JP2016044221A - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】樹脂成分100質量部中に、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したグラフト重合体(A)4.9〜25質量部と、メタクリル系樹脂(B)25〜75質量部と、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)20〜70質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物。さらに、芳香族ポリカーボネート(D)30質量部以下を含んでいてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
近年、自動車分野などにおける樹脂部品は、製造コスト削減の観点から塗装せず(塗装レス)に使用できることが求められている。そのため、従来の耐衝撃性等の機械物性以外にも求められる特性(要求特性)が幅広くなってきている。
その要求特性として、例えば、塗装レスであることから、従来塗装が担ってきた良好な発色性を有する成形外観、およびその成形外観が直射日光にさらされても変色が少ない耐候性、直射日光によって高温となっても変形しない耐熱性などが必要とされる。
さらには、自動車用の外装樹脂部品の場合、走行時や洗車時、汚れやワックスの拭き取り時などにおいて、傷が付かない、または、傷が目立たないという耐傷付き性も必要とされる。この耐傷付き性には、走行時の飛び石や、洗車時に車体に付着した砂などの硬く尖ったものと洗車ブラシとの摩擦により付く傷に対する耐傷付き性と、汚れやワックスの拭き取り時に使用するウェスや樹脂部品の組み付け時に用いる軍手など柔らかいもので付く擦り傷に対する耐傷付き性との2種類がある。一般的に、前者の硬く尖ったものにより付く傷に対する耐傷付き性は鉛筆硬度で評価されることが多く、後者の擦り傷に対する耐傷付き性は目視で評価されることが多い。
このように、塗装レスの外装樹脂部品に用いる樹脂には多くの要求特性があり、そのすべてを満たすことは困難である。例えば、発色性が良好な材料として、アクリル系樹脂や芳香族ポリカーボネートが挙げられる。しかしながら、メタクリル酸エステル樹脂は表面硬度が高く、硬く尖ったものへの耐傷付き性は良好であるが、擦り傷に弱く、また、耐衝撃性、耐熱性に劣る。一方、芳香族ポリカーボネートは表面硬度が低く、耐傷付き性が非常に悪い。また、耐候性が良好とは言えず、時間経過とともに黄色変色する問題がある。
このような事情を背景として、例えば特許文献1には、アクリル系樹脂をベースとするコア−シェル型衝撃改質剤を用い、これを特定の低分子量メタクリル樹脂および特定の高分子量メタクリル樹脂に添加する方法が記載されている。また、例えば特許文献2には、N−置換マレイミドを含む耐熱メタクリル酸エステル樹脂に、AESグラフト重合体を添加する方法が開示されている。
また、芳香族ポリカーボネートとアクリル系樹脂をブレンドする方法も行われているが、ポリカーボネートとアクリル系樹脂は完全相溶せず、また、屈折率の差が大きいことから真珠光沢が発生し、外観不良となる。
特表2008−528712号公報 特開2004−352842号公報
本発明は、耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
なお、本明細書において、単に「耐傷付き性」と言った場合、硬く尖ったものによる傷と、軍手やガーゼなどの柔らかいものによる擦り傷との両方に対する傷付きにくさを意味する。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したグラフト重合体(A)と、メタクリル系樹脂(B)と、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)とを所定の割合で配合することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 樹脂成分100質量部中に、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したグラフト重合体(A)4.9〜25質量部と、メタクリル系樹脂(B)20〜75質量部と、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)20〜70質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物。
[2] 樹脂成分100質量部中に、さらに、芳香族ポリカーボネート(D)30質量部以下を含む[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 単量体(b)が芳香族ビニル系単量体70〜82質量%とシアン化ビニル系単量体18〜30質量%とを含む[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] ゴム質重合体(a)が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、及びエチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種である[1]ないし[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が80〜500nmであり、ゴム質重合体(a)のゲル含有量が40〜99質量%であり、グラフト重合体(A)のグラフト率が23〜100%であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] グラフト重合体(A)は、ゴム質重合体(a)40〜80質量%と、単量体(b)20〜60質量%とをグラフト重合してなることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7] イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含み、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%含むことを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2016044221
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品が提供される。本発明の熱可塑性樹脂組成物がさらに芳香族ポリカーボネートを含む場合には、耐衝撃性をより高くすることができるが、一般的に芳香族ポリカーボネートとアクリル系樹脂とを含むと、その相溶性の悪さのために真珠光沢が発生して外観不良となるにもかかわらず、本発明においてはその真珠光沢の発生が抑制され、外観に優れた成形品を得ることができる。
