JP2019044083A - 樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体及び多層構造体 - Google Patents

樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体及び多層構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】高温で溶融成形を行う場合においても、ボイド等の外観不良が発生しにくく、高温・高速プロセスに好適に用いられる樹脂組成物を提供する。【解決手段】EVOH(A)を主成分とする樹脂組成物であって、下記の各相対湿度で調湿された、前記樹脂組成物からなる厚み60μmの単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線から、相対湿度0%で調湿された前記単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線を差し引いた差分スペクトルに対し、二次元相関分光法を用いて得られる異時相関スペクトルにおいて、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合を正とした場合に、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとるxの値が5.2THz以上6.0THz未満である樹脂組成物とする。【選択図】図2

Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体及び多層構造体に関する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略記することがある)は、酸素等のガス遮蔽性、透明性、保香性、耐油性、非帯電性、機械強度等に優れた高分子材料である。そのため、EVOHは、容器等の成形品の材料として広く用いられている。EVOHを用いた成形体は、通常、溶融成形法により製造される。したがって、EVOHには、溶融成形後に優れた外観を有することが求められる。
しかしながら、EVOHは親水性基を有することから吸湿しやすい樹脂であり、成形前の吸湿等により、ボイドが発生しやすくなることが知られている。例えば、特許文献1には、成形時の発泡等によるボイドの発生を防ぐため、EVOHを含む樹脂組成物の水分率は0.5%以下が好ましいと記載されている。エチレン単位含有量が少ないEVOHは特に吸湿しやすく、成形中の吸湿でさえも問題となることがあった。さらに、近年では生産性を向上させるため、高温・高速での溶融成形性に優れた樹脂組成物が要求されている。しかしながら、このような条件においては、樹脂組成物の水分率が比較的低く管理されている場合でも、ボイド等の欠点が発生しやすく、成形性が不十分であることがあった。
ところで、分子間相互作用による分子集団の振動モードが観測できる分析手法として、テラヘルツ(以下、「THz」と略記することがある)領域の分光分析法が知られている。テラヘルツ領域は遠赤外域とも呼ばれる電磁波の領域であり、赤外域と同様に物質固有の振動スペクトルが観測される。赤外スペクトルでは、分子中の官能基による振動モードが観測される。一方、テラヘルツ光の周波数およびエネルギーは赤外域に比べて低いため、比較的質量が大きいものの間の弱い相互作用による振動、すなわち分子間相互作用による分子集団の振動モードが観測される。有機物固体のテラヘルツスペクトルにおいて観測される振動モードは、分子集団や結晶の構造、高分子の高次構造などを反映する。したがって、テラヘルツ分光測定やテラヘルツイメージングによれば、高分子の高次構造の変化や高分子の空間分布を可視化することが可能である。
また、近赤外光から赤外光に亘る波長領域で、外部摂動を付与した場合(例えば、外部温度を変化させた場合)のサンプルの特性を分析する際に、分光分析装置で得られるスペクトルのデータを、二次元相関分光法(2D−COS)を用いて解析できることが知られている。例えば、非特許文献2には、赤外光の波長領域で外部摂動を温度とした場合において、直鎖状低密度ポリエチレンの加熱に伴うスペクトル変化の特性を分析した結果が記載されている。また、非特許文献3には、テラヘルツ領域で外部摂動を等温結晶化時間とした場合において、ポリ(3−ヒドロキシブチラート)の結晶化時間に伴うスペクトル変化の特性を分析した結果が記載されている。
WO2011/118648号
I. Noda et al., "Generalized Two-Dimensional Correlation Spectroscopy",Applied Spectroscopy,Vol. 54,Number 7,2000, p.236A-248A H. Hoshina et al., "Isothermal crystallization of poly(3-hydroxybutyrate) studied by terahertz two-dimensional correlation spectroscopy", Applied Physics Letters,2012,100,011907
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高温で溶融成形を行う場合においても、ボイド等の外観不良が発生しにくく、高温・高速プロセスに好適に用いられる樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、テラヘルツ分光測定において特定の挙動を示す樹脂組成物は、高温で溶融成形された場合でもボイドが発生し難いことを見出した。
上記課題は、EVOH(A)を主成分とする樹脂組成物であって、EVOH(A)のエチレン単位含有量が20〜55モル%であり、けん化度が90モル%以上であり、下記の各相対湿度で調湿された、前記樹脂組成物からなる厚み60μmの単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線から、相対湿度0%で調湿された、前記単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線を差し引いた差分スペクトルに対し、二次元相関分光法を用いて得られる異時相関スペクトルにおいて、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合を正とした場合に、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとるxの値が5.2THz以上6.0THz未満である樹脂組成物を提供することによって解決される。
相対湿度(%):11、22、33、44、55、66、76、86、90、100
このとき、EVOH(A)がアルコキシル基を0.0005〜1モル%含有することが好適である。前記樹脂組成物が不飽和脂肪族アルデヒド(B)を0.05〜90ppm含有することも好適である。不飽和脂肪族アルデヒド(B)が、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることも好適である。前記樹脂組成物がアルカリ金属イオン(C)を10〜500ppm含有することも好適である。
前記樹脂組成物を含有する成形体が本発明の好適な実施態様である。前記樹脂組成物からなる層を有する多層構造体も本発明の好適な実施態様である。
本発明の樹脂組成物を用いることにより、高温で溶融成形を行った場合でも、ボイド等の欠点が少ない成形体が得られる。したがって、当該樹脂組成物は、高温・高速プロセスに好適に用いられる。また、当該樹脂組成物を用いることにより、優れた外観を有する成形体や多層構造体を低コストで提供することができる。
