JP2019117777A - ニッケル金属水素化物電池の製造方法 - Google Patents

ニッケル金属水素化物電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた特性のニッケル金属水素化物電池を提供する。【解決手段】a)ニッケル含有導電助剤及びコバルトを含有する正極を用いて、ニッケル金属水素化物電池を組み立てる工程、b)a)工程後のニッケル金属水素化物電池に対して、30〜80℃の条件下で初回充電を行い、正極にオキシ水酸化コバルトを生成させる充電工程、を含むことを特徴とする、オキシ水酸化コバルトを含有する正極を具備するニッケル金属水素化物電池の製造方法。【選択図】図5

Description

本発明は、ニッケル金属水素化物電池の製造方法に関するものである。
ニッケル金属水素化物電池は、正極活物質として水酸化ニッケルなどのニッケル酸化化合物を有する正極と、負極活物質として水素吸蔵合金を有する負極と、強塩基性のアルカリ金属水溶液からなる電解液とを具備する二次電池である。
ニッケル金属水素化物電池の正極に、導電性向上の目的で、コバルトを添加する技術が知られている。正極に添加されたコバルトは、強塩基性の水溶液である電解液と接触することで、コバルト錯イオンを形成した後に、正極に水酸化コバルトとして析出する。その後の充電時に、水酸化コバルトが酸化されて、導電性に優れるオキシ水酸化コバルトが生成される。ここで生成されたオキシ水酸化コバルトに因り、正極に導電ネットワークが形成されると考えられている。
特許文献1には、正極に金属コバルト及び水酸化コバルトを含有するニッケル金属水素化物電池に対して、0.08Cで2時間充電し、次いで、0.5CでSOC110%まで充電したこと、及び、0.08Cでの2時間充電に因り、正極に含まれる金属コバルト及び水酸化コバルトが酸化して、オキシ水酸化コバルトが生成したことが記載されている(実施例に関する0030及び0032段落を参照。)。
特許文献2には、正極に金属コバルトを含有するニッケル金属水素化物電池に対して、低電流で10時間充電し、次いで、高電流で5時間充電したことが具体的に記載されている。さらに、同文献の0007段落には、「最初に充電を行うことにより、正極中に含まれるコバルト化合物を高い導電性を持つオキシ水酸化コバルトに変化させることができる。そして、初充電は、コバルト化合物を完全にオキシ水酸化コバルトに変化させるため、充電レートを1/50〜1/30Cで行う過程を含めることが望ましい。」と記載されている。
また、ニッケル金属水素化物電池の正極活物質である水酸化ニッケルなどのニッケル酸化化合物は、比較的導電性に劣る。そのため、正極に着目した技術として、導電性に優れる三次元構造の集電体をニッケル金属水素化物電池に用いる技術が提案されている。
特許文献3には、多孔質の発泡ニッケル基板を正極集電体として用いたニッケル金属水素化物電池が開示されている。
特開2002−260719号公報 特開2003−68291号公報 特開2001−35500号公報
さて、産業界からは、優れた特性のニッケル金属水素化物電池が求められている。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、優れた特性のニッケル金属水素化物電池を提供することを目的とする。
本発明者は、正極活物質に粒子状をなす導電性の助剤、すなわち、導電性粒子を併用し、正極活物質と集電体との間に当該導電性粒子による導電パスを形成することを思いついた。そして、当該導電性粒子の材料として、金属ニッケルを用いること、及び当該導電性粒子を微細な粒子状とすることを志向し、鋭意研究を重ねた結果、次の段落の方法で製造されるニッケル含有導電助剤を開発した。
ニッケル塩及び水系溶媒を含有する原料溶液を得る原料溶液調製工程と、
前記原料溶液に還元剤を加えて混合液とし、ニッケルを含有する粒子を前記混合液中に得る粒子形成工程と、を有することを特徴とするニッケル含有導電助剤の製造方法。
本発明者のさらなる検討の結果、ニッケル含有導電助剤及びコバルトを含有する正極を具備するニッケル金属水素化物電池の初回充電を、加温条件下で行うことにより、オキシ水酸化コバルトによる導電ネットワークが好適に形成されることを見出した。
これらの知見に基づき、本発明者は本発明を完成した。
本発明のオキシ水酸化コバルトを含有する正極を具備するニッケル金属水素化物電池の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ということがある。)は、
a)ニッケル含有導電助剤及びコバルトを含有する正極を用いて、ニッケル金属水素化物電池を組み立てる工程、
b)a)工程後のニッケル金属水素化物電池に対して、30〜80℃の条件下で初回充電を行い、正極にオキシ水酸化コバルトを生成させる充電工程、
を含むことを特徴とする。
なお、本発明の製造方法は、ニッケル金属水素化物電池の調整方法又は初期活性化方法と理解することもできる。
本発明の製造方法により、優れた特性のニッケル金属水素化物電池を提供することができる。
評価1における製造例1及び比較製造例1のニッケル金属水素化物電池の充放電特性を表すグラフである。 評価4における製造例1及び比較製造例1のニッケル金属水素化物電池の10秒間及び0.1秒間でのSOC20%/SOC60%抵抗比率を表すグラフである。 評価5における製造例2及び比較製造例2のニッケル金属水素化物電池の50Cレートによる5秒間の放電の際の電圧の変化量を表すグラフである。 評価7における製造例3及び比較製造例2のニッケル金属水素化物電池の50Cレートによる5秒間の放電の際の電圧の変化量を表すグラフである。 評価9における実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の初回充電曲線である。 評価11における実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の充電曲線である。 評価13における放電時間と電圧変化のグラフである。 参考評価1−1における放電時間と電圧変化のグラフである。 参考評価1−2における放電抵抗のグラフである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の製造方法は、上述したa)工程及びb)工程を含むことを特徴とする。以下、本発明の製造方法で製造されるニッケル金属水素化物電池を、「本発明のニッケル金属水素化物電池」ということがある。
a)工程は、ニッケル金属水素化物電池を組み立てる工程である。
ニッケル金属水素化物電池は、具体的には、正極と負極と電解液とセパレータを具備する。a)工程としては、ニッケル金属水素化物電池を組み立てる公知の方法を採用すればよい。
a)工程を具体的に例示すると以下のとおりである。
正極及び負極でセパレータを挟み電極体とする。電池容器に電極体を収容し、さらに電池容器に電解液を加えて、ニッケル金属水素化物電池とする。
以下、ニッケル含有導電助剤及びコバルトを含有する正極、並びに、ニッケル金属水素化物電池を規定する事項を詳細に説明する。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを含む。負極は、集電体と集電体の表面に形成された負極活物質層とを含む。以下、正極の構成から説明するが、負極の構成と重複するものについては、正極との限定を付さずに説明する。
集電体は、ニッケル金属水素化物電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。集電体の材料としては、ニッケル、又は、ニッケルめっきを施した金属材料が好ましい。
集電体は箔状、線状、棒状、メッシュ、スポンジ状などの形態をとることができる。集電体が箔状の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。また、多数の孔を具備する、いわゆるパンチングメタル状のものや、切れ目の入った金属板を押し広げて網目状にした、いわゆるエキスパンドメタル状のものを使用してもよい。ただし、本発明のニッケル金属水素化物電池においては、ニッケル含有導電助剤を用いており、導電性に優れるため、集電体としては箔状のものを採用するのが合理的である。
正極活物質層は、正極活物質、ニッケル含有導電助剤及びコバルトを含む。
正極活物質としては、ニッケル金属水素化物電池の正極活物質として用いられるものであれば限定されない。具体的な正極活物質として、水酸化ニッケル、金属をドープした水酸化ニッケルを例示できる。水酸化ニッケルにドープする金属として、マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムなどの第9族元素、亜鉛、カドミウムなどの第12族元素を例示できる。
正極活物質の表面は公知の方法で処理されてもよい。正極活物質は粉末状態が好ましく、また、その平均粒子径としては1〜100μmの範囲内が好ましく、3〜50μmの範囲内がより好ましく、5〜30μmの範囲内がさらに好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布計を用いた測定におけるD50の値を意味する。
正極活物質層には、正極活物質が正極活物質層全体の質量に対して、75〜99質量%で含まれるのが好ましく、80〜97質量%で含まれるのがより好ましく、85〜95質量%で含まれるのがさらに好ましい。
ニッケル含有導電助剤は金属ニッケルを含有する粒子である。ニッケル含有導電助剤は、金属としてニッケルのみを含有してもよいし、金属ニッケルとともに他の金属が共存する合金を含有してもよい。他の金属としては、Cu、Sn、Zn、Co、Au、Ag、Pt、Pd、Rh又はRuを例示できる。
