JP2019073649A - セルロース誘導体組成物の保存方法 - Google Patents

セルロース誘導体組成物の保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロース誘導体組成物を保存後に水溶液にした場合であっても、該水溶液の透明性(光の透過率)が高く、かつ、セルロース誘導体が有する性能の劣化が抑制されたセルロース誘導体組成物の保存方法、及び洗浄剤組成物の製造方法に関する。【解決手段】セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程を有し、該セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、該セルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、セルロース誘導体組成物の保存方法。【選択図】なし

Description

本発明はセルロース誘導体組成物の保存方法に関する。
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体は、その安全性の高さから、医療、食品をはじめ、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の配合成分や、分散剤、改質剤、凝集剤等に用いられ、その用途は多岐にわたる。
セルロース誘導体の保管方法に関し、特許文献1には、酸素濃度0.3%以下の雰囲気で、セルロース系ポリマーを保管することを特徴とするセルロース系ポリマーの保管方法が記載されている。
特開2012−121957号公報
セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を粉末状態で保存すると、その後に水溶液を調製して製品に配合した場合に、十分な性能が得られない場合があった。
本発明は、セルロース誘導体組成物を保存後に水溶液にした場合であっても、該水溶液の透明性(光の透過率)が高く、かつ、セルロース誘導体が有する性能の劣化が抑制されたセルロース誘導体組成物の保存方法、並びにセルロース誘導体水溶液及び化粧料の製造方法に関する。
本発明者等は、セルロース誘導体及び塩基性化合物を含有するセルロース誘導体組成物を、粉末状で保存するに際し、特定の酸素濃度で保存することにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は以下の<1>〜<3>に関する。
<1> セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程を有し、該セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、該セルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、セルロース誘導体組成物の保存方法。
<2> 下記工程1及び工程2を有し、セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、工程1におけるセルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、セルロース誘導体水溶液の製造方法。
工程1:セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程
工程2:工程1で保存したセルロース誘導体と、水とを混合して該セルロース誘導体を水溶液化する工程
<3> 下記工程1〜工程3を有し、セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、工程1におけるセルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、化粧料の製造方法。
工程1:セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程
工程2:工程1で保存したセルロース誘導体と、水とを混合して該誘導体を水溶液化する工程
工程3:前記工程2で得られたセルロース誘導体水溶液と界面活性剤とを混合する工程
本発明によれば、セルロース誘導体組成物を保存後に水溶液にした場合であっても、該水溶液の透明性(光の透過率)が高く、かつ、セルロース誘導体が有する性能の劣化が抑制されたセルロース誘導体組成物の保存方法、並びにセルロース誘導体水溶液及び化粧料の製造方法が提供される。
[セルロース誘導体組成物の保存方法]
本発明のセルロース誘導体組成物の保存方法(以下「本発明の保存方法」ともいう)は、セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程を有し、該セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、該セルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である。
本発明者らは、セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を保存後、洗浄剤組成物等に配合すると、製造直後のセルロース誘導体組成物を用いた場合に比べて、品質の劣化が生じる場合があることを見出した。
具体的には、セルロース誘導体がカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースであり、該セルロース誘導体をシャンプー剤に配合した場合には、製造直後のセルロース誘導体では、すすぎ時に髪のきしみがほとんどなく、絡まりを感じることなく髪に指を通せる。一方、セルロース誘導体組成物を保存後、水溶液化した場合には製造直後のセルロース誘導体を水溶液化したものに比べて濁りが生じ、また化粧料、例えばシャンプー剤に配合した場合には、すすぎ時に髪がきしみ、絡まりを強く感じる等、セルロース誘導体の有する、すすぎ時の髪のきしみや絡まりの抑制効果が劣化している場合があった。
この原因について検討した結果、保存時の酸素濃度を8%以下にすることによって、上述のような品質の劣化が抑制されることを見出した。その詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように推定される。
セルロース誘導体を塩基性化合物の共存下で保存した場合、酸素濃度が8%を超えると、セルロース誘導体の分解が促進される一方、酸素濃度が8%以下の状態で保存することで、セルロース誘導体の分解が抑制されたものと推定される。具体的には、セルロース誘導体がカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースである場合には、分解によりカチオン性基の分布にばらつきが生じ、カチオン性基が疎な部分が存在すると、水への溶解性が低下することにより、水溶液の透明性が低下すると考えられる。また、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースが有する、毛髪洗浄後のすすぎ時の絡まりやきしみを抑制する性能も低下すると考えられる。
なお、上述のような品質の低下は、セルロース誘導体を、塩基性化合物の存在下で保存した場合の問題点であり、塩基性化合物の非存在下では、数日の保存によって上述のような問題は殆んど生じない。従って、上述の課題は、塩基性化合物の存在によって惹起されるものである。
<保存条件>
−酸素濃度−
本発明において、セルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する。保存後にセルロース誘導体を水溶液とした場合の透明性に優れると共に、保存後の性能の劣化を抑制する観点から、酸素濃度は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下であり、生産性の観点から、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.4%以上、より更に好ましくは0.5%以上である。
