JP2019098534A - 農業用ポリオレフィン系多層フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
特に、長期間に使用されるような農業用フィルムにおいては、季節や環境に応じてフィルムを巻き上げる等の作業が生じ、その際に巻き上げ機の金属部とフィルム、またはフィルム同士の擦れ破れが生じる。特に日射の取り込みに必要なビニールハウスの透明性を維持しつつ、かつ破れに強いフィルムについて要求が高い。
また、特許文献2には、包装用フィルムの袋同士の擦り音を低減する手法として凹凸を付与する手法が開示されている。
さらに、特許文献3には、ポリエチレンシーラント材に滑材を添加することにより、シール性を発現させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、充分な透明性が得られないという問題がある。
また、特許文献3には、滑材成分の表面偏析により、長期の使用で透明性が低下するという問題がある。
(1)
少なくとも外層および内層を有し、
前記外層および前記内層の少なくとも一方の層に重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含有することを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(2)
前記超高分子量ポリエチレンを含有する前記層に、さらに、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン、および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する、(1)に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(3)
前記低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを含有する、(2)に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(4)
前記超高分子量ポリエチレンを含有する前記層の、JIS K7218A準拠のすべり摩耗試験により測定された、比摩耗量が5×10−6mm3/Nm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(5)
前記超高分子量ポリエチレンを含有する前記層の厚みが10〜100μmである、(1)〜(4)のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(6)
厚さ150μmの条件でJIS K7136に準拠して測定される全光線透過率が88%以上である、(1)〜(5)のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
(7)
前記外層と前記内層との間にさらに中間層を含み、前記外層および前記内層に重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
なお、本明細書において、農業用ポリオレフィン系多層フィルムを、単に「農業用フィルム」と称する場合がある。また、「外層」および「内層」とは、フィルムの一方の表面を含む層、および他方の表面を含む層をいう。また、「ポリオレフィン系」とは、本実施形態の農業用ポリオレフィン系多層フィルム中の少なくとも1層にポリオレフィン系樹脂が含まれることをいい、本実施形態の農業用フィルムの全層にポリオレフィン系樹脂が含まれていてもよい。上記ポリオレフィン系樹脂としては、後述のポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
本実施形態の農業用フィルムは、少なくとも外層、内層の2層により形成されている。外層と内層との間にさらに中間層を含んでいてもよい。上記中間層は、一層であってもよいし複数層であってもよい。
本実施形態の農業用フィルムは、少なくとも2層を有する多層フィルムであり、3層構造であってもよいし、4層以上の構造であってもよい。
本実施形態の農業用フィルムは、中赤外〜遠赤外線の熱線を吸収し、ハウス内の保温性能を発現させる観点から、外層と内層との間にさらに中間層を含み、外層および内層に重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含有するフィルムであってもよい。
また、重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンと他のポリオレフィン系樹脂(特に、ポリエチレン)を混合して使用することにより、均一性を発現させ、フィッシュアイを抑止することができる。
上記重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含有する層(「超高分子量PE層」と称する場合がある)を形成するポリエチレン系樹脂組成物(「超高分子量ポリエチレン樹脂組成物」「超高分子量PE樹脂組成物」と称する場合がある)は、重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含む。さらに、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン、および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体等の他のポリオレフィン系樹脂を含んでいることが好ましい。
中でも、上記超高分子量PE樹脂組成物は、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン、および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を20質量%以上含有し、重量平均分子量40万以上の超高分子量PE成分を1〜30質量%含有したものが好ましい。
なお、本明細書において、超高分子量PE樹脂組成物に含まれる超高分子量ポリエチレンを「超高分子量ポリエチレン成分(A)」「ポリエチレン成分(A)」と称する場合がある。
超高分子量ポリエチレン成分(A)を、均一に分散させた状態で配合することにより、凝着点となる末端分岐が少なく、比摩耗量が低い層を形成できる超高分子量PE樹脂組成物を得ることができる。
超高分子量ポリエチレン成分(A)の重量平均分子量が400万未満であることにより、超高分子量ポリエチレンの生産工程での生産性がより向上する。
なお、超高分子量PE樹脂組成物中に含まれる全種類の超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量が上記範囲を満たすことが好ましい。