ニッケル含有導電助剤の粒子径は、1μm未満であるのが好ましい。ニッケル含有導電助剤の好ましい粒子径として、1〜100nm、2〜70nm、5〜50nm、10〜20nmの各範囲を挙げ得る。ここでいう粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の顕微鏡下での実測値である。
ニッケル含有導電助剤の製造方法について説明する。
ニッケル含有導電助剤の製造方法は、
ニッケル塩及び水系溶媒を含有する原料溶液を得る原料溶液調製工程と、
前記原料溶液に還元剤を加えて混合液とし、金属ニッケルを含有する粒子(以下、単に「金属ニッケル含有粒子」ということがある。)を前記混合液中に得る粒子形成工程と、を有する。
上記ニッケル含有導電助剤の製造方法は、端的にいえば、水系溶媒に溶解した状態で原料溶液中に存在するニッケルを還元剤によって粒子状に析出させて、金属ニッケル含有粒子を得る方法である。
上記ニッケル含有導電助剤の製造方法においては、粒子形成工程において、還元剤又は還元剤溶液に原料溶液を加えるのではなく、原料溶液に還元剤を加えることで、導電性に優れるニッケル含有導電助剤を形成することができる。
ニッケル塩に含まれるニッケルは、ニッケル含有導電助剤を構成する主たる材料である。水系溶媒は、ニッケル塩を溶解させる溶媒となる。つまり原料溶液調製工程で得られる原料溶液中において、ニッケルはイオンとして存在すると考えられる。
粒子形成工程においては、上記の原料溶液に還元剤を加えて混合液とする。当該混合液中において、ニッケルイオンは還元剤から供給される電子によって還元されて0価の金属ニッケルとなり、混合液中に徐々に析出する。ここで析出した金属ニッケルは、金属ニッケル含有粒子を構成する。
ニッケル含有導電助剤の製造方法における粒子形成工程では、原料溶液に還元剤を加えて混合液とする。したがって、混合液中のニッケルイオンと還元剤との反応は徐々に進行し、金属ニッケルは徐々に析出し、析出物はゆっくりと粒成長する。当該析出物には、金属ニッケルの結晶又はニッケルを含む合金の結晶が含まれると考えられるため、粒子形成工程においては、当該結晶がゆっくりと成長すると考えられる。その結果、ニッケル含有導電助剤の製造方法によると、比較的大きく均質な結晶を有する導電性粒子が得られると推測される。
ここで、上記ニッケル含有導電助剤の製造方法とは逆に、還元剤に原料溶液を加えて混合液とする場合には、高濃度の還元剤に原料溶液を徐々に加えることとなる。この場合には、混合液中のニッケルイオンと還元剤との反応は急激に進行し、金属ニッケルは混合液中に急激に析出する。換言すれば、核の析出が結晶成長よりも有利になる。
つまり、原料溶液に還元剤を加えて混合液とする上記ニッケル含有導電助剤の製造方法によると、還元剤に原料溶液を加えて混合液とする製造方法とは異なる粒子が得られると言い得る。そして、後述するように、上記ニッケル含有導電助剤の製造方法で得られたニッケル含有導電助剤はニッケル金属水素化物電池の正極に優れた導電性を付与し得る。
ところで、原料溶液調製工程において、原料溶液の原料は、ニッケル塩及び水系溶媒以外のものも含み得る。具体的には、当該原料溶液の原料としては、ニッケル塩に加えて、ニッケル塩以外の金属塩を含み得る。この場合、粒子形成工程においては、ニッケルと当該金属との合金が析出すると考えられる。そしてこの場合、金属ニッケル含有粒子は、当該合金の結晶を含み得る。
原料溶液中のニッケルは、主として水系溶媒に溶解した状態で存在すると考えられる。微細かつ均質な金属ニッケル含有粒子を製造するためには、原料溶液中のニッケルは還元剤と反応するまでは析出しない方が好ましいと考えられる。したがって当該原料溶液には、ニッケルの溶解状態に安定的に維持するための添加剤を加えるのが好ましい。当該添加剤としては、ヘテロ元素含有有機化合物を挙げることができる。
ヘテロ元素含有有機化合物は、原料溶液中においてニッケルイオンと錯体を形成する錯化剤として機能すると考えられる。つまり、原料溶液がヘテロ元素含有有機化合物を含む場合、ニッケルは原料溶液中において安定な錯体として存在すると考えられる。原料溶液がニッケル塩に加えて金属塩を含む場合には、原料溶液中に存在する金属イオンもまた、ヘテロ元素含有有機化合物と錯体化して、原料溶液中において安定して存在すると考えられる。
一方、ヘテロ元素含有有機化合物を用いない場合には、原料溶液中のニッケルイオン及び金属イオンの一部は、水酸化物となって沈殿する可能性がある。この場合、粒子形成工程において得られる粒子が粗大化したり、不均質となったり、金属ニッケル及びニッケル合金の結晶ではなくニッケル水酸化物及び金属水酸化物を多く含んだりする場合があると考えられる。このような粒子は導電性に優れるとは言いがたい場合がある。
ニッケル含有導電助剤の製造方法において、原料溶液にヘテロ元素含有有機化合物を含む場合には、粒子形成工程に供される直前まで、原料溶液中のニッケルイオン及び金属イオンを安定した状態で維持できるため、粒子形成工程において金属ニッケルや合金等の析出物を均質かつ微細な状態で析出させることが可能になり、ひいては導電性のより向上したニッケル含有導電助剤を得ることが可能になると考えられる。
以下、ニッケル含有導電助剤の製造方法の各工程の詳細を説明する。
原料溶液調製工程で原料溶液に用いるニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル等を例示できる。
原料溶液に用い得るニッケル塩以外の金属塩は、導電性を有する金属又はニッケル合金を構成し得る各種金属の塩であれば良い。また、ニッケル金属水素化物電池用の正極に用いる都合上、ニッケル金属水素化物電池の電解液である強アルカリに耐え得る特性を有するのが好ましい。これらを考慮すると、金属としては、Cu、Sn、Zn、Co、Au、Ag、Pt、Pd、Rh又はRuが好ましい。導電性の点では、好ましい順序は、概ねAg、Cu、Au、Rh、Co、Zn、Ru、Pt、Pd、Snの順となる。展延性の点では、Au、Ag、Cu、Sn、Zn、Pt及びPdが好ましい。
金属塩としては、これらの金属の硫酸塩、硝酸塩、塩化物等を例示できる。より具体的には、金属塩としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、スルファミン酸コバルト、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、硫酸銀、硝酸銀、ヘキサクロリド白金酸、シアン化金カリウム、亜硫酸金ナトリウムを例示できる。金属塩としては1種類のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
原料溶液に配合するニッケル塩とニッケル塩以外の金属塩との比は特に問わないが、質量比で、ニッケル塩:金属塩=1:99〜99:1となる範囲であるのが好ましく、ニッケル塩:金属塩=20:80〜80:20となる範囲であるのがより好ましく、ニッケル塩:金属塩=30:70〜70:30となる範囲であるのが更に好ましい。
以下、必要に応じて、原料溶液中のニッケル及び金属を総称して原料金属という。また、当該原料金属の塩を原料金属塩という。原料溶液における原料金属塩の濃度としては、例えば2〜500g/Lの範囲を例示できる。
原料溶液には、更に、ヘテロ元素含有有機化合物が含まれるのが良い。ヘテロ元素含有有機化合物は、上記したように、原料溶液中において原料金属イオンと錯体を形成する。
ヘテロ元素含有有機化合物におけるヘテロ元素とは、N、O、P又はSを意味する。ヘテロ元素含有有機化合物としては、金属イオンに配位可能なアミノ基、アミド基、イミド基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン酸基、ホスフィン酸エステル基、ホスフェン酸基、ホスフェン酸エステル基、亜ホスフェン酸基、亜ホスフェン酸エステル基、チオール基、スルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、スルホン酸基、チオカルボキシル基、チオエステル基若しくはチオカルボニル基を具備する有機化合物を挙げることができる。
特に、ヘテロ元素含有有機化合物としては、上記の基を複数有し、かつ、複数箇所で金属イオンに配位可能なキレート化合物が好ましい。
或いは、ヘテロ元素含有有機化合物はカルボキシル基、アミノ基、水酸基、ケトン基、イミド基の何れかを備えるのが好ましい。
キレート化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン化合物、グリシン、アラニン、システイン、グルタミン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、エチレンジアミン四酢酸などのアミノ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、キナ酸、シキミ酸、サリチル酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、マンデル酸、ベンジル酸、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸などのヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
これらのヘテロ元素含有有機化合物は1種のみを用いても良いし、複数種を併用しても良い。
原料溶液におけるヘテロ元素含有有機化合物の濃度は、原料溶液において原料金属と錯体を形成し得る量であれば良く、原料金属の種類や量に応じて適宜設定し得る。原料溶液へのヘテロ元素含有有機化合物の配合量は、化学量論的に、原料金属の半量以上と錯体を形成し得る量であるのが好ましく、原料金属の2/3量以上と錯体を形成し得る量であるのがより好ましく、原料金属の全量と錯体を形成し得る量配合するのが更に好ましい。なお、ヘテロ元素含有有機化合物は、原料金属の全量と錯体を形成し得る量以上、つまり過剰量配合するのが特に好ましい。
