WO2019124256A1 - 液晶ポリエステル組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

液晶ポリエステルと、α-オレフィンに由来する繰り返し単位と、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとに由来する繰返し単位と、を含むオレフィン系共重合体と、板状フィラーと、を含み、この液晶ポリエステル、このオレフィン系共重合体およびこの板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、この液晶ポリエステルの含有量が50質量%を超え80質量%以下であり、このオレフィン系共重合体の含有量が5質量%以上20質量%未満であり、この板状フィラーの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、この液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)に対するこのオレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)の比(V2/V1)が0.1を超え3.0以下である液晶ポリエステル組成物。

Description

液晶ポリエステル組成物および成形体
 本発明は、液晶ポリエステル組成物および成形体に関するものである。
 本願は、2017年12月18日に、日本に出願された特願2017-242143号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 液晶ポリエステルは、流動性および耐熱性が高く、寸法精度の高い成形品が成形できることが知られている。液晶ポリエステルは通常、単体で用いられることは少なく、各種用途における要求特性(例えば、曲げ強度)を満たすために、充填材を含有させた液晶ポリエステル組成物として用いられている。このような液晶ポリエステル組成物から得られる成形体は、軽量でありながら強度が高いことが知られている。
 近年では、上述したような液晶ポリエステルの特長を活かし、高強度が要求される自動車用の外板部材の形成材料として、現行の金属材料の代わりに液晶ポリエステルを用いることが検討されている。液晶ポリエステルを自動車用の外板部材の形成材料として用いることにより、現行品よりも軽量な自動車用の外板部材が得られる。
 しかしながら、上述の液晶ポリエステル組成物から得られる成形体は、液晶ポリエステル単体から得られる成形体と比べて衝撃強度が低いという問題がある。
 このような問題を解決するため、ゴムのような衝撃改質材を含有させた液晶ポリエステル組成物を用いることが考えられる。特許文献1および特許文献2には、衝撃改質材を含有させた液晶性樹脂組成物が記載されている。
 特許文献1に記載の液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂に、ガラス繊維等の繊維状充填材及びタルク等の非繊維状充填材から選択される少なくとも1種の無機充填剤と、オレフィン系共重合体及びスチレン系共重合体から選択される少なくとも1種の共重合体とを、前記液晶性樹脂が65~93質量%、前記無機充填剤が5~20質量%、前記共重合体が2~10質量%になるように配合されている。
 特許文献2に記載の液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂に、マイカ、タルク及びガラスフレーク等の板状充填剤と、オレフィン系共重合体及びスチレン系共重合体から選択される少なくとも1種の共重合体とを、前記液晶性樹脂が64~78質量%、前記板状充填剤が20~30質量%、前記共重合体が2~6質量%になるように配合されている。
日本国特許第5680788号公報 特開2015-021110号公報
 しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている液晶性樹脂組成物を自動車用の外板部材のような大型の成形体の形成材料に用いるためには、さらなる流動性の向上が必要である。
 本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、衝撃強度が高い成形体を成形可能であり、かつ流動性が高い液晶ポリエステル組成物および成形体を提供することを目的とする。
 上記の課題を解決するため、本発明は以下の態様を含む。
[1]液晶ポリエステルと、
 α-オレフィンに由来する繰返し単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰返し単位とを含むオレフィン系共重合体と、
 板状フィラーと、を含み、
 前記液晶ポリエステル、前記オレフィン系共重合体および前記板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、
 前記液晶ポリエステルの含有量が50質量%を超え80質量%以下であり、
 前記オレフィン系共重合体の含有量が5質量%以上20質量%未満であり、
 前記板状フィラーの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、
 前記液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)に対する前記オレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)の比(V2/V1)が0.1を超え3.0以下である液晶ポリエステル組成物。
 前記みかけ溶融粘度(V1)(Pa・s)とは、前記液晶ポリエステルの流動開始温度よりも10℃高い測定温度において、せん断速度10000s-1としたときの前記液晶ポリエステルの溶融粘度を表し、
 前記みかけ溶融粘度(V2)(Pa・s)とは、前記液晶ポリエステルの流動開始温度よりも10℃高い測定温度において、せん断速度10000s-1としたときの前記オレフィン系共重合体の溶融粘度を表す。
[2][1]に記載の液晶ポリエステル組成物から形成される成形体。
 本発明の一態様によれば、衝撃強度が高い成形体を成形可能であり、かつ流動性が高い液晶ポリエステル組成物および成形体が提供される。
<液晶ポリエステル組成物>
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと、オレフィン系共重合体と、板状フィラーと、を含む。
 なお、本明細書においては、液晶ポリエステルと、オレフィン系共重合体と、板状フィラーとを含む混合物を「液晶ポリエステル組成物」とする。また、前記混合物をペレット状に成形したものも、同様に「液晶ポリエステル組成物」と称する場合がある。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、後述する成形体の形成材料として用いられる。
[液晶ポリエステル]
 本実施形態に係る液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、250℃以上450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、本実施形態に係る液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。本実施形態に係る液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