実施例における耐傷付き性(ガーゼ摩耗)の評価方法の説明図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称す場合がある。)は、樹脂組成物中の樹脂成分として、その樹脂成分100質量部に対して、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したグラフト重合体(A)を4.9〜25質量部と、メタクリル系樹脂(B)を20〜75質量部と、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(以下「イソソルバイド系ポリカーボネート」と称す場合がある。)(C)を20〜70質量部含むことを特徴とする。
なお、本発明において、樹脂成分とは、本発明の樹脂組成物が、グラフト重合体(A)とメタクリル系樹脂(B)とイソソルバイド系ポリカーボネート(C)とを含む場合は、これらグラフト重合体(A)、メタクリル系樹脂(B)、及びイソソルバイド系ポリカーボネート(C)の合計をさし、本発明の樹脂組成物が、さらに芳香族ポリカーボネート(D)を含む場合は、グラフト重合体(A)、メタクリル系樹脂(B)、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)、及び芳香族ポリカーボネート(D)の合計をさす。また、本発明の樹脂組成物が、上記以外の他の樹脂を含む場合は、他の樹脂も含めて樹脂成分と称す。
[グラフト重合体(A)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト重合体(A)は、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したものである。
グラフト重合体(A)を形成するゴム質重合体(a)としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、天然ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体等のオレフィン系ゴム、ポリオルガノシロキサン等のシリコン系ゴム等が挙げられ、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を混合して使用できる。また、ゴム質重合体(a)の構造が複合形態をとっているものでもよく、例えば、ポリブタジエンにアクリル酸エステルを重合したものや、ポリオルガノシロキサンにアクリル酸エステルを重合したものでもよい。これらゴム質重合体(a)の中でも、得られる樹脂組成物の耐候性に優れることから、アクリル系ゴム、シリコン系ゴム、オレフィン系ゴムが好ましく、さらには、得られる樹脂組成物の成形品に擦り傷が付きにくいことから、オレフィン系ゴムが好ましく、例えばエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムがより好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどや、これらの共重合体などの1種以上を使用できる。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン成分からなる単位を1種以上含むエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体であってもよい。
ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径は、80〜500nmであることが好ましく、80〜400nmであることがより好ましく、80〜260nmであることがさらに好ましい。ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が上記範囲であると、得られる樹脂組成物や成形品の耐衝撃性、発色性が良好となる。
ゴム質重合体(a)の粒子径を制御する方法としては、特に制限はなく公知のものが使用できる。特に、ゴム質重合体(a)の乳化ラテックスの製造時に用いる乳化剤の種類または使用量、混練時に加える剪断力、温度条件、水分率等を調整する方法などが容易に粒子径を制御できることから好ましく、乳化剤の使用量を増量する、混練時に加える剪断力を強くする、温度を高くする、水分率を高くすることでゴム質重合体(a)の粒子径が小さくなる傾向がある。
ゴム質重合体(a)の乳化ラテックスの製造方法としては特に制限がなく公知の方法を使用できる。例えば、水媒体中での乳化重合方法、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの公知の溶融混練手段でゴム質重合体(a)と乳化剤とを溶融混練し、機械的剪断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法;ゴム質重合体(a)をペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に乳化剤とともに溶解させ、水性媒体に添加して乳化させた後、十分に攪拌し、炭化水素溶媒を留去する方法;などが挙げられる。粒子径を制御しやすい点から、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコン系ゴムおよびこれらの複合形態をとるゴム等では水媒体中での乳化重合方法が好ましく、シリコン系ゴム、オレフィン系ゴムおよびこれらの複合形態をとるゴム等ではニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの公知の溶融混練手段でゴム質重合体(a)と乳化剤とを溶融混練し、機械的剪断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法が好ましい。また、溶融混練時には、混練性の観点から、乳化剤とともに、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどのワックス成分を用いてもよい。
ゴム質重合体(a)を乳化する際に用いることができる乳化剤としては、通常に用いられるものであればよく、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の公知のものが挙げられる。
ゴム質重合体(a)の架橋の有無は特に制限はされないが、耐衝撃性、発色性に優れることから架橋されていることが好ましく、ゴム質重合体(a)のゲル含有量は40〜99質量%であることが好ましく、50〜88質量%であることがより好ましい。
