JP2019033680A - 吸引システム、吸引方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る吸引システムの一例を示す図である。本実施形態に係る吸引システム1は、主に細胞もしくは細胞内物質の吸引作業の支援に用いられる細胞吸引システムである。
吸引システム1は、試料保持器102、吸引部103、吸引チップ104、搬送部105、信号処理部107、検出部A及びカメラ120を備える。
吸引部103(ディスペンサ)は、吸引チップ104を装着し、吸引チップ104の先端部104Tに接触した試料102aを吸引する。吸引部103は、信号処理部107の制御により吸引チップ104の内部の圧力を調節して試料102aを吸引又は吐出する。試料102aを吸引する際、吸引部103は、吸引チップ104の内部の圧力を外気圧よりも低くなるように減圧する。他方、吸引した試料102aを吐出する際、吸引部103は、吸引チップ104の内部の圧力を外気圧よりも高くなるように加圧する。また、吸引部103は、吸引チップ104を装着した状態で、X、Y、Zの各方向に移動可能とする。図1では、X、Y、Zの各方向は、それぞれ図面に対して右方、奥、下方に示されている。X、Y、Z方向は、3次元空間において互いに直交する方向である。X、Y方向は、それぞれ水平面に平行な方向であり、互いに直交する。Z方向は、水平面に垂直な鉛直方向である。
搬送部105は、信号処理部107の制御により吸引部103をX、Y、Zの各方向に移動させる。吸引部103に付随して、吸引チップ104が移動する。搬送部105は、動力源として、例えば、ステップモータを有する。
この配置によって、信号処理部βからの入射光と出射光が、それぞれ結像レンズ101bを通して、対物レンズ101aと結像レンズ101bとを結ぶ光路を通じて入射、出射される。入射光は、さらに試料保持器102を透過して吸引チップ104の先端部104Tに到達し、先端部104Tからの出射光が試料保持器102を透過して光入出力部αに到達する。よって、信号処理部βから吸引チップ104の先端部104Tならびにその周囲の像(画像情報)をなす出射光が得られる。
光源101cは、先端部104Tを照明する。光源101cは、顕微鏡101に設けられることで先端部104Tの照明として機能するとともに、試料102aの明視野像を取得する際の光源としても機能する。この配置により、先端部104Tからの反射光量が増加するため、先端部104T周囲の画像の視認性を向上することができる。ここで、光源101cは、吸引チップ104の側面周囲に沿って吸引チップ104を取り囲む配置が好適である。また、光源101cとして、複数のLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)をリング状に配列したLEDアレイが用いられてもよい。よって、吸引チップ104の先端部104Tに対物レンズ101aの焦点が一致した際に得られる反射光のリング・パターンが明瞭になる。
(A1)信号処理部107は、搬送部105に対して、吸引部103をZ方向に移動させながら、カメラ120から先端部104Tとその周囲の像を示す画像情報を取得する。一般に、対物レンズ101aの焦点に近い物体ほど、その物体の像のコントラストが高くなる。そのため、取得される先端部104Tの像のコントラストは、Z方向の座標により異なる。
(A2)信号処理部107は、取得した画像情報のコントラストを解析し、コントラストが最も高くなるZ方向の座標を特定する。特定した座標は、対物レンズ101aの位置に相当する。これにより、信号処理部107は、先端部104Tを検出することができる。信号処理部107は、この時点におけるX、Y各座標と特定したZ座標とで表される位置を基準位置として定める。
次に、本実施形態に係る吸引方法の例について説明する。図3は、本実施形態に係る吸引方法を説明するための説明図である。縦軸、横軸は、それぞれZ座標、時刻tを示す。図3に示す例では、右方ほど後の時点における吸引チップ104の先端部104Tの状態を示す。
時刻taにおいて、先端部104Tは、試料102aの上方に位置する。信号処理部107は、搬送部105に対して吸引部103のZ方向への移動を開始させる。
時刻tbにおいて、先端部104Tは、試料102aの表面に接する。このとき、信号処理部107は、搬送部105に対して吸引部103の移動を停止し、吸引部103にその内部の圧力を外気圧よりも減圧させる。この段階では、試料102aは先端部104Tに吸着するが、吸引チップ104の内部に進入しないことがある。その後、信号処理部107は、搬送部105に対して吸引部103を逆Z方向に所定距離Z1移動させる。
時刻tdにおいて、先端部104Tの高さは、時刻tcにおける高さよりも距離Z2だけ低くなる。この高さは、往復運動における最低点に相当する。
吸引チップ104の内面に試料102aが接することで毛細管現象が生じるが、往復運動におけるZ方向への移動により、試料102aには逆Z方向への慣性力が加わる。そのため、試料102aは、先端部104Tから吸引チップ104の内部に進入する。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態との差異点を主とし、その他の点については、特に断らない限り第1実施形態の説明を援用する。
本実施形態では、吸引チップ104の先端部104Tが試料102aに接触し、試料102aを吸引する前の段階(例えば、時刻tb(図3))において、信号処理部107は、搬送部105に対して吸引部103のZ方向への往復運動を実行させてもよい。
