JP2019026833A - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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真友子 山下
吉田 和徳
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和徳 吉田
貴士 渡邉
Takashi Watanabe
貴士 渡邉
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Abstract

【課題】貯蔵安定性が高く、基材への密着性が高く、かつ紫外線硬化性に優れていて表面硬度が高い硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とする。【解決手段】チオール基(a)を有する化合物(A)と、最高被占軌道(HOMO)エネルギーが−8.0〜−5.5eVである化合物(B)と、エチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)とを含有する硬化性樹脂組成物であって、(C)は前記の化合物(A)と化合物(B)を除くモノマーである硬化性樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は硬化性樹脂組成物に関する。詳しくは、ハードコート膜に適した高い硬度及び貯蔵安定性に優れた硬化性樹脂組成物に関する。
従来より、ハードコート塗膜は、プラスチック表面への粉塵付着の防止や、摩擦による擦り傷を防止する目的で用いられている。特に、プラスチックフィルムを表面に設けた液晶ディスプレイ(LCD)やタッチパネルディスプレイ等の表示装置やLCD中の偏光子、光ファイバ、光ディスク等の電子素子では、パネル前面の表面保護をはじめ、プラスチック表面への密着性、高画質を得るための高透明性などを兼ね備えたものが望まれている。近年、スマートフォンやタブレット端末など指やペンで画面に直接触れて操作するタッチパネルを備えた電子機器の普及が著しく、このような機器ではタッチパネル表面のさらなる硬度向上が求められている。
ハードコート塗膜は、活性エネルギー線硬化型組成物を活性エネルギー線照射で硬化させることにより得ることが出来、硬化させる際のエネルギー源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)が使用されている。
近年、LED光源を用いた紫外線照射装置でも硬化できる光硬化性樹脂の需要が高まっている。LED光源を用いた紫外線照射装置は、低消費電力であり、かつオゾンの発生も少ない。よってランニングコスト及び自然環境への影響を小さくできる利点がある。
一般にハードコート塗膜の表面保護機能を高める方策として、硬度の高い無機フィラーを活性エネルギー線硬化性組成物中へ配合し、ハードコート層とする手法が知られている(例えば特許文献1)。しかしながらこの組成物ではLED光源での硬化性が悪く、硬度が不十分である。
また、硬化性を向上させる樹脂組成物としては、アクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーとチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物を5〜50重量%含有するハードコート塗液が知られている(例えば特許文献2)。しかしながらこの組成物では貯蔵安定性が悪いために室温で保管中に増粘してしまうという問題がある。
特開2009−90523号公報 特開2012−197383号公報
LED光源は単一波長であることから、広域波長の紫外線を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線ランプ光源と比較して紫外線エネルギーの総量が小さく、光重合開始剤から生成するラジカルの発生量が少ない為、従来の硬化性組成物では硬化性が低下し、硬化後の樹脂強度が低下してしまうという問題があった。
本発明は、貯蔵安定性が高く、基材への密着性が高く、かつLED光源のようなエネルギーの総量が小さい紫外線の場合でも硬化性に優れていて表面硬度が高い硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、チオール基(a)を有する化合物(A)と、最高被占軌道(HOMO)エネルギーが−8.0〜−5.5eVである化合物(B)と、エチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)とを含有する硬化性樹脂組成物であって、(C)は前記の化合物(A)と化合物(B)を除くモノマーである硬化性樹脂組成物及びこの硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜である。
本発明の硬化性組成物は、貯蔵安定性が高く、かつLED光源による硬化性に優れている。さらに、基材への密着性が高く、表面硬度が高い。
本発明の硬化性組成物は、チオール基(a)を含有する化合物(A)と、最高被占軌道(HOMO)が−8.0〜−5.5eVである化合物(B)と、エチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)とを含有することを特徴とする。但し、モノマー(C)は化合物(A)と化合物(B)を除く。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を意味する。
以下に、本発明の成分であるチオール基(a)を含有する化合物(A)と、最高被占軌道(HOMO)が−8.0〜−5.5eVである化合物(B)と、エチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)を順に説明する。
本発明のチオール基(a)を有する化合物(A)は、エチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)の二重結合に付加することにより高分子鎖あるいは三次元網目構造が形成される。
