JP2019040681A - ニッケル金属水素化物電池用正極材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニッケル金属水素化物電池用の正極の導電性を向上させ得る技術を提供すること。【解決手段】ニッケル塩、インジウム塩及び水系溶媒を含有するメッキ溶液と、ニッケル水酸化物粒子と、還元剤と、を混合して混合液とし、前記ニッケル水酸化物粒子上にニッケル及びインジウムを含むメッキ層が形成された正極材料を得るメッキ工程を有する、ニッケル金属水素化物電池用正極材料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケル金属水素化物電池の正極に用いる正極材料を製造する方法に関する。
ニッケル金属水素化物電池は、正極活物質としてニッケル水酸化物を有する正極と、負極活物質として水素吸蔵合金を有する負極と、アルカリ金属水溶液からなる電解液とを具備する二次電池である。
ニッケル金属水素化物電池の性能を向上させるべく、種々の検討が行われている。ニッケル金属水素化物電池の正極活物質であるニッケル水酸化物は、比較的導電性に劣るため、正極に着目した技術として、導電性に優れる三次元構造の集電体をニッケル金属水素化物電池に用いる技術が提案されている。
特許文献1には、多孔質の発泡ニッケル基板に、ニッケル水酸化物を主成分とするペースト状混練物を充填し、乾燥後に加圧成形した、ニッケル金属水素化物電池用の正極板が開示されている。特許文献1には、板状の発泡心材にニッケルメッキを施した後、さらに加熱等して当該発泡心材を除去することで、当該発泡ニッケル基板が得られる旨が開示されている。
この種のニッケル金属水素化物電池用正極板におけるニッケル水酸化物は、導電性に優れる集電体の細孔に充填され、当該集電体に密接に一体化される。したがってこの種のニッケル金属水素化物電池用正極板においては、集電体自体が正極の厚さ方向に三次元的に分布して、正極活物質の導電パスを形成する。このため、この種のニッケル金属水素化物電池用正極板は、正極に優れた導電性を付与すると考えられる。
特開2001−35500号公報
ところで、上記の発泡ニッケル基板にかえて、一般的なリチウムイオン二次電池の電極のように、金属箔等の集電体を用いる場合には、ニッケル水酸化物を含むスラリーを集電体上に塗工して、正極活物質層を形成することが想定される。以下、必要に応じて、この種の電極の製造様式を集電体塗工型と称する。
集電体塗工型の正極において、正極活物質としてのニッケル水酸化物は、数多くの粒子として正極活物質層に含有されると考えられる。この粒子状の正極活物質の一部は集電体に近接した位置にあると考えられるが、大部分の正極活物質は、正極の厚さ方向において集電体と大きく離間すると考えられる。そしてその結果、正極活物質層全体としての導電性が損なわれる事態が想定される。このため、当該集電体塗工型の正極に充分な導電性を付与するためには、正極の設計を見直す必要がある。具体的には、集電体として発泡ニッケル基板を用いた従来のニッケル金属水素化物電池用正極板とは組成の異なる正極活物質層を設計する必要がある。
また、正極の設計を見直すことは、集電体として上記の発泡ニッケル基板を用いる場合にも有益であると考えられる。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、ニッケル金属水素化物電池用の正極の導電性を向上させ得る技術を提供することを目的とする。
本発明の正極材料の製造方法は、
ニッケル塩、インジウム塩及び水系溶媒を含有するメッキ溶液と、ニッケル水酸化物粒子と、還元剤と、を混合して混合液とし、前記ニッケル水酸化物粒子上にニッケル及びインジウムを含むメッキ層が形成された正極材料を得るメッキ工程を有する、ニッケル金属水素化物電池用正極材料の製造方法である。
本発明の正極材料の製造方法によると、ニッケル金属水素化物電池の正極に優れた導電性を付与し得る正極材料を製造し得る。
実施例1〜実施例3及び参考例1の正極材料についての導電性評価の結果である。 実施例4〜実施例7の正極材料についての導電性評価の結果である。
以下、本発明の正極材料の製造方法について詳細に説明する。以下、必要に応じて、本発明の正極材料の製造方法を、本発明の製造方法、又は単に製造方法と称する場合がある。また、本発明の製造方法で得られた正極材料を、本発明の正極材料、又は単に正極材料と称する場合がある。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。更に、上記の何れかの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
本発明の製造方法は、
ニッケル塩、インジウム塩及び水系溶媒を含有するメッキ溶液と、ニッケル水酸化物粒子と、還元剤と、を混合して混合液とし、前記ニッケル水酸化物粒子上にニッケル及びインジウムを含むメッキ層が形成された正極材料を得るメッキ工程を有する、ニッケル金属水素化物電池用正極材料の製造方法である。
本発明の製造方法は、特許文献1に紹介されている従来技術のように導電性を有する発泡ニッケル基板の細孔内にニッケル水酸化物粒子を充填するのではなく、還元剤を用いた無電解メッキを行うことでニッケル水酸化物粒子に導電性を有する金属層を形成する方法である。
本発明の製造方法はメッキ工程を有する。
メッキ工程においては、ニッケル塩、インジウム塩及び水系溶媒を含有するメッキ溶液を用いる。
ニッケル塩に含まれるニッケル、及び、インジウム塩に含まれるインジウムは、メッキ層を構成する主たる材料である。水系溶媒は、ニッケル塩及びインジウム塩等を溶解させる溶媒となる。つまりニッケル及びインジウムはメッキ溶液中でイオンとして存在すると考えられる。
メッキ工程においては、上記のメッキ溶液と、ニッケル水酸化物粒子と、還元剤と、を混合して混合液とし、ニッケル水酸化物粒子上にニッケル及びインジウムを含むメッキ層が形成された正極材料を得る。
ニッケル水酸化物粒子は、ニッケル金属水素化物電池における正極活物質であり、メッキ溶液中のニッケルイオン及びインジウムイオンは、混合液中において、還元剤から供給される電子によって還元されて0価の金属となり、ニッケル水酸化物粒子の表面に析出する。そして、ニッケル水酸化物粒子の表面に析出したニッケル、インジウム、及びこれらの合金が、ニッケル水酸化物粒子上のメッキ層を構成する。
