以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の自動車外装部品を構成するポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂および全芳香族液晶ポリマーを必須成分として含有する。
本発明に使用するポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−オレフィン共重合体(例えばプロピレンとエチレンもしくは炭素数が4〜20のα−オレフィンとの共重合体)、ブロックポリプロピレンまたはこれらのブレンド樹脂などが挙げられる。
この中でも、機械強度が得られやすい点から、ブロックポリプロピレンが好ましい。
プロピレン−オレフィン共重合体においてプロピレンとの共重合に用いられるオレフィンとしては、エチレン、炭素原子数4〜20のα−オレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用することができる。
これらの中ではエチレン、炭素数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。
α−オレフィンから導かれる繰返し単位の含有量は、ポリプロピレン樹脂中で20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
プロピレン−オレフィン共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはランダムブロック共重合体などが挙げられる。
ブロックポリプロピレンとは、主成分としての結晶性プロピレン重合体、ならびに、共重合体成分としてのランダム共重合体エラストマーおよび任意成分であるエチレン重合体とからなる樹脂である。
ブロックポリプロピレン中のプロピレン重合体としては、プロピレン単独重合体または結晶性ランダム共重合体(例えばプロピレンとエチレンもしくは炭素数が4〜20のα−オレフィンとの共重合体)が挙げられるが、耐熱性の点からプロピレン単独重合体であることが好ましい。
ブロックポリプロピレン中のランダム共重合体エラストマーとしては、エチレン−プロピレン共重合体、または、プロピレン−エチレン−α−オレフィン(例えば炭素数が4〜20)共重合体が挙げられるが、エチレン−プロピレン共重合体エラストマーが好ましい。
ブロックポリプロピレン中のエチレン重合体としては、エチレン単独重合体または結晶性ランダム共重合体(例えばエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体)が挙げられるが、エチレン単独重合体であることが好ましい。
ブロックポリプロピレン中の常温キシレン可溶成分は、1〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることがさらに好ましい。
常温キシレン可溶分が1質量%未満であると、得られるポリプロピレン樹脂組成物において、全芳香族液晶ポリマーの分散性や、衝撃強度が不足する傾向にあり、50質量%を超えると、ポリプロピレン樹脂組成物の剛性や耐熱性が低下する傾向がある。
なお、常温キシレン可溶成分は以下のようにして測定する。まず、ブロックポリプロピレン2.5gを攪拌しながら、135℃のキシレン250ml中に溶解する。20分後、溶液を攪拌しながら25℃まで冷却し、ついで30分間沈降させた後、沈殿をろ過し、ろ液を窒素気流下で蒸発させ、恒量に達するまで80℃で残渣を真空乾燥する。そして、乾燥した残渣を秤量して、25℃におけるキシレン可溶成分の質量%を求める。
本発明に使用するポリプロピレン樹脂のメルトボリュームフローレート(MVR)は1〜100cm3/10分であるのが好ましく、2〜80cm3/10分であるのがより好ましく、3〜60cm3/10分であるのがさらに好ましい。
ここで、MVRは、ISO 1133に準拠し、230℃の温度条件で、2.16kg荷重にて測定した値である。
ポリプロピレン樹脂のMVRが1cm3/10分未満であると、得られるポリプロピレン樹脂組成物の流動性が低下し、100cm3/10分を超えると、曲げ弾性率、衝撃強度や耐熱性が低下する傾向がある。
本発明に使用するポリプロピレン樹脂を製造する方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒またはメタロセン触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法、またはプロピレン以外のオレフィン(例えばエチレンおよび炭素数が4以上のα−オレフィン)から選ばれる1種以上のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法などが挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物および助触媒成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒中で行われるスラリー重合法や溶液重合法、溶媒の不存在下に行われる液相重合法や気相重合法、およびそれらを連続的に行う気相−気相重合法や液相−気相重合法が挙げられ、これらの重合方法は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。また、ポリプロピレン樹脂を一段階で製造する方法であってもよく、異なる条件の二段階以上の多段階で製造する多段重合法であってもよい。これら重合方法は、プロピレンの単独重合、およびプロピレンとオレフィンの共重合のいずれにも適用することができる。
本発明におけるブロックポリプロピレンの製造方法は、回分式または連続式のいずれの方法であってもよく、一般的には、先ず主成分であるプロピレン重合体を作り、次に共重合体成分を作る方法が用いられる。
例えば連続式で製造する場合は、前段の重合槽において原料プロピレンガスに分子量調整剤の水素ガス、触媒を供給し、重合時間で重合量をコントロールしてプロピレン単独重合体を製造し、次いで後段の重合槽に移動させて、さらに原料プロピレンガスやエチレンガスなど、水素ガス、および必要に応じて触媒を加えて共重合体(ランダム共重合体エラストマー、エチレン重合体など)を製造し、ブロックポリプロピレンを得ることができる。
このような多段重合法では、各段階で生成する樹脂成分が重合時の重合反応容器中でブレンドされるため、各樹脂成分を押出機によって溶融混練する方法に比べて、主成分プロピレン重合体中における共重合体(ランダム共重合体エラストマー、エチレン重合体など)の分散が微細になる。
ブロックポリプロピレンは、上記のように多段重合法により製造できるがこれに限定されるものではなく、上記の各重合体の溶融混練によるブレンド樹脂であってもよい。
ポリプロピレン樹脂には、さらに、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ビニル系樹脂、ジエン系ゴムおよび熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種が含まれていてもよい。
エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンゴムなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用してもよい。
ビニル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどから選択される1種以上のモノマーの(共)重合体など)、および、スチレン系樹脂(ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、およびHIPSなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用してもよい。
