以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る運転支援装置を自動四輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る運転支援装置を他のタイプの車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車等の鞍乗型車両)に適用してもよい。
<概要>
図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の運転支援対象となる交差点10の説明図である。図1に示すように、運転支援対象となる交差点10は、本実施の形態に係る運転支援装置が搭載される自車両1が走行する道路20と、この道路20に交差する道路30との間に構成される。道路20、30は、いずれも左側通行の道路で構成される。
例えば、道路20、30は、それぞれ片側一車線の双方通行道路で構成される。道路20は、図1に示す下方側から上方側に車両が走行する車線21と、同図に示す上方側から下方側に車両が走行する車線22とで構成される。道路30は、図1に示す左方側から右方側に車両が走行する車線31と、同図に示す右方側から左方側に車両が走行する車線32とで構成される。
道路30には、車線31、32を横切る位置に一対の横断歩道41、42が設けられている。これらの横断歩道41、42は、道路20を挟んで配置されている。また、交差点10には、信号機5が設置されている。本実施の形態において、信号機5は、道路20を走行する車両の進行を許容し、道路30を走行する車両の進行を制限する信号状態となっているものとする。
道路20において、車線21には、車線31へ右折する際の専用車線(以下、単に「右折車線」という)23が設けられ、車線22には、車線32への右折車線24が設けられている。同様に、道路30において、車線31には、車線22への右折車線33が設けられ、車線32には、車線21への右折車線34が設けられている。
以下の説明において、自車両1は、車線21を走行し、右折車線23で停止しているものとする。このとき、車線22は、自車両1にとって対向車線を構成する。以下の説明においては、説明の便宜上、車線22を対向車線22と呼ぶことがある。また、この対向車線22を走行する車両を対向車両2と呼び、後述する分岐車線25を走行する車両を分岐車両3と呼ぶことがある。
対向車線22には、分岐車線25が設けられている。分岐車線25は、対向車線22において、交差点10の手前側に配置されている。分岐車線25は、対向車線22から分岐され、道路30の車線31に接続されている。対向車線22を走行する車両は、分岐車線25を介して、交差点10を通過することなく車線31に合流することができる。すなわち、交差点10においては、対向車線22に分岐車線25が付設されている。以下の説明においては、説明の便宜上、対向車線22に分岐車線25が付設された交差点10を「分岐車線付き交差点10」と呼ぶことがある。なお、分岐車線25は、ランプウェイと呼ぶこともできる。このため、分岐車線付き交差点10は、ランプウェイ付き交差点と呼ぶこともできる。
このような分岐車線付き交差点10において、自車両1の運転者が、漫然運転、体調不良時の運転、不慣れな道路での運転、会話中の運転などのように、注意力が低下した状態で運転を行っている場合、分岐車線25上の車両(分岐車両3)と対向車線22上の車両(対向車両2)とを混同して認識(誤認識)し、交差点10や横断歩道42に進入してしまう可能性がある。
例えば、注意力が散漫となっている場合や、対向車線22を直進する対向車両2から一時的に視線を外し、分岐車線25上の分岐車両3の動きに気を取られた場合、運転者が対向車両2と分岐車両3を混同して認識してしまうことがある。分岐車両3は、自車両1から離れていく方向に走行する(自車両1の進行に対して障害とならない方向に走行する)。このため、一旦、運転者の意識が分岐車両3に移ると、対向車両2の存在を忘れさせてしまう可能性を有している。
また、対向車線22からの分岐車線25の起点が交差点10から、ある程度の距離が離れている場合(例えば10m〜20m程度)には、運転者にとって分岐車線25の起点が見え難くなる(認識し難くなる)ことがある。このような場合、運転者は、今、自分が分岐車線付き交差点10に位置している(到達している)ことを忘れてしまう可能性が高くなるので、このような誤認の可能性を有している。
