本発明によるエレベーター装置(エレベーター)は、乗りかごに設けられたセンサが、各階の戸開許可範囲内(昇降路に定められた、乗りかごのドアを開くことができる、乗りかごの位置範囲)に設置された遮蔽板を検出し、乗りかごを走行させる巻上機にロータリエンコーダが設けられており、乗場ドア(乗場のドア)が、かごドア(乗りかごのドア)に係合されてかごドアと連動して開閉する。本発明によるエレベーター装置は、昇降路で端階(最上階及び最下階)の戸開許可範囲内に設置され、乗りかごが端階の一方にあることを検出する端階検出器と、かごドアの開閉を検出するかご戸閉検出装置と、乗場ドアの開閉を検出する乗場戸閉検出装置を備える。
エレベーター装置の制御装置は、センサとロータリエンコーダとのうち少なくとも一方の故障を検出した場合において、端階検出器が乗りかごが端階の一方にあることを検出し、かご戸閉検出装置と乗場戸閉検出装置がそれぞれかごドアと乗場ドアが閉じていることを検出した場合には、かごドアを予め定めた所定の距離だけ開く。制御装置は、かご戸閉検出装置と乗場戸閉検出装置がそれぞれかごドアと乗場ドアが開いたことを検出したら、乗りかごが戸開許可範囲内にあると判断して、かごドアと乗場ドアを全開にする。
本発明によれば、ガバナに設けられたロータリエンコーダ(ガバナエンコーダ)やロープの伸縮による乗りかごと乗場の段差を検出するセンサが搭載されていなくても、遮蔽板を検出するセンサや巻上機に設けられたロータリエンコーダが故障した場合に、乗りかごが戸開許可範囲内にあることは、端階検出器による検出と、かご戸閉検出装置と乗場戸閉検出装置による検出とで二重のチェックを行うことで確認できる。このため、正常時と同様にエレベーターの安全性を確保して戸開を行い、乗りかご内の乗客を自動で安全に救出することができる。
本発明によるエレベーターの構成は、既存のエレベーターに対しても、新たなハードウエアを追加せずに容易に実現できる。このため、本発明は、古い機種のエレベーターや、ガバナエンコーダや乗りかごと乗場の段差を検出するセンサが搭載されていないエレベーター等、幅広い機種のエレベーターに適用可能である。
以下、本発明の実施例によるエレベーター装置を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例によるエレベーター装置の概略構成図である。本発明の実施例によるエレベーターは、各階の戸開許可範囲内に設置された遮蔽板1と、乗客が乗る乗りかご2と、乗りかご2に設けられたセンサ3と、エレベーターの端階(最上階及び最下階)の戸開許可範囲内に設置された端階検出器4と、乗りかご2を上下方向に走行させる巻上機5と、巻上機5に設けられたロータリエンコーダ6と、乗りかご2に設けられたかごドア制御装置7と、エレベーターの制御装置8を備える。
遮蔽板1は、エレベーターの昇降路に設置される。乗りかご2は、昇降路を上下方向に走行する。センサ3は、例えば光電センサや磁気センサであり、乗りかご2が戸開許可範囲内にあるときに遮蔽板1を検出する。センサ3が遮蔽板1を検出したら、乗りかご2が戸開許可範囲内にあると判断できる。ロータリエンコーダ6は、巻上機5のシーブの回転数を求める。このシーブの回転数から、乗りかご2の位置を算出することができる。
端階検出器4は、昇降路に設置され、乗りかご2が端階(最上階及び最下階)の一方にあることを検出する装置であり、乗りかご2が端階に到達するとオンになる。端階検出器4には、例えば、乗りかご2が備える突出部材が接触するとオンになるスイッチや、特許文献2に記載のように光電センサやリミットスイッチを用いることができる。乗りかご2は、端階検出器4で端階に到達したことが検出されたら、走行を停止し、端階よりも先に進まない。端階検出器4は、乗りかご2が端階よりも先に進んでファイナルリミットスイッチがオンになるのを防止する装置である。センサ3又はロータリエンコーダ6が故障したときに端階検出器4がオンになると、乗りかご2は、走行を停止するが、乗客の安全のためにドアが開かない。これは、制御装置8が、センサ3又はロータリエンコーダ6の故障を検出したので、エレベーターに異常があると判断して、乗客の安全のために乗りかご2のドアを開かないからである。
図2は、かごドア制御装置7の概略構成図である。かごドア制御装置7は、乗りかご2のドア11(かごドア11)を開閉するモータ9と、かごドア11が閉じたことを検出するかご戸閉検出装置10を備える。かご戸閉検出装置10は、かごドア11が閉じるとオンになり、開くとオフになることで、かごドア11の開閉を検出することができる。
エレベーター装置は、エレベーターの乗場にもドア(乗場ドア)を備える。乗場ドアは、乗場ドア装置に含まれる。