なお、ゴム質重合体(a)のゲル含有量はゴム質重合体(a)の架橋度を示し、具体的には、秤量したゴム質重合体(a)を適当な溶剤に40時間かけて溶解させ、次いで、200メッシュ金網で分取し、金網に残った不溶分を乾燥させたのち秤量し、溶剤に溶解させる前のゴム質重合体(a)に対する乾燥させた不溶分の割合(質量%)で求められる。ゴム質重合体(a)の溶解に用いる溶剤としては、例えば、ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムではトルエンを、アクリル系ゴムではアセトンを用いると測定しやすい。
ゴム質重合体(a)を架橋する方法としては特に制限はなく公知のものを使用できる。例えば、ジエン系ゴムの乳化重合時に用いる有機過酸化物や連鎖移動剤の添加量で調整する方法、ジエン系ゴムやアクリル系ゴムの重合時に多官能性化合物と共重合する方法、ジエン系ゴム、シリコン系ゴム、オレフィン系ゴムに有機過酸化物と必要に応じて多官能性化合物を加えて加熱する方法などが架橋度を調整しやすいことから好ましい。
有機過酸化物は、特に制限はないが、例えば、パーオキシエステル化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物などが挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
パーオキシエステル化合物の具体例としては、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエイト、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエイト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ヘキシルパーオキシピバレイト、t−ブチルパーオキシピバレイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ヘキシルパーオキシ−2−ヘキシルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−ヘキシルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシイソブチレイト、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネイト、t−ヘキシルパーオキシベンゾエイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテイト、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエイト、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレイトなどが挙げられる。
パーオキシケタール化合物の具体例としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレイト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。
多官能性化合物は、分子内に2〜4のラジカル重合性部位を有するものであれば特に制限はなく、例えばジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
有機過酸化物、多官能性化合物の添加量は、ゴム質重合体(a)のゲル含有量を40〜99質量%の範囲に調整しやすく、耐衝撃性、発色性を発現させやすい点から、有機過酸化物はゴム質重合体(a)100質量部に対して0.01〜5質量部、多官能性化合物はゴム質重合体(a)100質量部に対して10質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
ゴム質重合体(a)に、単量体(b)をグラフト重合することにより、グラフト重合体(A)が得られる。単量体(b)は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
メタクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
単量体(b)は、上記の芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体およびメタクリル酸エステル系単量体の他に、これらと共重合可能な他の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド類等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。これらのうち、耐熱性等の点から、好ましくはアクリル酸メチルである。
単量体(b)として芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を用いる場合、単量体(b)100質量%中、芳香族ビニル系単量体を70〜82質量%、シアン化ビニル系単量体を18〜30質量%とすることが好ましい。単量体(b)中の芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性がより向上する。
単量体(b)としてメタクリル酸エステル系単量体を用いる場合には、溶融混練時の分解を抑制できることから、単量体(b)100質量%中に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、および上記の共重合可能な他の単量体のうちの1種以上を0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは1〜5質量%含むことが好ましい。
グラフト重合体(A)は、ゴム質重合体(a)の存在下に単量体(b)をグラフト重合させることで得られる。グラフト重合時のゴム質重合体(a)の割合は、40〜80質量%であり、単量体(b)の割合は20〜60質量%であることが好ましい。(ただし、ゴム質重合体(a)と単量体(b)の合計を100質量%とする。)。一般的に、ゴム質重合体(a)の割合が上記範囲内であれば、グラフト重合体(A)の生産性が良好であるとともに、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性が向上する。
グラフト重合体(A)は、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性が良好となることから、グラフト率が23〜100%であることが好ましく、より好ましくは25〜35%である。
本明細書におけるグラフト率(G)は、下記式より求められる。
G=100(P−E)/E
P:アセトン不溶分の質量(グラフト重合体(A)または樹脂組成物をメタノールで洗浄した後、アセトンで抽出し、遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分に分離し、得られたアセトン不溶分を真空乾燥した後の質量(g))
