JP2019044083A - 樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体及び多層構造体 - Google Patents
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Description
相対湿度(%):11、22、33、44、55、66、76、86、90、100
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)を主成分として含有するものであって、EVOH(A)のエチレン単位含有量が20〜55モル%であり、けん化度が90モル%以上であり、下記の各相対湿度で調湿された、前記樹脂組成物からなる厚み60μmの単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線から、相対湿度0%で調湿された、前記単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線を差し引いた差分スペクトルに対し、二次元相関分光法を用いて得られる異時相関スペクトルにおいて、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合を正とした場合に、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとるxの値が5.2THz以上6.0THz未満であるものである。
相対湿度(%):11、22、33、44、55、66、76、86、90、100
テラヘルツ領域は遠赤外域とも呼ばれる電磁波の領域であり、赤外域と同様に物質固有の振動スペクトルが観測される。赤外スペクトルでは、分子中の官能基による振動モードが観測される。一方、テラヘルツ光の周波数およびエネルギーは赤外域に比べて低いため、比較的質量が大きいものの間の弱い相互作用による振動、すなわち分子間相互作用による分子集団の振動モードが観測される。有機物固体のテラヘルツスペクトルにおいて観測される振動モードは、分子集団や結晶の構造、高分子の高次構造などを反映する。したがって、テラヘルツ分光測定やテラヘルツイメージングによれば、高分子の高次構造の変化や高分子の空間分布を可視化することが可能である。
(1)エチレン−ビニルエステル共重合体を製造する際に用いられる重合開始剤として、アルコキシル基を含有するものを使用すること
(2)エチレン−ビニルエステル共重合体を製造する際の重合温度を比較的高く設定すること
(3)樹脂組成物中の不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量を適当な範囲に調整すること
(4)EVOH(A)のけん化度を高くすること
(5)樹脂組成物中のアルカリ金属塩の含有量を適当な範囲に調整すること
(6)樹脂組成物中のカルボン酸及びカルボン酸イオンの含有量を適当な範囲に調整すること
(7)樹脂組成物中の滑剤の含有量を適当な範囲に調整すること
等を挙げることができる。本発明の樹脂組成物を製造するに際して、これらの手段のうち、一つを採用してもよいし、複数を採用してもよい。
EVOH(A)は、エチレン単位及びビニルアルコール単位を有する共重合体である。
プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;
3,4−ジアセトキシ−1−ブテンなどの1,2−ジエステル基を有する不飽和単量体;
2−メチレン−1,3−プロパンジオールジアセテート(1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン)、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジプロピオネート、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジブチレートなどの1,3−ジエステル基を有する不飽和単量体;
アクリル酸及びその塩;
アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;
メタクリル酸及びその塩;
メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;
アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);
メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;
酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;
マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;
ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;
酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。EVOH(A)中のエチレン単位及びビニルアルコール単位以外の単量体単位の含有量は、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
EVOH(A)がアルコキシル基を0.0005〜1モル%含有することが好ましい。これにより、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値を上記範囲に調整し易くなる。アルコキシル基の含有量は、より好ましくは0.0007モル%以上、さらに好ましくは0.001モル%以上である。一方、アルコキシル基の含有率が1モル%を超える場合、耐ドローダウン性、層間接着性及びガスバリア性が悪化する傾向にある。アルコキシル基の含有率は、より好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.3モル%以下である。本発明において、EVOH(A)のアルコキシル基の含有量は、全単量体単位に対するアルコキシル基を有する単位の割合を意味する。
