JP2019067760A - 金属ナノワイヤー分散液 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間の保管によっても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができる、コーティング適性に優れた金属ナノワイヤー分散液を提供すること。【解決手段】金属ナノワイヤー(A)、グリコール(B)およびグリコールアルキルエーテル(C)を含有する金属ナノワイヤー分散液。【選択図】なし

Description

本発明は金属ナノワイヤー分散液に関する。
近年、太陽電池の市場拡大、およびスマートフォンおよびタブレット末端等の普及によるタッチパネルの需要拡大にともない、透明電極として透明導電膜が広く用いられている。透明導電膜は、フレキシブル化の観点から、透明導電フィルムが多く用いられ、現在そのほとんどが酸化インジウムスズを導電層として用いるITOフィルムである。
しかしながら、ITOフィルムでは長波長領域の光線透過率が低いことに起因する色調の課題があり、また、ITOは半導体であるため高導電化に限界があること、導電層がセラミックであることから折り曲げ性に問題があった。このため、よりフレキシブルなフィルムが求められていた。
現在、次世代の透明導電フィルムとして、銀ナノワイヤー、銅ナノワイヤー、ニッケルナノワイヤーを用いた透明導電フィルムが提案されている(特許文献1〜3)。
特開2012−216535号公報 特開2016−011430号公報 国際公開2015/163258号パンフレット
しかしながら、特許文献1の銀ナノワイヤー分散液は、数カ月の保管で硫化し、その分散液を用いてコーティングしたフィルムは、製造後すぐにコーティングしたフィルムと対比して、導電性が低くなるなど、保管安定性が悪いという問題があった。
特許文献2の銅ナノワイヤー分散液をコーティングしたフィルムは、銅本来の導電性が得られないという問題があった。
特許文献3のニッケルナノワイヤー分散液は、A4サイズの枚葉等にコーティングすることは可能であるが、ロール・ツー・ロールプロセスでウェットコーティングするような工業的なスケールでおこなった場合、形成される被膜の均一性が劣り、透過率が不均一になった。
本発明は、長期間の保管によっても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができる、コーティング適性に優れた金属ナノワイヤー分散液を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、特定の溶媒を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
本発明の要旨は、下記のとおりである。
<1> 金属ナノワイヤー(A)、グリコール(B)およびグリコールアルキルエーテル(C)を含有する金属ナノワイヤー分散液。
<2> 前記金属ナノワイヤー(A)を構成する金属が銅またはニッケルであることを特徴とする<1>に記載の金属ナノワイヤー分散液。
<3> 前記金属ナノワイヤー(A)の含有量が、金属ナノワイヤー分散液総量に対して、0.01〜2質量%であることを特徴とする<1>または<2>に記載の金属ナノワイヤー分散液。
<4> 前記グリコール(B)の沸点が200℃以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
<5> 前記グリコール(B)がアルキレングリコールを含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
<6> 前記グリコール(B)の含有量が、金属ナノワイヤー分散液総量に対して、30〜99.8質量%であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
<7> 前記グリコールアルキルエーテル(C)が、分子中に1つの水酸基を有することを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
<8> 前記グリコールアルキルエーテル(C)がアルキレングリコールアルキルエーテルを含むことを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。<9> 前記グリコールアルキルエーテル(C)が、前記グリコール(B)のアルキルエーテルであることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
<10> 前記グリコールアルキルエーテル(C)の含有量が、金属ナノワイヤー分散液総量に対して、0.1〜69質量%であることを特徴とする<1>〜<9>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
<11> <1>〜<10>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液をコーティングしてなることを特徴とする金属ナノワイヤー被膜。
<12> <1>〜<10>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液をコーティングしてなることを特徴とする透明導電膜。
