JP2019052454A - 免震構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】上下方向の振動を効果的に低減する。【解決手段】上部構造と下部構造との間の免震層に、上端が上部構造に接続され、且つ、下端が下部構造に接続されて上下方向の引張と圧縮の振動を減衰する上下減衰装置であって、引張領域において上端と下端が所定速度で相対変位するときに発生する減衰力が、圧縮領域において上端と下端が所定速度で相対変位するときに発生する減衰力よりも大きい上下減衰装置を備える。【選択図】図5

Description

本発明は、免震構造に関する。
上部構造と下部構造との間に免震装置(例えば積層ゴムや摩擦支承)を備えた免震構造が知られている(例えば特許文献1参照)。このような免震構造では、建物周期を長周期化することで、水平方向の応答加速度を低減することが出来る。
特開平09−242382号公報
しかしながら、上述したような免震構造は、上下方向の応力(特に引張力)に対して耐震構造よりも剛性が小さく、また、上下応答変位・速度が非常に小さいため十分な減衰性能を確保できないことが多い。このため、免震層を介して上下応答が増幅するおそれがあった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、上下方向の振動を効果的に低減することにある。
かかる目的を達成するために本発明の免震構造は、上部構造と下部構造との間の免震層に、上端が前記上部構造に接続され、且つ、下端が前記下部構造に接続されて上下方向の引張と圧縮の振動を減衰する上下減衰装置であって、引張領域において前記上端と前記下端が所定速度で相対変位するときに発生する減衰力が、圧縮領域において前記上端と前記下端が前記所定速度で相対変位するときに発生する減衰力よりも大きい上下減衰装置を備えることを特徴とする。
このような免震構造によれば、上下方向の振動を効果的に低減することができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置は、前記上端または前記下端に設けられ、外周に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、前記ねじ軸の外側に設けられた質量体と、前記ねじ軸の直線運動を、前記質量体の回転運動に変換する変換機構と、を備え、前記引張領域のときに前記質量体を回転させる前記ねじ溝のピッチは、前記圧縮領域のときに前記質量体を回転させる前記ねじ溝のピッチよりも細かいことが望ましい。
このような免震構造によれば、引張領域で発生する減衰力を、圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくすることができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置は、前記上端または前記下端に設けられ、外周に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、前記ねじ軸の外側に前記上下方向に並んで設けられた第1質量体及び第2質量体と、前記圧縮領域では、前記ねじ軸の直線運動を、前記第1質量体のみが回転する回転運動に変換し、前記引張領域では、前記ねじ軸の直線運動を、前記第1質量体と前記第2質量体がともに回転する回転運動に変換する変換機構とを備えることが望ましい。
このような免震構造によれば、引張領域で発生する減衰力を、圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくすることができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置は、前記上端または前記下端の一方に設けられたロッドと、前記上端または前記下端の他方に設けられ、前記ロッドが前記上下方向に移動可能に挿入されたシリンダーと、前記ロッドの側部に弾性体を介して設けられ、前記弾性体によって前記シリンダーの内壁に圧接される摩擦材と、を備えた摩擦ダンパーであり、前記シリンダーは、前記引張領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径が、前記圧縮領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径よりも小さいことが望ましい。
このような免震構造によれば、引張領域で発生する減衰力を、圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくすることができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置は、前記上端または前記下端の一方に設けられ外周に螺旋状のねじ溝が形成されたロッドと、前記上端または前記下端の他方に設けられ、前記ロッドが前記上下方向に移動可能に挿入されたシリンダーと、前記シリンダー内において前記ロッドの外側に回転可能に設けられた回転体と、前記回転体の外側に弾性体を介して設けられ、前記弾性体によって前記シリンダーの内壁に圧接される摩擦材と、を備えた摩擦ダンパーであり、前記シリンダーは、前記引張領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径が、前記圧縮領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径よりも小さく、前記圧縮領域では前記回転体が直線運動し、前記引張領域では前記回転体が回転運動することが望ましい。
このような免震構造によれば、引張領域で発生する減衰力を、圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくすることができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置は、前記上端または前記下端の一方に設けられたロッドと、前記上端または前記下端の他方に設けられ、前記ロッドが前記上下方向に移動可能に挿入される中空部を有するシリンダーと、前記ロッドに接続され、前記中空部を第1オイル収容室と第2オイル収容室に区画するピストンであって、前記圧縮領域では、前記第2収容室の容量を小さくする側に移動し、前記引張領域では、前記第1収容室の容量を小さくする側に移動するピストンと、前記第1オイル収容部及び前記第2オイル収容部に収容されるオイルと、前記圧縮領域のとき前記第2オイル収容室から前記第1オイル収容室に前記オイルを流す第1減衰弁と、前記引張領域のとき前記第1オイル収容室から前記第2オイル収容室に前記オイルを流す第2減衰弁と、を備えたオイルダンパーであり、前記第2減衰弁は前記第1減衰弁よりも前記オイルを流す際の抵抗が大きいことが望ましい。
