JP2019026666A - グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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智紀 高瀬
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Abstract

【課題】発色性および耐傷付き性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、該グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供する。【解決手段】体積平均粒子径が0.15〜0.30μmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたグラフト共重合体であって、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)をパルスNMRにより30℃で測定したときに、スピン−スピン緩和時間が最も長い成分(α)とスピン−スピン緩和時間が2番目に長い成分(β)との、下記式(1)で表されるスピン−スピン緩和時間の平均値(T2ave.)が270μs以下である、グラフト共重合体。1/T2ave.={AM(X)/T2(X)+AM(Y)/T2(Y)}/{AM(X)+AM(Y)} ・・・(1)【選択図】なし

Description

本発明は、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
近年、自動車分野などにおける外装樹脂部品等の成形品は、製造コスト削減の観点から、表面を塗装処理せずに(塗装レスで)使用できることが求められている。そのため、従来は塗装が担ってきた良好な発色性を有する成形外観を、塗装処理しなくても発揮することが求められている。また、特に自動車用の外装樹脂部品の場合、走行時や洗車時、汚れやワックスの拭き取り時などにおいて、傷が付きにくい、または傷が目立ちにくいという耐傷付き性も必要である。
外装樹脂部品に付く傷には大きく分けて2種類あり、走行時の飛び石や砂埃など、硬く尖ったものにより付く傷と、軍手やガーゼ、洗車タオルなどで拭いた場合に付く擦り傷とがある。これらに対する耐傷付き性は、前者については、主に表面硬度が影響しているために、鉛筆硬度などで評価されることが多く、一般的にはF以上の硬度が求められる。一方、後者については、伸びや摺動性など複合的な物性が影響していることから、実際に軍手やガーゼ、洗車タオルなどで擦った場合の外観を評価することが多い。
このように、塗装処理しない外装樹脂部品の材料として用いられる樹脂には多くの要求特性があり、その全てを満たすことは困難であった。
例えば、発色性が良好な材料としては、ポリカーボネート樹脂やメタクリル酸エステル樹脂が知られている。しかし、ポリカーボネート樹脂を成形した成形品は、表面硬度が低く、硬く尖ったものによる傷が非常に付きやすい。一方、メタクリル酸エステル樹脂を成形した成形品は、表面硬度が高く、硬く尖ったものなどによる傷は付きにくいが、軍手やガーゼ、洗車タオルなどによる擦り傷は付きやすい。
このような事情を背景とし、発色性および耐傷付き性の高い成形品を得ることができる樹脂材料として、例えば、下記のものが提案されている。
(1)特定のゲル含有量を有する架橋オレフィン樹脂に、スチレン等の芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物を重合したグラフト共重合体(特許文献1)。
(2)特定のゲル含有量を有する架橋エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に芳香族ビニルとシアン化ビニルとを含む単量体混合物をグラフト重合したグラフト共重合体と、ガラス転移温度が135℃以下であるメタクリル酸エステル樹脂と、メタクリル酸メチルを95質量部以上含む単量体成分を重合したメタクリル酸からなる熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)。
特開2014−156547号公報 特開2014−80525号公報
しかしながら、特許文献1では硬質樹脂を構成する単量体としてスチレン等の芳香族ビニル系単量体を用いており、特許文献1に記載のグラフト共重合体を樹脂材料として用いた成形品は、発色性が必ずしも充分ではなかった。
特許文献2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品においては、タオルによる擦り傷が付きやすく、耐傷付き性に劣るため、用途に制限があった。
本発明は、発色性および耐傷付き性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、該グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 体積平均粒子径が0.15〜0.30μmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたグラフト共重合体であって、
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)をパルスNMRにより30℃で測定したときに、スピン−スピン緩和時間が異なる成分が複数検出され、前記複数の成分のうち、スピン−スピン緩和時間が最も長い成分(α)とスピン−スピン緩和時間が2番目に長い成分(β)との、下記式(1)で表されるスピン−スピン緩和時間の平均値(T2ave.)が270μs以下である、グラフト共重合体。
1/T2ave.={AM(α)/T2(α)+AM(β)/T2(β)}/{AM(α)+AM(β)} ・・・(1)
(式(1)中、「AM(α)」はエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、成分(α)が有する水素原子の割合[mol%]であり、「T2(α)」は成分(α)のスピン−スピン緩和時間[μs]であり、「AM(β)」はエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、成分(β)が有する水素原子の割合[mol%]であり、「T2(β)」は成分(β)のスピン−スピン緩和時間[μs]である。)
[2] [1]に記載のグラフト共重合体と、
メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m2)の重合体であるメタクリル酸エステル樹脂と、
を含む、熱可塑性樹脂組成物。
[3] [2]に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた、成形品。
本発明のグラフト共重合は、発色性および耐傷付き性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、発色性および耐傷付き性に優れる成形品が得られる。
本発明の成形品は、発色性および耐傷付き性に優れる。
洗車タオル摩耗による耐傷付き性試験を説明する概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「明度(L)」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
「グラフト共重合体」
本発明のグラフト共重合体(以下、「グラフト共重合体(A)」ともいう。)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたものである。換言すれば、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)部分と、ビニル系単量体成分(m1)の重合体であるビニル系重合体部分とからなる。
