JP2019020261A - 建物の任意箇所の地震応答を推定する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この先行発明は、各階の代表点について、応答推定を行うシステムであり、あらかじめ設定する振動モード情報は、設計パラメータとしての建物固有の振動数および振動モード形としている。
この先行発明では、(1)各階の代表点についてのみしか評価できないため、偏心のある建物、平面形状が細長い建物など、平面上の位置による応答の差が大きい建物は、被害状況を正確に伝えられず、(2)設計パラメータを利用しているため、設計データを得られない建物については推定ができない、また、竣工後、年数が経過している建物や、地震を経験した後の建物は、振動特性が変化することが知られており、築年数の経った建物では、設計時のモデルによる振動モード情報は、実状とは異なる可能性が高い。
本発明の主な構成は次のとおりである。
1.建物に印加する常時微振動又は加振動を測定した上下の限られた高さ方向のモード情報と水平方向のねじれモード情報に基づいて、建物の任意箇所の地震応答を推定する方法。
2.高さ方向のモード情報は、上下2点間を一層ずつずらして測定し、層毎に伝達関数を掛け合わせて建物上下全体の変形を推定して得られるモード情報であることを特徴とする1.記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法。
3.水平方向のねじれモード情報は、各フロアについてそれぞれのフロアの2点間を測定し、各フロアの2点間の伝達関数と回転中心を求め、フロアのねじれ変形を推定して得られるモード情報であることを特徴とする1.または2.記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法。
4.1.〜3.のいずれかに記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法により得られた、建物の任意箇所の地震応答を推定するシステム。
5.1.〜3.のいずれかに記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法により得られた、建物の任意箇所の地震応答に基づいて、構造物の被災度を判定するシステム。
2.特に、隣接する上下階の2点を測定セットとして1層ずつずらしながら測定して得られた層毎の振動情報に伝達関数を掛け合わせることで1階などの基準階に対する各階の伝達関数を利用して基準階に対する振幅情報と位相情報から高さ方向のモード情報を設定する。
3.また、各階の平面的なねじれは、任意の2点間の振動から回転中心を求めて、高さ方向に積み重ねることにより建物のねじれモードを設定する。
4.本発明は、定常時の微振動に着目して、上下方向も水平方向も2点間の測定情報に基づいて、建物の高さ方向の振動モードも、ねじれモードも推定して、任意箇所の地震応答に利用できるシステムである。
5.各層に基づく高さ方向のモード情報とねじれモード情報が得られるので、建物の任意の箇所の地震応答が推定でき、その推定された地震応答に基づく建物の各部位、部材や設備などに対する地震の被災度を判定することができる。
6.本発明は、把握された建物任意箇所や設備に対する地震応答性を利用して、建物に地震モデル情報を適用することにより、それぞれの箇所の安全度や危険度を予測することができ、改修などに利用することができる。また、実際に遭遇した地震の情報に基づいて、建物のダメージを瞬時に推定することができ、地震直後の対処情報として有用である。例えば、避難の必要の有無、設備の安全稼働などを判断することができる。
常時微振動や加振動などを測定して、建物の上下の限られた高さ方向のモード情報と水平方向のねじれモード情報に基づいて、建物の任意箇所の地震応答を推定する方法及び応答推定システムである。なお、測定対象の振動は、風や交通など建物に自然に印加されている振動情報あるいは加振機をもちいて意識的に発生した振動である。
また、水平方向では、各階毎の回転中心を把握するために、任意の2点を測定して回転中心をもとめることを提案する。
そして、1階などの基準階を基準にして、建物全体の高さ方向の特性とねじれ特性を高さ方向のモード情報と水平方向のねじれモード情報として、建物の地震応答特性を把握する。
この建物の地震応答特性を利用して、地震被災時に建物に設置したセンサーが感知した情報に基づいて、建物の部材や設備の受けるダメージを推定することができる。建物ダメージを現場確認する前に緊急対応ができることとなり、被災対策を速やかにとることができる。