このような免震構造によれば、引張領域で発生する減衰力を、圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくすることができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合、及び、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合はピン接合であってもよい。
このような免震構造によれば、上部構造と下部構造との水平方向の相対変位に対応することができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合と、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合のうちの一方はピン接合であり、他方はローラー接合であってもよい。
このような免震構造によれば、上部構造と下部構造が水平方向に相対変位する際に垂直保持することが可能である。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合、及び、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合はローラー接合であってもよい。
このような免震構造によれば、上部構造と下部構造が水平方向に相対変位する際に、変位の方向に関わらずに垂直保持することが可能である。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合、及び、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合の少なくとも一方の接合の取付部が振動部材であることが望ましい。
このような免震構造によれば、上下減衰装置及び取付部から構成される部材の固有周期と建物の固有周期を同調させて上下減衰装置の振動を励起させることができ、上下方向の減衰をより大きくすることができる。
かかる免震構造であって、前記上下減衰装置は、前記上下方向の振動モード、及び、前記上部構造が前記下部構造に対して回動する振動モードに対して同調するように設計されていることが望ましい。
このような免震構造によれば、2つの振動モードに対して最適な設計をすることができる。
本発明によれば、上下方向の振動を効果的に低減することができる。
第1実施形態の免震構造を適用した建物のモデル(多質点系モデル)図である。 図1の免震層5に配置されている装置の構成例を示す概略断面図である。 参考例のダイナミックマスダンパー100の構成を示す断面図である。 第1実施形態のダイナミックマスダンパー10の構成を示す概略斜視図である。 図5A及び図5Bは、第1実施形態のダイナミックマスダンパー10の動作の説明図である。図5Aは圧縮領域における状態を示す図であり、図5Bは引張領域における状態を示す図である。 図6Aは、上下応答時の状態を示す図であり、図6Bは、ロッキング応答時の状態を示す図である。 第2実施形態のダイナミックマスダンパー10´の構成を示す断面図である。 図8A〜図8Cは、第2実施形態のダイナミックマスダンパー10´の動作の説明図である。 接合部の構成例の説明図である。 本実施形態の通常時と地震時の状態を示す立面図である。 第1変形例の通常時と地震時の状態を示す立面図である。 図12A〜図12Dは、第2変形例の説明図である。図12Aは、第2変形例の構成を示す概略俯瞰図であり、図12Bは、相対変位の状態を示す図である。また、図12Cは、図12Bのように変位するときの通常時と地震時の状態を示すX方向立面図であり、図12Dは、図12Bのように変位するときの通常時と地震時の状態を示すY方向立面図である。 図13A〜図13Cは、摩擦ダンパーの一例を示す概略断面図である。図13Aは初期状態、図13Bは圧縮時、図13Cは引張時の状態をそれぞれ示している。 図14A及び図14Bは、摩擦ダンパーの別の例を示す概略断面図である。図14Aは初期状態及び圧縮時の状態、図14Bは引張時の状態を示している。 図15A〜図15Cは、オイルダンパーの一例を示す概略断面図である。図15Aは初期状態、図15Bは圧縮時、図15Cは引張時の状態をそれぞれ示している。 図16A〜16Cは、それぞれ、図15A〜図15Cを模式的に示した回路図である。
===第1実施形態===
<<免震構造について>>
図1は、第1実施形態の免震構造を適用した建物のモデル(多質点系モデル)図であり、図2は、図1の免震層5に配置されている装置の構成例を示す概略断面図である。なお、図1では上部構造1よりも上の各層(フロア)の質量を質点で示している。
本実施形態の免震構造は、建物の上部構造1と下部構造3との間の免震層5に設けられており、ダイナミックマスダンパー10(上下減衰装置に相当)、積層ゴム20、摩擦皿ばね支承30を備えている。
ダイナミックマスダンパー10は、上端が上部構造1に接続されており、下端が下部構造3に接続されている。本実施形態ではダイナミックマスダンパー10の上端及び下端は、それぞれ、ボールジョイント方式によって上部構造1及び下部構造3に接続されている。そして、ダイナミックマスダンパー10は、上部構造1(ダイナミックマスダンパー10の上端)と下部構造3(ダイナミックマスダンパー10の下端)とが上下方向に相対変位するときの振動(上下方向の引張と圧縮の振動)を減衰する。なお、ダイナミックマスダンパー10の詳細については後述する。
