JP2019072998A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2019072998A
JP2019072998A JP2018157320A JP2018157320A JP2019072998A JP 2019072998 A JP2019072998 A JP 2019072998A JP 2018157320 A JP2018157320 A JP 2018157320A JP 2018157320 A JP2018157320 A JP 2018157320A JP 2019072998 A JP2019072998 A JP 2019072998A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
recording
mpa
mass
viscosity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018157320A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7175673B2 (ja
JP2019072998A5 (ja
Inventor
栄一 中田
Eiichi Nakada
栄一 中田
美奈子 河部
Minako Kawabe
美奈子 河部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to US16/138,432 priority Critical patent/US10654288B2/en
Priority to EP18197901.4A priority patent/EP3473447B1/en
Priority to CN201811210899.4A priority patent/CN109664614B/zh
Publication of JP2019072998A publication Critical patent/JP2019072998A/ja
Publication of JP2019072998A5 publication Critical patent/JP2019072998A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7175673B2 publication Critical patent/JP7175673B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Abstract

【課題】マイナスカールの発生が抑制された記録物を得ることが可能な、裏面排紙を採用したインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】記録ヘッドから水性インクを吐出して、第1面及び第2面を持った記録媒体に画像を記録する記録工程を有するインクジェット記録方法である。記録工程の後に、さらに、第1面及び第2面のうち後に記録した面を重力方向の下側にして排紙する排紙工程を有し、水性インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上であり、水性インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、水性インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、オフィスにおけるインクジェット記録装置の利用頻度が増加しつつある。そして、インクジェット記録装置に対しては、記録速度のさらなる高速化が要求されている。記録速度の向上にあたり、従来のシリアル方式の記録ヘッド(シリアルヘッド)を使用し、いわゆるマルチパスで画像を記録する方法に対して、ライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)を使用し、いわゆる1パスで画像を記録する方法を採用する場合がある。
オフィスで使用される記録装置のうち、電子写真方式の記録装置については、裏面を上に向けた状態で画像が記録された記録媒体(記録物)を排紙する、いわゆる裏面排紙が一般的である。例えば、2ページ分の文章を2枚の記録媒体の片面にそれぞれ記録して裏面排紙する場合、記録面を下側にした状態で1ページ目の記録物が排紙されるとともに、2ページ目の記録物がその上に排紙される。このため、記録物の束を排紙された状態のままひっくり返せば、ページの順番通りに並んで積層した記録物の束を得ることができる。一方、表面を上に向けた状態で記録物を排紙する、いわゆる表面排紙の場合、得られる記録物の束のページ順序は逆になってしまう。したがって、多数の記録物が一度に記録される機会の多いオフィス向けの記録装置の場合、ユーザビリティの観点から裏面排紙が採用されることが多い。
従来のインクジェット記録装置を使用して、コート層を有しない普通紙などの記録媒体に画像を記録すると、記録の数時間後から数日の間に、インクが付与された面を内側にして記録媒体が凹状に変形する、いわゆるカール(プラスカール)が生じやすい。このようなカールの発生を抑制すべく、使用する水溶性有機化合物を規定したインクが提案されている(特許文献1)。また、5mPa・s以上の高粘度インクをインクジェット記録方法に用いることが提案されており、表面排紙により画像を記録することが開示されている(特許文献2)。
特開2005−298813号公報 特開2005−320509号公報
従来のインクジェット記録装置では、以下の2つの理由から、裏面排紙ではなく、表面排紙が広く採用されてきた。まず、インクジェット記録装置は、記録順序を考慮しなくてもよい記録物(年賀状などの郵便物、写真など)や、並べ替えの手間がかからない、少ないページ数の記録物の出力に主に利用されていることが挙げられる。また、水性インクを用いるインクジェット記録方法の場合、インクを速やかに乾燥させる観点から、直前の記録面を上に向けた状態で排紙する表面排紙が有利であることが挙げられる。その一方で、上述の通り、裏面排紙には「ページの順番通りに並んで積層した記録物の束を得ることができる」といった利点がある。
インクジェット記録方式を利用する場合においても、オフィス向けの記録装置などでは、多数の記録物が一度に記録されるような用途を想定して、裏面排紙の採用が検討されるようになってきている。加えて、裏面排紙機構を採用することにより、記録媒体の収容部の上方に記録部や排紙部を配置することが可能となり、装置の設置面積の小型化にもメリットがある。
本発明者らは、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置に特許文献1で提案された組成のインクを適用し、種々の検討を行った。その結果、前述のプラスカールとは異なり、インクが付与された面を外側にして記録媒体が変形するカール(マイナスカール)が記録直後に生じやすくなることが判明した。また、特許文献2で提案された組成のインクを適用しても、マイナスカールが生ずる場合があることが判明した。
したがって、本発明の目的は、マイナスカールの発生が抑制された記録物を得ることが可能な、裏面排紙を採用したインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、記録ヘッドから水性インクを吐出して、第1面及び第2面を持った記録媒体に画像を記録する記録工程を有するインクジェット記録方法であって、前記記録工程の後に、さらに、前記第1面及び前記第2面のうち後に記録した面を重力方向の下側にして排紙する排紙工程を有し、前記水性インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上であり、前記水性インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、前記水性インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、マイナスカールの発生が抑制された記録物を得ることが可能な、裏面排紙を採用したインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を示す断面図である。 裏面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。 裏面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。 裏面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。 表面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。 表面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。 表面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。 表面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)、常圧(1気圧)における値である。
前述の通り、本発明者らは、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置に特許文献1で提案された組成のインクを適用して検討を行った。その結果、記録直後にマイナスカールが発生することが判明した。また、裏面排紙機構とともに、ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して高速記録を行った場合には、マイナスカールがより発生しやすくなることが判明した。記録媒体の搬送経路において、記録ヘッドに対向する箇所を記録媒体が通過する平均速度(線速)が大きくなるほど、マイナスカールがより顕著に発生する。そして、連続記録の際にマイナスカールがひとたび発生すると、排紙トレイに先に排紙された記録物と、後から排紙される記録物とが干渉する。このため、ジャムが発生し、記録物が順序よく積載されなくなる。
