以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<インク組成物>
一実施形態のインク組成物は、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ基を有するアクリル系重合体(以下、場合により「エポキシ基含有アクリル系重合体」ともいう。)と、フェノール系硬化剤と、を含有し、好ましくは光散乱性粒子を更に含有し、更に好ましくは高分子分散剤を更に含有する。一実施形態のインク組成物は、例えば、インクジェット方式によりカラーフィルタの画素部を形成するために用いられる、カラーフィルタ用インク組成物である。上記構成を備えるインク組成物は、エポキシ基含有アクリル系重合体の硬化剤としてフェノール系硬化剤を含有するため、インクジェット法において優れた吐出安定性が得られる。そのため、上記インク組成物を用いた場合、画素部ごとの輝度及び漏れ光のばらつきが低減されやすく、優れた光学特性が得られやすい。すなわち、このインク組成物は、インクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する用途に好適に用いられる。
以下では、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ基含有アクリル系重合体と、フェノール系硬化剤と、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、を含有する、インクジェット方式に用いられるカラーフィルタ用インク組成物(カラーフィルタ用インクジェットインク)を例に挙げて説明する。
[発光性ナノ結晶粒子]
発光性ナノ結晶粒子は、励起光を吸収して蛍光又は燐光を発光するナノサイズの結晶体であり、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
発光性ナノ結晶粒子は、例えば、所定の波長の光を吸収することにより、吸収した波長とは異なる波長の光(蛍光又は燐光)を発することができる。発光性ナノ結晶粒子は、605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(赤色光)を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子であってよく、500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(緑色光)を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子であってよく、420〜480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光(青色光)を発する、青色発光性のナノ結晶粒子であってもよい。本実施形態では、インク組成物がこれらの発光性ナノ結晶粒子のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。また、発光性ナノ結晶粒子が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲の波長の光(青色光)、又は、200nm〜400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、発光性ナノ結晶粒子の発光ピーク波長は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定される蛍光スペクトル又は燐光スペクトルにおいて確認することできる。
赤色発光性のナノ結晶粒子は、665nm以下、663nm以下、660nm以下、658nm以下、655nm以下、653nm以下、651nm以下、650nm以下、647nm以下、645nm以下、643nm以下、640nm以下、637nm以下、635nm以下、632nm以下又は630nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、628nm以上、625nm以上、623nm以上、620nm以上、615nm以上、610nm以上、607nm以上又は605nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。これらの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
緑色発光性のナノ結晶粒子は、560nm以下、557nm以下、555nm以下、550nm以下、547nm以下、545nm以下、543nm以下、540nm以下、537nm以下、535nm以下、532nm以下又は530nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、528nm以上、525nm以上、523nm以上、520nm以上、515nm以上、510nm以上、507nm以上、505nm以上、503nm以上又は500nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
青色発光性のナノ結晶粒子は、480nm以下、477nm以下、475nm以下、470nm以下、467nm以下、465nm以下、463nm以下、460nm以下、457nm以下、455nm以下、452nm以下又は450nm以下に発光ピーク波長を有することが好ましく、450nm以上、445nm以上、440nm以上、435nm以上、430nm以上、428nm以上、425nm以上、422nm以上又は420nm以上に発光ピーク波長を有することが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子が発する光の波長(発光色)は、井戸型ポテンシャルモデルのシュレディンガー波動方程式の解によれば、発光性ナノ結晶粒子のサイズ(例えば粒子径)に依存するが、発光性ナノ結晶粒子が有するエネルギーギャップにも依存する。そのため、使用する発光性ナノ結晶粒子の構成材料及びサイズを変更することにより、発光色を選択することができる。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料を含む、発光性ナノ結晶粒子(発光性半導体ナノ結晶粒子)であってよい。発光性半導体ナノ結晶粒子としては、量子ドット(以下「QD」ともいう)、量子ロッド等が挙げられる。これらの中でも、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、量子ドットが好ましい。
発光性半導体ナノ結晶粒子は、第一の半導体材料を含むコアのみからなっていてよく、第一の半導体材料を含むコアと、第一の半導体材料とは異なる第二の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアのみからなる構造(コア構造)であってよく、コアとシェルからなる構造(コア/シェル構造)であってもよい。また、発光性半導体ナノ結晶粒子は、第二の半導体材料を含むシェル(第一のシェル)の他に、第一及び第二の半導体材料とは異なる第三の半導体材料を含み、上記コアの少なくとも一部を被覆するシェル(第二のシェル)を更に有していてもよい。換言すれば、発光性半導体ナノ結晶粒子の構造は、コアと第一のシェルと第二のシェルとからなる構造(コア/シェル/シェル構造)であってもよい。コア及びシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)であってよい。
発光性ナノ結晶粒子は、半導体材料として、II−VI族半導体、III−V族半導体、I−III−VI族半導体、IV族半導体及びI−II−IV−VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことが好ましい。
具体的な半導体材料としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、Si及びGeが挙げられる。発光性半導体ナノ結晶粒子は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保した上で、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる観点から、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、InP、InAs、InSb、GaP、GaAs、GaSb、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、Si、C、Ge及びCu2ZnSnS4からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
赤色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がCdSeであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がCdSであり内側のコア部がZnSeであるナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、InPのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、CdSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、ZnSeとCdSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
緑色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、CdSeのナノ結晶粒子、CdSeとZnSとの混晶のナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。
青色発光性の半導体ナノ結晶粒子としては、例えば、ZnSeのナノ結晶粒子、ZnSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSeであり内側のコア部がZnSであるナノ結晶粒子、CdSのナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSであり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、該シェル部分がZnSとZnSeSとの混晶であり内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSeであり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子、コア/シェル/シェル構造を備えたナノ結晶粒子であって、第一のシェル部分がZnSとZnSeとの混晶であり、第二のシェル部分がZnSであり、内側のコア部がInPであるナノ結晶粒子等が挙げられる。半導体ナノ結晶粒子は、同一の化学組成で、それ自体の平均粒子径を変えることにより、当該粒子から発光させるべき色を赤色にも緑色にも変えることができる。また、半導体ナノ結晶粒子は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いものを用いることが好ましい。カドミウム、セレン等を含有する半導体ナノ結晶粒子を発光性ナノ結晶粒子として用いる場合は、上記元素(カドミウム、セレン等)が極力含まれない半導体ナノ結晶粒子を選択して単独で用いるか、上記元素が極力少なくなるようにその他の発光性ナノ結晶粒子と組み合わせて用いることが好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の形状は特に限定されず、任意の幾何学的形状であってもよく、任意の不規則な形状であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、角錐形状、ディスク状、枝状、網状、ロッド状等であってもよい。しかしながら、発光性ナノ結晶粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性及び流動性をより高められる点で好ましい。