保存時の酸素濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
−塩基性化合物−
本発明において、セルロース誘導体組成物中、塩基性化合物の含有量は、セルロース誘導体の製造の観点から、セルロース誘導体の無水グルコースユニット(AGU)に対して、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.2当量以上、更に好ましくは0.3当量以上であり、保存時の劣化を抑制する観点から、セルロース誘導体のAGUに対して、好ましくは1.5当量以下、より好ましくは1当量以下、更に好ましくは0.7当量以下、より更に好ましくは0.5当量以下である。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類等が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる1種以上が更に好ましく、水酸化ナトリウムがより更に好ましい。
−水分含有量−
保存時のセルロース誘導体組成物中の水分含有量は、本発明の効果を高める観点から、50質量%以下である。セルロース誘導体組成物中の水分含有量は、上述の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下であり、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
セルロース誘導体組成物中の水分含有量が少ないと、セルロース誘導体が気体と接触し易くなり、品質が劣化するリスクが上がり、結果として、本発明の効果が高まる。一方、水分含有量が多いと、品質劣化の可能性は低くなるものの、保存容量が増加する等の問題がある。
保存時のセルロース誘導体組成物中の水分含有量は、仕込み量から算出してもよく、また、実施例に記載のセルロースの含水量と同様の方法で実測してもよい。
本発明において、セルロース誘導体組成物は、水以外の溶媒(以下、「非水溶媒」ともいう。)を含有していてもよいが、非水溶媒の含有量は、発明の効果を発揮する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下であり、0質量%であってもよい。
非水溶媒としては、水との相溶性の観点から、イソプロパノールやtert−ブタノール等の2級又は3級の炭素数3〜4の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3〜6のケトン;1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
更に、セルロース誘導体組成物中の水及び非水溶媒の合計含有量(全溶媒含有量)は、発明の効果を発揮する観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下であり、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
−保存温度−
本発明において、セルロース誘導体組成物を保存時の温度(保存温度)は、保存後にセルロース誘導体を水溶液とした場合の透明性に優れると共に、保存後の性能の劣化を抑制する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下であり、生産性の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上である。
−保存圧力−
本発明において、セルロース誘導体組成物を保存時の圧力(保存圧力)は特に限定されず、減圧下で保存してもよく、加圧下で保存してもよいが、保存容易性の観点から、常圧下で保存することが好ましい。
保存圧力は、好ましくは−0.1MPaG以上、より好ましくは−0.05MPaG以上、更に好ましくは−0.01MPaG以上、より更に好ましくは−0.005MPaG以上であり、そして、好ましくは0.1MPaG以下、より好ましくは0.05MPaG以下、更に好ましくは0.01MPaG以下、より更に好ましくは0.005MPaG以下である。
−保存時間−
本発明において、セルロース誘導体組成物を保存する時間は、本発明の効果を発揮する観点から、好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上、更に好ましくは30時間以上である。上限は特に限定されないが、例えば1年以下、6ヶ月以下、1ヶ月以下、10日以下、5日以下である。
<セルロース誘導体組成物及びその製造方法>
本発明において、セルロース誘導体組成物は、セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有する。
また、セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つである。
セルロース誘導体は、塩基性化合物の存在下に、粉末状のセルロースと、炭素数2以上5以下のアルキレンオキシド、及びカチオン化剤から選択される少なくとも1つとを反応させる工程を経て得られたセルロース誘導体であることが好ましい。
塩基性化合物としては、前述のものが挙げられる。
上述した粉末状のセルロースと、アルキレンオキシド及びカチオン化剤から選択される少なくとも1つとを反応させる工程における塩基性化合物の含有量は、セルロース誘導体を効率的に製造する観点から、セルロースの無水グルコースユニット(AGU)に対して、好ましくは0.5当量以上、より好ましくは0.7当量以上、更に好ましくは0.8当量以上である。一方、塩基性化合物の含有量を抑制し、セルロース誘導体の保存安定性を向上させる観点から、セルロースのAGUに対して、好ましくは2当量以下、より好ましくは1.5当量以下、更に好ましくは1.2当量以下である。
以下、それぞれのセルロース誘導体について説明する。
−ヒドロキシアルキルセルロース−
本発明において、ヒドロキシアルキルセルロースは、以下の工程(I)及び工程(II)を有する方法により製造されることが好ましい。この方法により、粉末状のヒドロキシアルキルセルロースを生産性よく得ることができる。
工程(I):セルロース含有原料を粉砕処理し、粉末状セルロースを得る工程
工程(II):工程(I)で得られた粉末状セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを塩基性化合物の存在下で反応させてヒドロキシアルキルセルロースを得る工程
上記工程(II)において、塩基性化合物を存在させることで、本発明のセルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロースである、セルロース誘導体組成物が得られる。なお、塩基性化合物の好ましい含有量については、後述する。
(工程(I))
工程(I)では、セルロース含有原料を粉砕処理し、粉末状セルロースを得る。当該粉砕処理によりセルロース含有原料を低結晶化及び小粒径化して、工程(II)で使用するヒドロキシアルキル化剤との反応性を高めることができる。
〔セルロース含有原料〕
本発明において用いられるセルロース含有原料としては、化学的に純粋なセルロースの他、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造される木材パルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等、種々のセルロース含有原料を用いることができる。これらの中でも、パルプ類が好ましい。