マイナスカールが生ずる原因は、プラスカールが生ずる原因とは異なると考えられる。まず、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置を使用した際に生ずるマイナスカールと、従来課題とされてきたプラスカールとの違いについて説明する。
インクが記録媒体に付与されると、インク中の液体成分(水や水溶性有機溶剤)によって、記録媒体を構成するセルロース間の水素結合が切断されるとともに、セルロースが膨潤する。その結果、インクが付与された面を外側にして記録媒体が凸状(排紙された状態でみると凹状)に変形するマイナスカールが生ずる。このマイナスカールは記録直後に生じ、数十秒で停止する。
一方、プラスカールは以下のようにして生ずる。インクが記録媒体に付与されると、記録媒体を構成するセルロースが膨潤する。通常、水性インク中の液体成分のうち、蒸気圧が高いのは水であるため、水溶性有機溶剤よりも先に水が蒸発しはじめる。セルロースを膨潤させていた水が蒸発することで、切断されていたセルロース間の水素結合が再度形成され、セルロースが収縮する。これにより、インクが付与された面を内側にして記録媒体が凹状に変形するプラスカールが生ずる。すなわち、プラスカールは水の蒸発とセルロースの収縮に起因して生ずるので、記録の数時間後から数日の間にゆっくりと進行する。
以上の点を考慮すると、表面排紙機構を備えた従来のインクジェット記録装置を使用した場合においても、マイナスカールを生じさせようとする力は働いていると考えられる。しかし、表面排紙機構を備えたインクジェット記録装置の場合、記録面を上にして排紙されるので、記録媒体の自重のほうが、インクが付与された面を外側にして凸状に変形する力よりも勝る。このため、マイナスカールはほとんど生ずることがない。これに対して、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置の場合、記録媒体を膨潤させる力がそのままマイナスカールを起こす力となるため、マイナスカールが著しく生ずることになる。また、線速が小さい場合、インクが記録媒体に付与された直後から記録媒体の排紙が完了するまでに、通常、数秒〜数十秒の時間を要する。このため、インクが付与された瞬間に記録媒体は膨潤するが、記録媒体の両端部はローラなどによりニップされているため、排紙された際にはマイナスカールはほとんど生じていない状態となっている。
本発明者らは、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置を使用する際に特異的に生じやすいマイナスカールを抑制すべく、種々検討した。インク中の液体成分のヒドロキシ基によって水素結合が切断されたセルロース同士の間に液体成分が入り込み、セルロースが膨潤することで、マイナスカールが引き起こされる。本発明者らは、水溶性有機溶剤の種類によって、コート層を有しない普通紙などの記録媒体の膨潤率に違いが生ずるか否かについて検証した。具体的には、インクジェット用の水性インクに一般的に使用される水溶性有機溶剤や水を記録媒体に一定量付与し、記録媒体の膨潤率を測定した。その結果、膨潤率が最も高いのは水であること、及び水溶性有機溶剤の種類によって膨潤率に差が生ずることが判明した。また、水溶性有機溶剤の様々な物性と、記録媒体の膨潤率との関係について検証した。その結果、蒸発粘度が高い水溶性有機溶剤ほど、記録媒体の膨潤率が小さくなる傾向にあることがわかった。そして、記録媒体の膨潤率が小さい水溶性有機溶剤を用いたインクは、記録媒体の膨潤率が大きい水溶性有機溶剤を用いたインクよりも、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置を用いた場合にマイナスカールの発生を抑制できることを確認した。
上述の通り、水性インクに使用される液体成分のうち、記録媒体の膨潤率が最も高いのは水である。このため、マイナスカールの発生を抑制するには、記録媒体を構成するセルロースにできるだけ水を浸透させないことが重要である。水と共存する水溶性有機溶剤は、蒸発した際の粘度が水よりも高まりやすいので、水よりも遅く記録媒体に浸透する。一方、水は、インクが付与された瞬間に記録媒体に浸透しはじめるとともに、蒸発しはじめる。このため、記録媒体への水溶性有機溶剤の浸透が遅くなった分、水の蒸発が進行する。そして、記録媒体に浸透する水の量が減ることで、記録媒体の膨潤率が小さくなると考えられる。
本発明者らは、インクが記録媒体に付与され、マイナスカールが発生し始めてから、その進行が停止するまでの数十秒の間に、インク中の液体成分がどの程度減少するかを検討した。具体的には、一般的な室内環境を想定した、25℃、相対湿度50%の条件で、各種の記録媒体(普通紙)を用いて検討した。その結果、インクが記録媒体に付与されてから60秒程度でマイナスカールの進行が落ち着くことを確認した。さらに、記録媒体にインクを付与してから60秒後までの記録物の重さを定期的に測定することで、この間に蒸発する液体成分の量を見積もったところ、記録媒体に付与したインクの約20質量%の液体成分が蒸発することがわかった。これらの結果から、マイナスカールが発生し、進行する間に蒸発する液体成分量を考慮すれば、マイナスカールが発生し、進行する状況を的確に捉えることができる。
上述の点を考慮すると、液体成分が蒸発した状態のインクの粘度を高めることで、裏面排紙機構を備えたインクジェット記録装置を使用した場合に生じやすいマイナスカールを抑制しうることになる。そこで、本発明者らは、一定量の液体成分が蒸発したインク(蒸発インク)の粘度と、マイナスカールの発生程度との関係についてさらに検討した。その結果、以下に示す(i)及び(ii)の要件を満たすことで、裏面排紙を採用した場合であってもマイナスカールの発生を抑制できることを見出した。
(i)インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上である。
(ii)インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上である。
インクの粘度η1が5.0mPa・s未満であると、蒸発インクの粘度を高めた場合であっても、マイナスカールの発生を抑制することはできない。また、インクの粘度η1が5.0mPa・s以上であっても、蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が4.0mPa・s未満であると、マイナスカールの発生を抑制することはできない。
従来の一般的な水性インクは吐出特性への影響を考慮して、液体成分が多少蒸発しても粘度があまり上昇しないように設計されていることが多い。この場合、η2−η1は高くても3.0mPa・s程度である。すなわち、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、蒸発により特に増粘しやすいタイプの水性インクであるということができる。
蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1(粘度差η2−η1)が大きくなると、連続記録した際に、排紙トレイに積載された記録物の記録面と反対側の面に汚れが生じやすくなることがわかった。裏面排紙により排紙トレイ上に置かれた1枚目の記録媒体の裏面(上面)には、画像が記録されていない、又は両面記録のはじめの記録から一定時間経過した状態の画像が記録されている。このため、2枚目の記録媒体の記録面(下面)は、排紙トレイ上の1枚目の記録媒体の裏面(上面)側と擦れながら排紙される。粘度差η2−η1が大きすぎると、2枚目の記録媒体に付与されたインクが記録媒体に十分に浸透していない状態で、1枚目の記録媒体の裏面と接触することになる。このため、2枚目の記録媒体に付与されたインクの一部が1枚目の記録媒体を汚してしまう、いわゆる「スミア」という現象が生じやすくなることが判明した。
インクの粘度η1が5.0mPa・s以上であるとともに、粘度差η2−η1が10.0mPa・s超であると、スミアが生じやすい。また、粘度差η2−η1が10.0mPa・s以下であっても、インクの粘度η1が10.0mPa・s超であるとスミアが生じやすい。すなわち、裏面排紙を採用した本発明のインクジェット記録方法においては、インクの粘度η1が10.0mPa・s以下であるとともに、粘度差η2−η1が10.0mPa・s以下であることが、スミアの発生を抑制することができるために好ましい。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法(以下、単に「記録方法」とも記す)は、記録ヘッドから水性インクを吐出して、第1面及び第2面を持った記録媒体に画像を記録する記録工程を有する記録方法である。本発明の記録方法は、記録工程の後に、さらに、第1面及び第2面のうち後に記録した面を重力方向の下側にして排紙する排紙工程を有する。そして、水性インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上であり、水性インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、水性インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上である。
