JP2019060522A - 熱交換器の製造方法 - Google Patents

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Kazuyuki Takahashi
一幸 高橋
拓史 大槻
Takushi Otsuki
拓史 大槻
真奈 小林
Mana Kobayashi
真奈 小林
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Abstract

【課題】フィンの耐食性に優れた熱交換器の製造方法を提供する。【解決手段】コンデンサ1の製造方法は、Mn含有量が0.1〜0.3質量%、Cu含有量が0.4〜0.5質量%であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウム押出形材製熱交換管2と、Mn含有量が1.0〜1.5質量%、Zn含有量が1.2〜1.8質量%であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウムベア材製フィン3とを用意し、熱交換管2の外面に、Zn粉末付着量が5〜6g/m2、Si粉末付着量が3〜6g/m2、フラックス粉末付着量が6〜24g/m2となるようにZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させ、熱交換管2の外面に付着したSi粉末およびフラックス粉末を利用して熱交換管2とフィン3とをろう付することを含む。【選択図】図1

Description

この発明は熱交換器の製造方法に関し、さらに詳しくいえば、たとえば自動車などの車両に搭載されるカーエアコンのコンデンサとして用いられる熱交換器を製造する方法に関する。
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、元素記号で表現された材料は純材料を意味し、「Al合金」という用語はアルミニウム合金を意味するものとする。
また、この明細書において、「自然電位」とは、5%NaCl、pH3(酸性)の水溶液中における標準電極としての飽和カロメル電極(S.C.E)に対する材料が持つ電極電位を意味するものである。
カーエアコン用コンデンサに用いられる熱交換器として、長手方向を同方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で、厚み方向に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム押出形材製扁平状熱交換管と、長手方向を熱交換管の並び方向に向けた状態で熱交換管の長手方向両端側に配置され、かつ熱交換管の両端部が接続されたヘッダタンクと、隣り合う熱交換管どうしの間および両端の熱交換管の外側に配置されて熱交換管にろう付されたアルミニウム製コルゲート状フィンと、両端のフィンの外側に配置されてフィンにろう付されたアルミニウム製サイドプレートとを備えており、ヘッダタンクが、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することにより形成され、かつ両端が開口した筒状のアルミニウム製タンク本体と、タンク本体の両端にろう付されてその両端開口を閉鎖するアルミニウム製閉鎖部材とからなり、タンク本体に、長手方向を通風方向に向けた長穴からなる複数の管挿入穴が、タンク本体の長手方向に間隔をおいて形成され、熱交換管の端部が、管挿入穴内に挿入されてタンク本体にろう付されているものが広く知られている。
上述した熱交換器の製造方法として、本出願人は、先に、Mn0.2〜0.3質量%、Cu0.05質量%以下、Fe0.2質量%以下を含み、残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されており、かつ管壁の肉厚が200μm以下であるアルミニウム押出形材製熱交換管と、アルミニウム製芯材および芯材の両面を覆うアルミニウムろう材製皮材からなるブレージングシートにより形成されたフィンとを用意すること、フラックス粉末と、平均粒径3〜5μmでかつ最大粒径が10μm未満のZn粉末とをバインダーに分散混合させた分散液を、前記熱交換管の外面に塗布するとともに分散液中の液状成分を気化させることによって、熱交換管の外面に、Zn粉末付着量が1〜3g/m2、フラックス粉末付着量が15g/m2以下、Zn粉末付着量に対するフラックス粉末付着量の比率(フラックス粉末付着量/Zn粉末付着量)が1以上となるように、Zn粉末およびフラックス粉末を付着させること、ならびに熱交換管およびフィンを組み合わせて加熱し、熱交換管の外面に付着したフラックス粉末およびフィンの皮材を利用して熱交換管とフィンとをろう付するとともに、熱交換管の外面に付着したZn粉末を溶融させた後にZnを熱交換管の外面表層部に拡散させることにより、熱交換管の外面表層部にZn拡散層を形成することを含む方法を提案した提案した(特許文献1参照)。