<13> <1>〜<10>のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液をコーティングしてなることを特徴とする導電部材。
本発明によれば、長期間の保管によっても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができる、コーティング適性に優れた金属ナノワイヤー分散液を提供できる。本発明の分散液は、ロール・ツー・ロールプロセスでのウェットコーティング適性にも優れている。本発明の分散液をコーティングしてなる金属ナノワイヤー被膜は、透明導電膜として、タッチパネル等に好適に用いることができる。
実施例1の金属ナノワイヤー被膜を撮影した図である。 比較例3の金属ナノワイヤー被膜を撮影した図である。
本発明の金属ナノワイヤー分散液は、金属ナノワイヤー(A)(以下、成分(A)ということがある)、グリコール(B)(以下、成分(B)ということがある)およびグリコールアルキルエーテル(C)(以下、成分(C)ということがある)から構成されている。
金属ナノワイヤー(A)は、金属を主成分とするナノワイヤーのことであって、公知の方法で製造可能なものである。金属ナノワイヤー(A)は通常、金属からなり、直径がナノメートルオーダーの繊維状物質である。金属ナノワイヤー(A)を構成する金属の種類は、特に限定されるものでは無く、導電性を有するあらゆる金属であってよい。金属ナノワイヤー(A)を構成する金属は通常、ニッケル、銅、銀、またはこれらの混合物であってよい。ニッケルおよび銅は一般的に、分散液中において、分散性および耐酸化性が劣る傾向がある。このため、金属ナノワイヤー(A)を構成する金属が銅および/またはニッケルであれば、本発明の効果を最大限活かすことができる。金属ナノワイヤー(A)が銀のナノワイヤーであっても、長期保存時において本発明は効果を発揮する。金属ナノワイヤー(A)は、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、ニッケルナノワイヤーおよび/または銅ナノワイヤー、特にニッケルナノワイヤーが好ましい。
本明細書中、被膜均一性は、金属ナノワイヤー(A)の均一分散性に優れた被膜が得られることに基づく、分散液が有する特性の1つである。被膜における金属ナノワイヤー(A)の均一分散性は、例えば、被膜における透過率の均一性により、決定することができる。
導電性は、導電性に優れた被膜が得られることに基づく、分散液が有する特性の1つである。
保管安定性は、本発明の分散液を長期間保管しても、被膜均一性および導電性が良好な被膜が得られることに基づく、分散液が有する特性の1つであり、分散液保管時の被膜均一性および導電性を包含する。
コーティング適性とは、工業的スケールでのコーティングに適したコーティング法(例えばロール・ツー・ロールプロセス法)によっても、被膜均一性および導電性が良好な被膜を形成することができることに基づく、分散液が有する特性の1つである。
金属ナノワイヤー(A)の形状は、繊維状または線状である限り、特に限定されない。金属ナノワイヤー(A)の平均長は通常、1〜100μmであり、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、好ましくは5〜60μm、より好ましくは10μm〜50μmである。金属ナノワイヤー(A)の平均径は通常、10〜200nmであり、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、好ましくは50〜120nmである。
金属ナノワイヤー(A)は市販品として入手することができる。例えば、Agnw−90(ACS MATERIAL社;銀ナノワイヤー)、Silver nanowires A70(NOVARIALS社;銀ナノワイヤー)、Copper nanowires A1(NOVARIALS社;銅ナノワイヤー)が挙げられる。
金属ナノワイヤー(A)のナノワイヤー分散液中での質量濃度は特に限定されず、用途およびコーティング方法等により適宜設定することができる。例えば、透明導電膜向け用途において、金属ナノワイヤー(A)の含有量は通常、ナノワイヤー分散液総量に対して0.01〜2質量%であり、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.1〜1質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%、さらに好ましくは0.1〜0.4質量%、最も好ましくは0.2〜0.4質量%である。