また、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に「記録装置」とも記す)は、記録ヘッドから水性インクを吐出して、第1面及び第2面を持った記録媒体に画像を記録するために用いる装置である。本発明の記録装置は、第1面及び前記第2面のうち後(排紙の直前)に記録した面を重力方向の下側にして排紙する裏面排紙機構を備える。そして、水性インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上であり、水性インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、水性インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上である。以下、図面を参照しつつ、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法の詳細について説明する。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を示す断面図である。図1中、xは水平方向、yは記録ヘッド8の吐出口の配列方向(奥行方向)、及びzは鉛直方向をそれぞれ示す。図1に示す実施形態のインクジェット記録装置1は、記録動作も読取動作も行っていない、いわゆる待機状態にある。
図1に示すインクジェット記録装置1は、記録部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、記録部2とスキャナ部3で個別に又は連動して実行する。スキャナ部3は原稿の読み取り(スキャン)を行う。本発明のインクジェット記録装置は、スキャナ部を備えない形態であってもよい。
記録部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、カットシート状の記録媒体Sを収容するための第1カセット5A及び第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5Aには、A4サイズまでの比較的小さな記録媒体が平積みで収容されている。第2カセット5Bには、A3サイズまでの比較的大きな記録媒体が平積みで収容されている。第1カセット5Aの近傍には、収容されている記録媒体Sを1枚ずつ分離して給送する第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5Bの近傍には第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際には、いずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19、及びフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側及び下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7とともに記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12とともに記録媒体Sを挟持して搬送する。
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、その側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
記録ヘッド8はフルラインタイプの記録ヘッドであり、記録データにしたがってインクを吐出する吐出口が、y方向に沿って記録媒体Sの幅をカバーする範囲で複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1に示すようにキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる際に、記録媒体Sを背面から支持する。
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4種のインクをそれぞれ収容する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8へのインクの流量を適切な範囲に調整する。メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングでこれらを作動させて、記録ヘッド8のメンテナンス動作を行う。
図1に示すインクジェット記録装置を使用すると、まず、第1カセット5A又は第2カセット5Bに収容されている記録媒体Sが装置内を搬送され、記録部2の記録ヘッド8により画像が記録される。画像が記録された記録媒体Sは、後(排紙の直前)に記録された面を重力方向の下側にして、すなわち、裏返しとなった状態で排紙トレイ13に排紙される。
図2A〜図2Cは、裏面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。第1カセット5Aの上から1枚目に積載されている記録媒体Sは、第1給送ユニット6Aによって2枚目以降の記録媒体から分離され、搬送ローラ7とピンチローラ7aにニップされながら、プラテン9と記録ヘッド8の間の記録領域Pに向けて搬送される。図2Aは、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、第1給送ユニット6Aに給送されて記録領域Pに到達する間に、水平方向(x方向)から、水平方向に対して約45度傾いた方向に変更される。
記録領域Pでは、記録ヘッド8に設けられた複数の吐出口から記録媒体Sに向けてインクが吐出される。インクの吐出方式としては、熱エネルギーを発生する吐出素子を利用し、気泡を発生させてインクを吐出するサーマル方式や、力学的エネルギーをインクに作用させてインクを吐出する、いわゆるピエゾ方式を挙げることができる。本発明では、サーマル方式でインクを吐出するラインヘッドを用いることが特に好ましい。インクが付与される領域の記録媒体Sは、プラテン9によってその背面が支持されている。このため、吐出口面と記録媒体Sの距離が一定に保たれている。インクが付与された記録媒体Sは、搬送ローラ7と拍車7bに案内されながら、先端が右に傾いているフラッパ11の左側を通り、ガイド18に沿ってインクジェット記録装置1の鉛直方向上方へと搬送される。図2Bは、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。記録媒体Sの進行方向は、水平方向に対し約45度傾いた記録領域Pの位置から、搬送ローラ7と拍車7bによって鉛直方向上方に変更されている。
記録媒体Sは、鉛直方向上方に搬送された後、排出ローラ12と拍車7bによって排出トレイ13に排出される。図2Cは、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に裏面排紙の状態で排出される状態を示す。排出された記録媒体Sは、記録ヘッド8によって画像が記録された面を下にした状態で、排出トレイ13上に保持される。
図3A〜図3Dは、表面排紙する際の記録媒体の搬送経路を説明する断面図である。表面排紙の場合、図2A〜図2Cで説明した方法と同様の方法で画像を記録した後、装置内で記録媒体を反転させて排紙する。画像を記録する際の搬送工程は図2A〜図2Cと同様であるため、ここでは説明を省略する。以下、図2Cよりも後の搬送工程について、図3A〜図3Dを用いて説明する。
記録ヘッド8による記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sをインクジェット記録装置1の内部へと搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)は、フラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へと搬送される。図3Aは、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。その後、記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間へと搬送される。
以降の搬送経路は、図2B及び図2Cで示した第1面に画像を記録する場合と同様である。図3Cは、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図3Dは、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に表面排紙の状態で排出される状態を示す。
本実施形態のインクジェット記録装置1を使用すれば、記録媒体の第1面及び第2面(両面)にそれぞれ画像を記録する、いわゆる両面記録を行うことができる。図3A〜図3Dの場合、第1面(表面)に画像を記録した後、第2面(裏面)に画像を記録する。第1面に画像を記録する際の搬送工程は図2A〜図2Cと同様であるため、ここでは説明を省略する。以下、図2Cよりも後の搬送工程について、図3A〜図3Dを用いて説明する。
記録ヘッド8による第1面への記録動作が完了し、記録媒体Sの後端がフラッパ11を通過すると、搬送ローラ7を逆回転させて記録媒体Sをインクジェット記録装置1の内部へと搬送する。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータによってその先端が左側に傾くように制御されるため、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)はフラッパ11の右側を通過して鉛直方向下方へと搬送される。図3Aは、記録媒体Sの先端(第1面の記録動作における後端)が、フラッパ11の右側を通過する状態を示す。その後、記録媒体Sは、インナーガイド19の湾曲した外周面に沿って搬送され、再び記録ヘッド8とプラテン9の間の記録領域Pへと搬送される。この際、記録ヘッド8の吐出口面8aに、記録媒体Sの第2面が対向する。図3Bは、第2面の記録動作のために、記録媒体Sの先端が記録領域Pに到達する直前の搬送状態を示す。