発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、所望の波長の発光が得られやすい観点、並びに、分散性及び保存安定性に優れる観点から、1nm以上であってよく、1.5nm以上であってもよく、2nm以上であってもよい。所望の発光波長が得られやすい観点から、40nm以下であってよく、30nm以下であってもよく、20nm以下であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
発光性ナノ結晶粒子は、分散安定性の観点から、その表面に有機リガンドを有することが好ましい。有機リガンドは、例えば、発光性ナノ結晶粒子の表面に配位結合されていてよい。換言すれば、発光性ナノ結晶粒子の表面は、有機リガンドによってパッシベーションされていてよい。また、インク組成物が後述する高分子分散剤を更に含有する場合には、発光性ナノ結晶粒子は、その表面に高分子分散剤を有していてもよい。本実施形態では、例えば、上述の有機リガンドを有する発光性ナノ結晶粒子から有機リガンドを除去し、有機リガンドと高分子分散剤とを交換することで発光性ナノ結晶粒子の表面に高分子分散剤を結合させてよい。ただし、インクジェットインクにした際の分散安定性の観点では、有機リガンドが配位したままの発光性ナノ結晶粒子に対して高分子分散剤が配合されることが好ましい。
有機リガンドとしては、樹脂および溶剤との親和性を確保するための官能基(以下、単に「親和性基」ともいう。)と、発光性ナノ結晶への吸着性を確保するための官能基(以下、単に、「吸着基」ともいう。)と、を有する化合物であることが好ましい。親和性基としては、脂肪族炭化水素基が好ましい。当該脂肪族炭化水素基は、直鎖型であってもよく分岐構造を有していてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよく、不飽和結合を有していなくてもよい。吸着基としては、水素基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、アルコキシシリル等が挙げられる。有機リガンドとしては、例えば、TOP(トリオクチルホスフィン)、TOPO(トリオクチルホスフィンオキサイド)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、及びオクチルホスフィン酸(OPA)が挙げられる。
有機リガンドは、発光性ナノ結晶粒子の分散性が良好となり、より優れた吐出安定性が得られる観点から、親和性基としてエチレンオキシド鎖及び/又はプロピレンオキシド鎖を有する脂肪族炭化水素を有することが好ましい。具体的には下記式(1)で表される有機リガンドであってもよい。
[式(1)中、pは0〜50の整数を示し、qは0〜50の整数を示す。]
式(1)で表される有機リガンドにおいて、p及びqのうち少なくとも一方が1以上であることが好ましく、p及びqの両方が1以上であることがより好ましい。
発光性ナノ結晶粒子としては、有機溶剤等の中にコロイド形態で分散しているものを用いることができる。有機溶剤中で分散状態にある発光性ナノ結晶粒子の表面は、上述の有機リガンドによってパッシベーションされていることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン、テトラリン、ジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、又はそれらの混合物が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子としては、市販品を用いることができる。発光性ナノ結晶粒子の市販品としては、例えば、NN−ラボズ社の、インジウムリン/硫化亜鉛、D−ドット、CuInS/ZnS、アルドリッチ社の、InP/ZnS等が挙げられる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、吐出安定性により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。なお、本明細書中、「インク組成物の不揮発分の質量」とは、インク組成物が溶剤を含む場合、インク組成物の全質量から溶剤の質量を除いた質量を指し、インク組成物が溶剤を含まない場合、インク組成物の全質量を指す。
[エポキシ基含有アクリル系重合体]
本実施形態において、エポキシ基含有アクリル系重合体は、例えば、硬化物中においてバインダーとして機能する、熱により架橋し硬化する樹脂である。エポキシ基含有アクリル系重合体は、アクリルモノマー由来の構造単位を有し、且つ、硬化性基としてエポキシ基を有する。本実施形態では、インク組成物がエポキシ基含有アクリル系重合体を含むことにより、インク組成物の硬化物の耐熱性及び保存安定性に優れ、遮光部(例えばブラックマトリックス)及び基材への密着性に優れる。エポキシ基含有アクリル系重合体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組あわせて用いてもよい。なお、アクリルモノマーとは、アクリレート等の置換又は無置換のアクリロイル基(例えば、アクリロイル基、α‐アルキルアクリロイル基)を有するモノマーを意味する。
エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基等であってよい。エポキシ基含有アクリル系重合体一分子におけるエポキシ基の数は、架橋密度を高める観点から、好ましくは2個以上であり、より好ましくは4個以上である。特に、インクジェット方式における吐出ヘッドからの吐出安定性をより向上させるために重量平均分子量が20000以下のエポキシ基含有アクリル系重合体を用いる場合には、画素部(インク組成物の硬化物)の強度及び硬度が低下し易いため、エポキシ基の数を4個以上とすることにより、架橋密度を充分に高めることができる。エポキシ基の数は、好ましくは100個以下であり、より好ましくは50個以下である。すなわち、エポキシ基の数は、好ましくは2〜100個であり、より好ましくは2〜50個であり、更に好ましくは4〜50個である。
エポキシ基含有アクリル系重合体は、エポキシ基と、置換又は無置換のアクリロイル基(例えば、アクリロイル基、α‐アルキルアクリロイル基)と、を有するモノマー(以下、「エポキシ基含有アクリルモノマー」ともいう。)の重合体、エポキシ基含有アクリルモノマーと、他のモノマー(エポキシ基含有アクリルモノマー以外のモノマー)との共重合体等であってよい。エポキシ基含有アクリルモノマーの重合体は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。エポキシ基含有アクリル系重合体におけるエポキシ基含有アクリルモノマー単位(エポキシ基含有アクリルモノマーに由来する構造単位)の割合は、エポキシ基含有アクリル系重合体の全量を基準として、1質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
エポキシ基含有アクリルモノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−4,5−エポキシペンチル、メタクリル酸−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エポキシペンチル、メタクリル酸−6,7−エポキシペンチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシペンチル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、ラクトン変性アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、ラクトン変性メタクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。エポキシ基含有アクリルモノマーは、好ましくはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル及びα−n−プロピルアクリル酸グリシジルからなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくはアクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルである。
他のモノマーは、エポキシ基を有さず、かつ、エポキシ基含有アクリルモノマーと架橋し得る基として、炭素−炭素不飽和結合を有する基を含むモノマー(第1の他モノマー)であってよく、置換又は無置換のアクリロイル基を有さず、かつ、エポキシ基を有するモノマー(第2の他モノマー)であってもよい。第1の他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類、アクリロニトリル;エチレン、プロピレン、1,3−ブタジエン、シクロペンチルエチレン等のα−オレフィン類;スチレン、1−エチニル−4−メチルベンゼン、ジビニルベンゼン、1−エチニル−4−メチルエチルベンゼン、p−tert−ブチルスチレン、4−ビニルビフェニル、4−エチニルベンジルアルコール、2−エチニルナフタレン、フェナントレン−9−エチニル等の芳香環を有するビニル化合物;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。第1の他のモノマーとして、芳香環を有するビニル化合物を用いる場合、スチレン、又はp−tert−ブチルスチレンが好適に用いられる。第2の他のモノマーとしては、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基含有アクリル系重合体は、例えば、下記式(2)で表される構造単位を含んでいてよい。エポキシ基含有アクリル系重合体は、下記式(2)で表される構造単位を1種単独で含んでいてよく、2種以上を組み合わせて含んでいてよい。エポキシ基含有アクリル系重合体は、下記式(2)で表される構造単位を含み、かつ、上述の他のモノマーに由来する構造単位を含んでいてもよい。
[式(2)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は2価の基を示す。]
R2で表される2価の基は、例えば置換又は無置換の2価の炭化水素基であってよく、好ましくはアルキレン基である。当該炭化水素基又はアルキレン基の炭素数は、例えば1〜12であり、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
エポキシ基含有アクリル系重合体における式(2)で表される構造単位の割合は、エポキシ基含有アクリル系重合体の全量を基準として、1質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
