以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本発明はこの実施形態により限定されるものではない。
まず、図1を参照して、実施形態に係るデュアルクラッチ式変速機1の全体構成について説明する。図1における左側がデュアルクラッチ式変速機1の前側であり、図1における右側がデュアルクラッチ式変速機1の後側である。
デュアルクラッチ式変速機1は、第1クラッチ10と、第2クラッチ20と、変速部30とを備えている。そして、変速部30の出力側に、不図示のプロペラシャフト、デファレンシャルおよびドライブシャフトを介して、駆動輪が動力伝達可能に連結されている。
第1クラッチ10は、例えば、複数の入力側クラッチ板11および複数の出力側クラッチ板12を有する油圧作動式の湿式多板クラッチである。入力側クラッチ板11は、エンジン(不図示)の出力軸2と一体回転する。出力側クラッチ板12は、変速部30の第1入力軸31と一体回転する。
第1クラッチ10は、リターンスプリング(不図示)によって断方向に付勢されており、ピストン(不図示)の作動油室に制御油圧が供給されることでピストンが移動して、入力側クラッチ板11および出力側クラッチ板12を圧接することで接とされる。第1クラッチ10が接とされることで、エンジンの動力が第1入力軸31に伝達される。第1クラッチ10の断接は、制御装置40によって制御される。
第2クラッチ20は、第1クラッチ10の外周側に設けられている。なお、本実施形態では、第2クラッチ20が第1クラッチ10の外周側に設けられているものを例に挙げて説明を行うが、第1クラッチ10および第2クラッチ20の配置関係はこれに限定されない。例えば、第2クラッチ20を、第1クラッチ10の前側または後側に配置するようにしてもよい。
第2クラッチ20は、例えば、複数の入力側クラッチ板21および複数の出力側クラッチ板22を有する油圧作動式の湿式多板クラッチである。入力側クラッチ板21は、エンジンの出力軸2と一体回転する。出力側クラッチ板22は、変速部30の第2入力軸32と一体回転する。
第2クラッチ20は、リターンスプリング(不図示)によって断方向に付勢されており、ピストン(不図示)の作動油室に制御油圧が供給されることでピストンが移動して、入力側クラッチ板21および出力側クラッチ板22を圧接することで接とされる。第2クラッチ20が接とされることで、エンジンの動力が第2入力軸32に伝達される。第2クラッチ20の断接は、制御装置40によって制御される。
変速部30は、第1クラッチ10の出力側に接続された第1入力軸31と、第2クラッチ20の出力側に接続された第2入力軸32とを備えている。また、変速部30は、第1入力軸31および第2入力軸32と平行に配置された第1カウンタ軸33および第2カウンタ軸34を備えている。さらに、変速部30は、第1入力軸31および第2入力軸32と同軸上に配置された出力軸35を備えている。
第1入力軸31は、軸受(不図示)を介して第2入力軸32に回転可能に軸支されている。第1入力軸31の前後方向の中間部には、後進ギヤとして機能する第2入力ギヤ52aが固定されている。
第1入力軸31における第2入力ギヤ52aの後段には、第1シンクロ機構61(後述する)の第1シンクロハブ61aが固定されている。
第2入力ギヤ52aと第1シンクロハブ61aとの間には、第3入力ギヤ53aが、第1入力軸31と相対回転可能に設けられている。
第1シンクロハブ61aの後段には、第4入力ギヤ54a(本発明の「遊転ギヤ」に相当)が、第1入力軸31と相対回転可能に設けられている。
第2入力軸32は、第1入力軸31が挿通される中空軸であって、軸受(不図示)を介して変速機ケース(不図示)に回転可能に軸支されている。第2入力軸32の後端部には、第1入力ギヤ51aが固定されている。第1入力ギヤ51aは、第2入力ギヤ52aより前側に配置される。
第1カウンタ軸33は、軸受(不図示)を介して変速機ケース(不図示)に回転可能に軸支されている。第1カウンタ軸33には、前側から順に、第1カウンタギヤ51b、第3シンクロ機構63(後述する)の第3シンクロハブ63a、第6カウンタギヤ56bおよび第7カウンタギヤ57bが固定されている。
第1カウンタギヤ51bは、第1入力ギヤ51aと常時噛合している。第1入力ギヤ51aと第1カウンタギヤ51bとにより、第1ギヤ列51が構成される。