低結晶性でかつ小粒径の粉末状セルロースを得る方法としては、例えばセルロース含有原料を必要に応じて裁断処理及び乾燥処理した後、粉砕機により粉砕処理する方法が挙げられる。特に、後述するように、粉砕処理を多段階に分けて行う方法、すなわち、セルロース含有原料を粗粉砕処理し、次いで、小粒径化処理を行う方法を採用することが好ましい。当該粉砕処理では、セルロース含有原料を粉末化すると共に低結晶化することができるので、工程(II)で用いるヒドロキシアルキル化剤との反応性がより向上する。以下、粉砕処理について説明する。
粉砕処理に供するセルロース含有原料の大きさとしては、生産性を向上させる観点から、好ましくは1mm角以上、より好ましくは1.5mm角以上であり、後の粉砕処理における粉砕に要する負荷を軽減する観点、及び後述する乾燥処理を効率よく容易に行う観点から、好ましくは70mm角以下、より好ましくは50mm角以下である。上述の好ましい大きさとなるように、適宜、裁断処理を行うことが好ましい。
セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、セルロース含有原料を粉砕処理する際の水分量は少ない方が好ましい。粉砕処理時のセルロース含有原料中の水分量の下限は、コストの観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、該水分量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、より更に好ましくは3.0質量%以下である。セルロース含有原料中の水分量は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
セルロース含有原料の水分量を所望の範囲とするために、適宜、乾燥を行うことが好ましい。
〔粉砕処理〕
セルロース含有原料を効率よく粉末化及び低結晶化する観点から、粉砕処理は多段階に分けて行うことが好ましい。粉砕処理を多段階に分けて行う場合、裁断処理及び乾燥処理を行ったセルロース含有原料を粗粉砕処理し、次いで、小粒径化処理を行う方法が好ましい。
≪粗粉砕処理≫
粗粉砕処理では、必要に応じ裁断処理及び乾燥処理を行ったセルロース含有原料を粗粉砕し、粉末化及び低結晶化する。粗粉砕処理においては短時間で大量の処理を行うことが可能であるため、低結晶化された粉末状セルロースを効率よく得ることができる。以下、粗粉砕処理後に得られるセルロースを「粗粉砕セルロース」ともいう。
粗粉砕処理に用いられる粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動式媒体ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、カッターミル等が挙げられる。これらの粉砕機は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、セルロース含有原料の粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、容器駆動式媒体ミルが好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルがより好ましく、振動ロッドミルが更に好ましい。粉砕方法としては、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
粉砕処理に用いる粉砕機の材質、媒体の材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
≪小粒径化処理≫
小粒径化処理では、粗粉砕処理で得られた粗粉砕セルロースを更に粉砕し、小粒径化する。粗粉砕処理に続いて小粒径化処理を行うことで、体積中位粒径(D50)がより低減された粉末状セルロースを効率よく得ることができる。
小粒径化処理に用いられる粉砕機としては、高速回転式微粉砕機が好ましい。高速回転式微粉砕機とは、ハンマー、ブレード、ピン等を高速回転させ、衝撃、せん断により粉砕筒内に装填された粗粉砕セルロースの粉砕を行う装置である。
小粒径化処理に用いられる高速回転式微粉砕機としては、「改訂六版 化学工学便覧」(社団法人化学工学会編集、丸善株式会社、1999年発行)843頁に記載の高速回転ミル及び分級機内蔵型高速回転ミルに分類されるものが挙げられる。これらの高速回転ミル及び分級機内蔵型高速回転ミルの中でも、粗粉砕セルロースの小粒径化の観点から、ハンマーミル、ディスインテグレーター、ターボ型ミル、及びアニュラー型ミルからなる群から選ばれるいずれか1種が好ましい。
ハンマーミルとしては株式会社ダルトン製のアトマイザーやサンプルミル、ディスインテグレーターとしては株式会社奈良機械製作所製の自由粉砕機、ターボ型ミルとしてはターボ工業株式会社製のターボミル、アニュラー型ミルとしては株式会社アーステクニカ製のクリプトロンシリーズを、それぞれ好ましく使用することができる。
上記の高速回転式微粉砕機は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
小粒径化処理は、バッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性の観点から連続処理が好ましい。
上記の粉砕処理により、セルロース含有原料の粉末化及び低結晶化が進行し、粉末状セルロースを得ることができる。
工程(II)で使用するヒドロキシアルキル化剤との反応性を向上させる観点から、粉砕処理後に得られる粉末状セルロースは、その結晶化指数が、好ましくは40.0%以下、より好ましくは20.0%以下、更に好ましくは10%以下であり、生産性の観点からは、好ましくは−30.0%以上である。
本発明においてセルロースの結晶化指数とは、セルロースのI型結晶構造に由来するセルロースの結晶化指数を指すものであり、X線結晶回折測定の結果から下記計算式(1)により求められる。結晶化指数の値が低いほど、セルロースが低結晶性であることを意味する。
結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
粉砕処理後に得られる粉末状セルロースは、コストの観点から、水分量が好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、工程(II)で使用するヒドロキシアルキル化剤との反応性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、より更に好ましくは3.0質量%以下である。
また、粉砕処理後に得られる粉末状セルロースは、生産性の観点から、そのD50が、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。また、工程(II)で使用するヒドロキシアルキル化剤との反応均一性の観点からは、D50は好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
なお工程(I)では、塩基性化合物を添加せずに粉砕処理を行うことが好ましい。粉砕機内に塩基性化合物が滞留すると、コンタミネーションや、製品の品質の不安定化の原因となる可能性があるが、これを回避できるためである。
(工程(II))
工程(II)では、工程(I)で得られた粉末状セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを塩基性化合物の存在下で反応させてヒドロキシアルキルセルロースを得る。
粉末状セルロースと塩基性化合物とから生成されるアルカリセルロースはヒドロキシアルキル化剤との反応活性が高い。また塩基性化合物はセルロースとヒドロキシアルキル化剤との反応における反応触媒としても作用するので、ヒドロキシアルキルセルロースを効率よく得ることができる。
塩基性化合物及びヒドロキシアルキル化剤の添加順序には特に制限はないが、粉末状セルロースと塩基性化合物とを混合した後に、ヒドロキシアルキル化剤を添加して反応させることが好ましい。粉末状セルロースと塩基性化合物とを混合することで反応活性の高いアルカリセルロースが生成するので、その後のヒドロキシアルキル化剤との反応が効率よく進行するためである。