実施例1において、単層フィルムを各相対湿度でテラヘル分光測定して得られた差分スペクトルである。 実施例1において、差分スペクトルから得られた異時相関スペクトルである。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)を主成分として含有するものであって、EVOH(A)のエチレン単位含有量が20〜55モル%であり、けん化度が90モル%以上であり、下記の各相対湿度で調湿された、前記樹脂組成物からなる厚み60μmの単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線から、相対湿度0%で調湿された、前記単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線を差し引いた差分スペクトルに対し、二次元相関分光法を用いて得られる異時相関スペクトルにおいて、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合を正とした場合に、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとるxの値が5.2THz以上6.0THz未満であるものである。
相対湿度(%):11、22、33、44、55、66、76、86、90、100
(テラヘルツ分光測定)
テラヘルツ領域は遠赤外域とも呼ばれる電磁波の領域であり、赤外域と同様に物質固有の振動スペクトルが観測される。赤外スペクトルでは、分子中の官能基による振動モードが観測される。一方、テラヘルツ光の周波数およびエネルギーは赤外域に比べて低いため、比較的質量が大きいものの間の弱い相互作用による振動、すなわち分子間相互作用による分子集団の振動モードが観測される。有機物固体のテラヘルツスペクトルにおいて観測される振動モードは、分子集団や結晶の構造、高分子の高次構造などを反映する。したがって、テラヘルツ分光測定やテラヘルツイメージングによれば、高分子の高次構造の変化や高分子の空間分布を可視化することが可能である。
本発明において、前記樹脂組成物を厚み60μmの単層フィルムとしてから、相対湿度0、11、22、33、44、55、66、76、86、90又は100%、温度25℃にて1か月間調湿した後、1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することによりテラヘルツ分光測定を行う。そして、各相対湿度(11、22、33、44、55、66、76、86、90又は100%)で調湿された単層フィルムを測定して得られた吸光曲線から、相対湿度0%で調湿された単層フィルムを測定して得られた吸光曲線を差し引くことにより、差分スペクトルを求める。図1は、後述する実施例1において、単層フィルムを各相対湿度でテラヘル分光測定して得られた差分スペクトルである。
テラヘルツ分光測定により得られるデータを、Applied Spectroscopy,Vol. 54,Issue 7,p.236A-248Aに記載された二次元相関分光法(Two-dimensional correlation spectroscopy、2D−COS)で分析する。本発明では、2D−COSを用いて、前記差分スペクトルから異時相関スペクトル(Asynchronous 2D correlation spectrum)を得る。図2は、後述する実施例1において、差分スペクトル(図1)から得られた異時相関スペクトルである。図2を参照して、異時相関スペクトルについて説明する。本発明においては、異時相関スペクトル強度をスペクトル変数である周波数の関数としてプロットする。スペクトル変数である周波数を表すX軸及びY軸の直交軸によって2Dスペクトル平面を規定し、異時相関スペクトル強度をX軸及びY軸に垂直なZ軸にプロットする。
2D−COSで得られるスペクトルは異時相関スペクトルで表現することができる。異時相関スペクトルにおいて、強度は外部摂動(相対湿度)に対するテラヘルツ分光測定で得られるデータ(差分スペクトル)の逐次又は連続変化を表す。異時相関スペクトルを用いることで、テラヘルツ分光測定で得られるデータ(差分スペクトル)における、2つのピーク間の変化の相関を表現することができる。すなわち、相対湿度を変化させた際の、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値の変化と周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値の変化の相関が異時相関スペクトルの値(Z軸)によって示される。本発明では、相対湿度の上昇によって、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合に、異時相関スペクトルの値を正とする。
本発明の樹脂組成物においては、こうして得られる異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値が5.2THz以上6.0THz未満である必要がある。本発明者らは、上記と同様にして得られる、一般的なEVOHの異時相関スペクトルにおいて、4−5THz付近(X軸)の低周波数領域に正の最大値が存在するとの知見を得た。この低周波領域のピークはEVOHと水分子の間の分子間振動伸縮モードの変化に由来するものであると推測される。一方、本発明の樹脂組成物は、5.2THz以上6.0THz未満(X軸)の領域に異時相関スペクトル強度の正の最大値を有する。これは、EVOH(A)と水分子間の相互作用が強いことを意味する。このように本発明の樹脂組成物においては、EVOH(A)と水分子との相互作用が強いため、高温で溶融成形する際でも水が遊離し難いものと考えらえる。その結果、ボイドの発生が抑制されて、外観に優れた成形体が得られるものと推測される。
異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値を5.2THz以上6.0THz未満である樹脂組成物を得る手段としては、
(1)エチレン−ビニルエステル共重合体を製造する際に用いられる重合開始剤として、アルコキシル基を含有するものを使用すること
(2)エチレン−ビニルエステル共重合体を製造する際の重合温度を比較的高く設定すること
(3)樹脂組成物中の不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量を適当な範囲に調整すること
(4)EVOH(A)のけん化度を高くすること
(5)樹脂組成物中のアルカリ金属塩の含有量を適当な範囲に調整すること
(6)樹脂組成物中のカルボン酸及びカルボン酸イオンの含有量を適当な範囲に調整すること
(7)樹脂組成物中の滑剤の含有量を適当な範囲に調整すること
等を挙げることができる。本発明の樹脂組成物を製造するに際して、これらの手段のうち、一つを採用してもよいし、複数を採用してもよい。
