JP2014237536A - エレベータ - Google Patents

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Abstract

【課題】エレベータの乗りかご内に乗客が長時間閉じ込められる事態を回避する。【解決手段】エレベータ100は、駆動モータ30に取り付けた第1のパルス発生器31と調速機21に取り付けた2個の第2のパルス発生器22a、22bとエレベータ制御装置60とを備える。エレベータ制御装置は、距離計数比較部613と異常時にこのエレベータに停止指令を発生するエレベータ停止指令部612を有する。距離計数比較部が出力した第2のパルス発生器同士の出力誤差が所定値以下であれば、エレベータ通常運転処理110またはエレベータ停止指令部を用いてエレベータを一旦停止させた後乗りかごを最寄りの階へ移動して乗客を降ろす救出運転130を指令する。【選択図】 図2

Description

本発明はエレベータに係り、特にエレベータの非常停止後の救出運転に関する。
従来のエレベータの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載のエレベータでは、乗りかごの位置を検出する調速機に取り付けたエンコーダの出力を、各乗りかごの上下方向に設置した乗りかごの高さ位置を検出する光学センサと比較して、乗りかご位置を監視している。また、救出運転では隣り合う乗りかごを救出に用い、光学センサで乗りかご同士の高さを直接検出し、2つの乗りかごの高さをより正確かつ迅速に合わせている。
従来のエレベータの他の例が、特許文献2ないし4に記載されている。これらは電子安全エレベータと称されるもので、機械式の安全スイッチを削減して保守点検の対象を減らすとともに、より電子化により高機能な安全を確保するものである。そのため、調速機に乗りかごの移動量に応じてパルスを発生するパルス発生器を、乗りかご底面に乗りかごが所定位置に到達したことを検出する位置検出装置を設け、これらの検出値からエレベータの安全を確保制御する安全コントローラとを備えている。
特開2007−119102号公報 国際公開WO2011/148411号明細書 特開2012−82059号公報 特開2012−86959号公報
上記特許文献1に記載の従来のエレベータにおいては、乗りかごの移動量に応じてパルスを出力するパルス発生器および乗りかごの各階位置を検出する位置検出器を用いてエレベータの乗りかごの位置を制御している。そして、パルス発生器と位置検出器のいずれか一方が故障すると、エレベータの乗りかごの位置が不定となり、非常停止する。エレベータの乗りかごが非常停止すると、保守員による復旧作業が開始されない限り、それ以降の運転を中止する。そのため、エレベータの乗りかご内に乗客がいると、乗客は乗りかご内に閉じ込められる。この場合、乗客を救出するために、保守員がブレーキ等を手動で徐々に開放して、最寄りの乗り場に乗りかごを移動させる。その結果、常駐していない保守員が現場に到着するまでに多大な時間を要する場合がある。また、複数台のエレベータが隣り合って設置されていない場合や、単独の運転の場合には、隣り合うエレベータからの救出作業を実行できない。
上記特許文献2ないし4に記載の電子安全エレベータでも、この事情は同一である。すなわち、電子安全エレベータで使用する安全コントローラは、メンテナンスリミットスイッチやファイナルリミットスイッチ、過速スイッチなどの安全装置動作を、パルス発生器と位置検出器が荷っているので、パルス発生器や位置検出器が故障すると、エレベータを制止させる。そのため、従来の機械式の安全装置を有するエレベータと同様、乗りかご内に乗客がいると、保守員が到着するまで乗客は乗りかご内に閉じ込められる。
本発明は上記従来のエレベーにおける不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、エレベータの乗りかご内に乗客が長時間閉じ込められる事態を回避することにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、乗りかごと、この乗りかごを駆動する駆動モータに取り付けた第1のパルス発生器と、調速機と、この調速機に取り付けた第2のパルス発生器と、前記第1のパルス発生器の出力信号及び第2のパルス発生器の出力信号が入力されるエレベータ制御装置とを備えたエレベータにおいて、前記第2のパルス発生器は2個設けられており、前記エレベータ制御装置は、前記第1のパルス発生器の出力信号を距離に変換する第1の距離計数部及び第2のパルス発生器の出力信号を距離に変換する2個の第2の距離計数部と、各前記第2の距離計数部の出力が入力され前記第2のパルス発生器の出力誤差を算出する距離計数比較部と、異常時にこのエレベータに停止指令を発生するエレベータ停止指令部とを有し、前記エレベータ制御装置は、前記距離計数比較部の出力する前記第2のパルス発生器同士の出力誤差が第1の所定値以下であればエレベータ通常運転処理または前記エレベータ停止指令部を用いてエレベータを一旦停止させた後前記乗りかごを最寄りの階へ移動して乗客を降ろす救出運転を指令することにある。