工程(II)の反応は、固相状態で行われることが好ましい。固相状態での反応とは、液相が実質的に存在しない状態での反応をいい、溶液中又は懸濁液中での反応とは異なるものである。
工程(II)の反応を固相状態で行うことにより、粉末状セルロースとヒドロキシアルキル化剤との反応が効率よく進行する。また、例えば工程(II)の反応系内に大過剰の水が存在すると、後述するエポキシアルカン等のヒドロキシアルキル化剤を用いた場合、エポキシアルカンの水和反応(副反応)等が起こり、副生成物の生成及び収率低下が起こりやすくなる。そのため工程(II)の反応を固相状態で行い、かつ反応時の水分量を少なくすることで、上記副反応を抑制し、収率を向上させることができる。
工程(II)における反応時の水分量は、粉末状セルロース中に塩基性化合物及びヒドロキシアルキル化剤を均一に分散させる観点からは、粉末状セルロース中のセルロースの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは0質量部超であり、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは5.0質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは15質量部以上である。また、上記副反応を抑制して収率を向上させる観点からは、好ましくは100質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、より更に好ましくは55質量部以下である。本発明においては、工程(II)における反応時の水分量が、セルロースの乾燥質量100質量部に対して、100質量部以下であれば固相状態での反応となる。
工程(II)における反応時の水分量は、工程(II)に供される粉末状セルロース中の水分量と、工程(II)で必要に応じ添加する水の量の合計を意味する。
例えば工程(II)では、まず、粉末状セルロース、塩基性化合物、必要に応じて水を加えて混合し、撹拌する。水を添加する場合、工程(II)の反応時の水分量が好ましくは上記範囲となるよう添加量を調整する。
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物としては、前述のものが挙げられる。
塩基性化合物の使用量は、粉末状セルロースとヒドロキシアルキル化剤との反応を効率よく進行させる観点から、粉末状セルロースの無水グルコースユニット(AGU)に対して、好ましくは0.5当量以上、より好ましくは0.7当量以上、更に好ましくは0.8当量以上である。一方、塩基性化合物量を抑制し、セルロース誘導体化合物の保存安定性を向上させる観点から、粉末状セルロースのAGUに対して、好ましくは1.5当量以下、より好ましくは1.3当量以下、更に好ましくは1.2当量以下、より更に好ましくは1.1当量以下である。
すなわち、セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースである場合には、塩基性化合物の含有量は、セルロース誘導体の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.5当量以上、より好ましくは0.7当量以上、更に好ましくは0.8当量以上であり、そして、好ましくは1.5当量以下、より好ましくは1.3当量以下、更に好ましくは1.2当量以下、より更に好ましくは1.1当量以下である。
なお、AGUに対して0.5当量の塩基性化合物とは、AGU1モルに対して、0.5モル当量の塩基性化合物の意である。
塩基性化合物を添加する方法としては、粉末状セルロース中に塩基性化合物を均一に分散させる観点から、粉末状セルロースに塩基性化合物の水溶液を噴霧して添加する方法が好ましい。
セルロースの着色を避ける観点、反応中のセルロース主鎖の開裂による分子量の低下を避ける観点から、上記撹拌、及び以後の反応は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
〔ヒドロキシアルキル化剤〕
次いで、上記方法で得られた混合物(アルカリセルロースを含む混合物)にヒドロキシアルキル化剤を添加して、アルカリセルロースとヒドロキシアルキル化剤とを反応させる。
ヒドロキシアルキル化剤の具体例としては、エポキシアルカン(アルキレンオキシド)、アルキルグリシジルエーテル、アルキルハロヒドリンエーテル等が挙げられる。これらの中でも、反応時に塩の生成がない観点から、エポキシアルカン及びアルキルグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、エポキシアルカンがより好ましい。
エポキシアルカン(アルキレンオキシド)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシオクタデカン等の炭素数2以上20以下のエポキシアルカンが挙げられる。エポキシアルカンの炭素数は、好ましくは3以上であり、また、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下、より更に好ましくは4以下である。
上記の中でも、ヒドロキシアルキル化剤としては、炭素数2以上5以下のアルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、プロピレンオキシドが更に好ましい。
ヒドロキシアルキル化剤の使用量に限定はなく、所望の導入量に応じて適宜調整すればよい。本発明の効果を得る観点から、ヒドロキシアルキル化剤の使用量は、工程(II)で用いられる粉末状セルロースのAGUに対して、好ましくは0.50当量以上、より好ましくは1.0当量以上、更に好ましくは3.0当量以上である。また、コストの観点から、ヒドロキシアルキル化剤の使用量は、工程(II)で用いられる粉末状セルロースのAGUあたり、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下、更に好ましくは8.0当量以下、より更に好ましくは6.0当量以下、より更に好ましくは5.0当量以下である。
工程(II)における反応温度及び反応時間は特に限定されないが、反応速度を向上させる観点から、反応温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上である。また、粉末状セルロース又はヒドロキシアルキルセルロースの安定性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
反応時間は、反応収率の観点から好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.3時間以上であり、生産性の観点からは、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。なお工程(II)の反応時間とは、ヒドロキシアルキル化剤の添加開始から反応終了までの経過時間をいう。
上記反応条件においてヒドロキシアルキル化剤が気体である場合、反応は加圧条件下で行うことが好ましい。その際の反応圧力は、ヒドロキシアルキル化剤の沸点、系内のヒドロキシアルキル化剤の存在量、反応温度等を調整することにより適宜調整可能である。反応時の圧力は通常0.001MPaG(ゲージ圧)以上、10MPaG以下であり、反応速度、及び設備負荷の観点から、0.005MPaG以上が好ましく、0.02MPaG以上がより好ましく、そして、1MPaG以下が好ましく、0.5MPaG以下がより好ましい。
工程(II)で用いる装置は、反応槽内に撹拌翼を有する機械撹拌式混合機と、該反応槽内に前記塩基性化合物を噴霧供給しうる噴霧ノズルとを備えた装置が好ましい。