但し、この段階における往復運動では、試料保持器102上における試料102aの厚みよりも振幅Z3を小さくする。これにより、往復運動による先端部104Tの試料保持器102の表面への接触や、試料102aとしての細胞の意図しない破壊を防止する。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態との差異点を主とし、その他の点については、特に断らない限り第1実施形態の説明を援用する。
本実施形態では、吸引チップ104の先端部104Tが試料102aに接触し、試料102aを吸引する前の段階(例えば、時刻tb(図3))において、信号処理部107は、搬送部105に対して吸引部103のX−Y平面内の方向への往復運動を実行させてもよい。X−Y平面は、Z方向を法線方向とする平面である。
運動方向は、Z方向とは直交するX−Y平面内の方向であるため、Z方向への往復運動による先端部104Tの試料保持器102の表面への接触や、試料102aとしての細胞の意図しない破壊のリスクを少なくすることができる。また、第1の変形例よりも往復運動の振幅を大きくすることが許容される。そのため、第1の変形例よりも強固もしくは弾性が高い細胞膜を有する細胞の内容物を吸引することができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態との差異点を主とし、その他の点については、特に断らない限り第1実施形態の説明を援用する。
本実施形態では、搬送部105は、動力源として圧電素子(ピエゾ素子)を備える。圧電素子には、そのX、Y、Z方向の両端にそれぞれ電極を設置する。吸引部103は、圧電素子を支持部材として圧電素子上に支持されるように載置される。圧電素子は、圧電効果により電圧の印加方向に対応する方向に変形する。また、印加される電圧が高いほど圧電素子の変形量が大きくなる。互いに対向する電極に交流電圧を印加すると、その電圧値に応じた変位で電極が対向する方向に対応する方向(例えば、Z方向)に吸引部103を移動させることができる。
なお、圧電素子のサイズは、一般にモータよりも小型である。そこで、吸引チップ104が圧電素子上に支持されるように配置されてもよい。その場合、搬送部105をなす圧電素子は、必ずしも吸引部103全体を支持し、その全体を駆動する必要はない。その場合、圧電素子上に支持される部材(例えば、吸引チップ104)が軽量になるため、移動に要する電力を少なくすることができる。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態との差異点を主とし、その他の点については、特に断らない限り第1実施形態の説明を援用する。
本実施形態では、信号処理部107は、試料102aを吸引する際、Z方向の往復運動に代え、吸引部103に対して吸引チップ104内の圧力を周期的に変動させてもよい。但し、信号処理部107は、この変動において、吸引チップ104内の圧力の最大値を外気圧以下とする。吸引チップ104内の圧力は、吸引期間全体として外気圧よりも低くなるが、外気圧との圧力差が変動する。そのため、吸引チップ104の先端部104Tに接触している試料102aの吸引チップ104に作用する加速度が時間経過により変動し、逆Z方向への躍度が生ずる。そのため、吸引チップ104を機械的に動作させなくても、試料102aの吸引チップ104の内部への進入を促すことができる。
次に、本発明の第6実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態との差異点を主とし、その他の点については、特に断らない限り第1実施形態の説明を援用する。
本実施形態では、吸引チップ104の先端部104Tは、二重に構成される。図4は、本実施形態に係る吸引チップ104の断面図である。この断面は、吸引チップ104の長手方向に対して垂直である。吸引チップ104は、内管104aと外管104bを備える。内管104aは、外管104bの内部に形成された中空部に挿入される。外管104bの中空部の内径は、内管104aの直径とほぼ等しい。内管104aが挿入された状態では、内管104aの断面をなす円と外管104bの断面をなす円は、互いに同心円である。
内管104aの長さと外管104bの長さは、ほぼ等しい。外管104bは、その長手方向に内管104aに対して摺動可能に設置されている。内管104aは、上述の実施形態と同様に、主に試料102aの吸引に用いられる。これに対し、外管104bは、主に試料102aに機械的に刺激を与えるために用いられる。
吸引チップ104は、その周縁に第2駆動部104cと支持部104dを備える。第2駆動部104cは、圧電素子から構成され、圧電素子のZ方向の両端に電極(図示せず)が配設される。第2駆動部104cの表面、裏面は、それぞれ外管104bの基端部、支持部104dの表面に接する。ここで、表面、裏面とは、Z方向を法線方向とする面のうち先端部104Tに近い方の面、先端部104Tから遠い方の面を指す。
支持部104dは、吸引チップ104の周縁に設置され、その表面が第2駆動部104cの裏面に接し、その位置を固定する。
このような構成により、信号処理部107は、第2駆動部104cの電極間に印加した電圧の電圧値に応じて外管104bのZ方向への変位を制御することができる。
本実施形態では、吸引チップ104の先端部104Tが試料102aに接触し、試料102aを吸引する前の段階(例えば、時刻te(図5))において、信号処理部107は、第2駆動部104cに対して外管104bのZ方向への往復運動を開始させてもよい。往復運動を行うために、信号処理部107は、第2駆動部104cの圧電素子に交流電圧を印加する。本実施形態でも、第2実施形態と同様に試料保持器102上における試料102aの厚みよりも往復運動の振幅Z4を小さくする。往復運動の回数は、予め信号処理部107に設定しておく。