特許文献1記載の方法により製造された熱交換器の熱交換管とフィンとは、フィンを形成するブレージングシートの皮材から溶け出したろう材により接合されている。
しかしながら、最近では、フィンの耐食性がさらに向上した熱交換器が求められている。
特開2014−238209号公報
この発明の目的は、上記実情に鑑みてなされたものであって、フィンの耐食性が優れた熱交換器の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
1)アルミニウム製熱交換管および熱交換管にろう付されたアルミニウム製フィンを備えた熱交換器を製造する方法であって、
Mn含有量が0.1〜0.3質量%、Cu含有量が0.4〜0.5質量%、Si含有量が0.2質量%以下、Fe含有量が0.2質量%以下、Zn含有量が0.05質量%以下、Ti含有量が0.05質量%以下であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウム押出形材製熱交換管と、Mn含有量が1.0〜1.5質量%、Zn含有量が1.2〜1.8質量%、Si含有量が0.6質量%以下、Fe含有量が0.5質量%以下、Cu含有量が0.05質量%以下であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウムベア材製フィンとを用意すること、
Zn粉末とSi粉末とフラックス粉末とをバインダーに分散混合させた分散液を、熱交換管の外面に塗布するとともに分散液中の液状成分を気化させることによって、熱交換管の外面に、Zn粉末付着量が5〜6g/m2、Si粉末付着量が3〜6g/m2、フラックス粉末付着量が6〜24g/m2となるようにZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させること、
ならびに熱交換管およびフィンを組み合わせた組み合わせ体をろう付炉内において加熱し、熱交換管の外面に付着したSi粉末およびフラックス粉末を利用して熱交換管とフィンとをろう付することを含む熱交換器の製造方法。
上記1)の方法により製造された熱交換器においては、熱交換管とフィンとのろう付部には、熱交換管を形成する合金の合金成分と、付着させたZn粉末およびSi粉末とからなるフィレットが形成され、熱交換管の管壁は、前記押出形材を形成するAl合金からなる本体部と、Al−Si−Zn合金からなりかつ本体部の外面を覆う被覆層と、本体部の外側表層部に形成されかつZnおよびSiが拡散した拡散層とを備えている。そして、フィンがアルミニウムベア材からなるので、アルミニウムブレージングシート製フィンを有する特許文献1記載の方法により製造された熱交換器に比べてフィンの耐食性が向上する。また、上記1)の方法により製造された熱交換器においては、フィンの自然電位は、熱交換管の管壁の最外面および本体部の自然電位や、熱交換管とフィンとのろう付部に形成されたフィレットの自然電位よりも卑である。その結果、フィンの犠牲腐食作用によって、熱交換管の耐食性を向上させることができるとともに、フィレットの腐食による短期間での消失を抑制してフィン剥がれを長期間にわたって抑制することができる。
この発明の方法により製造されたカーエアコン用コンデンサの全体構成を示す斜視図である。 図1のコンデンサの熱交換管の管壁の一部を拡大して示す断面図である。 図1のコンデンサの熱交換管とコルゲートフィンとのろう付部を拡大して示す断面図である。
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明の方法を、カーエアコン用コンデンサの製造に適用したものである。
図1はこの発明の方法により製造されたカーエアコン用コンデンサの全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成を示す。
なお、以下の説明において、図1の上下、左右を上下、左右というものとする。
図1において、カーエアコン用のコンデンサ(1)は、長手方向を左右方向に向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で、上下方向(熱交換管(2)の厚み方向)に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム押出形材製扁平状熱交換管(2)と、隣り合う熱交換管(2)どうしの間、および上下両端の熱交換管(2)の外側に配置されて熱交換管(2)にろう付されたアルミニウムベア材製コルゲートフィン(3)と、長手方向を上下方向(熱交換管(2)の並び方向)に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置され、かつ熱交換管(2)の左右両端部が接続された1対のアルミニウム製ヘッダタンク(4)(5)と、上下両端のコルゲートフィン(3)の外側に配置されてコルゲートフィン(3)にろう付されたアルミニウムブレージングシート製サイドプレート(6)とを備えており、図1に矢印Wで示す方向に風が流れるようになっている。