積層ゴム20は、例えば、円形の鋼板21aとゴム層21bとを上下に交互に積層してなる円柱状の積層体21を、上下一対のフランジ板(上フランジ板22、下フランジ板23)で挟んで構成されている。また、下フランジ板23は、不図示のボルトなどにより下部構造3に固定され、上フランジ板22は、不図示のボルトなどにより上部構造1に固定されている。そして、積層ゴム20は、上部構造1と下部構造3との相対変位による水平力に応じて積層体21が水平方向に剪断変形して、上端の上フランジ板22と下端の下フランジ板23とが水平方向に相対変位することにより、上部構造1の水平振動を長周期化する。また、積層ゴム20は、下部構造3に対する上部構造1の位置を初期状態に戻す復元機能を備えている。なお、積層ゴム20は上部構造1を免震支承する機能も備えているが、本実施形態では主に摩擦皿ばね支承30が上部構造1を支承している。
摩擦皿ばね支承30(ディスクダンパー)は、上部構造1を支承するとともに、上部構造1と下部構造3とが水平方向に相対変位することによる振動(水平振動)を抑制(減衰)するものであり、滑り板31と、滑り材32と、皿ばね部33を備えている。
滑り板31は、下部構造3の上面に設けられた金属(例えばステンレス)製の板状部材である。本実施形態の滑り板31の平面形状は円形であるが、これには限られず、例えば正方形や多角形であってもよい。
滑り材32は、滑り板31の上面(滑り面)上において水平方向へ滑動自在に配置されている。また、滑り材32は、皿ばね部33によって下側に付勢されて滑り板31(滑り面)に圧接している。滑り材32としては、滑り板31との摩擦係数が大きい樹脂板(超高分子量ポリエチレンなど)が用いられている。この滑り材32は、皿ばね部33の底面に不図示のビスなどで取り付けられている。
皿ばね部33は、滑り材32を滑り板31に圧接させるためのものである。皿ばね部33は、下面に滑り材32が取り付けられ、その反対側(上側)に筒状部を有する下部筒体331と、当該下部筒体331の筒状部と嵌合する嵌合部を有する上部筒体332とを備えており、上部筒体332の嵌合部内に下部筒体331の筒状部がスライド自在に挿入されている。上部筒体332は、上部構造1の下面に固定されている。また下部筒体331のフランジにはその周方向に適宜間隔を隔ててボルト穴(不図示)が設けられるとともに、上部筒体332のフランジにはこのボルト穴に対応させてボルト穴(不図示)が形成されている。そして、この上下のボルト穴を貫通したボルト333の先端にナット334が螺合されている。
皿ばね部33内には、複数枚の単体の皿ばねを同じ向きに重ね合わせた皿ばね積層体33sが逆向きに(上下一対に)重ね合わせて収容されている。これにより、上部構造1と下部構造3との間の上下方向の隙間が変化したときに、これに追従してその高さ方向(上下方向)に伸び縮みするようになっている。なお、本実施形態では皿ばね積層体33sの重ね合わせの数(上下一対の組み合わせの数)は1つであるが、これには限られず、2つ以上であってもよい。
以上の構成により、建物周期を長周期化することができ、また、摩擦皿ばね支承30により水平方向の振動を減衰できる。さらに、上部構造1と下部構造3との間にダイナミックマスダンパー10を設けているので、上下方向の振動に対しても十分な減衰性能を確保することができる。特に、本実施形態のダイナミックマスダンパー10は、免震構造において剛性が小さい引張領域で発生する減衰力を、圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくしている(後述する)ので、上下方向の振動を効果的に低減することができる。
<<ダイナミックマスダンパー10の構成について>>
本実施形態のダイナミックマスダンパー10の構成について説明する前に、参考例について説明する。
<参考例>
図3は、参考例のダイナミックマスダンパー100の構成を示す断面図である。
参考例のダイナミックマスダンパー100は、ボールジョイント11、ねじ軸12、ボールナット13、軸受け14、付加錘15、内筒16、及び、粘性体17を備えている。
ボールジョイント11は、ダイナミックマスダンパー100の上端と下端にそれぞれ(一対)設けられている。そして、上側のボールジョイント11は上部構造1にピン接合され、下側のボールジョイント11は下部構造3にピン接合されている。
ねじ軸12は、外周にねじ溝121が螺旋状に設けられた軸部材であり、上側のボールジョイント11の下側に連続するように設けられて、上下方向に沿って配置されている。また、ねじ溝121とボールナット13との間には複数のボール(例えば金属球)が配置されている。なお、この参考例のダイナミックマスダンパー100では、ねじ溝121のピッチは場所によらず一定である。
ボールナット13は、円筒形の部材であり、内部にねじ軸12が貫入されている。
軸受け14は、ボールナット13の外側に配置された所定の摩擦係数の摩擦材14aと、付加錘15の内壁に皿ばねを重ねて設けられて摩擦材14aをボールナット13に圧接させる皿ばね部14bを備えて構成されている。
付加錘15は、ダイナミックマスダンパー100の外筒を構成する円筒形の部材(質量体)である。
内筒16は、下側のボールジョイント11と連結して設けられており、付加錘15の内側に配置されている。内筒16は、ボールベアリング18aを介してボールナット13と接続されている。なお、ボールベアリングとは、回転軸との間に(円周上に)複数の転動体(例えば金属球)が配置されて、それぞれ間隔を保ちながら円滑な転がり運動をする軸受け(転がり軸受け)である。また、内筒16は、ボールベアリング18bを介して付加錘15と接続されている。これにより、ボールナット13と付加錘15は独立して回転可能となっている。
粘性体17は、付加錘15と内筒16との間に設けられている。粘性体17としては、ポリイソブチレンその他の合成ゴム等を好適に使用することができる。また、シリコンなどの粘弾性体を用いてもよい。
以上の構成により、上部構造1と下部構造3との間の間隔が変化すると、ねじ軸12が上下方向(ねじ軸12の軸方向)に移動する。この軸方向の直線運動は、ボールナット13の回転運動に変換され、その回転に応じて、軸受け14を介して付加錘15が回転する。つまり、ボールナット13及び軸受け14(摩擦材14a、皿ばね部14b)は、ねじ軸12の直線運動を付加錘15の回転運動に変換する変換機構に相当する。また付加錘15と内筒16の間には粘性体17が配置されているので粘性力により減衰力が増加する。
