中でも、耐熱性、取り扱い性の点で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および、それらのエステル化物が好ましく用いられる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、少なくとも片側の表層にポリエステルA層を有するフィルムであって、前記ポリエステルA層の表面が5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm)が500以上4000以下であることが重要である。ここで、ポリエステルA層表面で測定される5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm)は、以下の通り求められる値とする。フィルム長手方向を方向X、幅方向を方向Yとして、方向Xおよび方向Yの中央部から、長さ4.0cm×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、触針法の高精細微細形状測定器(3次元表面粗さ計)を用いてJIS B 0601(2001年)に準拠して、下記条件にてポリエステルフィルムの表面形態を測定する。
・測定装置 :3次元微細形状測定器((株)小坂研究所製、ET−4000A型)
・解析機器 :3次元表面粗さ解析システム(TDA−31型)
・触針 :先端半径0.2μmR、径2μm、ダイヤモンド製
・針圧 :100μN
・測定方向 :フィルム長手方向、フィルム幅方向を各1回測定後平均
・X測定長さ:1.0mm
・X送り速さ:0.1mm/s(測定速度)
・Y送りピッチ:5μm(測定間隔)
・Yライン数:81本(測定本数)
・Z倍率 :20倍(縦倍率)
・低域カットオフ:0.02mm
・高域カットオフ:R+Wmm(粗さカットオフ値)R+Wとはカットオフしないことを意味する。
・フィルタ方式:ガウシアン空間型
・レベリング:あり(傾斜補正)
・基準面積 :1mm
上記条件にて測定を行い、後述する解析システムを用いて5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)を算出した。ここでいう、5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)は、5nm以上の山の数を表し、粗さ曲面の中心面に平行な平面を中心面の上下5nmに設け、上下の2平面とも山と認めた山数を計測し、0.4mm面積あたりに換算して表したものである。なお、測定は5回行い、10mm×10mmの範囲で、同じ位置を2回以上測定せず、毎回位置を変更して測定し、得られた5回のそれぞれの測定値の平均値を採用する。
セラミックなどの各種機能性薄膜の製造方法としては、セラミックなどの機能性材料と有機材料を混練させた機能性材料スラリーを基材フィルムへ塗工し、乾燥後にスラリー乾燥膜を基材フィルムから剥離することでグリーンシートを作製し、グリーンシートを高温で焼結させることで、有機材料を飛ばしてセラミック材料の重量比率を高めたり、セラミックの配向を進行させて機能性薄膜の高機能化を行う方法が一般的に用いられる。これらの製造方法の中で、焼結プロセスにおいては高温で長時間の加工となり生産時間や製造コストに対する影響が大きいことから、グリーンシートを積層して焼成プロセスを行うことで、1回あたりの焼成プロセスで得られる機能性薄膜の面積を大きくし、生産時間を短縮したり、製造コストを抑制する方法がしばしば用いられる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、フィルム上にスラリーを塗工する際の塗工品位と、乾燥後に基材からスラリー乾燥膜を剥離してグリーンシートを作成する際の重剥離性を両立する観点から、ポリエステルA層の5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)を500個/0.4mm以上4000個/0.4mm以下であることが重要である。ポリエステルA層の5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)を4000個/0.4mm以下とすることで、機能性材料を含有するスラリーを塗工する際に塗工欠点や塗工ムラを少なくすることができ、良好な塗工品位を得ることが可能となる。また、ポリエステルA層の5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)を500個/0.4mm以上とすることで、スラリー乾燥膜とポリエステルフィルムの界面を凹凸構造にすることでアンカー効果が生じて重剥離化が起こり、スラリー乾燥膜の剥離工程前の剥がれに起因するシワ発生を抑制することができる。5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)が4000個/0.4mmを超えた範囲となる場合は、塗工欠点が増えて機能性薄膜の各種特性が低下したり、500個/0.4mm未満であると、スラリー乾燥膜とポリエステルフィルムの界面のアンカー効果が不十分となり、スラリー乾燥膜の剥離工程前に剥がれが起こり、シワが発生する場合がある。スラリーの塗工品位をより良好とする観点からは、5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)は3200個/0.4mm以下が好ましく、2900個/0.4mm以下がより好ましい。また、スラリー乾燥膜のシワ抑制効果をより高める観点からは、5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)は800個/0.4mm以上が好ましく、1000個/0.4mm以上がより好ましい。すなわち、スラリーの塗工品位とスラリー乾燥膜のシワ抑制効果の両立の観点からは、800個/0.4mm以上3200個/0.4mm以下であると好ましく、1000個/0.4mm以上2900個/0.4mm以下であるとより好ましい。
また、本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、前記ポリエステルA層の表面における平均間隔RSmが15000nm以上35000nm以下であることが重要である。ここで、ポリエステルA層表面の平均間隔Rsmは、以下の通り求めた値とする。5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)と同様に測定し、後述する解析システムを用いて、得られた5回の測定値の平均値をRsmとして採用する。
ここで、本発明におけるRSmは、JIS B 0601(2001年)に従って求められる値であり、基準長さにおける粗さ曲線要素間の長さの平均を表す。すなわち、図1における基準長さ(Lr)において、粗さ曲線のピーク数をm、各ピーク間の距離をW、W、W・・・Wとするとき、下記式(1)に示すようにW〜Wの長さの総和を粗さ曲線のピーク数mで除算することにより、RSmを求めることができる。RSmはフィルム表面の凸凹の間隔を表す物性値であり、RSmが小さくなるほどポリエステルA層表面の凸と凸の各ピーク間の距離が小さくなるため、凹の形状が鋭利になる。グリーンシート表面はポリエステルフィルムの面形状を転写した反転形状になることから、ポリエステルフィルムの凹の形状が鋭利になるとグリーンシートの凸の形状が鋭利になり、グリーンシートを積層して焼成する際にグリーンシート同士の凸ピーク周辺の接触面積が小さくすることができる。このことにより、グリーンシートを重ねて焼成する際の焼成工程での固着(焼付け)を抑制し、焼成したグリーンシートを1枚ずつ剥がして機能性薄膜を得る際に機能性薄膜の割れを抑制することが可能となる。