一般的な(メタ)アクリレートモノマーのみで構成された硬化性樹脂の場合は酸素による硬化阻害を受けやすいが、チオール基(a)を有する化合物(A)を含む硬化性樹脂の場合は酸素による硬化阻害を受けないため良好な硬化性となる。
また、チオール基(a)を有する化合物(A)を含む硬化性樹脂は、硬化反応がラジカル連鎖による段階的逐次反応であり、硬化とともに経時的に生成ポリマーの分子量が増大していくため、硬化初期から高分子量体を与える(メタ)アクリレートモノマーのみで構成された硬化性樹脂と比べて、硬化による収縮が小さくなる性質があることから、良好な基材密着性となる。
チオール基(a)を1個有する化合物(A1)としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
チオール基(a)を2個有する化合物(A2)としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3−ジメルカプトサクシン酸、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、3,4−ジメルカプトトルエン、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、2,4,6−トリメチル−1,3−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオジフェノール、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3−メルカプトプロポキシフェニルプロパン)及び1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。
チオール基(a)を3個有する化合物(A3)としては、例えば、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5−トリチオシアヌル酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート及びトリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
チオール基(a)を4個有する化合物(A4)としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)及びペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
チオール基(a)を5個以上有する化合物(A5)としては、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートモノマーと(メタ)アクリレートモノマーのラジカル重合反応した後、メルカプト有機酸とのエステル化反応させて得られる化合物等が挙げられる。
化合物(A)のうち、硬化性と貯蔵安定性の観点から、チオール基(a)を2個以上有する化合物が好ましく、特に好ましくはチオール基(a)を3個有する化合物、最も好ましくはトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)である。
本発明の硬化性樹脂組成物のチオール基の含有量は硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、好ましくは0.1〜5.0ミリモル/gであり、更に好ましくは0.4〜4.5ミリモル/gであり、最も好ましくは0.5〜4.2ミリモル/gである。0.1ミリモル/g以上だと硬化性が良好であり、5.0ミリモル/g以下だと貯蔵安定性が良好である。
なお、チオール基の含有量は特開昭62−187731号公報記載の方法に従って定量できる。
硬化性樹脂組成物中の化合物(A)の含有量は、硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、硬化性及び貯蔵安定性の観点から、好ましくは3〜40重量%であり、更に好ましくは3〜35重量%、最も好ましくは3〜33重量%である。
本発明の最高被占軌道(HOMO)エネルギーが−8.0〜−5.5eVである化合物(B)を含有することにより、チオール基(a)を持つ化合物(A)とエチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)の反応を抑制することができる。
化合物(B)のHOMEエネルギーが−8.0〜−5.5eVであることで、チオール基(a)を持つ化合物(A)と相互作用し、化合物(A)とエチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)との重合を阻害することができ、貯蔵安定性を高めることができる。また光硬化の際には光重合開始剤から発生する大量のラジカルにより、化合物(B)と化合物(C)の相互作用があっても化合物(A)と化合物(C)の重合が進み、硬化することができる。このように化合物(B)は光硬化を阻害することなく、貯蔵安定性を高めることができる。
ここでの「最高被占軌道」とは電子が充填されている最も高い軌道を示すエネルギー準位であって、以下の方法で、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを算出することができる。
第一原理分子軌道計算によるHOMOエネルギーは、計算する分子に対して力場計算により配座解析を行い、半経験的分子軌道法であるAM1により構造最適化ののち、基底関数を6−31G(d)としてHartree−Fock法で計算される値である。計算を行うプログラムとしては、Gaussian03(ガウシアン社)が用いられる〔参考文献:「電子構造論による化学の探求(第二版)James B. Foresman, AEleen Frisch共著、田崎健三訳、ガウシアン社」;1998年3月Gaussian, inc.発行〕。
以下に、Gaussian03を使用してこれらのエネルギーを計算する具体的な操作手順を示す。