本発明の分散液はグリコール(B)およびグリコールアルキルエーテル(C)を組み合わせて含有する。これにより、分散液のコーティング適性が向上するだけでなく、長期間の保管によっても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができるようになる。特に、軟化点および/または融点が相対的に低いポリエチレンテレフタレート(PET)等の基材に対しても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができるようになる。これらの現象の詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。グリコール(B)は、1分子中に存在する2つの水酸基により、一般的によく使用されるモノオールよりも、その粘度が高い。そのため、比重の高い金属ナノワイヤーにおいても、分散液中での沈降を遅延させることができる。また、金属の酸化還元電位等により、効果の源泉は異なるが、グリコール(B)は、還元性を有する。このため、分散溶媒としてグリコール(B)を含有させておくことで、銅および銀などの貴金属においては、分散液中での耐酸化性が向上する。またニッケルのような卑金属でも乾燥時の熱により、金属ナノワイヤーの表面劣化を還元することができる。従って、導電性に優れた金属ナノワイヤー被膜を形成することが可能になる。一方、グリコール(B)は、相対的に高い沸点を有し、かつ極性が高い有機溶媒であるため、グリコール(B)を分散溶媒とするナノワイヤー分散液はPETフィルムなどの汎用的なフィルム基板にウェットコーティングするのは難しい。しかも、グリコール(B)の沸点より、軟化点および/または融点が相対的に低いPET等の基材を用いることは難しい。そこで、グリコール(B)と共にグリコールアルキルエーテル(C)を組み合わせて含有させることにより、比較的低温(例えば、130〜150℃)での数分の乾燥により、分散溶媒を除去でき、PETフィルムなどへのウェットコーティング(特にロール・ツー・ロールプロセス)が可能になる。しかも、分散液を長期間保管した場合であっても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができる。乾燥温度の低減は、グリコールアルキルエーテル(C)の含有により、沸点を低下させ得ることに起因するものと考えられる。分散液がグリコールアルキルエーテル(C)を含有しない場合、コーティング適性が低下する。分散液がグリコール(B)を含有しない場合、分散液の製造直後から、被膜均一性が低下する。分散液の製造直後において、被膜均一性が得られたとしても、分散液の長期間の保管により、被膜均一性が低下したり、かつ/または被膜の導電性が低下したりする。
グリコール(B)は、鎖式脂肪族炭化水素または環式脂肪族炭化水素の2つの炭化水素原子の代わりに、水酸基が1つずつ置換している構造を有するグリコール(ジオール)のことである。鎖式脂肪族炭化水素の場合、グリコール(B)はアルキレングリコールである。鎖式脂肪族炭化水素の場合、グリコール(B)はシクロアルカンジオールである。グリコール(B)の代わりに、メタノール等のモノオールまたはグリセリン等のトリオールを用いると、被膜均一性、導電性および保管安定性が低下する。
アルキレングリコールは、例えば、炭素原子数2〜5、好ましくは2〜3のアルキレングリコール、およびこれらの脱水縮合物を包含する。アルキレングリコールの脱水縮合物はポリアルキレングリコールのことであり、ポリアルキレングリコール1分子中のオキシアルキレン単位の繰り返し数は通常、2〜4、特に2〜3である。アルキレングリコールの具体例として、例えば、エチレングリコール(沸点:195℃)、プロピレングリコール(沸点:188℃)、トリメチレングリコール(沸点:211℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、ジプロピレングリコール(沸点:232℃)、トリエチレングリコール(沸点:287℃)、トリプロピレングリコール(沸点:273℃)が挙げられる。
シクロアルカンジオールは、例えば、炭素原子数3〜10、好ましくは3〜6のシクロアルカンジオール、およびこれらの脱水縮合物を包含する。シクロアルカンジオールの脱水縮合物は2分子以上のシクロアルカングリコールのエーテル化物(すなわち脱水縮合物)のことであり、当該エーテル化物1分子中のオキシシクロアルキレン単位の繰り返し数は通常、2〜4、特に2〜3である。シクロアルカンジオールの具体例として、例えば、1,2−シクロプロパンジオール、1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。
グリコール(B)は、分散溶媒の除去性の観点ならびに被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、沸点が250℃以下、特に200℃以下のグリコールであることが好ましい。グリコール(B)の沸点の下限値は通常、140℃であり、好ましくは160℃である。またグリコール(B)は、ナノワイヤーの分散性の観点から、粘度の高いグリコールが好ましい。グリコール(B)は、沸点と粘度の関係から、エチレングリコール、プロピレングリコール(すなわち1,2−プロパンジオール)またはそれらの混合物がより好ましいグリコールである。
グリコール(B)は、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、好ましくはアルキレングリコールを含む。同様の観点から、より好ましいグリコール(B)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上のアルキレングリコールを含む。
同様の観点から、さらに好ましいグリコール(B)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールからなる群から選択される1種以上のアルキレングリコールを含む。