グリーンシートを積層焼成後の固着(焼付け)抑制の観点からは、SRmは32000nm以下が好ましく、28000nm以下がより好ましい。
また、SRmが小さすぎる場合は、スラリーを塗工する際にスラリーが細かな凹凸の間にうまく入りこまなくなるため、塗工性の観点から15000nm以上であることが必要である。
したがって、本発明の、塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、SPcやRSmが前述の範囲を満たすポリエステルA層の表面に塗工を行う用途に好適に用いることができる。
本発明の、塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、ポリエステルA層の表面における凹ピーク個数SPd(個/0.4mm)が、400以上3000以下であることが、グリーンシートを積層焼成後の固着(焼付け)抑制の観点から好ましい。凹ピーク個数を400以上とすることで、表面形状を転写したグリーンシートの凸ピーク個数を増加させることができ、グリーンシートの凸ピーク以外の面の接触面積を減少させることができるため、グリーンシートの積層焼成後の固着(焼付け)を抑制することができる。SPd(個/0.4mm)は、固着(焼付け)抑制効果を高める観点から、480以上がより好ましく、720以上が特に好ましい。また、スラリー塗工性の観点からは、SPd(個/0.4mm)は3000以下であることが好ましい。
Figure 2019104247
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルA層の表面を、5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)、平均間隔Rsmを上述の範囲とする方法としては特に限られるものでは無いが、大粒子径粒子を高濃度でポリエステルA層中に均一に分布させること、前記ポリエステルA層の表面の最大高さSRmax(μm)を6μm以上9μm以下とすることなどが挙げられる。
ここで、最大高さSRmaxとはJIS B 0601(2001年)に従って求められるものであり、曲面の平均面に平行な2平面で曲面をはさんだときの間隔をあらわす物性値であり、値が大きい程、凹凸の山と谷の間隔が大きくなるため、9μmより大きい場合には、機能性材料スラリーを塗工する際に塗工欠点が発生しやすくなり、6μm未満である場合には、スラリー乾燥膜にシワが発生したり、グリーンシートを積層焼成した後の固着(焼付け)が起こり、焼成したグリーンシートを1枚ずつ剥がして機能性薄膜を得る際に割れ不具合が生じる場合がある。
ここで、使用する粒子としては特に限定されるものではないが、たとえば、無機粒子としては、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、アルミノシリケート、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミ、ベンガラ、モリブデンレッド、カドミウムレッド、赤口黄鉛、クロムパーミリオン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルーなどの青色顔料、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレット、二酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸亜鉛、カーボンブラック、黒色酸化鉄など、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物、縮合アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、ジオキサジン、イソインドリノン、キノフタロン、アンスラキノンなどを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、耐熱性湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。剥離性、経済性の観点からは、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、アルミノシリケートが特に好ましく用いられる。なお、これらの外部添加粒子は二種以上を併用してもよい。粒子の形状は特に限定されるものでは無いが、不定形であると凝集による粗大突起が多くなりやすく、球状や針状であると凸形状部分が少ないため、5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)や平均間隔Rsm(nm)を上述の範囲とするためには多量に添加が必要となり、粒子が滑落し、製造工程を汚染しやすくなったり、経済性の観点から不利となる場合がある。立方体などの多面系状の粒子であれば、凸形状が多く5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)を上述の範囲としやすくなるため、剥離性、経済性の観点から好ましく用いられる。
機能性材料スラリーを塗工する際に塗工欠点や塗布斑を少なくし、塗工品位を良好としつつ、グリーンシートを積層焼成後の固着(焼付け)抑制を良好とする観点から、本発明における粒子の含有量は、ポリエステルA層全体を100質量%として5質量%以上30質量%以下含有することが好ましいが、剥離性や剥離時のフィルム破れを防止する観点から、ポリエステルA層全体を100質量%として10質量%以上20質量%以下含有するとより好ましい。
また、本発明に用いられる粒子は、剥離性、引裂抵抗の観点から、大粒子径粒子であることが好ましい。大粒子径粒子は、平均粒子径が、3.0μm以上8μm以下であれば好ましく、3.5μm以上7μm以下であればより好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、D=ΣDi /N(Di :粒子の円相当径、N:粒子の個数)で表される数平均径Dのことを指す。粒子の添加方法としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂と粒子を混合したマスターバッチを押出機に供給し溶融押出する方法などが挙げられる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、ポリエステルA層表面の平均傾斜勾配SΔa−1(rad)が、0.25rad以上0.45rad以下であることが好ましく、0.26rad以上0.35rad以下であるとより好ましい。ここでいう、平均傾斜勾配SΔa−1(rad)は、以下の通り求められる値とする。5nm以上の凸ピーク個数Pc(個/0.4mm)と同様に測定し、後述する解析システムを用いて、得られた5回の測定値の平均値を採用する。