なお、グラフト共重合体(A)においては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下にビニル系単量体成分(m1)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体成分(m1)が重合したビニル系重合体としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合したものと、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合していないものとが存在する。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(A)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、グラフト共重合体(A)は「エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたもの」と規定することがより適切とされる。
グラフト共重合体(A)は、典型的には、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含む水性分散体中にてビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたものである。
以下、各成分について説明する。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(a)>
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとを公知の重合方法によって共重合することによって得られた、エチレン単位とα−オレフィン単位とを含む共重合体である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、非共役ジエン単位をさらに含んでもよい。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−イコセン、1−ドコセン等が挙げられる。中でも、得られる成形品の耐衝撃性が優れることから、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。中でも、得られる成形品の耐傷付き性がより優れるとともに、耐衝撃性にも優れることから、ジシクロペンタジエンおよび/または5−エチリデン−2−ノルボルネンが、非共役ジエン単位として好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のエチレン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、45〜80質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン単位とα−オレフィン単位の合計の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、90〜100質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。エチレン単位とα−オレフィン単位の合計の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)をパルスNMRで測定すると、時間に対して磁化が減衰する自由誘導減衰(FID)曲線(緩和曲線)が得られる。この自由誘導減衰曲線から求められる緩和時間がスピン−スピン緩和時間(T2)である。T2は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の分子運動性を反映している。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)をパルスNMRで測定すると、T2が異なる成分が複数検出される。具体的には、T2が最も長い成分(α)と、T2が2番目に長い成分(β)と、T2が3番目に長い成分(γ)と、T2が3番目に長い成分(δ)の4成分が検出される。なお、成分(δ)はT2が最も短い成分に相当し、成分(γ)はT2が2番目に短い成分に相当する。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)をパルスNMRにより測定して得られる自由誘導減衰曲線は、成分(α)、成分(β)、成分(γ)および成分(δ)に由来する4つの自由誘導減衰曲線が重なったものであり、これを非線形最小二乗法で解析することで4成分に由来する4つの自由誘導減衰曲線に分離することができる。
ここで、成分(α)および成分(β)のT2は、下記式(2)で表されるパルスNMRの自由誘導減衰曲線により求められる。成分(γ)および成分(δ)のT2は、下記式(3)で表されるパルスNMRの自由誘導減衰曲線により求められる。
M=Mexp(−t/T2) ・・・(2)
M=Mexp{−1/2(t/T2)} ・・・(3)
(式(2)、(3)中、「M」は磁場の強さであり、「M」はt=0時の磁場の強さであり、「t」は時間である。)
分離した各成分に由来する自由誘導減衰曲線の初期値(M)は水素原子数に比例する。よって、各成分のMより、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、各成分が有する水素原子の割合が求められる。
本発明においては、下記式(1)で表される、成分(α)と成分(β)とのT2の平均値(T2ave.)が270μs以下であり、250μs以下が好ましい。T2ave.が270μs以下であれば、成形品の発色性および耐傷付き性が向上する。特にT2ave.が250μs以下であれば、成形品の耐傷付き性がより向上する。T2ave.は、100μs以上が好ましく、150μs以上がより好ましく、200μs以上がさらに好ましい。T2ave.が100μs以上であれば、成形品の発色性を良好に維持しつつ、耐傷付き性がさらに向上する。本発明においては、T2ave.が小さくなるほど成形品の発色性が良好になる傾向にある。
1/T2ave.={AM(α)/T2(α)+AM(β)/T2(β)}/{AM(α)+AM(β)} ・・・(1)
(式(1)中、「AM(α)」はエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、成分(α)が有する水素原子の割合[mol%]であり、「T2(α)」は成分(α)のスピン−スピン緩和時間[μs]であり、「AM(β)」はエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、成分(β)が有する水素原子の割合[mol%]であり、「T2(β)」は成分(β)のスピン−スピン緩和時間[μs]である。)
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)は、3,000〜15,000が好ましく、6,000〜10,000がより好ましい。質量平均分子量(Mw)が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性および発色性がより優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の分子量分布(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.0〜5.0が好ましく、1.9〜4.0がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性がより優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径は、成形品の耐傷付き性と発色性のバランスが優れる点から、0.15〜0.30μmであり、0.18〜0.26μmが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の製造方法は、限定されない。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、通常、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いてエチレンとα−オレフィンとを、またはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとを共重合することによって製造される。
