JP2019036603A - 接合シートおよび接合構造体 - Google Patents

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智幸 庄司
宏文 伊藤
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宏文 伊藤
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Abstract

【課題】放熱性と熱応力等の緩和性を両立できる高信頼性の接合構造体が得られる接合シートを提供する。【解決手段】本発明は、接合される第1部材(10)と第2部材(20)の接合面間に介装される芯材(30)を備えた接合シート(3)である。芯材は、内包部(301)と内包部の外周側を包囲する外周部(302)とを有する。内包部は、外周部よりも熱伝導率が高い高熱伝導金属からなる。外包部は、内包部よりもヤング率および耐力が小さい軟質金属からなる。内包部は、第1部材から第2部材へ効率的に熱伝導し、第1部材の放熱性を確保する。外周部は、塑性変形等することにより、第1部材や接合部等に作用する熱応力や熱歪みを緩和する。内包部と外周部が相乗的に作用することにより、高信頼性の接合構造体(例えばパワーモジュール)が得られる。【選択図】図2

Description

本発明は、高信頼性の接合構造体を得ることができる接合シート等に関する。
モータ駆動用インバータ等には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のデバイス(半導体素子)を、絶縁基板や電極等に実装したパワーモジュールが用いられる。
パワーモジュールの信頼性を確保するため、デバイスの作動中に生じる発熱をヒートシンクや冷却器等を介して効率的に放熱させると共に、その接合部(周辺)に生じる熱膨張係数(CTE:coefficient of thermal expansion)差(CTE不整合)に起因した熱応力を緩和したり、その熱応力に対する耐久性(耐熱疲労性)を高めることが重要となる。このような傾向は、搭載自由度の向上や軽量化を図るために小型化が進められている車載用パワーモジュールにおいて顕著である。
このような事情の下、パワーモジュールのさらなる信頼性の向上等を図れる接合構造体に関する提案が下記の特許文献でなされている。
特開2006−32888号公報
特許文献1は、降伏応力が小さく塑性変形し易いAl等からなる金属層を介装して、リードフレーム上にパワー半導体素子をダイマウント接続した半導体装置を提案している。特許文献1の半導体装置は、接合部に作用する熱応力を金属層の塑性変形により緩和することで、信頼性の向上を図っている。
しかし、そのような金属層は必ずしも熱伝導率が高くないため、特許文献1の半導体装置は放熱性が必ずしも十分とはいえない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、放熱性と熱応力緩和性に優れた高信頼性の接合構造体を得ることができる接合シート等を目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、高熱伝導金属と軟質金属を組合わせた接合シートを用いることを着想し、実際に高信頼性の接合構造体を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《接合構造体》
(1)本発明の接合構造体は、接合される第1部材と第2部材の接合面間に介装される芯材を備えた接合シートであって、前記芯材は、内包部と該内包部の外周側を包囲する外周部とを有し、該内包部は、該外周部よりも熱伝導率が高い高熱伝導金属からなり、該外包部は、該内包部よりもヤング率および耐力が小さい軟質金属からなる。
(2)本発明の接合シートを用いると、接合される第1部材と第2部材の間の熱伝導性(放熱性)と、クラック等を生じさせる熱歪みや熱応力の緩和性(単に「応力緩和性」という。)とを両立させることができ、高信頼性の接合構造体を得ることができる。この理由は次のように考えられる。