ジエン系ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体など)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用してもよい。
熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−エチレンブロック共重合体、および、これらを水添した誘導体などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用してもよい。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーとは、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる、異方性溶融相を形成する全芳香族液晶ポリエステルまたは全芳香族液晶ポリエステルアミドである。
全芳香族液晶ポリマーの異方性溶融相の性質は直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわち、ホットステージに載せた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーを構成する繰返し単位としては、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位、芳香族アミノカルボニル繰返し単位およびこれらの組合せなどが挙げられる。
芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸である、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸など、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では4−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が、得られる全芳香族液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が、得られる全芳香族液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルが、重合時の反応性、得られる全芳香族液晶ポリマーの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体としては、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸などが挙げられる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは本発明の目的を損なわない範囲で、芳香族オキシジカルボニル繰返し単位、脂肪族ジヒドロキシ繰返し単位、脂肪族ジカルボニル繰返し単位やチオエステル結合を含むものであってもよい。チオエステル結合を与える単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの単量体の使用量は、芳香族オキシカルボニル繰返し単位、芳香族ジカルボニル繰返し単位、芳香族ジオキシ繰返し単位、芳香族アミノオキシ繰返し単位、芳香族ジアミノ繰返し単位および芳香族アミノカルボニル繰返し単位を与える単量体の合計量を含む全体に対して10モル%以下であるのが好ましい。
これらの繰り返し単位を組み合わせた共重合体には、単量体の構成や組成比、共重合体中での各繰り返し単位のシークエンス分布によっては、異方性溶融相を形成するものとしないものが存在するが、本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは異方性溶融相を形成する共重合体に限られる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは、2種以上の全芳香族液晶ポリマーをブレンドしたものであってもよい。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの示差走査熱量計により測定される結晶融解温度は260℃未満であり、好ましくは250℃以下であり、より好ましくは235℃以下であり、さらに好ましくは225℃以下である。本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーは、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度が260℃未満であることによって、マトリクスであるポリプロピレン樹脂に全芳香族液晶ポリマーが繊維状態で分散しやすくなり、自動車外装部品に成形する際に、本発明の目的である、優れた機械物性および耐熱性が得やすくなる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解ピーク温度から求めたものである。より具体的には、全芳香族液晶ポリマーの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20〜50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度とする。測定用機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000などを使用することができる。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの溶融粘度(キャピラリーレオメーターで測定、結晶融解温度+40℃、1000s−1)は、1〜200Pa・sが好ましく、5〜100Pa・sがより好ましい。
溶融粘度が1Pa・s未満であると繊維状態で均一に分散しにくくなる傾向があり、200Pa・sを超えるとやはり繊維状態で均一に分散しにくくなる傾向がある。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーとしては全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用され、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルがより好適に使用される。
[式中、
Ar1およびAr2は、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、全芳香族液晶ポリエステル中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たすものである:
0.5≦p/q≦2.5
2≦r≦15、および
2≦s≦15。]
上記式(I)に係る組成比p(モル%)と式(II)に係る組成比q(モル%)のモル比(p/q)は、0.6〜1.8がより好ましく、0.8〜1.6がさらに好ましい。
上記の好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、pとqの合計の組成比は、70〜96モル%が好ましく、76〜90モル%がより好ましい。
上記の好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、式(I)に係る組成比pと式(II)に係る組成比qは、それぞれ、32〜54モル%が好ましく、36〜52モル%がより好ましい。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルは、式(I)および式(II)で表される繰り返し単位を、少なくとも上記のモル比(p/q)、および場合により上記のpとqの合計の組成比および/またはpとqのそれぞれの組成比(モル%)で含むことにより、260℃未満である結晶融解温度を示す。
