JP5240338B2 - 免振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、建物などの免振対象物を地震等から保護する免振装置に関する。
地震等から建物を保護する免振装置が普及している。この免振装置は、一般に、建物と、その基礎との間に介装される。
この免振装置の一例として、特許文献1には、上下一対の摩擦板の下に、積層ゴムを直列配置した構成が開示されている。そして、この構成によれば、中規模以上の地震に対しては、前記一対の摩擦板同士が水平方向に摺動して免振し、その摺動時の摩擦力を建物の振動の減衰力として用いる一方、前記摩擦板同士が摺動しないような小規模の地震に対しては、積層ゴムが水平方向に変形することによって、建物の振動を所期の免振周期に長周期化して免振しつつ、その振動エネルギーを吸収して振動を減衰する(特許文献1を参照)。
特開平9−310408号
ここで、この特許文献1の摩擦板の摩擦力の大きさは、その摺動面の垂直抗力と摩擦係数との積として計算されることからもわかるように、免振装置の支持荷重に応じて変化する。また、積層ゴムによる免振周期も、当該積層ゴムの水平剛性が支持荷重に依存して変化し得ることから、同様に支持荷重に応じて変化する。
ところが、一般に免振装置の支持荷重の算定は難しい。これは、通常、建物に対しては複数の免振装置が並列配置され、各免振装置に分担される支持荷重の大きさは、建物内の平面位置に応じて異なるからである。よって、免振装置毎に支持荷重を把握するのは非常に難しく、その結果として、各免振装置の摩擦力や免振周期を所期の目標値に設定するのは非常に困難であった。
更には、仮に、支持荷重の大きさを把握して各免振装置の摩擦力や免振周期を目標値に設定できたとしても、地震等により建物にロッキング振動(建物が揺りかごの如く上下に揺動すること)が生じた場合には、当該ロッキング振動によって各免振装置の支持荷重が変動してしまい、もって、上記の摩擦力や免振周期を目標値に維持するのも困難であった。
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、上下一対の摩擦部材と、該一対の摩擦部材に直列に配置されて、水平力に応じて上端と下端とが水平方向に相対変位する弾性体とを備えた免振装置に関し、前記摩擦部材の摩擦力、及び、前記弾性体による免振周期を、所期の目標値に設定し易く且つ維持し易い免振装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために本発明に係る免振装置は、
免振対象物の水平移動を許容しつつ該免振対象物の重量を支持する支承部と、前記免振対象物の水平移動を抑制する摩擦ダンパー部とが、前記免振対象物とその下方の下部構造体との間の上下方向隙間に並列に介装されてなる免振装置であって、
前記摩擦ダンパー部は、
前記免振対象物と前記下部構造体との水平方向の相対変位に応じて水平方向に摺動する上下一対の摩擦部材と、
該一対の摩擦部材に対して直列に配置されて、水平力に応じて上端と下端とが水平方向に相対変位する弾性体と、
前記一対の摩擦部材に対して直列に配置されて、前記一対の摩擦部材に鉛直方向の圧接力を付与する皿ばねと、
該皿ばねのたわみ量を調節することにより前記圧接力の大きさを調節する調節機構と、を備え、
前記弾性体は、前記上下一対の摩擦部材同士が摺動しないような小さな水平力の作用下において、前記免振対象物の振動を所定の免振周期に長周期化しつつ、その振動を減衰させ、
前記皿ばねが付与する前記圧接力は、鉛直荷重として前記弾性体にも作用し、
前記弾性体による前記所定の免振周期が、前記調節機構によって前記皿ばねのたわみ量を調節することにより調整可能に構成されていることを特徴とする
また、前記調節機構は、
前記免振対象物の下面にボルト止めされ、鉛直方向に沿って形成された挿入孔を有する加圧部と、
前記皿ばねを上下に挟んで配置される上加圧板及び下加圧版と、
前記下加圧板から突出し、前記皿ばねの中央の貫通孔に挿通され、更に、前記上加圧板の中央の貫通孔にも挿通された円柱シャフトと、
前記上加圧板から突出し、前記加圧部に設けられた前記挿入孔に螺合する円筒部と、
を備え、
前記上加圧板を前記加圧部に対して相対的に螺合回転させると、その螺合回転によって前記上加圧板が上下方向に送られるように構成されていることを特徴とすることとしてもよい
また、前記弾性体は、上フランジ板と、下フランジ板と、当該上フランジ板及び下フランジ板に挟まれた積層ゴムとを有し、
前記下フランジ板は、前記上摩擦部材に固定され、
前記上フランジ板は、前記下加圧板に固定されていることを特徴とすることとしてもよい
本発明に係る免振装置によれば、前記摩擦部材の摩擦力、及び、前記弾性体による免振周期を、所期の目標値に設定し易く且つ維持し易くなる。