前記樹脂組成物の製造工程において、アルコキシル基を含有する重合開始剤を使用すると、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値が大きくなる傾向がある。理由は定かではないが、アルコキシル基が存在することで水素結合が形成されやすくなるとともに、EVOH(A)の末端に嵩高い構造が存在することでEVOH(A)の末端同士の相互作用が弱くなり、EVOH(A)と水がより相互作用しやすくなるものと推測される。また、重合温度を比較的高く設定することで、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値が大きくなる傾向がある。理由は定かではないが、末端に親水性の異種構造を有するEVOH(A)が増加することで水素結合が形成されやすくなるものと推察される。また、前記樹脂組成物中に不飽和脂肪族アルデヒド(B)を含有させることで、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値が大きくなる傾向がある。理由は定かではないが、不飽和脂肪族アルデヒド(B)による可塑化効果によって、水分子がEVOH(A)に接近し易くなり、相互作用が強くなるものと推測される。
(EVOH(A))
EVOH(A)は、エチレン単位及びビニルアルコール単位を有する共重合体である。
EVOH(A)のエチレン単位含有量は20〜55モル%である必要がある。これにより、優れた溶融成形性とガスバリア性とが両立された樹脂組成物を得ることができる。前記エチレン単位含有量が20モル%未満の場合には、樹脂組成物を溶融成形する際のロングラン性が低下するとともに、得られる成形体の耐水性、耐熱水性及び高湿度下でのガスバリア性も低下する。前記エチレン単位含有量は25モル%以上が好ましい。一方、前記エチレン含有量が55モル%を超える場合には、得られる成形体のガスバリア性が低下する。前記エチレン単位含有量は50モル%以下が好ましい。また、以下の点から、前記エチレン単位含有量が45モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることがさらに好ましい。通常、エチレン単位含有量が少ないほど、EVOHは吸湿しやすいため、得られる成形体にボイドが発生しやすい。それに対して、本発明の樹脂組成物は、含有されるEVOH(A)のエチレン単位含有量が低い場合でも、ボイドが発生し難い。したがって、EVOH(A)のエチレン単位含有量が低い場合に、本発明の樹脂組成物を用いることのメリットが大きい。
EVOH(A)のけん化度は、90モル%以上である必要がある。これにより、優れたガスバリア性及び外観を有する樹脂組成物を得ることができる。けん化度は、95モル%以上であることが好ましく、99モル%以上であることがより好ましく、99.9モル%以上であることがさらに好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量及びけん化度は、溶媒にDMSO−dを用いたH−NMR測定により求めることができる。
EVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステルとを共重合して得られるエチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することで得られる。エチレンとビニルエステルの重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合等の公知の方法が採用される。また、重合方式は、連続式及び回分式のいずれであってもよい。例えば、溶液重合の場合、以下の条件を採用できる。
溶液重合に用いられる溶媒として、アルコールが好ましい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられ、特にメチルアルコールが好ましい。また、エチレン、ビニルエステル及びエチレン−ビニルエステル共重合体を溶解し得るアルコール以外の有機溶媒(ジメチルスルホキシドなど)を溶液重合に用いることもできる。
重合開始剤として、種々のラジカル開始剤が使用される。なかでも、アルコキシル基を含有するラジカル開始剤が好ましい。アルコキシル基を含有するラジカル開始剤を用いることで、EVOH(A)にアルコキシル基が導入されるため、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値を上記範囲に調整し易くなる。アルコキシル基を含有するラジカル開始剤として、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−エトキシ−2,4−ジエチルバレロニトリル)等のアルコキシル基を含有するアゾニトリル系開始剤がより好ましい。
重合時間は、通常2時間以上15時間以下であり、好ましくは3時間以上11時間以下である。重合率は、通常、仕込むビニルエステルに対して10モル%以上90モル%以下であり、好ましくは20モル%以上80モル%以下である。重合後の溶液中の樹脂分は、通常5質量%以上85質量%以下であり、好ましくは20質量%以上70質量%以下である。
重合温度は、通常20℃以上であり、好ましくは40℃以上である。異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値を上記範囲に調整し易い点からは、重合温度は好ましくは50℃以上であり、より好ましくは65℃以上であり、さらに好ましくは75℃以上である。一方、重合温度は、通常90℃以下であり、好ましくは85℃以下である。
重合に用いられるビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニルなどの脂肪族ビニルエステルが例示され、なかでも、酢酸ビニルが好ましい。
本発明の効果が阻害されない範囲であれば、EVOH(A)は、エチレン及びビニルエステルと共重合し得る他のエチレン性不飽和単量体由来の単位を含有していてもよい。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば
プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;
3,4−ジアセトキシ−1−ブテンなどの1,2−ジエステル基を有する不飽和単量体;
2−メチレン−1,3−プロパンジオールジアセテート(1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン)、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジプロピオネート、2−メチレン−1,3−プロパンジオールジブチレートなどの1,3−ジエステル基を有する不飽和単量体;
アクリル酸及びその塩;
アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;
メタクリル酸及びその塩;
メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;
アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);
メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;
酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;
マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;
ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;
酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。EVOH(A)中のエチレン単位及びビニルアルコール単位以外の単量体単位の含有量は、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