左側ヘッダタンク(4)は、高さ方向の中央部よりも上方において仕切板(7)により上下2つのヘッダ部(4a)(4b)に仕切られ、右側ヘッダタンク(5)は、高さ方向の中央部よりも下方において仕切板(7)により上下2つのヘッダ部(5a)(5b)に仕切られている。左側ヘッダタンク(4)の上ヘッダ部(4a)に冷媒入口(図示略)が形成され、冷媒入口に通じる流入路(8a)を有するアルミニウム製入口部材(8)が上ヘッダ部(4a)にろう付されている。また、右側ヘッダタンク(5)の下ヘッダ部(5b)に冷媒出口(図示略)が形成され、冷媒出口に通じる流出路(9a)を有するアルミニウム製出口部材(9)が下ヘッダ部(5b)にろう付されている。そして、入口部材(8)の流入路(8a)を通って左側ヘッダタンク(4)の上ヘッダ部(4a)内に流入した冷媒は、左側ヘッダタンク(4)の仕切板(7)よりも上方に位置する熱交換管(2)内を右方に流れて右側ヘッダタンク(5)の上ヘッダ部(5a)内の上部に流入し、上ヘッダ部(5a)内を下方に流れて左側ヘッダタンク(4)の仕切板(7)と右側ヘッダタンク(5)の仕切板(7)との間の高さ位置にある熱交換管(2)内を左方に流れて左側ヘッダタンク(4)の下ヘッダ部(4b)内の上部に流入し、下ヘッダ部(4b)内を下方に流れて右側ヘッダタンク(5)の仕切板(7)よりも下方に位置する熱交換管(2)内を右方に流れて右側ヘッダタンク(5)の下ヘッダ部(5b)内に流入し、出口部材(9)の流出路(9a)を通ってコンデンサ(1)の外部に流出する。
左右のヘッダタンク(4)(5)は、少なくとも外面にろう材層を有するアルミニウム製パイプ、たとえば両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる素板が筒状に成形されるとともに両側縁部が部分的に重ね合わされて相互にろう付された筒状体からなり、かつ前後方向に長い複数の管挿入穴を有するタンク本体(11)と、タンク本体(11)の両端にろう付されてその両端開口を閉鎖するアルミニウム製閉鎖部材(12)とからなる。なお、ヘッダタンク本体(11)の詳細な図示は省略する。また、ヘッダタンク本体(11)は、外周面にろう材が溶射されたアルミニウム押出管からなるものであってもよい。
コンデンサ(1)は、簡単に説明すると、Al合金で形成された押出形材からなる熱交換管(2)の外面に、Zn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させておき、ろう付炉内において加熱することによって、熱交換管(2)となるアルミニウム押出形材を形成するAl合金中のAlと、接合前の熱交換管(2)の表面に付着させられていたSi粉末のSiとよりなるろう材によって、熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とを接合することを含む方法によって製造される。したがって、図2に示すように、熱交換管(2)の管壁(30)は、熱交換管(2)となるアルミニウム押出形材を形成するAl合金からなる本体部(31)と、Al−Si−Zn合金からなりかつ本体部(31)の外面を覆う被覆層(32)とよりなる。熱交換管(2)の本体部(31)の外側表層部にはZnおよびSiが拡散した拡散層(33)が形成されている。また、熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とのろう付部には、熱交換管(2)を形成する合金の合金成分と、付着させたZn粉末およびSi粉末とからなるフィレット(35)が形成されている。
以下,コンデンサの製造方法について詳細に説明する。
Mn含有量が0.1〜0.3質量%、Cu含有量が0.4〜0.5質量%、Si含有量が0.2質量%以下、Fe含有量が0.2質量%以下、Zn含有量が0.05質量%以下、Ti含有量が0.05質量%以下であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウム押出形材からなる熱交換管と、Mn含有量が1.0〜1.5質量%、Zn含有量が1.2〜1.8質量%、Si含有量が0.6質量%以下、Fe含有量が0.5質量%以下、Cu含有量が0.05質量%以下であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウムベア材からなるコルゲートフィンと、適当なアルミニウムからなるサイドプレート(6)、仕切部材(7)、閉鎖部材(12)、入口部材(8)および出口部材(9)と、適当な材質を有しかつ少なくとも外面にろう材層を有する1対の筒状アルミニウム製ヘッダタンク本体素材とを用意する。ヘッダタンク本体素材には複数の管挿入穴が形成されている。熱交換管(2)を形成するAl合金は、押出形材製熱交換管として通常用いられる合金であり、コルゲートフィン(3)を形成するAl合金は、ベア材製フィンとして通常用いられる合金である。