前記樹脂組成物が不飽和脂肪族アルデヒド(B)を0.05ppm以上90ppm以下含有することが好ましい。不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量が0.05ppm未満であると、高温プロセスにおいてボイド等の欠点が発生しやすくなるおそれがある。不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量は、0.1ppm以上がより好ましく、0.2ppm以上がさらに好ましい。一方、不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量が90ppmを超えると、溶融成形時に不飽和アルデヒド(B)が縮合するおそれやEVOH(A)と不飽和脂肪族アルデヒド(B)の縮合物とが反応して架橋が生じるおそれがある。その結果、樹脂組成物が増粘又はゲル化することにより、ゲルやブツが発生したり、ストリーク等の欠陥が発生したりするおそれがある。ここで、前記樹脂組成物中の不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量とは、当該樹脂組成物の全固形分質量に対する割合で表される。具体的には、水分を除外した当該樹脂組成物に含有される不飽和脂肪族アルデヒド(B)を定量して得られた値とする。
前記樹脂組成物が、さらにアルカリ金属イオン(C)を含むことが好適である。前記樹脂組成物がアルカリ金属イオンを含有することによって、他の樹脂に対する接着性が良好になる。特に、前記樹脂組成物からなる層とEVOH(A)以外の熱可塑性樹脂からなる層を有する多層構造体における、層間接着性が向上する。
前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したEVOH(A)、不飽和脂肪族アルデヒド(B)、アルカリ金属イオン(C)及び他の熱可塑性樹脂以外の添加剤を含有していてもよい。このような他の添加剤としては、可塑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、充填剤、酸素吸収剤、各種繊維等を挙げることができる。前記樹脂組成物における、他の添加剤の含有量は、10質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満がさらに好ましい。
カルボン酸:シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、乳酸等
リン化合物:リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等
ホウ素化合物:ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素等
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。EVOH(A)とその他の成分とを、公知の方法により混合することにより前記樹脂組成物を得ることができる。また、その他の成分が溶解した水溶液にEVOH(A)を浸漬して、EVOH(A)にその他の成分を含有させることにより、前記樹脂組成物を得ることもできる。
こうして得られた樹脂組成物を含有する成形体が本発明の好適な実施態様である。当該成形体は、前記樹脂組成物のみからなるものであってもよいし、前記樹脂組成物からなる部分と前記樹脂組成物以外のものからなる部分とを有するものであってもよい。
(1)前記樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法
(2)前記樹脂組成物からなる成形体上に他の熱可塑性樹脂を溶融押出する方法
(3)他の熱可塑性樹脂からなる成形体上に前記樹脂組成物を溶融押出する方法
(4)前記樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共射出する方法
(5)前記樹脂組成物からなる成形体と他の熱可塑性樹脂からなる成形体とを接着性樹脂を用いて積層させる方法
(1)多層構造体(シート、フィルム等)を一軸又は二軸方向に延伸するとともに、熱処理することにより得られる多層延伸シート又は多層延伸フィルム
(2)多層構造体(シート、フィルム等)を圧延することにより得られる多層圧延シート又は多層圧延フィルム
(3)多層構造体(シート、フィルム等)を熱成形(真空成形、圧空成形、真空圧空成形等)することにより得られる多層トレー又は多層カップ状容器
(4)多層構造体(パイプ等)をストレッチブロー成形することにより得られる多層ボトル、多層カップ状容器等
(1)EVOHの合成
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、酢酸ビニルを100kg、メタノール(以下、MeOHと称する)を3kg仕込み、30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽内の温度を75℃に調整した後、反応槽圧力(エチレン圧力)が5.0MPaとなるようにエチレンを導入し、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製「V−70」)を0.5g/Lのメタノール溶液として0.5L/Hrで供給し、重合を行った。重合中は温度を75℃に維持し、5時間後に冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、ラシヒリングを充填した塔の上部から得られた共重合体溶液を連続的に供給し、塔下部よりメタノールを吹き込み塔頂部よりメタノールと未反応酢酸ビニルモノマーの混合蒸気を流出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルモノマーを除去したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAc)のメタノール溶液を得た。このEVAcのメタノール溶液をけん化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル成分に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.4となるように添加した後、メタノールを加えて共重合体濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約6時間反応させ、その後酢酸と水を添加して反応液を中和し、反応を停止させた。中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器社製「H−130」回転数1200rpm)を用いて、上記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら洗浄し、上記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cm(東亜電波工業社製「CM−30ET」で測定)であった。