メタロセン触媒としては、遷移金属(ジルコニウム、チタン、ハフニウム等)にシクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子等が配位したメタロセン錯体と、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
チーグラー・ナッタ触媒としては、遷移金属(チタン、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム等)のハロゲン化物と有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
重合方法としては、前記触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを、またはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとを溶媒中で共重合させる方法が挙げられる。溶媒としては、炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)が挙げられる。炭化水素溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、原料のα−オレフィンを溶媒として用いてもよい。重合の際、水素等の分子量調節剤を用いてもよい。
エチレン、α−オレフィン、非共役ジエンそれぞれの供給量、分子量調節剤の種類や量、触媒の種類や量、反応温度、圧力等の反応条件を変更することによって、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のエチレン単位の含有率、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を調整することができる。
グラフト共重合体(A)の製造において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、そのままの状態で用いてもよいし、水性媒体に分散させた状態で用いてもよい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、架橋構造を有することが好ましい。エチレン・α−オレフィン系共重合体(a)が架橋構造を有することで、成形品の耐衝撃性がより向上する。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のT2ave.が270μs以下になりやすい。
なお、本明細書において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を水性媒体に分散させたものを「オレフィン樹脂水性分散体(x)」ともいう。また、架橋構造を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を特に「架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)」ともいう。また、架橋構造を有さないエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を特に「未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)」ともいう。
(オレフィン樹脂水性分散体(x))
オレフィン樹脂水性分散体(x)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を水性媒体に分散させたものである。
オレフィン樹脂水性分散体(x)は、その他の成分として、乳化剤、酸変性オレフィン重合体等を含有してもよい。
水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤(以下、「水混和性有機溶剤」ともいう。)、およびこれらの混合物が挙げられる。水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類等が挙げられる。水性媒体としては、水のみを用いるか、または水と水混和性有機溶剤との混合物を用いることが好ましい。
乳化剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(x)中の乳化剤の含有量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、オレフィン樹脂水性分散体(x)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の粒子径制御が容易である点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して1〜8質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体としては、質量平均分子量が1,000〜5,000のオレフィン重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を、官能基を有する化合物(不飽和カルボン酸化合物等)で変性したものが挙げられる。不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミド等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(x)中の酸変性オレフィン重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。酸変性オレフィン重合体の添加量が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性がより優れるとともに、耐衝撃性にも優れる。
オレフィン樹脂水性分散体(x)の調製方法は、限定されない。調製方法としては、例えば、(M1)公知の溶融混練手段(ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等)でエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法;(M2)エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)に溶解し、水性媒体に添加して乳化させた後、十分に撹拌し、炭化水素溶媒を留去する方法等が挙げられる。オレフィン樹脂水性分散体(x)の調製の際に、その他の成分として酸変性オレフィン重合体、乳化剤等を添加してもよい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。例えば、前記(M1)の方法において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合し、溶融混練する方法、前記(M2)の方法において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを炭化水素溶媒に溶解する方法等が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。この場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合する工程が、それらの混合物を溶融混練する工程を兼ねてもよい。
乳化剤の添加方法は、限定されない。例えば、酸変性オレフィン重合体の添加方法と同様の方法が挙げられる。また、前記(M1)または(M2)の方法において、水性媒体に乳化剤を添加する方法、前記(M2)の方法において、炭化水素溶媒に乳化剤を溶解する方法等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(x)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径は、成形品の耐傷付き性と発色性のバランスが優れる点から、0.15〜0.30μmであり、0.18〜0.26μmが好ましい。
体積平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(x)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)および後述する熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
