以下に添付図面を参照して、実施形態に係る固体撮像装置の製造方法について詳細に説明する。なお、これらの実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像装置14を備えるデジタルカメラ1の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、デジタルカメラ1は、カメラモジュール11と後段処理部12とを備える。
カメラモジュール11は、撮像光学系13と固体撮像装置14とを備える。撮像光学系13は、被写体からの光を取り込み、被写体像を結像させる。固体撮像装置14は、撮像光学系13によって結像される被写体像を撮像し、撮像によって得られた画像信号を後段処理部12へ出力する。かかるカメラモジュール11は、デジタルカメラ1以外に、例えば、カメラ付き携帯端末などの電子機器に適用される。
後段処理部12は、ISP(Image Signal Processor)15、記憶部16および表示部17を備える。ISP15は、固体撮像装置14から入力される画像信号の信号処理を行う。かかるISP15は、例えば、ノイズ除去処理、欠陥画素補正処理、解像度変換処理などの高画質化処理を行う。
そして、ISP15は、信号処理後の画像信号を記憶部16、表示部17およびカメラモジュール11内の固体撮像装置14が備える後述の信号処理回路21(図2参照)へ出力する。ISP15からカメラモジュール11へフィードバックされる画像信号は、固体撮像装置14の調整や制御に用いられる。
記憶部16は、ISP15から入力される画像信号を画像として記憶する。また、記憶部16は、記憶した画像の画像信号をユーザの操作などに応じて表示部17へ出力する。表示部17は、ISP15あるいは記憶部16から入力される画像信号に応じて画像を表示する。かかる表示部17は、例えば、液晶ディスプレイなどである。
次に、図2を参照しながらカメラモジュール11が備える固体撮像装置14について説明する。図2は、実施形態に係る固体撮像装置14の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、固体撮像装置14は、イメージセンサ20と、信号処理回路21とを備える。
ここでは、イメージセンサ20が、入射光を光電変換する光電変換素子における入射光が入射する面とは逆の面側に配線層が形成される所謂裏面照射型CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである場合について説明する。なお、実施形態に係るイメージセンサ20は、裏面照射型CMOSイメージセンサに限定するものではなく、表面照射型CMOSイメージセンサや、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等といった任意のイメージセンサであってもよい。
イメージセンサ20は、周辺回路22と、画素アレイ23とを備える。また、周辺回路22は、垂直シフトレジスタ24、タイミング制御部25、CDS(相関二重サンプリング)26、ADC(アナログデジタル変換部)27、およびラインメモリ28を備え、これらは主にアナログ回路で構成される。
画素アレイ23は、イメージセンサ20の撮像領域に設けられる。かかる画素アレイ23には、撮像画像の各画素に対応する複数の光電変換素子が、水平方向(行方向)および垂直方向(列方向)へ2次元アレイ状(マトリックス状)に配置されている。そして、画素アレイ23は、各画素に対応する各光電変換素子が入射光量に応じた信号電荷(例えば、電子)を発生させて蓄積する。そして、画素アレイ23は、各画素に対応する複数の光電変換素子によって光電変換された電荷の量に応じた電圧の信号を、各画素の輝度を示す画素信号として取得する。
タイミング制御部25は、垂直シフトレジスタ24、CDS26、ADC27およびラインメモリ28に対して動作タイミングの基準となるパルス信号を出力する処理部である。垂直シフトレジスタ24は、アレイ(行列)状に2次元配列された複数の光電変換素子の中から信号電荷を読み出す光電変換素子を行単位で順次選択するための選択信号を画素アレイ23へ出力する処理部である。
画素アレイ23は、垂直シフトレジスタ24から入力される選択信号によって行単位で選択される各光電変換素子に蓄積された信号電荷を、各画素の輝度を示す画素信号として光電変換素子からCDS26へ出力する。