第1実施形態の免振装置10が適用された建物1の概念図である。 第1実施形態の免振装置10の側断面図である。 積層ゴム51の水平剛性Khの鉛直荷重P依存性を示すグラフである。 第1実施形態の免振装置10の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 第1実施形態の免振装置10の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 皿ばねのばね特性を示す荷重−たわみ曲線である。 第1実施形態の免振装置10の変形例の側断面図である。 変形例の免振装置10aの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 第2実施形態の免振装置10bの側断面図である。 第2実施形態の免振装置10bの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 第3実施形態の免振装置10cの側断面図である。 図12Aは、第3実施形態の免振装置10cの第1変形例の側断面図であり、図12Bは図12A中のB−B断面図である。 第3実施形態の免振装置10cの第2変形例の側断面図である。 第3実施形態の免振装置10cの第2変形例の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 上記第2変形例の積層ゴム51eを粘弾性ゴムに交換した場合に得られる振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。 図16A及び図16Bは、第1実施形態の免振装置10が具備する皿ばね部40、弾性ゴム部50、及び、摩擦減衰部60の並び順のバリエーションの説明図である。 図17A及び図17Bは、同じく並び順のバリエーションの説明図である。 図18A及び図18Bは、同じく並び順のバリエーションの説明図である。
本明細書及び添付図面には、少なくとも次の事項が開示されている
第1に示す免振装置は、
免振対象物の水平移動を許容しつつ該免振対象物の重量を支持する支承部と、前記免振対象物の水平移動を抑制する摩擦ダンパー部とが、前記免振対象物とその下方の下部構造体との間の上下方向隙間に並列に介装されてなる免振装置であって、
前記摩擦ダンパー部は、
前記免振対象物と前記下部構造体との水平方向の相対変位に応じて水平方向に摺動する上下一対の摩擦部材と、
該一対の摩擦部材に対して直列に配置されて、水平力に応じて上端と下端とが水平方向に相対変位する弾性体と、
前記一対の摩擦部材に対して直列に配置されて、前記一対の摩擦部材に鉛直方向の圧接力を付与する皿ばねと、
該皿ばねのたわみ量を調節することにより前記圧接力の大きさを調節する調節機構と、を備えたことを特徴とする
上記第1に示す発明によれば、先ず、免振対象物の重量を、概ね前記支承部の方で支持し、前記摩擦ダンパー部の方では支持しないので、前記一対の摩擦部材の摩擦力は、これら摩擦部材同士の間の摩擦係数と、前記皿ばねの圧接力とに基づいて定まる。そして、摩擦部材の摩擦係数は既知であるし、皿ばねの圧接力は前記調節機構によって調節できるので、摩擦ダンパー部の摩擦力を、所期の目標値に容易に設定可能となる
また、前記弾性体に前記圧接力が伝達される場合には、当該圧接力の大きさを前記皿ばねにより調節できるので、前記弾性体の水平剛性を所定値に設定可能であり、もって、前記摩擦ダンパー部による免振周期を、所期の目標値に容易に設定可能となる
更には、地震時に免振対象物にロッキング振動が生じても、免振対象物の重量は概ね前記支承部が支持していることから、摩擦ダンパー部の方には、ロッキング振動による荷重変動の影響は殆ど顕れず、つまり前記圧接力の変動は小さいので、前記摩擦ダンパー部の前記摩擦力及び免振周期も概ね目標値に維持される
第2に示す発明は、第1に記載の免振装置であって、
前記弾性体に並列して補助摩擦ダンパーが設けられており、
該補助摩擦ダンパーが水平方向に摺動する際の摩擦力の大きさは、前記一対の摩擦部材が水平方向に摺動する際の摩擦力の大きさよりも小さく、
前記補助摩擦ダンパーが摺動しない時には、該補助摩擦ダンパーは、前記弾性体の上端と下端との水平方向の相対変位を不能に拘束することを特徴とする
上記第2に示す発明によれば、風荷重などの小さな水平力が作用しただけで免振対象物が水平方向に振動してしまうことを、有効に防ぐことができる。詳しくは次のとおりである
前記一対の摩擦部材の摩擦力よりも大きな水平力が作用しないと、前記一対の摩擦部材に基づいては、免振対象物は水平方向に相対移動しないが、他方、前記弾性体の弾性変形に基づいては、前記摩擦力よりも小さな水平力でも前記免振対象物は容易に水平方向に相対移動してしまう虞がある。つまり、単に前記一対の摩擦部材と前記弾性体とを直列配置しただけでは、風荷重などの小さな水平力でも免振対象物が水平方向に振動してしまう虞がある
但し、ここで、上述の免振装置は補助摩擦ダンパーを備えており、この補助摩擦ダンパーは、自身が摺動を開始するまでは、前記弾性体の上端と下端との水平方向の相対変位を不能に拘束する。そして、摺動する際の摩擦力の大きさは、前記一対の摩擦部材が摺動する際の摩擦力の大きさよりも小さく設定されている。よって、風荷重などの小さな水平力が作用しただけで建物が水平方向に振動してしまうことを、有効に防ぐことができる
第3に示す発明は、第2に記載の免振装置であって、
前記一対の摩擦部材と前記弾性体とは上下に連接されており、
前記補助摩擦ダンパーは、前記一対の摩擦部材のうちの一方の摩擦部材に水平方向の摺動可能に設けられた補助摩擦部材と、該補助摩擦部材に直列に配置されて前記補助摩擦部材に鉛直方向の圧接力を付与するばね部材と、を備えていることを特徴とする。
上記第3に示す発明によれば、前記一対の摩擦部材のうちの一方の摩擦部材を、前記補助摩擦ダンパーの構成部品として兼用するので、前記補助摩擦ダンパーの補助摩擦部材を一つ削減できて、結果、コスト削減を図れる