所定の重合率に達したら、必要に応じて重合禁止剤を添加して、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応のビニルエステルを除去する。エチレン−ビニルエステル共重合体から未反応のビニルエステルを除去する方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から該共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部よりエチレン−ビニルエステル共重合体溶液を取り出す方法などが採用される。
エチレン−ビニルエステル共重合体のけん化は、酸けん化やアルカリけん化などの公知の方法により行われる。例えば、アルカリけん化を行う場合、上記で得られたエチレン−ビニルエステル共重合体溶液にアルカリ触媒を添加してビニルエステル部分をけん化させる。けん化方法は連続式及び回分式のいずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどが用いられる。
けん化を行うに際して、例えば回分式の場合、エチレン−ビニルエステル共重合体溶液の濃度は、通常10質量%以上50質量%以下である。反応温度は、通常30℃以上60℃以下である。触媒使用量は、通常ビニルエステル単量体単位1モル当たり、0.02〜0.6モルである。反応時間は、通常1時間以上6時間以下である。連続式の場合、従来より公知である塔式の反応器を用いて、けん化反応に伴い生成するカルボン酸メチルエステル等の除去を効率的に行いながらけん化反応を行う方法が、アルカリ触媒の使用量が低減できるという点で好ましい。このとき、均一な溶液中で反応を行うことができる点から、反応温度が70〜150℃、触媒使用量がビニルエステル単量体単位1モル当たり0.001〜0.2モルとすることが好ましい。
このようにして得られたEVOH(A)は、けん化反応で使用された触媒の残渣や副生塩類、その他の不純物を含有するため、必要に応じて中和、洗浄することにより不純物を除去することが好ましい。
EVOH(A)のメルトフローレート(温度210℃、荷重2160g、以下、メルトフローレートをMFRと略記する。)は、0.1〜200g/10分が好ましい。EVOH(A)のMFRがこのような範囲である場合には、前記樹脂組成物の成形性や加工性、得られる成形体の外観が良好となる。前記EVOH(A)のMFRは、0.5g/10分以上がより好ましく、1g/10分以上がさらに好ましい。一方、EVOH(A)のMFRは、50g/10分以下がより好ましく、30g/10分以下がさらに好ましく、15g/10分以下が特に好ましく、10g/10分以下が最も好ましい。本発明においてメルトルフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定される。
EVOH(A)が、2種以上のEVOHの混合物からなるものであっても構わない。この場合、エチレン単位含有量、けん化度及びMFRは、配合質量比で加重平均した値とする。生産コストや得られる製品の均一性の観点からは、本発明の樹脂組成物は1種類のEVOHを含有することが好ましい。一方、バリア性と各種機械的物性の両立の観点からは、本発明の樹脂組成物は、エチレン単位含有量が異なる2種のEVOHを含有することが好ましい。このとき、2種のEVOHのエチレン単位含有量が5モル%以上異なることが好ましく、10モル%以上異なることがより好ましい。また、これらのEVOHの質量比が1/99〜99/1であることが好ましく、5/95〜95/5であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)を主成分として含有する。ここで、主成分とは、質量基準で最も含有量が多い成分をいう。本発明の樹脂組成物中のEVOH(A)の含有量は、55質量%以上が好ましい。前記含有量が55質量%未満の場合には、前記樹脂組成物のガスバリア性や成形性が不十分になるおそれがある。前記含有量は80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が最も好ましい。
(アルコキシル基含有率)
EVOH(A)がアルコキシル基を0.0005〜1モル%含有することが好ましい。これにより、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値を上記範囲に調整し易くなる。アルコキシル基の含有量は、より好ましくは0.0007モル%以上、さらに好ましくは0.001モル%以上である。一方、アルコキシル基の含有率が1モル%を超える場合、耐ドローダウン性、層間接着性及びガスバリア性が悪化する傾向にある。アルコキシル基の含有率は、より好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.3モル%以下である。本発明において、EVOH(A)のアルコキシル基の含有量は、全単量体単位に対するアルコキシル基を有する単位の割合を意味する。
アルコキシル基を含有する重合開始剤を用いることによってEVOH(A)中にアルコキシル基を含有させる場合、その使用量、重合温度、重合溶媒の種類及び使用量等を適宜調節することにより、アルコキシル基の含有量を調節することができる。アルコキシル基を含有する単量体を共重合させることによってEVOH(A)中にアルコキシル基を含有させる場合には、モノマー比を適宜調整することによりアルコキシル基の含有量を調節することができる。
(不飽和脂肪族アルデヒド(B))
前記樹脂組成物が不飽和脂肪族アルデヒド(B)を0.05ppm以上90ppm以下含有することが好ましい。不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量が0.05ppm未満であると、高温プロセスにおいてボイド等の欠点が発生しやすくなるおそれがある。不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量は、0.1ppm以上がより好ましく、0.2ppm以上がさらに好ましい。一方、不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量が90ppmを超えると、溶融成形時に不飽和アルデヒド(B)が縮合するおそれやEVOH(A)と不飽和脂肪族アルデヒド(B)の縮合物とが反応して架橋が生じるおそれがある。その結果、樹脂組成物が増粘又はゲル化することにより、ゲルやブツが発生したり、ストリーク等の欠陥が発生したりするおそれがある。ここで、前記樹脂組成物中の不飽和脂肪族アルデヒド(B)の含有量とは、当該樹脂組成物の全固形分質量に対する割合で表される。具体的には、水分を除外した当該樹脂組成物に含有される不飽和脂肪族アルデヒド(B)を定量して得られた値とする。
不飽和脂肪族アルデヒド(B)は、炭素−炭素二重結合又は三重結合を有するアルデヒドである。不飽和脂肪族アルデヒド(B)として用いられる炭素−炭素二重結合を有するアルデヒドとしては、アクリルアルデヒド(アクロレイン)、クロトンアルデヒド、メタクリルアルデヒド、2−メチル−2−ブテナール、2−ブチナール、2−ヘキセナール、2,6−ノナジエナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4,6−オクタトリエナール、2−ヘキセナール、5−メチル−2−ヘキセナールなどが挙げられる。不飽和脂肪族アルデヒド(B)として用いられる炭素−炭素三重結合を有するアルデヒドとしては、プロピオルアルデヒド、2−ブチン−1−アール、2−ペンチン−1−アールなどが挙げられる。なかでも、不飽和脂肪族アルデヒド(B)として、直鎖又は分岐のある炭素−炭素二重結合を有する不飽和脂肪族アルデヒドが好ましく、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、クロトンアルデヒドがさらに好ましい。クロトンアルデヒドは、水への溶解性が高く、沸点が約100℃であるため、洗浄工程や乾燥工程で必要に応じて過剰分を除去または不足分を追加することが容易である。不飽和脂肪族アルデヒド(B)の炭素数は、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