上記超高分子量PE樹脂組成物に含まれる他のポリオレフィン系樹脂としては、透明性と機械的強度に優れたエチレン樹脂(好適にはポリエチレン)を好適に使用することができる。このようなエチレン樹脂としては、例えば、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。なお、他のポリオレフィン系樹脂は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよく、中でも、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン(例えば、他のオレフィン系樹脂の中でも最もMFRが低く、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレンなど)および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましく、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレンまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体の一方を含むことがより好ましく、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレンを含むことが更に好ましい。
なお、他のポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、40万未満であってよい。
LDPEとしては、特に限定されないが、例えば、市販品として、サンテックLD(旭化成社製)、UBEポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製)、ペトロセン(東ソー社製)等が挙げられる。この中でも、サンテックLDが好ましい。LDPEの密度は、0.880〜0.945g/cm3であり、透明性と剛性を両立させる観点から、0.910〜0.930g/cm3であることが好ましく、0.920g/cm3前後であることがより好ましい。
LLDPEは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体(エチレン−α−オレフィン共重合体)であってもよい。また、これらの共重合体に対して改質樹脂を添加させたものを使用しても良い。
LLDPEの密度は、0.880〜0.945g/cm3であり、透明性と剛性を両立させる観点から、0.910〜0.940g/cm3であることがより好ましい。
LLDPEは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。中でも、2種以上のLLDPEを用いることが好ましく、MFRの異なる2種以上のLLDPEを用いることがより好ましい。MFRの異なる2種以上のLLDPEにおいて、最も低いMFRと、最も高いMFRとの差は、1.0dg/min以上であることが好ましく、2.0dg/min以上であることがより好ましい。MFRの異なる2種以上のLLDPEとしては、密度が0.880〜0.945g/cm3(好ましくは0.910〜0.940g/cm3)であるLLDPEと、密度が0.900〜0.940g/cm3(好ましくは0.91〜0.935g/cm3)であるLLDPEとの組み合わせであってもよい。
また、上記LLDPEは、ポリエチレン成分(A)の分散性が一層向上する観点から、ポリエチレン成分(A)よりもMFRが大きいLLDPEを含むことが好ましい。
LLDPEとしては、ユメリット(宇部丸善ポリエチレン株式会社)等があげられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体は、リビング重合、連鎖重合等の方法により重合することができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられる重合触媒は、特に限定されないが、マルチサイト触媒、シングルサイト触媒等が挙げられる。フィルム表面の滑り性を高めることから、シングルサイト系が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、シール性や透明性を向上させることから、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%である。
酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が3質量%以上であれば、超高分子量PE層の上に設けられる、防塵性塗膜や防曇性塗膜との密着性が良好である。また、25質量%以下であると得られるフィルムの強度が十分であり、透明性も良好である。酢酸ビニル含有量が5質量%以上であると、得られるフィルムが硬くなりハウスへの展張時にシワや弛みが一層出来にくくなり、また、酢酸ビニル含有量が25質量%より大きいと、樹脂の融点が低いためハウス展張時に夏場の高温下でフィルムが弛み、風でばたつきハウス構造体との擦れ等により破れが生じやすくなるため実用性に乏しい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の密度としては、0.880〜0.945g/cm3であってもよい。
超高分子量ポリエチレン成分(A)の含有量は、超高分子量PE樹脂組成物100質量%に対して、1.0〜50.0質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレン成分(A)の含有量が1.0〜50.0質量%であることにより、破断強度と引裂強度、フィルム形態への加工性を両立させることができる。
超高分子量PE層中の超高分子量ポリエチレン成分(A)の含有量は、1.0〜50.0質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、7〜20質量%であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレン成分(A)の含有量が1.0〜50.0質量%であることにより、破断強度と引裂強度、フィルム形態への加工性を両立させることができる。
他のポリオレフィン系樹脂の含有量は、超高分子量PE樹脂組成物100質量%に対して、50〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜95質量%、更に好ましくは80〜93質量%である。他のポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲であることにより、ポリエチレン成分(A)の分散性が向上し、破断強度に優れる。
超高分子量PE層中の他のポリオレフィン系樹脂の含有量は、50〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜95質量%、更に好ましくは80〜93質量%である。他のポリエチレン系樹脂の含有量が上記範囲であることにより、ポリエチレン成分(A)の分散性が向上し、フィッシュアイを抑制でき、破断強度に優れる。