E:グラフト重合体(A)の製造に用いたゴム質重合体(a)の質量(g)
グラフト重合体(A)は、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法により製造される。粒子径を制御しやすく、容易に重合できる点では、乳化重合法が好ましい。
本発明の樹脂組成物におけるグラフト重合体(A)の配合量は、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性、耐傷付き性が優れることから、樹脂成分100質量部において4.9〜25質量部であり、好ましくは8〜13質量部である。グラフト重合体(A)が上記下限より少ないと、耐衝撃性、柔らかいもので付く擦り傷に対する耐傷付き性が劣る傾向にあり、上記上限より多いと、成形外観、硬いもので付く引掻き傷に対する耐傷付き性が劣る傾向にある。
[メタクリル系樹脂(B)]
本発明におけるメタクリル系樹脂(B)とは、メタクリル酸エステル系単量体とその他の共重合可能な単量体とを含むメタクリル系単量体混合物を重合したものである。
メタクリル系単量体混合物におけるメタクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
メタクリル系単量体混合物中のメタクリル酸エステル系単量体の含有量は、50〜99.5質量%、好ましくは60〜99.5質量%である。メタクリル酸エステル系単量体の含有量が50質量%未満では得られる樹脂組成物やその成形品の発色性が劣り、さらには、硬く尖ったものによる傷が付きやすくなる。一方、メタクリル酸エステル系単量体の含有量が99.5質量%を超えると溶融混練時や成形時にメタクリル系樹脂(B)の分解が発生しやすく好ましくない。
メタクリル系単量体混合物におけるその他の共重合可能な単量体としては、グラフト重合体(A)の製造時に用いる単量体(b)として例示した芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、マレイミド類や無水マレイン酸などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
メタクリル系樹脂(B)の製造方法としては特に制限されず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合などの公知の方法が挙げられる。得られる樹脂組成物や成形品の耐熱性の点からは、懸濁重合、塊状重合が好ましい。
メタクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、50,000〜300,000であることが好ましく、80,000〜200,000であることがより好ましい。メタクリル系樹脂(B)の重量平均分子量が上記範囲内にあると、得られる樹脂組成物や成形品の耐衝撃性、成形外観が良好となる傾向にある。
本発明の樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(B)の配合量は、得られる樹脂組成物の発色性に優れ、硬く尖ったものによる傷が付きにくくなることから、樹脂成分100質量部において20〜75質量部であり、好ましくは40〜60質量部である。メタクリル系樹脂(B)が上記下限よりも少ないと、耐衝撃性、硬いもので付く引掻き傷に対する耐傷付き性が劣る傾向にあり、上記上限よりも多いと、耐傷付き性、柔らかいもので付く擦り傷に対する耐傷付き性が劣る傾向にある。
[イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)]
本発明で使用するイソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)(以下「イソソルバイド系ポリカーボネート(C)」と称す場合がある。)とは、好ましくは、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート、又は下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含むポリカーボネートである。
Figure 2016044221
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形性、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
一方、シクロヘキサンジメタノールとしては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、入手の容易さより1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
本発明に使用するイソソルバイド系ポリカーボネート(C)は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物やシクロヘキサンジメタノール以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物;トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール等の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
イソソルバイド系ポリカーボネート(C)が、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含む場合、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位の割合は70モル%以下、例えば5〜70モル%であることが好ましい。イソソルバイド系ポリカーボネート(C)がシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含むことにより着色が生じにくく、高分子量化、衝撃強度の向上、ガラス転移温度の向上という効果が奏されるが、この割合が多過ぎると、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことによるこのような効果が損なわれ、好ましくない。
特に、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)は、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、特に60〜40モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%、特に40〜60モル%含むことが、着色が生じにくく、高分子量化、衝撃強度の向上、ガラス転移温度の向上の点で好ましい。