原料溶液に用いる水系溶媒は、水を主成分とすれば良く、必要に応じて、水以外の溶媒を含んでも良い。当該水以外の溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、シクロヘキサノン等が例示される。これらの溶媒は、一種又は複数種を水と混合して用いれば良い。
原料溶液としては、例えば、市販の無電解メッキ用水溶液に、必要に応じてニッケル塩を加えたものを使用しても良い。市販の無電解メッキ用水溶液として、日本カニゼン株式会社製の商品名ブルーシューマー、S−680、SE−680、SD−200、S−300、S−760、S−762、SE−660、SE−666、S−500、SE−650、SFK−63、S−810、SEK−670、S−795、SEK−797、カニボロンSKB−230、SFB−26を例示できる。
粒子形成工程においては、原料溶液に還元剤を加えることで、粒子を緩やかに析出させる。還元剤は、原料溶液に対して一度に加えても良いし、徐々に加えても良いが、原料溶液中の原料金属を還元剤と徐々に反応させるためには、原料溶液に対して還元剤を徐々に加えるのが好ましい。より具体的には、原料溶液に対して還元剤を複数回に分けて加えるのが好ましく、原料溶液に対して還元剤を滴下するのがより好ましい。また、粒子形成工程は、撹拌条件下で行われるのが好ましい。
粒子形成工程で用いる還元剤は、原料金属イオンを還元する役割を担う。還元剤としては、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、アスコルビン酸、蟻酸、チオ尿素、ヒドロキノン、ジメチルアミノボラン、ヒドラジンを例示できる。粒子形成工程には、1種類の還元剤を用いてもよいし、複数種類の還元剤を用いてもよい。なお、還元剤として次亜リン酸や次亜リン酸ナトリウムを用いた場合には、金属ニッケル含有粒子にPが含まれる。また、還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又はジメチルアミノボランを用いた場合には、金属ニッケル含有粒子にBが含まれる。
還元剤は、そのまま用いても良いし、溶液として用いても良い。還元剤を溶液とする場合、原料溶液に水系溶媒が含まれる都合上、還元剤溶液用の溶媒としても水系溶媒を選択するのが好ましい。
原料溶液及び還元剤の混合液における還元剤の濃度としては、例えば1〜200g/Lの範囲を例示できる。
混合液には、更に、有機化合物系分散剤を加えるのが好ましい。原料溶液がニッケル塩及び金属塩を含む場合を例に挙げると、還元剤により、混合液中の原料金属イオンが還元され、混合液中に金属が析出する。混合液に有機化合物系分散剤を加えることで、混合液中に析出した金属は、有機化合物系分散剤を原料とするコート層によって覆われると考えられる。そして、当該コート層によって覆われつつ金属が析出することで、金属粒子が粗大に粒成長し難くなるため、金属は比較的小さな粒子となると考えられる。つまりこの場合には、金属ニッケル含有粒子は、小形の粒子状をなす金属が各々コート層で覆われた、複合粒子で構成されると考えられる。
ニッケル及びニッケル合金が粗大に粒成長した粒子を用いると、正極活物質層に充分な数の導電パスを形成し難い場合がある。しかし、上記したように混合液に有機化合物系分散剤を加えて得られた金属ニッケル含有粒子は、比表面積の大きな小径の粒子となり易く、正極活物質層に充分な数の導電パスを形成し得る。このため、正極の導電性が向上し、ニッケル金属水素化物電池に優れた電池特性を付与し得ると考えられる。
また、混合液に有機化合物系分散剤を加えることで、粒子同士の凝着又は固着を抑制でき、粒子形成工程後の金属ニッケル含有粒子を簡単に解砕できる利点もある。つまり、有機化合物系分散剤は、金属ニッケル含有粒子の凝集防止剤としても機能し得る。
有機化合物系分散剤は、一般的に分散剤として用いられる化合物、ポリマー又は当該ポリマーを形成し得るモノマーであれば良いが、水溶性又は親水性であるのが好ましい。混合液に含まれる原料溶液には、水系溶媒が用いられているためである。有機化合物系分散剤としては、特に水溶性ポリマー又は水溶性モノマーが好ましい。
当該ポリマーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ジアセチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン−マレイン酸共重合体、非架橋ポリアクリルアミド等が挙げられる。既述したように、これらポリマーを構成し得るモノマーもまた好ましく用いられる。
有機化合物系分散剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルフェノールエトキシレート等を挙げることができる。
有機化合物系分散剤は、原料金属塩を100質量部としたときに、0.1〜200質量部となる量添加するのが好ましく、1〜150質量部となる量添加するのがより好ましく、10〜100質量部となる量添加するのが更に好ましく、25〜75質量部となる量添加するのが特に好ましい。
混合液には、その他の添加剤を配合しても良い。添加剤としては、例えば、pH調整剤、緩衝剤などが挙げられる。これらは粒子形成工程において混合液に添加しても良いし、或いは、原料溶液調製工程において原料溶液に予め添加しておいても良い。更には、還元剤溶液に予め添加しておいても良い。
混合液のpHは、通常、0.5〜10の範囲内のうち、原料金属塩及び還元剤の種類に応じて適切な値に調整される。例えば、ニッケル塩及び次亜リン酸ナトリウムを用いる混合液においては、pHが4〜9の範囲が好ましい。混合液のpHの好ましい範囲として、4〜6、4〜5、4.1〜4.8、4.2〜4.5、4.3〜4.4の各範囲を挙げることができる。
pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸、塩酸を例示できる。
混合液のpH変動は、無い又は穏やかであるのが好ましい。緩衝剤は、混合液の急激なpH変動を抑制する目的で用いられる。緩衝剤としては、ヒドロキシ酢酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、クエン酸などの弱酸、及び、これらの塩を例示できる。緩衝剤として、既述したヘテロ元素含有有機化合物と同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良い。
混合液に添加され得るその他の添加剤として、硝酸ビスマス、ヨウ素酸、ポリエチレングリコール、各種の界面活性剤を挙げることができる。
粒子形成工程における混合液の温度としては、50〜95℃が好ましく、60〜95℃がより好ましい。温度が高いほど、原料金属のイオンと還元剤との反応が速やかに進行する。ニッケル含有導電助剤の製造方法における粒子の大きさは、混合液中における原料金属の濃度や反応時間に応じて変化する。
ニッケル含有導電助剤の製造方法は、必要に応じて、粒子形成工程によって得られた粒子を洗浄する工程や、粒子を乾燥する乾燥工程を有しても良いし、更に、粒子を加熱する加熱工程を有しても良い。
次に、a)工程で用いる正極に含有されるコバルトについて説明する。当該コバルトが、b)工程で生成されるオキシ水酸化コバルトの原料である。
コバルトとしては、金属コバルト(コバルト単体)やコバルト化合物を採用できる。コバルト化合物としては、酸化コバルトや水酸化コバルトを例示できる。水酸化コバルトが酸化されてオキシ水酸化コバルトが生成する点、ニッケル金属水素化物電池の系内に不純物が存在することを避ける点などから、コバルトとしては、金属コバルト及び/又は水酸化コバルトが好ましい。コバルトは、粉末状態で正極活物質層に添加されてもよいし、正極活物質粒子の表面を被覆した状態で用いられてもよい。正極活物質層には、コバルトが正極活物質層全体の質量に対して、0.5〜10質量%で含まれるのが好ましく、1〜7質量%で含まれるのがより好ましく、2〜5質量%で含まれるのがさらに好ましい。
正極活物質層は、必要に応じて正極添加剤、結着剤、並びに、ニッケル含有導電助剤及びコバルト以外の導電助剤を含む。
正極添加剤は、ニッケル金属水素化物電池の電池特性を向上させるために正極に添加されるものである。正極添加剤としては、ニッケル金属水素化物電池の正極添加剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な正極添加剤として、Nbなどのニオブ化合物、WO、WO、LiWO、NaWO及びKWOなどのタングステン化合物、Ybなどのイッテルビウム化合物、TiOなどのチタン化合物、Yなどのイットリウム化合物、ZnOなどの亜鉛化合物、CaO、Ca(OH)及びCaFなどのカルシウム化合物、並びに、その他の希土類酸化物を例示できる。
正極活物質層には、正極添加剤が正極活物質層全体の質量に対して、0.1〜10質量%で含まれるのが好ましく、0.5〜5質量%で含まれるのがより好ましい。
結着剤は活物質などを集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ニッケル金属水素化物電池の電極用結着剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミドなどのイミド系樹脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、スチレンブタジエンゴムなどの共重合体、並びに、(メタ)アクリル酸誘導体をモノマー単位として含有する、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系樹脂を例示できる。
活物質層には、結着剤が活物質層全体の質量に対して、0.1〜15質量%で含まれるのが好ましく、1〜10質量%で含まれるのがより好ましく、2〜7質量%で含まれるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