オレフィン樹脂水性分散体(x)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を制御する方法としては、乳化剤の種類または使用量、酸変性オレフィン重合体の種類または含有量、混練時に加えるせん断力、温度条件等を調整する方法が挙げられる。
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a))
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)またはこれが水性媒体に分散したオレフィン樹脂水性分散体(x)を架橋処理することにより得られる。架橋処理の方法としては、(M3)有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して架橋処理を行う方法;(M4)多官能性化合物を添加して架橋処理を行う方法;(M5)電離性放射線によって架橋処理を行う方法等が挙げられる。中でも、成形品の耐衝撃性、発色性の点から(M3)、(M4)の方法が好ましく、(M3)の方法がより好ましい。
(M3)の方法としては、具体的には、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)またはこれが水性媒体に分散したオレフィン樹脂水性分散体(x)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、加熱する方法等が挙げられる。
例えば、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、溶融混練し、粉砕すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の粉体が得られる。未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が水性媒体に分散したオレフィン樹脂水性分散体(x)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して架橋処理すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の水性分散体が得られる。
有機過酸化物および多官能性化合物の添加量、加熱温度、加熱時間等を調整することによって、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のT2ave.を調整できる。例えば、有機過酸化物の添加量を増やすと架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のT2ave.は小さくなる傾向にある。
加熱温度は、有機過酸化物の種類によって異なる。加熱温度は、有機過酸化物の10時間半減期温度の−5℃〜+30℃が好ましい。
加熱時間は、3〜15時間が好ましい。
有機過酸化物は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に架橋構造を形成させるためのものである。有機過酸化物としては、例えば、ペルオキシエステル化合物、ペルオキシケタール化合物、ジアルキルペルオキシド化合物等が挙げられる。有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物としては、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を調整しやすい点から、ジアルキルペルオキシド化合物が特に好ましい。
ジアルキルペルオキシド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
有機過酸化物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のT2ave.を270μs以下に調整しやすいことから、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましく、0.2〜6.5質量部がさらに好ましく、0.6〜6質量部が特に好ましい。
多官能性化合物は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のT2ave.を調整するために、単独で用いられるもの、または必要に応じて有機過酸化物と併用されるものである。
多官能性化合物としては、ジビニルベンゼン、1,7−オクタジエンメタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。多官能性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性化合物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のT2ave.を270μs以下に調整しやすいことから、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を架橋処理して架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を得る場合、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に酸変性オレフィン重合体が添加されてもよい。
酸変性オレフィン重合体は、オレフィン樹脂水性分散体(x)の説明で挙げたものと同様である。酸変性オレフィン重合体の添加量は、オレフィン樹脂水性分散体(x)中の酸変性オレフィン重合体の含有量と同様に、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合した後に架橋処理をしてもよいし、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とをそれぞれ架橋処理した後に混合してもよい。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(x)を有機過酸化物によって架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径は、オレフィン樹脂水性分散体(x)中の未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径に対して変化はない。
また、グラフト共重合体(A)が架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の水性分散体を用いて得られたものである場合、この水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が、グラフト共重合体(A)および後述する熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<ビニル系単量体成分(m1)>
ビニル系単量体成分(m1)は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含む。ビニル系単量体成分(m1)は、必要に応じて、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体(他のビニル系単量体)を含んでいてもよい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル系単量体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体成分(m1)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体を含むことが好ましく、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との組み合わせが好ましい。
芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との組み合わせの場合、芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)の総質量に対して、60〜85質量%が好ましく、62〜80質量%がより好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性がより優れるとともに、耐衝撃性にも優れる。
一方、シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)の総質量に対して、15〜40質量%が好ましく、20〜38質量%がより好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性がより優れるとともに、耐衝撃性にも優れる。
<物性>
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、成形品の耐衝撃性、発色性のバランスの点から、20〜100質量%が好ましい。
グラフト率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
<グラフト共重合体(A)の製造方法>
グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られる。
グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)40〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)20〜60質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)とビニル系単量体成分(m1)の合計は100質量%である。)を重合して得られたものであることが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の割合が前記範囲内であれば、成形品の発色性がさらに向上するとともに、耐衝撃性にも優れる。
ビニル系単量体成分(m1)の重合方法は、限定されない。重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるグラフト共重合体(A)の製造方法としては、例えば、ビニル系単量体成分(m1)に有機過酸化物を混合したものを、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の水性分散体に対して連続的に添加する方法が挙げられる。
有機過酸化物は、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤として用いるのが好ましい。
重合の際に、連鎖移動剤、乳化剤等を状況に応じて用いてもよい。
レドックス系開始剤としては、重合反応条件を高温下にする必要がなく、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の劣化等を避け、成形品の耐衝撃性の低下を回避できる点から、有機過酸化物と硫酸第一鉄−キレート剤−還元剤を組み合わせたものが好ましい。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、t-ブチルヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類(オクチルメルカプタン、n−またはt−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−またはt−テトラデシルメルカプタン等)、アリル化合物(アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸、これらのナトリウム塩等)、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、分子量を調整することが容易な点から、メルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル系単量体成分(m1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル系単量体成分(m1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
乳化重合法によって得られるグラフト共重合体(A)は、水性媒体中に分散した状態である。
グラフト共重合体(A)を含む水性分散体からグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、例えば、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したグラフト共重合体(A)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(A)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明のグラフト共重合体(A)にあっては、パルスNMR法により30℃で測定して求められる前記T2ave.が270μs以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたものである。よって、本発明のグラフト共重合体(A)は、塗装処理しなくても発色性に優れ、しかも耐傷付き性にも優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(A)と、メタクリル酸エステル樹脂(B)とを含む。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂や各種添加剤等の任意成分を含んでいてもよい。
以下、各成分について説明する。
<グラフト共重合体(A)>
熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(A)は、上述した本発明のグラフト共重合体(A)であるため、その説明を省略する。
グラフト共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<メタクリル酸エステル樹脂(B)>
メタクリル酸エステル樹脂(B)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m2)の重合体である。換言すれば、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m2)を重合して得られた重合体である。
(ビニル系単量体成分(m2))
ビニル系単量体成分(m2)は、少なくともメタクリル酸エステルを必須成分として含む。
ビニル系単量体成分(m2)は、必要に応じて、メタクリル酸エステル以外の他のビニル系単量体をさらに含んでもよい。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ペンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。中でも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種が好ましい。メタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル系単量体としては、メタクリル酸エステルと共重合可能であれば特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、マレイミド系化合物、アクリル酸エステル等が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体としては、ビニル系単量体成分(m1)の説明において先に例示した芳香族ビニル系単量体が挙げられる。中でも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル系単量体としては、ビニル系単量体成分(m1)の説明において先に例示したシアン化ビニル系単量体が挙げられる。