本発明によれば、エレベータの駆動モータに第1のパルス発生器を、エレベータの調速機のプーリー軸に複数の第2のパルス発生器を設置し、エレベータコントローラが各パルス発生器の出力の正誤を判断するようにしたので、緊急事態等が発生したときにエレベータの乗りかご内に乗客が長時間閉じ込められる事態を回避することが可能になる。また、弊置されたエレベータがない場合や単独で運転されるエレベータにおいても、緊急事態等が発生したときにエレベータの乗りかご内に乗客が長時間閉じ込められる事態を回避することが可能になる。
本発明に係る電子安全エレベータの一実施例の模式図である。 図1に示した電子安全エレベータの制御に係るブロック図である。 図1に示した電子安全エレベータの制御フローチャートの一例を示す図である。 本発明に係るエレベータの他の実施例の模式図である。 図4に示したエレベータの制御に係るブロック図である。 図4に示したエレベータの制御フローチャートの一例を示す図である。
以下、本発明に係るエレベータのいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。
図1ないし図3は、本発明に係るエレベータの一実施例の図であり、図1はいわゆる電子安全エレベータ100の模式図であり、昇降路90内を示す図である。図2は、図1に示した電子安全エレベータ100の制御部のブロック図であり、図3は図1に示した電子安全エレベータ100の制御フローチャートの一例を示した図である。
図1において、エレベータ100の乗りかご10には、調速機ロープ20が連結されている。この調速機ロープ20を介して、調速機21が昇降路90の床面付近に設けられている。エレベータ100の乗りかご10には、この乗りかご10を昇降駆動するために、主ロープ50の一端側が接続されている。主ロープ50は、複数のシーブに巻装された後、他端側をカウンターウェート40に接続されている。主ロープ50の中間部は、駆動モータ30の回転軸に取り付けたシーブに巻装されている。
駆動モータ30の軸に直結して、乗りかご10の移動量に応じたパルス数を出力するパルス発生器(エンコーダ)31が取り付けられている。駆動モータ30のシーブの外周部に対向して、複数(図1では2個)のブレーキ32が配置されている。ブレーキ32は、非常時等に駆動モータ30のシーブを把持する。昇降路90の底面には、複数の緩衝器80が配設されており、万が一エレベータ100の乗りかご10が落下した場合に衝撃を緩和する。
電子安全エレベータでは、従来の機械式のリミットスイッチに代わり、電子信号でエレベータの安全装置を構成している。そのため、エレベータの制御装置60は、エレベータの昇降動作を制御するエレベータコントローラ61とともに、エレベータの安全を確保するための安全コントローラ62を備えている。
エレベータのコントローラ61には、駆動モータ30に取り付けられ乗りかご10の移動量に応じてパルスを出力するパルス発生器31からの信号311、各階の床面を検出するために乗り場の床面近傍に設けた被検出板75を検出する位置検出器70の検出信号71が入力されている。これら検出器31、70からの信号311、71は、エレベータ100の乗りかご10の位置を制御するのに用いられる。位置検出器70は、乗りかご10の底板の開閉扉側に取り付けられている。
一方、調速機21の回転軸には、複数のパルス発生器22a、22bまたはA相、B相を各々2個ずつ有するエンコーダが取り付けられている。このパルス発生器22a、22bまたはエンコーダの出力221、222は、安全コントローラ62に入力されている。この出力221、222は詳細を後述するように、検出装置22a、22bの故障判断にも用いられる。
図2に、安全コントローラ62およびエレベータコントローラ61をブロック図で示す。安全コントローラ62は距離計数部621、622を有しており、この距離計数部621、622に、調速機21に取り付けたパルス発生器22a、22bの検出信号221、222が入力される。同様に、駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31の検出信号311は、エレベータコントローラ61が有する距離計数部611に入力される。