一例として、第1部材が発熱源である半導体素子である場合を想定すると、その駆動時(稼働時)、その中央付近で最も発熱を生じる。このため第1部材の被接合面は、その中央域が最も高温となり易い。本発明の接合シートの芯材は、高熱伝導金属からなる内包部が、その高温な中央域に対面可能となっている。これにより、第1部材の発熱は、その内包部を通じて第2部材へ効率的に熱伝導されて放熱される。こうして放熱性が確保される結果、第1部材は温度上昇が抑制されて保護されると共に、その周囲に生じる熱歪みや熱応力も抑制される。
第1部材の被接合面の外周域は、中央域ほど高温とはならないものの、中央域から離れているため、CTE不整合等に起因して生じる歪み量や熱応力が大きくなる。ここで本発明の接合シートの芯材は、軟質金属からなる外周部が、その外周域に対面可能となっており、熱歪みや熱応力に応じて弾性変形または塑性変形することにより、それらが大幅に緩和される。この結果、第1部材や接合部に熱応力によってクラック等が生じ得ることが十分に抑止される。
このように本発明の接合シートは、優れた熱伝導性(放熱性)と歪みや応力の緩和性とを発揮し、接合シートを用いて接合された第1部材と第2部材からなる接合構造体は、高温環境下や冷熱サイクル下等でも高信頼性が確保される。
なお、本発明に係る芯材は、内包部および外周部が共に金属からなるため、種々の方法で比較的容易に製造可能であり、それらの境界(内包部の外縁)で分離や剥離等もし難い。このような点でも、本発明の接合シートは、高信頼性の接合構造体の構成部材に好適である。
《接合構造体》
本発明は接合構造体としても把握できる。すなわち本発明は、第1部材と、該第1部材と接合され得る第2部材と、該第1部材と該第2部材を接合する接合部とを備える接合構造体であって、前記接合部は、前記第1部材と前記第2部材の接合面間に介装される芯材と、該第1部材と該芯材を接合する第1接合層と、該第2部材と該芯材を接合する第2接合層とを備え、該芯材は、内包部と該内包部の外周側を包囲する外周部とを有し、該内包部は、該外周部よりも熱伝導率が高い高熱伝導金属からなり、該外包部は、該内包部よりもヤング率および耐力が小さい軟質金属からなる接合構造体でもよい。
この接合構造体は、内包部が第1部材の接合面上または第2部材の接合面上で最高温度となる発熱中心を含む領域に対面していると好ましい。
《その他》
(1)本明細書でいう「内包部」は、第1部材または第2部材の被接合面内で最も高温となる点(発熱中心)を含む領域(中央域)に対応して設けられ、その形態や大きさ等は適宜調整される。但し、接合シートは、接合構造体(半導体素子等)の各形態に個別に対応した専用品に限らず、汎用品でもよい。
(2)本明細書では、説明の便宜上、第1または第2という呼称を用いており、第1部材側を例示して主に説明している。第2部材側の接合構造は、第1部材側と同じでも、異なってもよい。
(3)本明細書でいうヤング率(弾性率)や耐力等は、日本工業規格(JIS)に準拠して決定される。例えば、本明細書でいう耐力は、応力−ひずみ曲線図に基づき定まる0.2%耐力である。各特性は室温域におけるものとする。
(4)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
接合構造体の一形態であるパワーモジュールの接合過程を示す模式断面図である。 接合シートの一形態を模式的に示す平面図と正面図である。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の接合シートや接合構造体のみならず、それらの製造方法にも該当し得る。「方法」に関する構成要素は「物」に関する構成要素ともなり得る。
《芯材》
接合シートは少なくとも芯材を備える。接合シートは、芯材のみでもよいが、その少なくとも一方の接合面上に後述する接合金属層が形成されているとより好ましい。