シアン化ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系化合物としては、例えば、N−アルキルマレイミド(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミドなど)、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミドなど)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミドなど)等が挙げられる。中でも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。マレイミド系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。中でも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、アクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体成分(m2)において、メタクリル酸エステルの含有率は、成形品の発色性がより優れるとともに、耐候性にも優れる点から、ビニル系単量体成分(m2)の総質量に対して、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。換言すれば、メタクリル酸エステル樹脂(B)中のメタクリル酸エステル由来の単位の含有率は、成形品の耐傷付き性、発色性がさらに優れる点から、メタクリル酸エステル樹脂(B)を構成する全単位の合計質量(100質量%)に対し、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
(メタクリル酸エステル樹脂(B)の製造方法)
メタクリル酸エステル樹脂(B)は、ビニル系単量体成分(m2)を重合することによって得られる。
ビニル系単量体成分(m2)の重合方法は、限定されない。重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(B)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体成分(m2)と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、メタクリル酸エステル樹脂(B)を含む水性分散体を得て、この水性分散体から析出法によってメタクリル酸エステル樹脂(B)を回収する方法が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
析出法としては、水性分散体からグラフト共重合体(A)を回収するときと同様の方法を採用できる。
懸濁重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(B)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体成分(m2)と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、メタクリル酸エステル樹脂(B)を含むスラリーを得て、このスラリーを脱水、乾燥してメタクリル酸エステル樹脂(B)を回収する方法が挙げられる。
懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
メタクリル酸エステル樹脂(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<任意成分>
(他の熱可塑性樹脂)
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。
(各種添加剤)
各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、染料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。
<各成分の含有量>
グラフト共重合体(A)の含有量は、グラフト共重合体(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)との合計質量に対して、5〜40質量%が好ましく、8〜36質量%がより好ましく、20〜35質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体(A)の含有量が前記範囲内であれば、成形品の発色性と耐傷付き性のバランスがさらに優れるとともに、耐衝撃性や耐候性にも優れる。
メタクリル酸エステル樹脂(B)の含有量は、グラフト共重合体(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)との合計質量に対して、60〜95質量%が好ましく、64〜92質量%がより好ましく、65〜80質量%がより好ましい。メタクリル酸エステル樹脂(B)の含有量が前記範囲内であれば、成形品の発色性と耐傷付き性のバランスがさらに優れるとともに、耐衝撃性や耐候性にも優れる。
グラフト共重合体(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)との含有量の合計は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)、必要に応じて任意成分を混合することにより得られる。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、上述した本発明のグラフト共重合体(A)と、メタクリル酸エステル樹脂(B)とを含むので、塗装処理しなくても発色性に優れ、しかも耐傷付き性にも優れる成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐傷付き性に優れる成形品を得ることができるため、車両内外装部品での使用も可能である。
「成形品」
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
本発明の成形品は、塗装処理しなくても発色性に優れ、しかも耐傷付き性にも優れる。
成形品の用途としては、車輌内装・外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車輌内装・外装部品が好適である。
以下、具体的に実施例を示す。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下に記載の「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工株式会社製、「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)を測定した。
<酸価の測定方法>
JIS K 2501に準拠して酸価を測定した。
<体積平均粒子径の測定方法>
マイクロトラック(日機装株式会社製、「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて体積平均粒子径(MV)を測定した。
なお、水性媒体に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)および熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<スピン−スピン緩和時間(T2)の測定方法>
パルス核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、「パルスNMR型式MU25」)にて、測定温度:30℃、核種:プロトン、共鳴周波数:25MHz、パルス系列:ソリッドエコー法、90度パルス幅:2.0μsec、パルス間隔:8.0μsec、パルスシーケンスの繰り返し時間:4.0sec、積算回数:16回、核種:プロトンとして測定を行い、自由誘導減衰(FID)曲線を得た。
得られた自由誘導減衰曲線を非線形最小二乗法で解析し、前記成分(α)、成分(β)、成分(γ)および成分(δ)に由来する4つの自由誘導減衰曲線に分離した。
成分(α)および成分(β)のT2を前記式(2)で表されるパルスNMRの自由誘導減衰曲線により求め、成分(α)と成分(β)とのT2の平均値(T2ave.)を前記式(1)より求めた。
<グラフト率の測定方法>