熱交換管(2)を形成する合金中のCuは、熱交換管(2)の本体部(31)の耐食性を向上させる効果を有するが、0.4質量%未満であるとこの効果が得られず、0.5質量%を超えると拡散層(33)の本体部(31)に対する犠牲腐食効果が低下する。すなわち、本体部(31)に対する犠牲腐食層とすることを目的として、自然電位を卑にする効果があるZnが拡散した拡散層(33)が形成されているが、Cu含有量が0.5質量%を超えるとZnの効果が不足し、拡散層(33)の自然電位を十分に卑にすることができなくなる。したがって、Cu含有量を0.4〜0.5質量%とする。
熱交換管(2)を形成する合金中のMnは、熱交換管(2)の強度を向上させる性質を有するが、Mn含有量が0.1質量%未満であるとこの効果が得られず、0.3質量%を超えると押出加工性が低下するから、Mn含有量を0.1〜0.3質量%とする。
熱交換管(2)を形成する合金中のSi、Fe、ZnおよびTiは不純物であり、個々の含有量は0の場合もある。Si、FeおよびZnは含有量が多くなりすぎると熱交換管(2)の耐食性が低下し、Tiは含有量が多くなりすぎるとコストが高くなる。また、Znは含有量が多くなりすぎると、熱交換管(2)の自然電位が卑化することで周辺部品との電位バランスが変わってしまう。なお、熱交換管(2)を形成する合金中には、Si、Fe、Zn、Ti以外の不可避不純物が、個々の含有量が0.05質量%以下(0質量%を含む)で、かつ合計含有量が0.15質量%以下となるように含まれていることがある。
コルゲートフィン(3)を形成する合金中のMnは、コルゲートフィン(3)の強度を向上させる性質を有するが、Mn含有量が1.0質量%未満であるとこの効果が得られず、1.5質量%を超えると加工性が低下するから、Mn含有量を1.0〜1.5質量%とする。
また、コルゲートフィン(3)を形成する合金中のZnは、コルゲートフィン(3)に、熱交換管(2)および熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とのろう付部に形成されたフィレットに対する犠牲防食効果を持たせる性質を有するが、Zn含有量が1.2質量%未満であるとこの効果が得られず、1.8質量%を超えるとコルゲートフィン(3)の耐食性が低下するから、Zn含有量を1.2〜1.8質量%とする。
コルゲートフィン(3)を形成する合金中のSi、FeおよびCuは不純物であり、個々の含有量は0の場合もある。Si含有量が0.6質量%を超えるとコルゲートフィン(3)中のZn含有量が上述した通りであっても、コルゲートフィン(3)に十分な犠牲防食効果を持たせることができなくなり、Fe含有量が0.5質量%を超えるとコルゲートフィン(3)の耐食性が低下し、Cu含有量が0.05質量%を超えるとコルゲートフィン(3)中のZn含有量が上述した通りであっても、コルゲートフィン(3)に十分な犠牲防食効果を持たせることができなくなる。なお、コルゲートフィン(3)を形成する合金中には、Si、FeおよびCu以外の不可避不純物が、個々の含有量が0.05質量%以下(0質量%を含む)で、かつ合計含有量が0.15質量%以下となるように含まれていることがある。
また、フラックス粉末と、平均粒径3〜5μmでかつ最大粒径が10μm未満のZn粉末と、平均粒径2〜6μmでかつ最大粒径が10μm未満のSi粉末とをバインダーに分散混合させた分散液を用意する。ここで、フラックス粉末は、たとえばKAlF4とKAlF5との混合物を主成分とするフッ化物系の非腐食性フラックスからなるものが用いられる。バインダーとしては、たとえばアクリル樹脂を3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールに溶解した溶液からなるものが用いられる。なお、分散液には、バインダーの粘度を調整する目的で、たとえば3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールからなる希釈剤が添加される。