このような本発明の製造方法によると、導電性に優れるメッキ層をニッケル水酸化物粒子上に直接形成することで、正極材料自体に優れた導電性を付与し得る。導電性に優れる正極材料は、正極活物質層中において、正極材料自体による導電パスを形成し得るため、集電体塗工型の正極に好適に使用し得る。
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
メッキ溶液に用いるニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル等を例示できる。また、メッキ溶液に用いるインジウム塩としては、硫酸インジウム、硝酸インジウム、塩化インジウム、酢酸インジウム、スルファミン酸インジウムを例示し得る。
メッキ溶液は、ニッケル塩、インジウム塩及び水系溶媒を含有すれば良いが、それ以外のものを含んでも良い。例えば、メッキ溶液は、ニッケル塩及びインジウム塩以外の金属塩を含んでも良い。当該金属塩は、無電解メッキに使用され得る各種金属の塩であるのが好ましく、メッキ可能性と、金属の耐酸化性を鑑みると、Cu、Sn、Zn、Co、Au、Ag、Pt、Pd、Rh又はRuが好ましい。導電性の点では、好ましい順序は、概ねAg、Cu、Au、Rh、Co、Zn、Ru、Pt、Pd、Snの順となる。展延性の点では、Au、Ag、Cu、Sn、Zn、Pt及びPdが好ましい。
金属塩としては、これらの金属の硫酸塩、硝酸塩、塩化物等を例示できる。より具体的には、金属塩としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、スルファミン酸コバルト、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、硫酸銀、硝酸銀、ヘキサクロリド白金酸、シアン化金カリウム、亜硫酸金ナトリウムを例示できる。金属塩としては1種類のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
メッキ溶液に配合するニッケル塩とインジウム塩との比は特に問わないが、ニッケルとインジウムとの元素比として、ニッケル:インジウム=1:99〜99:1となる範囲、ニッケル:インジウム=99:1〜55:45となる範囲、ニッケル:インジウム=99:1〜60:40となる範囲、ニッケル:インジウム=99:1〜75:25となる範囲、及び、ニッケル:インジウム=99:1〜80:20となる範囲を挙げることができる。インジウムに対するニッケルの量が多い程、正極材料の導電性が向上する傾向がある。
メッキ溶液がニッケル塩及びインジウム塩以外の金属塩を含む場合、当該金属の量は特に問わない。強いて範囲を挙げるならば、ニッケル、インジウム及び金属の元素比で、(ニッケル+インジウム):金属=100:0〜50:50となる範囲、(ニッケル+インジウム):金属=100:0〜80:20となる範囲、(ニッケル+インジウム):金属=100:0〜90:10となる範囲、を挙げることができる。
以下、必要に応じて、メッキ溶液に含まれるニッケル塩及びインジウム塩、更に場合に応じてその他の金属塩を総称してメッキ金属塩と称する。また、当該メッキ金属塩を構成する金属をメッキ金属と称する。メッキ溶液におけるメッキ金属塩の濃度としては、例えば2〜500g/Lの範囲を例示できる。
メッキ溶液は、メッキ金属塩及び水系溶媒以外の材料を含み得る。例えば、メッキ溶液は更に添加剤を含み得る。添加剤としては、ヘテロ元素含有有機化合物が好適である。ヘテロ金属含有有機化合物は、メッキ溶液中においてメッキ金属イオンと錯体を形成する錯化剤として機能し得る。つまり、メッキ溶液にヘテロ元素含有有機化合物を含む場合、メッキ金属はメッキ溶液中において安定な錯体として存在すると考えられる。
ところで、メッキ溶液中において、メッキ金属は水に溶解した状態にある。錯化剤を用いない無電解メッキを行う場合、メッキ溶液の組成やメッキ層の形成条件等によっては、メッキ溶液中のメッキ金属イオンの一部が水酸化物となって沈殿する可能性がある。このような状態のメッキ溶液をメッキ工程に用いる場合、メッキ工程で得られるメッキ層が部分的に粗大化したり、不均質となったり、ニッケルやインジウムを金属でなく水酸化物として多く含んだりする可能性がある。このようなメッキ層は、導電性に優れるとは言い難い場合がある。
メッキ溶液に錯化剤を用い、メッキ金属を錯体化することで、メッキ溶液中においてメッキ金属を安定した溶解状態とすることが可能であり、上記したメッキ金属の沈殿等を抑制できると考えられる。そして、メッキ金属イオンを、メッキ工程に供される直前まで安定した溶解状態とすることで、均質なメッキ層を得ることができ、正極材料に均質かつ優れた導電性を付与し得ると考えられる。
ヘテロ元素含有有機化合物におけるヘテロ元素とは、N、O、P又はSを意味する。ヘテロ元素含有有機化合物としては、メッキ金属イオンに配位可能なアミノ基、アミド基、イミド基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン酸基、ホスフィン酸エステル基、ホスフェン酸基、ホスフェン酸エステル基、亜ホスフェン酸基、亜ホスフェン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、スルホン酸基、チオカルボキシル基、チオエステル基若しくはチオカルボニル基を具備する有機化合物を挙げることができる。
特に、ヘテロ元素含有有機化合物としては、上記の基を複数有し、かつ、複数箇所でメッキ金属イオンに配位可能なキレート化合物が好ましい。
或いは、ヘテロ元素含有有機化合物はカルボキシル基、アミノ基、水酸基、ケトン基、イミド基の何れかを備えるのが好ましい。
キレート化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン化合物、グリシン、アラニン、システイン、グルタミン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、エチレンジアミン四酢酸などのアミノ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、キナ酸、シキミ酸、サリチル酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸などのヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
