JP2019045545A - バイフォーカルレンズ及びそのバイフォーカルレンズの製造方法 - Google Patents

バイフォーカルレンズ及びそのバイフォーカルレンズの製造方法 Download PDF

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Hitoshi Miura
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Abstract

【課題】像の不連続が生じず、他者から見られたときの装用者の外観も損なわれることのないバイフォーカルレンズ及びそのようなバイフォーカルレンズの製造方法を提供すること。【解決手段】眼鏡装用時に上下方向となる位置に、それぞれ上方領域と、前記上方領域に対して相対的に近用位置を目視するための下方領域とが異なるレンズ度数で設定されているバイフォーカルレンズである眼鏡レンズ1であって、上方領域と下方領域の間には横方向に延びる帯状の境界領域が設けられ、その境界領域は境界領域内において段差なく、かつ全方向のプリズムが連続し、その上下端において上方領域及び下方領域と段差なく接続されているようにした。【選択図】図1

Description

本発明は遠用視するための上方領域と、近用視するための下方領域とが異なるレンズ度数で設定されているバイフォーカルレンズ及びそのバイフォーカルレンズの製造方法に関するものである。
従来から遠視や老視のための眼鏡として近用部に遠用部のレンズ度数に対してプラス度数となるいわゆる小玉と呼称される補助レンズが形成されたバイフォーカルレンズがある。そのようなバイフォーカルレンズの一例として特許文献1を示す。
特開平5−303063号公報
しかし、従来のバイフォーカルレンズは主レンズと補助レンズとの境界線(さかい目)が明瞭であるため、特定の位置(主に小玉の最上部(トップ)位置)をのぞいて、境界線上で像の不連続(プリズムジャンプ)を生じてしまっていた。また、このように境界線が明瞭であると外観的に美観的を損なうことから他者から見られたときの装用者の外観も好ましくないこととなってしまう。
本発明の主目的は、像の不連続が生じず、他者から見られたときの装用者の外観も損なわれることのないバイフォーカルレンズ及びそのようなバイフォーカルレンズの製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の手段として、眼鏡装用時に上下方向となる位置に、それぞれ上方領域と、前記上方領域に対して相対的に近用位置を目視するための下方領域とが異なるレンズ度数で設定されているバイフォーカルレンズであって、前記上方領域と前記下方領域の間には横方向に延びる帯状の境界領域が設けられ、前記境界領域は同境界領域内において段差なく、かつ全方向のプリズムが連続し、その上下端において前記上方領域及び前記下方領域と段差なく接続されているようにした。
これによって、従来のバイフォーカルレンズの欠点である像の不連続を生じることがない。また、他者から見られたときの外観上の美観を損なうこともない。
ここに「レンズ度数」とは、その眼鏡レンズ装用者の眼の屈折力を補正するのに必要な情報であって、例えば、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、プリズム度数、プリズム軸角度、加入度等である。
「上方領域」は近距離を目視するための下方領域に対して相対的に遠距離を目視する領域である。一般にはその眼鏡レンズ装用者が主として中距離〜遠距離を見るために使用する領域である。また、「下方領域」は近距離を目視するために使用する領域である。
「帯状の境界領域」は上方領域と下方領域の間に位置するが、境界領域は同境界領域内において段差なく全方向の曲率が連続し、その上下端において上方領域及び下方領域と段差なく接続されていればよく、例えば、境界領域の設計を上方領域と下方領域の一部を変形させるようにしても、上方領域と下方領域とは別個に行うようにしてもよい。つまり、境界領域の一部、あるいは全部が上方領域や下方領域の一部であってもよく、上方領域や下方領域とは別個に設計して上方領域と下方領域に隣接させるようにしてもよい。
境界領域はその境界領域内において段差なく、かつその上下端において上方領域及び前記下方領域と段差なく接続されていればよい。例えば境界領域の上下端では曲率が不連続となるケースはありうる。また、本発明では境界領域内とその上下端においてプリズムは連続させている。
本発明のバイフォーカルレンズは、まず、SV(シングルヴィジョン)レンズとして表裏面の設計をし、その後そのようなレンズに下方領域の設計を重ね合わせることで加工することがよい。前駆体レンズに対して加工する場合にはSVレンズ→BFレンズの順で加工装置によって切削加工するようにしてもよいし、下方領域の設計も含めてすべての設計を合成して前駆体レンズを加工するようにしてもよい。加工装置としては例えばNC装置、CAD・CAM装置等がよい。これらの装置において加工データを入力してプログラムによってコンピュータを制御することで加工する。加工する前駆体レンズの素材はガラスでもプラスチックでもどちらでもよい。また、それほどの精度が要求されないのであれば、前駆体レンズを直接加工するのではなく、上下型を作ってその型の中のキャビティ内に合成樹脂を充填・成形し、樹脂が固化した後に型から取り出すようにして作製してもよい。
また、上方領域、下方領域はレンズ面の表裏いずれか一方の面を加工することで形成してもよく、上方領域と下方領域を異なる面に形成するようにしてもよい。