同様の観点から、最も好ましいグリコール(B)は、エチレングリコール、プロピレングリコールからなる群から選択される1種以上のアルキレングリコール(特にプロピレングリコール)を含む。
グリコールアルキルエーテル(C)は、グリコール(B)として使用され得る前記グリコール(例えば、アルキレングリコールまたはシクロアルキレングリコール)において、2つの水酸基うち、少なくとも1つの水酸基がアルキルエーテル化されているグリコール誘導体である。アルキルエーテルを構成するアルキル基は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3のアルキル基である。当該アルキル基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
グリコールアルキルエーテル(C)は、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、好ましくはアルキレングリコールアルキルエーテルを含む。アルキレングリコールアルキルエーテルを構成するアルキレングリコールは、グリコール(B)として使用され得るアルキレングリコールと同様の範囲内から選択されてよい。
アルキレングリコールアルキルエーテルの具体例として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル(=1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノメチルエーテル(=2−メトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル(=1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノエチルエーテル(=2−エトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノプロピルエーテル(=1−プロポキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノプロピルエーテル(=2−プロポキシ−1−プロパノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテルが挙げられる。
グリコールアルキルエーテル(C)は分子中に水酸基を有さなくてもよいが、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有することが好ましく、より好ましくは分子中に1つの水酸基を有する。
グリコールアルキルエーテル(C)は、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル(=1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノメチルエーテル(=2−メトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル(=1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノエチルエーテル(=2−エトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノプロピルエーテル(=1−プロポキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノプロピルエーテル(=2−プロポキシ−1−プロパノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル)からなる群から選択される1種以上のグリコールアルキルエーテルを含むことが好ましい。
同様の観点から、グリコールアルキルエーテル(C)は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル(=1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノメチルエーテル(=2−メトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル(=1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノエチルエーテル(=2−エトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノプロピルエーテル(=1−プロポキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノプロピルエーテル(=2−プロポキシ−1−プロパノール)からなる群から選択される1種以上のグリコールアルキルエーテルを含むことがより好ましい。