(1)Gauss View画面にて構造式を作成したのち、Calculate画面にて、Job Type「Energy, Method「Ground State, Mechanics, UFF」、Charge「0」、Spin「Singlet」をそれぞれ選択または入力し、作成した構造式について分子構造の最適化を行う。
(2)次に、同じCalculate画面にてJob Type「Optimization」, Method「Ground State、Semi−empirical、Default Spin、AM1」、Charge「0」、Spin「Singlet」をそれぞれ選択または入力し、さらに最適化を行う。
(3)続いて、JobType「Optimization」、Method「Ground State、Hartree−Fock、Restricted」、Basis Set「6−31G, d」、Charge「0」、Spin「Singlet」、Solvation「None」、Additional Keywords「Pop=Reg」をそれぞれ選択し、最適化された分子構造における真空時の分子軌道エネルギーを計算する。
(4)得られた計算結果のうち、電子に占有されている最もエネルギーの高い分子軌道(最高被占軌道)に対応する数値がHOMOエネルギーである。
HOMOエネルギーが−8.0〜−5.5eVである化合物(B)としては、2−アクリロイルエチルアシッドフォスフェートとビス[2−(アクリロイオキシ)エチル]フォスフェートの混合物(−7.7eV)、2−メタクリロイロキシエチルカプロラクタム変性アシッドホスフェート(−7.1eV)、エチドロン酸(−6.6eV)及びフェニルホスホン酸(−7.1eV)等が挙げられ、好ましくはリン酸エステル化合物である。
化合物(B)のHOMOエネルギーは、−8.0eVより小さいと硬化性が悪くなり、−5.5eVより大きいと貯蔵安定性が悪くなる。
なお、本発明において、化合物を2種以上併用する場合は、それぞれのHOMOエネルギーの、重量の混合比率による相加平均値を採用する。
硬化性組成物中の化合物(B)の含有量は、貯蔵安定性と硬度の観点から、好ましくは0.1〜10重量%であり、更に好ましくは0.1〜8重量%、最も好ましくは0.1〜7重量%である。
本発明の必須成分であるエチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)のエチレン性重合性基(c)としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基及びマレイミド基等が挙げられる。
これらのうち好ましいエチレン性重合性基(c)は、(メタ)アクリロイル基、アリル基及びビニル基であり、特に好ましくは、(メタ)アクリロイル基である。
本発明のこのエチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)としては、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー(C1)、アリル基を有するアリルモノマー(C2)、ビニル基を有するビニルモノマー(C3)、マレイミド基を有するモノマー(C4)が挙げられる。但し、このモノマー(C)は化合物(A)と化合物(B)を除く。
これらのうち好ましくは(C1)、(C2)、(C3)であり、特に好ましくは(C1)である。
(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー(C1)としては、公知の(メタ)アクリレートであれば、特に限定されずに用いられ、1官能(メタ)アクリレート(C11)、2官能(メタ)アクリレート(C12)、3官能(メタ)アクリレート(C13)及び4〜6官能(メタ)アクリレート(C14)等が挙げられる。
例えば2官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基の数が2個であることを意味し、以下同様の記載法を用いる。
1官能(メタ)アクリレート(C11)としては、炭素数2〜30のアルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−、m−又はp−フェニルフェノールのモノ(メタ)アクリレート、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びアクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
(C11)のうち、硬化性の観点から好ましくはアクリロイルモルフォリン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボロニルアクリレートである。
2官能(メタ)アクリレート(C12)としては、炭素数2〜30の多価(好ましくは2〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物、炭素数2〜30の多価(好ましくは2〜8価)アルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物、OH基含有両末端エポキシアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びフルオレンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(C12)のうち、硬度の観点から好ましくは炭素数4〜10の2価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物であり、更に好ましくは1,6−ヘキサンジオールジアクリレートである。
3官能(メタ)アクリレート(C13)としては、炭素数3〜30の3価以上(好ましくは3〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばグリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート]、及び炭素数3〜30の3価以上(好ましくは3〜8価)のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