これらのヘテロ元素含有有機化合物は1種のみを用いても良いし、複数種を併用しても良い。
メッキ溶液におけるヘテロ元素含有有機化合物の濃度は、メッキ溶液においてメッキ金属と錯体を形成し得る量であれば良く、メッキ金属の種類や量に応じて適宜設定し得る。メッキ溶液へのヘテロ元素含有有機化合物の配合量は、化学量論的に、メッキ金属の半量以上と錯体を形成し得る量であるのが好ましく、メッキ金属の2/3量以上と錯体を形成し得る量であるのがより好ましく、メッキ金属の全量と錯体を形成し得る量配合するのが更に好ましい。なお、ヘテロ元素含有有機化合物は、メッキ金属の全量と錯体を形成し得る量以上、つまり過剰量配合するのが特に好ましい。
ところで、メッキ溶液は、ニッケル塩とインジウム塩と水系溶媒とを一度に混合して調製することもできるし、それ以外の方法で調製することもできる。例えば、ニッケル塩と水系溶媒とを混合したニッケル溶液と、インジウム塩と水系溶媒とを混合したインジウム溶液と、を別々に調製しておき、これらを混合することでメッキ溶液を調製しても良い。この場合、メッキ溶液は、ニッケル水酸化物及び還元剤と混合する前に予め調製しておいても良い。メッキ溶液を調製する工程を、必要に応じて、メッキ溶液調製工程と称する。
或いは、別々に調製したニッケル溶液とインジウム溶液とを、混合しない状態のままで、メッキ工程に用いても良い。つまり、メッキ溶液は、ニッケル及びインジウムの溶液であっても良いし、ニッケル溶液とインジウム溶液との二液型であっても良い。何れの場合にも、メッキ溶液はヘテロ元素含有有機化合物を含むのが好ましく、メッキ溶液がニッケル溶液とインジウム溶液とで構成される場合には、ニッケル溶液とインジウム溶液との各々がヘテロ元素含有有機化合物を含むのが好ましい。
メッキ溶液に用いる水系溶媒は、水を主成分とすれば良く、必要に応じて、水以外の溶媒を含んでも良い。当該水以外の溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、シクロヘキサノン等が例示される。これらの溶媒は、一種又は複数種を水と混合して用いれば良い。
メッキ工程の前に、ニッケル水酸化物粒子の表面にメッキ層成長の活性点となる触媒核を形成する処理工程を行っても良い。更に、処理工程の前に、界面活性剤や塩基性水溶液などでニッケル水酸化物粒子を処理して、ニッケル水酸化物粒子の表面を改質しても良い。処理工程は定法に則って行えば良い。
具体的な処理工程としては、例えば、ニッケル水酸化物粒子をPd含有溶液と接触させて、ニッケル水酸化物粒子の表面にPdを付着させる工程を挙げることができる。
より具体的な処理工程の一例について説明する。まず、ニッケル水酸化物粒子と塩化スズ塩酸水溶液とを混合して、ニッケル水酸化物粒子の表面の酸化被膜を除去するとともに、ニッケル水酸化物粒子の表面に2価のスズイオンを吸着させた上で、当該ニッケル水酸化物粒子を濾過にて分離する。次いで、当該ニッケル水酸化物粒子を塩化パラジウム塩酸水溶液と混合することにより、0価のPdをニッケル水酸化物粒子に付着させる。ここでの現象は、ニッケル水酸化物粒子の表面で、Sn(II)+Pd(II)→Pd(0)+Sn(IV)の反応が進行したことに因る。上述の方法で、ニッケル水酸化物粒子の表面に触媒核を形成することができると考えられる。
また、処理工程の他の一例として、塩化パラジウム及び塩化スズなどのPd(II)及びSn(II)を含有する水溶液に、ニッケル水酸化物粒子を接触させる方法を挙げることができる。この方法でも、0価のPdをニッケル水酸化物粒子の表面に付着させることができる。処理工程では、塩化スズ水溶液に換えて、濃塩酸などの強酸水溶液を用いてもよい。
塩化スズ水溶液としては、日本カニゼン株式会社製の商品名ピンクシューマーなどの市販品を用いてもよいし、塩化スズを塩酸に溶解した水溶液を用いてもよい。また、塩化パラジウム水溶液としては、日本カニゼン株式会社製の商品名レッドシューマーなどの市販品を用いてもよいし、塩化パラジウムを水に溶解した水溶液を用いてもよい。塩化パラジウム水溶液には、上記した錯化剤やその他の添加剤、例えばpH調整剤、緩衝剤などを添加してもよい。
処理工程の後に、水や酸水溶液などでニッケル水酸化物粒子を洗浄する洗浄工程を加えても良い。
ニッケル水酸化物粒子とは、粒子状のニッケル水酸化物を指す。ニッケル水酸化物は、ニッケル金属水素化物電池の正極活物質として使用できれば良く、その一部に他の金属がドープされていても良い。具体的なニッケル水酸化物として、水酸化ニッケル、金属をドープした水酸化ニッケルを例示できる。水酸化ニッケルにドープする金属として、マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムなどの第9族元素、亜鉛、カドミウムなどの第12族元素を例示できる。
ニッケル水酸化物粒子は粒子状であれば良く、その粒子径は特に問わないが、例えば、平均粒子径1〜100μm、3〜50μm、5〜30μmの範囲を挙げることができる。
なお、本明細書で単に平均粒子径と言う場合には、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
ニッケル水酸化物粒子は、粒子そのままでメッキ工程に用いても良いし、或いはニッケル水酸化物粒子を分散媒に分散させたニッケル水酸化物分散液としてメッキ工程に用いても良い。ニッケル水酸化物分散液の分散媒としては、水系溶媒を用いるのが好ましい。当該水系溶媒としては、上記したメッキ溶液の欄で説明したものを使用すれば良い。ニッケル水酸化物分散液の水系溶媒としては、メッキ溶液の水系溶媒と異なるものを用いても良いが、同じものを用いるのが好ましい。
