JP6438745B2 - 建物層間変位推定方法 - Google Patents
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Description
当該技術は、建物の基礎部と最上階とに加速度センサーを設置しておいて、地震時に計測された加速度を2回積分することで計測点の絶対変位を算出し、最上階の絶対変位から基礎部の絶対変位を引いて、基礎部に対する最上階の相対変位を算出する。そして、当該相対変位と建物の振動モード形とに基づいて、各階の相対変位(層間変位)を算出する。また、計測した加速度と振動モード形とに基づいて、各階の絶対加速度を算出する。
そして、各階の相対変位と各階の質量比とにより建物全体の代表変位を算定するとともに、各階の絶対加速度と各階の質量比とにより建物全体の代表加速度を算定し、当該代表変位及び代表加速度を用いて建物の損傷を判定するようにしている。
一般には考慮する固有振動モード数が多くなれば多くなるほど算出される層間変位の推定精度は向上していくと考えられている。しかしながら、考慮する固有振動モード数が多くなれば演算負荷が多くなる。一方、特許文献1では、1つの固有振動モードを使用して非測定階の相対変位を算出しているため、算出される非測定階の相対変位の精度が低くなる可能性がある。
本発明は、地震等の外乱時において測定される建物最上層の相対変位に基づいて地震後の建物の層間変位の推定値を算出する場合において、演算負荷を軽減できるとともに、算出される層間変位の推定値の精度を向上させることが可能な建物層間変位推定方法を提供するものである。
また、周波数成分分離ステップでは、ローパスフィルターを用いて、建物最上層の相対変位の時刻歴の周波数成分から低周波成分の時刻歴を抽出するとともに、建物最上層の相対変位の時刻歴の周波数成分から低周波成分の時刻歴を引いて、当該低周波成分以外のその他の成分である高周波成分の時刻歴を抽出することで、建物の最上層以外の層の1次固有振動モードでの相対変位の時刻歴及び2次固有振動モードでの相対変位の時刻歴の推定精度も良く、かつ、演算負荷も軽減できるようになる。
さらに、ローパスフィルターのカットオフ周波数fcを、(1次固有周波数f1+2次固有周波数f2)/2としたので、建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)の周波数成分を、建物の2次固有周波数f2よりも低い周波数成分である低周波成分の時刻歴LXR(t)と、建物の2次固有周波数f2以上の高周波成分の時刻歴HXR(t)とに、簡単かつ精度良く分離できるとともに、建物の最上層以外の層の1次固有振動モードでの相対変位の時刻歴及び2次固有振動モードでの相対変位の時刻歴の推定精度も良く、かつ、演算負荷も軽減できるようになる。
実施形態1による建物の層間変位推定方法は、評価対象の建物が地震等の外乱を受けた際の建物の層間変位を推定する方法であって、建物最上層相対変位取得ステップと、固有値解析ステップと、周波数成分分離ステップと、各層変位推定ステップと、層間変位推定ステップと、を備える。
建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)を取得する方法は、図1に示すように、評価対象の建物B(以下、単に「建物」という)の建物最下層U(以下、単に「建物最下層」という)又は建物近辺の地上E(以下、単に「地上」という)と、建物最上層(屋上)R(以下、単に「建物最上層」という)とに、それぞれGNSS(航法衛星システム(global navigation satellite system))の1つであるGPS(グローバル・ポジショニング・システム)の受信機(GPS受信機)Gを1つずつ設置した建物最上層相対変位取得装置を用いる。
当該建物最上層相対変位取得装置を用いて、建物最下層又は建物近辺の地上の絶対変位の時刻歴と、建物最上層の絶対変位の時刻歴とが計測される。
そして、図2に示すように、GPSにより計測した建物最上層の絶対変位の時刻歴(X0(t)+XR(t))からGPSにより計測した建物最下層又は建物近辺の地上の絶対変位の時刻歴X0(t)を引くことにより、建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)を求める。