また、第2の手段として、前記境界領域内及び同境界領域の上下端において全方向の曲率が連続しているようにした。
第1の手段では境界領域内及び同境界領域の上下端において曲率が不連続となるケースでもよいが、連続する方がレンズの歪みがなくよりよいためである。
また、第3の手段として、前記上方領域と前記下方領域との境界線は前記境界領域内に存在し、上に凸な曲線であるようにした。
これによって境界領域の設計を上方領域と下方領域の設計に対して合成するように設計できるため、本発明のバイフォーカルレンズの作成が容易となる。このケースでは境界領域は上方領域と下方領域の一部でもある。
「境界線」は境界領域内あればよく、境界線の位置を境界領域の上下方向の中央位置以外の位置に配置することも可能である。これは境界領域をどの程度上方領域と下方領域に配分するかということによる。また、本発明では段差がないため、実際には明瞭な「線」は現れない。あくまでも上方領域と下方領域を別々に設計することからその両者の境界ということで計算上はレンズ上に設けられているが、この発明では境界領域内は滑らかであるためそのようなことはない。
また、第4の手段として、前記境界線はフィッティングポイントよりも下方に設定されているようにした。
境界線がフィッティングポイントよりも下方であるということは少なくとも境界領域よりも上方はすべて遠距離を目視する領域となり、遠用視する際に境界領域が支障となることがない。
また、第5の手段として、前記下方領域の内面又は外面にはプリズムが設定され、プリズムの測定位置を前記境界線の最も高い位置よりも3〜7mm下方に設定するようにした。
このようにするのは、1つは境界領域の形状を変形させているので、その付近の光学性能が不安定であることから、プリズムの測定位置をあまり境界線に近くすると、プリズムを正確に測定しにくくなるためである。
また、仮にプリズムの測定位置をかなり上にした場合では、左右レンズで不同視の人の場合には近用領域の下のほうにいくに従って左右レンズに垂直プリズムの差を生じてしまうこととなる。そのような可能性も考慮したものである。
また、第6の手段として、前記境界領域は最も上方位置において最も上下幅が狭いようにした。
バイフォーカルレンズにおいて、単純にベースとなる上方領域に下方領域を形成すると、中央寄りから離間するほど段差が大きくなってしまう。その段差をキャンセルする設計をする場合において、境界領域を上方位置において最も上下幅を狭くし、中央寄りから離間するほど上下幅を広くすることによって段差をキャンセルする際にレンズ形状に無理が生じることがなく、境界領域に歪曲収差が生じにくく、その結果視線が境界領域の左右寄りを通過しても違和感を感じにくくなる。
また、第7の手段として、前記境界領域は中央から左右方向にそれぞれに向かって徐々に上下幅が広くなっているようにした。
手段4の構成とも一部重なる構成であり、バイフォーカルレンズにおいては上方領域と下方領域を中央寄りの位置で段差なく接続すると、中央寄りから離間するほど段差が大きくなってしまうため、中央寄りから離間するほど境界領域の上下幅を広くし、レンズ形状に無理が生じないようにした。
また、第8の手段として、前前記上方領域と前記下方領域においてそれぞれ独立して乱視度数が設定され、前記上方領域と前記下方領域における乱視度数及び乱視軸の少なくとも一方が同じではないようにした。
これによって、例えば遠用視をする場合と近用視をする場合で乱視特性の異なる装用者に好適な乱視特性のバイフォーカルレンズを提供することができる。
ここに、「独立して乱視度数が設定され」とは、そもそも乱視度数が0Dである場合も念頭においているものであって、例えば遠用度数が乱視度数なしで、近用度数に乱視度数を設定するケースや、その逆もありうる。
また、第9の手段として、前記下方領域は前記上方領域のレンズ特性を創出するレンズ表裏面の形状に対して前記下方領域のレンズ特性を創出する面形状をレンズ裏面側に重ねて構成されているようにした。
これによって、表面は球面あるいは非球面あるいは乱視面が一様に形成されることとなり、他者から見られたときの装用者の外観が損なわれることがない。下方領域のレンズ特性を創出する面形状は、切削加工でレンズを作製する場合には、先に上方領域のレンズ特性を創出するレンズ表裏面の形状を加工してから、更に上塗りするように下方領域のレンズ特性を創出する面形状を加工してもよく、当初からすべての加工データを合成して上方領域のレンズ特性を創出するレンズ裏面の形状と下方領域のレンズ特性を創出する面形状を一緒に加工するようにしてもよい。
また、第10の手段として、前記上方領域及び前記下方領域にはそれぞれ独立にプリズムが設定されているようにした。
これによって、例えば遠用視をする場合と近用視をする場合でプリズム特性の異なる装用者に好適なプリズム特性のバイフォーカルレンズを提供することができる。
また、第11の手段として、前記上方領域においては内面と外面の傾きを調整することによりプリズムが設定され、プリズムの測定位置をフィッティングポイント又は同フィッティングポイントの下方5mm以内に設定するようにした。
通常のSVレンズにおいては、フィッティングポイントがプリズムの測定位置とされ、累進屈折力レンズであればフィッティングポイントの下方5mm以内に設定することが多いためそれを踏襲した。
また、第12の手段として、水平プリズム又は垂直プリズムがそれぞれ独立に設定されているようにした。