 本実施形態に係る液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの;複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの;芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの;およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部または全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
 芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(すなわち、エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(すなわち、酸ハロゲン化物)、およびカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(すなわち、酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(すなわち、ヒドロキシル基のアシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(すなわち、アミノ基のアシル化物)が挙げられる。
 本実施形態に係る液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
(1)-O-Ar-CO-
(2)-CO-Ar-CO-
(3)-X-Ar-Y-
(Arは、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または下記式(4)で表される基を表す。XおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(-NH-)を表す。Ar、ArまたはArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)-Ar-Z-Ar
(ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表す。Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
 前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
 前記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基およびn-デシル基が挙げられる。
 前記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基および2-ナフチル基が挙げられる。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、ArまたはArで表される前記基毎に、それぞれ独立に、2個以下が好ましく、1個がより好ましい。
 前記アルキリデン基としては、炭素数1~10のアルキリデン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n-ブチリデン基および2-エチルヘキシリデン基が挙げられる。
 繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arがp-フェニレン基であるもの(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、およびArが2,6-ナフチレン基であるもの(例えば、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
 なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
 繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arがp-フェニレン基であるもの(例えば、テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arがm-フェニレン基であるもの(例えば、イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、およびArがジフェニルエ-テル-4,4’-ジイル基であるもの(例えば、ジフェニルエ-テル-4,4’-ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
 繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミンまたは芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arがp-フェニレン基であるもの(例えば、ヒドロキノン、p-アミノフェノールまたはp-フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、およびArが4,4’-ビフェニリレン基であるもの(例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルまたは4,4’-ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
 前記液晶ポリエステルにおける繰返し単位(1)の含有量は、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(すなわち、前記液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、30モル%以上が好ましく、30モル%以上80モル%以下がより好ましく、40モル%以上70モル%以下がさらに好ましく、45モル%以上65モル%以下がとりわけ好ましい。
 前記液晶ポリエステルにおける繰返し単位(2)の含有量は、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、35モル%以下が好ましく、10モル%以上35モル%以下がより好ましく、15モル%以上30モル%以下がさらに好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下がとりわけ好ましい。
 繰返し単位(3)の含有量は、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、35モル%以下が好ましく、10モル%以上35モル%以下がより好ましく、15モル%以上30モル%以下がさらに好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下がとりわけ好ましい。
 1つの側面として、本実施形態に係る液晶ポリエステルは、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、繰返し単位(1)の含有量が、30~80モル%、好ましくは40~70モル%、より好ましくは45~65モル%であり;繰返し単位(2)の含有量が、10~35モル%、好ましくは15~30モル%、より好ましくは17.5~27.5モル%であり;繰返し単位(3)の含有量が、10~35モル%、好ましくは15~30モル%、より好ましくは17.5~27.5モル%である。
 但し、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)および繰返し単位(3)の合計含有量は100モル%を超えない。
 繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。すなわち、繰返し単位(1)の含有量が上記範囲内であれば、溶融流動性や耐熱性が向上し易く、成形体にしたときに強度・剛性が向上し易くなり、かつ溶融温度や溶融粘度が高くなりすぎず、成形に必要な温度も高くなりすぎない。
 繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、0.9/1~1/0.9が好ましく、0.95/1~1/0.95がより好ましく、0.98/1~1/0.98がさらに好ましい。
 なお、本実施形態に係る液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)~(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、前記液晶ポリエステルは、さらに繰返し単位(1)~(3)以外の繰返し単位を有してもよい。繰返し単位(1)~(3)以外の繰返し単位の含有量は、前記液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、0モル%以上10モル%以下が好ましく、0モル%以上5モル%以下がより好ましい。
 本実施形態に係る液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、XおよびYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなり易いので、好ましく、繰返し単位(3)として、XおよびYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
 本実施形態に係る液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(以下、「プレポリマー」ということがある。)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属化合物や、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-メチルイミダゾールなどの含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
 本実施形態に係る液晶ポリエステルの流動開始温度は、270℃以上が好ましく、270℃以上400℃以下がより好ましく、280℃以上380℃以下がさらに好ましい。
 本実施形態に係る液晶ポリエステルの流動開始温度が高いほど、液晶ポリエステルの耐熱性や強度・剛性が向上する傾向がある。一方で、液晶ポリエステルの流動開始温度が400℃を超えると、液晶ポリエステルの溶融温度や溶融粘度が高くなる傾向がある。そのため、液晶ポリエステルの成形に必要な温度が高くなる傾向がある。すなわち、前記液晶ポリエステルの流動開始温度が上記範囲内であれば、液晶ポリエステルの耐熱性や強度・剛性が向上し、かつ液晶ポリエステルの溶融温度や溶融粘度は高くなりすぎず、液晶ポリエステルの成形に必要な温度も高くなりすぎない。
 本明細書において、液晶ポリエステルの流動開始温度は、フロー温度または流動温度とも呼ばれ、液晶ポリエステルの分子量の目安となる温度である(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。流動開始温度は、毛細管レオメーターを用いて、液晶ポリエステルを9.8MPa(100kg/cm)の荷重下4℃/分の速度で昇温しながら溶融させ、内径1mmおよび長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度である。
[オレフィン系共重合体]
 本実施形態に係るオレフィン系共重合体は、液晶ポリエステル中に分散され、衝撃吸収材(衝撃改質材ともいう)としての機能を有する。衝撃吸収材は、成形体外部からの衝撃を吸収する。
 1つの側面として、本発明の液晶ポリエステル組成物では、液晶ポリエステルが連続相を形成し、オレフィン系共重合体が分散相を形成している。
 別の側面として、本発明の液晶ポリエステル組成物では、オレフィン系共重合体が分散しているため、前記液晶ポリエステル組成物からに任意に採取する複数の試料において単位質量中のオレフィン系共重合体の含有量が同じである。
 本実施形態にかかるオレフィン系共重合体は、(a)α-オレフィンに由来する繰返し単位(以下、繰返し単位(a)と称する)と、(b)α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰返し単位(以下、繰返し単位(b)と称する)と、を含む。 前記繰返し単位(a)の含有量は、前記オレフィン系共重合体の総質量に対して、50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
 前記繰返し単位(b)の含有量は、前記オレフィン系共重合体の総質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましい。
 また、繰返し単位(a)の含有量と、繰返し単位(b)の含有量とは、オレフィン系共重合体の総質量に対する繰返し単位(a)及び繰返し単位(b)の合計の含有量が100質量%以下となるように、組み合わせられる。
 1つの側面として、繰返し単位(a)および繰返し単位(b)の合計の含有量は、オレフィン系共重合体の総質量に対して、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
 オレフィン系共重合体は、さらに(c)エチレン系不飽和エステルに由来する繰返し単位(以下、繰返し単位(c)と称する)を含むことが好ましい。
 ここでいう「エチレン系不飽和エステル」とは、化学式R-CO-O-Rで示される化合物であり、RおよびRはそれぞれ独立に、ビニル基、ビニル基の誘導体、メチル基またはエチル基であり、かつRおよびRの少なくとも一方が、前記ビニル基または前記ビニル基の誘導体である化合物である。
 ここでいう「ビニル基の誘導体」とは、ビニル基中の二つの炭素に結合する一つ以上の水素原子をそれぞれ独立にメチル基またはエチル基にて置換したものである。
 前記繰返し単位(c)を含む場合、前記繰返し単位(c)の含有量は、オレフィン系共重合体の総質量に対して、0質量%を超え50質量%以下であることが好ましい。
 また、繰返し単位(a)の含有量と、繰返し単位(b)の含有量と、繰返し単位(c)の含有量とは、オレフィン系共重合体の総質量に対する繰返し単位(a)~(c)の合計の含有量が100質量%以下となるように、組み合わせられる。
 1つの側面として、繰返し単位(a)~(c)の合計の含有量は、オレフィン系共重合体の総質量に対して、80質量%以上100質量以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
 オレフィン系共重合体は、さらに繰返し単位(a)~(c)以外の繰返し単位を含んでもよい。
 1つの側面として、本実施形態に係るオレフィン系共重合体は、α-オレフィンに由来する繰返し単位(繰返し単位(a))と、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰返し単位(繰返し単位(b))と、所望によりエチレン系不飽和エステルに由来する繰返し単位(繰返し単位(c))とを含む。
 また別の側面として、本実施形態に係るオレフィン系共重合体は、α-オレフィンに由来する繰返し単位(繰返し単位(a))と、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰返し単位(繰返し単位(b))と、所望によりエチレン系不飽和エステルに由来する繰返し単位(繰返し単位(c))と、前記繰返し単位(a)~(c)以外の繰返し単位とを含む。