例えば、建物が3階建て建物である場合、図3に示すような、3質点系モデルの固有振動モードである1次固有振動モード(以下、「1次モード」という)、2次固有振動モード(以下、「2次モード」という)、3次固有振動モード(以下、「3次モード」という)、及び、建物の1次固有周波数f1(Hz)、2次固有周波数f2(Hz)、3次固有周波数f3(Hz)を得る。
即ち、図4(a)に示すように、ローパスフィルターLPを用いて、時刻歴XR(t)から低周波成分の時刻歴LXR(t)を抽出するとともに、図4(b)に示すように、時刻歴XR(t)から低周波成分の時刻歴LXR(t)を引いて、当該低周波成分以外のその他の成分である高周波成分の時刻歴HXR(t)を抽出する。即ち、XR(t)とLXR(t)との同時刻での値を引き算した値HXRの時刻歴HXR(t)を抽出する。
つまり、図4(c)に示すように、建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)を低周波成分の時刻歴LXR(t)と高周波成分の時刻歴HXR(t)とに分ける。
周波数成分分離ステップでは、建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)の周波数成分を、建物の2次固有周波数f2よりも低い周波数成分である低周波成分の時刻歴LXR(t)と建物の2次固有周波数f2以上の高周波成分の時刻歴HXR(t)とに分離する。
例えば、ローパスフィルターLPのカットオフ周波数fcを、建物の1次固有周波数f1よりも高く、建物の2次固有周波数f2よりも低い周波数とすることで、建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)の周波数成分を、建物の1次固有周波数f1を含むカットオフ周波数fcよりも低い周波数成分の時刻歴LXR(t)と、建物の2次以上の固有周波数を含むカットオフ周波数fc以上の高周波成分の時刻歴HXR(t)と、に分離する。これにより、後述する建物の最上層以外の層の1次モードでの相対変位の時刻歴及び2次モードでの相対変位の時刻歴の推定精度も良く、かつ、演算負荷も軽減できるようになる。
具体的には、ローパスフィルターLPのカットオフ周波数fcを、(f1+f2)/2とすることにより、建物最上層の変位の時刻歴XR(t)を、(f1+f2)/2よりも低い低周波成分の時刻歴LXR(t)と、(f1+f2)/2よりも高い高周波成分の時刻歴HXR(t)と、に分離する。これにより、建物最上層の相対変位の時刻歴XR(t)の周波数成分を、建物の2次固有周波数f2よりも低い周波数成分である低周波成分の時刻歴LXR(t)と、建物の2次固有周波数f2以上の高周波成分の時刻歴HXR(t)とに、簡単かつ精度良く分離できるとともに、後述する建物の最上層以外の層の1次モードでの相対変位の時刻歴及び2次モードでの相対変位の時刻歴の推定精度も良く、かつ、演算負荷も軽減できるようになる。
例えば、建物が3階建て建物である場合、図5(a)に示すように、建物の2層目(2階)部分の相対変位の低周波成分の時刻歴LX2(t)、及び、建物の1層目(1階)部分の相対変位の低周波成分の時刻歴LX1(t)を、固有値解析で得られた3質点系モデルの1次モードに基づいて算出するとともに、図5(b)に示すように、建物の2層目部分の相対変位の高周波成分の時刻歴HX2(t)、及び、建物の1層目部分の相対変位の高周波成分の時刻歴HX1(t)を3質点系モデルの2次モードに基づいて推定する。
即ち、図5(a)に示すように、1次モードでの建物最上層の相対変位の時刻歴を、測定した時刻歴XR(t)から抽出した低周波成分の時刻歴LXR(t)とみなして、1次モードでの建物最上層以外の層である2層目の相対変位の時刻歴LX2(t)、及び、1層目の相対変位の時刻歴LX1(t)を、1次モードに基づいて算出するとともに、図5(b)に示すように、2次モードでの建物最上層の相対変位の時刻歴を、測定した時刻歴XR(t)から抽出した高周波成分の時刻歴HXR(t)とみなして、2次モードでの建物最上層以外の層である2層目の相対変位の時刻歴HX2(t)、及び、1層目の相対変位の時刻歴HX1(t)を、質点系モデルの2次モードに基づいて算出することで、建物の最上層以外の層の1次モードでの相対変位の時刻歴及び2次モードでの相対変位の時刻歴を推定する。
多質点系の振動方程式は次式(1)で示される。
1q、2qが求まれば、式(4)のX2、X1、即ち、建物の最上層以外の層の1次モードの変位LX2、LX1、及び、建物の最上層以外の層の2次モードの変位HX2、HX1を計算でき、建物の最上層以外の層である2層目の相対変位X2=LX2+HX2、及び、1層目の相対変位X1=LX1+HX1の時刻歴を求めることができる。