以降の搬送経路は、図2B及び図2Cで示した第1面に画像を記録する場合と同様である。図3Cは、記録媒体Sの先端が記録領域Pを通過して鉛直方向上方に搬送される状態を示す。この際、フラッパ11は、不図示のアクチュエータにより先端が右側に傾いた位置に移動するように制御される。図3Dは、記録媒体Sの先端が排出ローラ12を通過して排出トレイ13に排出される状態を示す。
記録媒体としては、普通紙や非コート紙などのコート層を有しない記録媒体、及び、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体のような、浸透性を有する記録媒体を用いることが好ましい。なかでも、基材が紙である記録媒体が好ましく、コート層を有しない紙基材の記録媒体がさらに好ましい。
(インク)
本発明の記録方法で用いるインクは、インクジェット用の水性インクである。このインクの粘度η1(mPa・s)は、5.0mPa・s以上である。また、このインクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1は、4.0mPa・s以上である。本発明の記録方法で用いるインクは、いわゆる「硬化型インク」である必要はない。したがって、本発明の記録方法で用いるインクは、外部エネルギーの付加により重合しうる重合性モノマーなどの化合物を含有しなくてもよい。以下、インクを構成する各成分やインクの物性について詳細に説明する。
[色材]
色材としては、顔料や染料を用いることができる。インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。なかでも、カーボンブラック;アゾ顔料;フタロシアニン顔料;キナクリドン顔料などが好ましい。C.I.ナンバーが付された有機顔料の好適な具体例を以下に列挙する。アゾ顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74などを挙げることができる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6などを挙げることができる。キナクリドン顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202などの他、複数種のキナクリドン顔料の固溶体などを挙げることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを挙げることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆又は内包したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、後述するような樹脂、なかでも水溶性樹脂を用いることができる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量に対する質量比率で、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
染料としては、アニオン性基を有するものを用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、(アザ)フタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどの染料を挙げることができる。
色材としては、顔料を用いることが好ましい。なかでも、自己分散顔料や、分散剤として水溶性樹脂を利用した樹脂分散顔料を用いることがさらに好ましい。
[樹脂]
インクには、樹脂を含有させることができる。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、以下のようにすることができる。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000以上15,000以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。動的光散乱法により測定される樹脂粒子の平均粒子径(体積基準の累積50%粒子径(D50))は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。
樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα−メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。さらに、アルキレンオキサイド基を有するモノマーを用いてもよい。
ウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
〔アルキレンオキサイド基を有するユニットを持つ樹脂粒子〕
本発明においては、インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1(粘度差η2−η1)が、4.0mPa・s以上である。後述する25℃で固体である多価アルコール化合物(以下、単に「多価アルコール化合物」とも記す)のみを用いて、蒸発インクの粘度がマイナスカールを低減しうる粘度となるようにインクの組成を調整しようとすると、多価アルコール化合物の量が多くなる。このため、粘度差η2−η1を高めようとするとη1も高くなりすぎてしまい、スミアを十分に抑制しにくくなる。すなわち、多価アルコール化合物のみを用いて蒸発インクの粘度を調整しようとすると、マイナスカールとスミアがトレードオフの関係になりやすいため、マイナスカールの抑制効果とスミアの抑制効果を高いレベルで両立しにくくなる場合がある。
一方、スミアの発生を抑制すべく、多価アルコール化合物のみで粘度η1を調整したインクについては粘度差η2−η1を高めることが困難になり、マイナスカールの抑制効果がやや低くなることがある。マイナスカールの抑制効果とスミアの抑制効果を高いレベルで両立するには、インクの粘度η1を低くするとともに、粘度差η2−η1を高めることが好ましい。検討の結果、本発明者らは、多価アルコール化合物に加えて、アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子をインクに含有させることを見出した。アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子を用いることで、多価アルコール化合物のみを用いる場合に比して、インクの粘度η1を低くすることができるとともに、粘度差η2−η1を高めることができる。
アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子は、同じ量の多価アルコール化合物と比べて、インクの粘度η1をより低下させやすい。これは、粒子形状であるため、25℃で固体である多価アルコール化合物や水溶性樹脂などと比較して、分子間の立体的な相互作用が少ないためであると考えられる。一方、インク中の水分の蒸発にしたがって、多価アルコール化合物と樹脂粒子とが相互作用しやすくなる。しかし、多価アルコール化合物のヒドロキシ基と、樹脂粒子のアルキレンオキサイド基とが水素結合により相互作用するため、粘度差η2−η1を高めることができると考えられる。
アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子は、アクリル系樹脂を構成する好適なユニットとして前述したような、親水性ユニット及び疎水性ユニットをさらに有することが好ましい。樹脂粒子中のアルキレンオキサイド基を有するユニットの占める割合(質量%)は、3.0質量%以上であることが好ましい。これにより、粘度差η2−η1を効率よく高めることが可能となり、マイナスカールの発生をより低減することができる。樹脂粒子中のアルキレンオキサイド基を有するユニットの占める割合(質量%)は、10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
〔アルキレンオキサイド基を有するモノマー〕
アルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基などを挙げることができる。アルキレンオキサイド基を有するユニットは、アルキレンオキサイド基を有するモノマーを重合することで形成することができる。アルキレンオキサイド基を有するモノマーとしては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート類;メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート類;フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの、アリールオキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、アルキレンオキサイド基を有するモノマーとして、アルキレンオキサイド基を有する反応性界面活性剤などを用いることもできる。