エポキシ基含有アクリル系重合体としては、例えば、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、n−ブチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有アクリル系重合体を得る方法(上記モノマーを重合又は共重合させる方法)は、特に限定されず、公知の、重合方法、溶剤、重合開始剤等を用いることができる。重合方法としては、例えば、塊状ラジカル重合法、溶液ラジカル重合法、非水分散ラジカル重合法等が挙げられる。エポキシ基含有アクリル系重合体は、エポキシ基含有モノマーの重合反応により得てもよく、他のモノマーの重合反応により得たものにエポキシ基を導入して得てもよい。
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
エポキシ基含有アクリル系重合体の具体例としては、DIC(株)製の「ファインディックA−247S」、「ファインディックA−254」、「ファインディックA−253」、「ファインディックA−229−30A」、「ファインディックA−261」、「ファインディックA−249」、「ファインディックA−266」、「ファインディックA−241」「ファインディックA−272」(商品名)等を用いることができる。
エポキシ基含有アクリル系重合体の重量平均分子量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、吐出安定性により優れる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよい。インク組成物(インクジェットインク)中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が高濃度となり、架橋密度を高めることができる観点、インクジェットインクとしての適正な粘度とする観点、及び、吐出安定性により優れる観点から、500000以下であってよく、300000以下であってもよく、200000以下であってもよく、100000以下であってもよく、50000以下であってもよく、20000以下であってもよい。ただし、架橋後の分子量に関してはこの限りでない。なお、本明細書中、重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)によって測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
エポキシ基含有アクリル系重合体のエポキシ当量は、硬化による収縮を抑制する観点、及び、製膜後の膜物性の観点から、100g/eq以上であってよく、130g/eq以上であってもよく、150g/eq以上であってもよく、200g/eq以上であってもよく、300g/eq以上であってもよく、400g/eq以上であってもよく、500g/eq以上であってもよい。エポキシ基含有アクリル系重合体のエポキシ当量は、架橋密度を高めることができ、画素部(インク組成物の硬化物)の強度及び硬度を高めることができる観点から、1000g/eq以下であってよく、800g/eq以下であってよく、750g/eq以下であってもよく、700g/eq以下であってもよく、650g/eq以下であってもよく、600g/eq以下であってもよく、560g/eq未満であってもよく、500g/eq以下であってもよく、400g/eq以下であってもよい。ところで、発光性ナノ結晶粒子を用いたインク組成物によりカラーフィルタ画素部を形成する場合、エポキシ基含有アクリル系重合体の種類によっては、例えばインク組成物を空気雰囲気下、室温で保管することにより外部量子効率が低下する場合がある。一方、エポキシ基含有アクリル系重合体のエポキシ当量が560g/eq未満である場合、このような外部量子効率の低下を抑制することができる傾向がある。なお、エポキシ当量は、例えば、JIS K7236:2001により測定することができる。
エポキシ基含有アクリル系重合体は、信頼性に優れるカラーフィルタ画素部が得られやすい観点から、アルカリ不溶性であってよい。エポキシ基含有アクリル系重合体がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるエポキシ基含有アクリル系重合体の溶解量が、エポキシ基含有アクリル系重合体の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。エポキシ基含有アクリル系重合体の上記溶解量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
エポキシ基含有アクリル系重合体の含有量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、吐出安定性により優れる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。エポキシ基含有アクリル系重合体の含有量は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、画素部の厚さが光変換機能に対して厚くなりすぎない観点及び吐出安定性により優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
[フェノール系硬化剤]
フェノール系硬化剤は、フェノール性水酸基を少なくとも二つ有する化合物である。本実施形態のインク組成物では、加熱によりエポキシ基含有アクリル系重合体が有するエポキシ基とフェノール系硬化剤が有するフェノール性水酸基とが反応する。これにより、架橋構造が形成され、インク組成物が硬化する。フェノール系硬化剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組あわせて用いてもよい。
本実施形態では、インク組成物がフェノール系硬化剤を含有することにより優れた吐出安定性が得られる。かかる効果が得られる理由は定かではないが、硬化剤がフェノール系硬化剤であることで、経時によるインク組成物の粘度変化(例えばエポキシ基含有アクリル系重合体が硬化することによる粘度変化)が抑制されること等が原因として考えられる。
フェノール系硬化剤は、モノマー化合物であってよく、ポリマー化合物であってもよい。ポリマー化合物であるフェノール系硬化剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、フェノール系硬化剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
フェノール系硬化剤におけるフェノール性水酸基当量の数は、好ましくは50以上であり、より好ましくは80以上である。フェノール性水酸基の数は、例えば、500以下であってよく、300以下であってもよい。
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、ノボラック型フェノール樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールSノボラック樹脂、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、並びに、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物))、アラルキル型フェノール樹脂(例えば、ザイロック樹脂等のフェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)などの多価フェノール化合物などが挙げられる。吐出安定性の向上効果に優れる観点から、フェノール系硬化剤は、ノボラック型フェノール樹脂及びフェノールアラルキル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びビスフェノールAノボラック樹脂が好ましく用いられる。
ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「フェノライトTD−2131」、「フェノライトTD−2090」(商品名)等が挙げられる。
アラルキル型フェノール樹脂の具体例としては、日本化薬(株)製のGPH−65(商品名)等が挙げられる。
フェノール系硬化剤の重量平均分子量は、インクジェットインクとして適正な粘度が得られやすい観点、インク組成物の硬化性が良好となる観点、吐出安定性により優れる観点、並びに、画素部(インク組成物の硬化物)の耐溶剤性及び磨耗性が向上する観点から、100以上であってよく、500以上であってもよい。フェノール系硬化剤の重量平均分子量は、インクジェットインクとしての適正な粘度とする観点、及び、吐出安定性により優れる観点から、5000以下であってよく、20000以下であってもよい。ただし、架橋後の分子量に関してはこの限りでない。
インク組成物中のエポキシ基に対するフェノール性水酸基の当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基)は、インクジェットの吐出安定性の観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、更に好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは0.9以上である。インク組成物中のエポキシ基に対するフェノール性水酸基の当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基)は、インクジェットの吐出安定性の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.8以下であり、特に好ましくは1.7以下である。
フェノール系硬化剤の含有量は、インク組成物中のエポキシ基に対するフェノール性水酸基の当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基)が上記範囲となる量であることが好ましい。フェノール系硬化剤の含有量は、例えば、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、1質量%以上であってよく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。フェノール系硬化剤の含有量は、例えば、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
[光散乱性粒子]
光散乱性粒子は、例えば、光学的に不活性な無機微粒子である。光散乱性粒子は、カラーフィルタ画素部に照射された光源からの光を散乱させることができる。
光散乱性粒子を構成する材料としては、例えば、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、プラチナ、金等の単体金属;シリカ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物、次硝酸ビスマス等の金属塩などが挙げられる。光散乱性粒子は、吐出安定性により優れる観点及び漏れ光の低減効果に優れる観点から、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は、球状、フィラメント状、不定形状等であってよい。しかしながら、光散乱性粒子としては、粒子形状として方向性の少ない粒子(例えば、球状、正四面体状等の粒子)を用いることが、インク組成物の均一性、流動性及び光散乱性をより高めることができ、より優れた吐出安定性を得ることができる点で好ましい。
インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性により優れる観点及び漏れ光の低減効果に優れる観点から、0.05μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、吐出安定性に優れる観点から、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、0.05〜1.0μm、0.05〜0.6μm、0.05〜0.4μm、0.2〜1.0μm、0.2〜0.6μm、0.2〜0.4μm、0.3〜1.0μm、0.3〜0.6μm、又は0.3〜0.4μmであってもよい。このような平均粒子径(体積平均径)が得られやすい観点から、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、50nm以上であってよく、1000nm以下であってもよい。インク組成物中での光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。また、使用する光散乱性粒子の平均粒子径(体積平均径)は、例えば透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により各粒子の粒子径を測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、吐出安定性により優れる観点及び漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の不揮発分の質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。本実施形態では、インク組成物が高分子分散剤を含むため、光散乱性粒子の含有量を上記範囲とした場合であっても光散乱性粒子を良好に分散させることができる。
発光性ナノ結晶粒子の含有量に対する光散乱性粒子の含有量の質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、0.1以上であってよく、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。質量比(光散乱性粒子/発光性ナノ結晶粒子)は、漏れ光の低減効果に優れ、インクジェット印刷時の連続吐出性(吐出安定性)により優れる観点から、5.0以下であってよく、2.0以下であってもよく、1.5以下であってもよい。なお、光散乱性粒子による漏れ光低減は、次のようなメカニズムによると考えられる。すなわち、光散乱性粒子が存在しない場合、バックライト光は画素部内をほぼ直進して通過するのみであり、発光性ナノ結晶粒子に吸収される機会が少ないと考えられる。一方、光散乱性粒子を発光性ナノ結晶粒子と同一の画素部内に存在させると、その画素部内でバックライト光が全方位に散乱され、それを発光性ナノ結晶粒子が受光することができるため、同一のバックライトを用いていても、画素部における光吸収量が増大すると考えられる。結果的に、このようなメカニズムで漏れ光を防ぐことが可能になったと考えられる。
[高分子分散剤]
本発明において、高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を有する高分子化合物であり、光散乱性粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱性粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発及び/又は立体反発により、光散乱性粒子をインク組成物中に分散させる。高分子分散剤は、光散乱性粒子の表面と結合して光散乱性粒子に吸着していることが好ましいが、発光性ナノ結晶粒子の表面に結合して発光性ナノ粒子に吸着していてもよく、インク組成物中に遊離していてもよい。なお、エポキシ基含有アクリル系重合体及びフェノール系硬化剤に該当する化合物は高分子分散剤には含まれない。
ところで、従来のインク組成物を用いてインクジェット方式でカラーフィルタ画素部を形成する場合に吐出安定性が低下する原因の一つとして、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の凝集等が考えられる。そのため、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子を微細化すること、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子の含有量を減らすこと等により、吐出安定性を向上させることが考えられるが、この場合、漏れ光の低減効果が低下しやすく、吐出安定性と漏れ光の低減とを高次元で両立することは困難である。これに対し、高分子分散剤を更に含有するインク組成物によれば、優れた吐出安定性と漏れ光の低減とを高次元で両立することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、高分子分散剤によって、発光性ナノ結晶粒子及び光散乱性粒子(特に、光散乱性粒子)の凝集が顕著に抑制されるためであると推察される。
光散乱性粒子に対し親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基及び非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
酸性官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、硫酸基(−OSO3H)、ホスホン酸基(−PO(OH)3)、リン酸基(−OPO(OH)3)、ホスフィン酸基(−PO(OH)−)、メルカプト基(−SH)、が挙げられる。
塩基性官能基としては、一級、二級及び三級アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、並びに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基が挙げられる。
光散乱性粒子の分散安定性の観点、発光性ナノ結晶粒子が沈降するという副作用を起こしにくい観点、高分子分散剤の合成の容易性の観点、及び官能基の安定性の観点から、酸性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基が好ましく用いられ、塩基性官能基としては、アミノ基が好ましく用いられる。これらの中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基及びアミノ基がより好ましく用いられ、最も好ましくはアミノ基が用いられる。
酸性官能基を有する高分子分散剤は酸価を有する。酸性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、好ましくは1〜150mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、酸価が150mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤の酸価は、高分子分散剤pgを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50mL及びフェノールフタレイン試液1mLに溶解させた試料液を準備し、0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液(水酸化カリウム7.0gを蒸留水5.0mLに溶解させ、95vol%エタノールを加えることで1000mLに調整したもの)にて試料液が淡紅色を呈するまで滴定を行う。そして次式により酸価を算出できる。
酸価=q×r×5.611/p
式中、qは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)を示し、rは滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の力価を示し、pは高分子分散剤の質量(g)を示す。
塩基性官能基を有する高分子分散剤はアミン価を有する。塩基性官能基を有する高分子分散剤のアミン価は、好ましくは1〜200mgKOH/gである。アミン価が1mgKOH/g以上であると、光散乱性粒子の充分な分散性が得られやすく、アミン価が200mgKOH/g以下であると、画素部(インク組成物の硬化物)の保存安定性が低下しにくい。
高分子分散剤のアミン価は、高分子分散剤xgを、トルエンとエタノールとを体積比1:1で混合した混合溶液50ml及びブロモフェノールブルー試液1mlに溶解させた試料液を準備し、0.5mol/L塩酸にて試料液が緑色を呈するまで滴定を行う。そして、次式によりアミン価を算出できる。
アミン価=y/x×28.05
式中、yは滴定に要した0.5mol/L塩酸の滴定量(ml)を示し、xは高分子分散剤の質量(g)を示す。
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、ポリイミドなどであってよい。
前記高分子分散剤として、市販品を使用することも可能であり、市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーPBシリーズ、BYK社製のDISPERBYKシリーズ並びにBYK−シリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ等を使用することができる。
市販品としては、例えば、ビックケミー社製の「DISPERBYK−130」、「DISPERBYK−161」、「DISPERBYK−162」、「DISPERBYK−163」、「DISPERBYK−164」、「DISPERBYK−166」、「DISPERBYK−167」、「DISPERBYK−168」、「DISPERBYK−170」、「DISPERBYK−171」、「DISPERBYK−174」、「DISPERBYK−180」、「DISPERBYK−182」、「DISPERBYK−183」、「DISPERBYK−184」、「DISPERBYK−185」、「DISPERBYK−2000」、「DISPERBYK−2001」、「DISPERBYK−2008」、「DISPERBYK−2009」、「DISPERBYK−2020」、「DISPERBYK−2022」、「DISPERBYK−2025」、「DISPERBYK−2050」、「DISPERBYK−2070」、「DISPERBYK−2096」、「DISPERBYK−2150」、「DISPERBYK−2155」、「DISPERBYK−2163」、「DISPERBYK−2164」、「BYK−LPN21116」及び「BYK−LPN6919」;BASF社製の「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4061」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4310」、「EFKA4320」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4560」、「EFKA4585」、「EFKA5207」、「EFKA1501」、「EFKA1502」、「EFKA1503」及び「EFKA PX−4701」;ルーブリゾール社製の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37500」、「ソルスパース38500」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」及び「ソルスパース76500」;味の素ファインテクノ(株)製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB881」、「PN411」及び「PA111」;エボニック社製の「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers660C」、「TEGO Dispers662C」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers700」、「TEGO Dispers710」及び「TEGO Dispers760W」;楠本化成製の「ディスパロンDA―703―50」、「DA−705」及び「DA−725」などを用いることができる。