前記工程(I)及び工程(II)を経て、粉末状のヒドロキシアルキルセルロースを得ることができる。当該ヒドロキシアルキルセルロースとしては、毛髪洗浄剤組成物に配合した際に、良好な泡立ち及びすすぎ感を付与できるカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースを製造する観点から、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシブチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
−カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース−
本発明において、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースは、上述のようにして得られたヒドロキシアルキルセルロースに対して、カチオン化剤を反応させる工程(以下、工程(III))を行うことで得られる。
(工程(III))
〔カチオン化剤〕
本発明においてカチオン化剤は、カチオン化剤単独で使用してもよく、又は、カチオン化剤を溶媒に溶解させた溶液で使用してもよいが、ヒドロキシアルキルセルロースにカチオン化剤を均一に分散させる観点から、液状のカチオン化剤単独又はカチオン化剤を溶媒に溶解させた溶液の形態で使用することが好ましい。該溶媒は、カチオン化剤が溶解する溶媒であれば特に制限されず、水、有機溶剤、並びにこれらの混合物のいずれでもよい。粉末状のヒドロキシアルキルセルロースに噴霧供給することが好ましく、カチオン化剤溶液の濃度は、カチオン化剤溶液を噴霧供給可能である限り、特に限定されないが、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースを毛髪洗浄剤組成物に配合した際に良好な泡立ち及びすすぎ感を付与する観点、並びに生産性の観点から、有効分量として好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。
本発明に用いられるカチオン化剤は、下記式(1)又は(2)で示される化合物が好ましい。
式(1)及び(2)において、R1〜R3は各々独立に炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表す。式(2)においてZはハロゲン原子を表す。
得られるセルロース誘導体の水溶性の観点から、R1〜R3は炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、メチル基が更に好ましい。Xとしては塩素、臭素及びヨウ素などが挙げられるが、得られるセルロース誘導体の水溶性の観点からは塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。
式(2)において、Zは、得られるセルロース誘導体の水溶性の観点から塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。
式(1)又は式(2)で表されるカチオン化剤としては、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の塩化物、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の臭化物が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物が更に好ましい。
カチオン化剤の使用量に特に限定はなく、所望するカチオン性基の導入量、及び反応の収率に応じて適宜調整すればよい。
カチオン化剤の使用量は、カチオン性基導入による性能発揮の観点から、工程(III)で用いられる粉末状のヒドロキシアルキルセルロース中のセルロースのAGUあたり、好ましくは0.001当量以上、より好ましくは0.01当量以上、更に好ましくは0.10当量以上、より更に好ましくは0.30当量以上である。また、性能及びコストの観点から、カチオン化剤の使用量は、工程(III)で用いられる粉末状のヒドロキシアルキルセルロース中のセルロースのAGUあたり、好ましくは5.0当量以下、より好ましくは3.0当量以下、更に好ましくは2.0当量以下、より更に好ましくは1.5当量以下、より更に好ましくは1.0当量以下、より更に好ましくは0.80当量以下である。
カチオン化剤として前記式(2)で表される化合物を用いる場合、反応に際し理論量のハロゲン化水素が生成し、このハロゲン化水素と塩基性化合物とが塩を形成するため、その分の塩基性化合物が消費される。従って、カチオン化剤として前記式(2)で表される化合物を用いる場合は、前記の塩基性化合物の使用量に加え、更に前記式(2)で表される化合物に対し理論量の塩基性化合物を添加してもよい。
なお、カチオン化剤に対して、塩基性化合物が過剰量存在下にて、工程(III)を行うことが好ましい。
工程(III)で用いられる反応装置としては、前記ヒドロキシアルキル化工程と同様のものが用いられる。
カチオン化反応において、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化剤、及び必要であれば水及び/又は非水溶媒の添加順序は特に限定されないが、ヒドロキシアルキルセルロースに触媒、及び必要であれば、水及び/又は非水溶媒を添加し、十分撹拌混合して触媒を均一に分散した後、カチオン化剤を添加することが好ましい。
カチオン化反応における反応温度は、反応速度、カチオン化剤の分解や得られるカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースの着色抑制といった観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
また、反応時の着色抑制の観点から、カチオン化反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
本発明の製造方法により得られるカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースは、毛髪洗浄剤組成物に配合した際に、良好な泡立ち及びすすぎ感を付与できる観点から、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース及びカチオン化ヒドロキシブチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースは、毛髪洗浄剤組成物に配合した際に良好な泡立ち及びすすぎ感を付与する観点から、セルロース主鎖を構成するセルロースのAGU1モルあたりに対するカチオン性基の置換度(以下「カチオン置換度」ともいう)が、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.10以上である。また、コストの観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.80以下、より更に好ましくは0.50以下、より更に好ましくは0.30以下である。
また、毛髪洗浄剤組成物に配合した際に良好な泡立ち及びすすぎ感を付与する観点から、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースのセルロース主鎖を構成するセルロースのAGU1モルあたりに対するアルキレンオキシ基の平均付加モル数は、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは2.0以上である。また、コストの観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8.0以下、より更に好ましくは5.0以下である。