第1カウンタギヤ51bと第3シンクロ機構63との間には、第2カウンタギヤ52bが、第1カウンタ軸33に対して相対回転可能に設けられている。第2カウンタギヤ52bは、リバースアイドラギヤ52cを介して、第2入力ギヤ52aと常時噛合している。第2入力ギヤ52aとリバースアイドラギヤ52cと第2カウンタギヤ52bとにより、後進ギヤ列52が構成される。
第3シンクロ機構63と第6カウンタギヤ56bとの間には、第2カウンタ軸34が配置されている。第2カウンタ軸34は、第1カウンタ軸33が挿通される中空軸であって、軸受(不図示)を介して第1カウンタ軸33に相対回転可能に軸支されている。第2カウンタ軸34の前寄りには、第3カウンタギヤ53bが固定されている。第3カウンタギヤ53bは、第3入力ギヤ53aと常時噛合している。第3入力ギヤ53aと第3カウンタギヤ53bとにより、第2ギヤ列53が構成される。
第2カウンタ軸34における第3カウンタギヤ53bの後段には、第4カウンタギヤ54b(本発明の「第1カウンタギヤ」に相当)が固定されている。第4カウンタギヤ54bは、第4入力ギヤ54aと常時噛合している。第4入力ギヤ54aと第4カウンタギヤ54bとにより、第3ギヤ列54が構成される。第2カウンタ軸34の後端部には、第5カウンタギヤ55b(本発明の「第2カウンタギヤ」に相当)が固定されている。
出力軸35は、軸受(不図示)を介して変速機ケース(不図示)に回転可能に軸支されている。出力軸35の前端部には、第2シンクロ機構62(後述する)の第2シンクロハブ62aが固定されている。出力軸35における第2シンクロハブ62aの後段には、第4シンクロ機構64(後述する)の第4シンクロハブ64aが固定されている。
第2シンクロハブ62aと第4シンクロハブ64aとの間には、第1出力ギヤ55a(本発明の「出力ギヤ」に相当)が、出力軸35に対して相対回転可能に設けられている。第1出力ギヤ55aは、第5カウンタギヤ55bと常時噛合している。第1出力ギヤ55aと第5カウンタギヤ55bとにより、第4ギヤ列55が構成される。
第1出力ギヤ55aと第4シンクロハブ64aとの間には、第2出力ギヤ56aが、出力軸35に対して相対回転可能に設けられている。第2出力ギヤ56aは、第6カウンタギヤ56bと常時噛合している。第2出力ギヤ56aと第6カウンタギヤ56bとにより、第5ギヤ列56が構成される。
第4シンクロハブ64aの後段には、第3出力ギヤ57aが、出力軸35に対して相対回転可能に設けられている。第3出力ギヤ57aは、第7カウンタギヤ57bと常時噛合している。第3出力ギヤ57aおよび第7カウンタギヤ57bにより、第6ギヤ列57(本発明の「第5ギヤ列」に相当)が構成される。
変速部30は、第1シンクロ機構61と、第2シンクロ機構62と、第3シンクロ機構63と、第4シンクロ機構64とを備えている。
第1シンクロ機構61は、第1シンクロハブ61aと、第1シンクロスリーブ61bと、第1ドグギヤ61cと、第2ドグギヤ61dとを備えている。第1シンクロハブ61aは、上述のとおり、第1入力軸31に固定されている。
第1シンクロスリーブ61bは、第1シンクロハブ61aを取り囲むように設けられている。第1シンクロスリーブ61bは、第1シンクロハブ61aのスプライン外歯と係合するスプライン内歯を有する。第1シンクロスリーブ61bは、第1シンクロハブ61aと一体回転し、かつ第1シンクロハブ61aに対して前後方向に移動可能である。
第1ドグギヤ61cは、第3入力ギヤ53aの後側に設けられている。第2ドグギヤ61dは、第4入力ギヤ54aの前側に設けられている。第1シンクロハブ61aと第1ドグギヤ61cおよび第2ドグギヤ61dとの間には、それぞれシンクロナイザリング(不図示)が設けられている。第1シンクロスリーブ61bのスプライン内歯は、第1ドグギヤ61cおよび第2ドグギヤ61dのスプライン外歯と選択的に係合可能である。
第1シンクロ機構61は、シフトフォーク(不図示)によって第1シンクロスリーブ61bが移動させられて第1ドグギヤ61cまたは第2ドグギヤ61dと係合することで、第1入力軸31と第3入力ギヤ53aまたは第4入力ギヤ54aとを選択的に同期結合させる。第1シンクロスリーブ61bの動作は、制御装置40によって制御される。
第2シンクロ機構62は、第2シンクロハブ62aと、第2シンクロスリーブ62bと、第3ドグギヤ62cと、第4ドグギヤ62dとを備えている。第2シンクロハブ62aは、上述のとおり、出力軸35に固定されている。
第2シンクロスリーブ62bは、第2シンクロハブ62aを取り囲むように設けられている。第2シンクロスリーブ62bは、第2シンクロハブ62aのスプライン外歯と係合するスプライン内歯を有する。第2シンクロスリーブ62bは、第2シンクロハブ62aと一体回転し、かつ第2シンクロハブ62aに対して前後方向に移動可能である。