図1に示すように、自動二輪車等の対向車両2が交差点10に進入しようとしている状態で、四輪車両等の視覚的に目立つ分岐車両3が分岐車線25に進入するケースが想定される。この場合、運転者は、対向車線22上には自車両1の進行の障害となる車両が存在しないと錯覚(混同)し、交差点10に進入してしまう事態が想定される。
また、対向車線22を走行する四輪車両の後方を、自動二輪車等の小型車両が走行している場合において、視覚的に目立つ四輪車両が分岐車両25に進入するケースも想定される。この場合にも、運転者は、対向車線22上には自車両1の進行の障害となる車両が存在しないと錯覚(混同)し、交差点10に進入してしまう事態が想定される。特に、これらのような事態は、高齢者等の状況判断力が低下し易い運転者に発生し易い。
さらに、自動変速車両(所謂、オートマチック車両)の場合には、ブレーキを解除することにより自動的に進行する。このため、僅かにアクセルを開く操作を行っただけであっても、自車両1は、前方に走行を開始する。したがって、運転者の注意力が低下した状況下での運転を想定する場合には、予防安全上、何らかの対策を施すことが要請される。
特に、何らかの要因で運転者が慌てしまい、アクセル操作とブレーキ操作とを誤り、誤発進する事態も想定される。さらに、路面の凍結や、路面上に散乱する砂利等の路面状況によっては、制動に必要となる距離が通常より長く必要となる事態も想定される。
本発明者は、図1に示すような分岐車線付き交差点10において、注意力が低下した状態で運転することが重大事故に繋がり得ることに着目した。そして、運転者が、分岐車線付き交差点10を走行する対向車両22の進行方向を誤認識し、間違って交差点10等に進入するのを未然に防止することが予防安全性能の向上に寄与すると考えた。
そこで、本発明者は、撮像手段により撮影した画像内に、左右方向に移動する車両及び上下方向に移動する車両の双方が含まれる状態において、自車両1が発進又は進行を継続した場合に、運転者による「うっかり、つい発進、つい進入」が起こることを予見することにより予防安全性能を向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の骨子は、対向車線に分岐車線が付設された交差点(分岐車線付き交差点10)を通過する自車両1に対する運転支援を行う運転支援装置において、自車両1の前方であって分岐車線25を含む所定範囲を撮影する撮像手段と、この撮像手段により撮影した撮影画像に基づいて自車両1の前方の車両の移動方向を判定する第1の判定手段と、自車両1の運転状態を判定する第2の判定手段と、第1の判定手段が、撮影画像内で左右方向に移動する車両と上下方向に移動する車両とが存在すると判定し、且つ、第2の判定手段が、自車両1が発進し又は走行を継続したと判定した場合に、自車両1の運転者に対して所定の運転支援を実施する運転支援手段と、を具備することを特徴とする。
本発明に係る運転支援装置によれば、分岐車線付き交差点10を撮影した撮影画像内にて、左右方向に移動する車両と上下方向に移動する車両とが存在する状況において、自車両1が進行を継続し又は発進しようとした場合に、自車両1の運転者に対して所定の運転支援が実施される。このため、分岐車線付き交差点10で事故に繋がる可能性がある状況下で運転支援が実施される。これにより、自車両1の運転者の注意力が低下している場合であっても、運転者が、分岐車線付き交差点10を走行する対向車両2の進行方向を誤認識し、間違って分岐車線付き交差点10等に進入しようとするのを防止でき、予防安全性能を向上することができる。
<運転支援装置>
以下、本実施の形態に係る運転支援装置の構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施の形態に係る運転支援装置100の機能ブロック図である。図2においては、説明の便宜上、本発明に関連する構成のみを示している。なお、本実施の形態に係る運転支援装置100が適用される自車両1においては、通常、四輪車両が備えている構成(エンジン、タイヤ等)を備えているものとし、その説明を省略する。
本実施の形態に係る運転支援装置100は、自車両1に搭載される。図2に示すように、本実施の形態に係る運転支援装置100は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)101を備えている。CPU101は、例えば、各種処理を実行するプロセッサにより構成される。CPU101は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、後述する第1判定手段121、第2判定手段122及び運転支援手段123を実現可能に構成されている。