また、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)がその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む場合、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。イソソルバイド系ポリカーボネート(C)がその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、耐衝撃性、真珠光沢の改良効果が向上するが、この割合が過度に多いと耐熱性が低下する。また、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)がその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位として芳香族ビスフェノール類を含む場合は、耐熱性が向上するが、この割合が過度に多いと耐光性が悪化する。
本発明に使用するイソソルバイド系ポリカーボネート(C)は、一般に用いられる製造方法で製造することができ、その製造方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法のいずれの方法でも良いが、重合触媒の存在下に、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
Figure 2016044221
(一般式(2)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(2)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、公知のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。
重合反応の形式は、公知の形式を用いることができ、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明において、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは25,000〜60,000の範囲であるが、より好ましくは30,000〜60,000、特に好ましくは35,000〜58,000であることが、得られる成形品の外観や、耐衝撃性の点において好ましい。この範囲よりも、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)の重量平均分子量が大きい場合は、流動性が低下し、小さい場合は、得られる成形品の耐衝撃性、耐熱性が低下し、外観が悪くなる。
本発明の樹脂組成物におけるイソソルバイド系ポリカーボネート(C)の配合量は、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性、耐傷付き性が優れることから、樹脂成分100質量部において20〜70質量部であり、好ましくは20〜35質量部である。この範囲よりも、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)が多いと、耐衝撃性、耐熱性が低下し、少ないと外観が悪くなる。
[芳香族ポリカーボネート(D)]
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、上記のグラフト重合体(A)とメタクリル系樹脂(B)とイソソルバイド系ポリカーボネート(C)に、さらに以下に記載する芳香族ポリカーボネート(D)を含有していてもよく、芳香族ポリカーボネート(D)の配合で得られる樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性をさらに向上させることができる。
芳香族ポリカーボネート(D)は1種以上のビスフェノール類とホスゲン又は炭酸ジエステルとの反応によって製造することができ、重量平均分子量(Mw)は10,000〜50,000、特に15,000〜40,000の範囲であることが好ましい。芳香族ポリカーボネート(D)の重量平均分子量(Mw)が上記範囲未満であると耐衝撃性が低下する傾向があり、この範囲を超えると流動性が悪くなり、成形性が劣る傾向がある。
芳香族ポリカーボネート(D)の原料であるビスフェノール類の具体例としては、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、或いはこれらのアルキル置換体、アリール置換体、ハロゲン置換体などが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の芳香族ポリカーボネートは、1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明の樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート(D)の配合量は、樹脂成分100質量部において、30質量部以下、例えば0.1〜30質量部、好ましくは7〜15質量部である。芳香族ポリカーボネート(D)の配合量が上記上限を超えると得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐候性が劣り、さらには、硬く尖ったものによる傷が付きやすくなる。
[他の樹脂]
本発明の樹脂組成物には、上記のグラフト重合体(A)、メタクリル系樹脂(B)、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)及び芳香族ポリカーボネート(D)以外のその他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂としては、HIPS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂などのゴム強化スチレン系樹脂、その他に、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ乳酸樹脂等のポリエステルなどが挙げられる。また、これらを2種類以上ブレンドしたものでも良く、さらに、相溶化剤や官能基などにより変性された上記樹脂を配合しても良い。
ただし、本発明の樹脂組成物がこれらのその他の樹脂を含む場合、上記のグラフト重合体(A)、メタクリル系樹脂(B)、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)、更には芳香族ポリカーボネート(D)を含むことによる効果を確実に得るために、その他の樹脂は、樹脂成分100質量部中20質量部以下であることが好ましい。
[添加剤]