CDS26は、画素アレイ23から入力される画素信号から、相関二重サンプリングによってノイズを除去してADC27へ出力する処理部である。ADC27は、CDS26から入力されるアナログの画素信号をデジタルの画素信号へ変換してラインメモリ28へ出力する処理部である。ラインメモリ28は、ADC27から入力される画素信号を一時的に保持し、画素アレイ23における光電変換素子の行毎に信号処理回路21へ出力する処理部である。
信号処理回路21は、ラインメモリ28から入力される画素信号に対して所定の信号処理を行って後段処理部12へ出力する処理部であり、主にデジタル回路で構成される。信号処理回路21は、画素信号に対して、例えば、レンズシェーディング補正、傷補正、ノイズ低減処理などの信号処理を行う。
このように、イメージセンサ20では、画素アレイ23に配置される複数の光電変換素子が入射光を受光量に応じた量の信号電荷へ光電変換して蓄積し、周辺回路22が各光電変換素子に蓄積された信号電荷を画素信号として読み出すことによって撮像を行う。
実施形態に係る画素アレイ23は、光電変換素子の光が入射する側の面(以下、「受光面」と記載する)における結晶欠陥等に起因して生じる暗電流を抑制する構成を備える。
次に、図3を参照して、第1の実施形態に係る画素アレイ23の構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係る画素アレイ23の断面を模式的に示す説明図である。なお、図3には、画素アレイ23における撮像画像の1画素に対応する部分の断面を模式的に示している。
図3に示すように、画素アレイ23は、支持基板31上に接着層32を介して設けられる多層配線層35と、光電変換素子38とを備える。多層配線層35は、層間絶縁膜34と、層間絶縁膜34の内部に設けられる多層配線33とを備える。多層配線33は、光電変換素子38によって光電変換された負の信号電荷(電子)の読み出しや、各回路素子への駆動信号等の伝送に用いられる。
光電変換素子38は、例えば、リン(P)等のN型の不純物がドープされたN型のSi領域37と、平面視においてN型のSi領域37を囲むボロン(B)等のP型の不純物がドープされたP型のSi領域36とのPN接合によって形成されるフォトダイオードである。そして、光電変換素子38は、多層配線33との界面とは逆側の端面から入射する光を受光量に応じた量の信号電荷へ光電変換してN型のSi領域37に蓄積する。
また、画素アレイ23は、光電変換素子38の受光面上に、第1のSi酸化膜39を備える。かかる第1のSi酸化膜39は、N型のSi領域37の受光面側端面に生じるダングリングボンドを終端する。これにより、画素アレイ23は、ダングリングボンドによる界面準位の増加を抑制することによって暗電流を低減する。
また、画素アレイ23は、第1のSi酸化膜39の受光面上に、負の固定電荷を保持する固定電荷膜40を備える。かかる固定電荷膜40は、例えば、酸化ハフニウム(HfO)によって形成される。
これにより、画素アレイ23は、固定電荷膜40に保持される負の固定電荷によって、N型のSi領域37内に存在する正の電荷(正孔)を引き寄せ、N型のSi領域37における受光面近傍に正孔蓄積領域5を形成する。
これにより、画素アレイ23は、正孔蓄積領域5の正の電荷とN型のSi領域37における受光面近傍で生じる界面準位に起因した負の電荷とを再結合させ、入射光の有無とは無関係に生じて暗電流の原因となる負の電荷を低減することができる。したがって、画素アレイ23は、固定電荷膜40を備えることにより、暗電流をより効果的に低減することができる。
さらに、画素アレイ23は、固定電荷膜40の受光面上に順次積層される第2のSi酸化膜41、Si窒化膜42、カラーフィルタ43、およびマイクロレンズ44を備える。
マイクロレンズ44は、平凸レンズであり、画素アレイ23へ入射する入射光を光電変換素子38へ集光する。また、カラーフィルタ43は、例えば、赤、緑、青の3原色のうち、いずれか一色の入射光を透過させる。また、Si窒化膜42は、カラーフィルタ43を透過する入射光の反射を防止する反射防止膜として機能する。また、第2のSi酸化膜41は、Si窒化膜42から固定電荷膜40への窒素(N)の拡散を抑制する。
ところで、画素アレイは、光電変換素子の受光面上に第1のSi酸化膜、固定電荷膜、および第2のSi酸化膜が順次積層によって形成される。これらの膜の中でSi酸化膜は、吸湿しやすい性質を持つため、成膜時に膜中に水分が含まれやすい。このため、画素アレイの製造工程に含まれる熱処理の影響によってSi酸化膜中に含まる水分がガス化して第1のSi酸化膜と固定電荷膜との界面に放出される場合がある。かかる場合、固体電荷膜はガスの透過性が低いため、熱で膨張したガスは逃げ場をなくす。