4〜6官能(メタ)アクリレート(C14)としては、炭素数5〜30の4価以上(好ましくは4〜8価)アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート]及び炭素数5〜30の4価以上(好ましくは4〜8価)のアルコールのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜4)1〜30モル付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
(C13)及び(C14)のうち、硬度の観点から好ましくはトリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレートである。
アリル基を有するアリルモノマー(C2)としては、アリルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメリット酸トリアリル及びピロメリット酸テトラアリル等が挙げられる。
(C2)のうち、硬度の観点から好ましくはトリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸テトラアリル及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。
ビニル基を有するビニルモノマー(C3)としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル及びジエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
(C3)のうち、硬度の観点から好ましくはN−ビニルカプロラクタム、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルである。
マレイミド基を有するモノマー(C4)としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド及びN−ベンジルマレイミド等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物中のエチレン性重合性基を有するモノマー(C)の含有量は、硬度の観点から10〜92重量%であり、好ましくは20〜92重量%であり、更に好ましくは30〜92重量%である。
硬化性樹脂組成物は、硬化性を向上させる目的でラジカル重合開始剤(D)をさらに含有させることが好ましい。
ラジカル重合開始剤(D)としては、フォスフィンオキサイド化合物(D1)、ベンゾイルホルメート化合物(D2)、チオキサントン化合物(D3)、オキシムエステル化合物(D4)、ヒドロキシベンゾイル化合物(D5)、ベンゾフェノン化合物(D6)、ケタール化合物(D7)、1,3−α−アミノアルキルフェノン化合物(D8)などが挙げられる。
フォスフィンオキサイド化合物(D1)としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート化合物(D2)としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン化合物(D3)としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル化合物(D4)としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]及びエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1(O−アセチルオキシム))等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル化合物(D5)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物(D6)としては、ベンゾフェノン等が挙げられる。
ケタール化合物(D7)としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
1,3−α−アミノアルキルフェノン化合物(D8)としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロ−ブタノン−1及び2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤(D)のうち、硬化性及び硬化物の着色の観点から好ましくは、フォスフィンオキサイド化合物(D1)及び1,3−α−アミノアルキルフェノン化合物(D8)である。
硬化性組成物中のラジカル重合開始剤(D)の含有量は、硬化性及び透明性の観点から、好ましくは5〜20重量%であり、更に好ましくは5〜15重量%である。
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により種々の添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、可塑剤、有機溶剤、分散剤、消泡剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、スリップ性向上剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)を照射して硬化させることにより、硬化膜を有するハードコート被覆物を得ることができる。
塗工に際しては、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター、インクジェット塗布等]が使用できる。
塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、0.5〜300μmである。乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μmであり、硬度の観点から好ましい下限は1μmである。
上記の透明基材としては、ガラス基材やメチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース及びポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