即ち、LX3、HX3の時刻歴は測定に基づいて求められており、建物の最上層以外の層の1次モードの相対変位LX2、LX1、及び、建物の最上層以外の層の2次モードの相対変位HX2、HX1の時刻歴は上述した計算で求まっているので、これら値を次式(7)に代入して層間変位δ3、δ2、δ1(図6参照)を算出し、建物の層間変位の各時刻歴を求めることができる。
そして、層間の損傷の可能性が高いと判断された場合には、該当する層間の補強対策を検討する。
実施形態1では、固有値解析で得られる質点系の固有振動モードに基づいて層間変位を推定したが、静的弾塑性解析(増分解析法)で得られる変形性状を用いて層間変位を推定(算出)してもよい。
建物の各階の床に作用する外力PR、P2、P1を外力PR、P2、P1の比を一定に保ったまま増加していく各ステップ(i,i+1,…)毎に、図7(a)に示すように、各階の変形値XR、X2、X1が得られ、図7(b)に示すように、各ステップ(i,i+1,…)毎の建物モデルの変形性状が得られる。
そして、GPSによる測定に基づいて求められた建物最上層の変位の時刻歴XR(t)から周波数成分分離ステップで求めた低周波成分の時刻歴LXR(t)の最大値に最も近い変形値XRが得られたステップ時の建物モデルの変形性状を実施形態1の1次モードの代わりに用いて、上述したように、1次モードでの建物最上層以外の各層の相対変位の最大値を算出して推定値とする。
即ち、実施形態2では、建物の静的弾塑性解析を実施し、周波数成分分離ステップで求めた低周波成分の時刻歴LXR(t)の最大値に最も近い変形値が得られた変形性状に基づいて建物の1次固有振動モードでの建物最上層以外の各層の相対変位の最大値を算出する。
尚、2次モードでの層間変位の推定値は、実施形態1で説明した方法で算出する。
Claims (3)
- 評価対象の建物が外乱を受けた際の建物の層間変位を推定する方法であって、
評価対象の建物が外乱を受けた際の建物最上層の絶対変位の時刻歴と建物最下層の絶対変位の時刻歴とを計測して、建物最上層の絶対変位の時刻歴から建物最下層の絶対変位の時刻歴を引くことによって建物最上層の相対変位の時刻歴を求める建物最上層相対変位算出ステップと、
評価対象の建物の固有周波数と固有振動モードとを求める固有値解析を行う固有値解析ステップと、
建物最上層相対変位算出ステップで得られた建物最上層の相対変位の時刻歴の周波数成分を、建物の2次固有周波数f2よりも低い周波数成分である低周波成分の時刻歴と建物の2次固有周波数f2以上の高周波成分の時刻歴とに分離する周波数成分分離ステップと、
建物の固有振動モードに基づいて建物の最上層以外の各層の相対変位の時刻歴を算出する各層変位推定ステップと、
各層変位推定ステップで求めた各層の相対変位の時刻歴に基づいて建物の層間変位の時刻歴を算出する層間変位推定ステップと、を備え、
各層変位推定ステップでは、建物の変形を1次固有振動モードでの相対変位と2次固有振動モードでの相対変位との和とみなし、建物の1次固有振動モードでの建物最上層以外の各層の相対変位の時刻歴を算出する第1ステップと、建物の2次固有振動モードでの建物最上層の相対変位の時刻歴を周波数成分分離ステップで求めた高周波成分の時刻歴とみなして、2次固有振動モードでの建物最上層以外の各層の相対変位の時刻歴を2次固有振動モードに基づいて算出する第2ステップとを実施することによって、建物の各層の相対変位の時刻歴を算出し、
第1ステップにおいては、建物の静的弾塑性解析を実施し、周波数成分分離ステップで求めた低周波成分の時刻歴の最大値に最も近い変形値が得られた変形性状に基づいて建物の1次固有振動モードでの建物最上層以外の各層の相対変位の時刻歴を算出したことを特徴とする建物層間変位推定方法。 - 周波数成分分離ステップでは、ローパスフィルターを用いて、建物最上層の相対変位の時刻歴の周波数成分から低周波成分の時刻歴を抽出するとともに、建物最上層の相対変位の時刻歴の周波数成分から低周波成分の時刻歴を引いて、当該低周波成分以外のその他の成分である高周波成分の時刻歴を抽出することを特徴とする請求項1に記載の建物層間変位推定方法。
- ローパスフィルターのカットオフ周波数fcを、(1次固有周波数f1+2次固有周波数f2)/2としたことを特徴とする請求項2に記載の建物層間変位推定方法。
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