高分子分散剤としては、上記のような市販品以外にも、塩基性基を含有するカチオン性モノマー及び/又は酸性基を有するアニオン性モノマーと、疎水基を有するモノマーと、必要により他のモノマー(ノニオン性モノマー、親水基を有するモノマー等)とを共重合させて合成したものを用いることができる。カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、疎水基を有するモノマー及び他のモノマーの詳細については、特開2004−250502号公報の段落0034〜0036に記載のモノマーを挙げることができる。
また、例えば、特開昭54−37082号公報、特開昭61−174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9−169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開平9−171253号公報に記載のポリエステル型マクロモノマーを共重合成分とするグラフト重合体、特開昭60−166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられる。
高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果を向上させることができる観点から、750以上であってよく、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。高分子分散剤の重量平均分子量は、光散乱性粒子を良好に分散することができ、漏れ光の低減効果を向上させることができ、また、インクジェットインクの粘度を吐出可能で安定吐出に適する粘度とする観点から、100000以下であってよく、50000以下であってもよく、30000以下であってもよい。
高分子分散剤の含有量は、光散乱性粒子の分散性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であってよく、2質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよい。高分子分散の含有量は、画素部(インク組成物の硬化物)の湿熱安定性の観点から、光散乱性粒子100質量部に対して、50質量部以下であってよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよい。
以上、本実施形態のインク組成物に含有される各成分について説明したが、インク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、発光性ナノ結晶粒子、エポキシ基含有アクリル系重合体、フェノール系硬化剤、光散乱性粒子、高分子分散剤及び有機リガンド以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、硬化促進剤、増感剤、溶剤等が挙げられる。また、インク組成物は、エポキシ基含有アクリル系重合体以外の熱硬化性樹脂、フェノール系硬化剤以外の硬化剤等を更に含有していてもよく、それ自体は重合反応性のない重合体を更に含有していてもよい。
硬化促進剤は、エポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤との反応(熱硬化反応)を促進する触媒である。硬化促進剤としては、例えば、リン系化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等を用いることができる。
リン系化合物としては、アルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第一、第二、第三オルガノホスフィン化合物、(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,4−(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィノアルカン化合物、トリフェニルジホスフィン等のジホスフィン化合物、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボラン等のトリオルガノホスフィンとトリオルガノボランとの塩、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート等のテトラオルガノホスホニウムとテトラオルガノボレート、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のトリオルガノホスフィンとテトラオルガノボレートとの塩、第一〜第三ベンジルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルジホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムヒドロキサイド40%水溶液、テトラブチルホスホニウムアセテート40%溶液、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、ジフェニルホスフィノスチレン、ジフェニルホスフィノクロライド、トリ−n−オクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、ジフェニルホスフィニルハイドロキノン等が挙げられる。
アミン化合物としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類の他、N,N−ジメチルベンジルアミン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノベンジディン、オルソトリジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,6−ジアミノトルエン、1,8−ジアミノナフタレン等の芳香族アミン系硬化促進剤;N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)モルホリン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩及び1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト等を挙げることができる。
硬化促進剤としては、上記の他に、例えば、3−フェニル−1,1−ジメチルウレアを用いることもできる。これらの硬化促進剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
硬化促進剤の含有量は、エポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤合計100質量部に対して、0.01質量部以上であってよく、0.05質量部以上であってよい。また10質量部以下であってよく、5質量部以下であってよい。
溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、1,4−ブタンジオールジアセテート、グリセリルトリアセテートなどが挙げられる。インク組成物を均一となるように調製する観点、及び、インク組成物の流動性等を高めてムラの少ないカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成する観点から、溶剤を用いることが好ましい。
溶剤の沸点は、インクジェットインクの連続吐出安定性の観点から、180℃以上であることが好ましい。また、画素部の形成時には、インク組成物の硬化前にインク組成物から溶剤を除去する必要があるため、溶剤を除去しやすい観点から、溶剤の沸点は300℃以下であることが好ましい。
上述のインク組成物は、公知慣用のカラーフィルタの製造方法に用いるインクとして適用が可能であるが、比較的高額である発光性ナノ結晶粒子、溶剤等の材料を無駄に消費せずに、必要な箇所に必要な量を用いるだけでカラーフィルタ画素部(光変換層)を形成できる点で、インクジェット方式用に適合するよう、適切に調製して用いることが好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、インクジェット印刷時の吐出安定性の観点から、2mPa・s以上であってよく、5mPa・s以上であってもよく、7mPa・s以上であってもよい。インク組成物の粘度は、20mPa・s以下であってよく、15mPa・s以下であってもよく、12mPa・s以下であってもよい。インク組成物の粘度が2mPa・s以上である場合、吐出ヘッドのインク吐出孔の先端におけるインク組成物のメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、粘度が20mPa・s以下である場合、インク吐出孔からインク組成物を円滑に吐出させることができる。インク組成物の粘度は、2〜20mPa・s、2〜15mPa・s、2〜12mPa・s、5〜20mPa・s、5〜15mPa・2〜20mPa・s、7〜15mPa・s、7〜12mPa・s、又は7〜12mPa・sであってもよい。インク組成物の粘度は、例えば、E型粘度計によって測定される。インク組成物の粘度は、例えば、エポキシ基含有アクリル系重合体、フェノール系硬化剤等の重量平均分子量、溶剤の含有量などを変更することで所望の範囲に調整することができる。
インク組成物の表面張力は、インクジェット方式に適した表面張力であることが好ましく、具体的には、20〜40mN/mの範囲であることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。表面張力を該範囲とすることで飛行曲がりの発生を抑制することができる。なお、飛行曲がりとは、インク組成物をインク吐出孔から吐出させたとき、インク組成物の着弾位置が目標位置に対して30μm以上のずれを生じることをいう。表面張力が40mN/m以下である場合、インク吐出孔の先端におけるメニスカス形状が安定するため、インク組成物の吐出制御(例えば、吐出量及び吐出のタイミングの制御)が容易となる。一方、表面張力が20mN/m以下である場合、飛行曲がりの発生を抑制できる。すなわち、着弾すべき画素部形成領域に正確に着弾されずにインク組成物の充填が不十分な画素部が生じたり、着弾すべき画素部形成領域に隣接する画素部形成領域(又は画素部)にインク組成物が着弾し、色再現性が低下したりすることがない。インク組成物の表面張力は、例えば、溶剤組成、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤などを変更することで所望の範囲に調整することができる。