本発明の組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。
乾燥温度は、10〜200℃、塗膜の平滑性及び外観の観点から好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃である。
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましくは紫外線と電子線である。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を紫外線により硬化させる場合は、LED光源紫外線照射装置[例えば、LED光源紫外線照射装置「FJ100 150×20 365、phoseon TECHNOLOGY(株)製]]が使用できる。
なお、LED光源は、その他の紫外線光源と比較して、低消費電力でオゾンの発生も少なくランニングコストが低く環境負荷が少ない。
紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは50〜10,000mJ/cm、更に好ましくは200〜5,000mJ/cmである。
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、LED光源の他に、広域波長の紫外線を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線照射装置ももちろん適用でき、性能を発揮する。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
実施例1〜15及び比較例1〜4
表1及び表2に示す配合組成(重量部)で均一に混合して、実施例及び比較例の各樹脂組成物を得た。
Figure 2019026833
Figure 2019026833
なお、表1中で使用した原料は以下の通りである。
(A−1):1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン[商品名:カレンズ MT BD1、昭和電工(株)製]
(A−2):ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート) [商品名:カレンズ MT PE1、昭和電工(株)製]
(A−3):ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)[商品名:PEMP、SC有機化学(株)製]
(A−4):トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)[商品名:TMMP、SC有機化学(株)製]
(B−1):2−アクリロイルエチルアシッドフォスフェートとビス[2−(アクリロイオキシ)エチル]フォスフェートの混合物[商品名:KAYARAD PM−2、日本化薬(株)製、2種のフォスフェートのHOMOの重量による相加平均:−7.7eV]
(B−2):2−メタクリロイロキシエチルカプロラクタム変性アシッドホスフェート[商品名:KAYARAD PM−21、日本化薬(株)製、HOMO:−7.1eV]
(B−3):リン酸エステル化合物[商品名:CR−733S、大八化学工業(株)製、HOMO:−6.6eV]
(B−4):エチドロン酸[HOMO:−7.7eV]
(B−5):フェニルホスホン酸[HOMO:−7.1eV]
(B’−1):ヒドロキノン[HOMO:−5.4eV]
(B’−2):ビニルスルホン酸[HOMO:−8.1eV]
(C−1):アクリロイルモルフォリン[商品名:ACMO、KJケミカルズ(株)製]
(C−2):イソボロニルアクリレート[商品名:IBXA、大阪有機化学工業(株)製]
(C−3):1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[商品名:ビスコート#230、大阪有機化学工業(株)製]
(C−4):ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名:ネオマーEA−300、三洋化成工業(株)製]
(C−5):トリメリット酸トリアリル[商品名:TRIAM−705、和光純薬工業(株)製]
(C−6):ペンタエリスリトールトリアリルエーテル[商品名:ネオアリルP−30、(株)大阪ソーダ製]
(C−7):トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名:NKエステル A−TMMT、新中村化学工業(株)製]
(C−8):ジペンタエリスリトール(ペンタ/ヘキサ)アクリレート[商品名:ネオマー DA−600、三洋化成工業(株)製]
(C−9):ピロメリット酸テトラアリル[商品名:TRIAM−805、富士フィルム和光純薬(株)製]
(C−10):N−ビニルカプロラクタム[商品名:NVC、BASF社製]
(C−11):1,4−ブタンジオールジビニルエーテル[商品名:BDVE、日本カーバイド工業(株)製]
(C−12):シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル[商品名:CHDVE、日本カーバイド工業(株)製]
(D−1):2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド[商品名:イルガキュアTPO、BASF(株)社製、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤]
(D−2):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド[商品名:イルガキュア819、BASF社製、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤]
(D−3):2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン[商品名:イルガキュア379、BASF社製、アルキルフェノン系ラジカル重合開始剤]