ニッケル含有導電助剤及びコバルト以外の導電助剤としては、銅などの金属や、その金属酸化物及びその金属水酸化物、並びに、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維などの炭素材料が例示される。
負極は、集電体と集電体の表面に形成された負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて負極添加剤、結着剤及び導電助剤を含む。集電体及び結着剤については上述したとおりである。
負極活物質としては、ニッケル金属水素化物電池の負極活物質、すなわち水素吸蔵合金として用いられるものであれば限定されない。水素吸蔵合金とは、基本的に、容易に水素と反応するものの、水素の放出能力に劣る金属Aと、水素と反応しにくいものの、水素の放出能力に優れる金属Bとの合金である。Aとしては、Mgなどの第2族元素、Sc、ランタノイドなどの第3族元素、Ti、Zrなどの第4族元素、V、Taなどの第5族元素、複数の希土類元素を含有するミッシュメタル(以下、Mmと略すことがある。)、Pdなどを例示できる。また、Bとしては、Fe、Co、Ni、Cr、Pt、Cu、Ag、Mn、Zn、Alなどを例示できる。
具体的な水素吸蔵合金として、六方晶CaCu型結晶構造を示すAB型、六方晶MgZn型若しくは立方晶MgCu型結晶構造を示すAB型、立方晶CsCl型結晶構造を示すAB型、六方晶MgNi型結晶構造を示すAB型、体心立方晶構造を示す固溶体型、並びに、AB型及びAB型の結晶構造が組み合わされたAB型、A型及びA19型のものを例示できる。水素吸蔵合金は、以上の結晶構造のうち、1種類を有するものでもよいし、また、以上の結晶構造の複数を有するものでもよい。
AB型水素吸蔵合金として、LaNi、CaCu、MmNiを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、MgZn、ZrNi、ZrCrを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、TiFe、TiCoを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、MgNi、MgCuを例示できる。固溶体型水素吸蔵合金として、Ti−V、V−Nb、Ti−Crを例示できる。AB型水素吸蔵合金として、CeNiを例示できる。A型水素吸蔵合金として、CeNiを例示できる。A19型水素吸蔵合金として、CeCo19、PrCo19を例示できる。上記の各結晶構造において、一部の金属を、他の1種類若しくは複数種類の金属又は元素で置換してもよい。
負極活物質の表面は公知の方法で処理されてもよい。特に、負極活物質としては、アルカリ処理された水素吸蔵合金を採用するのが好ましい。アルカリ処理とは、水素吸蔵合金を、アルカリ金属水酸化物を溶解したアルカリ水溶液で処理することを意味する。
例えば、希土類元素とNiを含む水素吸蔵合金を、アルカリ金属水酸化物を溶解したアルカリ水溶液で処理すると、アルカリ水溶液に対して溶解性の高い希土類元素が水素吸蔵合金の表面から溶出することになる。ここで、Niはアルカリ水溶液に対して溶解性が低いため、結果的に、水素吸蔵合金の表面のNi濃度は、水素吸蔵合金の内部と比較して高くなる。以下、水素吸蔵合金において、Ni濃度が内部と比較して高い部分を、Ni濃縮層という。Ni濃縮層の存在に因り、負極活物質の性能が向上すると考えられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを例示でき、中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム水溶液を用いることで、アルカリ水溶液として水酸化リチウムや水酸化カリウムを用いる場合と比較して、本発明のニッケル金属水素化物電池の電池特性が好適化する場合がある。
アルカリ水溶液としては強塩基性のものが好ましい。アルカリ水溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度として、10〜60質量%、20〜55質量%、30〜50質量%、40〜50質量%を例示できる。
アルカリ処理は、水素吸蔵合金をアルカリ水溶液に浸ける方法で行うのが好ましい。その際には、撹拌条件下で行うのが好ましく、また、加熱条件下で行うのが好ましい。加熱温度の範囲としては、50〜150℃、70〜140℃、90〜130℃を例示できる。加熱時間は、アルカリ水溶液の濃度や加熱温度に応じて適宜決定すればよいが、0.1〜10時間、0.2〜5時間、0.5〜3時間を例示できる。
以上のアルカリ処理の観点からは、水素吸蔵合金としては、希土類元素とNiを含むものが好ましい。
負極活物質は粉末状態が好ましく、また、その平均粒子径としては1〜100μmの範囲内が好ましく、3〜50μmの範囲内がより好ましく、5〜30μmの範囲内がさらに好ましい。
負極活物質層には、負極活物質が負極活物質層全体の質量に対して、85〜99質量%で含まれるのが好ましく、90〜98質量%で含まれるのがより好ましい。
負極添加剤は、ニッケル金属水素化物電池の電池特性を向上させるために負極に添加されるものである。負極添加剤としては、ニッケル金属水素化物電池の負極添加剤として用いられるものであれば限定されない。具体的な負極添加剤として、CeF及びYFなどの希土類元素のフッ化物、Bi及びBiFなどのビスマス化合物、In及びInFなどのインジウム化合物、並びに、正極添加剤として例示した化合物を挙げることができる。
負極活物質層には、負極添加剤が負極活物質層全体の質量に対して、0.1〜10質量%で含まれるのが好ましく、0.5〜5質量%で含まれるのがより好ましい。
導電助剤は、負極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、負極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、負極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤は、粉末状態で負極活物質層に添加されてもよいし、負極活物質粒子の表面を被覆した状態で用いられてもよい。導電助剤としては化学的に不活性な電子伝導体であれば良い。具体的な導電材としては、コバルト、ニッケル、銅などの金属、コバルト酸化物などの金属酸化物、コバルト水酸化物などの金属水酸化物、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維などの炭素材料が例示される。
負極活物質層には、導電助剤が負極活物質層全体の質量に対して、0.1〜5質量%で含まれるのが好ましく、0.2〜3質量%で含まれるのがより好ましく、0.3〜1質量%で含まれるのがさらに好ましい。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤、導電助剤及び添加剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
電解液はアルカリ金属水酸化物が溶解した水溶液である。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを例示できる。電解液には、1種類のアルカリ金属水酸化物を含んでいてもよいし、複数種類のアルカリ金属水酸化物を含んでいてもよい。電解液における、アルカリ金属水酸化物の濃度としては、2〜10mol/Lが好ましく、3〜9mol/Lがより好ましく、4〜8mol/Lがさらに好ましい。
電解液にアルカリ金属水酸化物として水酸化リチウムのみを用いる場合には、水酸化リチウムの濃度としては、1.5〜5mol/Lが好ましく、2〜5mol/Lがより好ましく、3〜5mol/Lがさらに好ましい。電解液にアルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムのみを用いる場合には、水酸化ナトリウムの濃度としては、1.5〜15mol/Lが好ましく、3〜10mol/Lがより好ましく、4〜8mol/Lがさらに好ましい。電解液にアルカリ金属水酸化物として水酸化カリウムのみを用いる場合には、水酸化カリウムの濃度としては、1.5〜15mol/Lが好ましく、3〜10mol/Lがより好ましく、4〜8mol/Lがさらに好ましい。
電解液はアルカリ金属ハロゲン化物を含んでもよい。アルカリ金属ハロゲン化物は電解液中で、アルカリ金属カチオンとハロゲンアニオンに電離して存在すると考えられる。そして、マイナスの電荷を有するハロゲンアニオンが正極に電気的に吸着することで、正極はハロゲンアニオンで被覆された状態となる。ハロゲンアニオンで被覆された正極においては、正極本体に対する水分子の直接接触が抑制されるため、正極における水分子の分解に起因する酸素発生が抑制されると考えられる。
また、アルカリ金属ハロゲン化物のアルカリ金属カチオンは、電解液中で、電解液中の水分子と配位した状態となると考えられる。ここで、水分子はアルカリ金属カチオンと強く配位した状態となることで耐酸化性が向上して、その酸素発生電位が高くなることも期待できる。
アルカリ金属カチオンのうちイオン半径が小さいものほど、水分子と配位しやすいといえる。アルカリ金属カチオンのイオン半径は、Li<Na<K<Rb<Cs<Frの順であることが知られている。したがって、アルカリ金属ハロゲン化物としては、リチウムハロゲン化物が最も好ましく、ナトリウムハロゲン化物が次に好ましく、カリウムハロゲン化物がその次に好ましいといえる。
また、正極に吸着したハロゲンアニオンが酸化されて、ハロゲン単体となることは好ましくない。ハロゲンアニオンの耐酸化性は、F>Cl>Br>Iの順であることが知られている。したがって、耐酸化性の観点からは、アルカリ金属ハロゲン化物としては、アルカリ金属フッ化物が最も好ましく、アルカリ金属塩化物が次に好ましく、アルカリ金属臭化物がその次に好ましいといえる。