ところで、従来のインク組成物を用いた画素部の形成工程は、フォトリソグラフィ方式により行われていたところ、フォトリソグラフィ方式に用いられるインク組成物は、バインダーポリマーとしてアルカリ可溶性樹脂を含有する。インク組成物をフォトグラフィー方式で用いる場合、まず、インク組成物を基材上に塗布し、インク組成物が溶剤を含有する場合には、さらにインク組成物を乾燥させて塗布膜を形成する。このようにして得られる塗布膜は、アルカリ現像液に可溶性であり、アルカリ現像液で処理されることでパターニングされる。この際、アルカリ現像液は、現像液の廃液処理の容易さ等の観点から、水溶液であることが大半を占めるため、インク組成物の塗布膜は水溶液で処理されることとなる。一方、発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)を用いたインク組成物の場合、発光性ナノ結晶粒子が水に対して不安定であり、発光性(例えば蛍光性)が水分により損なわれる。一方、本実施形態のインク組成物を用いてインクジェット方式により画素部を形成する場合、アルカリ現像液(水溶液)で処理する必要がなく、発光性ナノ結晶粒子の発光性が水分により損なわれることがない。
また、インク組成物の塗布膜に対してアルカリ現像液による処理を行わない場合でも、インク組成物がアルカリ可溶性である場合、インク組成物の塗布膜が大気中の水分を吸収しやすく、時間が経過するにつれて発光性ナノ結晶粒子(量子ドット等)の発光性(例えば蛍光性)が損なわれてゆく。この観点から、本実施形態においては、インク組成物の塗布膜はアルカリ不溶性であることが好ましい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、アルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることが好ましい。このようなインク組成物は、エポキシ基含有アクリル系重合体として、アルカリ不溶性のエポキシ基含有アクリル系重合体を用いることにより得ることができる。インク組成物の塗布膜がアルカリ不溶性であるとは、1質量%の水酸化カリウム水溶液に対する25℃におけるインク組成物の塗布膜の溶解量が、インク組成物の塗布膜の全質量を基準として、30質量%以下であることを意味する。インク組成物の塗布膜の上記溶解量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。なお、インク組成物がアルカリ不溶性の塗布膜を形成可能なインク組成物であることは、インク組成物を基材上に塗布した後、溶剤を含む場合80℃、3分の条件で乾燥して得られる厚さ1μmの塗布膜の、上記溶解量を測定することにより確認できる。
<インク組成物の製造方法>
次に、上述した実施形態のインク組成物の製造方法について説明する。インク組成物の製造方法は、少なくとも発光性ナノ結晶粒子(例えば発光性ナノ結晶粒子の分散体)とエポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤とを混合する工程を備えている。例えば、上述したインク組成物の構成成分を混合し、分散処理を行うことでインク組成物が得られる。以下では、インク組成物の製造方法の一例として、高分子分散剤を更に含有するインク組成物の製造方法を説明する。
インク組成物の製造方法は、例えば、光散乱性粒子及び高分子分散剤を含有する、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子を含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を用意する第1の工程と、光散乱性粒子の分散体及び発光性ナノ結晶粒子の分散体を混合する第2の工程と、を備える。この方法では、光散乱性粒子の分散体がエポキシ基含有アクリル系重合体を更に含有してよく、第2の工程において、エポキシ基含有アクリル系重合体を更に混合してもよい。また、光散乱性粒子の分散体がフェノール系硬化剤を更に含有してよく、第2の工程において、フェノール系硬化剤を更に混合してもよい。第2の工程では、予め調製した、エポキシ基含有アクリル系重合体及びフェノール系硬化剤を含有する溶液を混合してもよい。この方法によれば、光散乱性粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。
光散乱性粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子と、高分子分散剤と、場合により、エポキシ基含有アクリル系重合体及びフェノール系硬化剤とを混合し、分散処理を行うことにより光散乱性粒子の分散体を調製してよい。混合及び分散処理は、ビーズミル、ペイントコンディショナー、遊星撹拌機等の分散装置を用いて行ってよい。光散乱性粒子の分散性が良好となり、光散乱性粒子の平均粒子径を所望の範囲に調整しやすい観点から、ビーズミル又はペイントコンディショナーを用いることが好ましい。
インク組成物の製造方法は、第2の工程の前に、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ基含有アクリル系重合体及びフェノール系硬化剤の少なくとも一方とを含有する、発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程を更に備えていてもよい。この場合、第2の工程では、光散乱性粒子の分散体と、発光性ナノ結晶粒子の分散体と、を混合する。この方法によれば、発光性ナノ結晶粒子を充分に分散させることができる。そのため、画素部における漏れ光を低減することができると共に、吐出安定性に優れるインク組成物を容易に得ることができる。発光性ナノ結晶粒子の分散体を用意する工程では、光散乱性粒子の分散体を用意する工程と同様の分散装置を用いて、発光性ナノ結晶粒子と、エポキシ基含有アクリル系重合体及びフェノール系硬化剤の少なくとも一方との混合及び分散処理を行ってよい。
本実施形態のインク組成物を、インクジェット方式用のインク組成物として用いる場合には、圧電素子を用いた機械的吐出機構による、ピエゾジェット方式のインクジェット記録装置に適用することが好ましい。ピエゾジェット方式では、吐出に当たり、インク組成物が瞬間的に高温に晒されることがなく、発光性ナノ結晶粒子の変質が起こり難く、カラーフィルタ画素部(光変換層)も期待した通りの発光特性がより容易に得られやすい。
<光変換層及びカラーフィルタ>
次に、上述した実施形態のインク組成物を用いた、光変換層及びカラーフィルタの詳細について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は、一実施形態のカラーフィルタの模式断面図である。図1に示すように、カラーフィルタ100は、基材40と、基材40上に設けられた光変換層30と、を備える。光変換層30は、複数の画素部10と、遮光部20と、を備えている。
光変換層30は、画素部10として、第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとを有している。第1の画素部10aと、第2の画素部10bと、第3の画素部10cとは、この順に繰り返すように格子状に配列されている。遮光部20は、隣り合う画素部の間、すなわち、第1の画素部10aと第2の画素部10bとの間、第2の画素部10bと第3の画素部10cとの間、第3の画素部10cと第1の画素部10aとの間に設けられている。言い換えれば、これらの隣り合う画素部同士は、遮光部20によって離間されている。
第1の画素部10a及び第2の画素部10bは、それぞれ上述した実施形態のインク組成物の硬化物を含む。硬化物は、発光性ナノ結晶粒子と、光散乱性粒子と、硬化成分とを含有する。硬化成分は、エポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤との硬化反応生成物であり、具体的には、エポキシ基含有アクリル系重合体がフェノール系硬化剤と反応することにより架橋して得られる硬化物である。すなわち、第1の画素部10aは、第1の硬化成分13aと、第1の硬化成分13a中にそれぞれ分散された第1の発光性ナノ結晶粒子11a及び第1の光散乱性粒子12aとを含む。同様に、第2の画素部10bは、第2の硬化成分13bと、第2の硬化成分13b中にそれぞれ分散された第2の発光性ナノ結晶粒子11b及び第2の光散乱性粒子12bとを含む。第1の画素部10a及び第2の画素部10bにおいて、第1の硬化成分13aと第2の硬化成分13bとは同一でもあっても異なっていてもよく、第1の光散乱性粒子12aと第2の光散乱性粒子12bとは同一でもあっても異なっていてもよい。
第1の発光性ナノ結晶粒子11aは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し605〜665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第1の画素部10aは、青色光を赤色光に変換するための赤色画素部と言い換えてよい。また、第2の発光性ナノ結晶粒子11bは、420〜480nmの範囲の波長の光を吸収し500〜560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性のナノ結晶粒子である。すなわち、第2の画素部10bは、青色光を緑色光に変換するための緑色画素部と言い換えてよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における発光性ナノ結晶粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。発光性ナノ結晶粒子の含有量は、画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
インク組成物の硬化物を含む画素部における光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、7質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、12質量%以上であってもよい。光散乱性粒子の含有量は、漏れ光の低減効果に優れる観点及び画素部の信頼性に優れる観点から、インク組成物の硬化物の全質量を基準として、60質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光に対し30%以上の透過率を有する。そのため、第3の画素部10cは、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に、青色画素部として機能する。第3の画素部10cは、例えば、上述のエポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤とを含有する組成物の硬化物を含む。硬化物は、第3の硬化成分13cを含有する。第3の硬化成分13cは、エポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤との硬化反応生成物であり、具体的には、エポキシ基含有アクリル系重合体がフェノール系硬化剤と反応することにより架橋して得られる硬化物である。すなわち、第3の画素部10cは、第3の硬化成分13cを含む。第3の画素部10cが上述の硬化物を含む場合、エポキシ基含有アクリル系重合体とフェノール系硬化剤とを含有する組成物は、420〜480nmの範囲の波長の光に対する透過率が30%以上となる限りにおいて、上述のインク組成物に含有される成分のうち、エポキシ基含有アクリル系重合体及びフェノール系硬化剤以外の成分を更に含有していてもよい。なお、第3の画素部10cの透過率は、顕微分光装置により測定することができる。