また、本発明は、建物が受けるダメージを予測することができ、既存建物の地震改修などに利用することができる。
本発明は、地震応答に関する建物のデータが無い建物や設計当初のデータが利用できない建物などにも適用ができる。また、設計データがあっても、竣工後設計との整合性を確認する手法としても活用できる。
したがって、本発明は、常時微振動や加振機を用いた人工振動などを測定して、建物の上下の限られた高さ方向のモード情報と水平方向のねじれモード情報に基づいて、建物の任意箇所の地震応答を推定して、この推定に基づいて地震応答や地震の被災状況を判定するシステムである。
隣接する上下階2点の測定をセットとして1層ずつずらしながら測定し、得られた層毎の伝達関数を掛け合わせることで、1階などの基準階に対する各階の伝達関数を求める。
得られた伝達関数から、卓越する振動数について基準階に対する振幅情報と位相情報から、各次のモードの形状を求める。
本検討で想定する簡易な部分移動測定を図1に示す。隣接する上下階2点の測定をセットとして1層ずつずらしながら測定する。図示の例では、左から屋上と9階をセットで測定し、以降順次9階と8階のセット・・・・2階と1階のセットとして部分移動して測定することを示している。
得られた層毎の伝達関数を掛け合わせることで、図2に示す1階などの基準階に対する各階の伝達関数を求める。
ねじれ振動モード形状把握には、平面上の2点について、卓越振動数と振動方向が同時に得られる等高線図を利用する。
(a)日向仁,肥田剛典,高田毅士:地震観測記録を用いた偏心建物の固有モード形の同定,日本建築学会大会学術講演梗概集,構造II,pp.263〜264,2015.9
(b)江藤公信,林正司,太田勤,田子茂:常時微動測定による建物のねじれ軸の検討-公会堂建築を例にした動的解析-,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.973〜974,1998.9
回転スペクトルは、同時に記録した直交する2方向の時刻歴データ(図3(a)(b))を、ベクトル合成し(図3(c))、さらに0度から180度方向に一定の角度刻みで回転させた座標軸(図3(d))に対するベクトルの正射影成分の時刻歴データをフーリエ変換して求めたフーリエ振幅を、横軸を振動数、縦軸を角度(振動方向)として並べ、等高線グラフで表すものである。卓越する振動数において、どの方向で大きく振動しているか把握できる。
剛床を仮定すると、平面上の2点の、振動卓越方向と直交するそれぞれの線が交わる点が、そのモードにおける振動の回転中心となる。
2点で振動方向に差がでるよう、通常は端部の測定データを用いるが、本発明では、階段室まわりのなどの測定しやすい場所を選定する。比較的近い2点の測定箇所から、回転中心を求めることができる。テナントビルなどでは、セキュリティ上問題の少ない共用部である階段室まわりなど利用しやすいところを測定点として、柔軟に選定する。
常時微動の部分移動測定のイメージ
本発明でイメージする簡易な部分移動測定を図1に示す。隣接する上下階をセットとして1層ずつずらしながら測定し、層毎の伝達関数を掛け合わせることで、1階などの基準階に対する各階の伝達関数を求める。また、同じ階で基準点と端部の2点を測定し水平の伝達関数を算出して同様に掛け合わせを行うことで建物全体の立体挙動を把握する。無線で同期とデータ伝送をするセンサーの利用を念頭にしており、例えば階段室で1層ずつの測定を行えば、無線通信が途切れにくいため配線不要となり、共用部の測定のためテナントビルでもセキュリティ上比較的許容されやすいなど、負担の少ない測定が可能である。
ここでは検証のため全層同時計測を行い、違う時間帯のデータを用いることで本手法の有効性を検証する。
対象建物は、昭和50年以前の建築で地上9階、地下2階、軒高31m のSRC造の事務所建物である。基準階の平面形状を測定点と併せて図7に示す。対象建物では、耐震補強工事が実施されている。また、建物北側(吹き抜け部分)には立体駐車場が併設されている。
全層のコア部分のXY方向(CX,CY)で計測するケースと、代表階(3、7、9階)において水平展開するケースに分けて行った。センサーを配置した各ケースの測定点配置を図7に示す。図7(a)では全層コアに一カ所、水平配置した図7(b)では5カ所である。
1回の計測は30分間とした。センサーは東京測振製のサーボ型速度計(VSE-12)を用いた。
伝達関数の掛け合わせ(全層コア部分)