アルカリ金属ハロゲン化物として、LiF、LiCl、LiBr、LiI、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr及びKIを例示できる。水分子との配位性、及び、耐酸化性の観点からみて、アルカリ金属ハロゲン化物として、LiF、LiCl、NaF、NaClが好ましいといえる。溶解度の観点を加えると、アルカリ金属ハロゲン化物として、LiCl及びNaClが好ましいといえる。
電解液における、アルカリ金属ハロゲン化物の濃度としては、0.01〜3mol/Lが好ましく、0.03〜2mol/Lがより好ましく、0.04〜1.5mol/Lがさらに好ましく、0.05〜1.0mol/Lが特に好ましい。
電解液には、ニッケル金属水素化物電池用電解液に採用される公知の添加剤が添加されていてもよい。
セパレータは、正極と負極とを隔離して、両極の接触による短絡を防止しつつ、電解液の貯留空間及び通路を提供するものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
セパレータは、表面に親水化処理が施されているものが好ましい。親水化処理としては、スルホン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理を例示できる。
電池容器は、正極、負極、セパレータ及び電解液を収容する容器である。電池容器としては、公知のニッケル金属水素化物電池の電池容器として用いられるものを採用すればよい。電池容器の形状は特に限定されるものでなく、角型、円筒型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。電池容器の材質としては、強アルカリに対して耐性の高いものが好ましい。電池容器の具体例としては、ニッケル製容器、樹脂製容器、内表面がニッケルメッキされた金属容器、内表面に樹脂コーティング層を具備する金属容器を例示できる。
b)工程は、a)工程後のニッケル金属水素化物電池に対して、30〜80℃の条件下で初回充電を行い、正極にオキシ水酸化コバルトを生成させる工程である。まず、強塩基性の電解液の存在下、金属コバルトは正極に水酸化コバルトとして析出する。そして、析出した水酸化コバルトが酸化されて、オキシ水酸化コバルトとなる。反応式で示すと、以下のとおりである。
Co(OH) + OH → CoOOH + HO + e
a)工程で組み立てられたニッケル金属水素化物電池の正極には、導電性に優れるニッケル含有導電助剤が存在するため、上記反応式で生じた電子は速やかに系外へ移動する。そのため、上記反応式は右側への進行が有利になるため、ニッケル含有導電助剤が存在しない正極での充電と比較して、本発明の製造方法においては上記反応式の反応速度が増加するといえる。
また、30〜80℃との加温条件下であるため、25℃付近の室温での充電と比較して、本発明の製造方法においては上記反応式の反応速度が一層増加するといえる。b)工程の温度範囲としては、35〜70℃が好ましく、40〜65℃がより好ましく、45〜60℃がさらに好ましい。
30℃未満で初回充電を行うと、オキシ水酸化コバルトの生成が不十分となる虞がある。また、80℃を超える条件下で初回充電を行うと、ニッケル金属水素化物電池に含まれる部材が劣化する虞があるし、以下の反応式で示す副反応が進行して、導電性に劣るCoが生成する虞がある。
Co(OH) + 2CoOOH → Co + 2H
また、オキシ水酸化コバルトを生成させるとの目的から、加温条件下とするのは、充電開始から1.2V程度までの電圧領域のみとしてもよい。充電開始から1.2Vまでの電圧領域で、正極活物質の表面にオキシ水酸化コバルトが形成されると想定されるためである。実際に、正極にコバルトを含むニッケル金属水素化物電池の初回充電曲線においては、0.8V〜1.2Vの範囲内で、電圧の変化率が低下するプラトー状態が観察される。なお、通常、2回目以降の充電における充電曲線には、初回充電曲線で観察された0.8V〜1.2Vの範囲内のプラトー状態は観察されない。
初回充電は、理論充電容量の80%を超える容量で行うのが好ましく、さらには、理論充電容量以上の容量まで行うのがより好ましい。十分な容量で充電を行うことにより、負極活物質である水素吸蔵合金が十分に水素を吸蔵する。水素吸蔵合金が十分に水素を吸蔵すると、その体積が膨張して、水素吸蔵合金と強塩基性の電解液との接触箇所が増加する。そうすると、水素吸蔵合金の表面から、強塩基性の電解液に溶解性の高い金属の一部が溶出し、強塩基性の電解液に溶解性の低いNiなどの金属が水素吸蔵合金の表面に留まる。その結果、充放電に好都合であり、水素を原子レベルまで解離する能力の高いNi濃縮層が水素吸蔵合金の表面に形成されると考えられる。
理論充電容量とは、いわゆるSOC(State of Charge)100%を意味する。本明細書において、SOC100%とは、ニッケル金属水素化物電池における正極活物質の質量(g)とその理論容量(Ah/g)との乗算で算出される値を意味する。
初回充電は、SOC105%〜120%まで行うのが好ましく、SOC105%〜115%まで行うのがより好ましい。
初回充電の充電レートは低い方が好ましい。充電レートの範囲としては、0.5C未満が好ましく、0.01C以上0.5C未満がより好ましく、0.02C以上0.4C以下がさらに好ましく、0.03C以上0.3C以下が特に好ましい。充電レートが高すぎると、電解液が分解して酸素が発生する虞があるとともに、ニッケル金属水素化物電池の抵抗が過剰に上昇する虞がある。充電レートが低すぎると、充電に長時間を要することになる。
また、初回充電では、0.1C未満である第1充電レートと、第1充電レートを超える第2充電レートとを含む、複数の充電レートで充電を行うのが好ましい。第1充電レートとしては、0.01C以上0.1C未満が好ましく、0.02C以上0.08C以下がより好ましく、0.03C以上0.07C以下がさらに好ましい。第1充電レートによる充電は、SOC10〜50%まで行うのが好ましく、SOC20%〜40%まで行うのがより好ましい。
第1充電レートを超える第2充電レートとしては、0.02C以上0.5C未満が好ましく、0.05C以上0.4C以下がより好ましく、0.07C以上0.3C以下がさらに好ましい。
本発明の製造方法においては、ニッケル金属水素化物電池に対して、複数回のサイクルで充放電を行う活性化工程を含むのが好ましく、そして、b)工程は、活性化工程のうちの初回サイクルの充電工程であるのが好ましい。
本明細書において、サイクルとは、ニッケル金属水素化物電池に対して充電及び放電を行う充放電のセットを意味する。1サイクルとは充放電の1セットを意味し、また、初回サイクルとは第1回目の充放電の1セットを意味する。充電サイクルとは、サイクルにおける充電状態を意味し、放電サイクルとは、サイクルにおける放電状態を意味する。
b)工程を含む活性化工程におけるサイクルの回数は、求められる特性を満足するニッケル金属水素化物電池が製造されるか否かで決定される。ニッケル金属水素化物電池の仕様により求められる特性が異なるため、一概にサイクルの回数を決定することは困難である。敢えてb)工程を含む活性化工程におけるサイクルの回数を例示すると、3〜30、5〜25を例示できる。
b)工程以外の活性化工程は、10〜60℃の温度範囲、かつ温度一定の条件下で充放電を行うのが好ましい。温度が低すぎても、又は温度が高すぎても、ニッケル金属水素化物電池の抵抗は好適に減少しないと考えられる。充放電の温度範囲としては、15〜50℃がより好ましく、20〜40℃がさらに好ましい。
初回以外の各サイクルの充電は、SOC90%〜110%まで行うのが好ましく、SOC95%〜105%まで行うのがより好ましい。なお、著しく過剰な容量の充電を行うと、電解液が分解して酸素が多量に発生する虞がある。また、初回以外の各サイクルの充電を、理論充電容量の80%以下の容量で行うと、ニッケル金属水素化物電池の抵抗が好適に減少しない場合がある。
各サイクルの充電レートは、3C未満、さらには2C以下で行うのが好ましい。充電レートを過剰に高くすると、ニッケル金属水素化物電池の抵抗が好適に減少しない場合がある。各サイクルの充電レートとしては、0.1C以上2C以下が好ましく、0.2C以上1.5C以下がより好ましく、0.3C以上1C以下がさらに好ましく、0.4C以上0.7C以下が特に好ましい。
また、活性化工程は、前回サイクルの充電レートよりも大きな充電レートで充電する、増加レート充電サイクルを含むのが好ましい。活性化工程は、複数回のサイクルでの充放電のうち、増加レート充電サイクルを1サイクルに含む方法であってもよいが、増加レート充電サイクルを2サイクル、3サイクル又はそれ以上のサイクルに含む方法が好ましい。活性化工程で実施する初回サイクル以外のサイクルすべてにわたり、増加レート充電サイクルを実施してもよい。
増加レート充電サイクルにおける充電レート(以下、増加充電レートということがある。)は、前回サイクルの充電レートよりも大きい。ただし、増加充電レートが過剰に高すぎると、電解液が分解して酸素が発生する虞がある。そのため、増加充電レートの上限値として、2C、1.5C、1Cを例示できる。また、前回サイクルの充電レートに対する増加充電レートの比R(R=(増加充電レート)/(前回サイクルの充電レート))の範囲としては、1<R≦3、1<R≦2.5、1<R≦2、1<R≦1.5を例示できる。
増加充電レートは、前回サイクルにおけるニッケル金属水素化物電池の特性をモニタリングして、その結果から決定してもよい。例えば、前回サイクルにおけるニッケル金属水素化物電池の特性が良好ならば、増加充電レートの比Rを高い数値に設定すればよい。他方、前回サイクルにおけるニッケル金属水素化物電池の特性が不良ならば、今回のサイクルでは増加レート充電サイクルを採用せずに、前回サイクルの充電レートと同じ又は低い充電レートで充電するとよい。