これによって、水平プリズム又は垂直プリズムを独自に設計して必要に応じてバイフォーカルレンズに反映させることができる。
また、第13の手段として、第7の手段に記載のバイフォーカルレンズにおいて、前記境界領域は加入度の大きな処方ほど左右方向にそれぞれに向かって徐々に上下幅が広くなっていく割合を大きく設計するようにした。
つまり、上部領域に対して近用領域の度数がプラスである(加入度)ことが大きい場合は、小さい場合にくらべてより上下幅を拡げるように設計することがよい。加入度がより強いレンズにおいては、境界領域を変形させる前の段階において上方領域と下方領域の境界の段差がより大きいので、変形させる領域の上下幅をより広くすると境界領域における曲率変化を抑えることができ、歪みユレが極端に大きくなるのを防ぐことができるからである。そして、そうすることにより、加入度が強くなっても境界領域における歪みを抑え、他者から見られたときに境界が目立たなくなる。また、NC加工装置等による加工においても無理が生じない。
本発明によれば、従来のバイフォーカルレンズの欠点である像の不連続を生じることがない。また、他者から見られたときの外観上の美観を損なうこともない。
本発明の実施例1の眼鏡レンズのレイアウトを説明する正面図。 実施例1の眼鏡レンズを加工する際のサグの方向とy軸方向を説明する説明図。 実施例1の眼鏡レンズの裏面の近用トップにおける境界領域周辺の垂直方向の形状を説明する説明図。 実施例1の眼鏡レンズの裏面の近用トップから離間した位置の境界領域周辺の垂直方向の形状を説明する説明図。 実施例2の眼鏡レンズのインセット位置の設定の説明であって(a)は近用視する物体までの距離の算出方法の説明図、(b)は(a)のレンズ付近を平面視した拡大図、(c)は(a)のレンズ付近を側面視した拡大図。 実施例2の眼鏡レンズの裏面の設計において、プリズム量を設定する際のレンズ内面とレンズ外面の角度の関係を説明する説明図。 実施例3の眼鏡レンズの設計において、左右不同視のレンズにおける垂直プリズの違いを説明する説明図。
以下、本発明の眼鏡レンズの実施例について図面に従って説明をする。以下の、眼鏡レンズは、コンピュータを内蔵した加工装置であるNC装置に加工データを入力してプログラムによってコンピュータを制御することで前駆体レンズとしてのセミフィニッシュトブランクを切削加工したものである。
(実施例1)
<レンズの具体的な数値>
図1は本発明の実施例1であるバイフォーカルレンズの眼鏡レンズ1のレイアウトを説明する正面図である。眼鏡レンズ1はフレーム入れ加工をする前のいわゆる丸レンズと称される円形の外形の状態であり、メーカーあるいは眼鏡店でユーザーの要望に応じたフレーム形状にカットされる。実施例1の眼鏡レンズ1の具体的なデータの一例は以下の通りである。尚、実施例1ではプリズムは設定されていない。
・遠用度数 S−4.00D C−1.00D AX180
・近用度数 S−2.00D C−1.00D AX180
(遠用と近用の乱視度数は同じ)
・加入度 2.00D
・中心厚 CT=1.5(mm)
・基材屈折率 n =1.600
・表カーブ 2.00カーブ(基材屈折率換算)
・外面の曲率半径 r0=1000・(n−1)/2=300(mm)
・外面の曲率 Co=1/r0=0.00333(mm−1
・回転角 θ =θn=0(rad)
・内面遠用の主曲率 Cx =(2−(−4))/(1000・(n−1))=0.01000(mm−1
Cy =(2−(−5))/(1000・(n−1))=0.01167(mm−1
・内面近用の主曲率 Cxn=(2−(−2))/(1000・(n−1))=0.00667(mm−1
Cyn=(2−(−3))/(1000・(n−1))=0.00833(mm−1
・遠用のプリズム指定なし(水平・垂直とも0プリズム)
・プリズム効果を反映する係数 Px=Py=Pxn=Pyn=0
・R眼用でx軸の鼻側が正 Tx=1.5(mm)、Ty=−3.0(mm)
・上端曲線の式 y=−(4/202)(X−Tx)2+Ty+1
・下端曲線の式 y=−(6/202)(X−Tx)2+Ty−1
・アイポイントと幾何中心の垂直方向の間隔 2.0mm
・近用トップからアイポイントまでの垂直方向の間隔 5.0mm
・近用トップと幾何中心(及びアイポイント)の水平方向の間隔 1.5mm
・近用トップから耳側の水平方向20mm地点における垂線の上端曲線までの距離 3.0mm
・近用トップから耳側の水平方向20mm地点における垂線の上端曲線から下端曲線までの距離 5.0mm
<加工方法>
以下のような計算式に基づいて加工データを算出して上記のような眼鏡レンズ1を加工する。以下では、主として本発明にかかるバイフォーカルレンズの設計方法に特化して説明しており、S度数、C度数、加入度、プリズム等の装用者固有のレンズ度数に関するデータは装用者に応じて設定される。この実施例1の近用トップにおいて、上方領域と下方領域を滑らかにかつねじれなく接合する加工方法を標準方式として、以下の実施例4でも標準方式として踏襲する。
基本的に外面(凸面)を球面として、内面(凹面)は乱視度数がない場合は球面、乱視度数がある場合はトーリック面とする。本実施例1は乱視度数があるのでトーリック面を採用する。また、本発明はバイフォーカルレンズであり、遠用部と近用部では異なるレンズ度数が設定される。近用部はトーリック面を切削するサグ量に近用部独自のサグ量を合成して設計される。