安全コントローラ62の各距離計数部621、622では、入力された調速機21のパルス信号221、222を、パルス数からmm単位の距離に変換する。エレベータコントローラ61の距離計数部611も、入力された駆動モータ30のパルス信号311を、パルス数からmm単位の距離に変換する。
安全コントローラ62は、2個の距離計数部621、622の出力信号631、632を比較する距離計数値比較部623を有している。距離計数値比較部623で2個の出力信号631、632同士を比較した結果、安全コントローラ62は調速機21に取り付けたパルス発生器22a、22bに異常が発生したか否かを判定する。そして、エレベータ100の運転を継続するエレベータ通常運転処理110の指令信号635、またはエレベータ100を停止する指令信号634を発生する。
安全コントローラ62の距離計数部621、622の出力信号631a、631bはエレベータコントローラ61が有する距離計数比較部613に、常時入力されている。この距離計数比較部613には、駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31の検出信号311を変換した信号633も常時入力されている。
ここで、エレベータコントローラ62は、調速機21に取り付けたパルス発生器22a、22bのいずれか一方または双方が故障した場合に備え、これらパルス発生器22a、22bに異常が生じた時にエレベータ100を停止させるエレベータ停止指令部612を有している。エレベータ停止指令部612は、パルス発生器22a、22bに異常が生じた時にエレベータ停止処理120を実行するよう指令641を発生する。それとともに、エレベータコントローラ61の距離計数比較部613を作動させる指令642を発生する。
エレベータコントローラ62は、救出運転許可指令部614とエレベータ制止指令部615とを有している。救出運転許可指令部614は、異常時に距離計数比較部613が比較した3個のパルス検出器22a、22b、30の出力結果δが、所定値以下である場合に、乗りかご10内の乗客を救出するために、乗りかご10を移動させ開閉扉を開閉させる救出運転130の指令信号645を発生する。エレベータ制止指令部は、異常時に距離計数比較部613が比較した3個のパルス検出器22a、22b、30の出力結果δが、所定値を超えた場合に、エレベータを直ちに停止するエレベータ制止処理140の指令信号646を発生する。なお、距離計数比較部613には常時入力信号631a、632a、633が入力されるが、通常運転時には動作していない。
このように構成したエレベータ制御装置60を用いた実際のエレベータ100の運転制御フローの一例を、図3に示したフローチャートを用いてさらに詳細に説明する。
エレベータ100の運転が開始されると、常時計測される調速機21のパルス発生器22a、22bの出力221、222が距離計数部621、622で、パル数からmm単位の距離の信号631、632に変換されて、距離計数値比較部623に入力される。距離計数値比較部623では、その差δが所定値、本実施例では5mm以内であるか否かを判断する(ステップS401)。
2つのパルス発生器22a、22bは同一の計測対象についての検出値であるから、その差は本来0である。そこで外乱の影響があったとしても、検出誤差δがδ≦5mmであれば、双方のパルス発生器22a、22bは正常に作動しているものと判断し、エレベータ通常運転処理110の指令信号635を発生し、エレベータ制御装置60はエレベータ100を通常運転させる(ステップS402)。
通常運転において、乗りかご10がかご内呼びまたは乗り場呼びで指定された階床に到着したか否かを、エレベータ制御装置60が判断する(ステップS403)。指定された階床であれば、今回の呼びに対応する制御は終了する。まだ指定された階床まで達していなければ、ステップS401に戻る。
ステップS401において、2つのパルス発生器22a、22bのいずれかの検出誤差δにδ>5mmの乖離があれば、調速機21に巻架するロープの伸び等による外乱等を考慮しても、パルス発生器22a、22bのいずれかもしくは双方が故障しているか、またはエレベータ100の運転自体に何らかの異常が生じたものと距離計数値比較部623は判断する。そこでエレベータ停止指令部612が、エレベータ100の昇降を一旦停止させるエレベータ停止処理120用の指令信号641を発生し、乗りかご10の昇降を一旦停止させる(ステップS404)。