ついで、前記分散液を熱交換管(2)の外面に塗布するとともに分散液中の液状成分を気化させることによって、熱交換管(2)の外面に、Zn粉末付着量が5〜6g/m2、Si粉末付着量が3〜6g/m2、フラックス粉末付着量が6〜24g/m2となるように、Zn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させる。熱交換管(2)の外面にZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させる方法としては、熱交換管(2)外面への分散液の塗布を噴霧法により行い、その後熱交換管(2)を加熱乾燥させることにより分散液中の液状成分を気化させて、熱交換管(2)の外面にZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させる方法や、熱交換管(2)外面を予め加熱した状態で、熱交換管(2)外面への分散液の塗布をロールコート法により行い、その後熱交換管(2)を加熱乾燥させることにより分散液中の液状成分を気化させて、熱交換管(2)の外面にZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させる方法がある。
Zn粉末を平均粒径3〜5μmでかつ最大粒径10μm未満としたのは、平均粒径が小さすぎると、製造が困難であるとともに、表面積が増大して表面酸化皮膜の量が多くなることに起因して表面酸化皮膜を除去するのに必要なフラックス量が多くなり、大きすぎると、エロージョンが発生するとともに、後工程の加熱によりZn粉末が溶融した際のZn濃度が部分的に不均一になるからである。
熱交換管(2)の外面へのZn粉末付着量を5〜6g/m2とするのは、5g/m2未満であると、熱交換管(2)外面の腐食を面腐食にする効果が薄れることになり、局部的な腐食が発生するおそれがあるからであり、6g/m2を超えると熱交換管(2)の耐食性が低下するからである。
Si粉末を平均粒径2〜6μmでかつ最大粒径10μm未満としたのは、Si粉末の平均粒径が大きすぎるとSi粉末が溶け残って、熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とのろう付がうまくいかないからである。なお、Si粉末の平均粒径の下限値を2μmにしたのは、入手容易なSi粉末の最小平均粒径が2μmであるからである。
熱交換管(2)の外面へのSi粉末付着量を3〜6g/m2とするのは、3g/m2未満であると熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とのろう付がうまくいかず、6g/m2を超えると、エロージョンが発生するからである。
熱交換管(2)の外面へのフラックス粉末付着量を6〜24g/m2とするのは、6g/m2未満であると、酸化膜の除去が不十分となってろう付不良を起こすおそれがあり、24g/m2を超えると、フラックス残渣が多くなるからである。
熱交換管(2)の外面にZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させると、熱交換管(2)の外面に、Zn粉末およびSi粉末を含んだフラックス粉末層が形成される。フラックス粉末層中においては、Zn粉末およびSi粉末は均一に分散して保持されている。
ついで、管挿入穴を有する1対のヘッダタンク本体素材を間隔をおいて配置するとともに、両ヘッダタンク本体素材の両端に閉鎖部材(12)を配置し、さらに両ヘッダタンク本体素材に仕切部材(7)を配置してヘッダタンク素材を用意する。また、熱交換管(2)とフィン(3)とを交互に配置し、熱交換管(2)の両端部をヘッダタンク素材の管挿入穴に挿入する。また、両端のフィン(3)の外側にサイドプレート(6)を配置し、さらに入口部材(8)および出口部材(9)を配置する。
ついで、ヘッダタンク本体素材と閉鎖部材(12)と仕切部材(7)とからなるヘッダタンク素材、熱交換管(2)、フィン(3)、サイドプレート(6)、入口部材(8)および出口部材(9)を仮止めして仮止め体をつくる。
ついで、仮止め体をろう付炉内に入れるとともに、ろう付炉内において仮止め体を所定温度まで昇温して加熱する。なお、熱交換管(2)以外の部品には、必要に応じて筆塗りなどの公知の方法で、フラックスを塗布しておく。
仮止め体の昇温時に、まずフラックス粉末層を形成するフラックス粉末が溶融し、熱交換管(2)外表面の酸化膜、コルゲートフィン(3)表面の酸化膜、Si粉末表面の酸化膜およびZn粉末表面の酸化膜が破壊される。ついで、SiおよびZnが熱交換管(2)の外側表層部に拡散して熱交換管(2)の外側表層部に融点の低いAl−Si−Zn合金からなるろう材が形成され、当該ろう材により熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とがろう付される。また、前記ろう材のうちのろう付に使われなかったものが被覆層(32)となるとともに、被覆層(32)となるAl−Si−Zn合金中のZnおよびSiが拡散して拡散層(33)が形成される。これと同時に、熱交換管(4)の外面の溶融フラックスが流れ広がると同時に溶融Znも流れ広がり、Znが熱交換管(4)の外面表層部に拡散してZn拡散層が形成される。