粗さ曲面の中心面上に直行座標軸X、Y軸を置き、中心面に直行する軸をZ軸とし、粗さ曲面をf(x、y)、基準面の大きさLx、Lyとしたとき下記式(2)で与えられ、この値が大きいほど急峻な面を多く含む表面であり、0.45radより大きい場合、同じ凸個数であると、凸間隔が大きくなり、凸部間の平坦な高密着領域の面積が増加し重剥離化するため、機能性薄膜を得る際に剥離が不十分となる場合がある。0.25rad未満である場合、凸形状がなだらかになるので、グリーンシートを複数枚重ねて焼成を行う工程でグリーンシート間の接触面積が増え、機能性薄膜同士が焼付き、剥離が困難となる場合がある。
Figure 2019104247
ポリエステルA層表面の平均傾斜勾配SΔa−1(rad)を、0.25rad以上0.45rad以下の範囲とする方法としては特に限定されないが、例えば、ポリエステルA層に粒子を高濃度に添加し、かつフィルムの製造工程における、縦延伸工程と横延伸工程において、縦延伸倍率と横延伸倍率の両方の延伸倍率を2.4倍以上2.8倍以下とする方法が挙げられる。縦延伸倍率と横延伸倍率の両方の延伸倍率を上記範囲とすることで、粒子が高濃度に分布するため、急峻な面が多い表面を得ることが可能となる。しかしながら、縦延伸倍率と横延伸倍率の両方の延伸倍率を一般的な延伸条件(ポリマーのガラス転移温度の+10℃以上で延伸する条件)で2.4倍以上2.8倍以下とすると、ポリエステル鎖に配向がつきにくく、ポリエステルフィルムの機械強度が低下し、フィルムの生産性、塗工工程に用いた際の搬送性や寸法安定性が劣る可能性がある。縦延伸倍率と横延伸倍率の両方の延伸倍率を2.4倍以上2.8倍以下の範囲としながら配向をつけるためには、縦延伸温度をA層のポリマーのガラス転移温度の+8℃〜−5℃の範囲とし、横延伸温度をA層のポリマーのガラス転移温度の+10℃〜−5℃の範囲としたりする方法などが好適な方法として挙げられる。また、各種粒子を含有したポリエステル系樹脂原料を押出機から押し出す際に、従来よりも高温の押出温度(ポリエステルA層を構成する主成分のポリエステル系樹脂の融点より40℃以上60℃以下高い温度)にしたり、押出機のスクリュー形状についてL/D(スクリューの長さLを、スクリュー径Dで除した値)を25以上として押出機の混練を緩やかにしたりする方法によっても、粒子の角部形状を維持することができ、平均傾斜勾配を0.25rad以上0.45rad以下の範囲とする方法として好ましく用いられる。なお、ポリエステル系樹脂原料を押出機から押し出す際に、従来よりも高温の押出温度(ポリエステルA層を構成する主成分のポリエステル系樹脂の融点より40℃以上60℃以下高い温度)にする場合は、ポリエステル系樹脂の分解懸念があることから、ポリエステル系樹脂の固有粘度を0.8以上とする方法との組合せが好ましく用いられる。他には、ポリエステルA層の主成分となるポリエステル系樹脂より、融点が30℃以上60℃以下低いポリエステル系樹脂をポリエステルA層全体100質量%に対して5質量%以上45質量%以上含む構成とすることで、粒子近傍に存在する融点の低いポリエステル系樹脂がフィルム製造中の熱処理により変形し、粒子に起因するポリエステルA層の凸ピークが鋭利になり、平均傾斜勾配を0.25rad以上0.45rad以下の範囲とする方法が挙げられる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、エア抜け時間が0.5秒以上600秒以下であることが好ましく、1秒以上550秒以下であるとより好ましく、3秒以上500秒以下であるとより好ましい。ここでいうエア抜け時間は以下の方法で求めた値とする。(株)東洋精機製デジベック平滑度試験器を用いて、フィルムのポリエステルA層表面を吸気口に合わせて試料台にセットし、フィルム上部に荷重200gの重りをのせ、真空ポンプにて真空度を383mmHgに設定した後に真空ポンプを停止させ、真空度が380mmHgから379mmHgまで減少する時間(秒)をエア抜け時間とした。測定はランダムに10cm×10cmでフィルムを切り取り、同じ場所は測定せず、10回測定した測定値の平均値を採用した。エア抜け時間が600秒より長い場合、フィルムの表面形状が平滑であったり、凹凸形状が潰れやすくなっていることが考えられ、焼成機能性薄膜を得る際に剥離性が不十分であったりする場合がある。エア抜け時間が0.5秒未満である場合、フィルムの製造工程でフィルムを巻き取る際やフィルムロールを運搬する際に巻きずれが起こりやすくなり、生産性に劣る場合がある。
ポリエステルA層表面のエア抜け時間を0.5秒以上600秒以下とする方法としては特に限定されないが、たとえば、ポリエステルA層に前述の粒子を高濃度に添加した後、延伸を行う場合、粒子の周辺にボイドが多量に発生するが、粒子の周辺にボイドが多く存在すると、エア抜け時間を測定の際や、フィルム製造工程でフィルムをロール状に巻き取る際にボイドが潰れ、フィルム表面の凹凸形状が潰れてしまう場合がある。そのため、粒子周辺のボイドを少なくする観点から、ポリエステルA層に、ポリブチレンテレフタレートとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体を10重量%以上20重量%以下含むことが挙げられる。柔軟なポオキシアルキレングリコールが特定量含まれることにより、延伸時に粒子に追従し、ボイドができにくくなる。本発明のフィルムに用いられるポリオキシアルキレングリコールの構造は特に限定されないが、耐熱性と結晶性の観点からポリテトラメチレングリコールが好ましく、また、ポリエステルのグリコール成分として共重合されていることが好ましい。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとした場合に、フィルムを180℃で5分熱処理を行った後の方向X、方向Yのいずれにおいても引裂抵抗(N/mm)が2N/mm以上20N/mm以下であることが好ましい。また、180℃で30分熱処理を行った後の方向X、方向Yのいずれにおいても熱収縮率(%)が−1.0%以上7.0%以下であることが好ましい。加熱後の引裂抵抗(N/mm)が4N/mm以上18N/mm以下、熱収縮率(%)が−0.7%以上5%以下であるとより好ましく、加熱後の引裂抵抗(N/mm)が6N/mm以上16N/mm以下、熱収縮率(%)が−0.5%以上4%以下であると更に好ましい。
本発明における、180℃5分間熱処理とは、機能性材料などの塗工工程の基材としてフィルムを使用した際に、機能性材料スラリーの乾燥、機能性向上のために生じるフィルムへの加熱を模した処理であり、たとえば、180℃に設定した熱風循環方式のコンベアオーブンにフィルムを5分間かけて搬送する処理を指す。また、フィルムを搬送する際には、2枚の金属枠でフィルムを挟み込んだ後、金属枠を金属クリップで固定することで、フィルムが直接コンベアに接触しないようにして行うものとする。
180℃で5分熱処理した後の引裂抵抗(N/mm)が20N/mmより大きい場合、機能性材料などの塗工工程の基材としてフィルムを使用した際、機能性材料スラリーを塗工したフィルムごと打ち抜き加工をして、機能性薄膜をシート化するような工程で、打ち抜き性が劣る場合がある。引裂抵抗(N/mm)が2N/mm未満である場合、フィルムが破断しやすく、機能性材料を塗工する際の加工張力で破断したりしやすくなる場合がある。