 繰返し単位(a)を与える化合物としては、特に限定されず、炭素数2~13のα―オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのα―オレフィンが挙げられる。
 繰返し単位(b)を与える化合物としては、炭素数2~13のα,β-不飽和酸のグリシジルエステルが挙げられ、例えば、下記一般式(B1)で表されるα,β-不飽和酸のグリシジルエステルなどが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
(Rは、エチレン系不飽和結合を有する炭素数2~13の炭化水素基である。)
 換言すると、上記式(B1)中のRは隣接するカルボニル基のα位およびβ位において二重結合を有する炭素数2~13のアルケニル基を表す。
 繰返し単位(b)を与える化合物としては、より具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示される。
 繰返し単位(c)を与える化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどカルボン酸ビニルエステル、またはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα、β-不飽和カルボン酸アルキルエステルなどのエチレン系不飽和エステルが挙げられる。なかでも、繰返し単位(c)を与える化合物としては、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物に係るオレフィン系共重合体としては、例えば、
 繰返し単位(a)としてエチレンに由来する繰返し単位と、繰返し単位(b)としてグリシジルメタクリレートに由来する繰返し単位と、からなる共重合体、
 繰返し単位(a)としてエチレンに由来する繰返し単位と、繰返し単位(b)としてグリシジルメタクリレートに由来する繰返し単位と、繰返し単位(c)としてアクリル酸メチルに由来する繰返し単位と、からなる共重合体、
 繰返し単位(a)としてエチレンに由来する繰返し単位と、繰返し単位(b)としてグリシジルメタクリレートに由来する繰返し単位と、繰返し単位(c)としてアクリル酸エチルに由来する繰返し単位と、からなる共重合体、
 繰返し単位(a)としてエチレンに由来する繰返し単位と、繰返し単位(b)としてグリシジルメタクリレートに由来する繰返し単位と、繰返し単位(c)として酢酸ビニルに由来する繰返し単位と、からなる共重合体などが挙げられる。
[板状フィラー]
 本発明において「板状フィラー」とは、アスペクト比が5~200であるものをいう。本実施形態に係る板状フィラーは、特に限定されないが、例えばタルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
 本実施形態に係る板状フィラーは、タルクまたはマイカであることが好ましく、マイカであることが好ましい。これにより、液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の衝撃強度が向上する。
 本実施形態に係る板状フィラーの粒径は特に制限されない。例えば板状フィラーの体積平均粒径は、15μm以上40μm以下が好ましく、20μm以上35μm以下がより好ましく、20μm以上30μm以下がさらに好ましく、22μm以上30μm以下がよりさらに好ましい。板状フィラーの体積平均粒径が15μm以上であると、液晶ポリエステル組成物から成形される成形体の耐衝撃性がより向上する傾向がある。また、板状フィラーの体積平均粒径が40μm以下であると、成形体の変形がより抑制される傾向がある。
 板状フィラーの体積平均粒径は、レーザー回折法を用いて、下記条件により測定することができる。
 [測定条件]
 測定装置:レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置(HORIBA株式会社製、LA-950V2)
 粒子屈折率:1.53-0.1i
 分散媒:水
 分散媒屈折率:1.33
 なお、板状フィラーの体積平均粒径は、後述の溶融混練によって実質上変化しないことがわかっている。そのため、板状フィラーの体積平均粒径は、液晶ポリエステル組成物に溶融混練される前の板状フィラーの体積平均粒径を測定することによっても求めることができる。
[液晶ポリエステル組成物]
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、50質量%超え80質量%以下である。液晶ポリエステルの含有量が50質量%を超えると、液晶ポリエステル組成物の流動性や耐熱性が向上する。また、液晶ポリエステルの含有量が50質量%を超えると、液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の衝撃強度が向上する。一方、液晶ポリエステルの含有量が80質量%以下であると、液晶ポリエステル組成物を成形しやすくなる。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。
 また、液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、78質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
 上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
 1つの側面として、前記液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、55質量%以上78質量%以下が好ましく、60質量%以上75質量%以下がより好ましく、65質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
 別の側面として、前記液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル組成物の総質量に対して、50質量%超え80質量%以下であり、好ましくは55質量%以上78質量%以下、より好ましくは60質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上70質量%以下である。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物中のオレフィン系共重合体の含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、5質量%以上20質量%未満である。オレフィン系共重合体の含有量が5質量%以上であると、液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の衝撃強度が向上する。一方、オレフィン系共重合体の含有量が20質量%未満であると、液晶ポリエステル組成物の流動性が十分向上する。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物中のオレフィン系共重合体の含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、6質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。また、オレフィン系共重合体の含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