アルキレンオキサイド基を有するユニットは、8個以上のアルキレンオキサイド基を有するモノマーに由来するユニットであることが好ましい。すなわち、アルキレンオキサイド基を有するモノマー中のアルキレンオキサイド基の数は、8個以上であることが好ましい。8個以上のアルキレンオキサイド基を有するモノマーに由来するユニットを含む樹脂粒子を用いることで、粘度差η2−η1をより高めることが可能となり、マイナスカールの発生をより低減することができる。アルキレンオキサイド基を有するモノマー中のアルキレンオキサイド基の数は、15個以下であることが好ましく、12個以下であることがさらに好ましい。ここで、アルキレンオキサイド基を有するモノマー中の「アルキレンオキサイド基の数」とは、例えば、エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基を用いる場合は、「エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基の合計数」を意味する。
アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子の表面電荷量(μmol/g)は、500μmol/g以下であることが好ましい。表面電荷量が500μmol/g超であると、樹脂粒子に起因してインク中に存在するイオンの量が多くなることがある。このため、水分の蒸発により顔料(特に、アニオン性基の作用によって分散させた顔料)が塩析されやすく、粘度差η2−η1が高まりすぎてしまい、スミアの発生を抑制する効果がやや低くなる場合がある。樹脂粒子の表面電荷量は、1μmol/g以上であることが好ましく、100μmol/g以上であることがさらに好ましい。
樹脂粒子の表面電荷量は、コロイド滴定により測定することができる。具体的には、まず、インクなどから適切な方法で分取した樹脂粒子を水に添加し、塩酸などの鉱酸でpH2に調整して24時間撹拌する。その後、遠心分離して沈殿した樹脂を回収し、乾固させる。粉砕した樹脂1gに0.1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液30gを添加し、15時間撹拌して樹脂を含む液体を得る。得られた液体1gに純水を加えて希釈し、希釈液15gを得る。この希釈液中の樹脂粒子について、電位差を利用したコロイド滴定を行い、樹脂粒子の単位質量当たりの電荷量を得る。そして、得られた電荷量を体積基準の累積50%粒子径(D50)から算出した樹脂粒子の表面積で除することで、樹脂粒子の表面電荷量を算出することができる。滴定は、流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)などの滴定装置を使用し、0.1mol/L塩酸などの滴定試薬を用いて行うことができる。勿論、使用する滴定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
[水性媒体]
本発明の記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、30.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。前述の通り、インクジェット用の水性インクを構成する液体成分のうち、記録媒体を最も膨潤させやすいのは水である。このため、インク中の水の量を減らすと、マイナスカールの発生をより有効に抑制することができる。したがって、水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、66.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以上65.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。この「水溶性有機溶剤の含有量」は、後述する25℃で固体である多価アルコール化合物を含む値である。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
通常、「水溶性有機溶剤」とは液体を意味するが、本発明においては、25℃(常温)で固体であるものも水溶性有機溶剤に含めることとする。水性インクに汎用であり、25℃で固体である水溶性有機溶剤の具体例としては、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、尿素、数平均分子量1,000のポリエチレングリコールなどを挙げることができる。これらのなかには、25℃で固体である多価アルコール化合物に分類されるものもある。
〔25℃で固体である多価アルコール化合物〕
前述の通り、蒸発インクの粘度を高めることでマイナスカールの発生を抑制することができる一方、蒸発インクの粘度を高めすぎるとスミアが発生しやすくなる傾向にある。蒸発インクの粘度は、様々な方法で高めることができる。例えば、アニオン性基の作用によって分散させる顔料を用いる場合、以下のような成分の種類や含有量を制御することで、蒸発インクの粘度を調整することができる。具体的には、カルシウム塩などの水溶性の金属塩;貧溶媒などの水溶性有機溶剤;水溶性樹脂、樹脂粒子などの樹脂;25℃で固体である多価アルコール化合物;などを挙げることができる。
なかでも、25℃で固体である多価アルコール化合物を用いることが好適であることがわかった。金属塩や樹脂(特に水溶性樹脂)を用いると、少量であっても蒸発インクの粘度が著しく上昇し、記録媒体の表面上にインクが残りやすくなって、スミアが発生しやすくなる傾向にある。一方、スミアの発生が抑制されるレベルまで金属塩や樹脂の含有量を減らすと、蒸発インクの粘度を高めることが困難になる。また、尿素やベタイン化合物などの化合物の場合も、蒸発インクの粘度を高めることが困難である。
これに対して、25℃で固体である多価アルコール化合物の適当量をインクに含有させることで、スミアの発生をより有効に抑制することができる。25℃で固体である多価アルコール化合物は、結晶性が高く、水が蒸発した際に複数の分子が相互作用しやすい。さらに、25℃で固体である多価アルコール化合物は、1分子中に複数のヒドロキシ基を有するため、水素結合による相互作用も生じている。これらの相互作用により、マイナスカールの発生を抑制するのに有効な範囲で、蒸発インクの粘度を高めることができる。インク中の多価アルコール化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上であることが好ましく、35.0質量%以下であることがさらに好ましく、20.0質量%以下であることが特に好ましい。
25℃で固体である多価アルコール化合物としては、この条件を満たすものであれば限定されない。特に、主鎖(炭化水素鎖)の炭素数が1乃至6である化合物が好ましい。具体的には、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビトールなどを挙げることができる。なかでも、トリメチロールプロパンが好ましい。
インク中の、アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子の含有量(質量%)は、25℃で固体である多価アルコール化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.25倍以上1.00倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.25倍未満であると、樹脂粒子に比して多価アルコール化合物が多いため、粘度差η2−η1をある程度まで高めようとすると、インクの粘度η1も高くなってしまい、スミアをやや抑制しづらくなることがある。一方、上記の質量比率が1.00倍超であると、樹脂粒子に比して多価アルコール化合物が少ないため、粘度差η2−η1を十分に高めることが困難になり、マイナスカールをやや抑制しづらくなることがある。
[その他添加剤]
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤など種々の添加剤を含有させてもよい。
[インクの物性]
インクの粘度η1(mPa・s)は、5.0mPa・s以上であり、好ましくは15.0mPa・s以下、さらに好ましくは10.0mPa・s以下である。インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)は、9.0mPa・s以上であることが好ましく、10.0mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、蒸発インクの粘度η2(mPa・s)は、25.0mPa・s以下であることが好ましく、20.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。
インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1は、4.0mPa・s以上であり、好ましくは15.0mPa・s以下、さらに好ましくは10.0mPa・s以下である。インク及び蒸発インクの粘度は、25℃で固体である多価アルコール化合物、水溶性有機溶剤、及び樹脂などの種類や含有量を調整することによって制御することができる。
一般に、インクジェット用の水性インクは、インクの蒸発を抑制するために、インクカートリッジやインクボトルなどの容器に収容された状態、又はこれらの容器がさらに密閉可能な袋に入れられた状態で保管される。したがって、これらの容器などから取り出したインクの粘度は調製時と同等の粘度であるため、このインクの粘度がη1であり、また、取り出したインクから20質量%を蒸発させたインクの粘度がη2であるということができる。
本発明の記録方法で用いるインクは、インクジェット方式の記録ヘッドから吐出される水性インクである。したがって、信頼性の観点から、インクの物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃におけるインクのpHは、7.0以上9.5以下であることが好ましく、8.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