180℃×30分熱処理を行った後の方向X、方向Yの熱収縮率(%)が7.0%より大きい場合、機能性材料などの塗工工程の基材としてフィルムを使用した際、機能性薄膜の平面性が著しく悪化したり、クリップ外れなどが起こりやすくなり、搬送性が劣る場合がある。−1.0%未満である場合、高倍率延伸により配向させたり、配向がつかないような原料を使用したりする必要があり、経済性や生産性の面で不利になる場合がある。
フィルムを180℃で5分熱処理を行った後の引裂抵抗(N/mm)と180℃で30分熱処理を行った後の熱収縮率(%)を前述の範囲とする方法としては特に限られるものでは無いが、フィルムの組成(融点、2種類以上の原料のアロイ)、製造条件(二軸延伸処理、および当該処理における延伸温度や熱処理温度)による調整を行う方法などが挙げられる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、機能性材料スラリーの乾燥時の耐熱性の観点から、二軸配向フィルムであることが好ましい。二軸配向フィルムとする方法としては、二方向に逐次、もしくは同時に延伸を行う方法などが挙げられる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、機能性材料スラリーを塗工してシート化する工程の基材用途に使用した際に、塗工性、機能性薄膜の剥離性、打ち抜き性を良好とすることができるため、フェライトシートやセラミックシートなどの機能性材料スラリーを塗工してシート化する工程の基材用途として好ましく使用できる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、前記ポリエステルA層のみからなる単層ポリエステルフィルムであってもよく、ポリエステルA層の他に他の層を積層されてなる積層ポリエステルフィルムであってもよい。
本発明における、機能性薄膜を構成する機能性材料とは、材料の持つ様々な物理的特性、化学的特性に基づき機能を発現させることを目的として各種製品に用いられる材料を指し、感光性や感熱性などの特徴を有する高分子材料、接着剤、粘着剤、光学材料、セラミック、金属材料、磁性材料などが例として挙げられる。
感光性や感熱性などの特徴を有する高分子材料としては、紫外線やレーザーなどの光、あるいは熱で硬化するアクリル系樹脂などが挙げられ、各種レジスト材料や印刷インク、プラスチック材料の表面保護用途などで好ましく用いられる。
接着剤、粘着材としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂などの材料が挙げられ、半導体チップの封止材や導電性接着剤、ディスプレイなどの電子部材のシール材、半導体チップ製造時のダイシングテープ、メッキのマスキングテープなどの加工用途などで好ましく用いられる。
光学材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂など透明性、位相差特性などに特徴のある材料が挙げられ、光ディスク、フラットパネルディスプレイなど情報の記録、表示、伝送を担う光学材料向け用途などで好ましく用いられる。
セラミックとしては、チタン酸バリウムやアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、ゼオライトなど、誘電特性や耐熱性に特徴のある材料が挙げられ、スマートフォンなど各種デジタル電子機器で使用される、コンデンサやインダクタ、回路基板材料用途などで好ましく用いられる。
金属材料としては、銀、胴、鉄など、導電性、放熱性、電磁波遮蔽性、バリア性に特徴のある材料が挙げられ、金属転写箔用途などで好ましく用いられる。
磁性材料としては、フェライトやパーマロイなど、磁界中で磁力が発生したり変形したり、あるいは電気抵抗が変化する特徴を有する材料が挙げられ、インダクタやノイズ抑制、無線通信、無線給電用途などで好ましく用いられる。
本発明における、機能性材料スラリーとは、機能性材料を各種有機溶剤(トルエン、メチルエチルケトン、エタノールなど)、ポリマー(ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル系樹脂など)、可塑剤などとともに混練して、機能性材料が分散したペースト状物であり、基材フィルムへ塗工、乾燥させ、必要に応じて焼成などの工程を経ることで、品位の良好な機能性薄膜を得ることができる。
本発明の塗工工程の基材として用いられるフィルムを用いた好ましい態様として、本発明のフィルムのSPcやRSmが前述の範囲を満たすポリエステルA層の表面に樹脂層を有する積層体が挙げられる。SPcやRSmが前述の範囲を満たすポリエステルA層の表面に樹脂層を設けた積層体とすることで、前記樹脂層の表面に機能性材料スラリーを塗工してシート化する工程の基材用途に使用した際、塗工性、機能性薄膜の剥離性、打ち抜き性をさらに良好とすることができるため好ましい。剥離性の観点から、樹脂層は後述する離型剤を含有することがより好ましい。樹脂層を設けた積層体耐熱性、離型安定性の観点から、樹脂層中にはメラミン系樹脂を含有することが好ましく、その含有量は樹脂層全体に対して50質量%以上であることがより好ましい。
前記樹脂層の厚みは、8nm以上90nm以下であると、本発明のフィルムのA層の表面形状の効果を十分に得られつつ、樹脂層の効果も得られるため好ましい。メラミン系樹脂としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂やメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ変性メラミンホルムアルデヒド樹脂等のメラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素メラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂などが挙げられるが、メラミンホルムアルデヒド樹脂が好ましく、適度な離型性を有することからメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が特に好ましく用いられる。また、本発明の樹脂層には離型安定性の観点から、フッ素化合物、長鎖アルキル化合物およびワックス化合物などの離型剤を含有することが好ましい。離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。
本発明に用いることができるフッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。本発明のポリエステルフィルムに機能性材料スラリーを塗工してシート化する工程の基材用途に使用した際、塗工工程で高い熱負荷がかかるため、耐熱性、汚染性を考慮すると、フッ素化合物は高分子化合物であることが好ましい。
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。長鎖アルキル化合物は高分子化合物であると、機能性材料スラリーを塗工してシート化する工程の基材用途に使用した際に、シート化した機能性材料スラリー膜への離型層由来の成分が転着することを抑制できるため好ましい。
本発明に用いることができるワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
