JP2019035682A - ボルト緩み検査装置 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、上記のようなメンテナンス工程の効率の向上及び検査品質の向上を図るため、締結装置のボルトの緩みの有無を自動的に検査する検査装置について、幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、床下に検査装置を搭載した軌道確認車を用意し、軌道確認車をレールに沿って走行させながら、検査装置がボルトの緩みを検出する技術が示されている。この検査装置は、レーザスポット投光器とラインセンサとを有し、これらを用いてレールの踏面の高さとボルトの頂面の高さとを計測する。ボルトが緩んでいれば、レールに対するボルトの相対的な高さが上昇するため、検査装置は、計測結果を用いてボルトの相対的な高さを計算し、この値からボルトの緩みの有無を判定する。
しかしながら、車両に横揺れ、大きな縦揺れ又はサスペンションによる大きな沈み込み等の変位が生じると、これらの変位に起因して、ボルトの高さの計測値と、レールの高さの計測値とに、異なる大きさの誤差成分が付加されることがある。例えば、車両に横揺れが生じた場合、ボルトの頂面の高さの計測値には比較的に小さな誤差が付加され、レールの踏面の高さの計測値には比較的に大きな誤差が付加されることがある。このような場合、両者の差を計算しても、車両の誤差は打ち消されず、レールの高さを基準とするボルトの相対的な高さの計算値に比較的に大きな誤差が残ってしまう。
近年、営業車両の下部に計測装置を搭載し、列車の営業走行中に軌道の各部の計測を行って計測データを収集する線路設備モニタリング装置の導入が進められている。営業車両を利用することで、軌道の様々な計測データを容易にかつ大量に取得することができる。一方、営業車両を利用する場合、計測のために車両の揺れの特性に制限を付加することは難しく、計測中に車両の様々な変位が生じることが想定される。
レールと枕木とを締結する締結装置のボルトの緩みを検査するボルト緩み検査装置であって、
レール上を走行する車両に搭載された計測装置によって前記車両の走行中の計測で得られたレール及び複数の締結装置に関する計測データを取得する情報取得部と、
前記計測データから、前記複数の締結装置の複数のボルトの高さを表わすデータ値が前記締結装置の並び順で配列されたボルト高さデータ列、及び、レールにおける前記複数の締結装置の近傍の部位の高さを表わすデータ値が前記締結装置の並び順で配列されたレール高さデータ列を生成するデータ生成部と、
前記ボルト高さデータ列と前記レール高さデータ列とに基づいてレールに対する前記複数のボルトの各々の相対的な高さを表わすデータ値が前記複数の締結装置の並び順で配列されたボルト相対高さデータ列を計算し、第1ハンペルフィルタを用いて前記ボルト相対高さデータ列から突出した値を除去したフィルタ通過データ列を計算し、かつ、前記ボルト相対高さデータ列と前記フィルタ通過データ列との差を計算して抽出データ列を求める計算部と、
前記抽出データ列に基づいて前記複数のボルトの各々の緩みの有無を判定する第1判定部と、
を備えることを特徴とする。
この構成によれば、レールの計測部分に落ち葉又は石などが載っていることにより、レール高さデータ列のデータ値にノイズが含まれる場合でも、第2ハンペルフィルタによりこのノイズを除去できる。したがって、このようなノイズの影響が除去されたボルト相対高さデータ列を得ることができる。
図1は、本発明の実施形態に係るボルト緩み検査装置及び計測装置を示すシステム構成図である。
本発明の実施形態に係るボルト緩み検査装置1は、締結装置183のボルトBに緩みが生じていないか検査する装置である。ボルトBは、締結装置183においてレール181と枕木182とを締結するためのものであり、ボルトBが緩んでいる場合には、ボルトBを締め直す必要がある。ボルト緩み検査装置1は、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、表示部12、マウス又はキーボード等の操作部13、データ入力用のインタフェース14、及び記憶装置15を備える。