また、眼鏡レンズ1を加工する際には、図2のようにレンズ外面の幾何中心を通り、外面に垂直な方向にサグを与えるようにする。レンズから眼球方向に向かってサグのプラス方向とする。サグの方向は、レンズを装用する際の傾きは考慮しない。そのためレンズを前傾させて装用する場合はサグの方向は水平にはならない(多くの場合、眼鏡レンズは装用時に約10度前傾させる)。サグのプラス方向はレンズから眼球方向に向かって
レンズ内面の幾何中心を座標原点とする。原点を通りサグの方向を法線とする平面を考え、その平面内で重力方向に対して水平な方向をx軸、x軸に対して垂直な方向y軸とする。y軸は上向きを正方向とする。x軸の正方向は、R眼の鼻側方向とする。
1)レンズ外面について
上記のように、水平方向の座標をx、垂直方向の座標をyとし、外面の曲率をCo=1/r0、レンズの中心厚をCTとしてレンズ外面のサグ量は数1で表わされる。
2)レンズ内面について
レンズ内面側にトーリック面を形成するために、内面主曲率を、Cx=1/r1、Cy=1/r2として表す。主曲率とは主曲率半径の逆数である。これら主曲率の値は、指定された遠用度数、外面の曲率、レンズ基材の屈折率、レンズの中心厚より決定される。但し、本実施例1では以下の数2でSf(x,y)として算出しており、数2では近似計算式であるためレンズの中心厚はパラメータとしていない。数2は一例でありより厳密な計算をする場合に中心厚をパラメータとするようにしてもよい。
数2では乱視軸の角度θに応じてx'、y'を算出する。例えば乱視軸が180度や90度であれば内面サグを表す式Sf(x,y)の計算は容易であるが、そうではない場合、つまり斜めである場合はその角度θに応じてx'、y'の変換式を用いて算出し、式Sf(x,y)に変換後のx'、y'座標を代入する。
数2の式はトーリック面を示す公知の式であり、先行文献として例えば特開2001−261846や特許第3852116号等に開示されている。
内面サグの座標原点において、Sf(0,0)=0となる。内面サグの座標原点とは、レンズ外面の幾何中心(プリズムを測定する点)において、外面から垂直にレンズの中心厚ぶんだけ内面側の位置にある。この実施例では遠用プリズムの指定値が水平・垂直とも0プリズムであり、原点において内面と外面は平行である。遠用プリズムの指定がある場合は、Sfの式にPx・x+Py・yという一次の項を加える。ここで、Px・Pyは水平プリズムおよび垂直プリズムの指定値とレンズ基材の屈折率によって定まる係数である。遠用プリズムの指定がある場合は、内面サグの座標原点において内面が傾きを持つ。そのため、レンズの中心厚は外面の幾何中心から垂直な方向として定義した。尚、実施例1ではプリズムはないため、Px・x+Py・yの項は用いない。後述する実施例2及び3ではプリズムが設定されるためPx・x+Py・yを用いて計算される。Px・x+Py・yは乱視軸の方向に影響されない要素となる。
3)レンズ内面の近用部について
近用領域は、近用トップ位置を上向き頂点とする放物線より下方の領域である。これより上方が遠用領域とされ下方が近用領域とされる。近用トップ位置とは遠用領域と近用領域との境界線において上凸となる境界線のx−y座標における最も高くなる位置をいう。ここに、近用領域の内面サグを表す式を、Sn(x,y)とする。そして、近用トップ位置を、(Tx,Ty)とする。Sn(x,y)の式では近用トップ位置において、遠用領域と近用領域の境界線は滑らかに接続される(近用トップ位置以外の境界線上は必ずしもそうではない。それは数5以下の式を合成することで実現される)。ここで滑らかに接続することの具体的な条件は、すべての方向において断面の線が折れ曲がっていないことである。そのためには、Sf(x,y)とSn(x,y)が、点(Tx,Ty)において傾きを共有することである。その条件は、次式で表わされる。
∂Sf/∂x|Tx,Ty=∂Sn/∂x|Tx,Ty
∂Sf/∂y|Tx,Ty=∂Sn/∂y|Tx,Ty
ここで、|Tx,Tyという記号は、点(Tx,Ty)における偏微分の値であることを表す。偏微分の値を算出する際は、上記の数1と数2をx、yで偏微分した結果にx=Tx、y=Tyを代入してコンピュータによって算出することがよい。また、Δxを微小な値として次式によりコンピュータで近似的に計算してもよい。
∂Sf/∂x|Tx,Ty=(Sf(Tx+Δx,Ty)−Sf(Tx−Δx,Ty))/(2・Δx)
これらの条件を満たすためには、Snを上記したSfと同じ形式で表わすことはできない。敢えてそのような式を作成しても、近用トップ位置での値が異なり、形状に段差を生じる。たとえ段差の分だけ補正しても、水平方向と垂直方向の傾きの違いがあるため、滑らかに接続しなくなる。従って、Sn(x,y)の式としては段差と水平傾きと垂直傾きの違いを補正する式を作成することがよい。これらの条件を満たすため、近用領域の内面サグを数3で表わす。数3の式中のSnpは数4のように表される。
数4のSnpは、Sfと同じ形式で表わした曲面であり、回転角θn、主曲率Cxn、Cynは、指定された近用の度数と乱視軸から決定する値である。ここでは遠近独立のプリズム指定を考慮していないので、Pxn、Pynの値はPx、Pyと共通である。従って、Snp(x−Tx,y−Ty)とSf(x−Tx,y−Ty)でプリズムを表す項は相殺され、Sn(x,y)とSf(x,y)でプリズムを表す項は共通となる。
Sf(x−Tx,y−Ty)は、近用トップ位置において原点の遠用領域内面サグの値=0である。
Snp(x−Tx,y−Ty)は、近用トップ位置においてSnp(0,0)=0である。