次に、駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31の検出値と調速機21に取り付けたパルス発生器22a、22bの検出値を距離計数比較部613で比較する。これは調速機21に取り付けた2つのパルス発生器22a、22bの少なくともいずれかが故障しているか否かを判断するためである。ここで、駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31は速度制御に用いられており、位置情報を得るためには積分が必要となるので、通常は位置制御に使用していない。ただし、本実施例に示すように調速機21に取り付けたパルス発生器22a、22bよりも分解能が高いので、基準値を与えるものとして利用できる。
距離計数比較部613で、調速機21の一方のパルス発生器22aの出力と駆動モータ30のパルス発生器31の出力との誤差δが所定値、本実施例ではδ=200mm以上乖離しているか否かを距離計数比較部613が判断する(ステップS405)。調速機21のパルス発生器22aと基準となる駆動モータ30のパルス発生器31の出力の誤差δが200mm以下であれば、パルス発生器22aは正常に作動しているものと判断し、乗りかご10を一旦停止位置から最寄りの階まで移動させる救出運転130を、救出運転許可指令部614が指令する(ステップS406)。
エレベータ救出運転を実施したら、乗りかご10が最寄りの階に達したかをパルス発生器22aの出力に基づいて、エレベータ制御装置60が判断する(ステップS407)。乗りかご10が最寄りの階に達していなかったら、ステップS406に戻る。乗りかご10が最寄りの階に達していたら、エレベータ10の開閉扉を開閉して乗客を降ろした後、エレベータを制止する(ステップS408)。
ステップS405において、調速機21の一方のパルス発生器22aの出力と駆動モータ30のパルス発生器31の出力との差δがδ>200mm以上であれば、このパルス発生器22aが故障している可能性も考えられる。そこで、調速機21の他のパルス発生器22bと駆動モータ30のパルス発生器31の出力の誤差δが、δ≦200mm以下であるか否かを距離計数比較部613が判断する(ステップS409)。
他のパルス発生器22bと駆動モータ30のパルス発生器31の出力の差δが、δ≦200mmであれば、このパルス発生器22bは正常に動作しているものとエレベータ制御装置60は判断し、救出運転許可指令部614は救出運転130の指令645を発生し、エレベータ救出運転を実行する(ステップS410)。救出運転が開始されると、エレベータ制御装置60は乗りかご10が最寄り階に到着したか否かをパルス発生器22bの出力に基づいて判断する(ステップS411)。
乗りかご10が最寄り階に到着していれば、開閉扉を開閉して乗客を降ろして救出運転を終了し、その後エレベータ100を制止する(ステップS412)。乗りかご10がまだ最寄り階に到着していなければ、ステップS409に戻り、上記ステップを繰り返す。
ステップS409において、調速機21の他のパルス発生器22bの出力と駆動モータ30のパルス発生器31の出力の差δが、δ>200mmであれば、このパルス発生器22bも故障しているか、またはエレベータ100に異常が発生しているかのいずれかであると判断する。これらの場合、いずれにしてもエレベータのこれ以上の運転は不可能であるから、直ちにエレベータ制止指令部615がエレベータ制止処理140のための指令信号646を発生し、エレベータ100を制する。この場合は、保守員が到着するまで、乗りかご10内に乗客は留め置かれる。
本実施例によれば、調速機に取り付けたパルス発生器の故障の場合には、パルス発生器の双方が故障した場合を除き、救出運転を実行することにより、速やかに乗りかご内から乗客を降ろすことができ、保守員を待つ必要がなくなる。また、隣り合う乗りかごがない場合や乗りかごを単独設置した場合であっても、救出運転により保守員の到着を待つことなく、乗客を乗りかごから降ろすことが可能になる。
さらに具体的には、安全装置に利用される調速機のプーリー軸に取り付けた2つのパルス発生器のうちの一方のパルス発生器が故障し、乗りかごの位置が不定となり非常停止した場合においても、上記効果を達成できる。すなわち、駆動モータのシーブ軸に取り付けたパルス発生器を用いて、3つのパルス発生器の信号をエレベータコントローラや安全コントローラに入力し、少なくとも2つのパルス発生器の信号が同等であると確認できたら救出運転を実行する。これにより、乗客がエレベータの乗りかご内に閉じ込められる事態を回避できる。
図4ないし図6に、本発明に係るエレベータ100の他の実施例を示す。図4は、図1に対応する図であり、従来型のリミットスイッチを有する機械的な安全装置を備えたエレベータ100の、昇降路90の模式図、図5は図4に示したエレベータ100の制御ブロック図、図6は図4に示したエレベータの制御フローチャートである。本実施例が上記実施例1と異なるのは、電子安全コントローラを備えないことにある。
