JP2019021516A - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
電池ケース50は、上端が開放された扁平なケース本体52と、その上端の開口部を塞ぐ蓋体54とから構成されている。蓋体54には、正極端子70および負極端子72が設けられている。図示は省略するが、正極端子70は、電池ケース50内に収容された電極体80の正極10と電気的に接続され、負極端子72は負極20と電気的に接続される。電池ケース50は、例えばアルミニウム製である。
次に、上記した電池ケース50の内部に収容される電極体80について説明する。図2に示すように、本実施形態における電極体80は、長尺シート状の正極10と負極20を長尺シート状のセパレータ40とともに積層して捲回することによって作製された捲回電極体である。なお、ここで開示される非水電解液二次電池に用いられる電極体は、図2に示すような捲回電極体に限定されず、例えば、複数枚の正極と負極とをセパレータを介して交互に積層させた積層電極体であってもよい。
図2における正極10では、長尺シート状の正極集電体12の両面に、正極合材層14が形成されている。そして、正極10の幅方向の一方の側縁部には、正極合材層14が塗工されていない正極合材層非形成部16が形成されており、この正極合材層非形成部16が上記した正極端子70(図1参照)と電気的に接続される。
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な化合物であり、少なくともリチウムを含む酸化物(リチウム複合酸化物)から構成されている。本実施形態において、正極活物質の種類は特に制限されず、一般的なリチウムイオン二次電池の正極活物質と同様のものを使用することができる。かかる正極活物質の具体例としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物などが挙げられる。正極活物質としては、本発明の効果が特に高くなることから、作動電位が4.3V(vs.Li/Li+)未満のものが好ましい。
リン酸三リチウムの正極合材層14中の含有量は、例えば0.5質量%以上10質量%以下であり、好ましくは1質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以上6質量%以下である。
また、正極合材層14には、一般的なリチウムイオン二次電池と同様に、導電剤やバインダ等の添加材が含まれていてもよい。導電剤としては、例えば、カーボンブラック等の炭素材料を用いる事ができる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を好ましく用いることができる。
また、正極合材層14には、Si、Na、K、Cl、Fe、Cu、Zn、Pb、Ni、Co、Crなどの金属元素が含まれていてもよい。これらの金属元素は、ペースト状の正極合材を調製する際にリン酸三リチウムの粉末に含まれているものであり、これらの金属元素が正極合材層14に含まれている場合であっても、過充電時の発熱や金属元素の溶出等を好適に抑制することができるとともに、生産性の低下や反応抵抗の増加などのリン酸三リチウムの添加によって生じ得る問題の発生を防止することができる。
負極20についても、正極10と同様に、長尺シート状の負極集電体22の両面に負極活物質を主成分とする負極合材層24が形成されている。そして、負極20の幅方向の一方の側縁部に負極合材層非形成部26が形成されており、この負極合材層非形成部26が負極端子72(図1参照)と電気的に接続される。
負極活物質としては、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、カーボンナノチューブ、或いはこれらを組み合わせた構造を有するもの等の炭素材料を用いることができる。エネルギー密度の観点から、これらの炭素材料中でも黒鉛系材料(天然黒鉛(石墨)や人造黒鉛等)を用いることが好ましい。負極活物質の負極合材層24中の含有量は、例えば85質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
負極合材層24には、その他の添加材(例えばバインダや増粘剤等)が含まれていてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等が挙げられる。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
セパレータ40には、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材が用いられる。セパレータ40についても、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができ、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂等ならなるシート材を使用することができる。
また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の電池ケース50内には、上記した捲回電極体80とともに非水電解液が収納(充填)されている。かかる非水電解液としては、典型的には、カーボネート類等の非水溶媒に支持塩を含有させたものが用いられ、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)に、支持塩を所定の濃度(例えば1mol/L程度)で含有させたものを用いることができる。なお、かかる支持塩としては、フッ素を含んだリチウム化合物が用いられ、その例としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等が挙げられる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100においては、負極合材層24の目付量(mg/cm2)と、負極活物質の比表面積(m2/g)と、負極合材層24中における負極活物質の含有割合(質量%)との積に対する、リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g)と、リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm)と、正極合材層14中におけるリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%)との積の百分率が、0.05%以上6.55%以下である。すなわち、〔{(リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g))×(リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm))×(正極合材層14中のリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%))}/{(負極合材層24の目付量(mg/cm2))×(負極活物質の比表面積(m2/g))×(負極合材層24中の負極活物質の含有割合(質量%))}〕×100で表される百分率(%)の値が0.05以上6.55以下である。