以下、実施例、比較例、及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<物性の測定条件>
(表面電荷量)
測定対象の材料を含む液体に塩酸を添加してpHを2に調整し、24時間撹拌した。遠心分離して沈殿した固形物を分取し、乾燥させた後、粉砕して試料を調製した。調製した試料1gに0.1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液30gを添加して15時間撹拌した後、遠心分離して上澄みを分取した。上澄み1gに純水を添加して15gに希釈した液体を、電位差自動滴定装置(商品名「AT510」、京都電子工業製)を使用して0.1mol/L塩酸で滴定し、樹脂粒子の電荷量を測定した。測定した電荷量を、後述する方法で測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)から算出した樹脂粒子の表面積で除して、樹脂粒子の表面電荷量を算出した。
(体積基準の累積50%粒子径(D50))
測定対象の材料を含む液体にイオン交換水を添加して、固形分の含有量が約1.0%である試料を調製した。調製した試料について、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「UPA−EX150」、日機装製)を使用し、以下に示す測定条件にしたがって樹脂粒子の体積分布基準の50%粒子径(D50)を測定した。なお、この方法で粒子径が測定されなかった樹脂は、「水溶性」の樹脂であると判断する。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒、屈折率:1.5
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1〜4)
0.3mm径のジルコニアビーズ200部を充填したバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に、顔料25.0部、樹脂の水溶液25.0部、及び純水50.0部の混合物を入れて、水冷しながら5時間分散させた。顔料としては、C.I.ピグメントレッド122を用いた。樹脂の水溶液としては、酸価150mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体を、その酸価と等モルの水酸化カリウムを含む水に溶解させた、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である水溶液を用いた。ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料分散液1を得た。顔料分散液1中の顔料の含有量は25.0%であり、樹脂の含有量は5.0%であった。
顔料の種類を、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントイエロー74、及びカーボンブラックにそれぞれ変更した。このこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が25.0%であり、樹脂の含有量が5.0%である顔料分散液2〜4を調製した。
(顔料分散液5)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却し、この状態で4−アミノフタル酸1.1gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量105mL/100g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、カーボンブラックの粒子表面に−C63−(COOK)2基が結合した自己分散顔料を得た。適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が25.0%である顔料分散液5を得た。
(顔料分散液6)
特許文献2の調製例1の記載にしたがって、「銅フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体」を調製し、これを顔料分散液6とした。顔料分散液6中の顔料の含有量は13.0%であり、樹脂の含有量は7.0%であった。
<樹脂の合成>
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水78.8部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)0.2部を入れ、窒素ガスを導入して撹拌し、80℃に昇温させた。このフラスコに、表1−1及び1−2の上段に示す種類及び量(単位:部)の単量体の混合物を2時間かけて滴下した。2時間エージングした後、25℃に冷却した。適量の水酸化カリウムとイオン交換水を添加してpHを8.5に調整し、樹脂(固形分)の含有量が30.0%である、樹脂粒子の水分散液を得た。表1−1及び1−2の下段には樹脂粒子の物性を示した。界面活性剤1〜6は、以下に示す構造を有する化合物である。下記式中、Rはアルキレンオキサイド基を表し、nはR(アルキレンオキサイド基)の数を表す。n=0の場合は、Rは単結合を表す。
Figure 2019072998
Figure 2019072998
Figure 2019072998
(樹脂1の水溶液)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにエチレングリコールモノブチルエーテル100.0部を入れた後、窒素ガスを導入し、撹拌して110℃に昇温させた。このフラスコに、アクリル酸17.0部、アクリル酸n−ブチル20.0部、及びスチレン63.0部の混合物と、t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.3部のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形の樹脂を得た。得られた樹脂に、その酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加えた。80℃に加温して樹脂を溶させて、樹脂(固形分)の含有量が15.0%である樹脂1の水溶液を得た。樹脂1は水溶性の樹脂であった。
<インクの調製>
表2−1〜2−4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのメンブレンフィルター(商品名「HDCIIフィルター」、ポール製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。表2−1〜2−4中、ポリエチレングリコールに付した数値は数平均分子量であり、「アセチレノールE60」は、川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。表2−1〜2−4の下段にはインクの特性を示した。粘度はE型粘度計(東機産業製)を用いて25℃で測定した。
Figure 2019072998
Figure 2019072998
Figure 2019072998
Figure 2019072998
<評価>
図1に示す構成を有するインクジェット記録装置1と、表3に示す各インクを使用し、以下に示す評価を行った。裏面排紙の場合は図2A〜図2Cに示す搬送経路を利用し、表面排紙の場合は図3A〜図3Dに示す搬送経路を利用した。線速は10インチ/秒とし、記録媒体の後端部分にインクが付与されてから排紙までの時間を2秒とした。表3中、「F/D」は「裏面排紙」を意味し、「F/U」は「表面排紙」を意味する。
A4サイズの記録媒体(普通紙、商品名「SW−101」、キヤノン製)の1/600インチ×1/600インチの単位領域に、10ngのインクを付与する条件で、19cm×26cmのベタ画像を10枚分連続して記録した。記録条件は、25℃、相対湿度50%の環境とした。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベルとし、「C」及び「D」を許容できないレベルとした。評価条件及び評価結果を表3に示す。
(マイナスカール)
10枚分の記録物が排紙された直後にマイナスカールの状態を確認し、以下に示す評価基準にしたがってマイナスカールを評価した。
AA:いずれの記録物にもマイナスカールが生じていなかった。
A:排紙直後、瞬間的にマイナスカールが生じた記録物があったが、次いで排紙される記録物が積載されるまでに、マイナスカールが生じていない状態に戻っていた。
B:少なくとも一部の記録物においてマイナスカールが生じていたが、排紙の際にジャムは発生しなかった。
C:少なくとも一部の記録物においてマイナスカールが生じ、排紙の際に1〜5回のジャムが発生したが、記録物が筒状になる程度ではなかった。
D:少なくとも一部の記録物において記録物が筒状になる程度の顕著なマイナスカールが生じ、排紙の際に1〜5回のジャムが発生した。
(スミア)
10枚分の記録物が排紙された直後に、9枚目の記録物の裏面側におけるスミアの状態を確認し、以下に示す評価基準にしたがってスミアを評価した。
AA:スミアが生じていなかった。
A:10本以下の線状のスミアが生じていた。
B:10本を超える線状のスミア生じていたが、ベタ状のスミアは生じていなかった。
C:ベタ状のスミアが生じていた。
Figure 2019072998
1:インクジェット記録装置
2:記録部
5A:第1カセット
5B:第2カセット
7:搬送ローラ
8:記録ヘッド
13:排出トレイ
18:ガイド
S:記録媒体
P:記録領域