(アルカリ金属イオン(C))
前記樹脂組成物が、さらにアルカリ金属イオン(C)を含むことが好適である。前記樹脂組成物がアルカリ金属イオンを含有することによって、他の樹脂に対する接着性が良好になる。特に、前記樹脂組成物からなる層とEVOH(A)以外の熱可塑性樹脂からなる層を有する多層構造体における、層間接着性が向上する。
アルカリ金属イオン(C)としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが好ましい。本発明において、アルカリ金属イオン(C)をアルカリ金属塩として前記樹脂組成物に含有させることが好ましい。前記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。これらの中でも、入手容易である点から、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、アルカリ金属イオン(C)を金属元素換算で10〜500ppm含有することが好適である。アルカリ金属イオン(C)の含有量は、30ppm以上がより好ましく、100ppm以上がさらに好ましい。また、前記含有量は、400ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましい。アルカリ金属イオン(C)の含有量が10ppm以上であることにより、上述したアルカリ金属イオン(C)による効果が奏される。一方、金属イオン(C)の含有量が500ppm以下であることで、前記樹脂組成物の着色を抑制することができる。
前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、EVOH(A)以外の他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン[ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、オレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸若しくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンなど]、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリアセタール、変性ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。前記樹脂組成物がEVOH(A)以外の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、10質量%未満がさらに好ましく、1質量%未満が特に好ましく、0.1質量%未満が最も好ましい。
(その他の添加剤)
前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したEVOH(A)、不飽和脂肪族アルデヒド(B)、アルカリ金属イオン(C)及び他の熱可塑性樹脂以外の添加剤を含有していてもよい。このような他の添加剤としては、可塑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、充填剤、酸素吸収剤、各種繊維等を挙げることができる。前記樹脂組成物における、他の添加剤の含有量は、10質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満がさらに好ましい。
熱安定性や粘度調整の観点から、前記樹脂組成物は、EVOH(A)、不飽和脂肪族アルデヒド(B)、アルカリ金属イオン(C)及び他の熱可塑性樹脂以外の添加剤として、カルボン酸、リン化合物又はホウ素化合物を含有していてもよい。具体的には次のようなものが挙げられる。なお、これらの化合物は、予めEVOH(A)に含有されていてもよい。
カルボン酸:シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、乳酸等
リン化合物:リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等
ホウ素化合物:ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素等
前記樹脂組成物のMFRは、前記EVOH(A)と同様の範囲であることが好ましい。前記樹脂組成物のMFRをこのような範囲とすることにより得られる効果も、EVOH(A)の場合と同様である。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。EVOH(A)とその他の成分とを、公知の方法により混合することにより前記樹脂組成物を得ることができる。また、その他の成分が溶解した水溶液にEVOH(A)を浸漬して、EVOH(A)にその他の成分を含有させることにより、前記樹脂組成物を得ることもできる。
不飽和脂肪族アルデヒド(B)を前記樹脂組成物中に含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば不飽和脂肪族アルデヒド(B)を予めEVOH(A)に配合してペレットを造粒する方法、エチレン−ビニルエステル共重合体のけん化後にペーストを析出させる工程で析出させたストランドに不飽和脂肪族アルデヒド(B)を含浸させる方法、析出させたストランドをカットした後に不飽和脂肪族アルデヒド(B)を含浸させる方法、EVOH(A)を含有する樹脂組成物(乾燥させたもの)のチップを再溶解したものに不飽和脂肪族アルデヒド(B)を添加する方法、EVOH(A)及び不飽和脂肪族アルデヒド(B)の2成分をブレンドしたものを溶融混練する方法、押出機中のEVOH(A)の溶融物に対して、不飽和脂肪族アルデヒド(B)を添加する方法、EVOH(A)の一部に不飽和脂肪族アルデヒド(B)を高濃度で配合してマスターバッチを造粒した後に、当該マスターバッチとEVOH(A)とをドライブレンドしてから溶融混練する方法等が挙げられる。
これらのうち、EVOH(A)中に不飽和脂肪族アルデヒド(B)を均一に分散させることができる観点から、不飽和脂肪族アルデヒド(B)を予めEVOH(A)に配合してペレットを造粒する方法が好ましい。具体的には、EVOH(A)を良溶媒に溶解させた溶液に、不飽和脂肪族アルデヒド(B)を添加して混合溶液を得る。当該混合液をノズル等から貧溶媒中に押出して析出及び/又は凝固させてから洗浄及び/又は乾燥することにより、EVOH(A)に不飽和脂肪族アルデヒド(B)が均一に混合されたペレットを得ることができる。
[成形体]
こうして得られた樹脂組成物を含有する成形体が本発明の好適な実施態様である。当該成形体は、前記樹脂組成物のみからなるものであってもよいし、前記樹脂組成物からなる部分と前記樹脂組成物以外のものからなる部分とを有するものであってもよい。