本発明の樹脂組成物には、グラフト重合体(A)、メタクリル系樹脂(B)、イソソルバイド系ポリカーボネート(C)、芳香族ポリカーボネート(D)の他に、樹脂組成物や成形品の物性を損なわない範囲において、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を配合することができる。
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物は、公知の装置を使用した公知の方法で製造することができる。例えば、一般的な方法として溶融混合法があり、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
〔成形品〕
本発明の成形品は、上記の本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
以下において、ゴム質重合体の体積平均粒子径は、日機装株式会社製「ナノトラック150」を用いて測定した。
また、ゴム質重合体のゲル含有量とグラフト重合体のグラフト率は、それぞれ前述した方法により求めた。
なお、以下の例において、前述のグラフト率(G)の式中のPは、グラフト重合体(A1)〜(A10)をそれぞれをメタノールで洗浄した後、アセトンで抽出して遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分に分離し、得られたアセトン不溶分を真空乾燥した後の質量(g)である。
[製造例1:グラフト重合体(A1)]
<エチレン・プロピレン共重合体(a1)の乳化ラテックスの製造>
EPDM(三井化学(株)製「TP3180」)100質量部、低分子量変性ポリエチレン(三井化学(株)製「ハイワックス2203A」)9質量部、更に、オレイン酸カリウム3.1質量部を混合した。次いで、それらの混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製「PCM−30型」、L/D=40)のホッパーより6kg/時間で供給し、水酸化カリウム15質量%水溶液を110g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度200℃で溶融混練して溶融物を押出した。引き続き、溶融物を同押出機先端に取り付けた冷却用一軸押出機に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した固体を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、体積平均粒子径250nmのゴム質重合体ラテックスを得た。
このラテックスの固形分100質量部に対してt−ブチルクミルパーオキサイドを1.2質量部、ジビニルベンゼンを1.0質量部添加し、135℃で5時間反応させて、エチレン・プロピレン共重合体(a1)のラテックスを調製した。
このエチレン・プロピレン共重合体(a1)のゲル含有量は72質量%であった。なお、ゲル含有量は、共重合体ラテックスを希硫酸にて凝固させ、水洗乾燥した後、これを1g採取して200mlのトルエン中40時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その質量を測定して求めた。
<グラフト重合体(A1)の製造>
ゲル含有量72質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・プロピレン共重合体(a1)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、ピロリン酸ナトリウム0.15質量部、硫酸第一鉄七水塩0.006質量部、およびフラクトース0.35質量部を仕込み、内温を80℃に保った。これに、スチレン25.2質量部およびアクリロニトリル4.8質量部からなる単量体混合物と、クメンハイドロパーオキサイド0.6質量部とを、各々別の供給口から140分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。滴下終了後、さらに100分間、80℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(A1)を得た。グラフト重合体(A1)のグラフト率は29%であった。
[製造例2:グラフト重合体(A2)]
単量体混合物をスチレン24質量部およびアクリルニトリル6質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A2)を得た。グラフト重合体(A2)のグラフト率は30%であった。
[製造例3:グラフト重合体(A3)]
単量体混合物をスチレン21.6質量部およびアクリルニトリル8.4質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A3)を得た。グラフト重合体(A2)のグラフト率は29%であった。
[製造例4:グラフト重合体(A4)]
単量体混合物をスチレン20.4質量部およびアクリルニトリル9.6質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A4)を得た。グラフト重合体(A4)のグラフト率は30%であった。
[製造例5:グラフト重合体(A5)]
ゲル含有量が84質量%、体積平均粒子径170nmあるポリアクリル酸ブチル系ゴム(a2)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化カリウム0.03質量部を加え、60℃に加熱し、ピロリン酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄七水塩0.007質量部、およびフラクトース0.3質量部を仕込み、内温を60℃に保った。これに、スチレン23質量部、およびアクリロニトリル7質量部からなる単量体混合物とクメンハイドロパーオキサイド0.5質量部とを、各々別の供給口から120分かけて同時に滴下して重合を行った。滴下終了後、さらに100分間、70℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応性生物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(A5)を得た。グラフト重合体(A5)のグラフト率は32%であった。
[製造例6:グラフト重合体(A6)]
ゲル含有量95%、体積平均粒子径320nmであるポリブタジエンゴム(a3)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、スチレン23質量部、およびアクリロニトリル7質量%と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第一鉄七水塩0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.08質量部及びクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温後、120分間保持し、冷却してグラフト重合を完結させた。反応性生物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(A6)を得た。グラフト重合体(A6)のグラフト率は31%であった。