これにより、画素アレイは、ガスによって第1のSi酸化膜側から固定電荷膜が突き上げられて、固定電荷膜の剥離や飛びが発生してしまう。この固定電荷膜の剥離や飛びは、画素アレイにおいて数画素に及ぶこともある。かかる場合、画素アレイは、固定電荷膜が剥離あるいは飛散した部分の光電変換素子の受光面近傍には正の電荷が誘起されないので、暗電流を十分に低減することができない。
そこで、第1の実施形態では、第1のSi酸化膜39の上面に固定電荷膜40を形成する前に、第1のSi酸化膜39中の水分を脱気する脱ガス処理を行う。これにより、画素アレイ23は、暗電流の低減を画素アレイ23の製造工程において可能とした。本実施形態によれば、画素アレイ23の製造工程に含まれる熱処理の影響によって固定電荷膜40が第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散することを抑制することができる。
次に、図4〜図6を参照して、暗電流の低減を可能とした画素アレイ23の製造方法を含む固体撮像装置14の製造方法について説明する。なお、固体撮像装置14における画素アレイ23以外の部分の製造方法は、一般的なCMOSイメージセンサと同様である。このため、以下では、固体撮像装置14における画素アレイ23部分の製造方法について説明する。
図4〜図6は、第1の実施形態に係る固体撮像装置14の製造工程を示す断面模式図である。なお、図4〜図6には、画素アレイ23における図3に示す部分の製造工程を模式的に示している。
図4(a)に示すように、画素アレイ23を製造する場合には、Siウェハ等の半導体基板30上にP型のSi領域36を形成する。このとき、例えば、半導体基板30上にボロン等のP型の不純物がドープされたSi層をエピタキシャル成長させることにより、P型のSi領域36を形成する。なお、かかるP型のSi領域36は、Siウェハの内部へP型の不純物をイオン注入してアニール処理を行うことにより形成してもよい。
続いて、図4(b)に示すように、P型のSi領域36の上面側からP型のSi領域36内部へリン等のN型の不純物をイオン注入してアニール処理を行うことによって、P型のSi領域36にN型のSi領域37を行列状に2次元配列する。
こうして、P型のSi領域36とN型のSi領域37とによりPN接合が形成されてフォトダイオードである光電変換素子38が形成される。なお、ここで、N型のSi領域37は、光電変換された負の電荷を蓄積する電荷蓄積領域となる。
続いて、図4(c)に示すように、光電変換素子38の上面に多層配線層35を形成する。このとき、例えば、Si酸化膜等の層間絶縁膜34を成膜する工程と、層間絶縁膜34に所定の配線パターンを形成する工程と、配線パターン内に銅(Cu)等を埋め込んで多層配線33を形成する工程とを繰り返すことで多層配線層35が形成される。
その後、図4(d)に示すように、多層配線層35の上面に接着剤を塗布して接着層32を設け、接着層32の上面に、例えばSiウェハ等の支持基板31を貼着する。なお、接着層32を用いずに、多層配線層35の上面に支持基板31を直接接合してもよい。
続いて、図5(a)に示すように、図4(d)に示す構造体の天地を反転させた後、グラインダ等の研削装置によって半導体基板30を裏面側(ここでは、上面側)から研削し、半導体基板30を所定の厚さになるまで薄化する。
その後、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)によって半導体基板30の裏面側を研磨し、図5(b)に示すように、N型のSi領域37の裏面(ここでは、上面)を露出させる。このとき、N型のSi領域37の研磨面である上面にはダングリングボンドが発生して界面準位が生じることがある。
そこで、図5(c)に示すように、光電変換素子38の受光面上に第1のSi酸化膜39を形成し、N型のSi領域37の受光面側端面に生じるダングリングボンドを終端する。第1のSi酸化膜39の形成には、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いる。これにより、光電変換素子38の受光面に原子レベルあるいは分子レベルの薄膜を1層ずつ繰り返し形成することで緻密な第1のSi酸化膜39を形成する。
ここで、第1のSi酸化膜39中には、薄膜を1層ずつ繰り返し形成する際に処理雰囲気内の水分が膜中に取り込まれて残留することがある。第1のSi酸化膜39中の水分は、かかる第1のSi酸化膜39上に固定電荷膜40を形成した場合に、固定電荷膜40が第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散する原因となる。