Claims (8)

  1. 記録ヘッドから水性インクを吐出して、第1面及び第2面を持った記録媒体に画像を記録する記録工程を有するインクジェット記録方法であって、
    前記記録工程の後に、さらに、前記第1面及び前記第2面のうち後に記録した面を重力方向の下側にして排紙する排紙工程を有し、
    前記水性インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上であり、前記水性インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、前記水性インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記水性インク中の水の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、66.0質量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記水性インクが、25℃で固体である多価アルコール化合物を含有し、
    前記水性インク中の前記多価アルコール化合物の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、10.0質量%以上である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記水性インクが、アルキレンオキサイド基を有するユニットを含む樹脂粒子を含有し、
    前記樹脂粒子中の前記アルキレンオキサイド基を有するユニットの占める割合(質量%)が、3.0質量%以上である請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記アルキレンオキサイド基を有するユニットが、8個以上のアルキレンオキサイド基を有するモノマーに由来するユニットである請求項4に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記樹脂粒子の表面電荷量(μmol/g)が、500μmol/g以下である請求項4又は5に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記水性インク中の、前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記多価アルコール化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.25倍以上1.00倍以下である請求項4乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 記録ヘッドから水性インクを吐出して、第1面及び第2面を持った記録媒体に画像を記録するために用いるインクジェット記録装置であって、
    前記第1面及び前記第2面のうち後に記録した面を重力方向の下側にして排紙する裏面排紙機構を備え、
    前記水性インクの粘度η1(mPa・s)が、5.0mPa・s以上であり、前記水性インクの20質量%を蒸発させた蒸発インクの粘度η2(mPa・s)と、前記水性インクの粘度η1(mPa・s)の差η2−η1が、4.0mPa・s以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
JP2018157320A 2017-10-17 2018-08-24 インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 Active JP7175673B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US16/138,432 US10654288B2 (en) 2017-10-17 2018-09-21 Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
EP18197901.4A EP3473447B1 (en) 2017-10-17 2018-10-01 Ink jet recording method and apparatus
CN201811210899.4A CN109664614B (zh) 2017-10-17 2018-10-17 喷墨记录方法和喷墨记录设备