計測装置102は、営業車両(鉄道車両)100の下部に搭載され、営業車両100の営業運行の走行中に動作して、計測デバイス101により軌道の計測を行う。計測デバイス101は、特に制限されるものではないが、例えば3次元スキャナを備え、各レール181の左右からレール181及び締結装置183の表面各部の距離を計測し、計測データとして表面各部の三次元位置情報を得る。計測データは、計測箇所の情報及び計測日時の情報が対応付けられて計測装置102に蓄積され、ボルト緩み検査装置1に送られる。なお、計測データは、レール181及び締結装置183の表面各部の三次元位置情報に限られず、後述するレール181の高さ及びボルトBの高さを求めることができるデータであればよい。
続いて、ボルト緩み検査装置1のCPU10が実行するボルト緩み検査処理について説明する。図2は、CPUにより実行されるボルト緩み検査処理の手順を示すフローチャートである。
ボルト緩み検査処理は、ボルト緩み検査プログラム153に基づく処理であり、計測装置102から検査区間の軌道の計測データが取得されている状態で、オペレータからボルト緩み検査装置1へ指示操作することで開始される。
ボルト緩み検査処理が開始されると、先ず、CPU10は、計測データ格納部151に格納された計測データに基づいてレール裾高さデータ列rh(i)を生成する(ステップS11)。レール裾高さデータ列rh(i)は、本発明に係るレール高さデータ列の一例に相当する。
図3は、レール裾高さデータ列及びボルト高さデータ列に対応する計測位置を説明する図である。レール裾高さデータ列rh(i)は、例えばレール181の所定の計測位置prの高さの平均値を、複数の締結装置183の並び順で配列したものである。計測位置prは、例えばレール181の裾部における締結装置183の近傍部位、具体的には板バネが係合される部位の直前及び直後の二箇所に設定されている。計測位置prの高さは、計測装置102により得られた三次元位置情報から、CPU10が水平な基準面を求め、基準面から計測位置prの高さの平均値を計算することで求められる。
上記のステップS11及びステップS12の処理により、図4に示すようなレール裾高さデータ列rh(i)及びボルト高さデータ列bh(i)が生成される。図4の各グラフの横軸は検査区間の始端からの距離(レール181に沿った距離)を示し、縦軸は高さを示す。図4の各グラフ中、1プロットが1つの締結装置183に対応した1つのデータ値を表わす。
上記のステップS11及びステップS12を実行するCPU10が、本発明に係るデータ生成部の一例に相当する。
次に、CPU10は、レール裾高さデータ列rh(i)をハンペルフィルタβに通してフィルタ通過レール裾高さデータ列rhr(i)(図4も参照)を計算する(ステップS13)。ハンペルフィルタβは、本発明に係る第2ハンペルフィルタの一例に相当する。
ハンペルフィルタβは、「ウインドウ長」及び「偏差値」の2つのパラメータが指定されて特性が決定される。ハンペルフィルタβは、対象のデータ列のうち、連続する所定個のデータ値に注目し、注目したデータ値の中で所定の偏差値以上に離れているデータ値がないか演算処理を行う。そして、このようなデータ値が有れば、これを外れ値として残りのデータ値に近づけるように修正(除去)する。ハンペルフィルタβは、注目する所定個のデータ値を、データ列に沿ってずらしながら、このような演算処理をデータ列の全体に渡って行う。ここで、1回の演算処理で注目する連続的なデータ値の個数が、2つのパラメータの一方である「ウインドウ長」に相当し、外れ値を識別するための所定の偏差値が2つのパラメータの他方である「偏差値」に相当する。
このように設定されたハンペルフィルタβ及びステップS13の処理により、レール裾高さデータ列rh(i)の枯れ枝又は石等により突出したノイズn1(図4を参照)か除去されて、フィルタ通過レール裾高さデータ列rhr(i)から得られる。