当該百分率が6.55%以下であることにより、低SOC領域でのリチウムイオン二次電池100の抵抗を十分に小さくすることができる。また、当該百分率が0.05%以上であることにより、リチウムイオン二次電池100の過充電時の発熱を抑制することができる。
したがって、リチウムイオン二次電池100において、当該百分率が0.05%以上6.55%以下であることにより、過充電時の発熱抑制と低SOC領域での低い抵抗とを両立することができる。その理由については判明していないが、次のように推測される。リン酸三リチウムは、負極活物質表面に被膜を形成する。過充電時には正極のみならず負極からも発熱は起こる。したがって、過充電時の発熱抑制効果をばらつきなく得るためには、正極側でリン酸三リチウムの作用により発熱を適切に抑制することに加えて、負極側において、リン酸三リチウム由来の被膜の形成量を適切化して発熱を抑制することも重要であると考えられる。また、低SOC領域での抵抗を小さく抑えるには、正極の反応抵抗や、リン酸三リチウム由来の被膜形成による負極の抵抗増加が適切に抑制されていることが重要であると考えられる。そして、被膜の形成量の適切化や抵抗増加抑制には、リン酸三リチウム粒子の比表面積、リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50、リン酸三リチウム粒子の含有割合、負極合材層の目付量、負極活物質の比表面積、および負極活物質の含有割合が関与し得るものであり、上記の特定の百分率の範囲を0.05%以上6.55%以下とすることにより、被膜の形成量の適切化や、抵抗増加抑制が好適に図れるものと考えられる。
リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50は、公知方法に従い測定して求めることができる。例えば、レーザ回折・散乱法により求めることができる。
正極活物質のX線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅は、電池特性に及ぼし得る。そこで本実施形態においては、リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g)とリン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm)と正極合材層14中におけるリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%)の積に対する正極活物質のX線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅の値の百分率が、0.05%以上3.21%以下であることが好ましい。すなわち、正極活物質のX線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅/{(リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g))×(リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm))×(正極合材層中のリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%))}〕×100で表される百分率(%)の値が、0.05以上3.21以下であることが好ましい。当該百分率が0.05%以上であることにより、低SOC領域でのリチウムイオン二次電池100の電池抵抗を特に低くすることができる。また、当該百分率が3.21%以下であることにより、リチウムイオン二次電池100の過充電時の発熱を特に抑制することができる。これは、リン酸三リチウム粒子が非水電解液の分解によって生じた酸をより吸着しやすくなるためと考えられる。したがって、当該百分率が0.05%以上3.21%以下であることにより、充電時の発熱抑制と低SOC領域での低い抵抗とを高いレベルで両立することができる。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、当該試験例の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
実験Aでは、〔{(リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g))×(リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm))×(正極合材層中のリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%))}/{(負極合材層の目付量(mg/cm2))×(負極活物質の比表面積(m2/g))×(負極合材層中の負極活物質の含有割合(質量%))}〕×100で表される百分率(以下、「リン酸三リチウム粒子と負極に関する特定の百分率」ともいう)についての検討を行なった。
正極活物質として、X線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅が0.2であるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を準備した。この正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、リン酸三リチウム(Li3PO4)の粒子と、導電材(AB:アセチレンブラック)と、バインダ(PVDF)とを分散媒(NMP:Nメチルピロリドン)に分散させてペースト状の正極合材を調製した。このとき、リン酸三リチウム粒子として、表1に示すメジアン径d50(μm)および比表面積(m2/g)を有するものを用い、リン酸三リチウム粒子の配合量(質量%)は、正極合材の全固形分に対して表1の値になるようにした(なお、この配合量は、正極合材層中の含有量に相当する)。そして、調製した正極合材を正極集電体(アルミニウム箔)の両面に塗布し乾燥させた後、所定の圧力でプレスすることによってシート状の正極を作製した。