 上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
 1つの側面として、オレフィン系共重合体の含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、6質量%以上15質量%以下が好ましく、8質量%以上10質量%以下がより好ましい。
 別の側面として、オレフィン系共重合体の含有量は、液晶ポリエステル組成物の総質量に対して、5質量%以上20質量%未満であり、好ましくは6質量%以上15質量%以下、より好ましくは8質量%以上10質量%以下である。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物中の板状フィラーの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、15質量%以上30質量%以下である。板状フィラーの含有量が15質量%未満であると、液晶ポリエステルの異方性が顕著に表れ、液晶ポリエステル組成物を成形しにくくなる。一方、板状フィラーの含有量が30質量%超であると、相対的に液晶ポリエステルの含有量が少なくなり、液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の衝撃強度が低下する。
 すなわち、板状フィラーの含有量が上記範囲内であると、液晶ポリエステルの異方性が顕著に表れることを抑制し、液晶ポリエステル組成物を容易に成形できる。さらに、相対的に液晶ポリエステルの含有量が少なくなりすぎず、液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の衝撃強度が向上し易くなる。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物中の板状フィラーの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、20質量%以上が好ましく、23質量%以上がより好ましい。また、板状フィラーの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、28質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
 上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
 1つの側面として、前記板状フィラーの含有量は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、20質量%以上28質量%以下が好ましく、23質量%以上25質量%以下がより好ましい。
 別の側面として、前記板状フィラーの含有量は、液晶ポリエステル組成物の総質量に対して、15質量%以上30質量%以下であり、好ましくは20質量%以上28質量%以下、より好ましくは23質量%以上25質量%以下である。
 ここで、製造する液晶ポリエステル組成物に係る液晶ポリエステルの流動開始温度より10℃高い温度に設定したキャピラリーレオメーターの炉内に液晶ポリエステルを5分間放置した後、上記温度に保持した状態でせん断速度10000s-1であるときの溶融粘度を「液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)」として定義する。
 また、製造する液晶ポリエステル組成物に係る液晶ポリエステルの流動開始温度より10℃高い温度に設定したキャピラリーレオメーターの炉内にオレフィン系共重合体を10分間放置した後、上記温度に保持した状態でせん断速度10000s-1であるときの溶融粘度を「オレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)」として定義する。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、上述した液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)に対するオレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)の比(V2/V1)が0.1を超え3.0以下である。
 上記溶融粘度比(V2/V1)が0.1を超え3.0以下であると、液晶ポリエステル組成物から得られる成形体の衝撃強度が向上する。上記溶融粘度比(V2/V1)が1に近いほど、上記成形体の衝撃強度がより向上しやすい。具体的には、上記溶融粘度比(V2/V1)は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。また、上記溶融粘度比(V2/V1)は、2.8以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。
 上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
 1つの側面として、上記溶融粘度比(V2/V1)は、0.3以上2.8以下が好ましく、0.5以上2.5以下がより好ましく、0.8以上2.0以下がさらに好ましい。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物から得られる成形体では、液晶ポリエステル中に略球状のオレフィン系共重合体が存在していると考えられる。上記溶融粘度比(V2/V1)が0.1を超え3.0以下であると、液晶ポリエステル中にオレフィン系共重合体が分散されやすいと推測される。液晶ポリエステル中にオレフィン系共重合体が分散されやすいと、液晶ポリエステル中に粒子径の小さなオレフィン系共重合体が多数存在しやすいと推測される。このような成形体では、オレフィン系共重合体の粒子間の距離が小さくなると考えられる。その結果、上記成形体は、クラックの伝播が抑えられ、衝撃強度が向上すると考えられる。
 また、本実施形態の液晶ポリエステル組成物によれば、成形体における衝撃強度の向上効果が高いので、衝撃吸収材であるオレフィン系共重合体の含有量を低減させることができる。その結果、本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、同等の衝撃強度を有する成形体を得るために用いられる、オレフィン系共重合体を含有させた従来の液晶ポリエステル組成物よりも、流動性が向上すると考えられる。
 本明細書において、液晶ポリエステル組成物の流動性は、流動長測定用の金型を用い、本実施形態の液晶ポリエステル組成物から得られる成形体について、樹脂の流れ方向の長さ(流動長ということがある)を測定することにより評価できる。この評価において、流動長の長さが長いほど液晶ポリエステル組成物の流動性が高いと言える。
 1つの側面として、本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、後述の<液晶ポリエステル組成物の流動長>に記載の方法で流動長を測定したとき、前記流動長が800mm以上である特性を有することが好ましく、825mm以上980mm未満である特性を有することがより好ましい。
[その他の成分]
 液晶ポリエステル組成物は、さらに、板状フィラー以外の充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂などの他の成分を少なくとも1種含んでもよい。