Snp(x−Tx,y−Ty)とSf(x−Tx,y−Ty)の差をxで偏微分してもyで偏微分してもその値は点(Tx,Ty)において0となる。その理由は、それぞれの一次の項は相殺され、残った項はそれぞれ極小値をとるためである。
4)レンズ内面の境界領域の形状
上記のように数3の式でサグを設計することで、近用トップの1点を滑らかにすることは可能だが、遠用領域と近用領域の境界線上のその他の点では段差を生じる。そこで、境界領域に幅を持たせ、上下方向に離れた曲線(放物線)を設定し、上端曲線と下端曲線のそれぞれにおいて、各点で垂直方向の接続を滑らかとし、さらに上端曲線上のある点からその真下の下端曲線上の点に至るまでの曲線を滑らかな形状にする。滑らかとは段差がなく、傾きが不連続にならないことである。全境界領域内及び上端曲線上と下端曲線上を共通な形式で垂直方向を滑らかにすれば、水平方向も自動的に滑らかになる。
図3に示すように、近用トップを含む断面においては、遠用形状Sfと近用形状Sfをあえて変位させなくても、レンズ内面に段差と折れ曲がりは生じない。ただしカーブ(縦方向の断面曲率)は、近用トップ位置において、遠用の値から近用の値に不連続に変化する。
一方、近用トップから左右方向に離れた位置での断面においては、遠用形状と近用形状に段差を生じてしまう。その段差を解消し、かつ境界上端と境界下端で段差と折れ曲がりを生じないようにするため、境界領域の形状を下記に説明するようにSf+Saで定めるようにする。そのため、近用トップを含む断面においても断面形状を「上側Sf、下側Snの接合」から「Sf+Sa」に置き換える必要がある。「Sf+Sa」に置き換える処理を施すことによって、縦方向の断面曲率が不連続に変化する位置は、境界領域の上下端になる。そして、下記のような数5と数6の式を用いることで、近用トップ位置に限らず境界領域の上下端で縦方向の断面曲率が不連続に変化することがわかる。
このような点から図4の様に境界領域周辺をレイアウトすることができる。但し、近用トップを含む断面において2つの形状の差は非常に小さいので、近用トップについては「Sf+Sa」を表す断面は図示を省略する。
図3に示すように、境界領域においては、x座標がTxである垂直断面は滑らかな曲線になる。
一方、図4で示しているのは、x座標の値がx≠Txにおける垂直断面である。遠用領域の断面曲線はSf(x,y)、近用領域の断面曲線はSn(x,y)として、それぞれyの関数である。ここで、上端曲線上の点(x,y)から下端曲線上の点(x,y)にかけてSf(x,y)にサグを付加するy方向の3次関数Sa(p)を考える。pの向きは、下方に向かって正にとる。
pは上端曲線上の点(x,y)においてp=0とする。すなわちp=y−yとする。
Sa(0)=0とする。
dSa(p)/dp|0=0とする。p=0における微分値が0である。
pは下端曲線上の点(x,y)において、p=y−yとする。
Sa(y−y)=Sn(x,y)−Sf(x,y) ・・・(条件1)
dSa(p)/dp|y−y=∂Sn/∂y|y−∂Sf/∂y|y ・・・(条件2)
以上の条件から、Sa(p)に定数項と1次の項は必要なく、下記の数5の式で表わすことができる。これを1階微分した式を合わせて示す
条件1と条件2より、a、bの値を求め、Sa(p)を決定することができる。x=xの垂直断面においては、この関数を付加して、下記の数6の式により内面形状を表すことができる。境界線より下方は下方領域であるが、それでもSnの式を含まないことに注意せよ。すなわち、境界領域内部ではSfにSaを付加した式で内面形状を表し、その関数が下端曲線上でSnに滑らかに接続する。
このようにしてレンズ内面の境界領域のレンズ形状を滑らかに接続すると、形状に段差を生じないため、従来のBFレンズにおいて外観上の美観を損なう「さかい目」が目立たない。また、境界線上における面の傾きが連続的に変化するのでため、プリズムのジャンプがない。従って、従来のBFレンズの欠点である「像の不連続」を生じない。
次に、数5における次数を大きくすることで境界領域内だけでなくその上下端も含めて、縦方向の断面曲率が連続に変化する条件について説明する。
pは上端曲線上の点(x,y)においてp=0とする。すなわちp=y−yとする。
Sa(0)=0とする。
dSa(p)/dp|0=0とする。p=0における微分値が0である。
Sa(p)/dp|0=0とする。p=0における2階微分値が0である。
pは下端曲線上の点(x,y)において、p=y−yとする。
Sa(y−y)=Sn(x,y)−Sf(x,y
dSa(p)/dp|y−y=∂Sn/∂y|y−∂Sf/∂y|y
Sa(p)/dp|y−y=∂Sn/∂y|y−∂Sf/∂y|y
以上の上端曲線と下端曲線上の3つの条件を(条件3)(条件4)(条件5)とする。
これらの条件から、Sa(p)に2次以下の項は必要ないことがわかり、下記数7の式で表わすことができる。これを1階微分した式と2階微分した式を合わせて示す。(条件3)〜(条件5)より、a、bの値を求め、、Sa(p)を決定することができる。」
上記では、レンズ内面の境界領域の形状において境界線上を滑らかにするためのSa(数5の式)を表すために3次関数を用いる例を示したが、それでは上端曲線上において縦方向の断面カーブは連続となるが、下端曲線上でカーブが不連続となる。それはSaのpによる2階微分値が、Sn−Sfのyによる2階微分値と一致するとは限らないためである。しかしもともと近用領域トップにおいては、カーブが不連続なので、それでよい。