このように、上部構造1と下部構造3との上下方向の相対移動量は、直線運動(軸運動)として、ねじ軸12に伝えられ、ボールナット13によって速度が増幅された付加錘15の回転運動に変換される。すなわち、ダイナミックマスダンパー100は、上部構造1と下部構造3との相対移動量を増幅して付加錘15の回転運動に換えている。
そして、この付加錘15が回転することで、粘性体17によって内筒16の間に生じる粘性抵抗力が減衰性能を発揮し、振動(上下方向の振動)を減衰することができる。
この参考例のダイナミックマスダンパー100では、上部構造1と下部構造3との相対変位の速度が同じ場合、圧縮領域で発生する減衰力と、引張領域で発生する減衰力は同じになる。
<本実施形態>
図4は、第1実施形態のダイナミックマスダンパー10の構成を示す概略斜視図である。なお、参考例と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
本実施形態のダイナミックマスダンパー10では、ねじ軸12にピッチの異なる(螺旋の傾きの異なる)2種類のねじ溝(ねじ溝12a、ねじ溝12b)が設けられている。
ねじ溝12aは、ピッチの粗い(水平面に対する螺旋の傾きの大きい)溝であり、ねじ軸12のうちの上側部分に設けられている。そして、ねじ溝12aは、上部構造1と下部構造3との間隔が初期位置よりも小さくなる圧縮時(圧縮領域)においてボールナット13と対向する。
ねじ溝12bは、ねじ溝12aよりもピッチの細かい(水平面に対する螺旋の傾きの小さい)部位であり、ねじ軸12のうちの下側部分に設けられている。そして、ねじ溝12bは、上部構造1と下部構造3との間隔が初期位置よりも大きくなる引張時(引張領域)においてボールナット13と対向する。
<<ダイナミックマスダンパー10の動作について>>
図5A及び図5Bは、本実施形態のダイナミックマスダンパー10の動作の説明図である。図5Aは圧縮領域における状態を示す図であり、図5Bは引張領域における状態を示す図である。
圧縮領域では、図5Aに示すように、ボールナット13がピッチの粗いネジ溝12aの部分と対向する。そして、ねじ軸12の直進運動に応じてボールナット13が回転する。
引張領域では、図5Bに示すように、ボールナット13がピッチの細かいネジ溝12bの部分と対向する。そして、ねじ軸12の直進運動に応じてボールナット13が回転する。このため、引張領域では圧縮領域よりも、ねじ軸12の移動距離に対する付加錘15の回転数が増加し、慣性質量効果、減衰効果が大きくなる。つまり、本実施形態のダイナミックマスダンパー10では、上部構造1(ダイナミックマスダンパー10の上端)と下部構造3(ダイナミックマスダンパー10の下端)との相対変位の速度が同じ場合、圧縮領域で発生する減衰力よりも引張領域で発生する減衰力の方が大きくなる。換言すると、本実施形態のダイナミックマスダンパー10は、引張領域の減衰係数が圧縮領域の減衰係数よりも大きい。
これにより、免震構造において剛性の小さい引張時に、大きい減衰力を発生することができ、上下方向の振動を効果的に低減することができる。また、圧縮時には、繰り返し応答による熱劣化を防止することができる。
<<ダイナミックマスダンパー10を用いた設計について>>
図6Aは、上下応答時の状態を示す図であり、図6Bは、ロッキング応答時の状態を示す図である。図6Aでは、引張領域のときの上部構造1を実線で示し、圧縮領域のときの上部構造1を破線で示している。また、図6Bでは、上部構造1が回動していないときの状態を破線で示し、回動した状態を実線で示している。
本実施形態のダイナミックマスダンパー10は、免震装置に圧縮力が作用する場合に小さい慣性質量と減衰力を発生し、引張力が作用する場合に大きい慣性質量と減衰力を発生する。よって、引張領域で十分な減衰性能を確保し、圧縮領域で繰り返し応答による熱劣化を防止することができる。本実施形態のダイナミックマスダンパー10は、図6Aの上下応答時や、図6Bのロッキング応答時のいずれにも対しても上下方向の振動を減衰させる効果を発揮することができる。
また、図6Aの上下振動と図6Bのロッキング振動の2つの振動系(振動モード)に対してダイナミックマスダンパー10(付加錘15の質量など)を同調制御して最適化してもよい。すなわち、2つの振動系に最適同調するようにダイナミックマスダンパー10を設計してもよい。これにより、2つの振動系のモード(上下応答、ロッキング応答)に対して最適な設計をすることができる。
===第2実施形態===
図7は、第2実施形態のダイナミックマスダンパー10´の構成を示す断面図である。なお、参考例と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
第2実施形態のダイナミックマスダンパー10´は、第1ボールナット13A、第2ボールナット13B、第1軸受け14A、第2軸受け14B、第1付加錘15A、第2付加錘15B、外筒16´、第1粘性体17A、第2粘性体17B、及び、ストッパー19を備えている。
第1ボールナット13Aと第2ボールナット13Bは、ねじ軸12の軸方向(ここでは上下方向)に並んでおり、第1ボールナット13Aが上側に配置されている。第1ボールナット13Aは、軸方向の位置が固定(拘束)されている。一方、第2ボールナット13Bは、無拘束で第1ボールナット13Aとストッパー19との間に配置されている。なお、図7には、第1ボールナット13Aと第2ボールナット13Bとの境界近傍を拡大図で示している。この拡大図に示すように、第2ボールナット13Bの上端の外周部分には傾斜面13sが形成されている。
第1軸受け14Aは、参考例の軸受け14と同様の摩擦材141と皿ばね部142によって構成されており、第1付加錘15Aと第1ボールナット13Aとの間に設けられている。第2軸受け14は、第2付加錘15Bと、第2ボールナット13Bとの間に設けられている。第2軸受け14Bは、摩擦材143と皿ばね部144によって構成されている。なお、第2軸受け14Bの摩擦材143には、図7の拡大図に示すように、第2ボールナット13Bの傾斜面13sに対応する傾斜面14sが形成されている。
第1付加錘15Aと第2付加錘15Bは、共に、円筒形の部材(質量体)であり、ねじ軸12の軸方向(上下方向)に並んでおり、それぞれ、独立して回転可能に設けられている。