 1つの側面として、本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと、α-オレフィンに由来する繰返し単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとに由来する繰返し単位とを含むオレフィン系共重合体と、板状フィラーと、所望により、前記板状フィラー以外の充填材、添加剤および前記液晶ポリエステル以外の樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの他の成分と、を含んでもよい。
 前記他の成分の含有量は、液晶ポリエステル組成物の総質量に対して、0.1~30質量%が好ましい。
 前記充填材は、繊維状充填材であってもよいし、繊維状および板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などのセラミック繊維;およびステンレス繊維などの金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカーなどのウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維およびアラミド繊維が挙げられる。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素および炭酸カルシウムが挙げられる。前記板状フィラー以外の充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましい。
 添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤および着色剤が挙げられる。添加剤の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。
 液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミドなどの液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;およびフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましい。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、上述した液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体、板状フィラーおよび所望により他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された少なくとも1本のスクリュウと、シリンダーに設けられた少なくとも1箇所の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた少なくとも1箇所のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
<成形体>
 本実施形態の成形体は、液晶ポリエステル組成物から、公知の成形法により得ることができる。
 本実施形態の液晶ポリエステル組成物の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法およびプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
 本実施形態によれば、液晶ポリエステル組成物の流動性が高く、また得られる成形体の衝撃強度が高い。そのため、本実施形態の成形体は、一般に液晶ポリエステル樹脂を適用し得るあらゆる用途に適用可能である。
 例えば、自動車分野としては、自動車内装材用射出成形体として、天井材用射出成形体、ホイールハウスカバー用射出成形体、トランクルーム内張用射出成形体、インパネ表皮材用射出成形体、ハンドルカバー用射出成形体、アームレスト用射出成形体、ヘッドレスト用射出成形体、シートベルトカバー用射出成形体、シフトレバーブーツ用射出成形体、コンソールボックス用射出成形体、ホーンパッド用射出成形体、ノブ用射出成形体、エアバッグカバー用射出成形体、各種トリム用射出成形体、各種ピラー用射出成形体、ドアロックベゼル用射出成形体、グラブボックス用射出成形体、デフロスタノズル用射出成形体、スカッフプレート用射出成形体、ステアリングホイール用射出成形体、ステアリングコラムカバー用射出成形体などが挙げられる。
 自動車外装材用射出成形体として、バンパー用射出成形体、スポイラー用射出成形体、マッドガード用射出成形体、サイドモール用射出成形体などが挙げられる。
 その他の自動車部品用射出成形体としては、自動車ヘッドランプ用射出成形体、グラスランチャンネル用射出成形体、ウェザーストリップ用射出成形体、ドレーンホース用射出成形体、ウィンドウォッシャーチューブ用射出成形体などのホース用射出成形体、チューブ類用射出成形体、ラックアンドピニオンブーツ用射出成形体、ガスケット用射出成形体などが挙げられる。
 その他、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶ディスプレイ、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、電子レンジ部品、音響・音声機器部品、照明部品、エアコン部品、オフィスコンピューター関連部品、電話・FAX関連部品、および複写機関連部品などが挙げられる。
 本明細書において、成形体の衝撃強度は、ASTM D256に準拠して測定される。
 1つの側面として本実施形態の成形体は、後述の<成形体のアイゾット衝撃強度>に記載の方法で前記成形体のアイゾット衝撃強度を測定したとき、前記アイゾット衝撃強度が、800J/m以上であり、好ましくは900J/m以上1200J/m以下、より好ましくは1000J/m以上以上1200J/m以下、さらに好ましくは1000J/m以上1200J/m以下である。
 本実施形態によれば、衝撃強度が高い成形体を成形可能であり、かつ流動性が高い液晶ポリエステル組成物および成形体が提供される。
 1つの側面として、本発明の1実施形態である液晶ポリエステル組成物は、
 液晶ポリエステルと、オレフィン系共重合体と、板状フィラーとを含み;
 前記液晶ポリエステルは、前記繰返し単位(1)と前記繰返し単位(2)と前記繰返し単位(3)とを有する液晶ポリエステルであり、
 好ましくはp-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位と、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する繰り返し単位と、テレフタル酸に由来する繰返し単位と、イソフタル酸に由来する繰返し単位と4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する繰り返し単位を有する液晶ポリエステルであり;
 前記オレフィン系共重合体は、α-オレフィンに由来する繰り返し単位(前記繰返し単位(a))と、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとに由来する繰返し単位(前記繰返し単位(b))と、所望によりエチレン系不飽和エステルに由来する繰返し単位(前記繰返し単位(c))と、前記繰返し単位(a)~(c)以外の繰返し単位と、を含み、
 前記繰返し単位(a)~(c)の合計の含有量は、前記オレフィン系共重合体の総質量に対して、80質量%以上100質量以下であり、より好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、