ここで、Saを表すために3次よりも高次の関数を用いれば、境界領域におけるカーブ値をより滑らかに接続することができる。例えば、5次関数を用いれば、垂直断面カーブを滑らかに連続変化させることができる。
(実施例2)
実施例2では近用領域に水平プリズムを有するレンズ設計の眼鏡レンズとした。実施例1ではプリズム効果を反映する係数としてPx=Py=Pxn=Pyn=0であった。つまり、実施例1のレンズではレンズ全体としてはプリズム設定していない。しかし、レンズにはプリズム効果があるため、斜め方向への視線は必ずずれが生じるものである。実施例2では装用者が近用視をして輻輳する位置、つまりインセット位置における近用視線においてプリズム効果によるずれが生じないように、水平プリズムを0にするようにした設計である。レンズ内面の近用領域にのみこのようなプリズムを与える設計とした。実施例2では実施例1を踏襲してレンズ度数やカーブ等の基本的設計を同一とした。但し、実施例1の標準方式に対して遠用領域と近用領域が接合する近用トップの位置において垂直方向は滑らかであるがねじれを生じさせた設計としている。
1)水平プリズム効果が0となる位置の設定
実施例2では、レンズの度数によらずインセット位置において水平プリズム効果が0になるようにする。そのためには、装用者がまっすぐ近用物体を見る視線が通過する位置をもとにインセットを定めればよい。それは、例えば以下のような条件によって定まる。数値は条件を説明するための典型的な例であり、装用者によって数値は異なる。
・眼回旋中心から角膜頂点までの距離 13mm
・遠用PD(輻輳が無い状態でまっすぐ前を見るときの左右頂点間距離) 62mm
・頂点間距離(角膜頂点からレンズまでの距離) 12mm
・近用距離(角膜頂点から近用物体までの直線距離) 400mm
・近用視線の通過高さ 幾何中心の7mm下(フィッティングポイントの9mm下)
近用視線の通過高さは、この例では近用プリズムを測定する位置で、近用トップ位置よりも3〜7mm下方の位置として、商品規格により決定する。垂直方向の「通過高さ」と「インセットの水平座標」は、レンズに厚さがあることを考慮すると、外面と内面で異なる値となる。また、光線がレンズの面に対して垂直に透過しないため、眼回旋中心から近用物体をまっすぐに結んだ線と光線は異なる。それらの誤差を無視して近似的に計算しても良いし、正確な光線通過位置をもとに内面の光線通過点において内面形状を調整することによって近用プリズムを設定することもできる。ここでは近似的な計算による例を示す。但し、近用中心の座標は、レンズ内面を光線通過点とする。
近似計算に基づき、近用プリズムを設定する点を(x,y)とする。商品規格により、y=Ty−4(mm)であるとする。
一方、xの値は計算によって定まる。図5(a)のように、まず近用視した際の物体までの輻輳した状態での全長を求める。そして、図5(b)のように全長を斜辺m遠用PDの1/2を短辺とする直角三角形と相似の三角形に基づいて近似計算でxの値を求める(約2.0(mm))。
2)プリズム量の設定
(x,y)で水平プリズム効果が0になるように近用領域すべてにプリズムを与える。
プリズム量は1m(100cm)あたり光線が何cm横にズレるかによって定義される。実施例2においてレンズ外面と内面が成す角度をθとすると、図6に示すようなレンズ外面と内面の関係でθとθ'は表される。このとき、
水平プリズム量=tan(θ'−θ)×0.01
スネルの法則により、sinθ'=sinθ・n
tanθ=(∂Sn/∂x|x,y)−(∂So/∂x|x,y
となる。
従って、近用プリズムを設定する点において、近用領域の内面を外面に対して水平断面内で平行にすればよい。そのためには、近用トップ位置(Tx,Ty)のX座標x=Tx以外の点においてサグを付加して、光線通過点における水平プリズムをキャンセルする。具体的には、上記の数4の式におけるSnpを次式数8で表わす。
ここで数8において、α=0とすると、光線通過点における水平プリズムをキャンセルすることとなる。近用水平プリズムの値として0以外が指定された場合は、指定された水平プリズムが得られるように、基材屈折率nに基づいてαの値を適当に設定して内面サグSnpを補正すればよい。
tanθの値は、上記数3の式をxで偏微分した∂Sn/∂xの式と、数1の式をxで偏微分した∂So/∂xの式に、それぞれx=x、y=yを代入すれば得られる。また、実施例1にて説明した様に、Δxを微小量として、Snの式にx=x1+Δxを代入した値とx=x−Δxを代入した値の差を2・Δxで割ることにより得られる。尚、近用水平プリズムの値として0以外が指定された場合の例や、その際のαの値も同様である。
3)レンズ内面の境界領域の形状
プリズムを設定したことによって、近用トップ位置(Tx,Ty)において、
∂Sf/∂x|Tx,Ty=∂Sn/∂x|Tx,Ty の条件は維持されなくなっている。
しかし、∂Sf/∂y|Tx,Ty=∂Sn/∂y|Tx,Ty の条件は維持されている。
近用トップ位置においてレンズ内面に段差は生じておらず、かつ垂直方向の接続は滑らかであるが、水平方向には「ねじれ」を生じており、境界線上でx=Txからわずかでも離れた位置には段差を生じる。実施例1において、xがTxから離れるにつれて、段差はxの2次関数として生じた。この実施例2では、段差はxの1次関数として生じる点が異なる。それでも、実施例1の、『4)レンズ内面の境界領域の形状』の工程に倣って、この段差を解消して、境界領域の上下端と境界領域内のいたるところにおいて、段差と折れ曲がりの無い滑らかな形状とすることができる。
(実施例3)