CPU101には、前方カメラ102、雨滴量センサ103、路面センサ104、ステアリングセンサ105及びアクセルポジションセンサ(APS)106が接続されている。ステアリングセンサ105には、ステアリング107が接続されている。前方カメラ102、雨滴量センサ103、路面センサ104、ステアリングセンサ105及びアクセルポジションセンサ(APS)106は、CPU101との間で相互に信号を送受信、或いは、一方向で信号を送信又は受信が可能なようにCPU101に電気的に接続されている。
前方カメラ102は、撮像手段の一例を構成するものであり、自車両1の前方の所定範囲を撮影する。より具体的には、前方カメラ102は、自車両1の前方であって、分岐車線25を含む所定範囲を撮影する(図1に示す一点鎖線参照)。前方カメラ102は、撮影した画像(撮影画像)をCPU101に出力する。この撮影画像は、CPU101の内部又は外部に配置される、図示しない記憶部に保存され、詳細について後述するように、第1判定手段121による判定処理に利用される。
前方カメラ102が撮影する所定範囲は、分岐車線付き交差点10で衝突事故に繋がり得る対向車両2が走行する範囲に設定することができる。例えば、分岐車線付き交差点10内では自車両1及び対向車両2の両者が徐行運転(低速運転)することを想定する場合、両者間の相対最高速度を70kmに設定することができる。一般に、70kmで走行する車両が停止する距離は、乾燥したアスファルト路面で約42mと算定される。このような場合、前方カメラ102が撮影する所定範囲としては、45m〜50mに設定することが好ましい。なお、前方カメラ102が撮影する所定範囲は、後述する第1判定手段121により調整される。
また、前方カメラ102が撮影する所定範囲は、自車両1の走行速度に基づいて、自車両1が安全に停止可能な距離に対応する範囲に設定するようにしてもよい。この場合には、自車両1の速度に基づいて前方カメラ102が撮影する所定範囲が設定されることから、自車両1の速度に基づいて判定対象となる範囲を柔軟に調整できる。これにより、分岐車線付き交差点10付近で衝突事故に繋がる可能性のある車両を判定対象に含めることができる。
さらに、自車両1が前方を検知することができるレーダー検知器を備える場合には、自車両1の速度と対向車両2の速度とに基づいて、自車両1が安全に停止可能な距離に対応する範囲を所定範囲に設定するようにしてもよい。この場合には、自車両1の速度だけでなく、対向車両2の速度も考慮して所定範囲が設定されることから、分岐車線付き交差点10付近で衝突事故に繋がる可能性のある車両をより精度良く判定対象に含めることができる。
なお、本発明に係る運転支援装置100では、前方カメラ102に代表される撮像手段が撮影した撮影画像に基づいて、分岐車線付き交差点10における衝突事故を未然に防止するものである。このため、運転支援装置100による運転支援には、レーダー検知器を必要としない。しかしながら、レーダー検知器を備え、自動運転機能を有する自車両1における運転支援に適用することもできる。例えば、このような自動運転機能を有する自車両1における非自動運転モードにおいて、前方カメラ102による撮影画像に基づいて運転支援を実行することは実施の形態として好ましい。
雨滴量センサ103は、雨滴検出手段の一例を構成するものであり、例えば、赤外線方式のセンサで構成される。雨滴量センサ103は、発光部と受光部とを有し、フロントガラスに対する雨滴の付着の有無に応じて変動する赤外線の反射量に基づいて雨滴量を検出する。雨滴量センサ103は、検出した雨滴量をCPU101に出力する。
路面センサ104は、路面状況確認手段の一例を構成するものであり、例えば、超音波検知方式のセンサで構成される。路面センサ104は、路面に対して超音波を出力する超音波発振器と、路面から反射した超音波を検知する検知部とを備え、路面からの超音波の反射量に基づいて路面状態を検出する。例えば、路面センサ104は、路面の凹凸状況や路面上の異物(砂利等)の有無を検出することができる。路面センサ104は、検出した路面状態をCPU101に出力する。
ステアリングセンサ105は、運転者により操舵されるステアリング107の変化量を検出し、検出した変化量から操舵角を算出する。ステアリングセンサ105は、算出した操舵角に応じた信号(操舵角信号)をCPU101に出力する。
アクセルポジションセンサ(APS)106は、運転者により踏み込まれたアクセルペダルの位置に応じてアクセル開度を検出する。アクセルポジションセンサ(APS)106は、検出したアクセル開度に応じた信号(アクセル開度信号)をCPU101に出力する。