また、本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルについて、式(III)に係る組成比rと式(IV)に係る組成比sは、それぞれ、2〜15モル%が好ましく、5〜12モル%がより好ましい。rとsは、等モル量であるのが好ましい。
上記の繰返し単位において、例えばAr1(またはAr2)が2種以上の2価の芳香族基を表すとは、式(III)(または(IV))で表される繰返し単位が全芳香族液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(III)に係る組成比r(または式(IV)に係る組成比s)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
式(I)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸およびこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(II)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(III)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルのなかでも、式(III)および式(IV)で表される繰返し単位に係るAr1およびAr2が、互いに独立して、式(1)〜(4)で表される芳香族基からなる群から選択される1種または2種以上を含む全芳香族液晶ポリエステルが、さらに好適に使用される。
これらの中でも、式(III)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(4)で表される芳香族基が、すなわち、これら繰返し単位を与える単量体としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸ならびにこれらのエステル形成性誘導体が、得られる全芳香族液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことから特に好ましい。
また、式(IV)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(3)で表される芳香族基が、すなわち、これら繰返し単位を与える単量体としては、ハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルならびにこれらのエステル形成性誘導体が、重合時の反応性および得られる全芳香族液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことから特に好ましい。
上記の繰返し単位において、例えばAr1(またはAr2)が2種以上の芳香族基を含むとは、式(III)(または(IV))で表される繰返し単位が全芳香族液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(III)に係る組成比r(または式(IV)に係る組成比s)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルにおいて繰返し単位の組成比の合計[p+q+r+s]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲において、他の繰返し単位をさらに含有してもよい。
本発明に好適に使用される全芳香族液晶ポリエステルを構成する他の繰返し単位を与える単量体としては、他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール、芳香族メルカプトフェノールおよびこれらの組合せなどが挙げられる。
他の芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、例えば、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
これらの他の単量体成分から与えられる繰返し単位の組成比の合計は、繰返し単位全体において、10モル%以下であるのが好ましい。
以下、本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの製造方法について説明する。
本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、前記の単量体の組合せからなるエステル結合やアミド結合などを形成させる公知の重縮合方法、例えば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを使用することができる。
溶融アシドリシス法とは、本発明で使用する全芳香族液晶ポリマーの製造方法に使用するのに好ましい方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、続いて反応を続けて溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(例えば、酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法の何れの場合においても、全芳香族液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基および/またはアミノ基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2〜5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体のアセチル化物を反応に使用する方法が挙げられる。
単量体のアシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、全芳香族液晶ポリマーの製造時に単量体に無水酢酸などのアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒の具体例としては、例えば、有機スズ化合物(ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジアリールスズオキシドなど)、有機チタン化合物(二酸化チタン、三酸化アンチモン、アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなど)、カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩(酢酸カリウムなど)、無機酸塩類(硫酸カリウムなど)、ルイス酸(三フッ化硼素など)、ハロゲン化水素などの気体状酸触媒(塩化水素など)が挙げられる。
触媒の使用割合は、通常単量体全量に対して1〜1000ppm、好ましくは2〜100ppmである。
このようにして重縮合反応されて得られた全芳香族液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
本発明の自動車外装部品に使用されるポリプロピレン樹脂組成物における、全芳香族液晶ポリマーの含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対し、全芳香族液晶ポリマー10〜500質量部、好ましくは、15〜450質量部、より好ましくは20〜400質量部である。
全芳香族液晶ポリマーの含有量が10質量部未満であると、流動性、機械強度および耐熱性の改善効果が十分に得られず、500質量部を超えると曲げたわみ量が低下するなど柔軟性が損なわれる傾向がある。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、任意の成分として、さらに相溶化剤を含有することができる。