図3は、乗場ドア装置の概略構成図である。乗場ドア装置14は、乗場ドア13と、乗場ドア13が閉じたことを検出する乗場戸閉検出装置12を備える。乗場戸閉検出装置12は、乗場ドア13が閉じるとオンになり、開くとオフになることで、乗場ドア13の開閉を検出することができる。乗場ドア13は、かごドア11に係合されて、かごドア11と連動して開閉する。すなわち、乗場ドア13は、乗りかご2が戸開許可範囲内にある場合に、かごドア11が開くとかごドア11が係合することで開く。
エレベーターの制御装置8は、遮蔽板1を検出するセンサ3、端階検出器4、及び巻上機5に設けられたロータリエンコーダ6に接続されており、これらからの信号を入力して乗りかご2の位置を算出する。また、エレベーターの制御装置8は、かご戸閉検出装置10及び乗場戸閉検出装置12に接続されており、これらからのオン又はオフの信号を入力して、それぞれかごドア11及び乗場ドア13が閉じているか開いているかを検出することができる。
正常時には、エレベーターの制御装置8は、センサ3の信号とロータリエンコーダ6の信号を入力し、センサ3の信号から算出した乗りかご2の位置とロータリエンコーダ6の信号から算出した乗りかご2の位置との両方が戸開許可範囲内にある場合のみ、かごドア11の開閉を指示する。
このため、従来のエレベーターでは、センサ3とロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障すると、かごドア11は開閉せず、乗りかご2内の乗客は、乗りかご2内に閉じ込められてしまう。このとき、エレベーターの制御装置8は、乗りかご2が戸開許可範囲内にあることを検出できないので、乗りかご2の走行を停止できない場合もある。このような場合には、端階検出器4が乗りかご2の端階への到達を検出すると、乗りかご2は、走行を停止する。しかし、センサ3とロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障しているために、かごドア11は開かない。すなわち、従来のエレベーターでは、エレベーターが端階検出器4を備えていても、センサ3とロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障すると、乗客は、乗りかご2内に閉じ込められてしまう。
本実施例によるエレベーター装置では、遮蔽板1を検出するセンサ3と巻上機5に設けられたロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障しても、かごドア11と乗場ドア13を開くことで、乗客が乗りかご2内に閉じ込められるのを防止し、乗りかご2内の乗客を自動で安全に救出することができる。また、かごドア11と乗場ドア13を自動で開けない場合でも、乗りかご2内の乗客を安全に救出するための動作を実行できる。
次に、遮蔽板1を検出するセンサ3と巻上機5に設けられたロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障した場合の、本実施例によるエレベーター装置の動作について説明する。
図4は、遮蔽板1を検出するセンサ3と巻上機5に設けられたロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障した場合に、本実施例によるエレベーター装置が備えるエレベーターの制御装置8が行う動作を示すフローチャートである。
ステップ1で、制御装置8は、センサ3とロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障したことを検出する。制御装置8は、例えば、乗りかご2が複数階にわたって走行しても、センサ3のオンとオフが切り替わらないとき(すなわち、センサ3が、遮蔽板1を検出しないとき、又は遮蔽板1を検出し続けるとき)は、センサ3が故障したと判断する。また、制御装置8は、例えば、乗りかご2の走行中にロータリエンコーダ6が異常な値を出力する等、今までと違う挙動を示したら、ロータリエンコーダ6が故障したと判断する。
制御装置8は、センサ3とロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方の故障を検出すると、乗りかご2が戸開許可範囲内にあることを検出できず、乗りかご2を戸開許可範囲内で停止させることができなくなる。このため、乗りかご2は、最上階又は最下階(端階の一方)に向かって走行する。
ステップ2で、制御装置8は、端階検出器4が乗りかご2が端階の一方に到達したことを検出したら、乗りかご2の走行を停止させる。端階検出器4は、端階の戸開許可範囲内に設置されているため、乗りかご2は、戸開許可範囲内で停止する。