超高分子量PE層中の密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体の合計含有量は、20〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜95質量%、更に好ましくは20〜93質量%、更に好ましくは25〜75質量%、更に好ましくは50〜75質量%、特に好ましく30〜70質量%である。含有量が上記範囲であることにより、超高分子量PE樹脂組成物が、透明でかつ、フィルムへの加工性が良好となる。
超高分子量PE樹脂組成物には、例えば、熱安定剤、耐候剤等の安定剤、顔料、染料等の着色剤、架橋剤、架橋助剤、防曇剤、有機および無機フィラー等の充填剤、他の樹脂等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。
上記の添加剤の含有量は、超高分子量PE樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
なお、本実施形態の超高分子量PE樹脂組成物には、実質的に滑剤が含まれないことが好ましく、具体的には、超高分子量PE樹脂組成物全量に対して、滑剤の含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。
上記超高分子量PE樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、下記の一例の製造方法が好ましい。
このように、超高分子量ポリエチレン成分(A)と他のポリオレフィン系樹脂との高濃度希釈物を作り、該高濃度希釈物に、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン(例えば、他のオレフィン系樹脂の中でも最もMFRが低く、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン)等の他のポリオレフィン系樹脂をさらに添加して溶融混練する工程を経ることにより、優れた特性を有する超高分子量PE層を形成することができる超高分子量ポリエチレン樹脂組成物が得られる。
第1の溶融混練工程は、超高分子量ポリエチレン成分(A)と他のポリオレフィン系樹脂とを溶融混練して、超高分子量ポリエチレン系樹脂組成物高濃度希釈物を得る工程である。
超高分子量ポリエチレン成分(A)と他のポリオレフィン系樹脂はそれぞれ、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。第1の溶融混練工程で用いる他のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、HDPE、LLDPE(例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物に含まれるLLDPEのうち、最もMFRが高いLLDPE等)等が挙げられる。
なお本開示で、メルトマスフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
第2の溶融混練工程は、超高分子量ポリエチレン高濃度希釈物と他のポリオレフィン系樹脂を溶融混練して、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物中間体を得る工程である。第2の溶融混練工程は、1回で行ってもよいし、複数回で行ってもよい。また、第2の溶融混練は、第1の溶融混練工程と同一の装置で行ってもよいし、異なる装置で行ってもよい。
第2の溶融混練工程で用いる他のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、HDPE、LLDPE(例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物に含まれるLLDPEのうち、最もMFRが低いLLDPEを除くLLDPE等)等が挙げられる。
2回目以降の混練を行う場合の他のポリオレフィン系樹脂は、適宜決めることができる。
第3の溶融混練工程は、第2の溶融混練工程で得られたポリエチレン系樹脂組成物中間体と他のポリオレフィン系樹脂(好ましくは、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン(特に、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物に含まれる低密度ポリエチレンの中でも最もMFRが低く、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレンなど)および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体)とを溶融混練して、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物を得る工程である。
特に、上記第2の混練では超高分子量ポリエチレン成分(A)の分散を促進する目的で、出来る限り低温で混練することが望ましく、これらの加工助剤を添加することが好ましい。
加工助剤としては、PVDF系(スリーエム社製、ダイナマーFX5920)やアクリル変性PTFE系(三菱レイヨン社製、メタブレンA3000)の加工助剤等を好適に使用することができる。使用の際は第1の溶融混練工程の前にあらかじめポリエチレン系樹脂組成物100質量%に対して、0.01〜1.0質量%の範囲で添加して使用するのが好ましい。
外層または内層が超高分子量PE層でない場合、外層または内層中の他のポリオレフィン系樹脂の含有量は、50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。他のポリオレフィン系樹脂の含有量が上記範囲であることにより、超高分子量PE樹脂組成物が、透明でかつ、フィルムへの加工性が良好となる。
本実施形態の農業用フィルムの、内層と外層との間に設けられる中間層について述べる。
中間層の数や組成は特に限定されるものではないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、赤外線吸収能をもち、地面からの輻射熱を吸収できるため、農業用フィルムに保温性を付与することから、好適に使用できる。また、他のポリオレフィン系樹脂(例えば、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン(例えば、他のオレフィン系樹脂の中でも最もMFRが低く、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレンなど)および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体)と保温材を組み合わせることもできる。上記中間層にはさらに、防曇剤が含まれていてもよい。