相溶化剤とは、ブレンド樹脂組成物を構成する各樹脂相の界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させ、相溶性を向上させる機能を有するものをいう。
ポリプロピレン樹脂組成物における相溶化剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
相溶化剤の添加量が0.5質量部未満であると相溶性向上効果が得られにくく、10質量部を超えると成形加工時の熱安定性が低下する傾向がある。
相溶化剤の具体例としては、例えば、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体、無水マレイン酸グラフトポリスチレン系共重合体、ビニルモノマー/無水マレイン酸共重合体、エポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体、エポキシ基含有ビニル系ランダムまたはグラフトもしくはブロック共重合体、カルボキシル基含有オレフィン系ランダムまたはグラフト共重合体などが挙げられる。
これらの相溶化剤の中でも、酸無水物基、カルボキシル基、およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種を有する共重合体が好ましく、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体やエポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体がより好ましい。
無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体の具体例としては、例えば、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(PP−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレンゴム(EPR−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM−g−MAH)などが挙げられる。
無水マレイン酸グラフトポリスチレン系共重合体の具体例としては、例えば、無水マレイン酸グラフトポリスチレン(PS−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトスチレン/ブタジエン/スチレン共重合体(SBS−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトスチレン/エチレン/ブテン/スチレン共重合体(SEBS−g−MAH)などが挙げられる。
ビニルモノマー/無水マレイン酸共重合体の具体例としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸/無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
エポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体の具体例としては、例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体へのポリスチレングラフト共重合体(EGMA−g−PS)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体へのポリメチルメタクリレートグラフト共重合体(EGMA−g−PMMA)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体へのスチレン/アクリロニトリルグラフト共重合体(EGMA−g−AS)などが挙げられる。
エポキシ基含有ビニル系ランダムまたはグラフトもしくはブロック共重合体の具体例としては、例えば、グリシジルメタクリレートグラフトポリスチレン(PS−g−GMA)、グリシジルメタクリレートグラフトポリメチルメタクリレート(PMMA−g−GMA)、グリシジルメタクリレートグラフトポリアクリロニトリル(PAN−g−GMA)などが挙げられる。
カルボキシル基含有オレフィン系ランダムまたはグラフト共重合体の具体例としては、例えば、カルボキシル化ポリエチレン、カルボキシル化ポリプロピレン、エチレン/メタクリル酸共重合体(アイオノマー)、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体などが挙げられる。
相溶化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用してもよい。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、任意の成分として、さらに無機および/または有機充填材を含有してもよい。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物が含有してもよい、無機および/または有機充填材の具体例としては、例えば、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなどが挙げられ、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
これらの中では、タルクが、物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
また、無機および/または有機充填材は、表面処理をされたものであってもよい。表面処理の方法としては、例えば、充填材表面に表面処理剤を吸着させる方法、混練する際に表面処理剤を添加する方法などが挙げられる。
表面処理剤としては、反応性カップリング剤であるシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ボラン系カップリング剤など、潤滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などが挙げられる。
無機および/または有機充填材を配合する場合の含有量は、ポリプロピレン樹脂および全芳香族液晶ポリマーの合計量100質量部に対して、1〜150質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。
無機および/または有機充填材の含有量が1質量部未満であるとポリプロピレン樹脂組成物について機械強度および耐熱性の向上効果が得られにくく、150質量部を超えると流動性が低下する傾向がある。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物には、ポリプロピレン樹脂と全芳香族液晶ポリマーの他に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の添加剤や樹脂成分が添加されてもよい。
他の添加剤の具体例としては、例えば、滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜25のものをいう)など、離型改良剤であるポリシロキサン、フッ素樹脂など、着色剤である染料、顔料、カーボンブラックなど、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、造核剤であるタルク、有機リン酸塩、ソルビトール類など、アンチブロッキング剤、酸化防止剤であるリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など、耐候剤、熱安定剤、中和剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上を併用することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物における他の添加剤の合計量は、ポリプロピレン樹脂と全芳香族液晶ポリマーの合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