芯材は高熱伝導金属の内包部と軟質金属の外周部とからなるシート状または箔状の複合金属層である。芯材の厚さは10〜500μmさらには15〜200μmあると好ましい。芯材が薄くなると、外周部の軟質金属による応力緩和性(歪み低減効果)が小さくなり、また、接合シートの取扱い難くなる。芯材が厚くなると、第1部材と第2部材の間の熱伝導性が低下し、接合構造体も大型化する。
(1)内包部
内包部は、芯材の内側にあり、第1部材等の中央域(発熱中心または最高温点を含む領域)に対応した形状または大きさを有する。接合面側から観た内包部の形状(外縁)は、例えば、方形、円形、波形等である。
芯材の接合面全体に対する内包部の面積割合は、1〜60%、10〜55%さらには20〜50%であると好ましい。内包部が小さくなると、熱伝導性(放熱性、冷却性)も小さくなる。逆に内包部が大きくなると、弾性率や耐力の大きい高熱伝導金属が増加し、外周部の軟質金属が相対的に減少するため、第1部材等や接合部に作用する熱応力等の緩和性が低下し得る。なお、「芯材の接合面全体」の面積は、通常、内包部の面積と外周部の面積との合計である。但し、芯材または接合シートが第1部材または第2部材の被接合面よりも拡張している場合、外周囲への拡張領域を除いた領域(実質的な接合領域)の面積を「芯材の接合面全体」の面積とする。
内包部を構成する高熱伝導金属は、軟質金属よりも熱伝導率が高い金属であり、その熱伝導率は、例えば、250W/m・K以上、300W/m・K以上さらには350W/m・K以上であると好ましい。高熱伝導金属の具体例として、Cu、Au、Ag、それらの合金等がある。なお、本明細書でいう「X合金」とは、主元素であるXを合金全体に対して50原子%以上含むものである。
高熱伝導金属は、単相金属に限らず複相金属でもよいし、さらには複合材料でもよい。例えば、上述したCu等の金属マトリックス相中に、粒子状または繊維状の化合物(金属間化合物を含む)が分散したものでもよい。
(2)外周部
外周部は、内包部の外周側にある。外周部の内縁は、基本的に内包部の外縁と一致し、外周部の外縁は、基本的に接合シートの外縁と一致する。外周部は、熱応力(特にCTE不整合による熱応力)や熱歪みを緩和するものであるため、少なくとも高温側(例えば第1部材側)の被接合面の外周域に対応した形状、大きさであると好ましい。
外周部を構成する軟質金属は、ヤング率(縦弾性係数)と耐力が共に上述した高熱伝導金属よりも小さい金属である。軟質金属のヤング率は、例えば、100GPa以下さらには85GPa以下であると好ましい。軟質金属の0.2%耐力は、例えば、200MPa以下、150MPa以下さらには100MPa以下であると好ましい。軟質金属の具体例として、Alまたはその合金等がある。
ちなみに、Cu(無酸素銅/JIS C1020)は、熱伝導率:400W/m・K、ヤング率:120GPa、0.2%耐力:250MPaである。Al(純アルミニウム/JIS A1050)は、熱伝導率:200W/m・K、ヤング率:70GPa、0.2%耐力:90MPaである。
(3)接合金属層
接合シートは、第1部材または第2部材との接合を容易とするため、芯材の少なくとも一方の表面に、それら部材との接合に供される接合金属層が形成されていると好適である。接合金属層は、単層でも複層でもよい。また接合金属層は、芯材の片面だけに形成されていても、両面に形成されていてもよい。両面に形成される場合、各面に形成される接合金属層は同じでも異なっていてもよい。接合金属層の構成(金属の種類、層数等)は、各部材の被接合面や接合層の構成に応じて選択される。
例えば、第1部材と芯材を、SLID反応により形成される金属間化合物層で接合(SLID接合)する場合なら、両被接合面間には、芯材側にあり第1金属からなる第1層と、第1層上にあり第1金属よりも低融点であると共に第1金属との間で金属間化合物(IMC)を生成する第2金属からなる第2層とが必要となる。接合シートの接合金属層は、少なくとも第1層を備えると好ましい。第2層は第1部材側にあってもよいが、接合シート側の第1層上に有るとより好ましい。