画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、1μm以上であってよく、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。画素部(第1の画素部10a、第2の画素部10b及び第3の画素部10c)の厚さは、例えば、30μm以下であってよく、20μm以下であってもよく、15μm以下であってもよい。
遮光部20は、隣り合う画素部を離間して混色を防ぐ目的及び光源からの光漏れを防ぐ目的で設けられる、いわゆるブラックマトリックスである。遮光部20を構成する材料は、特に限定されず、クロム等の金属の他、バインダーポリマーにカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の硬化物等を用いることができる。ここで用いられるバインダーポリマーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したもの、感光性樹脂、O/Wエマルジョン型の樹脂組成物(例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの)などを用いることができる。遮光部20の厚さは、例えば、0.5μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
基材40は、光透過性を有する透明基材であり、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の透明なガラス基板、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルム等の透明なフレキシブル基材などを用いることができる。これらの中でも、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスからなるガラス基板を用いることが好ましい。具体的には、コーニング社製の「7059ガラス」、「1737ガラス」、「イーグル200」及び「イーグルXG」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA−10G」及び「OA−11」が好適である。これらは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れる。
以上の光変換層30を備えるカラーフィルタ100は、420〜480nmの範囲の波長の光を発する光源を用いる場合に好適に用いられる。
カラーフィルタ100は、例えば、基材40上に遮光部20をパターン状に形成した後、基材40上の遮光部20によって区画された画素部形成領域に、上述した実施形態のインク組成物(インクジェットインク)をインクジェット方式により選択的に付着させ、加熱によりインク組成物を硬化させる方法により製造することができる。従来のフォトリソグラフィ方式で画素部を形成する方法では、通常アルカリ性の現像液を用いて現像を行うため、バインダーポリマーとして、アルカリ可溶性のポリマーが用いられ、その原理上、材料のほぼ2/3以上を除去することとなり、材料が無駄になる。このように、材料の使用効率の観点で、インクジェット方式がフォトリソグラフィ方式よりも優れている。
遮光部20を形成させる方法は、基材40の一面側の複数の画素部間の境界となる領域に、クロム等の金属薄膜、又は、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜を形成し、この薄膜をパターニングする方法等が挙げられる。金属薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により形成することができ、遮光性粒子を含有させた樹脂組成物の薄膜は、例えば、塗布、印刷等の方法により形成することができる。パターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
溶剤を揮発させるための乾燥温度は、例えば、50℃で以上であってよく、150℃以下であってよい。乾燥時間は、例えば、3分以上であってよく、30分以下であってよい。
インク組成物を硬化させる際の加熱温度は、例えば、110℃以上であってよく、250℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、10分以上であってよく、120分以下であってよい。
以上、カラーフィルタ及び光変換層、並びにこれらの製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、光変換層は、第3の画素部10cに代えて、又は、第3の画素部10cに加えて、青色発光性のナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(青色画素部)を備えていてもよい。また、光変換層は、赤、緑、青以外の他の色の光を発するナノ結晶粒子を含有するインク組成物の硬化物を含む画素部(例えば黄色画素部)を備えていてもよい。これらの場合、光変換層の各画素部に含有される発光性ナノ結晶粒子のそれぞれは、同一の波長域に吸収極大波長を有することが好ましい。
また、光変換層の画素部の少なくとも一部は、発光性ナノ結晶粒子以外の顔料を含有する組成物の硬化物を含むものであってもよい。
また、カラーフィルタは、遮光部のパターン上に、遮光部よりも幅の狭い撥インク性を持つ材料からなる撥インク層を備えていてもよい。また、撥インク層を設けるのではなく、画素部形成領域を含む領域に、濡れ性可変層としての光触媒含有層をベタ塗り状に形成した後、該光触媒含有層にフォトマスクを介して光を照射して露光を行い、画素部形成領域の親インク性を選択的に増大させてもよい。光触媒としては、酸化チタン等が挙げられる。
また、カラーフィルタは、基材と画素部との間に、ヒドロキシプロピルセルロース等を含むインク受容層を備えていてもよい。
また、カラーフィルタは、画素部上に保護層を備えていてもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部に含有される成分、又は、画素部に含有される成分及び光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。保護層を構成する材料は、公知のカラーフィルタ用保護層として使用されているものを使用できる。
また、本実施形態の光変換層の画素部には、上記した発光性ナノ結晶粒子に加えて、発光性ナノ結晶粒子の発光色と概ね同色の顔料を更に含有させてもよい。例えば、液晶表示素子の画素部として、青色光を吸収して発光する発光性ナノ結晶粒子を含有する画素部を採用する場合、光源からの光として青色光乃至は450nmにピークを持つ準白色光を用いるが、画素部における発光性ナノ結晶粒子の濃度が十分でない場合には、液晶表示素子を駆動させた際に光源からの光が光変換層を透過してしまう。この光源からの透過光(青色光、漏れ光)と、発光性ナノ結晶粒子が発する光とが混色してしまう。このような混色の発生による色再現性の低下を防止する観点から、光変換層の画素部に顔料を含有させてもよい。顔料を画素部に含有させるため、インク組成物に顔料を含有させてもよい。
また、本実施形態の光変換層中の赤色画素部(R)、緑色画素部(G)、及び青色画素部(B)のうち、1種又は2種を発光性ナノ結晶粒子を含有させずに色材を含有させた画素部としてもよい。ここで使用し得る色材としては、公知の色材を使用することができる。例えば、赤色画素部(R)に用いる色材としては、ジケトピロロピロール顔料及び/又はアニオン性赤色有機染料が挙げられる。緑色画素部(G)に用いる色材としては、ハロゲン化銅フタロシニアン顔料、フタロシアニン系緑色染料、フタロシアニン系青色染料とアゾ系黄色有機染料との混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。青色画素部(B)に用いる色材としては、ε型銅フタロシニアン顔料及び/又はカチオン性青色有機染料が挙げられる。これらの色材の使用量は、光変換層に含有させる場合には、透過率の低下を防止できる観点から、画素部(インク組成物の硬化物)の全質量を基準として、1〜5質量%であることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた材料は全て、アルゴンガスを導入して溶存酸素を窒素ガスに置換したものを用いた。酸化チタンについては、混合前に、1mmHgの減圧下、2時間、120℃で加熱し、アルゴンガス雰囲気下で放冷したものを用いた。実施例で用いた液状の材料は、混合前にあらかじめ、モレキュラーシーブス3Aで48時間以上脱水して用いた。
<ラウリン酸インジウム前駆体溶液の調製>
1−オクタデセン(ODE)10g、酢酸インジウム146mg(0.5mmol)及びラウリン酸300mg(1.5mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。真空下において混合物を140℃にて2時間加熱することで透明な溶液(ラウリン酸インジウム前駆体溶液)を得た。この前駆体溶液は、必要になるまで室温でグローブボックス中に維持した。なお、ラウリン酸インジウムは室温では溶解性が低く沈殿しやすいため、前駆体溶液を使用する際は、前駆体溶液(ODE混合物)中の沈殿したラウリン酸インジウムを約90℃に加熱して透明な溶液を形成した後、所望量を計量して用いた。
<緑色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子(InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)の合成>
[緑色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子用のInPコアの合成]
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)5g、酢酸インジウム2.33g(8mmol)及びラウリン酸4.797g(24mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。真空下において、混合物を160℃で40分間加熱した後、250℃で20分間加熱した。次いで、反応温度(混合物の温度)を窒素(N2)環境の下で300℃に昇温した。この温度で、トリオクチルホスフィン(TOP)3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン1g(4mmol)との混合液を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を260℃で維持した。1分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8ml及びエタノール25mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってInPナノ結晶粒子を得た。次いで、得られたInPナノ結晶をヘキサンに分散させた。
[InPコアのインジウム強化及びZnSeS/ZnSシェルの合成]