活性化工程においては、各サイクルの放電は適切な電圧まで、例えば、0.8V、0.9V又は1Vまで行うのが好ましい。また、活性化工程における放電レートは、0.1C以上3C以下が好ましく、0.2C以上2C以下がより好ましく、0.3C以上1.5C以下がさらに好ましい。サイクルの回数を重ねるに従い、徐々に放電レートを増加させてもよい。
活性化工程においては、工程の管理上、初回以外の各サイクルの充電レートは同一回のサイクル内で一定であるのが好ましく、同様に各サイクルの放電レートは同一回のサイクル内で一定であるのが好ましい。また、活性化工程においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、充電と放電との間に、休止期間や、電圧保持期間を設けてもよい。
本発明のニッケル金属水素化物電池の製造方法により、以下の、本発明の制御装置を把握できる。
本発明の制御装置は、ニッケル金属水素化物電池に対し、本発明の製造方法におけるb)工程又はb)工程を含む活性化工程を指示する制御部を具備する。本発明の制御装置はニッケル金属水素化物電池の製造設備に配置されてもよく、ニッケル金属水素化物電池の出荷前若しくは出荷後にニッケル金属水素化物電池を充放電する充放電システムに配置されてもよい。
本発明のニッケル金属水素化物電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にニッケル金属水素化物電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にニッケル金属水素化物電池を搭載する場合には、ニッケル金属水素化物電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。ニッケル金属水素化物電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のニッケル金属水素化物電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、製造例、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(製造例1)
<原料溶液調製工程>
ニッケル塩として硫酸ニッケルを、金属塩として硫酸コバルトを、ヘテロ元素含有有機化合物としてジカルボン酸の一種であるマロン酸を、水系溶媒として水を用いて原料溶液を調製した。
先ず、NiSO・6HOを1.5g、CoSO・7HOを1.5g、マロン酸を1.5gずつ計り取り、合計100mlとなるまで蒸留水を加えた。これを90℃に加熱して溶液とし、更にこの溶液を80℃に保ちつつpH4〜5となるようにNaOHを添加して、原料溶液を得た。
<粒子形成工程>
還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを1.0g計り取り、100mlになるまで蒸留水を加えて、還元剤溶液を得た。
ガラス製反応槽に、原料溶液調製工程で得た原料溶液100mlを加えた。
パドル型撹拌羽根を用いて反応槽内の原料溶液を撹拌しつつ、当該反応槽に有機化合物系分散剤として0.0012gのラウリル硫酸ナトリウム(以下、SDSと略する場合がある。)を加えた。SDSの溶解後、当該反応槽に還元剤溶液を滴下した。このとき反応槽中の溶液のpHを4.5付近に維持した。攪拌とpH調整を続けつつ還元剤溶液の全量を滴下して、混合液を得た。この混合液を更に一時間程度攪拌した。混合液中には粒子の析出がみられた。
その後速やかに混合液を濾過し、濾別した粒子を純水で洗浄した。洗浄後の粒子を真空乾燥し、乾燥後の粒子を、乳鉢を用いて大気中で解砕した。以上の工程で、ニッケル及びコバルトを含有する製造例1のニッケル含有導電助剤を得た。
SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)像から測定した製造例1のニッケル含有導電助剤の粒子径は、10〜20nmであった。
製造例1のニッケル含有導電助剤を用いて、以下のとおり製造例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。
<正極>
SDSを15〜10質量%程度含む水溶液に、製造例1のニッケル含有導電助剤を分散させ、分散液を準備した。なお、この分散液において、SDSは製造例1のニッケル含有導電助剤の0.2質量%となる量含まれる。
ニッケル含有導電助剤が1質量部となる量の分散液を分取し、さらに、正極活物質として水酸化コバルトがコートされた水酸化ニッケル粉末を90.8質量部、金属コバルト粒子を3質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルション(ジョンクリルPDX7341、BASF社)を固形分として3.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、スラリーを製造した。
正極用集電体として厚み10μmのニッケル箔を準備した。このニッケル箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたニッケル箔を乾燥して水を除去し、その後、ニッケル箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を乾燥機で70℃、1時間加熱乾燥して、集電体上に正極活物質層が形成された製造例1の正極を製造した。
なお、上記した正極用スラリーの配合比を基に算出される、正極活物質層におけるニッケル含有導電助剤の割合は1質量%であり、金属コバルト粒子の割合は3質量%であった。正極活物質の平均粒子径は10μmであった。
<負極>
負極活物質として、(La,Sm,Mg)(Ni,Al)で表されるA型水素吸蔵合金の粒子を用いた。当該水素吸蔵合金粒子の平均粒子径は25μmであった。
この負極活物質を96.9質量部、導電助剤としてカーボンブラックを0.4質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルション(ジョンクリルPDX7341、BASF社)を固形分として2質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として厚み10μmのニッケル箔を準備した。このニッケル箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたニッケル箔を乾燥して水を除去し、その後、ニッケル箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を乾燥機で70℃、1時間加熱乾燥して、集電体上に負極活物質層が形成された負極を製造した。
<電解液>
水酸化カリウムの濃度が5.5mol/Lであり、水酸化ナトリウムの濃度が0.5mol/Lであり、かつ、水酸化リチウムの濃度が0.5mol/Lである水溶液を調製し、電解液とした。
<電池>
セパレータとして、スルホン化処理が施された厚さ120μmのポリプロピレン繊維製不織布を準備した。正極と負極とでセパレータを挟持し、極板群とした。樹脂製の筐体に、極板群を配置して、更に電解液を注入し、筐体を密閉することで、製造例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(比較製造例1)
ニッケル含有導電助剤を用いず、比較製造例1の正極を製造した。
具体的には、比較製造例1における正極活物質用のスラリーの組成は、正極活物質として水酸化コバルトがコートされた水酸化ニッケル粉末を91.8質量部、金属コバルト粒子を3質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルション(ジョンクリルPDX7341、BASF社)を固形分として3.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、及び、適量のイオン交換水であった。スラリーの組成以外は製造例1と同様の方法で、比較製造例1の正極及び比較製造例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。
なお、上記した正極用スラリーの配合比を基に算出される、正極活物質層における金属コバルト粒子の割合は3質量%であった。
(評価1 充放電特性)
製造例1及び比較製造例1の各ニッケル金属水素化物電池について、25℃、0.1CでSOC100%まで充電を行い、その後、0.2Cで1Vまで放電した。このときの電圧と充電時間又は放電時間との関係を図1に示す。
正極活物質層にニッケル含有導電助剤を含む製造例1のニッケル金属水素化物電池は、比較製造例1のニッケル金属水素化物電池に比べて、より低い電位で満充電され、かつ、より高い電位で放電した。これは、ニッケル含有導電助剤の存在によって製造例1の正極の導電性が向上したことを意味する。この結果から、ニッケル含有導電助剤は正極に優れた電池特性を付与し得るといえる。
(評価2 1C放電効率)
製造例1及び比較製造例1の各ニッケル金属水素化物電池について、25℃、1Cで電圧1.5Vまで充電し、その後1Cで0.8Vまで放電した。このときの充電容量を1C充電容量とし、放電容量を1C放電容量とした。そして、当該1C充電容量及び1C放電容量を基に、以下の式を用いて、各ニッケル金属水素化物電池の1C放電効率(%)を算出した。
1C放電効率(%)=100×(1C放電容量)/(1C充電容量)
結果を表1に示す。
ニッケル含有導電助剤を用いることで、ニッケル金属水素化物電池の1C放電容量は約11%向上したことがわかる。
(評価3 出力特性)
製造例1及び比較製造例1の各ニッケル金属水素化物電池について、電圧1.39VとなるSOC60%の状態に調整し、25℃で電圧1Vまで一定出力にて放電させ、このときの放電時間を測定した。得られた結果から、各ニッケル金属水素化物電池につき、1.39Vから1Vまでの放電時間が10秒間となる一定出力(mW)を算出した。
結果を表2に示す。