[製造例7:グラフト重合体(A7)]
単量体混合物をメタクリル酸メチル29質量部およびアクリル酸メチル1質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A7)を得た。グラフト重合体(A7)のグラフト率は30%であった。
[製造例8:グラフト重合体(A8)]
ゴム質重合体として、ゲル含有量74質量%、体積平均粒子径420nmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンは1−ブテン)(a4)を用いた以外は、製造例2と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A8)を得た。グラフト重合体(A8)のグラフト率は34%であった。
[製造例9:グラフト重合体(A9)]
ゴム質重合体として、ゲル含有量48質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンは1−ブテン)(a5)を用いた以外は、製造例2と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A9)を得た。グラフト重合体(A9)のグラフト率は36%であった。
[製造例10:グラフト重合体(A10)]
ゲル含有量72質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・プロピレン共重合体(a1)の乳化ラテックスを60質量部(固形分換算)用い、単量体混合物としてスチレン33.6質量部およびアクリロニトリル6.4質量部を用いた以外は、製造例1と同様の条件で反応させてグラフト重合体(A10)を得た。グラフト重合体(A10)のグラフト率は41%であった。
[製造例11:メタクリル系樹脂(B1)]
耐圧反応容器に蒸留水150質量部と、メタクリル酸メチル99質量部、アクリル酸メチル1質量部と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、カルシウムハイドロオキシアパタイト0.47質量部、アルケニルコハク酸カリウム0.003質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル系樹脂(B1)を得た。
[製造例12:メタクリル系樹脂(B2)]
耐圧反応容器に蒸留水150質量部と、N−フェニルマレイミド15質量部、スチレン5質量部、α−メチルスチレン5質量部、メタクリル酸メチル75質量部の混合物と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、ポリビニルアルコール0.7質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル系樹脂(B2)を得た。
[製造例13:メタクリル系樹脂(B3)]
N−フェニルマレイミド25質量部、スチレン10質量部、α−メチルスチレン10質量部、メタクリル酸メチル55質量部とした以外は、製造例12と同様の条件で反応させてメタクリル系樹脂(B3)を得た。
[製造例14:イソソルバイド系ポリカーボネート(C1)]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、イソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)および酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.5/0.5/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005体積%〜0.001体積%)。続いて熱媒で内容物の加温を行った。
内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にした。
内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を、還流冷却器に導いた。還流冷却器で凝縮した成分を重合反応装置に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
上記重合反応装置でオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温228℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、重合反応装置出口より溶融状態のポリカーボネート共重合体を得た。
更に3つのベント口および注水設備を供えた二軸押出機に連続的に前記溶融状態のポリカーボネート共重合体を供給し、酸化防止剤および離型剤を連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備された各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、イソソルバイド系ポリカーボネート(C1)を得た。
[製造例15:イソソルバイド系ポリカーボネート(C2)]
製造例14において、ISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物のモル比率を0.7/0.3/1.00/1.3×10−6に変えた以外は、製造例14と同様の条件で反応させてイソソルバイド系ポリカーボネート(C2)を得た。
芳香族ポリカーボネートとしては、以下の市販品を用いた。
芳香族ポリカーボネート(D1):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「S3000F」(重量平均分子量Mw=22000)
芳香族ポリカーボネート(D2):出光興産(株)製「タフロンA1700」(重量平均分子量Mw=17000)
[実施例1〜22、比較例1〜6]
表1〜3に示す配合で各成分を混合し、28mm二軸押出機(日本製鋼所製「TEX−28V」)を用いて260℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、真珠光沢、発色性、耐候性、耐衝撃性、耐熱性、耐傷付き性(鉛筆硬度、ガーゼ摩耗)を以下の方法により評価した。
評価結果を表1〜3に示す。
<真珠光沢>