上記中間層を構成する素材としては、以下のものがあげられる。
中間層中の酢酸ビニル含有量としては、5〜30質量%が好ましく、さらに、10〜25質量%であるとより好ましい。酢酸ビニル含有量が5質量%以上であれば防曇性塗膜との密着性が良好である。また、30質量%以下であると得られるフィルムの強度が十分であり、透明性も良好である。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が3〜25質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは5〜20質量%の範囲である。酢酸ビニル含有量がこの範囲より小さいと、得られるフィルムが硬くなりハウスへの展張時にシワや弛みが出来やすく、防曇性に悪影響が出るため実用性に乏しく、また、酢酸ビニル含有量がこの範囲より大きいと、樹脂の融点が低いためハウス展張時に夏場の高温下でフィルムが弛み、風でばたつきハウス構造体との擦れ等により破れが生じやすくなるため実用性に乏しい。
上記保温材は、フィルムの保温性を向上させるものであって、一般式
[Al2Li(OH)6]nX・mH2O (I)
(式中のXは無機または有機アニオン、nはアニオンXの価数、mは3以下の数である)で表わされるリチウムアルミニウム化合物、および一般式
M2+ 1−xAlx(OH)2(Ap−)x/p・qH2O (II)
(M2+はMg2+、Ca2+およびZn2+からなる群から選ばれる二価金属イオンを示し、Ap−はp価のアニオン、xおよびqはそれぞれ0<x<0.5、0≦q≦2を満たす数である)で表わされるハイドロタルサイト類等が挙げられる。
この保温材は、中間層に含まれる樹脂成分100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部の割合で配合することができる。この配合量が1質量部未満では保温性の向上効果が十分に発揮されないし、20質量部を超えるとフィルムの引張強度や引裂強度などの機械物性が低下する。また、中間層において、上記保温材は上記樹脂成分と相容性よく均一にブレンドされ、特にリチウムアルミニウム化合物は透明性がよく好ましい。
本実施形態の農業用フィルムにおいて、中間層を構成する組成物には、組成物全量に対して、防曇剤が1〜10質量%添加されていてもよい。1質量%未満では防曇性の持続効果が十分ではなく、10質量%を越える場合には、フィルム表面への吹き出しが多くなりフィルムが不透明となったり、製膜加工時に発泡したりするなどの問題が生じる。なお、上記防曇剤は中間層だけでなく必要に応じ内層または内層と外層に添加しても構わない。
本実施形態の農業用フィルムは、上記超高分子量PE樹脂組成物を押出成形することにより得られる。押出成形方法としては、特に限定されないが、Tダイ成形、インフレーション成形、熱プレス成形、真空成形等が挙げられる。その中でも、インフレーション成形が好ましい。加工温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃、さらに好ましくは170〜220℃である。
摩耗特性を支配する特性として、摩擦係数がある。摩擦係数は、物質間の分子間力、原子間力による凝着を結着されたエネルギーを乖離させるひずみを付与する最大点により算出される。ポリエチレン等の粘弾性をもつ樹脂の場合、樹脂の粘性的な性質により、緩和時間の長い粘性的性質をもつ樹脂に関しては、変形による歪を回復する時間が長くなり、常に動体の重心移動とは反対方向に負の負荷がかかった状態であることから、動摩擦係数が大きくなり、比摩耗量が増大する。このような知見から、比摩耗量を低減するためには、凝着点となる部位が少ない超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を配合することが好ましい。
なお、超高分子量PE層が複数ある場合、少なくとも1層の比摩耗量が上記範囲であることが好ましく、全層の比摩耗量が上記範囲であることがより好ましい。
試験片 30×30×t=0.15mm
相手材 SUS304 リング(接触面積2cm2)粗さ0.1μmRa以下
速度 0.5m/s 荷重35N 時間100分
測定装置 株式会社エーアンドデイ製摩擦摩耗試験機 MODEL EMF−III−F
本実施形態の農業用フィルムの厚さは、透明性の観点から、1〜200μmであることが好ましく、より好ましくは5〜180μm、更に好ましくは10〜175μmである。
本実施形態の農業用フィルムの引張破断強度は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.26MPa以上であることがより好ましい。引張破断強度が0.2MPa以上であると、農業用フィルムとして好適に使用できることから好ましい。
なお本開示で、農業用フィルムの引張破断強度は、JIS K7161に準拠して測定される値である。
本実施形態の農業用フィルムの引裂強度は、170N/mm以上であることが好ましく、200N/mm以上であることがより好ましい。引裂強度が170N/mm以上であると、農業用フィルムとして好適に使用できることから好ましい。
なお本開示で、農業用フィルムの引張破断強度は、JIS K7218−1に準拠したトラウザー引き裂き法にて測定される値である。
本実施形態の農業用フィルムの内部ヘイズは、厚さ150μmのフィルムにおいて、45以下であることが好ましく、35以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。内部ヘイズが45以下であると、透明なフィルムとして好適に使用できる。
また、本実施形態の農業用フィルムの全光線透過率は、88%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
なお、内部ヘイズとは、凹凸等の表面構造に由来するヘイズを除いた値であり、JIS K7136に準拠して測定される。全光線透過率は、厚さ150μmの条件で、JIS K7361−1に準拠して測定される。
農業用フィルムの製造において、超高分子量ポリエチレン成分(A)として用いたポリエチレンは下記のとおりである。
・UHMWPE1:旭化成社製、サンファイン(登録商標)UH900(密度:0.940g/cm3、引張弾性率:0.34GPa、重量平均分子量300万)
・LLDPE1:プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP4020(密度:0.937g/cm3、引張弾性率:0.45GPa)MFR1.8dg/min
・EVA1 宇部丸善ポリエチレン株式会社製 UBEポリエチレンV115(密度:0.94g/cm3、引張弾性率:0.04GPa)MFR0.8dg/min
・EVA2 宇部丸善ポリエチレン株式会社製 UBEポリエチレンV106(密度:0.92g/cm3、引張弾性率:0.08Gpa)MFR0.4dg/min