本発明の製造方法で得られるカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースは、ヘアシャンプーの他、例えば、リンス、トリートメント、コンディショナー等の毛髪化粧料組成物の配合成分や分散剤、改質剤、凝集剤等の幅広い分野で利用することができる。当該カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースは水に溶解させて水溶液の状態で用いることが好ましい。
−カチオン化セルロース−
本発明において、カチオン化セルロースは、以下の工程(I)及び工程(II’)を有する方法により製造されることが好ましい。この方法により、粉末状のカチオン化セルロースを生産性よく得ることができる。
工程(I):セルロース含有原料を粉砕処理し、粉末状セルロースを得る工程
工程(II’):工程(I)で得られた粉末状セルロースとカチオン化剤とを塩基性化合物の存在下で反応させてカチオン化セルロースを得る工程
(工程(I))
上記工程(I)は、ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法における工程(I)と同じであり、その好ましい範囲も同様である。
(工程(II’)
工程(II’)では、工程(I)で得られた粉末状セルロースとカチオン化剤とを塩基性化合物の存在下で反応させてカチオン化セルロースを得る。
工程(II’)の反応は、固相状態で行われることが好ましい。固相状態での反応とは、液相が実質的に存在しない状態での反応をいい、溶液中又は懸濁液中での反応とは異なるものである。
工程(II’)は、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法における工程(III)と好ましい態様は同じである。
[セルロース誘導体水溶液製造方法]
本発明のセルロース誘導体水溶液の製造方法は、下記工程1及び工程2を有し、セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、工程1におけるセルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である。
工程1:セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程
工程2:工程1で保存したセルロース誘導体と、水とを混合して、該セルロース誘導体を水溶液化する工程
<工程1>
工程1は、上述したセルロース誘導体組成物の保存方法と同様であり、好ましい範囲も同じである。
<工程2>
工程2は、工程1で保存したセルロース誘導体と水とを混合して、該誘導体を水溶液化する工程である。
工程2における混合方法には特に制限はなく、公知の方法が用いられる。セルロース誘導体の溶解性の観点からは、混合機内に水を仕込んで撹拌しながらセルロース誘導体を添加して混合し、40℃以上95℃以下の温度に昇温することが好ましい。
工程2におけるセルロース誘導体の使用量は、水に可溶な量である限り特に制限されないが、水溶液におけるセルロース誘導体の濃度として、好ましくは1.0質量%以上、20質量%以下の範囲となる量である。化粧料としての効果を有効に発揮できることから、水溶液におけるセルロース誘導体の濃度は、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは5.0質量%以上である。また、セルロース誘導体の溶解性、及び得られる水溶液のハンドリング性の観点から、当該濃度は、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは9質量%以下である。
工程2における混合温度は、セルロース誘導体の溶解性及び撹拌効率の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上である。また、セルロース誘導体の安定性、エネルギー効率の観点から、当該混合温度は、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
中和剤は、水溶液の調製に用いたセルロース誘導体組成物中に残存する塩基性化合物を中和するために必要に応じて用いる。当該中和剤としては無機酸、有機酸のいずれも用いることができるが、中和調整のしやすさの観点から有機酸が好ましく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、タルトロン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、オキシフタル酸、クエン酸等が挙げられる。コスト及び取扱い性の観点から、乳酸、リンゴ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、リンゴ酸がより好ましい。
[化粧料の製造方法]
本発明の化粧料の製造方法は、下記工程1〜工程3を有し、セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、工程1におけるセルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、化粧料の製造方法。
工程1:セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程
工程2:工程1で保存したセルロース誘導体と、水とを混合して該誘導体を水溶液化する工程
工程3:前記工程2で得られたセルロース誘導体水溶液と界面活性剤とを混合する工程
前記工程1及び工程2は、セルロース誘導体組成物の製造方法における工程1及び工程2と同様であり、好ましい範囲も同様である。
工程3における混合方法には特に制限はなく、公知の方法が用いられる。工程3で得られる化粧料中、セルロース誘導体の含有量は、毛髪のきしみを低減する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、乾燥後に毛髪に残留感を低減する観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
工程3で得られる化粧料中、界面活性剤の含有量は、洗浄性能の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、コストを低減する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(界面活性剤)
工程3において、界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、化粧料を毛髪洗浄剤組成物として使用する場合には、これらの中でもアニオン界面活性剤であることが好ましい。
−アニオン界面活性剤−
アニオン界面活性剤としては、疎水性部位を有する硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩、アミノ酸塩が挙げられる。
具体的には、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;炭素数8以上16以下の高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩等が挙げられる。
アニオン界面活性剤は、洗浄性、起泡性及び泡質の観点、すすぎ時の髪の絡まりのなさ、きしみ感のなさ、ばらけやすさ、リッチ感の観点から、疎水性部位として炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましい。該アルキル基又はアルケニル基は、より好ましくは炭素数10以上であり、また、より好ましくは炭素数16以下である。
(その他の成分)
本発明において、化粧料は、セルロース誘導体及び界面活性剤に加えて、その他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、有機溶剤、セルロース誘導体以外のカチオン化ポリマー、シリコーン類、油剤、粘度調整剤が例示される。