また、CPU101には、ナビゲーション装置108、警報発生手段109、ステアリング振動手段110及び減速制御手段111が接続されている。減速制御手段111には、減速手段112が接続されている。なお、警報手段109、ステアリング振動手段110及び減速制御手段111は、運転支援手段の一部を構成する。ナビゲーション装置108、警報発生手段109、ステアリング振動手段110及び減速制御手段111は、CPU101との間で相互に信号を送受信、或いは、一方向で信号を送信又は受信が可能なようにCPU101に電気的に接続されている。
ナビゲーション装置108は、自車両1の現在位置を検出して、自車両1の周辺の地図を表示する地図表示機能、周辺施設の検索を行う周辺施設検索機能、目的地までの経路を案内する経路案内機能等の各種機能を有する。ナビゲーション装置108は、図示しない位置検出器を有する。例えば、位置検出器は、衛生からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機を有する。
また、ナビゲーション装置108は、運転者に必要な情報を表示するモニタを備え、各種機能に応じた情報(文字情報や画像情報)を表示可能に構成される。ナビゲーション装置108のモニタは、前方カメラ102により撮影される撮影画像を表示する表示手段を構成することができる。例えば、ナビゲーション装置108のモニタには、図4に示すような撮影画像が表示される。撮影画像には、運転者の注意を喚起する画像情報を含めることができる。
警報発生手段109は、警報手段の一例を構成するものであり、CPU101の制御の下、自車両1の運転者に対して警報を発する。例えば、警報発生手段109は、警報発生器及びスピーカで構成される。警報発生手段109は、所定の条件が満たされた場合に運転者に対する運転支援の一例として、所定の警報を発する。なお、警報は、音によるものに限定されず、例えば、自車両1のインストルメントパネル(不図示)等に設けられた表示灯を点灯し、或いは、ナビゲーション装置108のモニタにメッセージを表示する態様としてもよい。
ステアリング振動手段110は、振動発生手段の一例を構成するものであり、CPU101の制御の下、ステアリング107に振動を発生させる。ステアリング振動手段110は、例えば、ステアリング107に内蔵される振動モータ等の振動デバイスと、振動デバイスに振動指示を与える指示装置とで構成される。ステアリング振動手段110は、所定の条件が満たされた場合に運転者に対する運転支援の一例として、ステアリング107を振動させる。
減速制御手段111は、減速制御手段の一例を構成するものであり、CPU101の制御の下、機械的ブレーキやエンジンブレーキ等で構成される減速手段112により自車両1の速度を減速する。減速制御手段111は、所定の条件が満たされた場合に運転者に対する運転支援の一例として、減速手段112を介して自車両1の速度を減速する。
第1判定手段121は、第1の判定手段の一例を構成するものであり、前方カメラ102により撮影した撮影画像に基づいて自車両1の前方の車両の移動方向を判定する。より具体的には、第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮影画像内で左右方向に移動する車両が存在するか、並びに、撮影画像内で上下方向に移動する車両が存在するかを判定する。例えば、第1判定手段121は、この判定によって分岐車線25上の分岐車両3が自車両1の進行方向と交差する方向に移動するか、並びに、対向車線22上の車両が自車両1に接近する方向に移動するかを判定することができる。
また、第1判定手段121は、前方カメラ102により撮影した撮影画像に基づいて、自車両1が対向車線22を横切って走行するか、対向車両2が分岐車線付き交差点10を直進可能であるかを判定することができる。例えば、第1判定手段121は、前者に関し、右折車線23における自車両1の停止の有無により、後者に関し、分岐車線付き交差点10に設置された信号機5の信号状態により判定することができる。
第2判定手段122は、第2の判定手段の一例を構成するものであり、自車両1の運転状態を判定する。より具体的には、第2判定手段122は、自車両1が停止状態から発進するか、自車両1が停止することなく走行を継続するかを判定する。例えば、第2判定手段122は、アクセルポジションセンサ(APS)106からのアクセル開度信号に基づいて自車両1の発進又は走行の継続の有無を判定する。