なお、いずれの場合、第1部材の被接合面上には第1金属からなる被覆層が形成されていると好ましい。但し、第1部材の被接合面が第1金属からなるような場合は改めて、そのような被覆層を形成する必要はない。
第1金属は、例えば、Ni、Cu、Ag、Au、Ti、Mo、W、Si、Cr、Mn、Co、Zr、Nb、Ta、Ptやそれらの合金等であり、第2金属は、例えば、Sn、In、Ga、Pb、Bi、Znやそれらの合金等である。第1金属と第2金属の組合わせは接合構造体の耐熱温度、接合工程中の加熱温度、各部の熱膨張係数等を考慮して選択される。なお、本明細書では、適宜、第1金属からなる層を単に第1金属層、第2金属からなる層を単に第2金属層、金属間化合物(IMC)からなる層を単に金属間化合物層(IMC層)という。
好例として、第1金属をNiまたはCuとし、第2金属をSnとするとよい。Niの融点は約1450℃、Cuの融点は約1085℃、Snの融点は約230℃である。例えば、Niからなる第1金属層とSnからなる第2金属層を接触させつつ、例えば、約350℃で5分間程度加熱すると、ニッケルスズ(NixSny(x,y:実数)/単に「NiSn」という。)というIMC層が得られる。このNiSn(IMC)の融点は約795℃である。従って、第1金属をNi、第2金属をSnとする組合わせは、例えば、SiC等からなる次世代半導体素子(第1部材)を用いたパワーモジュール(接合構造体)のように、150℃以上の耐熱性が必要とされる一方で、接合工程時の加熱温度を400℃以下にする必要がある場合に有効である。
この他、第1金属/第2金属の組合わせとして、Cu/Sn、Ag/Sn、Pt/Sn/、Au/Sn等があり、それぞれ、CuSn、AgSn、PtSn、AuSn等のIMCが形成される。いずれの場合でも、第1金属層と第2金属層は、それぞれの厚さが、例えば、100nm〜50μmさらには3μm〜15μmであると好ましい。接合金属層は、厚さ(合計)が1〜100μmさらには5〜30μmであると好ましい。各層が薄過ぎると所望する接合層の形成が難しくなり、各層が厚過ぎると接合層も厚くなり放熱性等が低下し得る。なお、第2金属層は、接合シート側に設ける他、第1部材側に設けてもよい。さらに、第2金属層を被接合面に設ける他、第1部材と接合シートの間に、別な第2金属シートを介挿させてもよい。
(4)製法
芯材は種々の方法で製造できる。例えば、高熱伝導金属の素材を軟質金属の素材で囲繞したクラッド材を、冷間または熱間で塑性加工(圧延、鍛造等)した原材を、所望する厚さにスライス等して得られる。また、クラッド材は、高熱伝導金属の圧粉体または焼結体を、軟質金属の圧粉体または焼結体で囲繞したものを用いてもよい。
接合金属層も種々の方法で形成できる。例えば、めっき等の化学的な堆積法、スパッタリング等の物理的な堆積法、圧延等の機械的な積層法などにより接合金属層が形成される。なお、芯材と接合される部材の被接合面に第1金属層や第2金属層を形成する場合、スパッタリング等の物理的な堆積法を用いると好ましい。
《接合構造体》
接合構造体には様々な形態が考えられる。接合構造体の好例は、第1部材である半導体素子を、第2部材である基板(金属配線層)上や金属電極上に接合したパワーモジュールである。半導体素子で生じる発熱は、接合シートの内包部(高熱伝導金属)を通じて、基板極等へ効率的に熱伝導され、基板等から冷却器等へ放熱される。また、半導体素子は、Si、SiC、GaN等からなり、そのCTEは3〜7ppm/Kである。一方、金属電極等は、CuまたはAl等からなり、そのCTEは15〜25ppm/Kである。それらのCTE不整合に起因して生じる熱応力や熱歪みは、接合シートの外周部(軟質金属)が塑性変形等することにより緩和される。こうして本発明の一形態であるパワーモジュールは、放熱性と応力等の緩和性を両立することにより高い信頼性を発揮し得る。