そこで、第1の実施形態に係る画素アレイ23の製造方法では、図5(d)に示すように、第1のSi酸化膜39上に固定電荷膜40を形成する前に、第1のSi酸化膜39中の水分を脱気する脱ガス処理を行う。かかる脱ガス処理は、例えば、熱処理装置を用いて、窒素雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で、第1のSi酸化膜39を所定の温度条件および時間条件で加熱することにより行う。
具体的には、第1のSi酸化膜39の脱ガス処理は、300℃以上420℃以下の温度で30秒以上180分以下の時間、加熱することにより行う。これにより、第1のSi酸化膜39中の水分が、第1のSi酸化膜39の表面から外部へ脱ガスGとして放出する。つまり、第1のSi酸化膜39は、加熱されることによって膜中の水分を外部へ放出して乾燥する。
続いて、図6(a)に示すように、第1のSi酸化膜39の上面に、負の固定電荷を保持する固定電荷膜40を形成する。固定電荷膜40の形成には、例えば、ALD法を用いる。ここで、図7を参照して、ALD法によって第1のSi酸化膜39の上面に固定電荷膜40を形成する方法について説明する。図7は、第1の実施形態に係る固定電荷膜40の製造工程を示す説明図である。
固定電荷膜40を形成する場合には、先ず、図7(a)に示すように、第1のSi酸化膜39の表面に、例えば、水(H2O)等を供給することで、第1のSi酸化膜39表面を水酸基(OH)で終端する。そして、かかる第1のSi酸化膜39表面に、ハフニウム錯体(HfR4:ただし、Rは置換基を表す)を供給する。
これにより、図7(b)に示すように、ハフニウム錯体の置換基Rと第1のSi酸化膜39表面の水酸基とが縮合され、第1のSi酸化膜39表面に固定電荷膜40となる1層目の酸化ハフニウム(HfO)膜を形成する。そして、処理雰囲気を、例えば、窒素等の不活性ガスでパージする。
続いて、図7(c)に示すように、1層目の酸化ハフニウム膜の表面に、例えば、水等を供給する。これにより、図7(d)に示すように、水と酸化ハフニウム膜表面の置換基Rとが縮合され、酸化ハフニウム膜表面を水酸基で終端する。そして、処理雰囲気を、例えば、窒素等の不活性ガスでパージする。
続いて、図7(e)に示すように、酸化ハフニウム膜表面に、再び、ハフニウム錯体を供給する。これにより、図7(f)に示すように、ハフニウム錯体の置換基Rと酸化ハフニウム膜表面の水酸基とが縮合され、1層目の酸化ハフニウム膜表面に2層目の酸化ハフニウム膜を形成する。そして、処理雰囲気を、同様にしてパージする。
このように、水の供給、ハフニウム錯体の供給、処理雰囲気のパージという一連の処理を繰り返して極めて薄い酸化ハフニウム膜を何層も積層することで所定の膜厚の固定電荷膜40を形成する。
ここで、ALD法によって固定電荷膜40を形成する場合、成膜温度が高い方が、酸化ハフニウム膜の成膜反応がよく進む。しかし、ハフニウム錯体は高温で分解しやすいため、成膜温度が高すぎると固定電荷膜40中にハフニウム錯体の置換基Rと水の水酸基とが未反応として一部残ることがある。これら置換基Rと水酸基とは、縮合反応を起こして副生成物を生成する。
具体的には、例えば、図7(f)に示すように、点線で囲まれる第1のSi酸化膜39表面の水酸基と1層目の酸化ハフニウム膜中の置換基Rとが縮合反応を起こして副生成物を生成する。この副生成物は、画素アレイ23の製造工程に含まれる熱処理の影響によってガス化することで、固定電荷膜40の剥離の原因となる。
そこで、固定電荷膜40中の副生成物を脱気する必要がある。次の成膜処理において、固定電荷膜40の上面に第2のSi酸化膜41を形成するため、第1の実施形態では第2のSi酸化膜41中の水分の脱ガスと併せて固定電荷膜40中の副生成物の脱ガスを行う。
図6に戻り、固定電荷膜40を形成した後、図6(b)に示すように、固定電荷膜40の受光面に第2のSi酸化膜41を形成する。第2のSi酸化膜41の形成には、例えば、ALD法を用いる。これにより、固定電荷膜40の受光面に原子レベルあるいは分子レベルの薄膜を1層ずつ繰り返し形成することで緻密な第2のSi酸化膜41を形成する。
ここで、前述した第1のSi酸化膜39と同様、第2のSi酸化膜41中には、薄膜を1層ずつ繰り返し形成する際に処理雰囲気内の水分が膜中に取り込まれて残留することがある。