外筒16´は、下端側のボールジョイント11と接続されており、第1付加錘15A及び第2付加錘15Bの外側全体を囲んでいる。なお、外筒16´は、ボールベアリング181を介して、ボールナット13Aと接続されている。また、外筒16´は、ボールベアリング182を介して、第1付加錘15Aと接続されており、また、ボールベアリング183を介して、第2付加錘15Bと接続されている。また、第1付加錘15Aと第2付加錘15Bはボールベアリング184を介して接続されている。これにより、ボールナット13A、第1付加錘15A、第2付加錘15Bは、それぞれ、独立して回転可能となっている。
第1粘性体17Aと第2粘性体17Bは、参考例の粘性体17と同様の部材である。第1粘性体17Aは、第1付加錘15Aと外筒16´との間に設けられており、第2粘性体17Bは、第2付加錘15Bと外筒16´との間に設けられている。
ストッパー19は、第2ボールナット13Bの軸方向(上下方向)への移動を止めるための部材であり、第2付加錘15Bの内壁から内側に突出するように設けられている。
図8A〜図8Cは、第2実施形態のダイナミックマスダンパー10´の動作の説明図である。ここでは、第1ボールナット13Aと第2ボールナット13Bとの間隔を、第2ボールナット13Bとストッパー19との間隔と同程度としている。
図8Aに示すように、第2ボールナット13Bが第2軸受け14Bの摩擦材143にも、ストッパー19にも当接していない場合、第1ボールナット13Aには、ねじ軸12の軸運動に応じた回転運動が発生し、この回転運動により第1付加錘15Aを回転させる。一方、第2ボールナット13Bは、拘束されていないので、ねじ軸12の軸運動に追随して軸方向に移動する。
図8Bに示すように、第2ボールナット13Bがストッパー19に当接すると、第2ボールナット13Bに回転運動が生じる。ただし、図の拡大部分に示すように、第2ボールナット13Bと第2軸受け14Bの摩擦材143が接触していないので、第2付加錘15Bは回転せず、第1付加錘15Aのみが回転する。よって、この場合、回転慣性及び減衰力は小さい。
図8Cに示すように、引張方向の力が加わることにより、第2ボールナット13Bが軸方向に移動して第2軸受け14Bの摩擦材143に当接すると(第2ボールナット13Bの傾斜面13sと、第2軸受け14Bの摩擦材143の傾斜面14sが当接すると)、摩擦材143の摩擦抵抗によって、第2ボールナット13Bの回転力が第2付加錘15Bに伝達される。これにより、第2付加錘15Bも回転する。このように、引張領域では、第1付加錘15Aと第2付加錘15Bの両方が回転するため、圧縮時よりも回転慣性及び減衰力が大きくなる。
なお、第1ボールナット13Aとストッパー19との間の距離を狭めることで、第2ボールナット13Bが瞬時にストッパー19と第2軸受け14Bの摩擦材143のどちらかに当接するので、加力の方向性(圧縮、引張)に応じて回転慣性及び減衰力を変えることができる。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
<ダイナミックマスダンパー10について>
ダイナミックマスダンパー10の構成が上下逆であってもよい。すなわち、下端側のボールジョイント11に、ねじ軸12が設けられていてもよい。
また、前述の実施形態では、ダイナミックマスダンパー10の端部と、上部構造1及び下部構造3との接続はそれぞれボールジョイント方式であったがこれには限られない。
図9は接合部の構成例の説明図である。ここでは、3種類(本実施形態、第1変形例、第2変形例)の構成が記載されている。また、図10は、本実施形態における通常時と地震時の状態を示す立面図であり、図11は、第1変形例における通常時と地震時の状態を示す立面図である。また、図12A〜図12Dは、第2変形例の説明図である。図12Aは、第2変形例の構成を示す概略俯瞰図であり、図12Bは、相対変位の状態を示す図である。また、図12Cは、図12Bのように変位するときの通常時と地震時の状態を示すX方向立面図であり、図12Dは、図12Bのように変位するときの通常時と地震時の状態を示すY方向立面図である。
前述の実施形態の接合方式(ダイナミックマスダンパー10の上端と下端がともにピン接合)の場合、図10に示すように、上部構造1と下部構造3との間に水平方向の相対変位が生じると、ダイナミックマスダンパー10はその変位に応じて傾くことになる。これにより、上部構造1と下部構造3との水平方向の相対変位に対応することができる。ただし、この構成では、ダイナミックマスダンパー10は垂直保持されない。なお、前述の実施形態ではボールジョイント11によるピン接合であったが、これには限らずクレビスでもよい。
第1変形例では、上端と下端のうちの一方(この例では下端)がリニアスライダー41とリニアブロック42によるローラー接合である。他方(この例では上端)はボールジョイントによるピン接合である。リニアスライダー41は、下部構造3の上面に設けられており、リニアブロック42は、ダイナミックマスダンパー10の下端においてリニアスライダー41上を摺動可能に設けられている。
この場合、図11に示すように、上部構造1と下部構造3との間に水平方向の相対変位が生じると、リニアブロック42がリニアスライダー41上を移動(摺動)する。これにより、ダイナミックマスダンパー10は垂直に支持される。
第2変形例では、上端と下端の両方をローラー接合としている。図12A〜図12Dに示すように、下部構造3の上面にはリニアスライダー41がY方向に沿って配置されており、上部構造1の下面にはリニアスライダー43がX方向に沿って配置されている。なお、X方向及びY方向は、ともに水平方向であり互いに直交する方向である。また、ダイナミックマスダンパー10の下端には、リニアブロック42がリニアスライダー41対して摺動可能に設けられている。また、ダイナミックマスダンパー10の上端には、リニアブロック44がリニアスライダー43に対して摺動可能に設けられている。
以上の構成により、上部構造1と下部構造3と間の水平変位の方向が、図12BのようにX方向、Y方向のそれぞれに対して傾いている場合であっても、図12C及び図12Dに示すようにダイナミックマスダンパー10を垂直に維持したまま移動させることができる。このように、第2変形例では、上部構造1と下部構造3が水平方向に変位する場合に、変位の方向に関わらずにダイナミックマスダンパー10を垂直保持することができる。