前記樹脂組成物を含有する成形体としては、ペレット、フィルム、シート、容器(袋、カップ、チューブ、トレー、ボトル等)、燃料容器、パイプ、繊維、飲食品用包装材、容器用パッキング材、医療用輸液バッグ材、タイヤ用チューブ材、靴用クッション材、バッグインボックス用内袋材、有機液体貯蔵用タンク材、有機液体輸送用パイプ材、暖房用温水パイプ材(床暖房用温水パイプ材等)、化粧品用包装材、デンタルケア用包装材、医薬品用包装材、包材用子部品(キャップ、バッグインボックスのコック部分など)、農薬ボトル、農業用フィルム(温室用フィルム、土壌燻蒸用フィルム)、穀物保管用袋、ジオメンブレン、壁紙又は化粧板、水素、酸素等のガスタンク等を挙げることができる。前記燃料容器としては、自動車、オートバイ、船舶、航空機、発電機、工業用機器、農業用機器等に搭載される燃料容器、これら燃料容器に燃料を補給するための携帯用容器、燃料を保管するための容器等が挙げられる。燃料としてはガソリン、なかでもメタノール、エタノールまたはMTBE等をブレンドしたガソリンすなわち含酸素ガソリンが代表例として挙げられる。さらに、その他の重油、軽油、灯油なども挙げられる。
前記成形体は、通常、前記樹脂組成物を溶融成形することにより製造される。これらの成形体は再使用の目的で粉砕した後に、再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸又は二軸延伸することも可能である。溶融成形法として公知の方法が採用され、例えば押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形が挙げられる。溶融成形の際の溶融温度としては、150〜300℃が好ましい。なかでも、250℃以上が特に好ましい。本発明の樹脂組成物は、高温プロセスにおいても、ボイド等の欠点が発生し難い。したがって、当該樹脂組成物は、高温・高速プロセスに好適に用いられる。
前記成形体として、前記樹脂組成物からなる層とEVOH(A)以外の他の熱可塑性樹脂からなる層を有する多層構造体が好ましい。前記樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを用いて溶融成形することにより優れた外観を有する多層構造体を生産性良く製造することができる。
前記多層構造体の厚み構成は特に限定されないが、成形性及びコスト等の観点から、全層厚みに対する前記樹脂組成物層の厚み比は2〜20%が好適である。前記多層構造体の層構成は特に限定されないが、他の熱可塑性樹脂層をA、前記樹脂組成物層をB、接着性樹脂層をCとすると、A/B、A/B/A、A/C/B、A/C/B/C/A、A/B/A/B/A、A/C/B/C/A/C/B/C/Aなどの層構成が例示される。これらに、さらに他の層を付加することは何ら差しつえない。他の熱可塑性樹脂層を複数設ける場合は、異なるものを用いてもよいし、同じものを用いてもよい。さらに、成形時に発生するトリムなどのスクラップからなる回収樹脂の層を別途設けてもよいし、回収樹脂と他の熱可塑性樹脂とのブレンド物からなる層を他の熱可塑性樹脂層としてもよい。
上記接着性樹脂としては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸、そのエステル又はその無水物を化学的(例えば付加反応、グラフト反応等)に結合させて得られる、カルボキシル基を含有する変性ポリオレフィンを好適に用いることができる。このとき用いられるエチレン性不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸エステルとしては、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられる。なかでも、無水マレイン酸を用いることが好ましい。これらの接着性樹脂は単独で用いてもよいし、また二種以上を混合して用いてもよい。
前記多層構造体に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエステルエラストマー;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル系樹脂;ビニルエステル系樹脂;ポリウレタンエラストマー;ポリカーボネート;塩素化ポリエチレン;塩素化ポリプロピレンが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリスチレン及びポリエステルが好ましい。
前記多層構造体の他の熱可塑性樹脂層としてポリオレフィン層を用いることが好ましい。ポリオレフィン層を設けることによって、前記多層構造体の力学的特性が向上するうえに、耐湿性も向上するからである。特に、前記多層構造体の両外層にポリオレフィン層を設けることが、前記樹脂組成物層の吸湿が効果的に防止されるため好ましい。このとき、このような効果を阻害しない範囲でポリオレフィン層に回収樹脂を含有させることもできる。
上記多層構造体を製造する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)前記樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法
(2)前記樹脂組成物からなる成形体上に他の熱可塑性樹脂を溶融押出する方法
(3)他の熱可塑性樹脂からなる成形体上に前記樹脂組成物を溶融押出する方法
(4)前記樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂とを共射出する方法
(5)前記樹脂組成物からなる成形体と他の熱可塑性樹脂からなる成形体とを接着性樹脂を用いて積層させる方法
これらの方法の中でも、(1)が好ましい。本発明の樹脂組成物は、高温条件下で溶融成形してもボイド等の欠点が発生し難い。したがって、前記樹脂組成物と高融点の他の熱可塑性樹脂とを共押出しても、外観に優れた多層構造体を得ることができる。共押出方法としては、例えばマルチマニホールド合流方式Tダイ法、フィードブロック合流方式Tダイ法、インフレーション法等を挙げることができる。
上述の共押出で得られた多層構造体を二次加工することで、例えば以下の二次加工品が得られる。
(1)多層構造体(シート、フィルム等)を一軸又は二軸方向に延伸するとともに、熱処理することにより得られる多層延伸シート又は多層延伸フィルム
(2)多層構造体(シート、フィルム等)を圧延することにより得られる多層圧延シート又は多層圧延フィルム
(3)多層構造体(シート、フィルム等)を熱成形(真空成形、圧空成形、真空圧空成形等)することにより得られる多層トレー又は多層カップ状容器
(4)多層構造体(パイプ等)をストレッチブロー成形することにより得られる多層ボトル、多層カップ状容器等
これらの二次加工して得られる成形体は、例えば深絞り容器、カップ状容器、ボトル等の食品容器として好ましく用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
(1)EVOHの合成