ステップ3で、制御装置8は、乗りかご2の走行の停止後に、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であるか判断する。制御装置8は、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12からの信号により、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の両方がオンであれば(すなわち、かご戸閉検出装置10がかごドア11が閉じていることを検出し、かつ乗場戸閉検出装置12が乗場ドア13が閉じていることを検出した場合には)、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断できる。制御装置8が、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断した場合は、ステップ4に進む。制御装置8が、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断しなかった場合(かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の一方又は両方がオフである場合)は、かごドア11と乗場ドア13の一方又は両方が開いている状態であり、ステップ8に進む。
ステップ4で、制御装置8は、かごドア11と乗場ドア13を開くため、乗りかご2内の乗客にかごドア11から離れることを指示するアナウンスを、乗りかご2内に設けられたスピーカーを用いて出力する。
ステップ5で、制御装置8は、かごドア11を予め定めた所定の距離だけ開く。かごドア11が所定の距離だけ開くと、乗場ドア13は、かごドア11に係合され、かごドア11と連動して開く。この所定の距離は、かごドア11が全開にならない距離であれば任意に定めることができるが、好ましくは、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12がオンからオフになる最低限の距離、すなわち、制御装置8がかごドア11と乗場ドア13が開いたと認識できる、全閉の位置からの最小の距離(通常は、10mmから20mm程度)である。かごドア11と乗場ドア13が開く距離を、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12がオフになる最低限の距離とすると、乗りかご2が戸開許可範囲外にある場合でも、かごドア11を開いたときに乗りかご2内の乗客が昇降路内に転落する等の事態を防止でき、乗客の安全を確保できる。
ステップ6で、制御装置8は、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の両方がオフであるか、すなわち、かご戸閉検出装置10がかごドア11が開いたことを検出し、かつ乗場戸閉検出装置12が乗場ドア13が開いたことを検出したかを調べる。乗場ドア13は、かごドア11と連動して開閉するので、乗場戸閉検出装置12は、かご戸閉検出装置10がオフになるのと連動してオフになる。かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の両方がオフであると、かごドア11と乗場ドア13の両方が開いているので、乗りかご2が戸開許可範囲内にあることを確かめることができる。乗りかご2が戸開許可範囲外にあれば、かごドア11は乗場ドア13に係合しないので、乗場ドア13は開かない。
ステップ6で、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の両方がオフである場合は、ステップ7に進む。かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の一方又は両方がオンである場合は、かごドア11と乗場ドア13の一方又は両方が閉じている場合であり、ステップ10に進む。
端階検出器4は、端階の戸開許可範囲内に設置されているため、正常時には端階検出器4のみで(すなわち、ステップ2のみで)乗りかご2が戸開許可範囲内にあることを検出可能である。しかし、端階検出器4が故障して乗りかご2が端階にないのに端階にあると誤検出した場合(端階検出器4がオン故障した場合)には、戸開許可範囲外(端階検出器4が乗りかご2が端階にあると誤検出した位置)で乗りかご2が停止し、戸開許可範囲外でかごドア11が開き、乗客の安全を確保できなくなる可能性がある。
ステップ6の動作を行うと、乗りかご2が戸開許可範囲内にあることを確かめることができる。従って、本実施例では、乗りかご2が戸開許可範囲内にあることは、ステップ2とステップ6を行うことで二重に確認することができる。端階検出器4の上記の故障は、通常は検出することが困難である。このため、本実施例のように二重チェックを行うことで、エレベーターの安全性をさらに高めることができる。