また、通常の化粧料に使用される各主成分を必要に応じて含有してもよく、具体的には、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤、着色剤、エキス類(ユーカリの極性溶媒抽出物、真珠層を有する貝殻又は真珠から得られるタンパク質又はその加水分解物、蜂蜜、ローヤルゼリー、シルクから得られるタンパク質又はその加水分解物、マメ科植物から得られるタンパク含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、アロエ抽出物、ハス抽出物、ザクロ抽出物、ノバラ抽出物、カモミラ抽出物、カンゾウ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等)、酸化チタン等の前述した成分以外のパール化剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シアバター、ローズ水、オレンジ油、ユーカリ油等が例示される。
本発明において、化粧料中の水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
本発明の製造方法により得られる化粧料は、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー等の毛髪化粧料として好適であるが、これに限定されず、ハンドソープ、洗顔料、全身洗浄料等であってもよい。
(1)水分量の測定
パルプ、粉末状セルロースの水分量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製「FD−610」)を用いて測定した。測定1回あたり試料5gを用い、試料を平らにならして温度120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が0.05%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量をセルロースに対する質量%に換算し、各水分量とした。
(2)体積中位粒径(D50)の測定
粉末状セルロースのD50は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS13 320」)を用い、乾式法(トルネード方式)にて測定した。具体的には粉末状セルロース20mLをセルに仕込み、吸引して測定を行った。
(3)結晶化指数の算出
粉末状セルロースのX線回折強度を、X線回折装置(株式会社リガク製「MiniFlexII」)を用いて以下の条件で測定し、前記計算式(1)に基づいてセルロースのI型の結晶化指数を算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:30kV,管電流:15mA,測定範囲:回折角2θ=5〜35°、X線のスキャンスピードは40°/minで測定した。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
(4)プロピレンオキシ基の平均付加モル数及びカチオン置換度の算出
各例で得られたセルロース誘導体(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース:C−HPC)中のプロピレンオキシ基の平均付加モル数及びカチオン置換度は、元素分析による塩素元素量の測定値、及び分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなくC−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って得られた値から求めた。
具体的には、各例で得られたC−HPCの水溶液を透析膜(分画分子量1,000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られたC−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、精製C−HPC中に含まれるカチオン性基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(2)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン性基の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100) (2)
次に、分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、精製C−HPC中のヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(3)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OCOH)=75.09〕(b(モル/g))を求めた。
b(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (3)
得られたa及びbと下記計算式(4)、(5)からC−HPCのカチオン置換度(k)及びプロピレンオキシ基の平均付加モル数(m)を算出した。
a=k/(162+k×151.5+m×58) (4)
b=m/(162+k×151.5+m×58) (5)
〔式中、kは、C−HPCのカチオン置換度を示す。mはプロピレンオキシ基の平均付加モル数を示す。〕
製造例
(セルロース誘導体組成物の製造)
<工程(I)>
シート状木材パルプ(Tembec社製「Biofloc HV+」、結晶化指数:82%、水分量:8.5質量%)を、裁断機を用いて約3mm×1.5mm×1mmのチップ状に裁断した。得られたパルプを、乾燥し、連続式振動ミル(ユーラステクノ株式会社製「バイブロミル、YAMT−200」、第1及び第2粉砕室の容量:112L、ステンレス製)を用いて粗粉砕し、更に高速回転式微粉砕機(株式会社ダルトン製、製品名「アトマイザーAIIW−5型」)を用いて粉末状セルロースとした。得られた粉末状セルロースの結晶化指数は−10.7%、体積中位粒径(D50)は69.5μm、水分は1.7質量%であった。
粉末状セルロースを、主翼とチョッパー翼を撹拌機として付属したジャケット付き反応槽に、水分を除いた質量部(乾燥質量)として100質量部を投入した。槽内気相部を窒素で置換した後、撹拌下にて、塩基性化合物である水酸化ナトリウム24.5質量部(粉末状セルロースのAGU1モルに対し1.0モル当量)と水とを混合して得られた水酸化ナトリウム水溶液を噴霧投入した。
水酸化ナトリウム水溶液の調製に用いた水の量は、当該水の量と、粉末状セルロースが含有する水分との合計量が、粉末状セルロースの乾燥質量100質量部に対して、49.8質量部となるよう調整した。
更に、ジャケット温水にて内温を50℃±5℃に調節し、2時間混合を継続した。次に、内温を37℃〜47℃、内圧を0.07〜0.10MPaG(ゲージ圧)に保つよう調節しつつ、プロピレンオキシド(PO)142.9質量部を約8時間かけて投入した。全てのプロピレンオキシドを投入した後、十分に内圧が安定するまで撹拌及び温度調節を約3時間継続した。続けて、カチオン化剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(HAC)の70質量%水溶液(含水量30%、純度90%以上、四日市合成株式会社製、製品名「CTA−65」)112.0質量部(粉末状セルロースのAGU1モルに対しHACとして0.68モル)を噴霧投入し、内温を50℃±5℃に調節しつつ、2時間撹拌を継続した。その後、内温40℃まで冷却し、セルロース誘導体であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(含水量19.4質量%)を得た。カチオン化ヒドロキシプロピルセルロースのPO平均付加モル数は2.34、カチオン置換度は0.17であった。セルロース誘導体組成物中の塩基性化合物の含有量は、0.32当量/AGUであった。