実施例3では近用プリズム測定位置における垂直プリズムを左右レンズで合わせるようにしたレンズ設計の眼鏡レンズとした。実施例3では例えば図7に示すような、左右で度数が異なる不同視のレンズの垂直プリズムを調整した眼鏡レンズである。図7では右方のレンズのマイナス度数が強いため垂直方向のプリズムが大きくなっている。そのため、特に調整をしなければ近用視した際に左右で垂直プリズムは異なる。実施例3では実施例1と実施例2の方式により自然に決定する左右のレンズの垂直プリズムの中間の値を垂直プリズムとした。つまり、遠用領域とは別個に近用領域のプリズムを設定する。実施例3では実施例1を踏襲してレンズ度数やカーブ等の基本的設計を同一とした。但し、実施例1の標準方式に対して遠用領域と近用領域が接合する近用トップの位置において垂直方向は滑らかであるが垂直方向に折れ曲がりを生じさせた設計としている。
1)垂直プリズム量の設定
垂直プリズム量は次式にもとづいて算出できる。実施例3ではθとθ'は垂直断面内の角とする。
垂直プリズム量=tan(θ'−θ)×0.01
スネルの法則により、sinθ'=sinθ・n
tanθ=(∂Sn/∂y|x,y)−(∂So/∂y|x,y
近用プリズムを設定する点(x,y)において、RレンズとLレンズそれぞれの垂直プリズム量を求め、両者の値の平均値になる様に内面形状を補正する。具体的には、上記数4の式におけるSnpを次式数9で表わす。
数9(数4)の式はプリズム指定が無い条件なので、数4におけるPxn・xとPyn・yの項は記載しない。ここでβは、内面形状を補正する前の状態におけるRレンズとLレンズの垂直プリズム量の差から決定される係数である。符号を±としたのは、片眼で+とし、もう片眼で−とするため。βにかけるyにダッシュはつかないので注意せよ。次式の値をRレンズとLレンズにおいて算出し、その差を2で割ればβの値を得られる。
(∂Sn/∂y|x,y)−(∂So/∂y|x,y
近用垂直プリズムの値が指定された場合は水平プリズムと同様で、指定された垂直プリズムが得られるように、基材屈折率nにもとづいてβの値を調整し、内面サグSnpを補正すればよい。
2)レンズ内面の境界領域の形状
上記のような内面形状の補正の結果、近用トップ位置(Tx,Ty)において、
∂Sf/∂x|Tx,Ty=∂Sn/∂x|Tx,Ty と、
∂Sf/∂y|Tx,Ty=∂Sn/∂y|Tx,Ty の条件は維持されなくなっている。
近用トップ位置においてレンズ内面に段差は生じないが、垂直方向の接続で折れ曲がりを生じ、水平方向には「ねじれ」を生じる。それでも実施例1と同様の方法により、この段差を解消することができる。従って、上方領域から下方領域にかけてプリズム値の不連続(イメージジャンプ)は生じない。
(実施例4)
実施例4は遠用と近用の乱視度数又は乱視軸が異なる例である。
実施例1と同様に、標準方式で設計した。遠用度数の乱視度数及び乱視軸については実施例1と同様に数1の式と数2の式でサグが設定される。実施例4では数3の近用領域を決定する式における数4のSnpを表す式において近用の乱視度数と軸に関して遠用と独立にCxn、Cyn、θnを設定するようにした。そのため、近用領域は遠用領域と異なる乱視度数と軸を有する。
遠近独立のプリズム指定を考慮しない場合はPxn、Pynの値はPx、Pyと共通であるが、近用プリズムを調整する場合はPxn、Pynの値を変化させることによって、近用プリズムを設定する点(x,y)における水平プリズムと垂直プリズムを任意の値に設定することができる。境界領域の形状を滑らかにすることも、上記実施例1〜3と同様である。
<レンズの具体的な数値>
実施例4の眼鏡レンズの具体的なデータの一例は以下の通りである。
遠用度数 S−4.00D C−1.00D AX180
近用度数 S−2.00D C−2.00D AX 45
加入度 1.50D (遠用と近用の平均度数の差)
中心厚 CT=1.5(mm)
基材屈折率 n =1.600
表カーブ 2.00カーブ(基材屈折率換算)
外面の曲率 Co=2/(1000・(n−1))=0.00333(mm−1
遠用回転角 θ =0(rad)
近用回転角 θn=−45/180・π=−0.7854(rad)
内面遠用の主曲率 Cx =(2−(−4))/(1000・(n−1))=0.01000(mm−1
Cy =(2−(−5))/(1000・(n−1))=0.01167(mm−1
内面近用の主曲率 Cxn=(2−(−2))/(1000・(n−1))=0.00667(mm−1
Cyn=(2−(−4))/(1000・(n−1))=0.01000(mm−1
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態の根がらみ用の支柱部材1の形態は一例であって、他の態様で実施することも自由である。例えば、次の通りである。
・実施例2で水平プリズムを、実施例3で垂直プリズムを調整する方法をそれぞれ示したが、水平プリズムと垂直プリズムを同時に調整することもできる。そのためには、レンズ内面形状の水平方向の傾きと垂直方向の傾きを同時に調整すればよい。