メッキ工程で用いる還元剤は、メッキ金属イオンを還元する役割を担う。還元剤としては、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、アスコルビン酸、蟻酸、チオ尿素、ヒドロキノン、ジメチルアミノボラン、ヒドラジンを例示できる。メッキ工程には、1種類の還元剤を用いてもよいし、複数種類の還元剤を用いてもよい。なお、還元剤として次亜リン酸や次亜リン酸ナトリウムを用いた場合には、Pがメッキ層に含まれる。また、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又はジメチルアミノボランを用いた場合には、Bがメッキ層に含まれる。
メッキ溶液、ニッケル水酸化物粒子、及び還元剤の混合液における還元剤の濃度としては、例えば1〜200g/Lの範囲を例示できる。以下、必要に応じて、メッキ溶液、ニッケル水酸化物粒子、及び還元剤の混合液をメッキ混合液と称する。
メッキ混合液には、更に、有機化合物系分散剤を加えるのが好ましい。上記したように、還元剤によりメッキ混合液中のメッキ金属イオンが還元され、ニッケル水酸化物粒子の表面にメッキ金属が析出する。メッキ混合液に有機化合物系分散剤を加えることで、ニッケル水酸化物粒子の表面に析出したメッキ金属は、有機化合物系分散剤を原料とするコート層によって覆われると考えられる。そして、当該コート層によって覆われつつメッキ金属が析出することで、メッキ金属が粗大に粒成長し難くなるため、メッキ金属は比較的小さな粒子としてメッキ層に存在すると考えられる。つまりこの場合には、メッキ層は、小形の粒子状をなすメッキ金属が各々コート層で覆われた、複合粒子の集合体で構成されると考えられる。
メッキ金属が粗大に粒成長すると、充分な量の電解液がニッケル水酸化物に供給され難い場合がある。しかし、上記したようにメッキ混合液に有機化合物系分散剤を加えて得られた比表面積の大きなメッキ層は、ポーラスであり電解液の輸液性能に優れるため、当該メッキ層を有する正極材料を用いることで、ニッケル金属水素化物電池の電池特性が向上すると考えられる。
また、メッキ混合液に有機化合物系分散剤を加えることで、メッキ層による正極材料同士の凝着又は固着を抑制でき、メッキ工程後の正極材料を簡単に解砕できる利点もある。
有機化合物系分散剤は、一般的に分散剤として用いられる化合物、ポリマー又は当該ポリマーを形成し得るモノマーであれば良いが、水溶性又は親水性であるのが好ましい。メッキ混合液に含まれるメッキ溶液には、水系溶媒が用いられているためである。有機化合物系分散剤としては、特に水溶性ポリマー又は水溶性モノマーが好ましい。
当該ポリマーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ジアセチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン−マレイン酸共重合体、非架橋ポリアクリルアミド等が挙げられる。既述したように、これらポリマーを構成し得るモノマーもまた好ましく用いられる。又、その他の化合物としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルフェノールエトキシレート等を挙げることができる。
有機化合物系分散剤は、メッキ金属塩を100質量部としたときに、0.1〜200質量部となる量添加するのが好ましく、1〜150質量部となる量添加するのがより好ましく、10〜100質量部となる量添加するのが更に好ましく、25〜75質量部となる量添加するのが特に好ましい。
メッキ混合液には、その他の添加剤を配合しても良い。添加剤としては、例えば、pH調整剤、緩衝剤などが挙げられる。これらはメッキ工程においてメッキ混合液に添加しても良いし、或いは、予めメッキ溶液に添加しても良いし、ニッケル水酸化物分散液に添加しても良い。
メッキ混合液のpHは、通常、4〜14の範囲内のうち、メッキ金属塩及び還元剤の種類に応じて適切な値に調整される。例えば、ニッケル塩及び次亜リン酸ナトリウムを用いるメッキ混合液においては、pHが4〜9の範囲が好ましい。メッキ混合液のpHの好ましい範囲として、4〜6、4〜5、4.1〜4.8、4.2〜4.5、4.3〜4.4の各範囲を挙げることができる。
pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸、塩酸を例示できる。
メッキ混合液のpH変動は、無い又は穏やかであるのが好ましい。緩衝剤は、メッキ混合液の急激なpH変動を抑制する目的で用いられる。緩衝剤としては、ヒドロキシ酢酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、クエン酸などの弱酸、及び、これらの塩を例示できる。緩衝剤として、既述したヘテロ元素含有有機化合物と同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良い。
メッキ混合液に添加され得るその他の添加剤として、硝酸ビスマス、ヨウ素酸、ポリエチレングリコール、各種の界面活性剤を挙げることができる。
メッキ混合液の原料としては、公知のものを採用しても良いし、市販品を購入して用いても良い。或いは、市販の無電解メッキ用水溶液にニッケル水酸化物粒子等を添加して使用しても良い。市販の無電解メッキ用水溶液として、日本カニゼン株式会社製の商品名ブルーシューマー、S−680、SE−680、SD−200、S−300、S−760、S−762、SE−660、SE−666、S−500、SE−650、SFK−63、S−810、SEK−670、S−795、SEK−797、カニボロンSKB−230、SFB−26を例示できる。
メッキ工程においては、ニッケル水酸化物粒子とメッキ溶液との混合液に対して還元剤溶液を滴下する方法が好ましい。メッキ反応を均一に進行させるために、メッキ工程は撹拌条件下で行われるのが好ましい。
ところで、メッキ溶液、ニッケル水酸化物粒子、及び還元剤溶液の混合液中において、メッキ金属イオンは還元剤から供給される電子によって還元されて0価の金属となり、混合液中に徐々に析出する。ここで析出したメッキ金属及びメッキ金属の合金はメッキ層を構成する。
このとき、メッキ溶液とニッケル水酸化物粒子とを先に混合液とし、当該混合液に還元剤溶液を加える場合には、混合液中のメッキ金属イオンと還元剤との反応は徐々に進行し、メッキ金属及びメッキ金属の合金は徐々に析出し、当該析出物はゆっくりと粒成長する。当該析出物には、ニッケル金属、インジウム金属、及びニッケルインジウム合金の結晶が含まれると考えられるため、粒子形成工程においては、当該結晶がゆっくりと成長すると考えられる。そしてその結果、本発明の製造方法によると、比較的大きく均質な結晶を有するメッキ層が得られると推測される。