なお、リニアブロック42及びリニアブロック44としては、固定振動数を有する振動部材(例えばH形鋼)を用いるとよい。このように、ダイナミックマスダンパー10の上端側と下端側の少なくとも一方の接合の取付部を振動部材とすることで、ダイナミックマスダンパー10及び取付部から構成される部材の固有周期と建物の固有周期を同調させて、ダイナミックマスダンパー10の振動を励起させることができる。これにより、上下方向の減衰をより大きくすることができる。また、図9及び図10のピン接合の部位においても、ダイナミックマスダンパー10の端(上端、下端)と構造体(上部構造1、下部構造3)間に振動部材を介入させてもよい。この場合も同様にダイナミックマスダンパー10の振動を励起させることができ、上下方向の減衰をより大きくすることができる。なお、振動部材は、上記のH形鋼には限られず、例えば、鋼材や、コンクリート材を用いてもよい。
また、前述の実施形態では、上下減衰装置の一例としてダイナミックマスダンパー10(回転マスダンパー)を用いていたが、これには限られず、他の減衰装置(例えば、摩擦ダンパー、オイルダンパーなど)を用いてもよい。
図13A〜図13Cは、摩擦ダンパーの一例を示す概略断面図である。図13Aは初期状態、図13Bは圧縮時、図13Cは引張時の状態をそれぞれ示している。
図13A〜図13Cの摩擦ダンパー200は、ロッド210、皿ばね部212、摩擦材214、シリンダー216を備えている。
ロッド210は直線棒状の軸部材である。ロッド210の上端はボールジョイント11と接続されており、ロッド210の下端は、シリンダー216内に挿入されている。またロッド210の下端側(シリンダー216内)の側部には、皿ばね部212(弾性体に相当)を介して所定の摩擦係数の摩擦材214が設けられている。摩擦材214は、皿ばね部212によってシリンダー216の内壁に圧接されている。
シリンダー216は、上端が開放された略円筒形の部材である。シリンダー216の下端はボールジョイント11と接続されている。図に示すように、シリンダー216の外径は上下方向の位置に関わらずに一定であり、内径は下側から上側に向かうにつれて小さくなっている。つまり、シリンダー216は、下側から上側に向かうにつれて側部の厚さが増している。
この摩擦ダンパー200の場合、圧縮時(圧縮領域)では、図13Bに示すように、ロッド210とシリンダー216の内壁との間の距離が初期状態よりも大きくなる(換言すすると内径が大きい)。これにより、皿ばね部212の反力が小さくなり、摩擦材214とシリンダー216との間の圧接力(換言すると摩擦力)が小さくなる。すなわち減衰係数が小さくなる。
これに対し、引張時(引張領域)では、図13Cに示すように、ロッド210とシリンダー216の内壁との間の距離が初期状態よりも小さくなる(換言すると内径が小さい)。これにより、皿ばね部212の反力が大きくなり、摩擦材214とシリンダー216との間の圧接力(換言すると摩擦力)が大きくなる。すなわち、減衰係数が大きくなる。
よって、摩擦ダンパー200においても、引張領域で発生する減衰力が圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくなる。なお、摩擦ダンパー200の上下を逆にして配置してもよい(以下のダンパーについても同様である)。
また、図14A及び図14Bは、摩擦ダンパーの別の例を示す概略断面図である。図14Aは初期状態及び圧縮時の状態、図14Bは引張時の状態を示している。図14A及び図14Bにおいて図13A〜図13C(摩擦ダンパー200)と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
図14A及び図14Bの摩擦ダンパー200´は、ロッド220と回転体222を備えている。ロッド220は、ロッド210と同様の軸部材であり、上端はボールジョイント11に接続され、下端はシリンダー216内に挿入されている。また、ロッド220には、外周に螺旋状のねじ溝221が形成されている。
回転体222は、ロッド220においてねじ溝221の形成部分の外側を囲むように設けられている。また、回転体222は、ロッド220の周方向に回転可能に設けられている。回転体222の外側には皿ばね部212を介して摩擦材214が設けられており、摩擦材214は、皿ばね部212によってシリンダー216の内壁に圧接されている。なお、回転体222とねじ溝221との間には不図示の複数のボール(例えば金属球)が配置されている。
圧縮時(初期状態を含む)では、図14Aに示すように、シリンダー216の内径が大きくなるので、皿ばね部212の反力が小さくなる(摩擦材214とシリンダー216との間の摩擦力が小さくなる)。このため、回転体222は、ロッド220の軸方向(上下方向)に軸運動(直線運動)する。これにより、摩擦材214の吸収エネルギーが小さくなる。
これに対し、引張時では、図14Bに示すように、シリンダー216の内径が小さくなるので、皿ばね部212の反力が大きくなる(摩擦材214とシリンダー216との間の摩擦力が大きくなる)。このため、回転体222の軸運動が拘束され、回転体222がロッド220の周方向に回転運動するようになる。これにより、摩擦材214の摺動距離が増加するため吸収エネルギーが大きくなる。
よって、摩擦ダンパー200´においても、引張領域で発生する減衰力が圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくなる。
また、図15A〜図15Cは、オイルダンパーの一例を示す概略断面図である。図15Aは初期状態、図15Bは圧縮時、図15Cは引張時の状態をそれぞれ示している。また、図16A〜16Cは、それぞれ、図15A〜図15Cを模式的に示した回路図である。
図15A〜図15Cに示すオイルダンパー200″は、ロッド230、ピストン232、リザーバタンク234、シリンダー236、シール材238を備えている。オイルダンパー200″内には、粘性流体であるオイルが収容されている。
ロッド230は、直線棒状の軸部材である。ロッド230の上端はボールジョイント11と接続されており、ロッド230の下端(先端に相当)はピストン232と接続されている。なお、ロッド230は、シリンダー236の上端面を貫通しており、軸方向(ここでは上下方向)に移動可能である。