測定した30分間のデータを9等分し、3分20秒ごとにそれぞれ層毎の伝達関数を求め(図10)、違う時間帯の伝達関数の掛け合わせ(図2の式)で、1階に対する各階の伝達関数を求めた。Y(短辺)方向の結果について示す。掛け合わせの組み合わせを変えた9通りの伝達関数と、同時計測データにより直接1階に対する各階の伝達関数を求めたものを重ねて図11に示す。掛け合わせによる伝達関数のばらつきは若干であり、同時計測の場合とほぼ同じ形状をしている。ピーク付近の形状もよく合っており、固有振動数は1次モード1.5Hz、2次モード4.5Hzであった。
センサーを水平展開させた3、7、9階において、建物端部の測点の、同じ階の基準測点に対する水平伝達関数(9階の場合9NY/9CY,9SY/9CY)(図4)と、前節で求めた1階に対する上下伝達関数(9CY/1CY)とを掛け合わせ、建物端部の1階に対する伝達関数(9NY/1CY, 9SY/1CY)を求めた。9階について、掛け合わせによる伝達関数を同時計測での伝達関数と重ねて図5に示す。同時計測の場合と同様の形状が得られ、3.0Hz付近でねじれのモードが確認できる。
求めた掛け合わせパターンを変えた9通りの伝達関数について、1次固有振動数(1.5Hz)と2次固有振動数(4.5Hz)におけるピーク値を拾い、振幅が最大の階を1と基準化して振動モードとして求めた。同時計測の場合と比較して図6に示す。階による揺れの大きさの大小関係は正確に把握できることがわかる。
1.1 対象建物
対象建物は、地上9階、地下2階、搭屋3階、軒高31mのSRC造の事務所建物である。基準階の平面形状を測定点と併せて図7に示す。基準階平面形状は、右側に多少凹凸があるが、概形としては34.7m×24.5mの長方形である。昭和50年より前に建築され、柱補強などの耐震補強工事が実施されている。
検証に用いるため、長時間の同時測定を行い、4.1(1)に後述する方法で、2点の部分移動測定を想定し検証を行った。測定ケースは、階段室において1階から搭屋1階(R階)の全階のXY方向を測定するケース(全層コア測定)と、代表階(7、9階)において、端部を含めた複数個所を測定するケース(水平展開測定)に分けて実施した。各ケースの測定点配置を図7に示す。
前面道路は片道2車線で交通量は比較的多いが、測定当日の風は強くなく、常時微動が定常に近いと考えられる条件で実施している。
1回の計測は30分間とし、サンプリング振動数は100Hzとした。センサーは東京測振製のサーボ型速度計(VSE-12)を用いた。
得られた各測定点の時刻歴データをフーリエ変換し、1階に対する各階のフーリエスペクトルの振幅比(以降、伝達関数とよぶ)を求めた。フーリエスペクトルの算出では、時刻歴データを40.96秒ずつに分割して平均化処理をし、0.1HzのParzenウィンドウを施した。
端部を測定している9階と、中間階である5階の伝達関数を図8に示す。
固有振動数は、X方向は、1次モード2.2Hz、2次モード7.6Hz、Y方向は、1次モード1.4Hz、2次モード4.5Hzであった。また、ねじれ(θ)1次モードは、端部で振幅の大きい3.2Hzであった。
なお、参考として、1次モードの減衰定数を、伝達関数から1/√2法で求めたところ、X1次モードで7.9%、Y1次モードで4.4%であった。
4.1 高さ方向の振動モード把握の検証
(1)手法検証のためのデータの取り扱い
本測定は、30分間の同時測定を行っているが、本発明では部分移動測定は、各2点の測定を、すべて異なる時間に実施しても良い。同時測定のデータを利用して部分移動測定の検証を行うため、高さ方向の振動モード把握の検証では、同時測定のデータを時刻歴上で分割してデータを取り扱う。30分間(1800秒)のデータを時刻歴上で9等分して3分20秒(200秒)ずつのデータとし、それぞれ層毎の伝達関数を求め、伝達関数の掛け合わせを行う場合は、すべてが異なる時間の掛け合わせとする。
掛け合わせのパターン(どの時間帯にどの層を測定したかの想定)を、図9に示すように階を順番に降りていく形となる9通りとした。実際に部分移動測定を実施する場合と比較すると、30分間という短い時間内での測定ではあるが、これら9通りの掛け合わせを同時測定の場合と比較する。
全層コア測定を9等分した時刻歴データを、それぞれフーリエ変換し、層毎の伝達関数を求めた。フーリエスぺクトルの算出では、40.96秒ごとに分割して平均化処理し、0.1HzのParzenウィンドウを施している。
部分移動測定による層毎の伝達関数を、X方向を図10(a)に、Y方向を図11(a)にそれぞれ9本重ねて示す。