同様の観点から、さらに好ましいグリコールアルキルエーテル(C)は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル(=1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノメチルエーテル(=2−メトキシ−1−プロパノール)、プロピレングリコール1−モノエチルエーテル(=1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコール2−モノエチルエーテル(=2−エトキシ−1−プロパノール)からなる群から選択される1種以上のグリコールアルキルエーテルを含むことがさらに好ましい。
グリコールアルキルエーテル(C)を構成するグリコールと、グリコール(B)としてのグリコールとは、それぞれ独立して選択されてよいが、グリコール(B)とグリコールアルキルエーテル(C)との相溶性に基づく被膜均一性および導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、同一であることが好ましい。換言すると、グリコールアルキルエーテル(C)は、グリコール(B)のアルキルエーテル、すなわち、分散液に含有されるグリコール(B)と同じグリコールのアルキルエーテル、であることが好ましい。
グリコール(B)とグリコールアルキルエーテル(C)の濃度および比率に関しては、限定されるものではないが、以下の内容が適応される。
グリコール(B)のナノワイヤー分散液中での質量濃度は特に限定されず、用途およびコーティング方法等により適宜設定することができる。例えば、透明導電膜向け用途において、グリコール(B)の含有量は通常、ナノワイヤー分散液総量に対して30〜99.8質量%であり、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、好ましくは40〜99質量%であり、より好ましくは50〜98質量%であり、さらに好ましくは70〜98質量%であり、最も好ましくは80〜96質量%である。2種以上のグリコール(B)を用いる場合は、それらの合計質量が上記範囲内であればよい。
グリコールアルキルエーテル(C)のナノワイヤー分散液中での質量濃度は特に限定されず、用途およびコーティング方法等により適宜設定することができる。例えば、透明導電膜向け用途において、グリコールアルキルエーテル(C)の含有量は通常、ナノワイヤー分散液総量に対して0.1〜69質量%であり、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、好ましくは1〜60質量%であり、より好ましくは1〜50質量%であり、さらに好ましくは2〜30質量%であり、特に好ましくは4〜20質量%、最も好ましくは4〜12質量%である。2種以上のグリコールアルキルエーテル(C)を用いる場合は、それらの合計質量が上記範囲内であればよい。
グリコールアルキルエーテル(C)の含有量は、被膜均一性、導電性、保管安定性ならびにコーティング適性のさらなる向上の観点から、グリコール(B)100質量部に対して、1〜150質量部とすることが好ましく、1〜100質量部とすることがより好ましく、1〜50質量部とすることがさらに好ましく、2〜18質量部とすることが特に好ましく、3〜10質量部とすることが最も好ましい。
本発明の金属ナノワイヤー分散液には、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)および成分(C)とは異なる溶媒(以下、成分(D)ということがある)および/またはバインダー樹脂、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、希釈剤等の添加剤をさらに含有してもよい。
成分(D)としては、上記した成分(B)および成分(C)以外の有機溶媒および水等が挙げられる。このような有機溶媒として、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のモノオール等が挙げられる。
成分(D)の含有量は通常、ナノワイヤー分散液総量に対して、10質量%以下であり、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
バインダー樹脂は、分散液中、溶解されていてもよく、または分散されていてもよい。このようなバインダー樹脂として、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂の含有量は通常、成分(A)100質量部に対して、100質量部以下であり、被膜均一性、導電性および保管安定性のさらなる向上の観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは0質量部である。
本発明の金属ナノワイヤー分散液を、コーティングした後、溶媒を乾燥させることにより、被膜(すなわち、金属ナノワイヤー被膜)を得ることができる。例えば、本発明の金属ナノワイヤー分散液をコーティング後、大気圧下、130〜150℃で数分(例えば、1〜3分間)の熱処理にて被膜を形成することができる。コーティング方法としては、電子デバイスの導電膜の分野で採用されているあらゆるコーティング方法が使用可能である。コーティング方法の具体例として、例えば、ロール・ツー・ロール塗布法等が挙げられる。基材としては、特に限定されるものではないが、本発明の趣旨上、フィルム基板が好ましく、さらに低耐熱であるが汎用性の高いPET、COP(シクロオレフィン)のフィルム基板が好ましい。本発明の分散液はフィルム基材にコーティングすることにより、透明導電膜等の形成に好適に使用できる。