ピストン232は、シリンダー236の内側の中空部内に配置されており、当該中空部を第1オイル収容室241と第2オイル収容室242とに区画している。また、ピストン232には低減衰弁233a(第1減衰弁に相当)及び高減衰弁233b(第2減衰弁に相当)が形成されている。そして、低減衰弁233a及び高減衰弁233bを介して第1オイル収容室241と第2オイル収容室242とが連通している。なお、低減衰弁233aは、第2オイル収容室242から第1オイル収容室241の側のみにオイルを流す弁であり、低減衰の(抵抗が小さい)弁である。高減衰弁233bは、第1オイル収容室241から第2オイル収容室242の側のみにオイルを流す弁であり、高減衰の(抵抗が大きい)弁である。
リザーバタンク234は、余分なオイルを一時貯蔵するためのタンクであり、シリンダー236の内側(シリンダー236の内壁と中空部との間)に設けられている。リザーバタンク234と第2オイル収容室242との間には、吸込弁235aと低減衰弁235bが設けられている。すなわち、吸込弁235a及び低減衰弁235bを介してリザーバタンク234と第2オイル収容室242とが連通している。吸込弁235aは、リザーバタンク234から第2オイル収容室242の側のみにオイルを流す(第2オイル収容部242にオイルを吸込ませる)ための弁である。低減衰弁235bは、第2オイル収容室242からリザーバタンク234の側のみにオイルを流す弁であり、低減衰の(抵抗が小さい)弁である。
シリンダー236は、円筒形状の部材であり、下端はボールジョイント11と接続されている。前述したように、シリンダー236内には、リザーバタンク234を介して中空部が設けられており、当該中空部は、ピストン232により第1オイル収容室241と第2オイル収容室242とに区画されている。
シール材238は、シリンダー236とロッド230との間の隙間を埋めて密封するための部材である。
以上の構成により、圧縮時(圧縮領域)では、図15Bに示すように、ピストン232の移動によって、第2オイル収容室242の容量が小さくなり、第1オイル収容室241の容量が大きくなる。このため、図15B、図16Bに示すように、第2オイル収容室242のオイルが、低減衰弁233aを通って第1オイル収容室241に流れる。また、第2オイル収容室242のオイルが、低減衰弁235bを通ってリザーバタンク234に流れる。よって、この場合、オイルは低減衰弁233aや低減衰弁235bを通るため抵抗が小さい(減衰係数が小さい)。
これに対し、引張時(引張領域)では、図15Cに示すように、ピストン232の移動によって、第1オイル収容室241の容量が小さくなり、第2オイル収容室242の容量が大きくなる。このため、図15C、図16Cに示すように、第1オイル収容室241のオイルが、低減衰弁233bを通って第2オイル収容室242に流れる。また、リザーバタンク234のオイルが吸込弁235aを通って第2オイル収容室242に流れる。よって、この場合、オイルは高減衰弁233bを通るため抵抗が大きい(減衰係数が大きい)。
よって、オイルダンパー200″においても、引張領域で発生する減衰力が圧縮領域で発生する減衰力よりも大きくなる。
<積層ゴム20について>
前述の実施形態では復元機構として積層ゴム20を用いていたが、これには限られない。例えば、ばね等を用いてもよい。
<摩擦皿ばね支承30について>
摩擦皿ばね支承30の構成は前述したものには限られない。また、摩擦皿ばね支承30の構成が、前述の実施形態と上下逆であってもよい。つまり、上部構造1に滑り板31を設け、滑り材32を滑り板31に向けて圧接させてもよい。また、摩擦皿ばね支承以外の支承(例えば、転がり支承)を用いてもよい。また、水平方向の振動を減衰する装置として、例えばダンパー(オイルダンパー、摩擦ダンパー等)を用いてもよい。
1 上部構造、3 下部構造、5 免震層、
10,10´ ダイナミックマスダンパー(上下減衰装置)、
11 ボールジョイント、12 ねじ軸、12a ねじ溝、12b ねじ溝、
13 ボールナット、13A 第1ボールナット、13B 第2ボールナット、
14 軸受け、14a 摩擦材、14b 皿ばね部、
14A 第1軸受け、14B 第2軸受け、
15 付加錘、15A 第1付加錘、15B 第2付加錘、
16 内筒、16´ 外筒、
17 粘性体、17A 第1粘性体、17B 第2粘性体、
18a ボールベアリング、18b ボールベアリング、19 ストッパー、
20 積層ゴム、21 積層体、21a 鋼板、21b ゴム層、
22 上フランジ板、23 下フランジ板、
30 摩擦皿ばね支承、31 滑り板、
32 滑り材、33 皿ばね部、33s 皿ばね積層体、
41 リニアスライダー、42 リニアブロック、
43 リニアスライダー、44 リニアブロック、
100 ダイナミックマスダンパー(参考例)、121 ねじ溝、
141 摩擦材、142 皿ばね部、
143 摩擦材、144 皿ばね部、
181,182,183,184 ボールベアリング、
200 摩擦ダンパー、200´ 摩擦ダンパー、200″ オイルダンパー、
210 ロッド、212 皿ばね部(弾性体)、214 摩擦材、216 シリンダー、
220 ロッド、221 ねじ溝、222 回転体、
230 ロッド、232 ピストン、
233a 低減衰弁(第1減衰弁)、233b 高減衰弁(第2減衰弁)、
234 リザーバタンク、235a 吸込弁、235b 低減衰弁、
236 シリンダー、238 シール材、
241 第1オイル収容室、242 第2オイル収容室、
331 下部筒体、332 上部筒体、
333 ボルト、334 ナット

Claims (11)

  1. 上部構造と下部構造との間の免震層に、上端が前記上部構造に接続され、且つ、下端が前記下部構造に接続されて上下方向の引張と圧縮の振動を減衰する上下減衰装置であって、引張領域において前記上端と前記下端が所定速度で相対変位するときに発生する減衰力が、圧縮領域において前記上端と前記下端が前記所定速度で相対変位するときに発生する減衰力よりも大きい上下減衰装置を備える、
    ことを特徴とする免震構造。