そこで、第1の実施形態に係る画素アレイ23の製造方法では、図6(c)に示すように、第2のSi酸化膜41を成膜した後に、第2のSi酸化膜41中の水分の脱ガスと併せて固定電荷膜40中の副生成物の脱ガスを行う。かかる脱ガス処理は、例えば、熱処理装置を用いて、窒素雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下で、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41を所定の温度条件および時間条件で加熱することにより行う。
具体的には、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41の脱ガス処理は、300℃以上420℃以下の温度で30秒以上180分以下の時間、加熱することにより行う。これにより、固定電荷膜40中の副生成物および第2のSi酸化膜41中の水分が、第2のSi酸化膜41の表面から外部へ脱ガスGとして放出する。つまり、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41は、加熱されることによって固定電荷膜40中の副生成物および第2のSi酸化膜41中の水分を外部へ放出して乾燥する。
続いて、図6(d)に示すように、第2のSi酸化膜41の受光面に反射防止膜となるSi窒化膜42を形成する。Si窒化膜42の形成には、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いる。その後、Si窒化膜42の上面に、カラーフィルタ43およびマイクロレンズ44を順次形成することによって、図3に示す画素アレイ23を製造する。
上述したように、第1の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法は、第1のSi酸化膜39の上面に固定電荷膜40を形成する前に、第1のSi酸化膜39中の水分を脱気する脱ガス処理を行う。これにより、固定電荷膜40が第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散することを抑制することによって、固定電荷膜40を第1のSi酸化膜39上に均一に成膜することができる。したがって、光電変換素子38の受光面近傍に均一に正の電荷を誘起させることができるので、暗電流を十分に低減することができる。
また、かかる脱ガス処理は、300℃以上420℃以下の温度で行うため、第1のSi酸化膜39の成膜時に既に形成されている多層配線33に銅を用いた場合でも多層配線33が溶出するおそれがない。
また、第1の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法は、第2のSi酸化膜41を成膜した後に、第2のSi酸化膜41中の水分の脱ガスと併せて固定電荷膜40中の副生成物の脱ガスを行う。これにより、固定電荷膜40が第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散することを抑制することによって、固定電荷膜40を第1のSi酸化膜39上に均一に成膜することができる。また、固定電荷膜40は、膜の組成の変化が抑えられ、安定した負の固定電荷を発生することができる。また、第2のSi酸化膜41は、固定電荷膜40との密着性が向上する。
なお、第1の実施形態では第2のSi酸化膜41中の水分の脱ガス処理と併せて固定電荷膜40中の副生成物の脱ガスを行っているが、これに限定されない。他の形態としては、固定電荷膜40中の副生成物を脱気する脱ガス処理と第2のSi酸化膜41中の水分を脱気する脱ガス処理とを分けて行ってもよい。これらの脱ガス処理は、前述した脱ガス処理と同じ条件で行ってもよいし、各脱ガス処理に応じて温度条件および時間条件を設定変更してもよい。これにより、脱気によって固定電荷膜40中の副生成物が第2のSi酸化膜41中に残留するおそれがない。
また、第1の実施形態では脱ガス処理は、所定の温度条件および時間条件で加熱することにより行っているが、これに限定されない。他の脱ガス処理としては、所定の減圧雰囲気下で、具体的には、処理雰囲気の圧力が60Pa以上5000Pa以下で、第1および第2のSi酸化膜39,41中の水分の脱気および固定電荷膜40中の副生成物の脱気を行ってもよい。つまり、第1のSi酸化膜39、第2のSi酸化膜41および固定電荷膜40は、減圧されることによって第1および第2のSi酸化膜39,41中の水分および固定電荷膜40中の副生成物を外部へ放出して乾燥する。