従来型のエレベータにおいては、エレベータ制御装置60は電子安全コントローラをそなえず、エレベータコントローラ61のみが備えられている。また、乗りかご10の位置検出のために、各階の階床には、被検出板75が設置されており、乗りかご10が昇降する際に乗りかご10の下部に取り付けた位置検出装置70がこの被検出板70を検出することにより、乗りかごを「呼び」があった階床に位置決めしている。
また乗りかご10の背面には、弓型のカムが取り付けられている。一方、昇降路90内であって、乗りかご10の上昇限度位置には、上側ファイナルリミットスイッチ81が、このファイナルリミットスイッチ81の下方には所定間隔で複数のアップリミットスイッチ82、83が設けられている。昇降路90内であって乗りかご10の下降限度位置には、下側のファイナルリミットスイッチ88が、この下側のファイナルリミットスイッチの上方には所定間隔で複数のダウンリミットスイッチ85、84が設けられている。これらのリミットスイッチ81〜86にカム87が接触すると、リミットスイッチ81〜86が作動し、乗りかご10の異常上昇及び下降を機械的に保護している。
ここで、本実施例においては従来例とは異なり、調速機21に2個の出力のあるエンコーダまたは2個のパルス発生器22a、22bを取り付け、その出力信号231、232をエレベータコントローラ61に入力している。リミットスイッチ81〜86の信号351および駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31の信号311も、エレベータコントローラ61に入力されている。
図5に、図4に示したエレベータ制御装置60の機能を、ブロック図で示す。調速機21に取り付けたパルス発生器22a、2bの出力信号221、222は、エレベータコントローラ61に設けた距離計数部616、617でパルス数からmm単位の距離信号631、632に変換されて距離計数比較部613に入力される。一方、駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31の出力信号311は、距離計数部611でパルス数からmm単位の距離信号651に変換される。
ここで、乗りかご10が移動しているのにも関わらず、パルス発生器31の出力パルス311の数を距離計数部611が正常に検出できないときに備えて、パルス異常判定処理部618が設けられている。パルス異常判定処理部618は、そのような事態が発生したらエレベータ100の異常と判断する。そのような事態が生じない限り、パルス異常判定処理部618は、エレベータ100は正常と判断し、エレベータ通常運転処理110を実行するための指令信号652を発生する。異常発生と判断したときには、エレベータ停止指令部612に異常信号653を指令する。
エレベータ停止指令部912は、エレベータ100を一旦停止するエレベータ停止処理120を実行するための指令654を発生するとともにし、距離計数比較部613を作動させる指令655を発生する。距離計数比較部655は、エレベータ停止指令部612からの指令信号655により起動し、駆動モータ30のパルス発生器31の出力及び調速機21のパルス発生器22a、22bの出力とから、救出運転許可指令部614またはエレベータ制止指令部615を作動させる指令信号643、644を発生する。救出運転許可指令部614は、救出運転130を実行するための指令645を発生し、エレベータ制止指令部615はエレベータ制止処理140を実行するための指令信号646を発生する。
このように構成したエレベータ制御装置60を用いた実際のエレベータ100の運転制御フローの一例を、図6に示したフローチャートを用いてさらに詳細に説明する。
エレベータ100の運転が開始されると、初めにエレベータ制御装置60は乗りかご10が上昇または下降しているかを判断する(ステップS701)。乗りかご10が上昇または下降していれば、駆動モータ30に取り付けたパルス発生器31が乗りかご10の移動量に応じたパルスを出力しているか否かを、パルス異常判定処理部618が判定する(ステップS702)。
パルス発生器31が正常に作動していると判断したら、パルス異常判定処理部618はエレベータ通常運転処理110の指令信号652を発生し、通常運転を実行する(ステップS703)。そして乗りかごがかご内呼びまたは乗り場呼びにより指定された階床に到着したか否かを判断する(ステップS704)。到達していれば、今回の呼びに対応する制御を終了する。指定された階床に達していなければステップS701に戻り、ステップS701からステップS704を実行する。ステップ701において、乗りかご10が上昇も下降もせず静止している場合には、所定時間間隔でステップS701を実行する。