第4に示す発明は、第1乃至3のいずれかに記載の免振装置であって、
前記弾性体は、粘弾性体であることを特徴とする。
上記第4に示す発明によれば、粘弾性体の上端と下端とが水平方向に相対変位する際の粘弾性体自身の剪断変形に伴うエネルギー吸収作用によって、免振対象物の振動エネルギーを吸収する。よって、免振対象物の振動の減衰性を更に高めることができる
第5に示す発明は、第1乃至4のいずれかに記載の免振装置であって、
前記圧接力を受ける支持部材は、前記弾性体に並列して配置されず、
前記皿ばねのたわみ量の変化に対する弾発力の変化の割合は、第1範囲のたわみ量よりも第2範囲のたわみ量の方が小さく、
前記調節機構によって、前記皿ばねのたわみ量は前記第2範囲に収まるように調節されていることを特徴とする。
上記第5に示す発明によれば、前記弾発力の変化の割合の小さい前記第2範囲に、前記皿ばねのたわみ量が収まるように調節されている。よって、ロッキング振動等により前記免振装置が介装されている前記上下方向隙間の大きさが変化し、これに起因して皿ばねのたわみ量が変動したとしても、前記第2範囲における皿ばねの弾発力の変化は小さいので、当該皿ばねの圧接力の変動は抑えられ、もって、前記摩擦ダンパー部の摩擦力及び免振周期を前記目標値に概ね維持することができる
第6に示す発明は、第1乃至4のいずれかに記載の免振装置であって、
前記弾性体の上端と下端との水平方向の相対変位を許容しつつ、前記弾性体の上端と下端との間の間隔を、前記弾性体の自然長の大きさに保持する保持部材が、前記弾性体に並列して設けられていることを特徴とする。
上記第6に示す発明によれば、前記保持部材によって、前記弾性体は前記皿ばねからの圧接力が作用しない自然長の状態に保持されている。よって、当該弾性体の水平剛性の大きさは概ね一定値に維持されるため、前記摩擦ダンパー部による免振周期を、所期の目標値に容易に設定できるとともに、免振対象物にロッキング振動が生じても前記目標値に維持可能である
以下、本発明に係る免振装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<<<第1実施形態の免振装置10>>>
図1に、第1実施形態の免振装置10が適用された建物1の概念図を示す。免振装置10は、免振対象物としての建物1と、その下方の下部構造体としての基礎3との間の上下方向隙間Gに介装される。そして、この上下方向隙間Gには、上記の免振装置10が複数並列配置されており、もって、これら複数の免振装置10は、建物1の平面内の各支持位置において建物1の重量を分担支持している。
図2は、免振装置10の側断面図である。なお、上記の複数の免振装置10は何れも同構造である。また、以下で参照する全ての側断面図については、図の錯綜を防ぐべく一部の断面線を省略して示している。
免振装置10は、建物1の水平移動を許容しつつこの建物1の重量を支持する支承部20と、この支承部20に並列に配置されて、建物1の水平移動を抑制する摩擦ダンパー部30とを備えている。
支承部20は、例えば転がり支承である。すなわち、建物1の下面1aに受け座21aを介して固定される平滑な転がり板23と、基礎3の上面3aに受け座21bを介して固定される平滑な転がり板24と、これら転がり板23,24の水平な転がり面同士の間に介在する複数の鋼球25とを備えている。そして、これら鋼球25が前記転がり板23,24を介して建物1の支持荷重を鉛直方向に受けながら転動することにより、建物1は、小さな水平力(水平方向の外力)でも水平移動可能に支持されている。
ちなみに、この転がり支承20によれば、建物1の下面1aと基礎3の上面3aとの隙間たる前記上下方向隙間Gは、ほぼ一定間隔に維持される。また、各免振装置10に分担された建物1の支持荷重の大半は、当該支承部20の方で受けるため、摩擦ダンパー部30の方では、後述の皿ばね部40に基づく圧接力分の荷重しか支持しない。
一方、摩擦ダンパー部30は、皿ばね部40と、弾性ゴム部50と、摩擦減衰部60とが、この順番で鉛直方向の上から下へと直列に重ねて配置されるとともに、これら3つの構成部40,50,60において上下に隣り合う構成部同士が互いにボルト止め等にて連結固定されてなる。
摩擦減衰部60は、建物1の水平振動の減衰を水平方向の摩擦力によって行うものであり、互いに当接する摩擦面において水平方向に摺動する上下一対の摩擦板61,62を本体とする。そして、下摩擦板62は、建物1の基礎3の上面3aに固定される一方、上摩擦板61は、前記弾性ゴム部50の下面たる下フランジ板53に重ね合わせられてボルト止めされている。よって、これら上下の摩擦板61,62の水平方向の相対移動に伴って、摺動する摩擦面に摩擦力が生じ、これにより建物1の水平振動が減衰される。ここでは、下摩擦板62にはステンレス板を用い、上摩擦板61には超高分子量ポリエチレンを用いているが、これらの使用素材は、必要な摩擦力の大きさのオーダー等に基づいて適宜選定される。また、この摩擦力は、上下摩擦板61,62の前記摩擦面(以下、摺動面とも言う)に作用する垂直抗力たる圧接力に応じて変化するが、この圧接力は、後述の皿ばね部40の弾発力によって付与されるため、当該弾発力の調節により摩擦力の大きさを調整可能である。