第1部材と芯材の第1接合層や第2部材と芯材の第2接合金属層を金属間化合物層とする場合、第1部材、接合シートおよび第2部材の積層体を、第2金属の融点以上で、第1金属と第2金属が反応してIMCを生成する反応温度以上に加熱するとよい。この際、第1金属と第2金属の種類、第1部材と第2部材の耐熱性等により反応温度や保持時間は調整される。
本発明の接合構造体の一例であるパワーモジュールについて、具体的な形態を示すことにより、本発明をさらに詳しく説明する。
《パワーモジュール》
(1)パワーモジュールMについて、接合前→加熱過程(接合工程)→接合後の各様子を図1に示した。接合前のパワーモジュールMは、SiCからなるチップ10(第1部材)とその下面側にあるNiが成膜された電極面11とを有する半導体素子1と、Cu板20(第2部材)とその上にNiが成膜された電極面21を有する金属電極2と、接合シート3からなる。
接合シート3は、図2に示すように、Cuからなる内包部301とAlからなる外周部302と備える芯材30と、その両面側に形成されたNiからなる層311、321(第1層、第1金属層)と、それらの両面側にそれぞれ形成されたSnからなる層312、322(第2層、第2金属層)とを有する。層311、312または層321、322が本発明でいう接合金属層に相当する。なお、接合シート3は、金属電極2よりも小さいが、半導体素子1とほぼ同じ大きさとなっている。
(2)半導体素子1(チップ10)と金属電極2(Cu板20)の接合は次のようになされる。上側から下側に向けて順番に、半導体素子1、接合シート3および金属電極2を積層して配置する。半導体素子1と金属電極2で接合シート3を挟持した状態の積層体(挟持体)を、不活性雰囲気(真空雰囲気を含む)や活性雰囲気(水素雰囲気、還元雰囲気等)の加熱炉に入れて、所定の反応温度まで加熱して、一定時間保持する。例えば、挟持する圧力(加圧量)を0.5MPaとして、還元雰囲気の電気炉中で、350℃×5分間加熱するとよい。
その昇温過程中に、接合シート3の層312、322が先ず溶融する。これにより、電極面11と層311の間および電極面21と層321の間で、溶融したSnが濡れ拡がる。層312、322の厚さと上記加圧量を調整すれば、Snの濡れ拡がる領域も制御できる。
この状態でさらに昇温すると、層312が溶融してできたSnは、電極面11および層311と固液相互拡散(SLID)反応を生じて、NiSn(IMC/固相)からなる接合層414を形成する。このとき電極面11と層311は、一部が残存して、それぞれ層411と層4311になる。こうしてチップ10と芯材30は、層411と層4311(中間層)を介して、接合層414により接合された状態となる。
また、層322が溶融してできたSnは、電極面21および層321と反応して、NiSnからなる接合層424を形成する。このとき電極面21と層321は、一部が残存して、それぞれ層421と層4321となる。こうしてCu板20と芯材30は、層421と層4321(中間層)を介して、接合層424により接合された状態となる。
こうして、最上層である層411から最下層である層421までの各層により構成された接合部4により、チップ10(半導体素子1)とCu板20(金属電極2)が接合されたパワーモジュールMが得られる。
ところで、パワーモジュールMは、チップ10の発熱中心となる(発熱)中央域近傍に芯材30の内包部301があり、その外周側に芯材30の外周部302がある。内包部301はCu(高熱伝導金属)からなるため、チップ10で生じた発熱は効率的に金属電極2側へ熱伝導させて放熱される。また、チップ10と金属電極2のCTE不整合により生じる熱応力や熱歪みは、外周部302を構成するAl(軟質金属)が弾性変形や塑性変形して緩和される。このように芯材30の介装により、チップ10の温度上昇が抑制されると共に、熱応力(パワーサイクルストレスや温度サイクルストレス)に起因したチップ10や接合部4の損傷が回避され、パワーモジュールMの信頼性が確保される。
《評価試験》