 前記繰返し単位(b)の含有量は、前記オレフィン系共重合体の総質量に対して好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上4質量%以下であり;
 前記板状フィラーはマイカ(体積平均粒径は、15μm以上40μm以下が好ましく、20μm以上35μm以下がより好ましく、20μm以上30μm以下がさらに好ましく、22μm以上30μm以下がよりさらに好ましい)であり;
 前記液晶ポリエステル、前記オレフィン系共重合体および前記板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、
 前記液晶ポリエステルの含有量が、50質量%超え80質量%以下であり、好ましくは55質量%以上78質量%以下、より好ましくは60質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上70質量%以下であり、
 前記オレフィン系共重合体の含有量が、5質量%以上20質量%未満であり、好ましくは6質量%以上15質量%以下、より好ましくは8質量%以上10質量%以下であり;
 前記板状フィラーの含有量が、15質量%以上30質量%以下であり、好ましくは20質量%以上28質量%以下、より好ましくは23質量%以上25質量%以下であり;
 前記液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)に対する前記オレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)の比(V2/V1)が0.1超え3.0以下であり、好ましくは0.3以上2.8以下、より好ましくは0.5以上2.5以下、さらに好ましくは0.8以上2.0以下ある、
 液晶ポリエステル組成物である。
 別の側面として、前記液晶ポリエステル組成物は、
 前記液晶ポリエステル組成物の総質量に対して、
 前記液晶ポリエステルの含有量が、50質量%超え80質量%以下であり、好ましくは55質量%以上78質量%以下、より好ましくは60質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上70質量%以下であり、
 前記オレフィン系共重合体の含有量が、5質量%以上20質量%未満であり、好ましくは6質量%以上15質量%以下、より好ましくは8質量%以上10質量%以下であり;
 前記板状フィラーの含有量が、15質量%以上30質量%以下であり、好ましくは20質量%以上28質量%以下、より好ましくは23質量%以上25質量%以下であり;
 但し、前記液晶ポリエステル、前記オレフィン系共重合体および前記板状フィラーの合計含有量は100質量%を超えない、
 液晶ポリエステル組成物である。
 さらに前記液晶ポリエステル組成物は、後述の<液晶ポリエステル組成物の流動長>に記載の方法で流動長を測定したとき、前記流動長が800mm以上であることが好ましく、825mm以上980mm未満であってもよく;かつ
 前記液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステル組成物から成形体を形成したとき、後述の<成形体のアイゾット衝撃強度>に記載の方法で測定される前記成形体のアイゾット衝撃強度が、800J/m以上であることが好ましく、900J/m以上1200J/m以下であってもよく、1000J/m以上1200J/m以下であってもよく、1000J/m以上1200J/m以下であってもよい、
 液晶ポリエステル組成物である。
 また別の側面として、前記液晶ポリエステル組成物は、
 後述の<液晶ポリエステル組成物の荷重たわみ温度>に記載の方法で荷重たわみ温度を測定したとき、前記荷重たわみ温度が231℃以上236℃以下である特性を有する、液晶ポリエステル組成物である。
 本発明の1実施形態である成形体は、
 前記液晶ポリエステル組成物から形成される成形体であり;
 前記液晶ポリエステル組成物は、後述の<成形体のアイゾット衝撃強度>に記載の方法でアイゾット衝撃強度を測定したとき、好ましくは800J/m以上、より好ましくは900J/m以上1200J/m以下、さらに好ましくは1000J/m以上1200J/m以下であるアイゾット衝撃強度を与える組成物であり;
 後述の<成形体の引張強度および引張伸び率>に記載の方法で引張強度及び引張伸び率を測定したとき、
 好ましくは112MPa以上124MPa以下である引張強度を与える組成物であり、
 好ましくは8.1%以上9.7%以下である引張伸び率を与える組成物であり;
 後述の<成形体の曲げ強度および曲げ弾性率>に記載の方法で曲げ強度および曲げ弾性率を測定したとき、
 好ましくは112MPa以上127MPa以下である曲げ強度を与える組成物であり、
 好ましくは8300MPa以上9500MPa以下である曲げ弾性率を与える組成物である、
 成形体である。
 以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各測定は以下のようにして行った。
<製造例1〔液晶ポリエステルの製造〕>
 攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)および無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分間かけて昇温し、150℃で30分間還流させた。次いで、1-メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。また見かけの溶融粘度は5.9Pa・sであった。
<液晶ポリエステルの流動開始温度>
 まず、フローテスター((株)島津製作所の「CFT-500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mmおよび長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填した。次に、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度(流動開始温度)を測定し、液晶ポリエステルの流動開始温度とした。
<みかけ溶融粘度(V1)、みかけ溶融粘度(V2)、溶融粘度比(V2/V1)>
 液晶ポリエステルの流動開始温度より10℃高い温度に設定したキャピラリーレオメーター(株式会社東洋精機製作所製、「キャピログラフ1B」)の炉内に液晶ポリエステルまたはオレフィン系共重合体を10分間放置した後、上記温度に保持した状態でせん断速度10000s-1であるときの溶融粘度をそれぞれ測定した。
 得られた液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)およびオレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)から、溶融粘度比(V2/V1)を算出した。
<液晶ポリエステル組成物の流動長>
 本実施例で用いる厚さ1mm、幅10mmの流動長測定用の金型を用い、液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、「UH1000」)にて下記条件下で成形した。取り出した成形体について、樹脂の流れ方向の長さを測定した。この試験を10個の成形体について行い、得られた測定値の平均値を液晶ポリエステル組成物の流動長とした。結果を表2に示す。
[条件]
 シリンダー温度:(ノズル側)340℃;350℃;340℃;330℃;80℃(ホッパー側)
 金型温度:80℃
 計量値:25mm
 射出速度:100mm/秒
 VP切替:100MPa、にて圧力切替