第3ドグギヤ62cは、第4入力ギヤ54aの後側に設けられている。第4ドグギヤ62dは、第1出力ギヤ55aの前側に設けられている。第2シンクロハブ62aと第3ドグギヤ62cおよび第4ドグギヤ62dとの間には、それぞれシンクロナイザリング(不図示)が設けられている。第2シンクロスリーブ62bのスプライン内歯は、第3ドグギヤ62cおよび第4ドグギヤ62dのスプライン外歯と選択的に係合可能である。
第2シンクロ機構62は、シフトフォーク(不図示)によって第2シンクロスリーブ62bが移動させられて第3ドグギヤ62cまたは第4ドグギヤ62dと係合することで、出力軸35と第4入力ギヤ54aまたは第1出力ギヤ55aとを選択的に同期結合させる。第2シンクロスリーブ62bの動作は、制御装置40によって制御される。
第3シンクロ機構63は、第3シンクロハブ63aと、第3シンクロスリーブ63bと、第5ドグギヤ63cと、第6ドグギヤ63dとを備えている。第3シンクロハブ63aは、上述のとおり、第1カウンタ軸33に固定されている。
第3シンクロスリーブ63bは、第3シンクロハブ63aを取り囲むように設けられている。第3シンクロスリーブ63bは、第3シンクロハブ63aのスプライン外歯と係合するスプライン内歯を有する。第3シンクロスリーブ63bは、第3シンクロハブ63aと一体回転し、かつ第3シンクロハブ63aに対して前後方向に移動可能である。
第5ドグギヤ63cは、第2カウンタギヤ52bの後側に設けられている。第6ドグギヤ63dは、第2カウンタ軸34の前端部に設けられている。第3シンクロハブ63aと第5ドグギヤ63cおよび第6ドグギヤ63dとの間には、それぞれシンクロナイザリング(不図示)が設けられている。第3シンクロスリーブ63bのスプライン内歯は、第5ドグギヤ63cおよび第6ドグギヤ63dのスプライン外歯と選択的に係合可能である。
第3シンクロ機構63は、シフトフォーク(不図示)によって第3シンクロスリーブ63bが移動させられて第5ドグギヤ63cまたは第6ドグギヤ63dと係合することで、第1カウンタ軸33と第2カウンタギヤ52bまたは第2カウンタ軸34とを選択的に同期結合させる。第3シンクロスリーブ63bの動作は、制御装置40によって制御される。
第4シンクロ機構64は、第4シンクロハブ64aと、第4シンクロスリーブ64bと、第7ドグギヤ64cと、第8ドグギヤ64dとを備えている。第4シンクロハブ64aは、上述のとおり、出力軸35に固定されている。
第4シンクロスリーブ64bは、第4シンクロハブ64aを取り囲むように設けられている。第4シンクロスリーブ64bは、第4シンクロハブ64aのスプライン外歯と係合するスプライン内歯を有する。第4シンクロスリーブ64bは、第4シンクロハブ64aと一体回転し、かつ第4シンクロハブ64aに対して前後方向に移動可能である。
第7ドグギヤ64cは、第2出力ギヤ56aの後側に設けられている。第8ドグギヤ64dは、第3出力ギヤ57aの前側に設けられている。第4シンクロハブ64aと第7ドグギヤ64cおよび第8ドグギヤ64dとの間には、それぞれシンクロナイザリング(不図示)が設けられている。第4シンクロスリーブ64bのスプライン内歯は、第7ドグギヤ64cおよび第8ドグギヤ64dのスプライン外歯と選択的に係合可能である。
第4シンクロ機構64は、シフトフォーク(不図示)によって第4シンクロスリーブ64bが移動させられて第7ドグギヤ64cまたは第8ドグギヤ64dと係合することで、出力軸35と第2出力ギヤ56aまたは第3出力ギヤ57aとを選択的に同期結合させる。第4シンクロスリーブ64bの動作は、制御装置40によって制御される。
次に、本実施形態のデュアルクラッチ式変速機1による各変速段の動力伝達経路について説明する。
1速段では、第1クラッチ10が接とされ、第1シンクロ機構61によって第1入力軸31と第4入力ギヤ54aとが結合され、第3シンクロ機構63によって第2カウンタ軸34と第1カウンタ軸33とが結合され、第4シンクロ機構64によって第2出力ギヤ56aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第1クラッチ10→第1入力軸31→第1シンクロ機構61→第3ギヤ列54→第2カウンタ軸34→第3シンクロ機構63→第1カウンタ軸33→第5ギヤ列56→第4シンクロ機構64→出力軸35と伝達されることで、1速段の動力伝達経路が確立される。