(a)過充電時の発熱評価
各試験例の4V級のリチウムイオン二次電池に対して、20Cの定電流で5.1Vまで充電を行うことによって各電池を過充電状態とし、各電池の電池ケース外側の中心部の温度を測定することによって、過充電時の電池温度を測定した。そして過充電時の電池温度と充電前の電池温度との差を求めた。各電池について求めた温度差について、所定の基準値を100とした場合の比を算出した。その結果を表1および図4に示す。
25℃の温度環境下で、各試験例の4V級リチウムイオン二次電池をSOC20%の状態に調整した。次に、25℃の温度環境下で、この電池に対して125Aのレートで10秒間の定電流放電を行い、電圧降下量を測定した。次に、かかる電圧降下量を放電電流値で除して、IV抵抗を算出した。各電池について求めたIV抵抗について、所定の基準値を100とした場合の比を算出した。その結果を表1および図3に示す。
表1および図3の結果が示すように、リン酸三リチウム粒子と負極に関する特定の百分率が6.55%以下である場合には、電池抵抗が低く抑えられていることがわかる。一方で、表1および図4の結果が示すように、リン酸三リチウム粒子と負極に関する特定の百分率が0.05%以上である場合には、過充電時の発熱が抑制されていることがわかる。したがって、リン酸三リチウム粒子と負極に関する特定の百分率が0.05%以上6.55%以下である場合に、過充電時の発熱の抑制と低SOC領域での低い電池抵抗とを同時に達成することができることがわかる。
実験Bでは、〔正極活物質のX線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅/{(リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g))×(リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm))×(正極合材層中のリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%))}〕×100で表される百分率(以下、「正極活物質の半価幅およびリン酸三リチウム粒子に関する特定の百分率」ともいう)についての検討を行ない、当該百分率の最適な値について調べた。
正極活物質として、X線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅が異なる種々のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を準備した。この正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、リン酸三リチウム(Li3PO4)の粒子と、導電材(AB:アセチレンブラック)と、バインダ(PVDF)とを分散媒(NMP:Nメチルピロリドン)に分散させてペースト状の正極合材を調製した。このとき、正極活物質には、表2に示すX線回折測定における(003)面の回折ピークの半価幅の値を有するものを用い、リン酸三リチウムとして、表2に示すメジアン径d50(μm)および比表面積(m2/g)を有するものを用い、リン酸三リチウム粒子の配合量は、正極合材の全固形分に対して表2の値になるようにした(なお、この配合量は、正極合材層中の含有量に相当する)。そして、調製した正極合材を正極集電体(アルミニウム箔)の両面に塗布し乾燥させた後、所定の圧力でプレスすることによってシート状の正極を作製した。
(a)過充電時の発熱評価
各試験例の4V級のリチウムイオン二次電池に対して、20Cの定電流で5.1Vまで充電を行うことによって各電池を過充電状態とし、各電池の電池ケース外側の中心部の温度を測定することによって、過充電時の電池温度を測定した。そして過充電時の電池温度と充電前の電池温度との差を求めた。各電池について求めた温度差について、所定の基準値を100とした場合の比を算出した。その結果を表2および図6に示す。
25℃の温度環境下で、各試験例の4V級リチウムイオン二次電池をSOC20%の状態に調整した。次に、25℃の温度環境下で、この電池に対して125Aのレートで10秒間の定電流放電を行い、電圧降下量を測定した。次に、かかる電圧降下量を放電電流値で除して、IV抵抗を算出した。各電池について求めたIV抵抗について、所定の基準値を100とした場合の比を算出した。その結果を表2および図5に示す。
表2および図5の結果が示すように、正極活物質の半価幅およびリン酸三リチウム粒子に関する特定の百分率が0.05%以上である場合には、電池抵抗が低く抑えられていることがわかる。一方、表2および図6の結果が示すように、正極活物質の半価幅およびリン酸三リチウム粒子に関する特定の百分率が3.21%以下である場合には、過充電時の発熱が抑制されていることがわかる。したがって、正極活物質の半価幅およびリン酸三リチウム粒子に関する特定の百分率の値が0.05%以上3.21%以下である場合には、高いレベルで過充電時の発熱の抑制と低SOC領域での低い電池抵抗とを同時に達成することができることがわかる。
12 正極集電体
14 正極合材層
16 正極合材層非形成部
20 負極
22 負極集電体
24 負極合材層
26 負極合材層非形成部
40 セパレータ
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 正極集電体上に正極合材層が形成されている正極と、
負極集電体上に負極合材層が形成されている負極と、
フッ素を含んだリチウム化合物を支持塩として含有する非水電解液と、
を備える非水電解液二次電池であって、
前記正極合材層は、少なくとも正極活物質とリン酸三リチウム粒子とを含有し、
前記負極合材層は、少なくとも負極活物質を含有し、
前記負極合材層の目付量(mg/cm2)と、前記負極活物質の比表面積(m2/g)と、前記負極合材層中における負極活物質の含有割合(質量%)との積に対する、前記リン酸三リチウム粒子の比表面積(m2/g)と、前記リン酸三リチウム粒子のメジアン径d50(μm)と、前記正極合材層中におけるリン酸三リチウム粒子の含有割合(質量%)との積の百分率が、0.05%以上6.55%以下である、
非水電解液二次電池。
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