また、脱ガス処理は、所定の減圧雰囲気下で、且つ、所定の温度条件および時間条件で加熱することにより行ってもよい。これにより、第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41は、減圧雰囲気下で加熱されることによって短時間に確実に乾燥することができる。
また、脱ガス処理は、フリーズドライ法によって行ってもよい。具体的には、第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41に対して冷却処理を行った後、常圧ないし減圧にて第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41を各々乾燥させる。
また、第1の実施形態に係る脱ガス処理は、低温の熱処理によって実施されるが、かかる低温の熱処理方法には種々の方法がある。具体的には、低温の熱処理方法としては、レーザーアニール、マイクロ波アニール、電子線アニールおよび紫外線アニールなどがある。
レーザーアニールは、例えば、1msec以下の比較的短時間で行う。つまり、第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41は、照射時間が1msec以下のレーザーを使用して表面が局所的に加熱される。これにより、レーザーアニールは膜表面から膜深部へ熱を拡散することによって、レーザーが照射される膜以外の膜に熱的ダメージを与えることなく確実に乾燥することができる。
マイクロ波アニールは、例えば、1000W〜5000Wの出力で、300MHz〜3THzの周波数を中心とする周波数帯のマイクロ波を用いて行う。つまり、第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41は、膜中の水分あるいは副生成物がマイクロ波を吸収して加熱される。これにより、マイクロ波アニールは、膜中の水分あるいは副生成物を選択的に加熱することによって、マイクロ波が照射される膜自体に熱的ダメージを与えることなく確実に乾燥することができる。
電子線アニールは、第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41に電子線を照射して表面を局所的に加熱する。これにより、電子線アニールは、膜表面から膜深部へ熱を拡散することによって、電子線が照射される膜以外の膜に熱的ダメージを与えることなく確実に乾燥することができる。
紫外線アニールは、第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41に、例えば、波長150nm〜400nmの範囲の紫外線を照射して表面を加熱する。これにより、紫外線アニールは、膜表面から膜深部へ熱を拡散することによって、紫外線が照射される膜以外の膜に熱的ダメージを与えることなく確実に乾燥することができる。
また、第1の実施形態では第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41はALD法を用いて形成したが、これに限定されず、例えば、CVD法を用いて形成してもよい。CVD法でこれらの膜を形成した場合にも第1のSi酸化膜39、固定電荷膜40および第2のSi酸化膜41に対して脱ガス処理を行うことによって前述と同様の効果を得ることができる。
また、第1の実施形態では、固定電荷膜40の材料が酸化ハフニウムである場合について説明したが、固定電荷膜40の材料は、Hf、Ti、Al、Zr、Mgを1種類以上含んだ材料であってもよい。
ここで、上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置14の効果を確認するために行った実験結果について説明する。図8および図9は、第1の実施形態に係る固体撮像装置14の効果を確認するために行った実験結果を示す説明図である。具体的には、図8は実施例の固定電荷膜40および比較例の固定電荷膜における単位面積当たりに含まれる欠陥の数を示すグラフであり、図9は実施例の固体撮像装置14および比較例の固体撮像装置における暗電流の値を示すグラフである。
実験では、実施例1の固体撮像装置14は第1のSi酸化膜39に対して420℃の温度で180分間熱を加えて脱ガス処理を行い、比較例の固体撮像装置は第1のSi酸化膜に対して脱ガス処理を行わなかった。なお、比較例の固体撮像装置は、実施例1の固体撮像装置14と同じ装置構成である。