2速段では、第2クラッチ20が接とされ、第4シンクロ機構64によって第2出力ギヤ56aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第2クラッチ20→第2入力軸32→第1ギヤ列51→第1カウンタ軸33→第5ギヤ列56→第4シンクロ機構64→出力軸35と伝達されることで、2速段の動力伝達経路が確立される。
3速段では、第1クラッチ10が接とされ、第1シンクロ機構61によって第1入力軸31と第4入力ギヤ54aとが結合され、第2シンクロ機構62によって第1出力ギヤ55aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第1クラッチ10→第1入力軸31→第1シンクロ機構61→第3ギヤ列54→第2カウンタ軸34→第4ギヤ列55→第2シンクロ機構62→出力軸35と伝達されることで、3速段の動力伝達経路が確立される。
4速段では、第2クラッチ20が接とされ、第2シンクロ機構62によって第1出力ギヤ55aと出力軸35とが結合され、第3シンクロ機構63によって第1カウンタ軸33と第2カウンタ軸34とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第2クラッチ20→第2入力軸32→第1ギヤ列51→第1カウンタ軸33→第3シンクロ機構63→第2カウンタ軸34→第4ギヤ列55→第2シンクロ機構62→出力軸35と伝達されることで、4速段の動力伝達経路が確立される。
5速段では、第1クラッチ10が接とされ、第1シンクロ機構61によって第1入力軸31と第3入力ギヤ53aとが結合され、第2シンクロ機構62によって第1出力ギヤ55aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第1クラッチ10→第1入力軸31→第1シンクロ機構61→第2ギヤ列53→第2カウンタ軸34→第4ギヤ列55→第2シンクロ機構62→出力軸35と伝達されることで、5速段の動力伝達経路が確立される。
6速段では、第2クラッチ20が接とされ、第4シンクロ機構64によって第3出力ギヤ57aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第2クラッチ20→第2入力軸32→第1ギヤ列51→第1カウンタ軸33→第6ギヤ列57→第4シンクロ機構64→出力軸35と伝達されることで、6速段の動力伝達経路が確立される。
7速段では、第1クラッチ10が接とされ、第1シンクロ機構61によって第1入力軸31と第4入力ギヤ54aとが結合され、第2シンクロ機構62によって第4入力ギヤ54aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第1クラッチ10→第1入力軸31→第1シンクロ機構61→第4入力ギヤ54a→第2シンクロ機構62→出力軸35と伝達されることで、7速段の動力伝達経路が確立される。7速段は、直結段である。
8速段では、第2クラッチ20が接とされ、第2シンクロ機構62によって第4入力ギヤ54aと出力軸35とが結合され、第3シンクロ機構63によって第1カウンタ軸33と第2カウンタ軸34とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第2クラッチ20→第2入力軸32→第1ギヤ列51→第1カウンタ軸33→第3シンクロ機構63→第2カウンタ軸34→第3ギヤ列54→第2シンクロ機構62→出力軸35と伝達されることで、8速段の動力伝達経路が確立される。
9速段では、第1クラッチ10が接とされ、第1シンクロ機構61によって第1入力軸31と第3入力ギヤ53aとが結合され、第2シンクロ機構62によって第4入力ギヤ54aと出力軸35とが結合される。
すなわち、エンジンの動力が第1クラッチ10→第1入力軸31→第1シンクロ機構61→第2ギヤ列53→第2カウンタ軸34→第3ギヤ列54→第2シンクロ機構62→出力軸35と伝達されることで、9速段の動力伝達経路が確立される。
次に、本実施形態のデュアルクラッチ式変速機1において6速段で行われるシンクロ負荷低減制御の概要について、図2および図3を参照して詳細に説明する。図2は、5速段から6速段へのアップシフトが行われた直後の様子を示している。
図2に示すように、5速段から6速段へのアップシフトが行われた直後、第1シンクロ機構61は、第1入力軸31と第3入力ギヤ53aとを結合した状態である。また、第2シンクロ機構62は、第1出力ギヤ55aと出力軸35とを結合した状態である。