 保圧:100MPa
<液晶ポリエステル組成物の荷重たわみ温度>
 液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、「PNX40-5A」)を用いて、成形温度340℃、金型温度130℃、射出速度50%で、127mm×12.7mm×6.4mmtの試験片に成形した。得られた試験片の荷重たわみ温度を、ASTM D648に準拠し、1.82MPaの荷重下、昇温速度4℃/分にて2回測定した。液晶ポリエステル組成物の荷重たわみ温度は、得られた測定値の平均値を採用した。結果を表2に示す。
<成形体の引張強度および引張伸び率>
 液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、「PNX40-5A」)を用いて、成形温度340℃、金型温度130℃、射出速度50%で、厚さ2.5mmのASTM4号試験片に成形した。得られた試験片の引張強度および引張伸び率を、ASTM D638に準拠し、5回測定した。成形体の引張強度および引張伸び率は、得られた測定値の平均値を採用した。結果を表2に示す。
<成形体の曲げ強度および曲げ弾性率>
 液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、「PNX40-5A」)を用いて、成形温度340℃、金型温度130℃、射出速度50%で、127mm×12.7mm×6.4mmtの試験片に成形した。得られた試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を、ASTM D790に準拠し、3回測定した。成形体の曲げ強度および曲げ弾性率は、得られた測定値の平均値を採用した。結果を表2に示す。
<成形体のアイゾット衝撃強度>
 液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、「PNX40-5A」)を用いて、成形温度340℃、金型温度130℃で、射出速度50%にて、127mm×12.7mm×6.4mmtの試験片に成形した。試験片のアイゾット衝撃強度を、ASTM D256に準拠し、10回測定した。この際、成形体にはノッチをつけずに試験を実施した。成形体のアイゾット衝撃強度は、得られた測定値の平均値を採用した。結果を表2に示す。
<液晶ポリエステル組成物の製造>
[実施例1~4、比較例1および比較例2]
 製造例1で得られた液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーを、表1に示す割合で2軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM-30HS、スクリュー回転:同方向、L/D=44)を用いて、340℃で溶融混練し、ペレット化した。ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。なお、表1に示す全ての割合は、液晶ポリエステル、オレフィン系共重合体および板状フィラーの合計100質量%に対する割合(質量%)である。
[参考例]
 液晶ポリエステルおよび板状フィラーを、表1に示す割合で二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、「PCM-30」)を用いて、シリンダー温度340℃で溶融混練し、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。
 全てのペレット状の液晶ポリエステル組成物を120℃で6時間、熱風乾燥した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 なお、液晶ポリエステル組成物に用いたオレフィン系共重合体および板状フィラーには、以下の材料を用いた。なお、「エチレン比率」とは、オレフィン系共重合体の総質量に対するα‐オレフィン(エチレン)に由来する繰返し単位の含有量を表し、「グリシジルメタクリレート比率」とは、オレフィン系共重合体の総質量に対するα,β-不飽和酸のグリシジルエステル(グリシジルメタクリレート)に由来する繰返し単位の含有量を表し、「アクリル酸メチル比率」とは、オレフィン系共重合体の総質量に対するエチレン系不飽和エステル(アクリル酸メチル)に由来する繰返し単位を表す。
(オレフィン系共重合体)
 オレフィン系共重合体(1):エチレン比率:70.0質量%、グリシジルメタクリレート比率:3.0質量%、アクリル酸メチル比率:27.0質量%、みかけ溶融粘度(V2)16.2Pa・s
 オレフィン系共重合体(2):エチレン比率:70.2質量%、グリシジルメタクリレート比率:2.9質量%、アクリル酸メチル比率:26.9質量%、みかけ溶融粘度(V2)11.7Pa・s
 オレフィン系共重合体(3):エチレン比率:70.5質量%、グリシジルメタクリレート比率:3.2質量%、アクリル酸メチル比率:26.3質量%、みかけ溶融粘度(V2)3.1Pa・s
 オレフィン系共重合体(4):エチレン比率:71.2質量%、グリシジルメタクリレート比率:3.2質量%、アクリル酸メチル比率:25.6質量%、みかけ溶融粘度(V2)0.4Pa・s
(板状フィラー)
 A-31S:マイカ、株式会社ヤマグチマイカ製、平均粒子径30μm(アスペクト比75)
 得られた液晶ポリエステル組成物について、以下の基準で総合的に判定した。
 A…流動長が800mm以上であり、かつアイソッド衝撃強度が800J/m以上
 B…上記以外
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 表2に示すように、本発明を適用した実施例1~4の液晶ポリエステル組成物は、流動性が高く、かつ得られる成形体の衝撃強度が高かった。
 実施例1~4の液晶ポリエステル組成物と、参考例の液晶ポリエステル組成物では、いずれも流動性が高く、かつ得られる成形体の衝撃強度も高かったが、実施例1~4の液晶ポリエステル組成物では、さらに引張伸び率が参考例の液晶ポリエステル組成物の引張伸び率よりも高かった。
 以上の結果により、本発明が有用であることが確かめられた。
 本発明によれば、衝撃強度が高い成形体を成形可能であり、かつ流動性が高い液晶ポリエステル組成物および成形体が提供できるので産業上極めて有用である。

Claims (2)

  1.  液晶ポリエステルと、
     α-オレフィンに由来する繰り返し単位と、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとに由来する繰返し単位と、を含むオレフィン系共重合体と、
     板状フィラーと、を含み、
     前記液晶ポリエステル、前記オレフィン系共重合体および前記板状フィラーの含有量の合計を100質量%としたとき、
     前記液晶ポリエステルの含有量が50質量%を超え80質量%以下であり、
     前記オレフィン系共重合体の含有量が5質量%以上20質量%未満であり、
     前記板状フィラーの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、
     前記液晶ポリエステルのみかけ溶融粘度(V1)に対する前記オレフィン系共重合体のみかけ溶融粘度(V2)の比(V2/V1)が0.1を超え3.0以下である液晶ポリエステル組成物。
  2.  請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物から形成される成形体。
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