他の添加剤の合計量が0.01質量部未満であると、添加剤の機能を実現しにくく、5質量部を超えると、ポリプロピレン樹脂組成物の成形加工の熱安定性が悪くなる傾向がある。
また、上記他の添加剤のうち、滑剤、離型剤、アンチブロッキング剤などの添加剤を使用する場合は、ポリプロピレン樹脂組成物を作製する際に添加してもよいし、自動車外装部品を成形する際にポリプロピレン樹脂組成物のペレット表面に付着させてもよい。
他の樹脂成分の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂であるポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどや、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂成分は単独でまたは2種以上を併用してもよい。
他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、ポリプロピレン樹脂と全芳香族液晶ポリマーの合計量100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましく、0.1〜80質量部であることがより好ましい。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂および全芳香族液晶ポリマー、ならびに、相溶化剤、無機および/または有機充填材、他の添加剤、他の樹脂成分を混合し、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用いて、全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度近傍から結晶融解温度+40℃の温度条件で溶融混練して得ることができる。
他の樹脂成分および他の添加剤は、予めポリプロピレン樹脂または全芳香族液晶ポリマーのいずれかに配合しておいてもよく、あるいはポリプロピレン樹脂および全芳香族液晶ポリマーを溶融混練して得られたポリプロピレン樹脂組成物を成形する際に配合してもよい。
このようにして得られた本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、ISO 1133に準拠したメルトボリュームフローレート(230℃、荷重2160g)が、好ましくは3〜100cm3/10分、より好ましくは5〜85cm3/10分、さらに好ましくは10〜65cm3/10分、特に好ましくは15〜60cm3/10分であって、流動性に優れるので、本発明の自動車外装部品の生産性が優れるものとなるという利点を有する。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO−178に準拠した曲げ弾性率(23℃)が、2.0GPa以上、好ましくは2.0〜30.0GPa、より好ましくは2.3〜20.0GPa、さらに好ましくは2.5〜15.0GPaであって、本発明の自動車外装部品の剛性が優れるものとなるという利点を有する。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO−179に準拠したシャルピー衝撃強度(23℃)が、好ましくは5.0〜100kJ/m2、より好ましくは5.0〜75kJ/m2、さらに好ましくは5.5〜50kJ/m2であって、本発明の自動車外装部品の耐衝撃性が優れるものとなるという利点を有する。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、これから構成される成形品についてISO−75に準拠した荷重たわみ温度(荷重0.46MPa)が、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは110〜225℃、よりさらに好ましくは120〜200℃であって、本発明の自動車外装部品の耐熱性が優れるものとなるという利点を有する。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、これから構成される成形品についてASTM D696に準拠した成形品の流れ方向(MD)の線膨張係数が、好ましくは−1.0×10−5〜10.0×10−5/℃、より好ましくは−0.7×10−5〜8.0×10−5/℃、さらに好ましくは−0.5×10−5〜6.5×10−5/℃、よりさらに好ましくは−0.4×10−5〜5.0×10−5/℃であって、本発明の自動車外装部品の寸法安定性が優れるものとなるという利点を有する。
上記の、本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物の曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、荷重たわみ温度、線膨張係数は、本発明に使用する全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度近傍から結晶融解温度+50℃の範囲の温度条件で射出成形することによって得ることができる。
また、本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度が低いため(260℃未満)、成形加工時に溶融流動しやすく、比較的低温においても上記のようなメルトボリュームフローレートが得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形または射出圧縮成形などの公知の成形方法を挙げることができる。
この中でも、成形の容易さ、量産性、コストなどの観点から、射出成形機を用いた射出成形が好ましい。
自動車外装部品は、外装として構造部を覆うものであって特に限定されないが、例えば、ドア、ルーフ、ピラー、ボンネット、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバー、フロアパネルなどが挙げられる。これら自動車外装部品は、それぞれの部品について全部または一部が本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物で構成されてよい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例中の結晶融解温度、溶融粘度、メルトボリュームフローレート、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、荷重たわみ温度および線膨張係数の測定は以下に記載の方法で行った。
(1)結晶融解温度
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000を用い、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20〜50℃高い温度で10分間保持する。次に、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、その際に観測される発熱ピークのピークトップの温度を全芳香族液晶ポリマーの結晶化温度(Tc)とし、さらに、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を全芳香族液晶ポリマーの結晶融解温度(Tm)とした。
(2)溶融粘度