樹脂組成物100質量部に対して、カーボンブラック0.8質量部を混合して着色し、100×100mm(厚み2mm)の黒着色板(試験片)を射出成形した。該黒着色板を目視で観察し、真珠光沢の有無を以下の4段階で評価した。わずかな真珠光沢であれば、成形品の形状で目立たなくすることができることから、「○」以上を合格とした。
◎:真珠光沢が見られない
○:ゲート付近にわずかに真珠光沢が見られる
△:ゲート付近および流動末端に真珠光沢が見られる
×:黒着色板(試験片)の全面に真珠光沢が見られる
<発光性>
真珠光沢の評価で用いたものと同じ黒着色板(試験片)について、色差計でL*を測定した。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好である。
<耐候性>
真珠光沢の評価で用いたものと同じ黒着色板(試験片)について、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨12分)の条件で1000時間処理した。そして、その処理前後の変色の度合い(ΔE)を色差計で測定して評価した。
<耐衝撃性>
樹脂組成物の射出成形品について、ISO試験法179に準拠し、23℃および−30℃において、4mm、Vノッチ付きシャルピー衝撃強さ(KJ/m)を測定した。
<耐熱性>
樹脂組成物の射出成形品について、ISO試験法75に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
<鉛筆硬度>
JIS K5600に準拠し、750gの荷重において、樹脂組成物の射出成形品の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が硬いほど、硬く尖ったものにより付く傷が付きにくい。HB以上を合格とした。
[ガーゼ摩耗]
図1に示すように、先端部1が略半球形に形成された棒状の治具2を用意し、該先端部1に、ガーゼを8枚重ねた積層シートSを被せた。そして、成形品(試験片)Mの表面に対して、棒状の治具2が直角になるように、積層シートSが被せられた先端部1を接触させ、該先端部1を成形品Mの表面において水平方向(図中矢印X方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、成形品Mの表面における擦り傷を目視で観測し、以下の4段階で評価した。
ガーゼ摩耗が良好なほど、軍手、ガーゼや布などで成形品の表面を拭いた場合や、衣類などが擦れた場合に傷が付きにくく、耐擦り傷性が良好となる。○以上を合格とした。
◎:ほとんど傷が付かない
○:目立たない傷が付く
△:目立つ傷が付く
×:手で触ってわかるほど削れた傷が付く
Figure 2016044221
Figure 2016044221
Figure 2016044221
[考察]
表1〜2の実施例1〜22に示すように、各実施例によれば、耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性にも優れ、これらの特性を兼ね備えた樹脂組成物および成形品が得られた。
一方、表3に示すように、各比較例で得られた樹脂組成物および成形品は、耐候性、耐傷付き性、発色性、耐衝撃性のうちの少なくとも1つが不充分であった。
すなわち、比較例1,2はイソソルバイド系ポリカーボネート(C)を含まないことから、真珠光沢が発生し、発色性にも劣った。また、比較例1は、グラフト重合体(A)を含まないことから、耐衝撃性にも劣る。比較例3はグラフト重合体(A)の配合量が本発明の範囲より少ないことから、耐衝撃性、ガーゼ摩耗性(耐傷付き性)が劣り、比較例4はグラフト重合体(A)の配合量が本発明の範囲を超えていることから、鉛筆硬度(耐傷付き性)に劣った。比較例5は、メタクリル系樹脂(B)の配合量が本発明の範囲より少なく、芳香族ポリカーボネート(D)の配合量が本発明の範囲を超えていることから、鉛筆硬度(耐傷付き性)に劣り、真珠光沢が発生するだけでなく、発色性、耐候性にも劣る。比較例6はイソソルバイド系ポリカーボネート(C)の配合量が本発明の範囲より少ないことから真珠光沢が発生した。
本発明によれば、耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂成形品が提供される。さらに、本発明の樹脂組成物が芳香族ポリカーボネート樹脂(D)を含む場合において、その真珠光沢の発生が抑制された、外観に優れる高耐衝撃性成形品が得られる。本発明の成形品は、耐候性、耐傷付き性、発色性に優れ、耐衝撃性、耐熱性にも優れることから、自動車内外装部品などに好適に使用できる。
1 先端部
2 治具
S 積層シート
M 成形品

Claims (8)

  1. 樹脂成分100質量部中に、ゴム質重合体(a)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したグラフト重合体(A)4.9〜25質量部と、メタクリル系樹脂(B)20〜75質量部と、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)20〜70質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物。
  2. 樹脂成分100質量部中に、さらに、芳香族ポリカーボネート(D)30質量部以下を含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 単量体(b)が芳香族ビニル系単量体70〜82質量%とシアン化ビニル系単量体18〜30質量%とを含む請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. ゴム質重合体(a)が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、及びエチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が80〜500nmであり、ゴム質重合体(a)のゲル含有量が40〜99質量%であり、グラフト重合体(A)のグラフト率が23〜100%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. グラフト重合体(A)は、ゴム質重合体(a)40〜80質量%と、単量体(b)20〜60質量%とをグラフト重合してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含み、イソソルバイド構造を含むポリカーボネート(C)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2016044221
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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