スリップ性向上剤:アルキレンオキサイド変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK−302」、ビックケミー・ジャパン(株)製]
実施例1〜15及び比較例1〜4で作製した硬化性樹脂組成物のLED光源照射による硬化性、鉛筆硬度、硬化物の全光線透過率、密着性及び貯蔵安定性の評価を行った。
<LED光源による硬化性の評価>
硬化性組成物をガラス基板にスピンコーターで、硬化後の膜厚が10μmになるように塗布し、LED光源紫外線照射装置[型番「FJ100 150×20 385、phoseon TECHNOLOGY(株)製、照射波長 385nm]により、紫外線を照射強度500mW/cmで2秒照射、積算露光量1000mJ/cmで露光し、硬化性組成物を硬化させた。
硬化物の表面を指で触ってべた付きがあるかどうか確認し、下記の判定基準で評価した。
○:べた付きが全く無い
×:べた付きが残っている
<鉛筆硬度の測定>
硬化性の評価で得られた硬化物をJIS K−5400に準じ、鉛筆硬度を測定した。
なお、ハードコート用途に使用する場合、この試料作成条件での鉛筆硬度は一般には2H以上であることが必要である。
<全光線透過率の評価>
硬化性の評価で得られた硬化物を、JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−garddual」、BYK gardner(株)製]を用いて全光線透過率(%)を測定した。
なお、この試料作成条件で作成し、一般的なハードコート用途に使用する場合、全光線透過率は88%以上であることが必要である。
<密着性の評価>
JIS K5600−5−6に準拠して行った。
前記で得られた硬化物を、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、1mm幅にカッターナイフで切込みを入れて碁盤目(5×5個)を作成した。
碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付け、90度剥離を行い、ガラス基材からの硬化物の剥離状態を目視で観察した。25マス中の剥離せずに密着しているマス目の個数を数えて評価した。
<貯蔵安定性の評価>
作成した硬化性樹脂組成物をガラス容器に密栓し、40℃環境下で貯蔵し、30日間経過後に取り出して、粘度を測定し、初期の粘度との変化率を算出し、下記の判定基準で評価した。
変化率(%)=(30日後粘度−初期粘度)/初期粘度×100
○:10%未満
×:10%以上
本発明の実施例1〜15の硬化性樹脂組成物は、表1に示す通り、LED光源による硬化性、鉛筆硬度、全光線透過率、密着性及び貯蔵安定性のすべての点で優れている。
一方、チオール基を有する化合物(A)を含有しない比較例1は硬化性、鉛筆硬度及び密着性が不十分である。また、最高被占軌道(HOMO)が−8.0〜−5.5eVである化合物(B)を含有しない比較例2、HOMOが−5.4eVの化合物(B’−1)を含有する比較例3、HOMOが−8.1eVの化合物(B’−2)を含有する比較例4はいずれも貯蔵安定性が不十分である。
本発明の硬化性組成物は硬化性が高く、かつ貯蔵安定性も高く、基材への密着性、硬化性、硬度に優れているため、ハードコート膜、インクジェット用UV樹脂として好適に使用できる。
本発明により、高感度化や特性向上が期待できる用途の例としては、重合あるいは架橋反応を利用した成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合レジン、印刷インキ、インクジェット用UV樹脂、印刷ニス、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルター用レジスト、ブラックマトリクス用レジスト、液晶用フォトスペーサー、リアプロジェクション用スクリーン材料、光ファイバー、プラズマディスプレー用リブ材、ドライフィルムレジスト、プリント基板用レジスト、ソルダーレジスト、半導体用フォトレジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト、エッチング用レジスト、マイクロレンズアレー、絶縁材、ホログラム材料、光学スイッチ、導波路用材料、オーバーコート剤、粉末コーティング、接着剤、粘着剤、離型剤、光記録媒体、粘接着剤、剥離コート剤、マイクロカプセルを用いた画像記録材料のための組成物、各種デバイスなどが挙げられる。

Claims (8)

  1. チオール基(a)を有する化合物(A)と、最高被占軌道(HOMO)エネルギーが−8.0〜−5.5eVである化合物(B)と、エチレン性重合性基(c)を有するモノマー(C)とを含有する硬化性樹脂組成物であって、(C)は前記の化合物(A)と化合物(B)を除くモノマーである硬化性樹脂組成物。
  2. エチレン性重合性基(c)が(メタ)アクリロイル基又はアリル基である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 化合物(B)がリン酸エステル化合物である請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 化合物(A)の含有量が硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて3〜40重量%である請求項1〜3のいずれか記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 化合物(B)の含有量が硬化性樹脂組成物の合計重量に基づいて0.1〜10重量%含有する請求項1〜4のいずれか記載の硬化性樹脂組成物。
  6. 硬化性樹脂組成物中のチオール基の含有量が硬化性樹脂組成物の重量に基づいて、0.1〜5.0ミリモル/gである請求項1〜5のいずれか記載の硬化性樹脂組成物。
  7. さらに、ラジカル重合開始剤(D)を含有する請求項1〜6のいずれか記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜。
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