そのため、第2カウンタ軸34に固定された第4カウンタギヤ54bと噛合する第4入力ギヤ54aは、出力軸35によって回転駆動される。出力軸35の回転数をN35、第1出力ギヤ55aの歯数をZ55a、第5カウンタギヤ55bの歯数をZ55b、第4カウンタギヤ54bの歯数をZ54b、第4入力ギヤ54aの歯数をZ54aとすると、第4入力ギヤ54aの回転数N54aは、N54a=N35×Z55a/Z55b×Z54b/Z54aとなる。なお、この回転数N54aは、デュアルクラッチ式変速機1の構造上、9速段相当の回転数である。
5速段から6速段へのアップシフトが行われた後、6速段の状態で、7速段へのプレシフトが行われる場合、まず、第1シンクロ機構61において第1入力軸31と第3入力ギヤ53aとの結合が解除され、第2シンクロ機構62において第1出力ギヤ55aと出力軸35との結合が解除される。そしてその後、第2シンクロ機構62において第4入力ギヤ54aと出力軸35とが結合され、第1シンクロ機構61において第1入力軸31と第4入力ギヤ54aとが結合される(図3を参照)。
このとき、第2シンクロ機構62では、第1出力ギヤ55aと出力軸35との結合を解除した直後に第4入力ギヤ54aと出力軸35とを結合させようとすると、回転数N35で回転している第2シンクロスリーブ62bに、回転数N54a(=N35×Z55a/Z55b×Z54b/Z54a)で回転している第3ドグギヤ62cを係合させる必要が生じる。そのため、第3ドグギヤ62cの回転数を大きく低下させる必要があり、第2シンクロ機構62に大きな負荷がかかる。
7速段から6速段へのダウンシフトが行われた後、6速段の状態で、5速段へのプレシフトが行われる場合も同様である。すなわち、第4入力ギヤ54aと出力軸35との結合を解除した直後に第1出力ギヤ55aと出力軸35とを結合させようとすると、回転数N35で回転している第2シンクロスリーブ62bに、回転数N55a(=N35×Z54a/Z54b×Z55b/Z55a)で回転している第4ドグギヤ62dを係合させる必要が生じる。そのため、第4ドグギヤ62dの回転数を大きく上昇させる必要があり、第2シンクロ機構62に大きな負荷がかかる。
本実施形態では、6速段の状態で行われるプレシフトによって第2シンクロ機構62に大きな負荷がかかることを防止するため、以下の動作が行われる。
5速段から6速段へのアップシフトが行われた後、6速段の状態で、7速段へのプレシフトが行われる場合には、第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとの係合を解除した後、第2シンクロスリーブ62bを第3ドグギヤ62cと係合させる前に、第3シンクロ機構63の第3シンクロスリーブ63bを第6ドグギヤ63dと一時的に係合させる。
これにより、第4入力ギヤ54aの回転数が、N54a5UP−1(=N35×Z55a/Z55b×Z54b/Z54a)から、N54a5UP−2(=N35×Z57a/Z57b×Z54b/Z54a)に低下させられる。そして、第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとの係合を解除させ、第2シンクロスリーブ62bを第3ドグギヤ62cと係合させることで、第2シンクロ機構62にかかる負荷を低減することができる。
7速段から6速段へのダウンシフトが行われた後、6速段の状態で、5速段へのプレシフトが行われる場合には、第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとの係合を解除した後、第2シンクロスリーブ62bを第4ドグギヤ62dと係合させる前に、第3シンクロ機構63の第3シンクロスリーブ63bを第6ドグギヤ63dと一時的に係合させる。
これにより、第1出力ギヤ55aの回転数が、N55a7DN−1(=N35×Z54a/Z54b×Z55b/Z55a)から、N55a7DN−2(=N35×Z57a/Z57b×Z55b/Z55a)に上昇させられる。そして、第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとの係合を解除させ、第2シンクロスリーブ62bを第4ドグギヤ62dと係合させることで、第2シンクロ機構62にかかる負荷を低減することができる。
次に、図4のフローチャートを参照して、シンクロ負荷低減制御の処理内容について説明する。なお、このようなシンクロ負荷低減制御は、6速段が確立された場合に開始される。