層毎の伝達関数はローカルな特性を表し、建物全体の卓越振動数はあらわれていない。
これら層毎の伝達関数を、図9に示すようにして9パターンを想定して、図2で表す式により掛け合わせ、1階に対する各階の伝達関数を求めた。
このようにして部分移動測定の伝達関数の掛け合わせにより求めた1階に対する各階の伝達関数と、同時測定データにより求めた対応する伝達関数を重ねて図10(b)と図11(b) に示す。部分移動測定による伝達関数のばらつきは若干であり、同時測定の場合とほぼ同じ形状をしている。ピーク付近の形状もよく合っており、固有振動数は、X1次モードで2.2Hz、X2次モードで7.6Hz、Y1次モードで1.4Hz、Y2次モードで4.5Hzと同じ値が得られている。参考として、部分移動測定による伝達関数から1/√2法で1次モードの減衰定数を求めたところ、X1次モードで7.3〜8.4%、Y1次モードで4.0〜4.9%であった。
部分移動測定による掛け合わせで求めた9通りの1階に対する各階の伝達関数において、1次固有振動数(X方向2.2Hz、Y方向1.4Hz)と2次固有振動数(X方向7.6Hz,Y方向4.5Hz)におけるピーク値を拾い、振動モード形状を求めた。同時測定の伝達関数からピーク値を拾ったものと比較して図12に示す。階による揺れの大きさの大小関係は正確に把握できた。
4.2 平面的な振動モード把握の検証
(1)回転スペクトル
水平展開測定を実施した7階と9階で、同時に測定した2点のX方向とY方向の記録を用いて、回転スペクトルを求める。回転スペクトルを求める評価点の位置を図13に●と■で示す。測定点CXとCYのデータから中央部評価点CC、測定点CXとC’Yのデータから中央部評価点CC’の位置の回転スペクトルを求める。また、測定点WXとSY のデータから評価点WSの位置の回転スペクトルを求めるなど、端部の測定点(WX,EX,NY,SY)のデータより隅部評価点(WS,WN,ES,EN)の回転スペクトルを求める。
回転スペクトルの算定では、まず、X方向の波形とY方向の波形の合成により、1度毎の角度に射影させ、0度から180度までの180本の波形を求めた。それらをフーリエ変換し、横軸を振動数、縦軸を振動方向(角度)として、振幅をコンター図で表現した回転スペクトルを図14に示す。
0度および180度はX方向、90度はY方向を示す。1.4Hzでみられるピークは、どの評価点においても、90度にピークがあることから、Y方向の並進モードであることがわかる。一方、2.2Hzと3.2Hzのピークは、測点により、ピークとなる振動方向が異なり、ねじれを伴う振動をしていることがわかる。
図14は、コンター図の性格上、ピークとなる振動方向と振幅を詳細に読み取ることが難しいため、X1次(2.2Hz)、Y1次(1.4Hz)、θ1次(3.2Hz)の各モードの振動数での断面をとり、図15に横軸を振動方向、縦軸をフーリエ振幅として示す。図15(a)(b)より、1.4HzのY1次モードでは、どの評価点においても90度付近にピークがあり、同程度の振幅で振動している。
一方、ねじれを伴う、例えば図15(e)に示す9階の3.2Hzのモードでは、評価点CCでは20度方向で最も振動が大きいのに対して、評価点CC’では150度方向で最も振動が大きい。9階のこのモードにおける回転中心は、図16に示すように、評価点を通る最も振動が大きい方向に直交する線の交点として、幾何的に求めることができる。
4.2(1)で述べたようにして、ねじれを伴うモード(2.2Hz、3.2Hz)について、回転中心を求めた。7階と9階における中央部評価点(CC,CC’)と隅部評価点(WS,WN,ES,EN)より、それぞれ求めた回転中心を、図17と図18に●と○で示す。
回転スペクトルを評価する2点と回転中心との位置関係において、2点と回転中心を結ぶ線が、平行に近い場合(角度が小さい場合)、交点に誤差が生じやすい。剛床を仮定しているので、対象とするモードのフーリエ振幅の比(振幅比)は、回転中心と2点との距離の比(回転半径比)に比例すると考えられることから、振幅比/回転半径比を求め、これが1に近いものを確からしい回転中心として求めた。図17には、振幅比/回転半径比が0.8〜1.2のものをプロットしている。中央部評価点より求めた回転中心では、振幅比/回転半径比の値が、7階および9階のそれぞれ2つのモードについて、0.9〜1.1であり確からしいと考えられる。中央部評価点および隅部評価点より求めた回転中心の位置は、図17に示す、回転中心が建物平面の外にあるX1次モード(2.2Hz)では若干ばらつきがあるが、図18に示す回転中心が建物平面内にあるθ1次モード(3.2Hz)ではよく合っている。