図5は、ボルトの相対高さとボルトの緩みとの関係を説明する図を示す。図5に示されるように、レール181の計測位置prとボルトBの計測位置pbとの高低差L1は、正常であれば締結装置183の設計値に応じた値となるが、ボルトBが緩んでいれば設計値からずれた値となる。
そこで、CPU10は、次に、フィルタ通過レール裾高さデータ列rhr(i)とボルト高さデータ列bh(i)との差を計算し、レール181と各ボルトBとの相対的な高低差L1を表わすボルト相対高さデータ列dif(i)(図4を参照)を生成する(ステップS14)。この計算により、理想的には、両データ列に含まれる営業車両100の揺れ等による誤差成分が相殺される。しかしながら、営業車両100に横揺れ、大きな縦揺れ又は大きな沈み込み等の変位が生じていると、営業車両100の変位に起因する誤差成分は、レール裾高さデータ列rhr(i)とボルト相対高さデータ列dif(i)とに異なる大きさで付加される。このため、図4に示すように、ボルト相対高さデータ列dif(i)には、営業車両100の変位による誤差成分が完全に相殺されず、この誤差成分の一部が残される。例えば、ボルト相対高さデータ列dif(i)の一部には、営業車両100の横揺れにより値が高くなる傾向を示すデータ群g1と、値が低くなる傾向を示すデータ群g2等が含まれる。
図6は、図2のステップS16で計算される抽出データ列を説明する図である。
続いて、CPU10は、ボルト相対高さデータ列dif(i)をハンペルフィルタαに通し、突出したデータ値が除去されたフィルタ通過データ列dif_r(i)を計算する(ステップS15)。ハンペルフィルタαは、本発明に係る第1ハンペルフィルタの一例に相当する。
先に説明したように、ボルト相対高さデータ列dif(i)には、営業車両100の変位による誤差成分を主に含んだデータ群g1、g2、及び、各ボルトBの高さのバラツキ成分が加わったデータ群gn1、gn2などが含まれる。
また、同種の締結装置183であれば、近い範囲に設置された複数の締結装置183の間で各ボルトBの高さは個体差により大きく変わらない。したがって、個体差によるバラツキ成分が主に含まれるデータ群gn1は、ハンペルフィルタαにより変化を受けにくい。
一方、種類の異なる締結装置183が疎らに設置されている場合には、この締結装置183の前後の範囲でボルトBの高さのデータ値が突出した値となる。また、緩みの進んだボルトが疎らに存在する場合、このボルトBの前後の範囲でボルトBの高さのデータ値が突出した値となる。したがって、これらのバラツキ成分が含まれるデータ群gn2は、ハンペルフィルタαにより除去されやすい。
ハンペルフィルタαは、このようなデータ値の削除と通過とが行われるようにパラメータが設定される。詳細は後述するが、例えば、ハンペルフィルタαは、ウインドウ長が「21」、外れ値を識別する偏差値が「3σ」に設定される。
ステップS15、S16の計算により、上記のようにデータ群gn2が抽出された抽出データ列ex(i)を得ることができる。上述したステップS13〜ステップS16を実行するCPU10が、本発明に係る計算部の一例に相当する。
続いて、CPU10は、抽出データ列ex(i)の各データ値と、緩みの有無を判別する第1閾値hth1とを比較して、第1閾値hth1を超えたデータ値を緩み有りと仮判定する(ステップS17)。仮判定であるのは、抽出データ列ex(i)に抽出された突出したデータ値の中には、締結装置183の種類の違いに起因して周囲から値が突出したデータ値も含まれているためである。以下、ステップS17の仮判定を、「仮判定1」と記す。ステップS17を実行するCPU10が、本発明に係る第1判定部の一例に相当する。
同図に示すように、CPU10は、締結装置183が通常のA種である場合、仮判定1の結果を最終判定結果として選択する。また、CPU10は、締結装置183の高さがA種のものより高いB種である場合、仮判定1の結果と仮判定2の結果とが共に緩み有りである場合に、緩み有りと最終判定し、それ以外は緩み無しと最終判定する。なお、この最終判定のロジックは一例に過ぎず、締結装置183の種類の数、複数の種類間におけるボルトBの高さの差異に応じて、そのロジックは適宜変更されてもよい。