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、酢酸ビニルを100kg、メタノール(以下、MeOHと称する)を3kg仕込み、30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽内の温度を75℃に調整した後、反応槽圧力(エチレン圧力)が5.0MPaとなるようにエチレンを導入し、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製「V−70」)を0.5g/Lのメタノール溶液として0.5L/Hrで供給し、重合を行った。重合中は温度を75℃に維持し、5時間後に冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、ラシヒリングを充填した塔の上部から得られた共重合体溶液を連続的に供給し、塔下部よりメタノールを吹き込み塔頂部よりメタノールと未反応酢酸ビニルモノマーの混合蒸気を流出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルモノマーを除去したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAc)のメタノール溶液を得た。このEVAcのメタノール溶液をけん化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル成分に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.4となるように添加した後、メタノールを加えて共重合体濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約6時間反応させ、その後酢酸と水を添加して反応液を中和し、反応を停止させた。中和された反応液を、反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器社製「H−130」回転数1200rpm)を用いて、上記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら洗浄し、上記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cm(東亜電波工業社製「CM−30ET」で測定)であった。
(2)含水EVOHペレットの製造
このようにして得られたEVOHを乾燥機を用いて60℃にて、48時間乾燥させた。乾燥した粉末状のEVOH20kgを、43Lの水/メタノール溶液(質量比:水/メタノール=4/6)に80℃で12時間、撹拌しながら溶解させた。このとき、クロトンアルデヒドを得られたEVOHとともに水/メタノール溶液に添加した。クロトンアルデヒドの添加量は、得られるEVOH組成物ペレット中の含有量が1.6ppmとなるように調整した。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、上述のEVOHの水/メタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水/メタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmの含水EVOHペレットを得た。得られた変性EVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社製ハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、55質量%であった。
(3)EVOH組成物ペレットの製造
このようにして得られた含水EVOHペレット40kg及びイオン交換水150Lを、高さ900mm、開径600mmの金属製ドラム缶に入れ、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を2回繰り返した。次に、30kgの含水EVOHペレットに対して150Lの1g/Lの酢酸水溶液を加え、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を2回繰り返した。さらに、含水EVOHペレット30kgに対して150Lのイオン交換水を加えて、25℃で2時間撹拌しながら洗浄及び脱液する操作を6回繰り返すことで、けん化工程で生じた副生物等の不純物を除去した。当該含水ペレットを酢酸ナトリウム濃度0.525g/L、酢酸濃度0.8g/L、リン酸濃度0.007g/Lの水溶液(浴比20)に投入し、定期的に攪拌しながら4時間浸漬させた。これを脱液し、80℃で3時間、及び105℃で16時間乾燥させることによって、酢酸、ナトリウム塩及びリン化合物を含有したEVOH組成物ペレットを得た。
(4)アルコキシル基含有率、エチレン単位含有量及びけん化度
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレットをクロロホルムを用いて、48時間ソックスレー抽出器で処理し、EVOH中の添加剤等を抽出、除去し精製した。精製されたEVOHを、内部標準物質としてテトラメチルシラン、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含むジメチルスルホキシド(DMSO)−dに溶解し、500MHzのH−NMR(日本電子株式会社製:「GX−500」)を用いて80℃で測定したところ、約1〜1.8ppmにメチレン基の水素に基づくピーク、2ppm付近に酢酸ビニルユニットを構成するメチル基の水素に基づくピーク、約3〜3.15ppmにメトキシ基の水素に基づくピーク、及び約3.15〜4.15ppmにビニルアルコールユニットのメチン基を構成する水素に基づくピークがそれぞれ認められた。当該NMRスペクトルからエチレンユニットの含有率は24モル%、けん化度は99.98モル%、及びメトキシ基を含むユニットの含有率は0.0042モル%であった。
(5)MFR
上記(2)で得られたEVOH組成物ペレットのMFR(温度210℃、荷重2160g)を、JIS K 7210に準拠して測定したところ、4.0g/10分であった。
(6)アルカリ金属イオン(C)の定量
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。分解後に蓋をし、湿式分解装置(アクタック社の「MWS−2」)により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することでさらに分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し、純水でメスアップして測定用試料溶液とした。この試料溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社の「OPTIMA4300DV」)により金属元素の含有量を求めた。EVOH組成物ペレット中のナトリウムイオンの含有量は、ナトリウム元素換算値で150ppmであった。
(7)不飽和脂肪族アルデヒド(B)の定量
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを添加し、DNPH調整溶液を作製した。その後、上記(3)で得られたEVOH組成物ペレット1gをDNPH調整溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させた。この溶液にアセトニトリルを添加してEVOHを沈降させ、溶液を濾過・濃縮し、抽出サンプルを得た。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析を行ったところ、EVOH組成物ペレット中のクロトンアルデヒドの含有率は0.08ppmであった。なお、定量に際しては、クロトンアルデヒドをDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。
(8)EVOH組成物の水分率
EVOH組成物ペレット20gを熱風乾燥機内で120℃、24時間加熱させた後、下記式を用いてEVOH組成物ペレットの水分率を求めたところ、0.25質量%であった。
水分率(質量%)=((試料質量−乾燥後質量)/試料質量)×100
(9)単層フィルムの作製