中央部評価点より求めた回転中心によるねじれモード形状と、同時測定による端部の測定点の伝達関数より求めたねじれモード形状を比較して図18に実線と点線で示している。回転中心によるねじれモード形状は、同時測定の伝達関数から求めたねじれモードとほぼ同じ形状となっている。
9階建て既存建物の測定のデータをもとに、1回あたりの計測時間が3分余りのデータで、各モードの固有振動数と振動モード形状を求め、同時測定と同様の振動性状が得られることを検証し、次の知見が得られた。
(1)層毎の伝達関数を掛け合わせることにより各階の1階に対する伝達関数と、1次および2次の高さ方向のモード形状を、精度よく把握できた。
(2)平面上2点の回転スペクトルを利用して、ねじれの回転中心とモード形状を求めることができ、同時測定による伝達関数から求めたモード形状とよく整合している。
(3)対象建物においては、階段室付近の同じ階の1スパン(7m程度)のみ離れた、2点3成分からねじれモードの回転中心が求まり、階段室まわりのみの測定で、ねじれモード形状を把握できる。
建物について地震応答性能が決定され、さらに、この建物の限られた階にセンサーを配置して実際に暴露した地震データを観測データとして地震時に全層に渡る地震応答(影響度、ダメージ、被災度)を推定することができる。被災時に建物の各箇所を実際に確認することなく、直後地震対策を取ることができる手法であり、システムを実現する。
N階建て、応答観測階がS箇所(地動観測点1点、応答観測点S点)の建物について、全N階の応答を推定する方法を示す。
1〜S次の固有モードΦは、振動測定、設計モデル等により、あらかじめ設定しておくものとする。ここで、対象とするモード次数はSとし、応答観測点数と一致させる。
観測データに基づく全層応答推定算出法を図19に示す。
建物の4カ所に地震センサーが配置されている。被災時にこれらのセンサーから得られる情報を演算処置装置に入力して建物の任意箇所の被災度を推定して表示部に出力する。
演算処理装置では、この建物に関してあらかじめ常時微振動などを利用して高さ方向と水平方向のモード情報が取得されている。このモード情報に地震センサーからの観測データを適用して、モード重畳法による応答演算を行い、任意箇所の被災度を推定する。
高さ方向のモードとねじれモードが決定できることにより、これに、想定される地震情報を入力することにより、建物の任意地点の地震応答を推定することができる。
そして、この任意地点に存在する柱、梁、壁、階段などの建築部材、あるいは、設備などに与える影響も推定できることとなり、それぞれの固有の強度などの物性を反映して、それぞれの建築部材や設備などの建物に関する構造物の被災度を判定することができる。
すなわち、得られた建物の地震応答推定にモード重畳法を適用して判定することができる。
地震応答に基づいて、構造物の被災度を判定するシステムは特開2016−109607号公報、特開2016−197013号公報、特許第6001740号公報に開示されるような公知のシステムを利用することができる。
Claims (5)
- 建物に印加する常時微振動又は加振動を測定した上下の限られた高さ方向のモード情報と水平方向のねじれモード情報に基づいて、建物の任意箇所の地震応答を推定する方法。
- 高さ方向のモード情報は、上下2点間を一層ずつずらして測定し、層毎に伝達関数を掛け合わせて建物上下全体の変形を推定して得られるモード情報であることを特徴とする請求項1記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法。
- 水平方向のねじれモード情報は、各フロアについてそれぞれのフロアの2点間を測定し、各フロアの2点間の伝達関数と回転中心を求め、フロアのねじれ変形を推定して得られるモード情報であることを特徴とする請求項1または2記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法により得られた、建物の任意箇所の地震応答を推定するシステム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の建物の任意箇所の地震応答を推定する方法により得られた、建物の任意箇所の地震応答に基づいて、構造物の被災度を判定するシステム。
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