本発明の金属ナノワイヤー分散液を用いて形成された被膜(すなわち、金属ナノワイヤー被膜)は、被膜均一性および導電性に優れるため、電子デバイスの導電部材として有用である。電子デバイスとして、例えば、タッチパネル、有機EL等が挙げられる。導電部材は、電子デバイスにおいて導電性が要求されるあらゆる部材であってよく、例えば、透明導電膜等が挙げられる。
本発明の金属ナノワイヤー分散液を用いて形成された被膜はまた、良好な透明性をさらに有するため、電子デバイス(例えば、タッチパネル)の透明導電膜(特に透明電極)として有用である。
本発明の金属ナノワイヤー分散液を用いて形成された被膜はまた、良好なフレキシブル特性をさらに有するため、フレキシブル電子デバイス(例えば、フレキシブルタッチパネル)のフレキシブル導電部材(例えば、フレキシブル透明導電膜(特にフレキシブル透明電極))として有用である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.評価方法
(1)コーティング適性
金属ナノワイヤー分散液を用いて、ロール・ツー・ロール塗布装置(サンクメタル社製)にて、基板(PETフィルム;ルミラーT60#100)に対して、3m(長)のコーティングを行った。評価は、ライン速度0.7m/分、コーティング量15mg/m、乾燥温度150℃および乾燥時間1分20秒の条件下でのコーティングの可否で実施した。コーティング不可の基準は、コーティング時の斑化および乾燥不足などにより、乾燥膜の形成ができない場合とした。実施例1および比較例3の分散液で得られた金属ナノワイヤー被膜を撮影した図をそれぞれ図1および図2に示す。
◎◎:コーティング可能;
×:コーティング不可。
(2)被膜均一性(全光線透過率)
上記評価方法(1)で得られた被膜の被膜均一性は、始点(0m付近)と終点(3m付近)の全光線透過率の差の絶対値で評価した。評価は、以下の基準で実施した。全光線透過率は、JIS K7361−1に準じる方法で測定した。
◎◎:0.5%未満(最良);
◎:0.5%以上、1%未満(優良);
○:1%以上、3%未満(良);
△:3%以上、5%未満(実用上問題なし);
×:5%以上(不良)。
(3)導電性(表面抵抗値)
上記評価方法(2)に基づく△以上の被膜において、始点(0m付近)、中点(1.5m付近)、終点(3m付近)から、それぞれ80×50mmの試験片を切り出し、その表面抵抗値をJIS K7194(1994)に準じて測定した。評価は、平均値に基づいて、以下の基準で実施した。なお、導電性の評価は、金属ナノワイヤーの含有量が異なる実施例10および11では行わなかった。
◎◎:100Ω/□未満(最良);
◎:100Ω/□以上、300Ω/□未満(優良);
○:300Ω/□以上、700Ω/□未満(良);
△:700Ω/□以上、1300Ω/□未満(実用上問題なし);
×:1300Ω/□以上(不良)。
(4)保管安定性
6ヶ月保管後の金属ナノワイヤー分散液を上記評価方法(1)と同様の条件にてコーティングし、全光線透過率(JISK7361−1)と表面抵抗値(JIS K7194)を測定し、以下の基準で評価した。
・分散液の保管安定性(全光線透過率)
凝集等により分散液の状態変化がある場合、同条件でコーティングしても、外観に違いが発生する。このため、金属ナノワイヤー分散液の保存安定性は全光線透過率にて評価した。詳しくは、(4)でコーティングした始点(0m付近)の全光線透過率と、評価方法(2)の始点の全光線透過率を比較し、差の絶対値を以下の基準で評価した。
◎◎:0.5%未満(最良);
◎:0.5%以上、0.8%未満(優良);
○:0.8%以上、2.5%未満(良);
△:2.5%以上、3.5%未満(実用上問題なし);
×:3.5%以上(不良)。
・金属ナノワイヤーの保管安定性(表面抵抗値)
酸化等による劣化が起きると導電性に変化が起きるため、金属ナノワイヤー自体の劣化に関する保存安定性は表面抵抗値で評価した。詳しくは、(4)でコーティングした始点(0m付近)の表面抵抗値と、評価方法3の始点の表面抵抗値を比較し、それらの変動率を以下の基準で評価した。
変動率=[(4)の表面抵抗値]/[(3))の表面抵抗値]×100
◎◎:105%未満(最良);
◎:105%以上120%未満(最良);
○:120%以上、150%未満(良);
△:150%以上、200%未満(実用上問題なし);
×:200%以上(不良)。
(5)総合評価
全ての評価結果のうち、最低の評価結果を総合評価結果として用いた。
2.原料
以下に使用した金属ナノワイヤーを記す。
AgNW(銀ナノワイヤー)
ACS MATERIAL社Agnw−90(銀ナノワイヤー)を使用した。Agnw−90は平均径90nm、平均長20〜30μmである。
CuNW(銅ナノワイヤー)
窒素雰囲気下で、720gの水酸化ナトリウムを、純水2400gに溶解した。次いで、硝酸銅三水和物2.1gを90gの純水で溶解させた水溶液を添加した。さらに39gのエチレンジアミンを添加し、200rpmで撹拌をおこない、均一な青色の水溶液を調製した。