パワーモジュールを模擬した試験体を種々製造し、冷熱サイクル下における信頼性を評価した。このような具体例を示すことにより、本発明をさらに詳しく説明する。なお、既述したパワーモジュールMの各部に相当する試験体の各部にも、敢えて同符号を付して、それらに関する説明を部分的に省略した。
[試料1]
(1)接合シート
先ず、上述した接合シート3の芯材30を次のようにして製造した。無酸素銅(JIS C1020)からなる断面正方形の角棒(□2.5mm/単に「Cu角棒」という。)と、直線状の角溝(幅2.5mm×深さ1.25mm)を有する純アルミニウム板(単に「Al板」という。)とを用意した。Cu角棒を2枚のAl板の角溝に嵌入して挟み込んだクラッド材を、Cu角棒の長手方向と平行な方向に熱間圧延した。熱間圧延はロールの温度を300℃として大気雰囲気中で行った。
こうして得られた圧延板からCu角棒の延在方向に対する直行面を切り出すと共に研磨して、厚さ100μmの箔材を得た。Cu部分(□2.5mm)が中央に配置されるように箔材の周囲を切り取った。こうして、Cu製の内包部301(□2.5mm)を、Al製の外周部302が包囲した□5mmの芯材30を得た。
次に、その両面にスパッタリングにより、厚さ5μmのNi層(第1層、第1金属層)と、厚さ5μmのSn層(第2層、第2金属層)とを順に成膜した。こうして接合シート3を得た。なお、Ni層は、上述した層311、321に相当し、Sn層は、上述した層312、322に相当する。また本試料の場合、Ni層とSn層が本発明でいう接合金属層を構成する。
(2)半導体素子
単結晶炭化珪素板(5mm×5mm×0.35mm/単に「SiC板」という。)を用意し、その表面にスパッタリングにより厚さ100nmのTi層と、さらに厚さ5μmのNi層とを順に成膜した。こうしてSiC板からなるチップ10上に、Ni層からなる電極面11を有する模擬的な半導体素子1を得た。
(3)金属電極
無酸素銅(JIS C1020)からなる板(20mm×20mm×3mm/単に「Cu板」という。)を用意し、その表面にスパッタリングにより厚さ5μmのNi層を成膜した。こうしてCu板20上に電極面21(Ni層)を有する模擬的な金属電極2を得た。
(4)接合
接合シート3の各面をそれぞれ半導体素子1の電極面11と金属電極2の電極面21とで挟持した積層体を、水素雰囲気中で350℃×15分間加熱した。加熱時に半導体素子1と金属電極2の間に印加した面圧は0.5MPaとした。その加熱後、常温まで炉冷して、評価試験に供する模擬的なパワーモジュールM(試験体)を得た。
(5)試験
パワーモジュールM(接合構造体)を、低温環境下(−40℃×30分間)と高温環境下(200℃×30分間)に交互に曝す冷熱サイクル試験を100サイクル行った。なお、冷熱サイクル試験は大気雰囲気中で行った。
用意した5個のパワーモジュールMのいずれについても、冷熱サイクル試験後に、SiC板や接合部にクラック等の損傷は見られなかった。なお、本試料は、接合面全体に対する内包部301の面積割合は25%に相当する。
[試料2]
□3.5mmのCu角棒と、幅3.5mm×深さ1.75mmの角溝を有するAl板を用いて、内包部301のサイズが試料1と異なる接合シート3も製造した。この接合シート3を用いて、試料1の場合と同様に、パワーモジュールMの製作とその評価(冷熱サイクル試験)を行った。本試料では、接合シート3の内包部301の面積割合が49%に相当する。
本試料の場合も、用意した5個のパワーモジュールMのいずれについても、冷熱サイクル試験後に、SiC板や接合部にクラック等の損傷は見られなかった。
[試料3]
試料1のCu角棒およびAl板に替えて、φ3mmのCu丸棒と半径1.5mmの半円溝を有するAl板を用いて、試料1と異なる形状の内包部301(φ3mmの円形状)を有する接合シート3も製造した。この接合シート3を用いて、試料1の場合と同様に、パワーモジュールMの製作とその評価(冷熱サイクル試験)を行った。本試料では、接合シート3の内包部301の面積割合が約28%に相当する。