運転支援手段123は、運転支援手段の一部を構成するものであり、第1判定手段121及び第2判定手段122の判定結果に基づいて自車両1の運転者に対して所定の運転支援を実施する。より具体的には、運転支援手段123は、第1判定手段121が、前方カメラ102による撮影画像内で左右方向に移動する車両と上下方向に移動する車両とが存在すると判定し、且つ、第2判定手段122が、自車両1が発進し又は走行を継続したと判定した場合に所定の運転支援を実施する。
なお、運転支援手段123は、警報発生手段109、ステアリング振動手段110、減速制御手段111と協働して、運転者に対して各手段109、110、111の機能に応じた運転支援を実施する。これらの運転支援を実施する際、運転支援手段123は、雨滴量センサ103や路面センサ104からの検出結果に基づいて、運転者に対する運転支援の実施のタイミングを変更することができる。
以下、上記構成を有する運転支援装置100における運転支援動作について、図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態に係る運転支援装置100における運転支援動作を説明するためのフロー図である。なお、図3に示すフローにおいて、自車両1は、図1に示すように、分岐車線付き交差点10の手前の右折車線23で停止しているものとする。
例えば、図3に示すフローは、自車両1が走行している際、常時、CPU101の第1判定手段121、第2判定手段122及び運転支援手段123が連携して実行される。なお、運転者によって自車両1に対する運転支援の実施が指示された場合にCPU101で実行することもできる。
自車両1が走行する際、運転支援手段123は、自車両1が接近する交差点が分岐車線付き交差点10であるか監視している(ステップ(以下、「ST」という)101)。例えば、運転支援手段123は、ナビゲーション装置108が有する周辺施設検索機能を利用し、分岐車線付き交差点10の位置を判定することができる。なお、運転支援手段123は、前方カメラ102が撮影した撮影画像から分岐車線付き交差点10の有無を判定してもよい。
交差点が分岐車線付き交差点10である場合(ST101:YES)、第1判定手段121は、自車両1が対向車線22を横切って走行するかを判定する。具体的には、自車両1が分岐車線付き交差点10の右折車線23で停止しているかを判定する(ST102)。第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮影画像に基づいて右折車線23で停止しているかを判定することができる。例えば、第1判定手段121は、路面に描かれた右折矢印をパターンマッチングで検出した場合に右折車線23での停止を判定する。
自車両1が右折車線23で停止している場合(ST102:YES)、第1判定手段123は、対向車両2が分岐車線付き交差点10を直進可能か判定する(ST103)。第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮影画像に基づいて対向車線2が分岐車線付き交差点10を直進可能か判定することができる。例えば、第1判定手段121は、分岐車線付き交差点10に設置された信号機5の信号灯が青色又は黄色であると判定した場合に対向車両2が直進可能であると判定する。
対向車両2が直進可能である場合(ST103:YES)、第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮影画像内で左右方向に移動する車両があるか判定する(ST104)。撮影画像内で左右方向に移動する車両の有無を判定することにより、第1判定手段121は、分岐車線25上を走行する分岐車両3の有無を判定している。ST104で左右方向へ移動する車両の有無を判定することにより、潜在的に存在する衝突事故の危険度の有無を判定することができる。
左右方向へ車両が移動している場合(ST104:YES)、第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮影画像内で上下方向に移動する車両があるか判定する(ST105)。撮影画像内で上下方向に移動する車両の有無を判定することにより、第1判定手段121は、対向車線22上を自車両1に接近する対向車両2の有無を判定している。ST105で上下方向へ移動する車両の有無を判定することにより、直接的に存在する衝突事故の危険度の有無を判定することができる。
上述したST104及びST105において、車両の移動方向を判定する際、第1判定手段121は、一定時間内における撮影画像内に撮影された車両(分岐車両3、対向車両2)の移動状態又はオプチカルフローにより判定することができる。ここで、オプチカルフローとは、時間的に連続する撮影画像の中で車両の動きをベクトルで表すものである。これらのように一定時間内における車両の移動状態又はオプチカルフローを用いて判定することにより、適切に自車両1の前方の車両の移動方向を判定することができる。