グラフト共重合体(A)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機株式会社製、「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(4)からグラフト率を算出した。なお、式(4)におけるYは、グラフト共重合体(A)のアセトン不溶成分の質量(g)、Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(A)の全質量(g)、ゴム分率は、グラフト共重合体(A)のエチレン・α−オレフィン系水性分散体(a)の固形分の含有割合である。
グラフト率(%)={(Y−X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100 ・・・(4)
<物性評価用熱可塑性樹脂組成物の作成1>
熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて射出成形し、縦100mm、横100mm、厚さ3mmの黒着色板(成形品(Ma1))を得た。
<発色性の評価>
成形品(Ma1)の明度Lを、分光測色計(コニカミノルタオプティプス株式会社製、「CM−3500d」)を用い、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好である。
<耐傷付き性の評価>
(タオル摩耗)
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、洗車タオル(株式会社ジョイフル製、「洗車用タオル3p」)12を被せた。成形品(Ma1)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、洗車タオル12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma1)13の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させ、摩耗試験を行った。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度Lを、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mc)」とする。傷を付けた成形品(Mc)の耐傷付き性(傷の目立ちやすさ)の判定指標ΔLを下記式(5)から算出した。ΔL(mc−ma)の絶対値が大きいほど耐傷付き性に劣り、傷が目立ちやすい。
ΔL(mc−ma)=L(mc)−L(ma) ・・・(5)
(60°光沢保持率)
デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製、「UGV−5D」)を用い、入射角60°にて、前記摩耗試験前の成形品(Ma1)の60°光沢値および前記摩耗試験後の成形品(Ma1)の60°光沢値を測定し、60°光沢保持率を下記式(6)から算出した。
60°光沢保持率=(摩耗試験後の60°光沢値/摩耗試験前の60°光沢値)×100 ・・・(6)
(20°光沢保持率)
デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製、「UGV−5D」)を用い、入射角20°にて、前記摩耗試験前の成形品(Ma1)の20°光沢値および前記摩耗試験後の成形品(Ma1)の20°光沢値を測定し、20°光沢保持率を下記式(7)から算出した。
20°光沢保持率=(摩耗試験後の20°光沢値/摩耗試験前の20°光沢値)×100 ・・・(7)
(鉛筆硬度)
JIS K5600に準拠し、750gの荷重において、成形品(Ma1)の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が硬いほど、硬いもので引っかいた場合の耐傷付き性が良好となる。
「オレフィン樹脂水性分散体成分(x)」
<オレフィン樹脂水性分散体成分(x−1)の調製>
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)として、エチレン・プロピレン・非共役ジエン3元共重合体(三井化学株式会社製、「タフマーTP3180」、エチレン単位の含有率:70質量%)を使用した。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100部と、酸変性オレフィン重合体として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製、「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mgKOH/g)20部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム5部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(株式会社池貝製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、該2軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.60部とイオン交換水3.6部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、160℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を2軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、2軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40質量%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体(x−1)を得た。オレフィン樹脂水性分散体(x−1)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を表1に示す。
<オレフィン樹脂水性分散体成分(x−2)、(x−3)の調製>
表1に示すように、乳化する際の水酸化カリウムの添加部数、イオン交換水の添加部数を変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(x−1)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(x−2)、(x−3)を得た。
各オレフィン樹脂水性分散体(x−2)、(x−3)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を表1に示す。
Figure 2019026666
「架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)」
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の調製>
オレフィン樹脂水性分散体(x−1)(未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の固形分として100部)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、有機過酸化物としてt−ブチルクミルペルオキシド5.1部、多官能性化合物としジビニルベンゼン1.5部を添加し、130℃で3時間反応させて、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の水性分散体を調製した。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の体積平均粒子径とT2ave.を表2に示す。
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)〜(a−10)の調製>