ニッケル含有導電助剤を用いることで、ニッケル金属水素化物電池の出力値は約5%向上したことがわかる。
(評価4 DC−IR〔1〕)
製造例1及び比較製造例1の各ニッケル金属水素化物電池を用いて、以下の方法で内部直流抵抗(DC−IR)を測定した。
製造例1及び比較製造例1のニッケル金属水素化物電池について、25℃で、0.33Cレートで1Vまで放電した後、0.33CレートでSOC61%まで充電し、更に、0.1CでSOC60%まで放電した。その後、更に1Cレートで10秒間放電し、この1Cレートによる10秒間の放電の際の電圧の変化量を測定した。
オームの法則により、電圧変化量を電流値で除して、抵抗値(DC−IR)を算出した。この値を、SOC60%、1C、10秒間でのDC−IRとした。
同様の方法で0.1秒間の放電の際の各電池の電圧の変化量も測定し、SOC60%、1C、0.1秒間でのDC−IRとした。
更に、25℃で、0.33Cレートで1Vまで放電した後、0.33CレートでSOC21%まで充電し、更に、0.1CでSOC20%まで放電した。その後、更に1Cレートで10秒間放電し、この1Cレートによる10秒間の放電の際の電圧の変化量を測定した。上記と同様に、オームの法則により、電圧変化量を電流値で除して、抵抗値(DC−IR)を算出した。この値を、SOC20%、1C、10秒間でのDC−IRとした。
同様の方法で0.1秒間の放電の際の各電池の電圧の変化量も測定し、SOC20%、1C、0.1秒間でのDC−IRとした。
製造例1及び比較製造例1のニッケル金属水素化物電池における各10秒間でのDC−IR、0.1秒間でのDC−IRの各々につき、SOC20%のDC−IRをSOC60%のDC−IRで除して、SOC20%/SOC60%抵抗比率を算出した。その結果を図2に示す。
なお、ニッケル金属水素化物電池における正極活物質、つまり、水酸化ニッケルは、放電時には高抵抗であるNi(OH)となり、充電時には比較的低抵抗であるNiOOHとなる。つまり、充電状態の低い低SOC時には、充電状態の高い高SOC時に比べて、正極活物質の導電性は悪くなる。したがって、各ニッケル金属水素化物電池における低SOC時における抵抗値と高SOC時における抵抗値とを比較することで、正極活物質以外の要因によるニッケル金属水素化物電池の正極の導電性改善がみられるか否かを評価することができる。
具体的には、低SOC時における抵抗値を高SOC時における抵抗値で除した値をSOC20%/SOC60%抵抗比率とし、この値が大きい程、正極における導電性に正極活物質の絶縁性が大きく関与し、正極活物質以外の要因による導電性の向上は認め難い、とみなし得る。これとは逆に、SOC20%/SOC60%抵抗比率が小さく、1に近い値である程、正極の導電性向上に正極活物質以外の要因が大きく関与したとみなし得る。
図2に示すように、比較製造例1のニッケル金属水素化物電池においては、10秒間での抵抗比率及び0.1秒間での抵抗比率の何れにおいても、SOC20%/SOC60%抵抗比率が1を大きく上回った。このため、比較製造例1のニッケル金属水素化物電池においては、正極の導電性が充分でないと判断できる。
これに対して、ニッケル含有導電助剤を用いた製造例1のニッケル金属水素化物電池においては、10秒間での抵抗比率及び0.1秒間での抵抗比率の何れにおいても、SOC20%/SOC60%抵抗比率が1に近い値であった。このため、製造例1のニッケル金属水素化物電池においては、正極の導電性が良好と判断できる。
(製造例2)
製造例1のニッケル含有導電助剤を0.5質量部、金属コバルト粒子を1質量部用いたこと以外は製造例1と同様の方法で、製造例2の正極を製造した。
具体的には、SDSを15〜10質量%程度含む水溶液に、製造例1のニッケル含有導電助剤を分散させ、分散液を準備した。この分散液において、SDSは製造例1のニッケル含有導電助剤の0.2質量%となる量で含まれる。ニッケル含有導電助剤が0.5質量部となる量の分散液を分取し、さらに、正極活物質として水酸化コバルトがコートされた水酸化ニッケル粉末を93.3質量部、金属コバルト粒子を1質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルション(ジョンクリルPDX7341、BASF社)を固形分として3.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、スラリーを製造した。スラリーの組成以外は製造例1と同様の方法で、製造例2の正極及び製造例2のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(比較製造例2)
ニッケル含有導電助剤を用いず、比較製造例2の正極を製造した。
具体的には、比較製造例2における正極活物質用のスラリーの組成は、正極活物質として水酸化コバルトがコートされた水酸化ニッケル粉末を93.8質量部、金属コバルト粒子を1質量部、結着剤としてアクリル系樹脂エマルション(ジョンクリルPDX7341、BASF社)を固形分として3.5質量部、結着剤としてカルボキシメチルセルロースを0.7質量部、及び、適量のイオン交換水であった。スラリーの組成以外は製造例1と同様の方法で、比較製造例2の正極及び比較製造例2のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(評価5 DC−IR〔2〕)
製造例2及び比較製造例2の各ニッケル金属水素化物電池について、25℃で、0.33Cレートで1Vまで放電した後、0.33CレートでSOC61%まで充電し、更に、0.1CでSOC60%まで放電した。その後、更に50Cレートで放電し、放電の際の電圧の変化量を測定した。結果を図3に示す。
更に上記の結果を基に、オームの法則により、上記した50Cレートによる放電開始から5秒間の電圧変化量を電流値で除して、製造例2及び比較製造例2のニッケル金属水素化物電池について各々抵抗値(DC−IR)を算出した。この値を、SOC60%、50C、5秒間でのDC−IRとした。結果を表3に示す。
この結果から、製造例2のニッケル金属水素化物電池は、比較製造例2のニッケル金属水素化物電池に比べて抵抗が小さいことがわかる。また、その結果、図3に示すように、放電開始後1Vに達するまでに要する時間が延びているといえる。
(評価6 1C放電効率)
製造例2及び比較製造例2の各ニッケル金属水素化物電池について、25℃、0.5CでSOC100%まで充電し、その後1Cで1Vまで放電した。このときの充電容量を0.5C充電容量とし、放電容量を1C放電容量とした。そして、当該0.5C充電容量及び1C放電容量を基に、以下の式を用いて、各ニッケル金属水素化物電池の0.5C−1C放電効率(%)を算出した。
0.5C−1C放電効率(%)=100×(1C放電容量)/(0.5C充電容量)
結果を表4に示す。
ニッケル含有導電助剤の配合量が0.5質量%と比較的少ない場合にも、ニッケル金属水素化物電池の特性が向上したことがわかる。
(製造例3)
<原料溶液調製工程>
ニッケル塩として硫酸ニッケルを、ヘテロ元素含有有機化合物としてジカルボン酸の一種であるマロン酸を、水系溶媒として水を用いて原料溶液を調製した。
先ず、NiSO・6HOを3g、マロン酸を1.5gずつ計り取り、合計100mlとなるまで蒸留水を加えた。これを90℃に加熱して溶液とし、更にこの溶液を80℃に保ちつつpH4〜5となるようにNaOHを添加して、原料溶液を得た。
<粒子形成工程>
還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを1.0g計り取り、100mlになるまで蒸留水を加えて、還元剤溶液を得た。
ガラス製反応槽に、原料溶液調製工程で得た原料溶液100mlを加えた。
パドル型撹拌羽根を用いて反応槽内の原料溶液を撹拌しつつ、当該反応槽に有機化合物系分散剤として0.0012gのSDSを加えた。SDSの溶解後、当該反応槽に還元剤溶液を滴下した。このとき反応槽中の溶液のpHを4.5付近に維持した。攪拌とpH調整を続けつつ還元剤溶液の全量を滴下して、混合液を得た。この混合液を更に一時間程度攪拌した。混合液中には粒子の析出がみられた。
その後速やかに混合液を濾別し、粒子を純水で洗浄した。洗浄後の粒子を真空乾燥し、乾燥後の粒子を、乳鉢を用いて大気中で解砕した。以上の工程で、製造例3のニッケル含有導電助剤を得た。製造例3のニッケル含有導電助剤は金属ニッケルを含有する。SEM像から測定した製造例3のニッケル含有導電助剤の粒子径は、10〜20nmであった。
製造例3のニッケル含有導電助剤を用いたこと以外は製造例2と同様の方法で、製造例3の正極を製造した。なお、製造例3の正極は、製造例3のニッケル含有導電助剤0.5質量部及び金属コバルト粒子1質量部を含む正極用スラリーを用いて製造されたものである。製造例3の正極を用い、製造例1と同様の方法で、製造例3のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(評価7 DC−IR〔3〕)
製造例3及び比較製造例2のニッケル金属水素化物電池について、25℃で、0.33Cレートで1Vまで放電した後、0.33CレートでSOC61%まで充電し、更に、0.1CでSOC60%まで放電した。その後、更に50Cレートで放電し、放電の際の電圧の変化量を測定した。結果を図4に示す。
上記の結果を基に、オームの法則により、上記した50Cレートによる放電開始から5秒間の電圧変化量を電流値で除して、製造例3及び比較製造例2のニッケル金属水素化物電池について各々抵抗値(DC−IR)を算出した。この値を、SOC60%、50C、5秒間でのDC−IRとした。結果を表5に示す。
表5の結果から、製造例3のニッケル含有導電助剤が好適に機能することが裏付けられたといえる。
また、製造例3のニッケル金属水素化物電池は、比較製造例2のニッケル金属水素化物電池に比べて抵抗が小さいため、図4に示すように、放電開始後1Vに達するまでに要する時間が延びているといえる。