実施例1
製造例で得られたセルロース誘導体組成物300gを、チャック付きアルミ袋(製品名;AL−22、株式会社生産日本社製)に入れ、窒素ガスを袋内に吹き入れ、チャックを閉めた。酸素濃度計(製品名;RO−103KS、飯島電子工業株式会社製)で袋内部の酸素濃度を確認したところ、0.5%であった。更にヒートシールを行い、密封した。これを25℃の温度条件下、36h保存した後、水溶液化を以下の手順で行った。
アンカー翼を備えた3L撹拌槽にて、イオン交換水2,400.0gにセルロース誘導体組成物213.3gを混合し、60℃で4.5h溶解した後、50%リンゴ酸水溶液(扶桑化学株式会社製)15.0g、イオン交換水94.8g、ベンジルアルコール(サンケミカル株式会社製)27.5gを混合し、80℃で0.5h加熱し、更に60℃で約半日静置後、目開き100μmのフィルターでろ過し水溶液を得た。
実施例2
窒素ガスを吹き入れる時間を調節し、酸素濃度を3%とした以外は、実施例1と同様にして保存し、水溶液を得た。
実施例3
窒素ガスを吹き入れる時間を調節し、酸素濃度を8%とした以外は、実施例1と同様にして保存し、水溶液を得た。
比較例1
窒素ガスを吹き入れなかった以外は、実施例1と同様にして保存し、水溶液を得た。袋内の酸素濃度は、空気の酸素濃度20.8%とみなした。
評価方法
〔配合評価〕
毛髪洗浄剤組成物の評価(すすぎ性能)
ヘアカラーを年3回の頻度で使用していた日本人の直毛から、重さ30g、長さ25cm、幅5cmの評価用毛束を作製した。評価用毛束を30秒間40℃の水道水で濡らした後、毛束の含水量が10gになるまで、手で毛束をしごいて余分な水分を除去した。次に、以下に示す毛髪洗浄剤組成物1gを上記毛束に塗布し、20秒間泡立てを行った。
続いて、40℃、流速60mL/sの水道水で20秒間すすぎながら、官能評価を行った。
毛髪洗浄剤組成物は以下に示す組成(アクティブ量を表示)にて配合した。
<毛髪洗浄剤組成物>
実施例又は比較例の水溶液(セルロース誘導体組成物0.1質量%になるように添加)
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド*1 0.1質量%
ラウレス(1)硫酸アンモニウム*2 12.0質量%
ラウレス(4)カルボン酸ナトリウム*3 1.0質量%
ジメチコン混合物*4 0.6質量%
精製水 バランス
合計 100.0質量%
注釈)
*1 グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:ジャガーC−14SK、Solvay社製
*2 ラウレス(1)硫酸アンモニウム:エマール125A、花王株式会社製
*3 ラウレス(4)カルボン酸ナトリウム:アキポ LM−26SD、花王株式会社製
*4 ジメチコン混合物:平均重合度50〜300:1000〜3000=42:18
<配合評価(すすぎ性能)>
すすぎ時に髪のきしみやすさ、指通りの観点から官能評価を研究員3名で行った。評価結果は以下の評価基準で行い、3名の合議の上、決定した。なお、実施例3では、配合評価は行わなかった。
A:髪がほとんどきしまず、絡まりを感じることなく髪に指を通せる。
B:髪のきしみは少なく、髪に指を通した際の絡まりも僅かである。
C:髪がきしみ、髪に指を通す際に絡まりを強く感じる。
〔透過率(透明性)〕
実施例又は比較例で得られた水溶液をイオン交換水で3倍に希釈し、光路長10mmの専用セルに入れ、波長600nmの透過率を測定した(装置名;UV−1800、島津製作所株式会社製)。
表1から明らかなように、酸素濃度が8%以下で保存した場合には、保存後のセルロース誘導体を水溶液とした場合に、光の透過率が高く、透明性に優れていた。また、化粧料に配合した場合に、優れたすすぎ性能を有していた。
一方、酸素濃度が8%を超える、21%で保存した比較例1では、保存後のセルロース誘導体を水溶液とした場合に光の透過率が低く、透明性の劣化が認められた。また、保存後のセルロース誘導体を化粧料に配合した場合、性能の劣化が認められた。
本発明によれば、セルロース誘導体組成物を保存後に水溶液にした場合であっても、該水溶液の透明性(光の透過率)が高く、かつ、セルロース誘導体が有する性能の劣化が抑制されたセルロース誘導体組成物の保存方法が提供される。更に、該セルロース誘導体を配合した化粧料は、良好なすすぎ感が付与される。
本発明の保存方法により保存されたセルロース誘導体は、ヘアシャンプー等の他、リンス、トリートメント、コンディショナー等の毛髪化粧料組成物に好適に用いられる。

Claims (8)

  1. セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程を有し、
    該セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、
    該セルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、
    セルロース誘導体組成物の保存方法。
  2. セルロース誘導体組成物中の塩基性化合物の含有量が、セルロース誘導体の無水グルコースユニットに対して、0.1当量以上1.5当量以下である、請求項1に記載のセルロース誘導体組成物の保存方法。
  3. 前記保存する工程が、−0.005MPaG以上0.005MPaG以下にて保存する工程である、請求項1又は2に記載のセルロース誘導体組成物の保存方法。
  4. 前記保存する工程が、酸素濃度0.5%以上にて保存する工程である、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース誘導体組成物の保存方法。
  5. 前記保存する工程が、50℃以下にて保存する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載のセルロース誘導体組成物の保存方法。
  6. 前記セルロース誘導体が、塩基性化合物の存在下に、粉末状のセルロースと、炭素数2以上5以下のアルキレンオキシド、及びカチオン化剤から選択される少なくとも1つとを反応させる工程を経て得られた粉末状のセルロース誘導体である、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース誘導体の保存方法。
  7. 下記工程1及び工程2を有し、
    セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、
    工程1におけるセルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、セルロース誘導体水溶液の製造方法。
    工程1:セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程
    工程2:工程1で保存したセルロース誘導体と、水とを混合して該セルロース誘導体を水溶液化する工程
  8. 下記工程1〜工程3を有し、
    セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースから選択される少なくとも1つであり、
    工程1におけるセルロース誘導体組成物中の水分含有量が50質量%以下である、化粧料の製造方法。
    工程1:セルロース誘導体と、塩基性化合物とを含有するセルロース誘導体組成物を、酸素濃度8%以下にて保存する工程
    工程2:工程1で保存したセルロース誘導体と、水とを混合して該誘導体を水溶液化する工程
    工程3:前記工程2で得られたセルロース誘導体水溶液と界面活性剤とを混合する工程
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