以上のボルト緩み検査処理によれば、ボルト緩み検査装置1により、検査区間の複数の締結装置のうち緩んだボルトBを良好に検出することができる。
次に、図2のステップS15において、ボルト相対高さデータ列dif(i)から突出した値を除去するハンペルフィルタαのパラメータについて説明する。
上述したように、ボルト相対高さデータ列dif(i)には、誤差成分又はバラツキ成分を有するデータ群g1、g2、gn1、gn2が含まれる(図4を参照)。これらのうち、データ群g1、g2は、営業車両100の変位による誤差成分を主に含むデータ群であり、データ群gn1は同種の締結装置183の個体差によるバラツキ成分を主に含むデータ群である。また、データ群gn2はボルトBの緩み又は締結装置183の種類によるバラツキ成分を主に含むデータ群である。
ここでは、標準的な検査区間における4セットの計測データを対象に、ハンペルフィルタαの第1パラメータ「偏差値」を0σ、1σ、2σ、3σと変えて、それぞれボルト緩み検査処理を行い、そこで得られた判定結果のTPRとFPRとを示している。
10 CPU
12 表示部
13 操作部
14 インタフェース
15 記憶装置
100 営業車両
101 計測デバイス
102 計測装置
151 計測データ格納部
152 締結装置管理データ格納部
153 ボルト緩み検査プログラム
181 レール
182 枕木
183 締結装置
B ボルト
g1、g2、gn1、gn2 データ群
pb、pr 計測位置
Claims (5)
- レールと枕木とを締結する締結装置のボルトの緩みを検査するボルト緩み検査装置であって、
レール上を走行する車両に搭載された計測装置によって前記車両の走行中の計測で得られたレール及び複数の締結装置に関する計測データを取得する情報取得部と、
前記計測データから、前記複数の締結装置の複数のボルトの高さを表わすデータ値が前記締結装置の並び順で配列されたボルト高さデータ列、及び、レールにおける前記複数の締結装置の近傍の部位の高さを表わすデータ値が前記締結装置の並び順で配列されたレール高さデータ列を生成するデータ生成部と、
前記ボルト高さデータ列と前記レール高さデータ列とに基づいてレールに対する前記複数のボルトの各々の相対的な高さを表わすデータ値が前記複数の締結装置の並び順で配列されたボルト相対高さデータ列を計算し、第1ハンペルフィルタを用いて前記ボルト相対高さデータ列から突出した値を除去したフィルタ通過データ列を計算し、かつ、前記ボルト相対高さデータ列と前記フィルタ通過データ列との差を計算して抽出データ列を求める計算部と、
前記抽出データ列に基づいて前記複数のボルトの各々の緩みの有無を判定する第1判定部と、
を備えることを特徴とするボルト緩み検査装置。 - 前記計算部は、第2ハンペルフィルタを用いてノイズを除去した前記レール高さデータ列と、前記ボルト高さデータ列との差を計算して、前記ボルト相対高さデータ列を求めることを特徴とする請求項1記載のボルト緩み検査装置。
- 前記第1ハンペルフィルタのウインドウ長は、前記第2ハンペルフィルタのウインドウ長より大きく、前記第1ハンペルフィルタで外れ値を識別する偏差値は、前記第2ハンペルフィルタで外れ値を識別する偏差値よりも高いことを特徴とする請求項2記載のボルト緩み検査装置。
- 前記ボルト相対高さデータ列に基づいて前記複数のボルトの各々の緩みの有無を判定する第2判定部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のボルト緩み検査装置。
- 前記第1ハンペルフィルタのウインドウ長は21±20%に設定され、前記第1ハンペルフィルタの外れ値の閾値は3σ±20%に設定されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のボルト緩み検査装置。
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