図8に示すように、実施例1の固定電荷膜40の欠陥密度は比較例の固定電荷膜の欠陥密度に比べておよそ30%低減した。また、図9に示すように、実施例1の固体撮像装置14における暗電流の値は、比較例の固体撮像装置における暗電流の値に比べておよそ5%低減した。このことから、第1のSi酸化膜39に対して脱ガス処理を行うことが、固定電荷膜40が第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散を抑制することに有効であることが分かる。
また、他の実験では、レーザーアニールによる脱ガス処理を行った。図10は、第1の実施形態に係る固体撮像装置14の効果を確認するために行った実験結果を示す説明図である。具体的には、図10は、実施例2の固定電荷膜40、実施例3の固定電荷膜40および比較例の固定電荷膜における単位面積当たりに含まれる欠陥の数を示すグラフである。
実験では、実施例2の固体撮像装置14は第1のSi酸化膜39に対して1msec以下のレーザーを照射して脱ガス処理を行い、実施例3の固体撮像装置14は、第1のSi酸化膜39および固定電荷膜40に対して1msec以下のレーザーを照射して脱ガス処理を行った。
図10に示すように、実施例2の固定電荷膜40の欠陥密度は比較例の固定電荷膜の欠陥密度に比べておよそ70%低減し、さらに実施例3の固定電荷膜では欠陥が全く観測されなかった。このことから、第1のSi酸化膜30および固定電荷膜40の脱ガス処理としてレーザーアニールが有効であることが分かる。
(第2の実施形態)
次に、図11および図12を参照して第2の実施形態に係る画素アレイ23aについて説明する。画素アレイ23aは、固定電荷膜に第1のSi酸化膜から出るガスの脱気経路となる開口部を設けた点が第1の実施形態に係る画素アレイ23と異なる。かかる開口部は、固定電荷膜の非成膜領域である。
図11は、第2の実施形態に係る画素アレイ23aの受光面の一部を模式的に示す説明図である。図12は、第2の実施形態に係る画素アレイ23aの図11に示すA−A’線による断面を模式的に示す説明図である。なお、ここでは、図11および図12に示す構成要素のうち、図3に示す構成要素と同様の機能を有する構成要素については、図3に示す符号と同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図11に示すように、画素アレイ23aは、例えば、固定電荷膜40aに光電変換素子38の矩形状の受光面3の周囲を取り囲むように複数の開口部8が設けられる。具体的には、画素アレイ23aは、隣接する光電変換素子38間の領域の固定電荷膜40aに開口部が複数設けられる。すなわち、開口部8は、受光面3の周縁に沿って複数配置される。また、図12に示すように、かかる開口部8は、固定電荷膜40aの表裏を貫通して形成される。
第2の実施形態に係る画素アレイ23aは、固定電荷膜40aに開口部8を備える。これにより、画素アレイ23aの製造工程に含まれる熱処理において、第1のSi酸化膜39と固定電荷膜40aとの界面に放出された第1のSi酸化膜39からのガスが開口部8を介して外部へ脱気することができる。
したがって、画素アレイ23aは、かかる界面にガスが滞留することがないため、熱によるガスの膨張によって固定電荷膜40aが第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散することを防止することができる。そのため、画素アレイ23aは、光電変換素子38の受光面3近傍に均一に正の電荷を誘起させることができるので、暗電流を十分に低減することができる。
次に、図13および図14を参照して、図11および図12に示す画素アレイ23aの製造方法を含む固体撮像装置14の製造方法について説明する。図13および図14は、第2の実施形態に係る固体撮像装置14の製造工程を示す断面模式図である。なお、図13および図14には、画素アレイ23aにおける図12に示す部分の製造工程を模式的に示している。
また、第2の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法は、上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置14の図4(a)〜図5(c)までの製造工程が同じであるため、第1のSi酸化膜39の上面に、開口部8が設けられた固定電荷膜40aを形成する工程から説明する。
図13(a)に示すように、第1のSi酸化膜39の上面に、例えば、レジスト6を塗布し、フォトリソグラフィーによって開口部8の形成位置となる部分(図11および図12参照)のレジスト6を除去する。