これら離型剤を樹脂層の表面に均一に分散させることによって、樹脂層上に積層、剥離するスラリー乾燥膜との密着力、剥離力を適正な範囲とすることができる。離型剤としては、長鎖アルキル化合物を用いると、広範囲に剥離力を調整することが出来る点で、本発明の用途上好ましい。
また、本発明の樹脂層は、製膜性、延伸追従性の観点から、メラミン樹脂、離型剤の他にバインダー樹脂を含有することが好ましい。バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましく用いられ、特にアクリル系樹脂が好ましく用いられる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体または共重合体、側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体があげられ、硬化性官能基としては水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などがあげられる。なかでもアクリルモノマーと側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有するアクリル酸エステルが共重合されたアクリルモノマー共重合体が好ましい。
次に本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムの具体的な製造方法の例について記載するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
ポリエステルA層とポリエステルB層とを有する積層ポリエステルフィルムとする場合、まず、ポリエステルA層に使用するポリエステルAとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂(a)とポリエチレンテレフタレート樹脂(a)に平均粒子径3.5μmのシリカ粒子を含有させた粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(a‘)、およびポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(a“)を所定の割合で計量する。また、ポリエステルB層に使用するポリエステルBとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂(a)とポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(a“)を使用する。テトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(a“)のように、ポリエステルA層の主成分となるポリエステル系樹脂より低融点の樹脂を特定量含有させることで、フィルム表面の平均傾斜勾配を所望の範囲とすることができる。また、安定した離型性を確保するため、ポリエステルA層に離型剤を添加してもよい。ポリエステルA層に添加する離型剤としては、例えば、フッ素化合物やワックス化合物などが挙げられる。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよいが、取り扱い性や装置の汚染等の観点から、ワックス化合物が好ましく用いられる。本発明のポリエステルA層に用いることができるワックスとしては、前述の離型層に用いられるワックスが挙げられる。
そして、混合したポリエステル樹脂を単軸押出機に供給し溶融押出する。この際、樹脂温度は265℃〜315℃に制御することが好ましく、フィルム表面の平均傾斜勾配を所望の範囲とする観点からは、295℃〜315℃(すなわち、ポリエステルA層の主成分となるポリエステル系樹脂の融点より40℃以上60℃以下の温度)が好ましい。また、高温でのポリエステル系樹脂の分解を抑制する観点から、ポリエステルA層を構成するポリエステル系樹脂は、いずれも固有粘度が0.8以上であることが好ましい。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
本発明のポリエステルフィルムは、SPcやRSm、フィルム表面の平均傾斜勾配を所望の範囲にする観点から、押出機のスクリューのL/Dは25以上が好ましく、28以上がより好ましい。
本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムとすることが好ましい。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
かかる延伸方法における延伸倍率としては、長手方向に2.4倍以上2.8倍以下が好ましく採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また長手方向の延伸温度は、70℃以上100℃以下とすることが好ましく、70℃以上100℃以下かつポリマーのガラス転移温度の+8℃〜−5℃であることがより好ましい。また、幅方向の延伸倍率としては、好ましくは2.4倍以上3.8倍が採用される。幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。幅方向の延伸温度は80℃以上150℃以下とすることが好ましく、80℃以上150℃以下かつポリマーのガラス転移温度の+10℃〜−5℃であることがより好ましい。さらに二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理はオーブン中で定長もしくは順次収縮させながら1〜30秒間熱処理を行う。この熱処理工程では工程前半からの昇温条件を段階的に設定することが好ましく、熱処理前半温度を熱処理後半温度より−30℃以上、熱処理後半温度より−15℃以下とし、熱処理後半温度140〜245℃とする条件が好ましい。さらに熱収縮率を低減させるために、熱処理後に、140℃以上180℃未満で徐冷を行うことも好ましく用いられる。
さらに、安定した離型性を確保するため、離型層をインラインにてコーティングさせることもできる。コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際、離型層の厚みとしては0.02μm以上0.1μm以下とすることが好ましい。また、離型層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。
(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
(2)固有粘度
公知のポリマー組成分析手法(FT−IR、NMRなど)によりポリマーA層がポリエステルである傾向が確認された場合においては、ポリマーA層をオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価した。
(3)粒子含有層の特定
ポリマー1gを1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ上澄み液を取り除くことで、層中の粒子の有無を確認した。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。
(4)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよび各層の厚みを求めた。