ここで、上記とは逆に、還元剤にメッキ溶液及びニッケル水酸化物粒子を加えて混合液とする場合には、高濃度の還元剤にメッキ溶液及びニッケル水酸化物粒子を徐々に加えることとなる。したがってこの場合には、メッキ金属イオンと還元剤との反応は急激に進行し、メッキ金属及びその合金は急激に析出する。換言すれば、結晶核の析出が結晶成長よりも有利になる。
つまり、メッキ工程において、メッキ溶液及びニッケル水酸化物粒子に還元剤溶液を加える場合には、還元剤溶液にメッキ溶液及びニッケル水酸化物粒子を加える場合とは異なる、新規なメッキ層が得られると言い得る。
メッキ工程におけるメッキ温度としては、50〜95℃が好ましく、60〜95℃がより好ましい。温度が高いほど、メッキ反応が速やかに進行する。本発明の正極材料におけるメッキ層の厚みは、メッキ溶液の量、濃度、メッキ反応時間に応じて変化する。
本発明の製造方法は、メッキ工程によって得られた正極材料を洗浄する工程や、乾燥工程を有しても良い。更に、当該正極材料を加熱する加熱工程を有しても良い。
但し、加熱工程の温度は、200℃以下であるのが好ましい。高温下ではニッケル水酸化物が分解して、ニッケル金属水素化物電池用正極活物質としての活性を失うためである。より好ましい加熱温度としては、80℃以上200℃以下、100℃以上200℃以下、120℃以上200℃以下、150℃以上200℃以下、150℃を超え200℃以下、160℃以上200℃未満、170℃以上195℃以下、175℃以上195℃以下、の各範囲を挙げ得る。特に、インジウムの融点である156.6℃以上の温度で加熱工程を行うのが良いと考えられる。加熱工程でインジウムが溶融することで、メッキ層がニッケル水酸化物粒子を好適に覆い得る等の利点がある。
なお本明細書において、加熱工程とは、室温を超える温度で正極材料を加熱する工程を意味する。
加熱工程の時間は特に問わないが、30分以上であるのが好ましい。より好ましい加熱工程の時間として、60分以上、120分以上、180分以上、240分以上、300分以上の各範囲が挙げられる。
本発明の正極材料において、メッキ層は、ニッケル水酸化物粒子の全体を被覆しているのが好ましく、また、均一に被覆しているのが好ましい。
ニッケル水酸化物粒子をニッケル金属水素化物電池用の正極活物質として用いることを考慮すると、水素イオンを円滑に吸蔵及び放出するとの観点からは、メッキ層の膜厚は、500nm以下が好ましい。メッキ層の膜厚の範囲としては、2〜500nmが好ましく、2〜400nmがより好ましく、2〜300nmがさらに好ましい。
本発明の正極材料におけるメッキ層は、メッキ溶液に含まれるニッケル及びインジウムを含有する。これらはメッキ層に如何なる状態で含まれても良い。例えば、ニッケル及びインジウムは、水酸化物、酸化物、又は金属状態でメッキ層に含まれても良い。或いは、ニッケルとインジウムとを含有する合金状態で含まれても良い。これらの2種以上の複合状態であっても良い。何れの場合にも、メッキ層による導電性を充分に高めることを考慮すると、メッキ層に含まれるニッケル及びインジウムは、少なくとも一部が金属状態又は合金状態であるのが好ましい。なお、メッキ層は結晶性であっても良いし、非晶質を含んでいても良いし、これらの混合状態であっても良いが、導電性を考慮すると結晶性であるのが好ましい。
本発明の正極材料は、ニッケル金属水素化物電池用の正極材料として使用できる。ニッケル金属水素化物電池は、正極、負極、電解液及びセパレータを具備する。以下、ニッケル金属水素化物電池について説明する。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを含む。負極は、集電体と集電体の表面に形成された負極活物質層とを含む。以下、正極の構成から説明するが、負極の構成と重複するものについては、正極との限定を付さずに説明する。
集電体は、ニッケル金属水素化物電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。集電体の材料としては、ニッケル、又は、ニッケルめっきを施した金属材料が好ましい。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュ、スポンジ状などの形態をとることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、また、多数の孔を具備する、いわゆるパンチングメタル状のものや、切れ目の入った金属板を押し広げて網目状にした、いわゆるエキスパンドメタル状のものが好ましい。なお、本発明の正極材料は、箔、シート、フィルム形態の集電体を用いる集電体塗工型の正極にも優れた導電性を付与し得る。
正極活物質層は、正極活物質を含み、必要に応じて正極添加剤、結着剤及び導電助剤を含む。
正極活物質層には、正極活物質たるニッケル金属水酸化物が正極活物質層全体の質量に対して、75〜99質量%で含まれるのが好ましく、80〜97質量%で含まれるのがより好ましく、82〜95質量%で含まれるのがさらに好ましい。ニッケル金属水酸化物粒子上にメッキ層が形成された本発明の正極材料についても同様に、正極活物質層全体の質量に対して、75〜99質量%で含まれるのが好ましく、80〜97質量%で含まれるのがより好ましく、82〜95質量%で含まれるのがさらに好ましい。
正極には、本発明の正極材料以外に導電助剤を含み得る。導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤は、正極材料のメッキ層とともに、導電パスを形成し得る。そのため、導電助剤は、正極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤は、例えば粉末状態で正極活物質層に添加されれば良い。電助剤としては化学的に不活性な電子伝導体であれば良い。具体的な導電助剤としては、コバルト、ニッケル、銅などの金属、コバルト酸化物などの金属酸化物、コバルト水酸化物などの金属水酸化物、カルボニルニッケルなどの金属の一酸化炭素錯体、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維などの炭素材料が例示される。