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレットを製膜して単層フィルムを得た。東洋精機製作所社の20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件で製膜を行った。製膜された単層フィルムの引取りロール速度を変えることにより厚みを60μmに調整した。
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ
=170/210/210/210℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール温度:80℃
(10)テラヘルツ分光測定
上記(9)で得られた厚み60μmの単層フィルムを、熱風乾燥機内で80℃にて、10分間加熱してから、真空乾燥機で1ヶ月間乾燥させた。単層フィルムを真空乾燥機から取り出した後、速やかに遠赤外フーリエ変換分光光度計(日本分光社製「FARIS」)を用いて25℃でテラヘルツ分光測定(1〜8THz)を行うことで吸光曲線を得た。真空乾燥された単層フィルムを25℃、相対湿度11、22、33、44、55、66、76、86、90又は100%で1ヶ月間、恒温恒湿器内で調湿した。単層フィルムを恒温恒湿器から取り出した後、速やかに上記と同様にしてテラヘルツ分光測定(1〜8THz)をすることで各相対湿度における吸光曲線を得た。相対湿度11、22、33、44、55、66、76、86、90又は100%における吸収曲線と、相対湿度0%における吸収曲線の差分をフィルムの厚みで規格化し、各相対湿度での差分スペクトルを得た。図1に、単層フィルムを各相対湿度でテラヘル分光測定して得られた差分スペクトルを示す。これらの差分スペクトル(1〜8THz)について、各スペクトルの数値データをカンマ区切りCSV(comma−separated value)ファイルに変換し、二次元相関解析ソフトウエア(2D−shige)を用いて異時相関スペクトルを得た。ここで、相対湿度の上昇による差分スペクトルの値の増加が、周波数y(Y軸)よりも、周波数x(X軸)が先である場合を正として、異時相関スペクトルの値(Z軸)をプロットした。図2に、差分スペクトルから得られた異時相関スペクトルを示す。異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとる周波数x(X軸)の値は5.4THzであった。
(11)外観評価
上記(3)で得られたEVOH組成物ペレットを製膜して単層フィルムを得た。東洋精機製作所社の20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて、以下の条件で製膜を行った。製膜された単層フィルムの引取りロール速度を変えることにより厚みを20μmに調整した。得られた単層フィルムについて、目視にて外観性(ボイド)を下記評価基準により評価したところ、C判定であった。
<製膜条件>
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ
=180/290/290/290℃
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール温度:80℃
<評価>
A :ボイドなし
B :わずかにボイドが確認された
C :複数のボイドが確認された
D :多数のボイドが確認された
実施例2
MeOHの量を10kgにし、開始剤の供給量を1.0L/Hrにし、重合温度を80℃にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドの添加量を、得られるEVOH組成物ペレット中の含有量が1.8ppmとなるように調整したこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
実施例3
MeOHの量を5kgにし、エチレン圧力を3.8MPaにし、重合温度を80℃にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドを添加しないこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
比較例1
MeOHの量を23kgにし、V−70の代わりにベンゾイルパーオキサイドを使用し、開始剤を13g仕込み、エチレン圧力を4.1MPaにし、重合温度を67℃にし、けん化反応の時間を4時間にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドの添加量を、得られるEVOH組成物ペレット中の含有量が2.4ppmとなるように調整したこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。
比較例2
MeOHの量を21kgにし、V−70の代わりに2,2’−アゾイソブチロニトリルを使用し、開始剤を5g仕込み、エチレン圧力を4.3MPaにし、重合温度を70℃にした以外は、実施例1の(1)と同様にしてEVOHの合成を行った。クロトンアルデヒドを添加しないこと以外は、実施例1の(2)と同様にして含水EVOHペレットを製造した。こうして得られた含水EVOHペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEVOH組成物ペレット及び単層フィルムの作製及びそれらの評価を行った。結果を、表1にまとめて示す。

Claims (7)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)を主成分とする樹脂組成物であって、
    エチレンービニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が20〜55モル%であり、けん化度が90モル%以上であり、
    下記の各相対湿度で調湿された、前記樹脂組成物からなる厚み60μmの単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線から、相対湿度0%で調湿された、前記単層フィルムに1〜8THzの範囲のテラヘルツ光を照射することで得られる吸収曲線を差し引いた差分スペクトルに対し、二次元相関分光法を用いて得られる異時相関スペクトルにおいて、周波数y(Y軸)に対応する差分スペクトルの値よりも、周波数x(X軸)に対応する差分スペクトルの値が先に増加する場合を正とした場合に、異時相関スペクトルの値(Z軸)が正の最大値をとるxの値が5.2THz以上6.0THz未満である樹脂組成物。
    相対湿度(%):11、22、33、44、55、66、76、86、90、100
  2. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)がアルコキシル基を0.0005〜1モル%含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 不飽和脂肪族アルデヒド(B)を0.05〜90ppm含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 不飽和脂肪族アルデヒド(B)が、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. アルカリ金属イオン(C)を10〜500ppm含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する成形体。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体。
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