こうしてコンデンサ(1)が製造される。製造された熱交換管(2)の管壁(30)は、前記アルミニウム押出形材を形成するAl合金からなる本体部(31)と、Al−Si−Zn合金からなりかつ本体部(31)の外面を覆う被覆層(32)とにより構成され、熱交換管の本体部(31)の外側表層部にZnおよびSiが拡散した拡散層(33)が形成されたものとなっている。管壁(30)の本体部(31)の自然電位は、管壁(30)の最外面の自然電位よりも貴である。
また、熱交換管(2)とコルゲートフィン(3)とのろう付部には、上述したAl−Si−Zn合金からなるろう材のフィレットが形成される。フィレット(35)の自然電位は、熱交換管(2)の管壁(30)の最外面の自然電位と同一またはこれよりも卑であり、コルゲートフィン(3)の自然電位よりも貴であることが好ましい。
以下、この発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。なお、実施例および比較例において、いずれもCu:0.41質量%、Mn:0.17質量%、Si:0.12質量%、Fe:0.09質量%、Mg:0.001質量%、Cr:0.001質量%、Zn:0.003質量%、Ti:0.01質量%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなるAl合金で形成された押出形材製熱交換管を使用した。当該熱交換管を形成するAl合金には、Si、Fe、Mg、Cr、Zn、Ti以外に、個々の含有量が0.05質量%以下である不可避不純物が、合計で0.15質量%以下含まれている。また、当該熱交換管の肉厚は200μmである。
実施例
Mn:1.3質量%、Zn:1.50質量%、Si:0.77質量%、Fe:0.24質量%、Cu:0.01質量%以下を含み、残部Alおよび不可避不純物からなるAl合金で形成されたベア材製コルゲートフィンを用意した。コルゲートフィンの肉厚は70μmである。
また、適当な合金組成を有する仕切板、閉鎖部材、入口部材および出口部材を用意した。さらに、適当な合金組成を有するアルミニウム製芯材と、適当な合金塑性を有しかつ芯材の両面を覆うアルミニウム製ろう材とからなるタンク本体用のブレージングシートの幅方向の中央部に管挿入穴を形成した後、当該ブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしを部分的に重ね合わせることにより、タンク本体と同様な形状で、かつ両側縁部どうしがろう付されていない形状のタンク本体素材をつくった。
さらに、KAlF4とKAlF5との混合物(当該混合物中のKAlF5量が10〜40質量%)を90質量%以上含むフッ化物系の非腐食性フラックス粉末と、平均粒径4〜6μmでかつ最大粒径が10μm未満のZn粉末と、平均粒径3〜6μmでかつ最大粒径が10μm未満のSi粉末と、アクリル樹脂を3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールに溶解した溶液からなるバインダーと、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールからなる希釈剤とを用意し、Zn粉末、Si粉末および非腐食性フラックス粉末を、バインダーおよび希釈剤中に分散混合させて分散液を得た。当該分散液における全成分の重量比率は、Zn粉末:Si粉末:非腐食性フラックス粉末:バインダー:希釈剤が、14.1重量部:10.6重量部:21.1重量部:9.2重量部:45.0重量部である。
そして、熱交換管を加熱した後、Si粉末量が3g/m2、Zn粉末量が5〜6g/m2、フラックス粉末量が6g/m2、バインダー量が2.5g/m2となるように、前記分散液をロールコート法により熱交換管の外面に塗布し、ついで乾燥機内で乾燥させて分散液中の液状成分を気化させることにより、熱交換管の外面に、Si粉末、Zn粉末およびフラックス粉末を付着させた。
ついで、上述したコンデンサの製造方法と同様にして、タンク本体素材と閉鎖部材と仕切部材とからなるヘッダタンク素材、熱交換管、フィン、サイドプレート、入口部材および出口部材を仮止めして仮止め体をつくった。
その後、ろう付炉内を窒素ガス雰囲気にしておき、前記仮止め体をろう付炉内に入れて所定温度まで加熱し、一定の温度範囲に一定時間保持することによって、熱交換管とコルゲートフィンとをろう付するとともに、コルゲートフィンとサイドプレートとをろう付し、さらにタンク本体素材のろう材を利用して熱交換管とタンク本体素材、ならびにタンク本体素材と閉鎖部材および仕切部材とをろう付してコンデンサを製造した。
比較例1
熱交換管の外面に、溶射法によりZn溶射皮膜を形成した。