この水溶液に、アスコルビン酸水溶液(10質量%)160gを加え、200rpmで撹拌を継続したまま、フラスコを70℃の湯浴に60分間浸漬した。その後、撹拌を停止し、湯浴に浸漬し続けることによって、銅ナノワイヤーが析出したことを確認し、遠心分離により回収した。得られた銅ナノワイヤーは、SEM、TEMによる観察から、平均径は70nm、平均長は45μmであった。
NiNW(ニッケルナノワイヤー)
塩化ニッケル六水和物4g、クエン酸三ナトリウム二水和物0.375gをエチレングリコールに添加し、全量で500gとした。この溶液を90℃に加熱した。
一方、水酸化ナトリウム1g、塩化白金酸六水和物1.2μgをエチレングリコールに添加し、全量で499gにした。この溶液を90℃に加熱した
各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物1g添加し、その後、2つの溶液を混合した。混合した溶液を、磁気回路に入れ、150mTの磁場を印加し、90〜95℃に維持したまま15分間静置して還元反応を行い、遠心分離によりニッケルナノワイヤーを回収した。得られたニッケルナノワイヤーは、SEM、TEMによる観察から、平均径が90nmであって、平均長が25μmであった。
プロピレングリコール 沸点:188℃
エチレングリコール 沸点:195℃
ジエチレングリコール 沸点:244℃
実施例1
プロピレングリコール94質量部およびプロピレングリコール1−モノメチルエーテル5.75質量部の混合溶媒を作製した。NiNW 0.25質量部を混合溶媒に添加し、金属ナノワイヤー分散液を作製し、6ヶ月空気中、25℃で放置した。
実施例2〜11および比較例1〜8
分散液組成を表1に記載のように変更する以外は実施例1と同様の操作をおこなって、金属ナノワイヤー分散液を作製し、6ヶ月空気中で放置した。
得られた金属ナノワイヤー分散液の組成および評価結果を表1に示す。
実施例1〜11の分散液は、成分(A)(B)および(C)のいずれの成分も含んでいるため、コーティング適性があり、長期間の保管によっても、被膜均一性および導電性に優れた被膜を形成することができた。実施例1〜3,7および9の分散液は、被膜均一性、導電性およびそれらの特性に関する分散液の保管安定性に著しく優れている。
比較例1、3、4、7および8の分散液は、成分(C)を含んでいないため、乾燥不良、斑化などにより、コーティング適性が無かった。
比較例2、5、6の分散液は、コーティング適性を有していたが、成分(B)を含んでいないため、被膜均一性が乏しかったか、または被膜の導電性に関する分散液の保管安定性に乏しかった。
本発明の金属ナノワイヤー分散液は、電子デバイス(例えば、タッチパネル)の透明導電膜(特に透明電極)として使用可能な金属ナノワイヤー被膜の製造に有用である。

Claims (13)

  1. 金属ナノワイヤー(A)、グリコール(B)およびグリコールアルキルエーテル(C)を含有する金属ナノワイヤー分散液。
  2. 前記金属ナノワイヤー(A)を構成する金属が銅またはニッケルであることを特徴とする請求項1に記載の金属ナノワイヤー分散液。
  3. 前記金属ナノワイヤー(A)の含有量が、金属ナノワイヤー分散液総量に対して、0.01〜2質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ナノワイヤー分散液。
  4. 前記グリコール(B)の沸点が200℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  5. 前記グリコール(B)がアルキレングリコールを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  6. 前記グリコール(B)の含有量が、金属ナノワイヤー分散液総量に対して、30〜99.8質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  7. 前記グリコールアルキルエーテル(C)が、分子中に1つの水酸基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  8. 前記グリコールアルキルエーテル(C)がアルキレングリコールアルキルエーテルを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  9. 前記グリコールアルキルエーテル(C)が、前記グリコール(B)のアルキルエーテルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  10. 前記グリコールアルキルエーテル(C)の含有量が、金属ナノワイヤー分散液総量に対して、0.1〜69質量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液をコーティングしてなることを特徴とする金属ナノワイヤー被膜。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液をコーティングしてなることを特徴とする透明導電膜。
  13. 請求項1〜10のいずれかに記載の金属ナノワイヤー分散液をコーティングしてなることを特徴とする導電部材。
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