弾性ゴム部50は、上記の摩擦減衰部60に係る上下一対の摩擦板61,62同士が摺動しないような小さな水平力の作用下において、建物1の振動を所期の免振周期に長周期化しつつ、その振動を減衰するものであり、その構成は、所謂積層ゴム51(例えば、円形の鋼板51aとゴム層51bとを上下に交互に積層してなる円柱状の弾性体)を、上下一対のフランジ板52,53で挟んで固定したものである。そして、下フランジ板53は、前述したように摩擦ダンパー部60の上面たる上摩擦板61に重ね合わされてボルト止めされる一方、上フランジ板52は、皿ばね部40の下面たる下加圧板46に重ね合わされてボルト止めされている。よって、作用する水平力に応じて積層ゴム51が水平方向に剪断変形して、上端の上フランジ板52と下端の下フランジ板53とが水平方向に相対変位することにより、建物1の水平振動を長周期化する。
なお、図3に示すように、この積層ゴム51の水平剛性Kh(P)は、当該積層ゴム51に作用する鉛直荷重Pに応じて変化するため、この積層ゴム51による長周期化後の振動周期(以下、免振周期とも言う)も、同荷重Pに応じて変化することになるが、この点につき、この第1実施形態では、この積層ゴム51に並列して、上記の皿ばね部40からの圧接力を受けるための支持部材が全く配置されていないことから、皿ばね部40からの圧接力は、そのまま上述の鉛直荷重Pとして積層ゴム51に作用する。よって、この積層ゴム51による免振周期も、上述の摩擦減衰部60の摩擦力と同様に、皿ばね部40の弾発力の調節により調整可能である。
皿ばね部40は、上述のように、摩擦減衰部60及び弾性ゴム部50に対して鉛直方向の圧接力を所定の大きさに調整して付与するものであり、図2に示すように、皿ばね積層体41と、皿ばね積層体41の弾発力を調整する圧接力調節機構44と、を有する。
皿ばね積層体41は、複数枚の皿ばね42の向きを揃えて重ねてなる皿ばねユニット42Uを、複数組有する。そして、これらユニットの組数や、ユニットの上下方向の向き、並びに、ユニット内の皿ばね42の枚数等を適宜設定することにより、皿ばね積層体41のたわみ量と弾発力との関係が一義的に決定される(図6を参照)。この図3の例では、4枚の皿ばね42からなる皿ばねユニット42Uが2組使用され、これら皿ばねユニット42U,42U同士は互いに向きを逆にして直列配置されている。そして、上述のたわみ量と弾発力との関係下において、皿ばね積層体41に加えるたわみ量を、圧接力調節機構44で調節することにより、弾発力たる前記圧接力を任意値に調整可能である。
圧接力調節機構44は、皿ばね積層体41を上下に挟んで配置される上下一対の円盤状の加圧板45,46と、上加圧板45を下方へ押し下げて下加圧板46との間隔を縮めることにより皿ばね積層体41にたわみを付与する加圧部47と、を有する。
詳しくは、下加圧板46の中央には、上方へ突出する円柱シャフト46aが固定されているとともに、この円柱シャフト46aは、皿ばね42の中央の貫通孔42aに挿通され、更には、上加圧板45の中央の貫通孔45aにも挿抜自在に挿通されており、これにより、皿ばね積層体41は、上下の加圧板45,46に挟まれた状態において側方へ脱落しないように保持されている。また、上加圧板45の前記貫通孔45aの全周に沿って、上方へ突出する円筒部45bが一体に突出形成されており、この円筒部45bは、建物1の下面1aにボルト止めされる前記加圧部47に形成された鉛直な挿入孔47aに螺合されている。すなわち、この挿入孔47aの内周面には雌めじ47cが形成されているとともに、前記上加圧板45の円筒部45bの外周面には、前記雌ねじ47cに螺合する雄ねじ45cが形成されており、上加圧板45を前記加圧部47に対して相対的に螺合回転させると、その螺合回転によって所謂送りねじ機構の如く上加圧板45は上下方向に送られる。
よって、上加圧板45を螺合回転させて、その螺合回転量に応じた分だけ上加圧板45を下方に押し下げれば、皿ばね積層体41には上下方向のたわみが付与されて、皿ばね積層体41に弾発力が発生する。そして、この弾発力は、前記上加圧板45及び加圧部47を通じて建物1から反力を得ることにより、前記圧接力として摩擦減衰部60及び弾性ゴム部50に作用し、その結果、摩擦減衰部60の摩擦力及び弾性ゴム部50による免振周期が設定される。ちなみに、たわみ量と弾発力との関係は、上述したように予めわかっているので(図6を参照)、無負荷状態からのたわみ量の変化を計測すれば、圧接力の大きさを知ることができる。
図4は、この免振装置10の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。すなわち、免振装置10の上下端を強制的に所定振幅(例えば±15cm)で水平加振して得られるグラフであり、横軸には、免振装置10の上端と下端との間の水平方向の相対変位を示し、縦軸には、免振装置10が水平振動に対抗して発生する水平方向の力を示している。ちなみに、横軸の相対変位は、建物1と基礎3との水平方向の相対変位と同義である。
この例では、皿ばね部40による圧接力の調整により、摩擦減衰部60の摩擦力が、10TONを目標値として設定されている。よって、加振の外力の絶対値が10TON以下の場合には、摩擦減衰部60は摺動せずに機能せず、専ら弾性ゴム部50の方が機能する。すなわち、弾性ゴム部50の積層ゴム51が、その水平剛性Khに基づいて、図4の線分AB、線分CD、及び線分EFに示すように水平方向に変形して、建物1の水平振動を長周期化しつつ減衰する。そして、加振の外力の絶対値が10TONを超える場合には、摩擦減衰部60が機能し、すなわち、一対の摩擦板61,62同士が摺動して図4の線分DE及び線分FCに示すように10TONの摩擦力を発生し、これにより建物1の水平振動を減衰する。