このようにして得られたEVOHを乾燥機を用いて60℃にて、48時間乾燥させた。乾燥した粉末状のEVOH20kgを、43Lの水/メタノール溶液(質量比:水/メタノール=4/6)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。このとき、クロトンアルデヒドを得られたEVOHとともに水/メタノール溶液に添加した。クロトンアルデヒドの添加量は、得られるEVOH組成物ペレット中の含有量が1.6ppmとなるように調整した。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、上述のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmの含水EVOHペレットを得た。得られた変性EVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社製ハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、55質量%であった。
このようにして得られた含水EVOHペレット40kg及びイオン交換水150Lを、高さ900mm、開径600mmの金属製ドラム缶に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を2回繰り返した。次に、30kgの含水EVOHペレットに対して150Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水EVOHペレット30kgに対して150Lのイオン交換水を加えて、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を6回繰り返すことで、けん化工程で生じた副生物等の不純物を除去した。当該含水ペレットを酢酸ナトリウム濃度0.525g/L、酢酸濃度0.8g/L、リン酸濃度0.007g/Lの水溶液(浴比20)に投入し、定期的に攪拌しながら4時間浸漬させた。これを脱液し、80℃で3時間、及び105℃で16時間乾燥させることによって、酢酸、ナトリウム塩及びリン化合物を含有したEVOH組成物ペレットを得た。
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレットをクロロホルムを用いて、48時間ソックスレー抽出器で処理し、EVOH中の添加剤等を抽出、除去し精製した。精製されたEVOHを、内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)−d6に溶解し、500MHzの1H−NMR(日本電子株式会社製:「GX−500」)を用いて80℃で測定したところ、約1〜1.8ppmにメチレン基の水素に基づくピーク、2ppm付近に酢酸ビニルユニットを構成するメチル基の水素に基づくピーク、約3〜3.15ppmにメトキシ基の水素に基づくピーク、及び約3.15〜4.15ppmにビニルアルコールユニットのメチン基を構成する水素に基づくピークがそれぞれ認められた。当該NMRスペクトルからエチレンユニットの含有率は24モル%、けん化度は99.98モル%、及びメトキシ基を含むユニットの含有率は0.0042モル%であった。
上記(2)で得られたEVOH組成物ペレットのMFR(温度210℃、荷重2160g)を、JIS K 7210に準拠して測定したところ、4.0g/10分であった。
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。分解後に蓋をし、湿式分解装置(アクタック社の「MWS−2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することでさらに分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し、純水でメスアップして測定用試料溶液とした。この試料溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社の「OPTIMA4300DV」)により金属元素の含有量を求めた。EVOH組成物ペレット中のナトリウムイオンの含有量は、ナトリウム元素換算値で150ppmであった。
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを添加し、DNPH調整溶液を作製した。その後、上記(3)で得られたEVOH組成物ペレット1gをDNPH調整溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させた。この溶液にアセトニトリルを添加してEVOHを沈降させ、溶液を濾過・濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析を行ったところ、EVOH組成物ペレット中のクロトンアルデヒドの含有率は0.08ppmであった。なお、定量に際しては、クロトンアルデヒドをDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
EVOH組成物ペレット20gを熱風乾燥機内で120℃、24時間加熱させた後、下記式を用いてEVOH組成物ペレットの水分率を求めたところ、0.25質量%であった。
水分率(質量%)=((試料質量−乾燥後質量)/試料質量)×100
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレットを製膜して単層フィルムを得た。東洋精機製作所社の20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件で製膜を行った。製膜された単層フィルムの引取りロール速度を変えることにより厚みを60μmに調整した。
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ
=170/210/210/210℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール温度:80℃