負極もまた、必要に応じて導電助剤を含み得る。負極の導電助剤に関しても、正極の導電助剤と同様である。
活物質層には、導電助剤が活物質層全体の質量に対して、0.1〜20質量%で含まれるのが好ましい。正極活物質層には、導電助剤が正極活物質層全体の質量に対して、1〜15質量%で含まれるのが好ましく、3〜12質量%で含まれるのがより好ましく、5〜10質量%で含まれるのがさらに好ましい。負極活物質層には、導電助剤が負極活物質層全体の質量に対して、0.1〜5質量%で含まれるのが好ましく、0.2〜3質量%で含まれるのがより好ましく、0.3〜1質量%で含まれるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
正極添加剤は、ニッケル金属水素化物電池の電池特性を向上させるために正極に添加されるものである。正極添加剤としては、ニッケル金属水素化物電池の正極添加剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な正極添加剤として、Nbなどのニオブ化合物、WO、WO、LiWO、NaWO及びKWOなどのタングステン化合物、Ybなどのイッテルビウム化合物、TiOなどのチタン化合物、Yなどのイットリウム化合物、ZnOなどの亜鉛化合物、CaO、Ca(OH)及びCaFなどのカルシウム化合物、並びに、その他の希土類酸化物を例示できる。
正極活物質層には、正極添加剤が正極活物質層全体の質量に対して、0.1〜10質量%で含まれるのが好ましく、0.5〜5質量%で含まれるのがより好ましい。
結着剤は活物質などを集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ニッケル金属水素化物電池の電極用結着剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミドなどのイミド系樹脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、スチレンブタジエンゴムなどの共重合体、並びに、(メタ)アクリル酸誘導体をモノマー単位として含有する、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂を例示できる。
活物質層には、結着剤が活物質層全体の質量に対して、0.1〜15質量%で含まれるのが好ましく、1〜10質量%で含まれるのがより好ましく、2〜7質量%で含まれるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
負極は正極と同様にどのような形状であっても良く、集電体塗工型としても良い。集電体塗工型の負極は、集電体及び負極活物質層で構成され得る。
負極活物質層は、負極材料を含み必要に応じて負極添加剤、結着剤及び導電助剤を含む。負極材料としては、負極活物質たる水素吸蔵合金粒子をそのまま用いても良いし、導電性のメッキを施した水素吸蔵合金を用いても良い。結着剤及び導電助剤については上述したとおりである。
水素吸蔵合金とは、基本的に、容易に水素と反応するものの、水素の放出能力に劣る金属Aと、水素と反応しにくいものの、水素の放出能力に優れる金属Bとの合金である。Aとしては、Mgなどの第2族元素、Sc、ランタノイドなどの第3族元素、Ti、Zrなどの第4族元素、V、Taなどの第5族元素、複数の希土類元素を含有するミッシュメタル(以下、Mmと略すことがある。)、Pdなどを例示できる。また、Bとしては、Fe、Co、Ni、Cr、Pt、Cu、Ag、Mn、Zn、Alなどを例示できる。
具体的な水素吸蔵合金として、六方晶CaCu型結晶構造を示すAB型、六方晶MgZn型若しくは立方晶MgCu型結晶構造を示すAB型、立方晶CsCl型結晶構造を示すAB型、六方晶MgNi型結晶構造を示すAB型、体心立方晶構造を示す固溶体型、並びに、AB型及びAB型の結晶構造が組み合わされたAB型、A型及びA19型のものを例示できる。水素吸蔵合金は、以上の結晶構造のうち、1種類を有するものでもよいし、また、以上の結晶構造の複数を有するものでもよい。
AB型水素吸蔵合金として、LaNi、CaCu、MmNiを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、MgZn、ZrNi、ZrCrを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、TiFe、TiCoを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、MgNi、MgCuを例示できる。固溶体型水素吸蔵合金として、Ti−V、V−Nb、Ti−Crを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、CeNiを例示できる。A型水素吸蔵合金として、CeNiを例示できる。A19型水素吸蔵合金として、CeCo19、PrCo19を例示できる。上記の各結晶構造において、一部の金属を、他の1種類若しくは複数種類の金属又は元素で置換してもよい。
水素吸蔵合金粒子は、上記の水素吸蔵合金で構成された粒子であれば良く、その形状は特に問わないが、負極活物質として使用することを考慮すると、充分に小さいものであるのが好ましい。具体的には、水素吸蔵合金粒子の平均粒子径は、1〜100μmの範囲内が好ましく、3〜50μmの範囲内がより好ましく、5〜30μmの範囲内がさらに好ましい。更には、水素吸蔵合金粒子の平均粒子径は27μm以下であるのが好ましく、20μm以下であるのがより好ましく、15μm以下であるのが更に好ましく、10μm以下であるのが特に好ましい。
負極活物質層には、負極材料が負極活物質層全体の質量に対して、85〜99質量%で含まれるのが好ましく、90〜98質量%で含まれるのがより好ましい。
負極添加剤は、ニッケル金属水素化物電池の電池特性を向上させるために負極に添加されるものである。負極添加剤としては、ニッケル金属水素化物電池の負極添加剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な負極添加剤として、CeF及びYFなどの希土類元素のフッ化物、Bi及びBiFなどのビスマス化合物、In及びInFなどのインジウム化合物、並びに、正極添加剤として例示した化合物を挙げることができる。