Mn1.6質量%、Si:0.55質量%、Zr:0.125質量%、Zn1.5質量%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム製芯材、およびSi8.15質量%を含み、残部Alおよび不可避不純物からなりかつ芯材の両面を覆うアルミニウムろう材製皮材よりなる肉厚80μmのブレージングシートで形成されたコルゲート状フィンを使用した。
さらに、上記実施例と同様にして仕切板、閉鎖部材、入口部材、出口部材およびタンク本体素材をつくった。さらに、上記実施例と同様な重量比率を有するZn粉末、Si粉末および非腐食性フラックス粉末がバインダーおよび希釈剤中に分散混合させられた分散液を使用した。
その後、複数の熱交換管と、フィンとを交互に積層状に組み合わせて積層し、窒素ガス雰囲気とされた炉内において熱交換管およびコルゲートフィンを加熱し、熱交換管およびコルゲートフィンの実体温度が580〜600℃で3分間保持することにより、熱交換管とコルゲートフィンとをろう付した。これと同時に、コルゲートフィンとサイドプレートとをろう付し、さらにタンク本体素材のろう材を利用して熱交換管とタンク本体素材、ならびにタンク本体素材と閉鎖部材および仕切部材とをろう付してコンデンサを製造した。
比較例2
アルミニウムベア材製コルゲートフィンを形成する合金中のZn含有量が0.7質量%であることを除いては、上記実施例と同様にして、熱交換器を製造した。
評価試験
実施例、比較例1および比較例2で製造された熱交換器の熱交換管の管壁(30)の最外面および管壁(30)の本体部(31)の自然電位、実施例および比較例2で製造された熱交換器のコルゲートフィンの自然電位、比較例1で製造された熱交換器のコルゲートフィンにおける芯材からなる部分の自然電位、ならびに実施例、比較例1および比較例2で製造された熱交換器における熱交換管とコルゲートフィンとのろう付部に形成されたフィレットの自然電位を測定した。これらの結果を表1まとめて示す。
Figure 2019060522
さらに、実施例および比較例2で製造された熱交換器についてSWAAT55日試験を施し、比較例1で製造された熱交換器についてはSWAAT40日試験を施してその腐食状況を調べた。
その結果、熱交換管の外面に発生した腐食の最大腐食深さは、実施例においては57μmであるのに対し、比較例1においては157μmであり、比較例2においては140μmであった。また、実施例および比較例2においては、管壁の本体部の腐食は軽微であるが、比較例1においては管壁の本体部が多く腐食していた。しかも、比較例1においては、実施例および比較例2に比べて腐食が広範囲に発生していた。
また、実施例においてはフィレットの消失はなくてフィンの剥離は発生しておらず、しかもフィンの腐食は軽微であった。これに対し、比較例1においてはフィレットの消失はなくてフィンの剥離は発生していなかったものの、フィンの腐食状況は激しかった。また、比較例2においてはフィレットが消失し、フィンの剥離が発生していた。
この発明の方法で製造された熱交換器は、カーエアコン用コンデンサに好適に用いられる。
(1):コンデンサ(熱交換器)
(2):扁平状熱交換管
(3):コルゲートフィン

Claims (1)

  1. アルミニウム製熱交換管および熱交換管にろう付されたアルミニウム製フィンを備えた熱交換器を製造する方法であって、
    Mn含有量が0.1〜0.3質量%、Cu含有量が0.4〜0.5質量%、Si含有量が0.2質量%以下、Fe含有量が0.2質量%以下、Zn含有量が0.05質量%以下、Ti含有量が0.05質量%以下であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウム押出形材製熱交換管と、Mn含有量が1.0〜1.5質量%、Zn含有量が1.2〜1.8質量%、Si含有量が0.6質量%以下、Fe含有量が0.5質量%以下、Cu含有量が0.05質量%以下であり、かつ残部Alおよび不可避不純物からなる合金により形成されたアルミニウムベア材製フィンとを用意すること、
    Zn粉末とSi粉末とフラックス粉末とをバインダーに分散混合させた分散液を、熱交換管の外面に塗布するとともに分散液中の液状成分を気化させることによって、熱交換管の外面に、Zn粉末付着量が5〜6g/m2、Si粉末付着量が3〜6g/m2、フラックス粉末付着量が6〜24g/m2となるようにZn粉末、Si粉末およびフラックス粉末を付着させること、
    ならびに熱交換管およびフィンを組み合わせた組み合わせ体をろう付炉内において加熱し、熱交換管の外面に付着したSi粉末およびフラックス粉末を利用して熱交換管とフィンとをろう付することを含む熱交換器の製造方法。
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