時刻tfにおいて、外管104bの高さが最も高い。この状態では、外管104bの先端は、内管104aの先端よりも高く、試料102aに接していない。
時刻tgにおいて、外管104bの高さが最も低い。この状態では、外管104bの先端は、内管104aの先端よりも低く、試料102aに接している。他方、内管104aの高さは、往復運動中において変化しない。
また、試料102aが内管104aの直径と同等もしくはより小さい径を有する細胞である場合には、その細胞に対する機械的な刺激が緩和され、周囲の細胞の細胞膜が機械的な刺激を受け脆くなる。そのため、単一の細胞が周囲の細胞から容易に分離されるので、その単一の細胞の吸引が容易となる。同時に、吸引された細胞に対する損傷を抑えることができる。
この構成により、吸引チップ104における毛細管現象と移動による慣性力とが、吸引チップ104の先端に接触した試料に作用する。そのため、試料が吸引チップ104の内部に容易に吸引される。
この構成により、吸引チップ104の先端に接触している試料の細胞膜が脆くなる。そのため、脆くなった細胞膜からの細胞の内容物の吸引を容易に行うことができる。
この構成により、往復運動により吸引チップ104の先端と試料を保持する試料保持器102との距離が維持される。そのため、試料の毀損、吸引チップ104の試料保持器102への接触を避けることができる。
この構成により、信号処理部107が圧電素子に印加した電圧の電圧値に応じた変位に吸引チップ104を移動させることができる。電圧値に基づいて高速かつ微細に吸引チップ104の動作を制御できるので、細胞の吸引をさらに容易に行うことができる。
この構成により、吸引チップ104を機械的に移動させなくても吸引チップ104の先端に接触した試料に対して外気圧が吸引チップ104の内部に作用し、その作用の度合いが時間的に変動する。そのため、機械的に吸引チップ104を動作させなくても細胞の吸引を容易に行うことができる。
この構成により、試料の内管104aの先端に接触している中心部分における機械的刺激を抑えつつ、外管104bの先端に接触している周辺部分において機械的刺激が間欠的に加わる。そのため、中心部分を毀損せずに周辺部分を脆くすることができるので、中心部分の細胞もしくはその内容物の吸引を容易に行い、かつ、その毀損による変質を避けることができる。
また、信号処理部107は、専用の制御装置として実現されてもよいし、パーソナルコンピュータ、ワークステーションなどのコンピュータで実現されてもよい。信号処理部107をコンピュータで実現する場合、それぞれの制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPU等の演算処理回路により実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、各装置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、各装置の一部、又は全部は、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現されてもよい。各装置の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
Claims (8)
- 管状の吸引チップを装着し、前記吸引チップの先端から試料を吸引する吸引部と、
前記試料の吸引を開始した後、前記吸引チップを当該吸引チップの長手方向に前記先端に向けて少なくとも1回移動させる信号処理部と、
を備える吸引システム。 - 前記信号処理部は、前記先端が前記試料に接触しているとき、前記吸引チップを往復運動させる
請求項1に記載の吸引システム。 - 前記往復運動の方向は前記吸引チップの長手方向に直交する方向である
請求項2に記載の吸引システム。 - 前記吸引チップを支持する圧電素子を有する搬送部を備え、
前記信号処理部は、前記圧電素子に電圧を印加する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸引システム。 - 前記信号処理部は、前記先端に前記試料が接触しているとき、前記吸引部に前記吸引チップ内の圧力を大気圧よりも低く、かつ、時間経過に応じて変動させる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸引システム。 - 前記吸引チップは、内管と、外管とを備え、
前記内管は、前記外管の中空部に挿入され、
前記信号処理部は、前記内管の先端に前記試料が接触しているとき、前記吸引チップの長手方向に前記外管を往復運動させる
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の吸引システム。 - 管状の吸引チップを装着し、前記吸引チップの先端から試料を吸引する吸引部を備える吸引システムにおける吸引方法であって、
信号処理部が、前記試料の吸引を開始した後、前記吸引チップを長手方向に前記先端に向けて少なくとも1回移動させる移動制御過程
を有する吸引方法。 - 管状の吸引チップを装着し、前記吸引チップの先端から試料を吸引する吸引部を備える吸引システムにおける信号処理部のコンピュータに、
前記試料の吸引を開始した後、前記吸引チップを長手方向に前記先端に向けて少なくとも1回移動させる移動制御手順
を実行させるためのプログラム。
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