(5)凸ピーク個数SPc、平均間隔Rsm、平均傾斜勾配SΔa−1、最大高さSRmax
触針法の高精細微細形状測定器(3次元表面粗さ計)を用いてJIS B 0601(2001年)に準拠して、下記条件にてポリエステルフィルムの表面形態を測定した。測定は、ポリエステルA層側の表面について行った
・測定装置 :3次元微細形状測定器((株)小坂研究所製、ET−4000A型)
・解析機器 :3次元表面粗さ解析システム(TDA−31型)
・触針 :先端半径0.2μmR、径2μm、ダイヤモンド製
・針圧 :100μN
・測定方向 :フィルム長手方向、フィルム幅方向を各1回測定後平均
・X測定長さ:1.0mm
・X送り速さ:0.1mm/s(測定速度)
・Y送りピッチ:5μm(測定間隔)
・Yライン数:81本(測定本数)
・Z倍率 :20倍(縦倍率)
・低域カットオフ:0.2mm
・高域カットオフ:R+Wmm(粗さカットオフ値)R+Wとはカットオフしないことを意味する。
・フィルタ方式:ガウシアン空間型
・レベリング:あり(傾斜補正)
・基準面積 :1mm
上記条件にて測定を行い、その後付属の解析システム(TDA31)を用いて算出した。5nm以上の凸ピーク個数SPc及び平均間隔RSmの解析については、ピークカウント解析を使用し、中心レベル0nm、上下レベル間隔5nm、上下レベル間隔固定の条件にて算出した。また、平均傾斜勾配SΔa−1及び最大高さSRmaxについては、3D粗さパラメータ解析を用いて算出した。なお、測定は5回行い、10mm×10mmの範囲で、同じ位置を2回以上測定せず、毎回位置を変更して測定し、得られた5回のそれぞれの測定値の平均値を採用した。
(6)エア抜け性
(株)東洋精機製デジベック平滑度試験器を用いて、フィルムのポリエステルA層表面を吸気口に合わせて試料台にセットし、フィルム上部に荷重200gの重りをのせ、真空ポンプにて真空度を383mmHgに設定した後に真空ポンプを停止させ、真空度が380mmHgから379mmHgまで減少する時間(秒)をエア抜け時間とした。測定はランダムに10cm×10cmでフィルムを切り取り、同じ場所は測定せず、10回測定した測定値の平均値を採用した。
(7)引裂抵抗
A4サイズのフィルムを、A4サイズで四辺1cm幅以外がくり抜かれた厚み2mmのアルミニウム枠2枚で挟み込んだ後、アルミニウム枠を金属クリップで固定したサンプルを準備した。その後、180℃に設定したコンベア式オーブン(フジマック製FGJOA9H)にて、オーブン通過時間が5分になるように設定し、フィルムの熱処理を行った。上記方法によって得られた180℃5分間加熱後のフィルムについて、フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとして、フィルムを幅50mm×長さ64mmに切り出し、幅中央位置の端部から長さ方向に13mmの切れ込みを入れ、試験片サンプルを作成した。このサンプルを軽荷重式引き裂き試験機(東洋精機(株)製)を用いて、JIS K−7128−2−1998に従って測定した。幅中央位置の長さ方向の残り51mmを引き裂いたときの抵抗値を読み取り、引裂抵抗とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
(8)熱収縮率
フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとして、方向Xおよび方向Yに対して長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して180℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
(9)塗工性
軟磁性フェライト粉末(平均粒子径0.7μm)100部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「エスレック BM−2」)30部、可塑剤(フタール酸ジオクチル)5部、トルエン/エタノール混合溶媒(混合比率:6:4)200部よりなるフェライトスラリーをフィルムのA層上(離型層を設けている場合は離型層上)に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥条件は100℃×5分とし、フィルム上にスラリー乾燥膜(フェライト系スラリーを乾燥して得られた層)を作製した。A4サイズのフィルムの長手方向および幅方向の中央部から、長手10×幅10cmの寸法において、フェライトスラリーをフィルムのA層上(離型層を設けている場合は離型層上)上に塗工した状態を観察し、下記判定基準で評価した。ここで、塗工ムラとはスラリー塗工直後のスジ等の発生や乾燥後にフィルムから剥離した薄膜シートにおいて、長手方向および幅方向に任意で5点ずつ測定した薄膜シート厚みの最大厚みと最小厚みの差が1.5μm以上であることを示す。また、薄膜シートの厚みは(4)フィルム厚みの測定方法と同様にして測定した。また、塗工欠点とは、塗工の抜け等により発生した針先状の微少な穴のことであり、ここでは、フィルム側から蛍光灯を照らして、塗工したすべての薄膜シート面を目視で検査し、穴の有無を判断し、下記基準にてC以上を合格とした。
A:10枚塗工テストを行い、塗工ムラ、または欠点の発生なし。
B:10回塗工テストを行い、1点塗工ムラ、または欠点が発生した。
C:10回塗工テストを行い、2点以上塗工ムラ、または欠点が発生した。
D:10回塗工テストを行い、3点以上塗工ムラ、または欠点が発生した。
(10)グリーンシートの重剥離性
(9)と同様にしてスラリー乾燥膜を作製後、スラリー乾燥膜/ポリエステルフィルムが積層された構成にて向かい合う二辺が重ね合うよう手で変形させた後、元の平面状態に戻した。次に、重ね合わせていなかった残りの二辺についても、二辺が重ね合うように手で変形させた後、元の平面状態に戻した。スラリー乾燥膜とポリエステルフィルムの界面の剥離状態(浮き)を観察し、下記基準にて評価した。
A:スラリー乾燥膜の浮きが見られなかった。
B:長径3mm以下の浮きが1箇所以上見られた。
C:長径10mm以下の浮きが1箇所以上見られた。
D:長径10mmを超える大きさの浮きが1箇所以上見られた。
(11)グリーンシート積層焼成後のの剥離性
上記(9)で得られた、スラリー乾燥膜/ポリエステルフィルムを幅100mm、長さ100mmの形に切り出し、ポリエステルフィルムからグリーンシートを剥離して、グリーンシートのみを10枚重ねて、重さ500gの100mm角の錘を2枚のグリーンシートの上に乗せた状態で1000℃×6時間の焼成処理を行い、機能性薄膜を得た。得られた機能性薄膜を10枚の機能性薄膜間で剥離し、下記基準にて評価し、C以上を合格とした。
A:割れた機能性薄膜の枚数が0枚。
B:割れた機能性薄膜の枚数が1枚以上2枚以下。焼成機能性薄膜層
C:割れた機能性薄膜の枚数が3枚以上5枚以下。
D:割れた機能性薄膜の枚数が6枚以上。
(12)打ち抜き性
上記(9)で得られた、スラリー乾燥膜/ポリエステルフィルムを重ねたまま、3mmφの穴を50穴パンチングし、各々のパンチング穴の外観を観察した。バリの長さとパンチング穴の直径をレーザー顕微鏡(OLS4000)の2D観察モード、5倍、2点間距離測定で計測し、下記基準にてフィルム/機能性薄膜層の打ち抜き性を評価し、B以上を合格とした。