よって、この免振装置10によれば、水平方向の地震荷重が10TON以下の小地震に対しては、弾性ゴム部50により建物1は免振されつつ振動減衰される一方、地震荷重が10TONを超えるような大地震に対しては摩擦減衰部60により建物1は免振されつつ振動減衰され、もって、地震荷重の大小によらず、建物1は確実に免振されつつ振動減衰される。
また、この第1実施形態の免振装置10では、皿ばね部40によって圧接力を調整できるので、この調整による前記摩擦板61,62の摩擦力及び前記積層ゴム51の水平剛性Khの大きさの変更を通じて、上記の振動エネルギー吸収履歴特性を自在に設定変更可能である。
例えば、図5中実線で示す上記の基本例(摩擦力の目標値10TONの場合)よりも圧接力を高くすれば、同基本例よりも大きい12.5TONの摩擦力に設定されるとともに、同基本例よりも小さな水平剛性Khの値に設定され、結果、図5に点線で示すような振動エネルギー吸収履歴特性に設定変更される。また、逆に、前記基本例よりも圧接力を低くすれば、同基本例よりも小さい7.5TONの摩擦力に設定されるとともに、同基本例よりも大きな水平剛性Khの値に設定され、結果、図5に一点鎖線で示すような振動エネルギー吸収履歴特性に設定変更される。
ところで、上述の第1実施形態では、免振装置10の支承部20として転がり支承を用いていたが、これに代えて、滑り支承(滑り面にて小さな摺動抵抗で摺動する上下一対の滑り板を備えた構成)や積層ゴムを用いても良い。ここで、前者の滑り支承の場合には、上述の第1実施形態の転がり支承と同じく、建物1と基礎3との間の上下方向隙間Gは概ね一定間隔に維持されるが、後者の積層ゴムの場合には、積層ゴム自身が鉛直方向に伸縮変形可能なために、建物1のロッキング振動等に伴って前記上下方向隙間Gの間隔は変動してしまい、その結果として、皿ばね部40の皿ばね積層体41のたわみ量も変動してしまう。そして、最終的には、皿ばね積層体41の弾発力の変動を通して、摩擦減衰部60の摩擦力及び弾性ゴム部50の水平剛性Khが変動し、結果、摩擦力及び免振周期を目標値に維持できなくなる虞がある。
このような場合には、皿ばねの荷重とたわみ量の関係の非線形性を利用して前記圧接力を設定すると良い。図6は、皿ばねのばね特性を示す荷重−たわみ曲線であるが、このばね特性は、たわみ量の変化にほぼ比例して弾発力が変化する線形領域(第1範囲に相当)と、この線形領域の弾発力の変化の割合よりも小さい非線形領域(第2範囲に相当)とを有している。そして、特に後者の非線形領域は、たわみ量の変化に対して弾発力が殆ど変化しない不感帯域になっている。よって、例えば、この不感帯域の中央値のたわみ量に皿ばね積層体41の皿ばね42のたわみ量を設定すれば、仮にたわみ量が多少変動したとしても、弾発力をほぼ一定値に維持することができて、その結果、ロッキング振動下においても摩擦減衰部60の摩擦力及び弾性ゴム部50による免振周期を概ね一定に維持することができる。
ちなみに、支承部20として前者の滑り支承や第1実施形態の転がり支承を用いた場合には、建物1と基礎3との間の上下方向隙間Gはほぼ一定に維持されるため、皿ばね部40の皿ばね積層体41のたわみ量も一定値に維持される。よって、この場合には特に上述の不感帯域を利用する必要はなく、つまり、図6の線形領域内のたわみ量に設定しても良い。
図7は、上記第1実施形態の免振装置10の変形例の側断面図である。この変形例では、図2の弾性ゴム部50の積層ゴム51に代えて、図7に示すように、摩擦ダンパー部30aの弾性ゴム部50aに対し円柱形状の粘弾性ゴム55(粘弾性体に相当)が使用されている点で相違し、これ以外の構成は同じである。
そして、この変形例の免振装置10aによれば、粘弾性ゴム55自身の水平方向の剪断変形に伴う大きなエネルギー吸収作用によって、建物1の振動エネルギーを効果的に吸収し、もって、振動の減衰性を更に高めることができる。
すなわち、図8に、この免振装置10aの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフを示すが、粘弾性ゴム55を用いることにより、粘弾性ゴム55が水平方向に剪断変形する線分AB、線分CD、線分EFにおいては、水平方向の力に対して変位が線形に変化せずに紡錘型を描くように当該変位が残留するようになっており、その分だけ、領域CDEFの面積が、上述の第1実施形態の場合よりも大きくなっている。ここで、この領域CDEFの面積の大きさは、エネルギー吸収量を示しており、このことから、この変形例の免振装置10aの方がエネルギー吸収能力の点で優れていることがわかる。なお、この粘弾性ゴムとしては、例えば、「VEMダンパー(アクリル高分子材):住友3M(株)」や、「シリコン系ゴム粘弾性ダンパー、ジエン系ゴム粘弾性ダンパー:昭和電線デバイステクノロジー(株)」等を適用できる。
<<<第2実施形態の免振装置10b>>>
図9は第2実施形態の免振装置10bの側断面図である。第1実施形態の免振装置10では、小さい地震荷重に対しては、弾性ゴム部50が水平方向に剪断変形して免振するようになっていた。但し、その構成では、小さい地震荷重だけでなく、それよりも更に小さい風荷重によっても、弾性ゴム部50が剪断変形してしまい、その結果、風により建物1が揺れ易くなり居住性が悪くなる虞がある。