かかるレジスト6をマスクとして使用して、例えば、酸素プラズマ処理を行い、レジスト6に覆われていない部分の第1のSi酸化膜39表面を酸素(O2)で終端することで改質する。なお、ここでは、第1のSi酸化膜39における酸素プラズマによって表面が改質された部位を改質部7とする。その後、図13(b)に示すように、マスクとして使用したレジスト6を除去する。
続いて、図13(c)に示すように、第1のSi酸化膜39の上面に、例えば、ALD法を用いて負の固定電荷を保持する固定電荷膜40aを形成する。具体的には、固定電荷膜40aは、第1のSi酸化膜39の表面における改質部7を除く領域に形成される。これは、改質部7における表面が酸素で終端しており水酸基で終端していないため、かかる改質部7ではハフニウム錯体との反応が起こらず、酸化ハフニウム膜が成長しないからである。こうして、開口部8を固定電荷膜40aに光電変換素子38の受光面3の周縁に沿って形成する。
続いて、図14(a)に示すように、固定電荷膜40aの上面に、例えば、ALD法を用いて第2のSi酸化膜41を形成する。このとき、開口部8内にも第2のSi酸化膜41が形成される。次に、図14(b)に示すように、第2のSi酸化膜41の上面に、例えば、CVD法を用いて反射防止膜となるSi窒化膜42を形成する。
その後、図14(c)に示すように、Si窒化膜42の上面に、カラーフィルタ43およびマイクロレンズ44を順次形成することによって、画素アレイ23aを製造する。ここで、カラーフィルタ43およびマイクロレンズ44の形成工程において加熱を伴う工程がある。また、例えば、製造工程の最後に、N型のSi領域37と第1のSi酸化膜39との界面に存在するダングリングボンドを水素により終端させる、所謂シンター処理と呼ばれる熱処理工程がある。これらの工程の熱の影響によって第1のSi酸化膜39から出るガスが脱ガスGとして開口部8を介して外部へ放出する。
上述したように、第2の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法では、固定電荷膜40aに光電変換素子38の受光面3の周囲を取り囲むように複数の開口部8を形成する。これにより、後の加熱を伴う工程において第1のSi酸化膜39から出るガスが開口部8を介して外部へ脱気することができる。したがって、固定電荷膜40aが第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散することを防止できるため、光電変換素子38の受光面3近傍に均一に正の電荷を誘起させることができるので、暗電流を十分に低減することができる。
なお、第2の実施形態に係る画素アレイ23aは、固定電荷膜40aに光電変換素子38の受光面3の周囲を取り囲むように複数の開口部8を設けているが、開口部8の数や配設位置はこれに限定されない。他の形態としては、開口部8を、隣接する光電変換素子38間の領域の固定電荷膜40aに1個設けてもよい。
また、第2の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法では、第1のSi酸化膜39を形成した後、および第2のSi酸化膜41を形成した後に、第1のSi酸化膜39および第2のSi酸化膜41に対して脱ガス処理を行っていない。第2の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法でも、第1の実施形態に係る固体撮像装置14の製造方法において行った脱ガス処理と同様の脱ガス処理を第1のSi酸化膜39および第2のSi酸化膜41に対して行ってもよい。
また、他の形態としては、第1のSi酸化膜39に対して脱ガス処理を行わなくても、固定電荷膜40の開口部8から第1のSi酸化膜39から出るガスを脱気できるため、第2のSi酸化膜41に対して脱ガス処理を行ってもよい。
このように、第1のSi酸化膜39および第2のSi酸化膜41に対して脱ガス処理を行うことで、固定電荷膜40aが第1のSi酸化膜39から剥離あるいは飛散することを抑制できるため、暗電流を十分に低減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
一つの実施形態によれば、固体撮像装置の製造方法が提供される。実施形態に係る固体撮像装置の製造方法は、半導体層に光電変換素子を形成し、半導体層における光電変換素子の受光面側表面と光電変換素子を囲む半導体層の表面に酸化膜を形成し、光電変換素子の受光面側表面に形成された酸化膜の表面に、負の固定電荷を保持する固定電荷膜を形成し、光電変換素子を囲む半導体層の表面に形成された酸化膜の表面に、開口を有する負の固定電荷を保持する固定電荷膜を形成する。