・近用トップにおける上下幅は一定として、その両側に離れるに従って上下幅を広げる割合を強度加入であるほど大きくするよう設計する。つまり、上部領域に対して近用領域の度数がプラスである(加入度)ことが大きい場合は、小さい場合にくらべてより上下幅を拡げるように設計することがよい。例えば、加入度が弱いものとして0.25〜0.5D程度を想定しており、加入度が強いものとして3.5〜4.0D程度が想定できる。加入度がより強いレンズにおいては、境界領域を変形させる前の段階において上方領域と下方領域の境界の段差がより大きいので、変形させる領域の上下幅をより広くすると境界領域における曲率変化を抑えることができ、歪みユレが極端に大きくなるのを防ぐことができる。そして、そうすることにより、加入度が強くなっても境界領域における歪みを抑え、他者から見られたときに境界が目立たなくなる。また、NC加工装置による加工においても無理がない。
・上記実施例では球面レンズを一例として挙げたが、ある領域(少なくとも一つの領域の意)の内面又は外面が非球面成分を含むような設計でもよい。つまり、非球面レンズであってもよい。その場合、上記の数1,数2、数4の式には、非球面成分のサグを表す項を付加するようにする。
・上方の領域は遠用視のための度数とすることに限らず、たとえば上方領域2m程度で下方領域40cm程度をカバーする室内用中近レンズや、上方領域50cm程度で下方領域30cm程度での近々レンズであってもよい。
・上方領域と下方領域のどちらか、あるいは両方の視距離をレンズ注文情報に含めても良い。
・上記実施例2では近用中心の水平プリズム効果を完全に0にするような設定であったが、それでは違和感を生じる場合は、調整量を半分にするなど、適宜加減してもよい。
・上記実施例3では近用中心の垂直プリズムを左右で完全に一致させるような設定であったが、それでは違和感を生じる場合には適宜一致させないように加減してもよい。例えば、通常のBFレンズ(境界における垂直プリズムが上下で連続した値となる)として製造した場合に比べて、左右の差を半分にしても良い。
・上記実施例では、レンズ外面の幾何中心に接する面は、常に装用者の顔面に対して平行(ただし垂直方向には前傾角のぶん傾いている)であるとして、水平方向のそり角を想定しなかった。そり角を想定して本発明を実施することもできる。
1…バイフォーカルレンズである眼鏡レンズ。

Claims (13)

  1. 眼鏡装用時に上下方向となる位置に、それぞれ上方領域と、前記上方領域に対して相対的に近距離を目視するための下方領域とが異なるレンズ度数で設定されているバイフォーカルレンズであって、
    前記上方領域と前記下方領域の間には横方向に延びる帯状の境界領域が設けられ、
    前記境界領域は同境界領域内において段差なく、かつ全方向のプリズムが連続し、その上下端において前記上方領域及び前記下方領域と段差なく接続されていることを特徴とするバイフォーカルレンズ。
  2. 前記境界領域内及び同境界領域の上下端において全方向の曲率が連続していることを特徴とする請求項1に記載のバイフォーカルレンズ。
  3. 前記上方領域と前記下方領域との境界線は前記境界領域内に存在し、上に凸な曲線であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイフォーカルレンズ。
  4. 前記境界線はフィッティングポイントよりも下方に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  5. 前記下方領域の内面又は外面にはプリズムが設定され、プリズムの測定位置を前記境界線の最も高い位置よりも3〜7mm下方に設定するようにしたことを特徴とする請求項3又は4に記載のバイフォーカルレンズ。
  6. 前記境界領域は最も上方位置において最も上下幅が狭いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  7. 前記境界領域は中央から左右方向にそれぞれに向かって徐々に上下幅が広くなっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  8. 前記上方領域と前記下方領域においてそれぞれ独立して乱視度数が設定され、前記上方領域と前記下方領域における乱視度数及び乱視軸の少なくとも一方が同じではないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  9. 前記下方領域は前記上方領域のレンズ特性を創出するレンズ表裏面の形状に対して前記下方領域のレンズ特性を創出する面形状をレンズ裏面側に重ねて構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  10. 前記上方領域及び前記下方領域にはそれぞれ独立にプリズムが設定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  11. 前記上方領域においては内面と外面の傾きを調整することによりプリズムが設定され、プリズムの測定位置をフィッティングポイント又は同フィッティングポイントの下方5mm以内に設定するようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバイフォーカルレンズ。
  12. 水平プリズム又は垂直プリズムがそれぞれ独立に設定されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のバイフォーカルレンズ。
  13. 請求項7に記載のバイフォーカルレンズにおいて、前記境界領域は加入度の大きな処方ほど左右方向にそれぞれに向かって徐々に上下幅が広くなっていく割合を大きく設計するようにしたことを特徴とするバイフォーカルレンズの製造方法。
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