そこで、この第2実施形態では、摩擦ダンパー部30bの弾性ゴム部50に並列して補助摩擦ダンパー70を配置しており、前記地震荷重よりも小さい風荷重に対しては、この補助摩擦ダンパー70が弾性ゴム部50の水平方向の剪断変形を不能に拘束するようにしている。なお、第1実施形態との相違点は、補助摩擦ダンパー70を追設している点にあり、それ以外の構成は概ね同じである。
図9に示すように、皿ばね部40の下加圧板46に補助摩擦ダンパー70は取り付けられており、これにより、補助摩擦ダンパー70は、弾性ゴム部50の積層ゴム51を上下方向に跨ぎつつ積層ゴム51に並列配置されている。すなわち、補助摩擦ダンパー70の取り付け用ロッド71の上端部71aは前記下加圧板46に螺合固定されているとともに、取り付け用ロッド71の下端部71bは、円筒状の補助摩擦部材72の貫通孔72aに鉛直方向に挿抜自在に挿入されており、当該補助摩擦部材72の下面は、鉛直方向に所定の圧接力で、前記摩擦減衰部60の下摩擦板62の上面に当接している。よって、水平方向の外力としての水平力が、補助摩擦部材72と下摩擦板62の間の摩擦力の大きさを超えるまでは、弾性ゴム部50の積層ゴム51は水平方向の剪断変形不能に拘束される一方、超えたら補助摩擦部材72と下摩擦板62との摺動に伴って積層ゴム51は水平方向に剪断変形する。
ここで、補助摩擦部材72は例えば前記上摩擦板61と同素材の超高分子量ポリエチレンであり、また、当該補助摩擦部材72と下摩擦板62の間の摩擦力の大きさは、上記の圧接力の調節により調整される。すなわち、取り付け用ロッド71における補助摩擦部材72よりも上方の部分には、加圧板73付きのナット部材74が螺合されており、このナット部材74と補助摩擦部材72との間には、ばね部材として皿ばね75が配置されている。よって、ナット部材74を螺合回転させて、ナット部材74を補助摩擦部材72の方へ移動させることにより加圧板73と補助摩擦部材72とによって皿ばね75を挟んでたわませることができ、このたわみ量に応じた弾発力を圧接力として、補助摩擦部材72は、前記摩擦減衰部60の下摩擦板62に押し付けられる。よって、皿ばね75のたわみ量の調節により、補助摩擦ダンパー70の摩擦力の大きさを調整可能である。
なお、この補助摩擦ダンパー70の摩擦力の目標値は、前記摩擦減衰部60の摩擦力よりも小さい値に設定される。より詳しくは、例えば、風荷重の平均値と、前記摩擦減衰部60の摩擦力との間の値に設定される。そして、例えば、摩擦力の目標値を5TONに設定すれば、図10の振動エネルギー吸収履歴特性のグラフ中に示すように、相対変位不能に拘束される状態が、線分AA2、線分CC2、線分EE2の如く5TONの幅で生じており、これによって、5TON以下の水平力の作用下における弾性ゴム部50の剪断変形は拘束され、その結果、風による建物1の水平振動を有効に抑制可能となる。
ちなみに、これら線分AA2、線分CC2、線分EE2の幅は、上述から明らかなように、ナット部材74による上記摩擦力の調節によって変更可能である。よって、例えば、上記の5TONの摩擦力を7.5TONまで大きくすれば、振動エネルギー吸収履歴特性の線分AA2、線分CC2、線分EE2の部分は、図10の点線のように変更される。
<<<第3実施形態の免振装置10c>>>
図11は第3実施形態の免振装置10cの側断面図である。第1実施形態の免振装置10では、皿ばね部40の圧接力が弾性ゴム部50の積層ゴム51にも作用していたが、この第3実施形態では、弾性ゴム部50cの積層ゴム51cに対しては転がり支承部材81が並列に配置されており、この転がり支承部材81の方が前記積層ゴム51cの代わりに前記圧接力を受けるようになっている。よって、前記積層ゴム51cには前記圧接力が作用せず、つまり、積層ゴム51cの高さは、鉛直荷重の作用しない自然長にほぼ保持されるので、その水平剛性Khは所定値(積層ゴム51cの固有値)のまま変動せず、もって、弾性ゴム部50cによる免振周期を所期の目標値に確実に維持可能となる。
図11に示すように、弾性ゴム部50cは、積層ゴム51cと、積層ゴム51cを上下に挟んで固定された上下一対のフランジ板52,53と、上下一対のフランジ板52,53の間の上下方向隙間Gcに介装されつつ、積層ゴム51cの周囲を囲んで配置された転がり支承部材81とから主になる。
積層ゴム51cは、その平面中心を前記フランジ板52の平面中心に揃えて配置されており、その立体サイズは、その外径の寸法について上述の第1実施形態の積層ゴム51よりも大幅に小さくなっている。この小さくできた理由としては、この第3実施形態の積層ゴム51cは皿ばね部40からの圧接力を受けないことから、圧接力に座屈しないだけの高剛性を要しないためである。よって、この第3実施形態では、特に積層ゴム51cの平面サイズの縮小化に伴って積層ゴム51cの水平剛性Khが小さくなることから、弾性ゴム部50cによる免振周期が格段に長周期化される。
一方、転がり支承部材81は、複数の鋼球82と、これら複数の鋼球82を上下に挟みつつ、鋼球82が転動する上下一対の転がり板83,84と、前記複数の鋼球82の転動ルートからの脱落を防ぐための内外一対の円環状ガイド部材85,86とを有している。そして、この転がり支承部材81の高さは、積層ゴム51cの自然長の高さとほぼ同値に設定されているので、上述したように皿ばね部40からの圧接力は専ら転がり支承部材81の方で受けられ、もって、積層ゴム51cの高さは自然長に保持されつつ、水平力に応じて積層ゴム51cは水平方向に剪断変形自在になっている。