ステップS702でパルス発生器31の出力が異常であると判断された場合には、ステップS705に進み、エレベータ停止処理部612はエレベータ停止処理120の指令信号654を発生し、乗りかご10の上昇または下降を一旦停止する(ステップS705)。それとともに、距離計数比較部613を起動させ、調速機21に取り付けたパルス発生器22a、22bの出力を相互に比較させる(ステップS706)。
距離計数部616、617の出力の誤差δがδ≦200mmであれば、パルス発生器22a、22bを正常とみなし、救出運転許可指令部645を作動させ、救出運転130のための指令信号645を発生させ、救出運転を開始する(ステップS707)。距離計数部616、617の出力の誤差δに、δ>200mmの乖離があれば、エレベータ制止指令部615を作動させ、エレベータ制止処理140のための指令信号646を発生させ、エレベータ100を停止させる(ステップS710)。
エレベータ100の救出運転130が開始されたら、乗りかご1を最寄り階まで移動させる。乗りかご10が最寄り階に達したか否かをエレベータ制御装置60は判断する(ステップS708)。乗りかご10が最寄り階に達していなければ、ステップS706に戻り、ステップS706〜ステップS708を繰り返す。乗りかご10が最寄り階に達していたら、乗りかご10を静止させ、開閉扉を開閉して乗客を降ろし、エレベータ100を制止する(S709)。
本実施例によれば、従来型のエレベータの調速機側に2個のパルス発生器または2個の信号(A相、B相をともに2個有する)を出力可能なエンコーダを取り付けるだけで、救出運転が可能になる。すなわち、駆動モータのシーブ軸に取り付けたパルス発生器に故障が発生して、乗りかごの位置が不定となり非常停止した場合においても、調速機のプーリー軸に取り付けた2つのパルス発生器の信号を用いて救出運転が可能である。これにより、乗りかご内に乗客が閉じ込められる事故を低減することができる。また、調速機に取り付けたパルス発生器の故障の場合には、パルス発生器の双方がともに故障した場合を除き、救出運転を実行できるので、速やかに乗りかご内から乗客を降ろすことができる。これにより、保守員を待つ必要がなく、乗客の負担を軽減できる。また、隣り合う乗りかごがない場合や乗りかごを単独設置した場合であっても、救出運転により保守員の到着を待つことなく、乗客を乗りかごから降ろすことが可能になる。
また、上記いずれの実施例においても、2台以上のエレベータを持たない建物においてもエレベータ1台を単独に救出運転することができる。さらに、救出運転を実行することにより、遠隔診断等によりエレベータの健全性を判断することも可能になり、保守員が異常エレベータに駆け付けることが必ずしも求められなくなる。それとともに、乗りかご内に乗客が閉じ込められる事態を回避または乗客を乗りかご内に閉じ込める時間を大幅に低減できる。
なお上記各実施例においては、エレベータが非常制止した場合に、エレベータ保守員が手動で救出作業できるようにすることが望ましい。この場合、乗客が乗りかご内に長時間留め置かれるのを極力回避できる。また、救出運転を実行して最寄りの階に乗りかごを到達させたときに、乗客が乗り場と乗りかごの床段差で躓かないように、エレベータ制御装置は各階床に設けた被検出板等を利用して床合わせ補正するようにすることが望ましい。
さらに、調速機や駆動モータに設けたパルス発生器の故障を安全コントローラが検出した場合に、インターネット回線や専用回線等を介してエレベータ保守会社へ自動で連絡する手段を設けることが望ましい。それとともに、乗り場側のボタン操作を無効とすることが望ましい。これにより、乗りかごから乗客をさらに迅速に救出することが可能になるとともに、乗り場側の待ち人へエレベータを利用できないことを迅速に知らせることが可能になる。また、乗りかごにアナウンス装置を設け、救出運転中はアナウンス装置から乗客に乗り場側へ降りるようアナウンスし、乗りかごが最寄りの階に到達した後で、乗りかご内の開閉ボタンを利用可能な状態に制御することが望ましい。これにより、誤った開閉ボタン操作により、乗りかご移動中の開閉扉の誤動作等を防止できる。
10…乗りかご、20…調速機ロープ、21…調速機、22a、22b…パルス発生器(検出装置)、30…駆動モータ、31…パルス発生器、32…ブレーキ、40…カウンターウェート、50…主ロープ、60…エレベータ制御装置、61…エレベータコントローラ、62…安全コントローラ、70…位置検出装置、71…位置検出装置信号、75…被検出板、80…緩衝器、90…昇降路、100…エレベータ、110…エレベータ通常運転処理、120…エレベータ停止処理、130…救出運転、140…エレベータ制止処理、221…パルス発生器信号、222…パルス発生器信号、311…パルス発生器信号、611…距離計数部、612…エレベータ停止司令部、613…距離計数比較部、614…救出運転許可指令部、615…エレベータ制止司令部、616…距離計数部、617…距離計数部、621…距離計数部、622…距離計数部、623…距離計数比較部、δ…距離誤差。