・HDPE1:旭化成社製、サンテック(登録商標)J300(密度:0.961g/cm3、引張弾性率:0.68GPa)MFR42dg/min
・HDPE2:旭化成社製、サンテック(登録商標)J240(密度:0.966g/cm3、引張弾性率:0.7GPa)MFR5dg/min
・LLDPE2:宇部興産社製、ユメリット(登録商標)631J(密度:0.931g/cm3、引張弾性率:0.29GPa)MFR20dg/min
・LLDPE3:宇部興産社製、ユメリット(登録商標)2040FC(密度:0.919g/cm3、引張弾性率:0.21GPa)MFR5dg/min
・保温材1 協和化学工業株式会社 DHT−4A
実施例、比較例で得られたフィルムの破断強度(MPa)は、オートグラフAG−XPlus(島津製作所社製)により、試料幅10mm、チャック間距離を50mmとして、JIS K7161に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
実施例、比較例で得られたフィルムの引裂強度(GPa)は、オートグラフAG−XPlus(島津製作所社製)により、試料幅10mm、チャック間距離を50mmとして、JIS K7218−1に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
実施例、比較例で得られたフィルムの全光線透過率は、厚さ150μmのフィルムをHAZEMETER NDH−5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K 7361−1に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
実施例、比較例で得られたフィルムの外層の比摩耗量を、JIS K7218Aに準じて、下記の条件で測定した。なお、実施例4は、内層の比摩耗量も測定したところ、外層とほぼ同値であった。
試験片 30×30×t=0.15mm
相手材 SUS304 リング(接触面積2cm2)粗さ0.1μmRa以下
速度 0.5m/s 荷重35N 時間100分
測定装置 株式会社エーアンドデイ製摩擦摩耗試験機 MODEL EMF−III−F
55.5質量%のUHMWPE1、44.5質量%のHDPE1を混合した後、東芝機械株式会社製TEM−18s二軸押出機(L/D=50)にて溶融混練した。混練は、温度=215℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂高濃度希釈物を得た。
上記で得られた超高分子量ポリエチレン樹脂高濃度希釈物66.7質量%と、33.3質量%のHDPE2とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第2の溶融混練に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第1中間体のペレットを得た。
上記で得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第1中間体81.1質量%と、18.9質量%のHDPE1とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第2の溶融混練(2回目)に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第2中間体を得た。
上記で得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第2中間体40質量%と、60質量%のLLDPE1とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第3の溶融混練に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約3〜5kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、EVA2を10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmの農業用フィルムを得た。
得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物および農業用フィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
55.5質量%のUHMWPE1、44.5質量%のLLDPE2を混合した後、東芝機械株式会社製TEM−18ss二軸押出機(L/D=50)にて溶融混練した。混練は、温度=215℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂高濃度希釈物を得た。
上記で得られた超高分子量ポリエチレン樹脂高濃度希釈物66.7質量%と、33.3質量%のLLDPE3とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第2の溶融混練に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第1中間体を得た。
上記で得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第1中間体81.1質量%と、18.9質量%のLLDPE2とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第2の溶融混練(2回目)に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂第2中間体を得た。
上記で得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第2中間体40質量%と、60質量%のLLDPE1とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第3の溶融混練に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約3〜5kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、EVA2を10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmの農業用フィルムを得た。
得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物および農業用フィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