ちなみに、内側の円環状ガイド部材85については、その内周側の上端縁及び下端縁がテーパー状に面取りされて上下一対の面取り部85a,85bが形成されている。これは、積層ゴム51cが水平方向に剪断変形して、その外形形状が縦断面平行四辺形状になった際に、前記内側の円環状ガイド部材85との干渉を回避して、積層ゴム51cの自由な剪断変形を確保するためである。
なお、この免振装置10cの振動エネルギー吸収履歴特性は、定性的には、概ね上述の図4と同じであるので、その説明は省略する。
図12Aは、上記第3実施形態の免振装置10cの第1変形例の側断面図であり、図12Bは図12A中のB−B断面図である。なお、何れの図も、免振装置10dの摩擦ダンパー部30dのみを示している。
この第1変形例は、第3実施形態の弾性ゴム部50cの積層ゴム51cに並列して更に粘弾性ゴム91を追設したものであり、これにより、水平振動の減衰性が高められている。
粘弾性ゴム91は、積層ゴム51cと同高の円柱体である。そして、複数の粘弾性ゴム91が、前記上下フランジ板52,53の間の上下方向隙間Gcに介装されつつ、積層ゴム51cの周囲を囲んで配置されている。但し、この積層ゴム51cの周囲を囲む位置には、上下フランジ板52,53の間の前記上下方向隙間Gcを保持する転がり支承部材92を配置しなければならないので、この第1変形例では、積層ゴム51cの外周に沿って、転がり支承部材92と粘弾性ゴム91とが互いに間隔を隔てつつ交互に配置されている。各転がり支承部材92は、鋼球95と、これら複数の鋼球95を上下に挟みつつ、鋼球95が転動する上下一対の転がり板93,94とを備えている。
そして、各転がり板93,94には、その外周縁に沿って鉛直壁部93a,94aが立設されており、これら壁部93a,94aによって鋼球95の側方への脱落が規制される。よって、鋼球95は、上下の一対の転がり板93,94の間で転動しながら皿ばね部40の圧接力を支持し、これにより、当該圧接力の作用から積層ゴム51c及び粘弾性ゴム91を解放している。
なお、この免振装置10dの振動エネルギー吸収履歴特性は、定性的には、概ね上述の図8と同じであるので、その説明は省略する。
図13は、上記第3実施形態の免振装置10cの第2変形例の側断面図であり、前述の図12Aと同様に、免振装置10eの摩擦ダンパー部30eのみを示している。
この第2変形例は、第3実施形態の弾性ゴム部50cに対して、水平方向の剪断変形の変形限度を機械的に規定するメカストッパー101が追設されたものである。つまり、この第2変形例では、弾性ゴム部50eの上端と下端との水平相対変位が所定値に達すると、メカストッパー101が作用して、それ以上の剪断変形を不能に規制するようになっている。
メカストッパー101は、弾性ゴム部50eの上フランジ板52の外周部から下方に延出した円筒体102を本体とする。そして、この円筒体102の下端部の内周面には、全周に亘ってリング状の緩衝材103が取り付けられており、この緩衝材103の内周面は、所定隙間Sを隔てて、下フランジ板53の外周面に対向している。
よって、この所定隙間Sの大きさ分だけ、弾性ゴム部50cの上端たる上フランジ板52と下端たる下フランジ板53との水平相対変位が許容され、つまり、当該所定隙間Sの大きさ分だけ積層ゴム51cの水平方向の剪断変形が許容される。そして、下フランジ板53の外周面に前記緩衝材103の内周面が当接すると、それ以上の積層ゴム51cの剪断変形は不能に拘束される。
ここで、この当接時に作用している水平方向の外力の大きさが、前記摩擦減衰部60の摩擦力よりも大きい場合には、摩擦減衰部60の上下摩擦板61,62が摺動を開始して、これにより、免振装置10e全体としては水平方向に相対変位することになる。しかし、前記摩擦減衰部60の摩擦力以下の場合には、摩擦減衰部60は摺動せずに、免振装置10e全体としても相対変位は維持されることになる。
図14は、この第2変形例の免振装置10eの振動エネルギー吸収履歴特性のグラフである。図4との比較でわかるように、メカストッパー101の追設によって、水平相対変位不能に拘束される状態が、線分A3B3、線分C3D3、線分E3F3のように新たに生じている。
ちなみに、当該第2変形例の弾性ゴム部50eの積層ゴム51cを粘弾性ゴムに交換すれば、振動エネルギー吸収特性は図15に示すように線分CC3及び線分EE3が変化して振動エネルギーの吸収能力は更に高くなる。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の第1実施形態では、免振装置10の摩擦ダンパー部30の一例として、当該摩擦ダンパー部30が具備する三つの構成要素たる、皿ばね部40、弾性ゴム部50、及び、摩擦減衰部60が、この順番で上から下へと直列に並んでいる構成を示したが(図16Aの側面図を参照)、この並び順を入れ替えても良く、例えば、図16A以外に、図16B乃至図18Bの側面図に示すような5つの態様が可能である。