負極活物質層には、負極添加剤が負極活物質層全体の質量に対して、0.1〜10質量%で含まれるのが好ましく、0.5〜5質量%で含まれるのがより好ましい。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤、導電助剤及び添加剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
セパレータは、正極と負極とを隔離して、両極の接触による短絡を防止しつつ、電解液の貯留空間及び通路を提供するものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
セパレータは、表面に親水化処理が施されていることが好ましい。親水化処理としては、スルホン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理を例示できる。
電解液は、ニッケル金属水素化物電池用の電解液として一般に用いられる強塩基水溶液を用いれば良い。強塩基水溶液として、具体的には、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液が挙げられる。電解液としては、一種のみの強塩基水溶液を用いても良いし、複数種の強塩基水溶液を混合して用いても良い。
また、電解液には、ニッケル金属水素化物電池用電解液に採用される公知の添加剤が添加されていてもよい。
ニッケル金属水素化物電池の製造方法としては、正極及び負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とし、正極の集電体及び負極の集電体から外部に通ずる正極端子及び負極端子までを集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてニッケル金属水素化物電池とするとよい。
ニッケル金属水素化物電池の形状は特に限定されるものでなく、角型、円筒型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
以上、本発明の製造方法及び本発明の正極材料を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
(実施例1)
<メッキ溶液調製工程>
ニッケル塩として硫酸ニッケルを、インジウム塩として硫酸インジウムを、ヘテロ元素含有有機化合物としてマロン酸を、水系溶媒として水を用いてメッキ溶液を調製した。
先ず、NiSO・6HOを2.705g、In(SO・9HOを0.390g、マロン酸を1.5gずつ計り取り、75gの蒸留水を加えた。これを90℃に加熱して溶液とし、更にこの溶液を80℃に保ちつつpH4〜5となるようにNaOHを添加して、メッキ溶液を得た。このメッキ溶液におけるニッケル元素とインジウム元素との比は、9:1であった。
<メッキ工程>
還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを1.0g計り取り、100mlになるまで蒸留水を加えて、還元剤溶液を得た。
ニッケル金属水酸化物粒子として、水酸化コバルトがコートされていない水酸化ニッケル粉末を用いた。当該水酸化ニッケル粉末の平均粒子径は10μmであった。
ガラス製反応槽に、上記の水酸化ニッケル粉末60gを添加し、反応槽内の液量が400mlになるように蒸留水を加えて、スラリー状のニッケル水酸化物分散液とした。
パドル型撹拌羽根を用いて反応槽内のニッケル水酸化物分散液を撹拌した。この反応槽に先ずメッキ溶液を加え、次いで還元剤溶液を滴下した。このとき反応槽中の溶液のpHを4.5付近に維持した。攪拌とpH調整を続けつつ還元剤溶液の全量を滴下して、混合液を得た。この工程により、ニッケル金属水酸化物粒子の表面にメッキ層が形成された正極材料を得た。なお、混合液におけるニッケル元素とインジウム元素との存在比は、メッキ溶液におけるニッケル元素とインジウム元素との配合比と同様に、9:1であった。
その後速やかに、混合液を濾別し、濾別した固形分、つまり正極材料を純水で洗浄した。洗浄後の正極材料を真空乾燥し、乾燥後の正極材料を、乳鉢を用いて大気中で解砕した。
(実施例2)
メッキ溶液調製工程において、メッキ溶液にNiSO・6HOを2.25g、In(SO・9HOを0.98g配合したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の正極材料を得た。なお、実施例2の製造方法において、メッキ溶液におけるニッケル元素とインジウム元素との配合比は7.5:2.5であり、混合液におけるニッケル元素とインジウム元素との存在比もまた7.5:2.5であった。
(実施例3)
メッキ溶液調製工程において、メッキ溶液にNiSO・6HOを1.81g、In(SO・9HOを1.56g配合したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の正極材料を得た。なお、実施例3の製造方法において、メッキ溶液におけるニッケル元素とインジウム元素との配合比は6:4であり、混合液におけるニッケル元素とインジウム元素との存在比もまた6:4であった。
った。
(参考例1)
メッキ溶液調製工程において、メッキ溶液にNiSO・6HOを3g配合しIn(SO・9HOを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、参考例1の正極材料を得た。なお、参考例1の製造方法において、メッキ溶液におけるニッケル元素とインジウム元素との配合比は10:0であり、混合液におけるニッケル元素とインジウム元素との存在比もまた10:0であった。
(比較例1)
メッキ層を形成せず水酸化コバルトコートもなされなかった水酸化ニッケル粉末を、比較例1の正極材料とした。
(参考例2)
水酸化コバルトコートだけがなされた水酸化ニッケル粉末を、参考例2の正極材料とした。参考例2の正極材料は、メッキ層を有さず、コバルトコートのみを有する。
(評価1 導電性)
実施例1〜実施例3、参考例1、参考例2及び比較例1の正極材料につき、各々粉体抵抗を測定した。測定装置としては、株式会社 三菱化学アナリテック製の粉体抵抗測定器を用いた。導電性評価の結果を表1及び図1に示す。