まず、ステップS1で、制御装置40は、プレシフト位置が5速段であるか否かを判断する。
ステップS1で、プレシフト位置が5速段であると判断された場合(ステップS1:YES)、処理はステップS2へ進む。
一方、ステップS1で、プレシフト位置が5速段でないと判断された場合(ステップS1:NO)、処理はステップS6(詳細は後述する)へ進む。
ステップS2で、制御装置40は、目標プレシフト位置が5速段でないか否かを判断する。
ステップS2で、目標プレシフト位置が5速段であると判断された場合(ステップS2:NO)、ステップS2の処理を繰り返す。
一方、ステップS2で、目標プレシフト位置が5速段でないと判断された場合(ステップS2:YES)、処理はステップS3へ進む。
ステップS3で、制御装置40は、第1シンクロ機構61におけるギヤ抜きおよび第2シンクロ機構62におけるギヤ抜きを行わせる。具体的には、第1シンクロスリーブ61bと第1ドグギヤ61cとの係合状態を解除させるとともに、第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとの係合状態を解除させる。
ステップS3に続くステップS4で、制御装置40は、目標プレシフト位置が7速段であり、かつ、第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとの相対回転数が予め定められた所定の第1閾値以下であるか否かを判断する。
ステップS4で、目標プレシフト位置が7速段でない、および/または、第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとの相対回転数が予め定められた所定の第1閾値以下でない、と判断された場合(ステップS4:NO)、処理はステップS11(詳細は後述する)へ進む。
なお、ステップS4で「NO」と判断されるのは、目標プレシフト位置が7速段となっているが第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとの相対回転数が大きい場合に加え、目標プレシフト位置が7速段に確定していない状態である場合がある。
一方、ステップS4で、目標プレシフト位置が7速段であり、かつ、第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとの相対回転数が予め定められた所定の第1閾値以下であると判断された場合(ステップS4:YES)、処理はステップS5へ進む。
そして、ステップS5で、制御装置40は、第2シンクロ機構62において第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとを係合させるとともに、第1シンクロ機構61において第1シンクロスリーブ61bと第2ドグギヤ61dとを係合させることで、7速段へのプレシフトを完了させて処理を終了する。
上述のとおり、ステップS1で、プレシフト位置が5速段でないと判断された場合(ステップS1:NO)、処理はステップS6へ進む。
ステップS6で、制御装置40は、プレシフト位置が7速段であるか否かを判断する。
ステップS6で、プレシフト位置が7速段であると判断された場合(ステップS6:YES)、処理はステップS7へ進む。
一方、ステップS6で、プレシフト位置が7速段でないと判断された場合(ステップS6:NO)、処理を終了する。
ステップS7で、制御装置40は、目標プレシフト位置が7速段でないか否かを判断する。
ステップS7で、目標プレシフト位置が7速段であると判断された場合(ステップS7:NO)、ステップS7の処理を繰り返す。
一方、ステップS7で、目標プレシフト位置が7速段でないと判断された場合(ステップS7:YES)、処理はステップS8へ進む。
ステップS8で、制御装置40は、第1シンクロ機構61におけるギヤ抜きおよび第2シンクロ機構62におけるギヤ抜きを行わせる。具体的には、第1シンクロスリーブ61bと第2ドグギヤ61dとの係合状態を解除させるとともに、第2シンクロスリーブ62bと第3ドグギヤ62cとの係合状態を解除させる。
ステップS8に続くステップS9で、制御装置40は、目標プレシフト位置が5速段であり、かつ、第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとの相対回転数が予め定められた所定の第2閾値以下であるか否かを判断する。