本試料の場合も、用意した5個のパワーモジュールMのいずれについても、冷熱サイクル試験後に、SiC板や接合部にクラック等の損傷は見られなかった。
[試料4]
試料1に対して、接合シート3に層312、322(Sn層)を設けず、半導体素子1の電極面11上と金属電極2の電極面21上とに、それぞれSn層(5μm)をスパッタリングした試料も用意した。この場合も、試料1の場合と同様にパワーモジュールMの製作とその評価(冷熱サイクル試験)を行った。
本試料の場合も、用意した5個のパワーモジュールのいずれについても、冷熱サイクル試験後に、SiC板や接合部にクラック等の損傷は見られなかった。
[比較試料]
試料4に対して、接合シート3を介装せずに、半導体素子1と金属電極2を直接積層することにより、試料1の場合と同様に、パワーモジュールMの製作とその評価を行った。
作製した5個のパワーモジュールM中、1個は、作製直後にSiC板が割れた。残り4個はいずれも、冷熱サイクル試験後にSiC板が割れた。
M パワーモジュール(接合構造体)
1 半導体素子
10 チップ(第1部材)
11 電極面(被覆層)
2 金属電極
20 Cu板(第2部材)
3 接合シート
301 内包部
302 外周部
4 接合部

Claims (13)

  1. 接合される第1部材と第2部材の接合面間に介装される芯材を備えた接合シートであって、
    前記芯材は、内包部と該内包部の外周側を包囲する外周部とを有し、
    該内包部は、該外周部よりも熱伝導率が高い高熱伝導金属からなり、
    該外包部は、該内包部よりもヤング率および耐力が小さい軟質金属からなる接合シート。
  2. 前記高熱伝導金属は、Cu、Au若しくはAgまたはそれらいずれかの合金からなる請求項1に記載の接合シート。
  3. 前記軟質金属は、Alまたはその合金からなる請求項1または2に記載の接合シート。
  4. 前記芯材は、接合面全体に対する前記内包部の面積割合が1〜60%である請求項1〜3のいずれかに記載の接合シート。
  5. さらに、前記芯材の少なくとも一方の表面に、該芯材と前記第1部材または前記第2部材との接合に供される接合金属層が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の接合シート。
  6. 前記接合金属層は、前記芯材側に第1金属からなる第1層を有する請求項5に記載の接合シート。
  7. 前記第1金属は、Ni、Cu、AuまたはAgである請求項6に記載の接合シート。
  8. 前記接合金属層は、さらに、前記第1層上にあり該第1金属よりも低融点であると共に該第1金属との間で金属間化合物を生成する第2金属からなる第2層を有する請求項6または7に記載の接合シート。
  9. 前記第2金属は、Snである請求項8に記載の接合シート。
  10. 第1部材と、
    該第1部材と接合され得る第2部材と、
    該第1部材と該第2部材を接合する接合部と、
    を備える接合構造体であって、
    前記接合部は、前記第1部材と前記第2部材の接合面間に介装される芯材と、
    該第1部材と該芯材を接合する第1接合層と、
    該第2部材と該芯材を接合する第2接合層とを備え、
    該芯材は、内包部と該内包部の外周側を包囲する外周部とを有し、
    該内包部は、該外周部よりも熱伝導率が高い高熱伝導金属からなり、
    該外包部は、該内包部よりもヤング率および耐力が小さい軟質金属からなる接合構造体。
  11. 前記内包部は、前記第1部材の接合面上または前記第2部材の接合面上で最高温度となる発熱中心を含む領域に対面している請求項10に記載の接合構造体。
  12. 前記第1接合層および/または前記第2接合層は、金属間化合物層である請求項10または11に記載の接合構造体。
  13. 前記第1部材は半導体素子であり、
    前記第2部材は金属電極または基板である請求項10〜12のいずれかに記載の接合構造体。
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