ここで、ST104及びST105で判定される撮影画像の一例について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態に係る運転支援装置100の前方カメラ102で撮影された撮影画像の一例の説明図である。図4Aにおいては、対向車線22を走行する対向車両2が分岐車線25に進入して分岐車両3となった場合について示し、図4Bにおいては、対向車線22を走行する対向車両2が自車両1に接近する方向に直進した場合について示している。
図4に示す撮影画像は、第1判定手段121による判定処理(自車両1の前方の車両の移動方向の判定処理)に利用されるものであり、CPU101の内部又は外部に配置される記憶部に保存される。例えば、第1判定手段121は、この記憶部上で判定処理を行うことができるが、これに限定されない。
前方カメラ102によって図4Aに示す撮影画像が撮影されると、上述したST104にて、第1判定手段121は、左右方向に移動する車両があると判定する(ST104:YES)。一方、前方カメラ102によって図4Bに示す撮影画像が撮影されると、上述したST105にて、第1判定手段121は、上下方向に移動する車両があると判定する(ST105:YES)。
ここでは、説明の便宜上、撮影画像内で左右方向に移動する車両と、上下方向に移動する車両との別々に説明している。しかしながら、ST104及びST105では、撮影画像内でこれらの車両が同時に存在するか否かを判定することができる。すなわち、第1判定手段121は、同一の撮影画像から左右方向に移動する車両と、上下方向に移動する車両とを区別して判定することができる。第1判定手段121により、撮影画像において図4A及び図4Bに示す移動方向の車両があると判定されると、ST106の判定に進むこととなる。
上下方向へ車両が移動している場合(ST105:YES)、第2判定手段122は、自車両1にて発進する制御が行われるかを判定する(ST106)。第2判定手段122は、アクセルポジションセンサ(APS)106からのアクセル開度信号に基づいて自車両1の発進制御の有無を判定することができる。ST106で自車両1の発進制御の有無を判定することにより、直接的に存在する衝突事故の危険度の増加を判定することができる。
自車両1で発進制御が行われた場合(ST106:YES)、運転支援手段123は、運転者の注意を喚起する制御(以下、「注意喚起制御」という)を行う(ST107)。この注意喚起制御において、運転支援手段123は、警報発生手段109により警報を発生させ、或いは、ステアリング振動手段110によりステアリング107に振動を発生させる。なお、これらの警報及び振動の双方を同時に行ってもよい。このように注意喚起制御を行うことにより、自車両1の運転者の注意力が低下する事態を抑止でき、対向車両2の進行方向の誤認識を防止することができる。
なお、注意喚起制御で実行される内容については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、ナビゲーション装置108のモニタに前方カメラ102の撮影画像を表示すると共に、ST104及びST105でそれぞれ検出された車両(例えば、分岐車両3及び対向車両2)を強調表示するようにしてもよい。例えば、強調表示では、図4に示すような分岐車両3及び対向車両2の輪郭に視覚的に目立つ色彩を追加することや、同図に示す分岐車両3及び対向車両2以外の映像をモノクロ化することができる。
注意喚起制御を行った後、第2判定手段122は、自車両1が分岐車線付き交差点10への進入を継続しているか判定する(ST108)。第2判定手段122は、自車両1の発進制御の判定と同様の要領で、分岐車線付き交差点10への進入の継続を判定することができる。ST108で分岐車線付き交差点10への進入の継続を判定することにより、注意喚起制御後の運転者の行動を判定することができる。
分岐車線付き交差点10への進入が継続されている場合(ST108:YES)、運転支援手段123は、自車両1に対する減速制御を行う(ST109)。この減速制御において、運転支援手段123は、減速制御手段111により減速手段112を稼働させ、自車両1の速度を減速させる。これにより、注意喚起制御を行ったにも関わらず、分岐車線付き交差点10への進入を継続する自車両1を減速又は停止させることができる。