A:フィルム/機能性薄膜層にバリが無く、直径2.8mm以上の穴が抜けている。
B:フィルム/機能性薄膜層に1mm未満のバリがあるが、直径2.8mm以上の穴が抜けている。
C:フィルム/機能性薄膜層に1mm未満のバリがあり、穴の直径が2.8mm未満となっている。
D:フィルム/機能性薄膜層に1mm以上のバリがあるか、穴の直径が2.8mm未満となっている。
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
(ポリエステルA)
テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレートを得た。
(ポリエステルB)
ポリエステルA中に数平均粒子径3.0μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度40質量%で含有した固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
(ポリエステルC)
ポリエステルA中に数平均粒子径3.5μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度40質量%で含有した固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
(ポリエステルD)
ポリエステルA中に数平均粒子径7.0μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度40質量%で含有した固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
(ポリエステルE)
ポリエステルA中に数平均粒子径8.0μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度40質量%で含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
(ポリエステルF)
東レデュポン社製“ハイトレル”7247(ポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂)。
(ポリエステルG)
ポリエステルA中に数平均粒子径15μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度25質量%で含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
(ポリエステルH)
ポリエステルA中に数平均粒子径2.0μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度40質量%で含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
(ポリエステルI)
テレフタル酸ジメチル88質量部、イソフタル酸ジメチル12質量部、エチレングリコール67質量部の混合物に、酢酸マグネシウムを0.08質量部、三酸化アンチモン0.022質量部を加え、徐々に昇温し、最終的には220℃メタノールを留出させながらエステル交換反応を行った。ついで、該エステル交換反応生成物に0.020質量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行した。重合釜内で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧し、最終的に280℃、1hPaまで昇温、減圧し、極限粘度が0.7となるまで重縮合反応を行い、その後ストランド状に吐出、冷却し、カッティングしてイソフタル酸成分を樹脂中のジカルボン酸成分に対して12モル%共重合したポリエチレンテレフタレート樹脂(副生したジエチレングリコール成分の共重合率は1.8モル%)を得た。
(ポリエステルJ)
ポリエステルA中にポリエチレンワックスを15質量%含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートワックスマスター。
(ポリエステルK)
ポリエステルA中にポリエチレンワックスを15質量%含有し、さらに数平均粒子径3.5μmの立方体状アルミノシリケート粒子を粒子濃度40質量%で含有した固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレートワックス粒子マスター。
(樹脂層形成用溶液(水分散体))
以下に示す、架橋剤:バインダー樹脂:離型剤:粒子をそれぞれ、質量比60:23:17で混合し、固形分が1%の質量比となるように純水で希釈して調整した。
・架橋剤:メチル化メラミン/尿素共重合の架橋製樹脂((株)三和ケミカル製“ニカラック” (登録商標)「MW12LF」)
・バインダー樹脂:アクリルモノマー共重合体(日本カーバイド製)
・離型剤: ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF(CFCHCHOCOCH=CH(n=5〜11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C1633N(CHCl1.0gおよびC17O(CHCHO)H(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて得られた共重合体エマルション。
・粒子:数平均粒子径170nmのシリカ粒子(日産化学工業(株)製“スノーテックス”(登録商標)MP2040)を固形分濃度が40重量%となるように純水で希釈して得られた水分散体。
(実施例1)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度0.2体積%とした別々の単軸押出機(スクリューのL/D=28)に供給し、A層押出機シリンダー温度を300℃、B層押出機シリンダー温度を300℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定しで、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度80℃で長手方向に2.7倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。その後、テンター式横延伸機にて延伸温度100℃で幅方向に2.8倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理245℃で熱処理を行った後、徐冷温度170℃で幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム総厚み50μm、A層/B層の2層構成の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例2、5、6、8、9、13、15)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
組成を表の通りとして、縦延伸倍率を2.6倍、横延伸倍率を2.7倍、熱処理温度を238℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