表2、3に示すようにオレフィン樹脂水性分散体(x)の種類とt−ブチルクミルペルオキシドの添加量を変更した以外は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)と同様にして、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)〜(a−10)の水性分散体を得た。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)〜(a−10)体積平均粒子径とT2ave.を表2、3に示す。
なお、表2、3に示すオレフィン樹脂水性分散体(x)の添加量(部)は固形分量である。
Figure 2019026666
Figure 2019026666
「グラフト共重合体(A)」
<グラフト共重合体(A−1)の調製>
撹拌機付きステンレス重合槽に、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の水性分散体(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の固形分として70部)を入れ、これに、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、さらに硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部およびフルクトース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。次いで、スチレン23.4部とアクリロニトリル6.6部とクメンハイドロペルオキシド0.6部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保ち乳化重合を行い、体積平均粒子径0.20μmのグラフト共重合体(A−1)を含む水性分散体を得た。グラフト共重合体(A−1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(A−1)を得た。グラフト共重合体(A−1)のグラフト率を測定したところ29%であった。また、グラフト共重合体(A−1)を用いて製造した熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)の体積平均粒子径を電子顕微鏡により確認したところ、0.20μmであった。
<グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)の調製>
表4、5に示すように架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の種類を変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様にして、グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)を得た。グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)のグラフト率を表4、5に示す。
Figure 2019026666
Figure 2019026666
「メタクリル酸エステル樹脂(B)」
メタクリル酸エステル樹脂(B−1)として、三菱ケミカル株式会社製の「アクリペットVH5」を使用した。
メタクリル酸エステル樹脂(B−2)として、株式会社日本触媒製の「ポリイミレックス PML203」を使用した。
なお、「アクリペットVH5」および「ポリイミレックス PML203」をは、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分の重合体である。
「実施例1」
グラフト共重合体(A−1)26部、メタクリル酸エステル樹脂(B−1)74部、カーボンブラック0.8部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(株式会社池貝製、「PCM30」)でシリンダー温度240℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化して各種成形品を成形し、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表6に示す。
「実施例2〜14」
表6、7に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化して各種成形品を成形し、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表6、7に示す。
「実施例15」
グラフト共重合体(A−1)26部、メタクリル酸エステル樹脂(B−1)45部、メタクリル酸エステル樹脂(B−2)29部、カーボンブラック0.8部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(株式会社池貝製、「PCM30」)でシリンダー温度240℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化して各種成形品を成形し、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表8に示す。
「実施例16〜28」
表8、9に示す配合処方に変更した以外は、実施例15と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化して各種成形品を成形し、発色性、耐傷付き性を評価した。結果を表8、9に示す。
Figure 2019026666
Figure 2019026666
Figure 2019026666
Figure 2019026666
実施例1〜28で得られた成形品は、発色性、耐傷付き性が優れていた。
従って、本発明のグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を用いると、塗装処理しなくても発色性に優れ、しかも耐傷付き性にも優れた成形品が得られ、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等の用途等に適用できることがわかる。
本発明のグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等として有用である。
10 治具
11 先端部
12 洗車タオル
13 成形品(Ma1)

Claims (3)

  1. 体積平均粒子径が0.15〜0.30μmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたグラフト共重合体であって、
    前記エチレン・α−オレフィン共重合体(a)をパルスNMRにより30℃で測定したときに、スピン−スピン緩和時間が異なる成分が複数検出され、前記複数の成分のうち、スピン−スピン緩和時間が最も長い成分(α)とスピン−スピン緩和時間が2番目に長い成分(β)との、下記式(1)で表されるスピン−スピン緩和時間の平均値(T2ave.)が270μs以下である、グラフト共重合体。
    1/T2ave.={AM(α)/T2(α)+AM(β)/T2(β)}/{AM(α)+AM(β)} ・・・(1)
    (式(1)中、「AM(α)」はエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、成分(α)が有する水素原子の割合[mol%]であり、「T2(α)」は成分(α)のスピン−スピン緩和時間[μs]であり、「AM(β)」はエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が有する水素原子の総数を100mol%としたときの、成分(β)が有する水素原子の割合[mol%]であり、「T2(β)」は成分(β)のスピン−スピン緩和時間[μs]である。)
  2. 請求項1に記載のグラフト共重合体と、
    メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m2)の重合体であるメタクリル酸エステル樹脂と、
    を含む、熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた、成形品。
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