ステップS9で、目標プレシフト位置が5速段でない、および/または、第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとの相対回転数が予め定められた所定の第2閾値以下でない、と判断された場合(ステップS9:NO)、処理はステップS11(詳細は後述する)へ進む。
なお、ステップS9で「NO」と判断されるのは、目標プレシフト位置が5速段となっているが第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとの相対回転数が大きい場合に加え、目標プレシフト位置が5速段に確定していない状態である場合がある。
一方、ステップS9で、目標プレシフト位置が5速段であり、かつ、第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとの相対回転数が予め定められた所定の第2閾値以下であると判断された場合(ステップS9:YES)、処理はステップS10へ進む。
そして、ステップS10で、制御装置40は、第2シンクロ機構62において第2シンクロスリーブ62bと第4ドグギヤ62dとを係合させるとともに、第1シンクロ機構61において第1シンクロスリーブ61bと第1ドグギヤ61cとを係合させることで、5速段へのプレシフトを完了させて、処理を終了する。
ステップS11は、上述のとおり、ステップS4またはステップS9において「NO」と判断された場合に進む処理である。
ステップS11で、制御装置40は、第3シンクロ機構63における第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとを係合させる。
ステップS11の処理を実行すると、処理はステップS12へ進む。
ステップS12で、制御装置40は、目標プレシフト位置が7速段であるか否かを判断する。目標プレシフト位置が7速段であると判断された場合(ステップS12:YES)、処理はステップS13へ進む。
そして、ステップS13で、制御装置40は、第3シンクロ機構63におけるギヤ抜きを行わせる。具体的には、第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとの係合状態を解除させる。ステップS13の処理を実行した後、処理はステップS5へ進む。
ステップS12で、目標プレシフト位置が7速段でないと判断された場合(ステップS12:NO)、処理はステップS14へ進む。
ステップS14で、制御装置40は、目標プレシフト位置が5速段であるか否かを判断する。
ステップS14で、目標プレシフト位置が5速段でないと判断された場合(ステップS12:NO)、処理はステップS12へ戻る。
一方、ステップS14で、目標プレシフト位置が5速段であると判断された場合(ステップS14:YES)、処理はステップS15へ進む。
そして、ステップS15で、制御装置40は、第3シンクロ機構63におけるギヤ抜きを行わせる。具体的には、第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとの係合状態を解除させる。ステップS15の処理を実行した後、処理はステップS10へ進む。
以上説明したように、本実施形態によれば、6速段での走行中、プレシフト位置が5速段から7速段へ変更される場合、または、7速段から5速段へ変更される場合に、第1シンクロ機構61および第2シンクロ機構62でのギヤ抜きを行った後、一時的に第3シンクロ機構63における第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとを係合させる。そのため、第2シンクロ機構62にかかる負荷を低減することができる。
また、本実施形態によれば、係合させようとするスリーブとドグギヤとの相対回転数が大きい場合に、一時的に第3シンクロ機構63における第3シンクロスリーブ63bと第6ドグギヤ63dとを係合させる。そのため、係合させようとするスリーブとドグギヤとの相対回転数が小さく、第2シンクロ機構62にかかる負荷がそれほど大きくない状況において、プレシフトに要する時間を短くすることができる。
なお、上述の実施形態では、6速段での走行中、プレシフト位置が5速段から7速段へ変更される場合、または、7速段から5速段へ変更される場合を例に説明を行ったが、これに限定されないことはもちろんである。
また、上述の実施形態では、第1入力軸および第2入力軸を備えるDCTを例に説明を行ったが、これに限定されず、単一の入力軸を有するAMTにも適用可能であることはもちろんである。