実施例1の第2の混練(2回目)で得られた、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物第2中間体80質量%と、20質量%のLLDPE1とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第4の溶融混練に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約1〜2kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、EVA2を10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmの農業用フィルムを得た。
得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物および農業用フィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
実施例1の第3の混練で得られた、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物のペレットを多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、さらに外層と同一のペレットを10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmの農業用フィルムを得た。
得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物および農業用フィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
90質量%のEVA1、10質量%の保温材1を混合した後、東芝機械株式会社製TEM−18ss二軸押出機(L/D=50)にて溶融混練した。混練は、温度=170℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約3〜5kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、保温材入りEVA1ペレットを得た。
実施例1の第3の混練で得られた、超高分子量ポリエチレン樹脂組成物のペレットを多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、保温材入りEVA1ペレットを30Kg/Hrで押し出した中間層、さらに外層と同一のペレットを10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmの農業用フィルムを得た。
得られた超高分子量ポリエチレン樹脂組成物および農業用フィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
LLDPE1を多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、EVA2を10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmのポリオレフィン樹脂製フィルムを得た。
得られたポリエチレン系樹脂組成物およびフィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
61.5質量%のHDPE1、38.5質量%のHDPE2を混合した後、東芝機械株式会社製TEM−18ss二軸押出機(L/D=50)にて溶融混練した。混練は、温度=205℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約3〜5kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、ポリエチレン系樹脂組成物中間体を得た。
上記で得られたポリエチレン系樹脂組成物中間体40質量%と、60質量%のLLDPE1とを混合したのち、上記二軸押出機に投入し、第2の溶融混練に供した。混練は、温度=210℃、スクリュー回転数=200回転で、吐出量が約3〜5kg/Hrになる様にフィーダーを調節して行い、ポリエチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、EVA2を10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmのポリオレフィン樹脂製フィルムを得た。
得られたポリエチレン系樹脂組成物およびフィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
LLDPE1を多層インフレーション成形機の押出機に供給し、190℃ダイから10Kg/Hr押出された外層、EVA1を30Kg/Hrで押し出した中間層、LLDPE1を10Kg/Hrで押し出した内層をインフレーション成形して厚さ0.15mm、幅100cmのポリオレフィン樹脂製フィルムを得た。
得られたポリエチレン系樹脂組成物およびフィルムの組成、各物性の測定結果を、表1に示す。
Claims (7)
- 少なくとも外層および内層を有し、
前記外層および前記内層の少なくとも一方の層に重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含有することを特徴とする農業用ポリオレフィン系多層フィルム。 - 前記超高分子量ポリエチレンを含有する前記層に、さらに、密度が0.880〜0.945g/cm3の低密度ポリエチレン、および/またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する、請求項1に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
- 前記低密度ポリエチレンが直鎖状低密度ポリエチレンを含有する、請求項2に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
- 前記超高分子量ポリエチレンを含有する前記層の、JIS K7218A準拠のすべり摩耗試験により測定された比摩耗量が、5×10−6mm3/Nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
- 前記超高分子量ポリエチレンを含有する前記層の厚みが10〜100μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
- 厚さ150μmの条件でJIS K7136に準拠して測定される全光線透過率が88%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
- 前記外層と前記内層との間にさらに中間層を含み、前記外層および前記内層に重量平均分子量40万以上の超高分子量ポリエチレンを含有する、請求項1〜6の何れか一項に記載の農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
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