ステップ7で、制御装置8は、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の両方がオフであるので、乗りかご2が戸開許可範囲内にあると判断し、かごドア11と乗場ドアの両方を全開にして、乗りかご2内の乗客を救出する。このとき、制御装置8は、例えば、エレベーターに故障が生じたが、乗客は端階の一方(最上階又は最下階)で安全に乗りかご2から降りられるという内容のアナウンスを、乗りかご2内のスピーカーを用いて出力することもできる。
ステップ8は、ステップ3で、制御装置8が、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断しなかった場合(かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の一方又は両方がオフである場合)、すなわち、かごドア11と乗場ドア13の一方又は両方が開いている場合の動作である。ステップ8で、制御装置8は、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12のうちオフである戸閉検出装置が開閉を検出するドア(すなわち、かごドア11と乗場ドア13のうち開いているドア)を全閉にする。制御装置8は、かご戸閉検出装置10がオフであればかごドア11を、乗場戸閉検出装置12がオフであれば乗場ドア13を、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12がオフであればかごドア11と乗場ドア13の両方を、それぞれ全閉にする。
ステップ9で、制御装置8は、開いているドアを全閉にした後で、ステップ3と同様に、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であるか判断する。制御装置8は、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の両方がオンであれば、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断できる。制御装置8が、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断した場合は、ステップ4に進む。制御装置8が、かごドア11と乗場ドア13の両方が全閉であると判断しなかった場合(かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の一方又は両方がオフである場合)は、かごドア11と乗場ドア13の一方又は両方が閉じないため、制御装置8は、エレベーターが正常に動作しないと判断し、ステップ11に進む。
ステップ10は、ステップ6で、かご戸閉検出装置10と乗場戸閉検出装置12の一方又は両方がオンである場合(かごドア11と乗場ドア13の一方又は両方が閉じている場合)の動作である。ステップ10では、制御装置8は、かごドア11と乗場ドア13が連動して開かないので、乗りかご2が戸開許可範囲内にないと判断して、かごドア11と乗場ドア13のうち開いているドアを閉じて、かごドア11と乗場ドア13の両方が閉じている状態にする。
ステップ11は、ステップ9で、制御装置8がかごドア11と乗場ドア13の両方が全閉でないと判断した場合と、ステップ10で、制御装置8が乗りかご2が戸開許可範囲内にないと判断して、かごドア11と乗場ドア13の両方が閉じている状態にした場合の動作である。ステップ11では、制御装置8は、乗りかご2内の乗客に向けて、乗りかご2内のインターホンで外部に救出を求めるように案内するアナウンスを、乗りかご2内のスピーカーを用いて出力する。本実施例によるエレベーター装置では、このようにして、かごドア11と乗場ドア13を自動で開けない場合でも、乗りかご2内の乗客を安全に救出することができる。
本実施例によるエレベーター装置は、以上のような動作により、遮蔽板1を検出するセンサ3と巻上機5に設けられたロータリエンコーダ6とのうち少なくとも一方が故障しても、乗りかご2内の乗客を自動で救出することができる。
また、ステップ4で、乗りかご2内の乗客にかごドア11から離れることを指示するアナウンスをするときには、かごドア11の戸袋へ引き込まれるのを防止するセンサがかごドア11に付いている場合は、このセンサが動作している間は、ステップ5を実施しないようにしたり、かごドア11から離れることを指示するアナウンスを繰り返し行ったりすることも、エレベーターの安全性の向上に有効である。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。