組成を表の通りとして、縦延伸倍率を2.4倍、横延伸倍率を2.6倍、熱処理温度を232℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例7)
組成を表の通りとして、縦延伸倍率を2.6倍、横延伸倍率を2.8倍、熱処理温度を242℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例10)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度0.2体積%とした別々の単軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を300℃、B層押出機シリンダー温度を300℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定しで、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度80℃で長手方向に2.7倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。その後、テンター式横延伸機にて延伸温度100℃で幅方向に2.8倍延伸し、そのままテンター内にて、245℃で熱処理を行った後、徐冷温度170℃で幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム総厚み50μm、A層/B層/A層の3層構成の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例11)
組成を表の通りとして、原料を酸素濃度0.2体積%とした単軸押出機に供給し、押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定しで、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その後は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmのA層のみからなる単膜構成の二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例12)
組成を表の通りとして、縦延伸倍率を3.3倍、横延伸倍率を3.4倍、熱処理温度を245℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(実施例14)
実施例2で得られたフィルムに、メタリングバーを用いて、樹脂層形成用溶液(水分散体)を乾燥後厚み50nmとなるように塗工、熱風オーブンで230℃3分間乾燥し、フィルム厚み50μm、樹脂層厚み50nmの樹脂層/A層/B層の構成の積層体を得た。
(比較例1)
組成を表の通りとして、縦延伸倍率を2.6倍、横延伸倍率を2.8倍、熱処理温度を242℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例2)
組成を表の通りとして、縦延伸倍率を2.4倍、横延伸倍率を2.6倍、熱処理温度を232℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例3、6)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム総厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
(比較例4)
実施例10と同様にして得られたフィルムに、サンドブラスト処理を行って表面加工を行った二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。
(比較例5)
比較例1で得られたフィルムに、メタリングバーを用いて、樹脂層形成用溶液(水分散体)を乾燥後厚み50nmとなるように塗工、熱風オーブンで230℃3分間乾燥し、フィルム厚み50μm、樹脂層厚み50nmの樹脂層/A層/B層の構成の積層体を得た。
Figure 2019104247
Figure 2019104247
Figure 2019104247
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本発明の塗工工程の基材として用いられるポリエステルは、少なくとも片側の表層にポリエステルA層を有するフィルムであって、前記ポリエステルA層の表面における5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm)と平均間隔RSmを特定範囲に制御することにより、良好な塗工性、加工時の剥離性、搬送性を有することから、機能性材料等を塗工して機能性材料層の薄膜(機能性薄膜)を得るための工程基材として好適に用いることができる。
1:粗さ曲線
W1:ピーク間の距離1
W2:ピーク間の距離2
:最小ピーク間距離
:ピーク間の距離m(mはピークの最大数を表す)
Lr:基準長さ

Claims (7)

  1. 少なくとも片側の表層にポリエステルA層を有するフィルムであって、前記ポリエステルA層の表面における5nm以上の凸ピーク個数SPc(個/0.4mm)が500以上4000以下、かつ平均間隔RSmが15000nm以上35000nm以下である塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
  2. 前記ポリエステルA層表面の平均傾斜勾配SΔa−1(rad)が、0.25rad以上0.45rad以下である請求項1に記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
  3. 前記ポリエステルA層表面で測定したエア抜け時間が0.5秒以上600秒以下である請求項1または2に記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
  4. フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとした場合に、フィルムを180℃で5分熱処理を行った後の方向X、方向Yのいずれにおいても引裂抵抗(N/mm)が2N/mm以上20N/mm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
  5. フィルムの長手方向を方向X、幅方向を方向Yとした場合に、フィルムを180℃で30分熱処理を行った後の方向X、方向Yのいずれにおいても熱収縮率(%)が−1.0%以上7.0%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
  6. 機能性材料スラリーをシート化する際の工程用途に用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の塗工工程の基材として用いられるポリエステルフィルムのA層表面に樹脂層を設けた積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024005125A1 (ja) * 2022-06-30 2024-01-04 王子ホールディングス株式会社 二軸延伸フィルム及び保護フィルム

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