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017200732 2017-10-17
JP2017200732 2017-10-17

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2019072998A true JP2019072998A (ja) 2019-05-16
JP2019072998A5 JP2019072998A5 (ja) 2021-09-09
JP7175673B2 JP7175673B2 (ja) 2022-11-21

Family

ID=66543607

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018157320A Active JP7175673B2 (ja) 2017-10-17 2018-08-24 インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7175673B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7322322B1 (ja) * 2022-02-09 2023-08-07 株式会社Adeka 反応性乳化剤の保存方法
WO2023153425A1 (ja) * 2022-02-09 2023-08-17 株式会社Adeka 反応性乳化剤含有組成物及び反応性乳化剤の保存方法

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007196466A (ja) * 2006-01-25 2007-08-09 Ricoh Co Ltd インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP2008137365A (ja) * 2006-12-05 2008-06-19 Canon Inc 液体組成物、セット及び画像記録方法
JP2010059344A (ja) * 2008-09-05 2010-03-18 Ricoh Co Ltd インクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法
JP2010248477A (ja) * 2009-03-25 2010-11-04 Seiko Epson Corp インク組成物及びこれを用いた記録方法、記録物
JP2011236424A (ja) * 2010-05-11 2011-11-24 Toshiba Corp 水性インクジェットインク
JP2012036389A (ja) * 2010-08-04 2012-02-23 Toshiba Corp 水性インクジェットインク
JP2014101419A (ja) * 2012-11-19 2014-06-05 Toshiba Tec Corp 水性インクジェットインクおよびインクジェット記録装置
JP2015128903A (ja) * 2015-02-09 2015-07-16 セイコーエプソン株式会社 インクジェット記録方法
JP2016079359A (ja) * 2014-10-22 2016-05-16 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 インクジェット用インク及びインクジェット記録システム
JP2016135849A (ja) * 2014-12-24 2016-07-28 花王株式会社 顔料を含有する改質ポリマー粒子の製造方法

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007196466A (ja) * 2006-01-25 2007-08-09 Ricoh Co Ltd インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP2008137365A (ja) * 2006-12-05 2008-06-19 Canon Inc 液体組成物、セット及び画像記録方法
JP2010059344A (ja) * 2008-09-05 2010-03-18 Ricoh Co Ltd インクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法
JP2010248477A (ja) * 2009-03-25 2010-11-04 Seiko Epson Corp インク組成物及びこれを用いた記録方法、記録物
JP2011236424A (ja) * 2010-05-11 2011-11-24 Toshiba Corp 水性インクジェットインク
JP2012036389A (ja) * 2010-08-04 2012-02-23 Toshiba Corp 水性インクジェットインク
JP2014101419A (ja) * 2012-11-19 2014-06-05 Toshiba Tec Corp 水性インクジェットインクおよびインクジェット記録装置
JP2016079359A (ja) * 2014-10-22 2016-05-16 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 インクジェット用インク及びインクジェット記録システム
JP2016135849A (ja) * 2014-12-24 2016-07-28 花王株式会社 顔料を含有する改質ポリマー粒子の製造方法
JP2015128903A (ja) * 2015-02-09 2015-07-16 セイコーエプソン株式会社 インクジェット記録方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7322322B1 (ja) * 2022-02-09 2023-08-07 株式会社Adeka 反応性乳化剤の保存方法
WO2023153425A1 (ja) * 2022-02-09 2023-08-17 株式会社Adeka 反応性乳化剤含有組成物及び反応性乳化剤の保存方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7175673B2 (ja) 2022-11-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9605170B2 (en) Ink set and ink jet recording method
US9598592B2 (en) Ink set and ink jet recording method
JP6198886B2 (ja) インク、インクカートリッジ及びインクジェット記録方法
JP5665940B2 (ja) インクジェット用インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
EP3312247A1 (en) Ink, ink cartridge, and image recording method
JP7175673B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
CN109664614B (zh) 喷墨记录方法和喷墨记录设备
JP2017222143A (ja) インクジェット記録方法
JP2016138228A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP5273434B2 (ja) 水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性顔料インク
JP7391592B2 (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
US8721063B2 (en) Inkjet recording liquid and inkjet recording device using the liquid
US11242466B2 (en) Ink set for inkjet recording
US11654693B2 (en) Ink jet recording method and ink jet recording apparatus
JP7091158B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2023085094A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
EP4155352A1 (en) Aqueous ink, ink cartridge and ink jet recording method
JP2023026903A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP2022022109A (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2024023137A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP2024059572A (ja) 水性インク、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP2022165911A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP2024076998A (ja) インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、並びに、水性インク及び水性反応液のセット
CN117903627A (zh) 水性墨、喷墨记录方法和喷墨记录设备
CN117534986A (zh) 水性墨、墨盒和喷墨记录方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20200221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210727

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210727

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220705

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220901

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221011

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221109

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7175673

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151