メッキ層を形成せず水酸化コバルトコートもなされなかった水酸化ニッケル粉末、つまり、比較例1の正極材料の粉体抵抗(Ω・cm)は、10オーダーであり、評価1の測定器で測定し得る上限値を超えていた。これに対して、ニッケル及びインジウムを含むメッキ層を有する実施例1〜実施例3の正極材料については、何れも粉体抵抗が大きく低減し、導電性が向上していた。この結果から、ニッケル及びインジウムを含むメッキ層を設けることで、ニッケル水酸化物粒子を正極活物質とする正極材料に、優れた導電性を付与し得ることがわかる。
また、水酸化コバルトコートだけがなされメッキ層を形成しなかった水酸化ニッケル粉末、つまり、参考例2の正極材料の粉体抵抗は、17Ω・cm程度であった。表1及び図1に示すように、実施例の正極材料の粉体抵抗は、メッキ溶液のニッケル含有割合、つまり、メッキ層のニッケル含有割合が大きくなる程低減するところ、ニッケル元素とインジウム元素との存在比が0.75:0.25であった実施例2の正極材料において、正極材料の粉体抵抗は水酸化コバルトコートだけがなされた参考例2の正極材料の粉体抵抗と同等であった。この結果から、メッキ溶液において、ニッケル元素に対するインジウム元素の量を100×0.25/(0.75+0.25)以下、つまり、ニッケル元素とインジウム元素との合計を100%とした時のインジウム元素の量を25%以下とすることで、メッキ層にインジウムを配合しつつ、水酸化コバルトコートした場合と同等以上の導電性を正極材料に付与できるといえる。
(実施例4)
実施例4の製造方法では、実施例2の製造方法で得られた正極材料に、更に加熱工程を行った。これ以外は、実施例4の製造方法は実施例2の製造方法と同様である。実施例4の製造方法における加熱工程では、正極材料を70℃で300分間加熱した。実施例4の製造方法により実施例4の正極材料を得た。
(実施例5)
実施例5の製造方法は、加熱工程を80℃で300分間行ったこと以外は、実施例4の製造方法と同様である。実施例5の製造方法により実施例5の正極材料を得た。
(実施例6)
実施例6の製造方法は、加熱工程を150℃で300分間行ったこと以外は、実施例4の製造方法と同様である。実施例6の製造方法により実施例6の正極材料を得た。
(実施例7)
実施例7の製造方法は、加熱工程を200℃で300分間行ったこと以外は、実施例4の製造方法と同様である。実施例7の製造方法により実施例7の正極材料を得た。
(評価2 導電性)
実施例4〜実施例7の正極材料につき、評価1と同様に、各々粉体抵抗を測定した。導電性評価の結果を表2及び図2に示す。
表2及び図2に示すように、実施例2、実施例4〜実施例7の正極材料の粉体抵抗は、多少の差はあるものの何れも充分に低い値であった。この結果から、本発明の製造方法は正極材料を加熱する加熱工程を有しても良いといえる。なお、加熱工程を行わなかった実施例2の正極材料は、加熱工程を行った実施例4〜実施例6の正極材料に比べて粉体抵抗が低く、導電性に優れていた。このため、150℃以下で加熱するのであれば加熱工程は行わない方が良い、といえる。また、150℃から200℃までの間で正極材料を加熱した場合には、粉体抵抗が大きく低減する現象がみられた。このことから、正極材料を加熱する場合には、150℃を超え200℃以下の温度で加熱を行うのが好ましいといえる。なお、正極活物質である水酸化ニッケルの分解温度は230℃付近であるので、ニッケル金属水素化物電池の電池性能を考慮すると、加熱温度は200℃を超えない方が良いと考えられる。
更に、図2に示されるように、加熱温度150℃を超えると正極材料の粉体抵抗は急激に低下し、加熱温度200℃の実施例7の正極材料においては、加熱を行っていない実施例2の正極材料よりも低い粉体抵抗を示した。インジウムの融点が156.6℃であることから、この現象にはインジウムの状態変化が関与していると推測される。つまり、正極材料を加熱する場合、インジウムの融点以上かつ200℃以下で加熱するのが特に好ましいといえる。具体的には、特に好ましい加熱温度の下限値として、155℃、156.6℃、160℃及び165℃を挙げることができる。加熱温度の上限値としては、200℃以下、195℃以下、190℃以下を挙げることができる。
(評価3 表面分析)
走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を組み合わせたSEM−EDXにて、実施例1の正極材料の表面分析を行った。その結果、正極活物質である水酸化ニッケル粒子の表面が5〜20nm程度の粒子で一部覆われている様子が確認された。また、水酸化ニッケル粒子の表面を覆う当該粒子の部分からは、ニッケル及びインジウムが検出されたが、酸素は検出されなかった。この結果から、水酸化ニッケル粒子の表面を覆うメッキ層は、ニッケルとインジウムの合金を含むと推測される。この結果から、ニッケル及びインジウムを含むメッキ層は、ニッケルのみを含むメッキ層とは異なる組成であること、両者は異なる機能を有することが推測される。

Claims (5)

  1. ニッケル塩、インジウム塩及び水系溶媒を含有するメッキ溶液と、ニッケル水酸化物粒子と、還元剤と、を混合して混合液とし、前記ニッケル水酸化物粒子上にニッケル及びインジウムを含むメッキ層が形成された正極材料を得るメッキ工程を有する、ニッケル金属水素化物電池用正極材料の製造方法。
  2. 前記メッキ溶液は、更に、ヘテロ元素含有有機化合物を含有する、請求項1に記載の正極材料の製造方法。
  3. 前記メッキ溶液において、ニッケル元素とインジウム元素との合計を100%とした時のインジウム元素の量は、0%を超え25%以下である、請求項1又は請求項2に記載の正極材料の製造方法。
  4. 前記メッキ工程で得られた前記正極材料を室温を超え200℃以下の温度で加熱する加熱工程を有する、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の正極材料の製造方法。
  5. 前記混合液のpHは0.5〜10である、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の正極材料の製造方法。
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