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、0.7mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、剪断速度1000sec−1の条件下、LCP−1については260℃、LCP−2については380℃、LCP−3については320℃での溶融粘度をそれぞれ測定した。
(3)メルトボリュームフローレート(MVR)
ISO 1133に準拠して、(株)東洋精機製作所製メルトインデックサG−02を用い、230℃、荷重2160gの条件で測定した。MVRの値が大きいと、流動性が高く成形しやすく生産性に優れることを意味する。
(4)曲げ弾性率
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、シリンダー設定温度を260℃(比較例4については320℃)、金型温度40℃で、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片に成形し、これを用いてISO−178に準拠して測定した。
(5)シャルピー衝撃強度
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、シリンダー設定温度を、260℃(比較例4については320℃)、金型温度40℃で、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mm の短冊状試験片に成形し、ISO−179に準拠し、デジタル衝撃試験機として (株)東洋精機製作所製G−UBを用いて、ノッチのタイプはA(ノッチ加工後の残り幅は8.0mm)、ハンマーの秤量は4wJ、打撃方向はエッジワイズの条件において測定した。
(6)荷重たわみ温度(DTUL)
曲げ弾性率の測定に用いた試験片と同じ試験片を用いて、ISO−75に準拠し、荷重0.46MPa、昇温速度2℃/分で測定した。
(7)線膨張係数
曲げ弾性率の測定に用いた試験片と同じ試験片について、成形品の流れ方向(MD)を長辺とするようにして、切削加工により、長さ10.0mm、幅4.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片を作製して測定用サンプルとした。(株)日立ハイテクサイエンス製熱機械分析装置(TMA/SS6000)を用いて、ASTM D696に準拠し、温度変化に対する試料長の変化量を測定した。線膨張係数の値が0に近いほど、寸法安定性に優れることを意味する。
下記の略号は以下の化合物を表す。
PP:ポリプロピレン樹脂
LCP:全芳香族液晶ポリマー
POB:4−ヒドロキシ安息香酸
BON6:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
BP:4,4’−ジヒドロキシビフェニル
TPA:テレフタル酸
(ポリプロピレン樹脂)
実施例において、ポリプロピレン樹脂として以下のものを使用した。
PP−1:ブロックポリプロピレン((株)プライムポリマー製、J715M、MVR12.9cm3/10分、230℃、荷重2160g)
PP−2:プロピレン単独重合体((株)プライムポリマー製、J105G、MVR12.8cm3/10分、230℃、荷重2160g)
PP−3:ブロックポリプロピレン((株)プライムポリマー製、J466HP、MVR4.1cm3/10分、230℃、荷重2160g)
(LCPの合成)
[合成例1(LCP−1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、BON6:376.3g(40モル%)、POB:276.2g(40モル%)、HQ:55.1g(10モル%)およびTPA:83.1g(10モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間かけて昇温し、同温にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温にて30分間保持した。その後、3時間かけて335℃まで昇温した後、30分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により全芳香族液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は218℃であり、溶融粘度は23Pa・sであった。
[合成例2(LCP−2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:323.2g(36モル%)、BON6:48.9g(4モル%)、BP:169.4g(14モル%)、HQ:114.5g(16モル%)およびTPA:323.9g(30モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から145℃まで1時間かけて昇温し、145℃で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により全芳香族液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は335℃であり、溶融粘度は20Pa・sであった。
[合成例3(LCP−3)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:655.4g(73モル%)およびBON6:330.2g(27モル%)を仕込み、さらに全単量体の水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去しながら210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、325℃まで5時間かけて昇温した後、90分かけて20mmHgにまで減圧した。所定のトルクをした時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕機により全芳香族液晶ポリマーのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は278℃であり、溶融粘度は23Pa・sであった。
(実施例1〜6、比較例1〜4)
PP−1〜3、LCP−1〜3を表1の実施例に示す含有量となるように配合して、2軸押出機(日本製鋼(株)製TEX−30)を用いて、シリンダー温度をLCPのTm+10〜+30℃となるようにして溶融混練して、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。
この樹脂組成物について、上記方法によりメルトボリュームフローレート(MVR)、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、荷重たわみ温度(DTUL)および線膨張係数の測定を行った。結果を表1に示す。
各実施例におけるポリプロピレン樹脂組成物(実施例1〜6)はいずれも、メルトボリュームフローレート(MVR)が5.62〜39.6cm3/10分、曲げ弾性率が2.1〜7.8GPa、シャルピー衝撃強度が5.3〜11.0kJ/m2、荷重たわみ温度(DTUL)が123〜157℃、線膨張係数が−0.08×10−5〜4.4×10−5/℃であり、生産性、機械強度、耐熱性および寸法安定性に優れ、自動車外装部品に適したものであった。
これに対して、全芳香族液晶ポリマーを含有しない比較例1や含有量が所定量より少ない比較例2におけるポリプロピレン樹脂組成物は生産性、曲げ弾性率、耐熱性および寸法安定性に劣り、自動車外装部品に適さないものであった。
また、結晶融解温度の高い全芳香族液晶ポリマーLCP−2(Tm 335℃)を使用した比較例3は溶融混練時の熱劣化によってポリプロピレン樹脂組成物を得ることができなかった。同様に結晶融解温度の高い全芳香族液晶ポリマーLCP−3(Tm 278℃)を使用した比較例4におけるポリプロピレン樹脂組成物は生産性、機械強度、耐熱性および寸法安定性が劣り、自動車外装部品に適さないものであった。