  2. 請求項1に記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置は、
    前記上端または前記下端に設けられ、外周に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、
    前記ねじ軸の外側に設けられた質量体と、
    前記ねじ軸の直線運動を、前記質量体の回転運動に変換する変換機構と、
    を備え、
    前記引張領域のときに前記質量体を回転させる前記ねじ溝のピッチは、前記圧縮領域のときに前記質量体を回転させる前記ねじ溝のピッチよりも細かい、
    ことを特徴とする免震構造。
  3. 請求項1に記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置は、
    前記上端または前記下端に設けられ、外周に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、
    前記ねじ軸の外側に前記上下方向に並んで設けられた第1質量体及び第2質量体と、
    前記圧縮領域では、前記ねじ軸の直線運動を、前記第1質量体のみが回転する回転運動に変換し、前記引張領域では、前記ねじ軸の直線運動を、前記第1質量体と前記第2質量体がともに回転する回転運動に変換する変換機構と、
    を備える、ことを特徴とする免震構造。
  4. 請求項1に記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置は、
    前記上端または前記下端の一方に設けられたロッドと、
    前記上端または前記下端の他方に設けられ、前記ロッドが前記上下方向に移動可能に挿入されたシリンダーと、
    前記ロッドの側部に弾性体を介して設けられ、前記弾性体によって前記シリンダーの内壁に圧接される摩擦材と、
    を備えた摩擦ダンパーであり、
    前記シリンダーは、前記引張領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径が、前記圧縮領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径よりも小さい、
    ことを特徴とする免震構造。
  5. 請求項1に記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置は、
    前記上端または前記下端の一方に設けられ外周に螺旋状のねじ溝が形成されたロッドと、
    前記上端または前記下端の他方に設けられ、前記ロッドが前記上下方向に移動可能に挿入されたシリンダーと、
    前記シリンダー内において前記ロッドの外側に回転可能に設けられた回転体と、
    前記回転体の外側に弾性体を介して設けられ、前記弾性体によって前記シリンダーの内壁に圧接される摩擦材と、
    を備えた摩擦ダンパーであり、
    前記シリンダーは、前記引張領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径が、前記圧縮領域のとき前記摩擦材と圧接する部位の内径よりも小さく、
    前記圧縮領域では前記回転体が直線運動し、前記引張領域では前記回転体が回転運動する、
    ことを特徴とする免震構造。
  6. 請求項1に記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置は、
    前記上端または前記下端の一方に設けられたロッドと、
    前記上端または前記下端の他方に設けられ、前記ロッドが前記上下方向に移動可能に挿入される中空部を有するシリンダーと、
    前記ロッドに接続され、前記中空部を第1オイル収容室と第2オイル収容室に区画するピストンであって、前記圧縮領域では、前記第2収容室の容量を小さくする側に移動し、前記引張領域では、前記第1収容室の容量を小さくする側に移動するピストンと、
    前記第1オイル収容部及び前記第2オイル収容部に収容されるオイルと、
    前記圧縮領域のとき前記第2オイル収容室から前記第1オイル収容室に前記オイルを流す第1減衰弁と、
    前記引張領域のとき前記第1オイル収容室から前記第2オイル収容室に前記オイルを流す第2減衰弁と、
    を備えたオイルダンパーであり、
    前記第2減衰弁は前記第1減衰弁よりも前記オイルを流す際の抵抗が大きい、
    ことを特徴とする免震構造。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合、及び、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合はピン接合である、
    ことを特徴とする免震構造。
  8. 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合と、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合のうちの一方はピン接合であり、他方はローラー接合である、
    ことを特徴とする免震構造。
  9. 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合、及び、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合はローラー接合である、
    ことを特徴とする免震構造。
  10. 請求項7乃至請求項9の何れかに記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置の前記上端と前記上部構造との接合、及び、前記上下減衰装置の前記下端と前記下部構造との接合の少なくとも一方の接合の取付部が振動部材である、
    ことを特徴とする免震構造。
  11. 請求項1乃至請求項10の何れかに記載の免震構造であって、
    前記上下減衰装置は、前記上下方向の振動モード、及び、前記上部構造が前記下部構造に対して回動する振動モードに対して同調するように設計されている
    ことを特徴とする免震構造。
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