InPナノ結晶粒子のヘキサン溶液、ODE6ml、及び上記にて作製したラウリン酸インジウム前駆体溶液を反応フラスコに添加し混合物を得た。InPコアのヘキサン溶液及び前駆体溶液の添加量は、InPコアが25mg、ラウリン酸インジウムが5gとなるように調整した。真空下、室温にて混合物を10分間静置した後、混合物の温度を230℃に上げ、その温度で2時間保持した。
次いで、反応温度(混合物の温度)を140℃に下げ、オレイン酸0.7gを反応フラスコに添加し、140℃で10分間保持した。次いで、この反応混合物中に、ODE1mlに溶解したジエチル亜鉛21mg、ビス(トリメチルシリル)セレニド13mg及びヘキサメチルジシラチアン10mg(ZnSeS前駆体溶液)を滴下することにより、厚さが0.5モノレイヤーのZnSeSシェルを形成させた。
ZnSeS前駆体溶液の滴下後、反応温度を140℃で30分間保持した。次いで、この反応混合物中にODE2mlに溶解したジエチル亜鉛110mg及びヘキサメチルジシラチアン106mg(ZnS前駆体溶液)を滴下することにより、厚さが2モノレイヤーのZnSシェルを形成させた。ZnS前駆体溶液の滴下の10分後、ヒーターの除去により反応を停止させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、得られた白色沈殿物を遠心分離によって除去することにより、緑色発光性のInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子が分散した透明な緑色発光ナノ結晶粒子溶液(ODE溶液)を得た。
<赤色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子(InP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)の合成>
[赤色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子用のInPコアの合成]
[赤色発光ナノ結晶粒子コア(InPコア)の合成]
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)5g、酢酸インジウム1.46g(5mmol)及びラウリン酸3.16g(15.8mmol)を反応フラスコに添加し混合物を得た。窒素環境下において混合物を160℃にて40分間加熱した後、真空下で250℃にて20分間加熱した。次いで、反応温度(混合物の温度)を窒素(N2)環境の下で300℃に昇温した。この温度で、ODE3gとトリス(トリメチルシリル)ホスフィン0.25g(1mmol)との混合物を反応フラスコに迅速に導入し、反応温度を260℃に維持した。5分後、ヒーターの除去により反応を停止させ、得られた反応溶液を室温に冷却した。次いで、トルエン8ml及びエタノール20mlをグローブボックス中の反応溶液に添加した。続いて遠心分離を行いInPナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉によってInPナノ結晶粒子を得た。次いで、得られたInPナノ結晶粒子をヘキサンに分散させた。
[InPコアのインジウム強化及びZnSeS/ZnSシェルの合成]
InPナノ結晶粒子(InPコア)のヘキサン溶液及びラウリン酸インジウム前駆体溶液を反応フラスコに添加し混合物を得た。InPコアのヘキサン溶液及び前駆体溶液の添加量は、InPコアが25mg、ラウリン酸インジウムが5gとなるように調整した。真空下、室温にて混合物を10分間静置した後、混合物の温度を230℃に上げ、その温度で2時間保持した。
次いで、反応温度(混合物の温度)を室温に下げ、オレイン酸0.7gを反応フラスコに添加し、温度を80℃に上げた。次いで、この反応混合物中に、ODE1mlに溶解したジエチル亜鉛14mg、ビス(トリメチルシリル)セレニド8mg及びヘキサメチルジシラチアン7mg(ZnSeS前駆体溶液)を滴下することによって、厚さが0.5モノレイヤーのZnSeSシェルを形成させた。
ZnSeS前駆体溶液の滴下後、反応温度を80℃で10分間保持した。次いで、温度を140℃に上げ、30分間保持した。次に、この反応混合物中にODE2mLに溶解したジエチル亜鉛69mg及びヘキサメチルジシラチアン66mg(ZnS前駆体溶液)を滴下することにより、厚さが2モノレイヤーのZnSシェルを形成させた。ZnS前駆体溶液の滴下の10分後に、ヒーターの除去により反応を停止させた。次いで、反応混合物を室温に冷却し、得られた白色沈殿物を遠心分離によって除去することにより、赤色発光性のInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子が分散した透明な赤色発光ナノ結晶粒子溶液(ODE溶液)を得た。
<リガンドの合成>
JEFAMINE M−1000(Huntsman社製)をフラスコに投入した後、窒素ガス環境にて攪拌しながら、そこにJEFAMINE M−1000と等モル量の無水コハク酸(Sigma−Aldrich社製)を添加した。フラスコの内温を80℃に昇温し、8時間攪拌することにより、淡い黄色の粘稠な油状物として下記式(1A)で表されるリガンドを得た。
<リガンド交換によるInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子分散体の作製>
上記で得られたリガンド30−50mgを上記で得られた緑色発光ナノ結晶粒子溶液1mlに添加した。次いで、90℃で3〜15時間加熱することによりリガンド交換を行った。エタノール6mlをリガンド交換後のナノ結晶粒子溶液1mlへ添加した。続いて、遠心分離を行いナノ結晶粒子を沈殿させた後、上澄みの傾瀉及び真空下での乾燥によってナノ結晶粒子(上記式(1A)で表されるリガンドで修飾されたInP/ZnSeS/ZnSナノ結晶粒子)を得た。得られたナノ結晶粒子を不揮発分が30質量%となるように1,4−BDDA(1,4−ブタンジオールジアセテート、(株)ダイセル製)に分散させることにより、緑色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体(1,4―BDDA分散体)を得た。また、緑色発光ナノ結晶粒子溶液に代えて赤色発光ナノ結晶粒子溶液を用いたこと以外は、上記と同様にして、赤色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体(1,4―BDDA分散体)を得た。
<光散乱性粒子分散体の調製>
アルゴンガスで満たした容器内で、酸化チタン(商品名:MPT141、石原産業(株)製)2.4gと、高分子分散剤(商品名:DISPERBYK−2164、BYK社製、「DISPERBYK」は登録商標)0.4gと、1,4−BDDAとを混合し、不揮発分44質量%の混合液を調製した。アルゴンガスで満たした容器内の混合液にジルコニアビーズ(直径:1.25mm)を加えた後、アルゴンガスで満たした密閉容器をペイントコンディショナーを用いて2時間振とうさせることで混合液の分散処理を行った。ポリエステルメッシュフィルターにてジルコニアビーズを除去することで光散乱性粒子分散体1を得た。
<エポキシ基含有アクリル系重合体溶液の調製>
[エポキシ基含有アクリル系重合体溶液1の調製]
エポキシ基含有アクリル系重合体であるFINEDIC A−254(DIC(株)製の商品名、エポキシ当量535g/eq)を0.333gと、硬化剤であるPHENOLITE TD−2131(DIC(株)製の商品名)を0.065gと、硬化促進剤であるジメチルベンジルアミン(東京化成工業(株)製)を0.0023gとを、不揮発分50質量%となるように1,4−BDDAに溶解させて、エポキシ基含有アクリル系重合体溶液1を得た。
[エポキシ基含有アクリル系重合体溶液2の調製]
エポキシ基含有アクリル系重合体であるFINEDIC A−254(DIC(株)製、エポキシ当量535g/eq)を0.303gと、硬化剤である1−メチルシクロヘキサン−4,5−ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製)を0.095gと、硬化促進剤であるジメチルベンジルアミン(東京化成工業(株)製)を0.0021gとを、不揮発分50質量%となるように1,4−ブタンジオールジアセテートに溶解させて、エポキシ基含有アクリル系重合体溶液2を得た。
<実施例1>
[インク組成物(インクジェットインク)の調製]
緑色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体を2.40gと、光散乱性粒子分散体1を0.8gと、エポキシ基含有アクリル系重合体溶液1を0.8gとを、アルゴンガスで満たした容器内で均一に混合した後、グローブボックス内で、混合物を孔径5μmのフィルターでろ過した。さらに、アルゴンガスを得られた濾過物を入れた容器内に導入し、容器内をアルゴンガスで飽和させた。次いで、減圧してアルゴンガスを除去することにより、インク組成物を得た。
[インク安定性評価]
E型粘度計(東機産業株式会社製、TV25形)を用いて、調製直後、及び、室温(25℃)にて1ヶ月保管後のインク組成物の粘度を測定した。1ヶ月保管後の粘度値を調製直後の粘度値にて除した値(1ヶ月後粘度/調製直後粘度)に基づき、インク安定性を評価した。インク安定性の評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
A:「1ヶ月後粘度/調製直後粘度」が1.05未満
B:「1ヶ月後粘度/調製直後粘度」が1.05以上、1.15未満
C:「1ヶ月後粘度/調製直後粘度」が1.15以上
[吐出安定性評価]
インク組成物を調製し、1ヶ月保管した後、インクジェットプリンター(富士フイルムDimatix社製、商品名「DMP−2831」)を用いて吐出試験を実施した。吐出試験では、インク組成物を10分間連続で吐出させた。なお、本インクジェットプリンターのインクを吐出するヘッド部には16個のノズルが形成されており、1ノズル当たり、吐出一回あたりのインク組成物の使用量は10pLとした。吐出安定性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:連続吐出可能(16個のノズル中、10ノズル以上で連続吐出可能)
B:連続吐出不可(16個のノズル中、連続吐出可能なノズル数が9ノズル以下)
C:吐出不可
<実施例2>
緑色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体に代えて赤色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、インク安定性評価及び吐出安定性評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
エポキシ基含有アクリル系重合体溶液1に代えてエポキシ基含有アクリル系重合体溶液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてインク組成物を調製し、インク安定性評価及び吐出安定性評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
緑色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体に代えて赤色発光コア/シェル/シェルナノ結晶粒子分散体を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてインク組成物を調製し、インク安定性評価及び吐出安定性評価を行った。結果を表1に示す。