(評価8 1C放電効率)
製造例3のニッケル金属水素化物電池について、評価6と同様に0.5C充電容量及び1C放電容量を測定し、測定値を基に、0.5C−1C放電効率(%)を算出した。評価6における製造例2及び比較製造例2の結果とともに、結果を表6に示す。
ニッケル含有導電助剤は金属としてニッケルのみを含有してもよいし、ニッケルと他の金属を含有してもよいことが裏付けられたといえる。
(実施例1)
未充電の製造例3のニッケル金属水素化物電池に対して、以下の表7に示す活性化工程を行い、実施例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。表7における1サイクル目の充電が、b)工程に該当する。
(比較例1)
1サイクル目の充電の温度条件を25℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(評価9:初回充電曲線)
実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の製造方法における、初回充電曲線(表7の1サイクル目の充電曲線)を、図5に示す。
図5から、比較例1のニッケル金属水素化物電池の初回充電曲線と比較して、実施例1のニッケル金属水素化物電池の初回充電曲線においては、0.8V付近から開始される電圧変化が緩やかとなる領域(プラトー領域)が、広汎であることがわかる。プラトー領域においては、以下の化学反応が進行していると考えられる。
Co(OH) + OH → CoOOH + HO + e
また、実施例1のニッケル金属水素化物電池の初回充電曲線においては、容量が10%を超えた領域及びそれ以降の領域において、ほぼ一定電圧となっているが、当該一定電圧の値は比較例1のニッケル金属水素化物電池の一定電圧の値よりも低いことがわかる。すなわち、実施例1のニッケル金属水素化物電池は、導電性に優れるため、低電圧で一定の容量を確保可能といえる。実施例1のニッケル金属水素化物電池の方が、オキシ水酸化コバルトによる導電ネットワークが十分に形成されているといえる。
(評価10:SEM−EDX及びXRD)
実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の正極を取り出して、走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を組み合わせたSEM−EDX測定、及び、CuΚαを用いたX線回折分析(XRD)を行った。
その結果、実施例1のニッケル金属水素化物電池の正極からは、SEM像及びXRDチャートにおいて、金属コバルトの粒子の存在及び金属コバルトの結晶の存在が確認できなかった。他方、比較例1のニッケル金属水素化物電池の正極からは、金属コバルトの粒子の存在がSEM像で観察され、さらに、XRDチャートにおいて金属コバルトの結晶に由来するピークが観測された。なお、実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の両正極のXRDチャートからは、オキシ水酸化コバルトに由来するピークが明確に観測された。
実施例1のニッケル金属水素化物電池の正極においては、金属コバルトが完全に消費されてオキシ水酸化コバルトに変換したといえる。他方、比較例1のニッケル金属水素化物電池の正極においては、金属コバルトがオキシ水酸化コバルトに変換する反応の進行が不十分であったといえる。
(評価11:充電曲線)
実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の製造方法における、表7の5サイクル目の充電曲線を図6に示す。
図6から、実施例1のニッケル金属水素化物電池の方が全体にわたり低電圧であること、及び、SOC100%に近づくにつれて、実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池の電圧の差が大きくなることがわかる。
高電圧条件下においては、水の酸化分解などの不具合が懸念されるが、実施例1のニッケル金属水素化物電池においては、かかる不具合が比較的生じ難いといえる。
(評価12:放電抵抗)
実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池をSOC60%に調整して、50Cで5秒間放電させた。電流値と放電前後の電圧変化量から、オームの法則により、放電時の抵抗を放電抵抗として算出した。
実施例1のニッケル金属水素化物電池の放電抵抗は0.150Ωであり、比較例1のニッケル金属水素化物電池の放電抵抗は0.159Ωであった。
両ニッケル金属水素化物電池ともに低抵抗であったものの、実施例1のニッケル金属水素化物電池の方がより低抵抗であった。実施例1のニッケル金属水素化物電池には、オキシ水酸化コバルトによる導電ネットワークが十分に形成されているといえる。なお、両ニッケル金属水素化物電池ともに低抵抗であるのは、ニッケル含有導電助剤の存在に因ると考えられる。
(評価13:出力特性)
実施例1及び比較例1のニッケル金属水素化物電池をSOC60%に調整して、50Cで放電させた。放電時間と電圧変化のグラフを図7に示す。
図7から、実施例1のニッケル金属水素化物電池の方が、特定の電圧に達するまでの放電時間が長いことがわかる。実施例1のニッケル金属水素化物電池の方が、放電量が多く、放電特性に優れているといえる。
(参考例1)
ニッケル含有導電助剤を含有しない未充電の比較製造例1のニッケル金属水素化物電池を用いた以外は、実施例1と同様の方法で表7に示す活性化工程を行い、参考例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(比較参考例1)
1サイクル目の充電の温度条件を25℃とした以外は、参考例1と同様の方法で、比較参考例1のニッケル金属水素化物電池を製造した。
(参考評価1:エージングによる電池特性の変化)
参考例1及び比較参考例1のニッケル金属水素化物電池に対して、SOC100%で50℃に保つエージング処理を12日間行った。
(参考評価1−1:放電特性)
エージング処理4日後及び12日後の各電池に対して、50Cでの放電を行った。放電時間と電圧変化との関係をグラフにして図8に示す。
図8から、エージング処理4日後及び12日後のいずれにおいても、参考例1のニッケル金属水素化物電池の方が、放電秒数が長く、放電特性に優れることがわかる。
(参考評価1−2:放電抵抗)
エージング処理4日後、6日後、8日後及び12日後の各電池をSOC60%に調整して、50Cで5秒間放電させた。電流値と放電前後の電圧変化量から、オームの法則により、放電時の抵抗を放電抵抗として算出した。結果をグラフにして図9に示す。
図9から、エージング処理4日後〜12日後のいずれにおいても、参考例1のニッケル金属水素化物電池の方が、低抵抗であることがわかる。
(参考評価1−3:XRD)
エージング処理4日後の参考例1及び比較参考例1のニッケル金属水素化物電池の正極を取り出して、XRD分析を行った。また、製造直後の比較参考例1のニッケル金属水素化物電池の正極を取り出して、XRD分析を行った。
その結果、エージング処理4日後の参考例1のニッケル金属水素化物電池の正極からは、オキシ水酸化コバルトに由来するピークが明確に観測されたものの、金属コバルトの結晶に由来するピークが確認されなかった。
他方、比較参考例1のニッケル金属水素化物電池の正極及びエージング処理4日後の比較参考例1のニッケル金属水素化物電池の正極からは、オキシ水酸化コバルト及び金属コバルトの両者の結晶に由来するピークが観測された。
これらの結果から、初回充電の温度に因り、金属コバルトがオキシ水酸化コバルトに変換される反応の進行が大きく影響されること、及び、初回充電以降に充電状態のニッケル金属水素化物電池を初回充電と同等の温度に保った場合であっても金属コバルトには特段の変化が無いことがわかる。
以上の結果から、以下の各発明を把握できる。なお、以下の各発明を特定及び限定する事項は、本明細書中の説明を援用する。
オキシ水酸化コバルトを含有し、かつ金属コバルトを含有しない正極を具備するニッケル金属水素化物電池。
オキシ水酸化コバルトを含有し、かつ金属コバルトを含有しない正極を具備するニッケル金属水素化物電池の製造方法であって、
a)金属コバルトを含有する正極を具備するニッケル金属水素化物電池を組み立てる工程、
b)a)工程後のニッケル金属水素化物電池に対して、30〜80℃の条件下で初回充電を行い、正極にオキシ水酸化コバルトを生成させる充電工程、
を含むことを特徴とする製造方法。

Claims (5)

  1. a)ニッケル含有導電助剤及びコバルトを含有する正極を用いて、ニッケル金属水素化物電池を組み立てる工程、
    b)a)工程後のニッケル金属水素化物電池に対して、30〜80℃の条件下で初回充電を行い、正極にオキシ水酸化コバルトを生成させる充電工程、
    を含むことを特徴とする、オキシ水酸化コバルトを含有する正極を具備するニッケル金属水素化物電池の製造方法。
  2. 前記ニッケル含有導電助剤の粒子径が10〜20nmである請求項1に記載の製造方法。
  3. ニッケル含有導電助剤及びオキシ水酸化コバルトを含有し、かつ金属コバルトを含有しない正極を具備するニッケル金属水素化物電池。
  4. オキシ水酸化コバルトを含有し、かつ金属コバルトを含有しない正極を具備するニッケル金属水素化物電池。
  5. 請求項4に記載のニッケル金属水素化物電池の製造方法であって、
    a)金属コバルトを含有する正極を具備するニッケル金属水素化物電池を組み立てる工程、
    b)a)工程後のニッケル金属水素化物電池に対して、30〜80℃の条件下で初回充電を行い、正極にオキシ水酸化コバルトを生成させる充電工程、
    を含むことを特徴とする製造方法。
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