Claims (7)

  1. 乗りかごと、この乗りかごを駆動する駆動モータに取り付けた第1のパルス発生器と、調速機と、この調速機に取り付けた第2のパルス発生器と、前記第1のパルス発生器の出力信号及び第2のパルス発生器の出力信号が入力されるエレベータ制御装置とを備えたエレベータにおいて、
    前記第2のパルス発生器は2個設けられており、前記エレベータ制御装置は、前記第1のパルス発生器の出力信号を距離に変換する第1の距離計数部及び第2のパルス発生器の出力信号を距離に変換する2個の第2の距離計数部と、各前記第2の距離計数部の出力が入力され前記第2のパルス発生器の出力誤差を算出する距離計数比較部と、異常時にこのエレベータに停止指令を発生するエレベータ停止指令部とを有し、前記エレベータ制御装置は、前記距離計数比較部の出力する前記第2のパルス発生器同士の出力誤差が第1の所定値以下であればエレベータ通常運転処理または前記エレベータ停止指令部を用いてエレベータを一旦停止させた後前記乗りかごを最寄りの階へ移動して乗客を降ろす救出運転を指令することを特徴とするエレベータ。
  2. 前記エレベータ制御装置はエレベータの運転を制御するエレベータコントローラと、エレベータの異常発生時用の安全コントローラを有し、前記第1の距離計数部および前記経理計数比較部は前記エレベータコントローラに備えられており、2個の前記第2の距離計数部は前記安全コントローラに備えられており、前記エレベータコントローラは救出運転を指令する救出運転許可指令部とエレベータ制止処理を指令するエレベータ制止指令部とを有し、前記安全コントローラは前記第2の距離計数部同士の出力を比較する距離計数値比較部を有し、前記エレベータ制御装置は前記距離計数値比較部の出力が第2の所定値以下であれば通常運転を指令し、前記距離計数値比較部の出力が第2の所定値を超えていれば前記エレベータ停止指令部からエレベータの一旦停止を指令するとともに、前記第1の距離計数部の出力と前記第2の距離計数部の出力を前記距離計数比較部で比較させ、その出力が前記第1の所定値以下であれば前記救出運転許可指令部から救出運転を指令し、前記距離計数比較部の出力が前記第1の所定値を超えていれば、前記エレベータ制止指令部からエレベータ制止処理を指令することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
  3. 前記エレベータ制御装置は、前記第1の距離計数部の出力が入力され前記第1のパルス発生器の異常を判定するパルス異常判定処理部と、救出運転を指令する救出運転許可指令部とエレベータ制止処理を指令するエレベータ制止指令部とを有し、前記パルス異常判定処理部がパルス異常を判定したら前記エレベータ停止指令部からエレベータ停止処理を指令するとともに、前記距離計数比較部で前記第2の距離計数部の出力同士を比較させ、その出力が前記第1の所定値以下であれば前記救出運転許可指令部から救出運転を指令させ、前記距離計数比較部の出力が前記第1の所定値を超えていたら前記エレベータ制止指令部からエレベータ制止処理を指令させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
  4. 前記乗りかごが救出運転にて最寄りの階に到達する際に乗客が乗り場と前記乗りかごの床段差で躓かないように床合わせ補正手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータ。
  5. 前記安全コントローラがパルス発生器の故障を検出した際は、エレベータ保守会社へ自動で連絡する手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
  6. 前記かご内にアナウンス装置を設け、救出運転中はこのアナウンス装置から乗客に乗り場側へ降りるようアナウンスすることを可能にし、前記乗りかごが最寄りの階に到達したときに前記乗りかご内の開閉ボタンを利用可能状態にする手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータ。
  7. 前記第1及び第2のパルス発生器の少なくともいずれかが故障したときに乗り場側のボタンが無効となる手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータ。
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