上記(9)で得られた厚み60μmの単層フィルムを、熱風乾燥機内で80℃にて、10分間加熱してから、真空乾燥機で1ヶ月間乾燥させた。単層フィルムを真空乾燥機から取り出した後、速やかに遠赤外フーリエ変換分光光度計(日本分光社製「FARIS」)を用いて25℃でテラヘルツ分光測定(1〜8THz)を行うことで吸光曲線を得た。真空乾燥された単層フィルムを25℃、相対湿度11、22、33、44、55、66、76、86、90又は100%で1ヶ月間、恒温恒湿器内で調湿した。単層フィルムを恒温恒湿器から取り出した後、速やかに上記と同様にしてテラヘルツ分光測定(1〜8THz)をすることで各相対湿度における吸光曲線を得た。相対湿度11、22、33、44、55、66、76、86、90又は100%における吸収曲線と、相対湿度0%における吸収曲線の差分をフィルムの厚みで規格化し、各相対湿度での差分スペクトルを得た。図1に、単層フィルムを各相対湿度でテラヘル分光測定して得られた差分スペクトルを示す。これらの差分スペクトル(1〜8THz)について、各スペクトルの数値データをカンマ区切りCSV(comma−separated value)ファイルに変換し、二次元相関解析ソフトウエア(2D−shige)を用いて異時相関スペクトルを得た。ここで、相対湿度の上昇による差分スペクトルの値の増加が、周波数y(Y軸)よりも、周波数x(X軸)が先である場合を正として、異時相関スペクトルの値(Z軸)をプロットした。図2に、差分スペクトルから得られた異時相関スペクトルを示す。異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値は5.4THzであった。
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレットを製膜して単層フィルムを得た。東洋精機製作所社の20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて、以下の条件で製膜を行った。製膜された単層フィルムの引取りロール速度を変えることにより厚みを20μmに調整した。得られた単層フィルムについて、目視にて外観性(ボイド)を下記評価基準により評価したところ、C判定であった。
<製膜条件>
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ
=180/290/290/290℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール温度:80℃
<評価>
A :ボイドなし
B :わずかにボイドが確認された
C :複数のボイドが確認された
D :多数のボイドが確認された
MeOHの量を10kgにし、開始剤の供給量を1.0L/Hrにし、重合温度を80℃にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドの添加量を、得られるEVOH組成物ペレット中の含有量が1.8ppmとなるように調整したこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
MeOHの量を5kgにし、エチレン圧力を3.8MPaにし、重合温度を80℃にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドを添加しないこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
MeOHの量を23kgにし、V−70の代わりにベンゾイルパーオキサイドを使用し、開始剤を13g仕込み、エチレン圧力を4.1MPaにし、重合温度を67℃にし、けん化反応の時間を4時間にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドの添加量を、得られるEVOH組成物ペレット中の含有量が2.4ppmとなるように調整したこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
MeOHの量を21kgにし、V−70の代わりに2,2’−アゾイソブチロニトリルを使用し、開始剤を5g仕込み、エチレン圧力を4.3MPaにし、重合温度を70℃にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドを添加しないこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
Claims (7)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を主成分とする樹脂組成物であって、
エチレンービニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が20〜55モル%であり、けん化度が90モル%以上であり、
下記の各相対湿度で調湿された、前記樹脂組成物からなる厚み60μmの単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線から、相対湿度0%で調湿された、前記単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線を差し引いた差分スペクトルに対し、二次元相関分光法を用いて得られる異時相関スペクトルにおいて、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合を正とした場合に、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとるxの値が5.2THz以上6.0THz未満である樹脂組成物。
相対湿度(%):11、22、33、44、55、66、76、86、90、100 - エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)がアルコキシル基を0.0005〜1モル%含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 不飽和脂肪族アルデヒド(B)を0.05〜90ppm含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 不飽和脂肪族アルデヒド(B)が、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- アルカリ金属イオン(C)を10〜500ppm含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する成形体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体。
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