すなわち、図16Aに示す第1実施形態の並び順を天地逆転して、図16Bに示すように、上から下へと摩擦減衰部60、弾性ゴム部50、皿ばね部40の並び順にしても良い。また、図17Aに示すように、上から下への並び順を、弾性ゴム部50、皿ばね部40、摩擦減衰部60にしても良いし、この図17Aの並び順を天地逆転して、図17Bに示すように摩擦減衰部60、皿ばね部40、弾性ゴム部50の並び順にしても良い。更には、図18Aに示すように、皿ばね部40、摩擦減衰部60、弾性ゴム部50の並び順にしても良いし、この図18Aの並び順を天地逆転して、図18Bに示すように弾性ゴム部50、摩擦減衰部60、皿ばね部40の並び順にしても良い。
また、上述の実施形態では、皿ばね42は、図6の荷重−たわみ曲線のように、線形領域と非線形領域とを有するばね特性を示すもので説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。すなわち、支承部20として、滑り支承や転がり支承を用いた場合には、建物1と基礎3との上下方向隙間Gはほぼ一定に維持されるため、皿ばねは、非線形領域の割合が小さく、ほとんどの領域が線形領域のばね特性を示すものを用いてもよい。
1 建物(免振対象物)、1a 下面、
3 下部構造体(基礎)、3a 上面、
10 免振装置、10a 免振装置、10b 免振装置、
10c 免振装置、10d 免振装置、10e 免振装置、
20 支承部、21a 受け座、21b 受け座、
23 転がり板、24 転がり板、25 鋼球、
30 摩擦ダンパー部、30a 摩擦ダンパー部、30b 摩擦ダンパー部、
30c 摩擦ダンパー部、30d 摩擦ダンパー部、30e 摩擦ダンパー部、
40 皿ばね部、41 皿ばね積層体、
42 皿ばね、42U 皿ばねユニット、42a 貫通孔、
44 圧接力調節機構(調節機構)、
45 上加圧板、45a 貫通孔、45b 円筒部、
46 下加圧板、46a シャフト、
47 加圧部、47a 挿入孔、50 弾性ゴム部、
50a 弾性ゴム部、50c 弾性ゴム部、50e 弾性ゴム部、
51 積層ゴム(弾性体)、51a 鋼板、51b ゴム層、
51c 積層ゴム(弾性体)、52 上フランジ板、53 下フランジ板、
55 粘弾性ゴム(弾性体)、60 摩擦減衰部、
61 上摩擦板(摩擦部材)、62 下摩擦板(摩擦部材)、
70 補助摩擦ダンパー、71 取り付け用ロッド、
71a 上端部、71b 下端部、72 補助摩擦部材、72a 貫通孔、
73 加圧板、74 ナット部材、75 皿ばね(ばね部材)、
81 転がり支承部材(保持部材)、82 鋼球、
83 転がり板、84 転がり板、
85 円環状ガイド部材、85a 面取り部、
86 円環状ガイド部材、86a 面取り部、
91 粘弾性ゴム(弾性体)、92 転がり支承部材(保持部材)、
93 転がり板、 93a 鉛直壁部、
94 転がり板、94a 鉛直壁部、95 鋼球、
101 メカストッパー、102 円筒体、103 緩衝材、
G 上下方向隙間、Gc 上下方向隙間、S 所定隙間

Claims (3)

  1. 免振対象物の水平移動を許容しつつ該免振対象物の重量を支持する支承部と、前記免振対象物の水平移動を抑制する摩擦ダンパー部とが、前記免振対象物とその下方の下部構造体との間の上下方向隙間に並列に介装されてなる免振装置であって、
    前記摩擦ダンパー部は、
    前記免振対象物と前記下部構造体との水平方向の相対変位に応じて水平方向に摺動する上下一対の摩擦部材と、
    該一対の摩擦部材に対して直列に配置されて、水平力に応じて上端と下端とが水平方向に相対変位する弾性体と、
    前記一対の摩擦部材に対して直列に配置されて、前記一対の摩擦部材に鉛直方向の圧接力を付与する皿ばねと、
    該皿ばねのたわみ量を調節することにより前記圧接力の大きさを調節する調節機構と、を備え、
    前記弾性体は、前記上下一対の摩擦部材同士が摺動しないような小さな水平力の作用下において、前記免振対象物の振動を所定の免振周期に長周期化しつつ、その振動を減衰させ、
    前記皿ばねが付与する前記圧接力は、鉛直荷重として前記弾性体にも作用し、
    前記弾性体による前記所定の免振周期が、前記調節機構によって前記皿ばねのたわみ量を調節することにより調整可能に構成されていることを特徴とする免振装置。
  2. 前記調節機構は、
    前記免振対象物の下面にボルト止めされ、鉛直方向に沿って形成された挿入孔を有する加圧部と、
    前記皿ばねを上下に挟んで配置される上加圧板及び下加圧版と、
    前記下加圧板から突出し、前記皿ばねの中央の貫通孔に挿通され、更に、前記上加圧板の中央の貫通孔にも挿通された円柱シャフトと、
    前記上加圧板から突出し、前記加圧部に設けられた前記挿入孔に螺合する円筒部と、
    を備え、
    前記上加圧板を前記加圧部に対して相対的に螺合回転させると、その螺合回転によって前記上加圧板が上下方向に送られるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の免振装置。
  3. 前記弾性体は、上フランジ板と、下フランジ板と、当該上フランジ板及び下フランジ板に挟まれた積層ゴムとを有し、
    前記下フランジ板は、前記上摩擦部材に固定され、
    前記上フランジ板は、前記下加圧板に固定されていることを特徴とする、請求項2に記載の免振装置。
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