なお、図3に示すST101〜ST106及びST108の判定において、いずれも判定結果がNOであった場合には、処理がST101に戻され、ST101以降の処理が繰り返される。また、ST109で減速制御を行った後、自車両1が走行を再開した場合には、再び図3に示すST101以降の処理が繰り返される。このような一連の動作により、本実施の形態に係る運転支援装置100における運転支援動作が完了する。
なお、図3に示すフローにおいては、分岐車線付き交差点10の手前の右折車線23で停止している場合について説明している(ST102)。しかしながら、図3に示すフローは、自車両1が停止している場合に限定されるものではなく、右折車線23を走行している場合にも適用することができる。この場合、例えば、ST102において、自車両1が右折車線23に入っているかが判定される。
以上説明したように、本実施の形態に係る運転支援装置100においては、分岐車線付き交差点10を撮影した撮影画像内にて、左右方向に移動する車両と上下方向に移動する車両とが存在する状況において、自車両1が走行を継続し又は発進しようとした場合に、自車両1の運転者に対して所定の運転支援が実施される。このため、分岐車線付き交差点10で事故に繋がる可能性がある状況下で運転支援が実施される。これにより、自車両1の運転者の注意力が低下している場合であっても、運転者が、分岐車線付き交差点10を走行する対向車両22の進行方向を誤認識し、間違って分岐車線付き交差点10等に進入しようとするのを防止でき、予防安全性能を向上することができる。
特に、本実施の形態に係る運転支援装置100においては、前方カメラ102に代表される撮像手段が撮影した撮影画像に基づいて、分岐車線付き交差点10における衝突事故を未然に防止している。これにより、レーダー検知器等を用いた運転支援を実施する場合に比べて、低コスト、小規模な装置構成で実現することができる。このため、搭載可能な装置が制限される自動二輪車等の鞍乗型車両にも装備することができる。
また、本実施の形態に係る運転支援装置100においては、自車両1が対向車線22を横切って走行する場合に、自車両1の運転者に対して所定の運転支援が実施される。このため、対向車両2との衝突事故が発生し得る状況で運転支援が実施されるので、効果的に予防安全性能を向上することができる。
さらに、本実施の形態に係る運転支援装置100においては、自車両1の走行車線を含む道路20での走行が許容される場合に、自車両1の運転者に対して所定の運転支援が実施される。一般に、自車両1の走行車線を含む道路20の走行が許容される場合、対向車線22上の対向車両2の走行も許容される。このため、対向車両2との衝突事故が発生し得る状況で運転支援が実施されるので、効果的に予防安全性能を向上することができる。
なお、本実施の形態に係る運転支援装置100において、運転支援手段123が、雨滴量センサ103及び/又は路面センサ104からの検出結果に応じて、運転支援(例えば、注意喚起制御、減速制御)の実施のタイミングを変更することは、実施の形態として好ましい。この場合には、雨滴量や路面状態に応じて運転支援の実施タイミングが変更されることから、自車両1が走行する環境に応じて適切な運転支援を実施することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、運転支援装置100を自車両1である自動四輪車に搭載する例について説明している。しかしながら、運転支援装置100を搭載する車両は、自動二輪車等の鞍乗型車両であってもよい。鞍乗型車両に搭載する場合、運転支援として、直接的に減速制御を実施すると、転倒の可能性がある。本実施の形態のように、注意喚起制御を行った後に減速制御を行うことにより、鞍乗型車両が転倒する事態を回避しながら予防安全性能を向上することができる。
また、上記実施の形態においては、自車両1が右折車線23に停止しているか判定することにより、自車両1が対向車線22を横切って走行するかを判定する場合について説明している。しかしながら、自車両1が対向車線22を横切って走行するかの判定については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、ナビゲーション装置108の位置検出器で検出される自車両1の位置情報から判定するようにしてもよい。
さらに、上記実施の形態においては、振動発生手段の一例としてステアリング振動手段110(図2参照)を例に挙げて説明している。しかしながら、振動発生手段の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、運転者が座るドライバーズシートの座面を振動させる振動発生手段で構成してもよい。