JP2019015395A - 回転慣性質量ダンパ - Google Patents

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Abstract

【課題】回転マスの回転に伴って発生する慣性質量を変更でき、それにより、振動を適切に抑制することが可能な回転慣性質量ダンパを提供する。【解決手段】回転慣性質量ダンパ1は、作動流体HFが充填されたシリンダ2と、シリンダ2内に軸線方向に摺動自在に設けられ、シリンダ2内を第1流体室2dと第2流体室2eに区画するピストン3と、ピストン3をバイパスし、第1及び第2流体室2d、2eに連通するとともに、作動流体HFが充填された連通路5と、連通路5内を流動する作動流体HFの圧力エネルギを回転エネルギに変換するとともに、押しのけ容積を変更可能に構成された可変容量型の流体圧モータ6と、流体圧モータ6により変換された回転エネルギが伝達されることによって回転する回転マス7と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、回転マスの回転に伴って慣性質量を発生させる回転慣性質量ダンパに関する。
従来、この種の回転慣性質量ダンパとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この回転慣性質量ダンパは、筒状に形成された固定筒と、この固定筒に、軸線方向に移動自在に部分的に収容されたねじ軸と、このねじ軸に複数のボールを介して螺合するナットと、ナットに一体に取り付けられ、固定筒に回転自在に支持されるとともに、固定筒の外周に配置された筒状の回転マスを備えている。ねじ軸、ボール及びナットは、いわゆるボールねじを構成している。
以上の構成の回転慣性質量ダンパでは、固定筒及びねじ軸が、構造物の所定の第1及び第2部位にそれぞれ連結され、構造物の振動に伴う第1部位と第2部位の間の相対変位が固定筒及びねじ軸に伝達される。それに伴い、ねじ軸が固定筒に対して軸線方向に移動し、このねじ軸の移動が、ナットで回転運動に変換された状態で回転マスに伝達され、それにより回転マスが回転する。その結果、この回転マスの回転に伴って発生した慣性質量による慣性力が、回転慣性質量ダンパの反力となって第1及び第2部位に作用することにより、構造物の振動が抑制される。
特開2012−37005号公報
地震動など構造物に入力される振動の特性は一定ではなく、その振幅の大きさや周波数はそのときどきで異なり、それに応じて、構造物の揺れ方(応答性状)が変化する。これに対して、上述した従来の回転慣性質量ダンパでは、その構成から明らかなように、回転マスの回転に伴って発生する慣性質量を変更できないことにより、構造物の振動を適切に抑制することができないおそれがある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、回転マスの回転に伴って発生する慣性質量を変更でき、それにより、振動を適切に抑制することが可能な回転慣性質量ダンパを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明による回転慣性質量ダンパは、作動流体が充填されたシリンダと、シリンダ内に軸線方向に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、ピストンをバイパスし、第1及び第2流体室に連通するとともに、作動流体が充填された連通路と、連通路内を流動する作動流体の圧力エネルギを回転エネルギに変換するとともに、押しのけ容積を変更可能に構成された可変容量型の流体圧モータと、流体圧モータにより変換された回転エネルギが伝達されることによって回転する回転マスと、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、振動による外力がシリンダ及びピストンに入力されることにより、ピストンがシリンダ内を摺動し、第1流体室及び第2流体室の一方の側に移動すると、その一方の流体室内の作動流体がピストンで連通路に押し出されることによって、連通路内に他方の流体室側への作動流体の流動が生じる。この作動流体の圧力エネルギは、可変容量型の流体圧モータにより回転エネルギに変換され、変換された回転エネルギが回転マスに伝達されることによって、回転マスが回転する。それに伴い、回転マスの回転慣性質量に応じた慣性質量による反力が発生する。この慣性質量は、シリンダ及びピストンに入力された振動による外力に対する軸線方向の慣性質量である。
この場合、可変容量型の流体圧モータの押しのけ容積(流体圧モータの1回転当たりに押しのける幾何学的容積)を変更することによって、同じ作動流体の圧力エネルギに対する回転マスの回転量を変化させることができるので、回転マスの回転慣性質量に応じた慣性質量を変更でき、それにより、振動を適切に抑制することが可能になる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転慣性質量ダンパにおいて、ピストンには、第1流体室内の作動流体の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる第1リリーフ弁と、第2流体室内の作動流体の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる第2リリーフ弁が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、ピストンに第1及び第2リリーフ弁が設けられており、第1リリーフ弁は、第1流体室内の作動流体の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、第2リリーフ弁は、第2流体室内の作動流体の圧力が上記所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室を互いに連通させる。これにより、第1及び第2流体室内の作動流体の圧力の過大化を防止し、回転慣性質量ダンパ(シリンダ及びピストン)に作用する軸力を適切に制限することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の回転慣性質量ダンパにおいて、連通路に設けられ、開度の変更によって連通路内を流動する作動流体の流動抵抗を調整する調整弁をさらに備えることを特徴とする。
請求項1に係る発明の説明で述べたように、構造物の振動に伴う変位が弾性部材を介してシリンダ及びピストンに伝達されることにより、ピストンがシリンダ内を摺動するのに伴い、ピストンで押圧された作動流体が、連通路、第1及び第2流体室の間を流動する。それに伴って、第1及び第2流体室の間で作動流体の圧力差が発生し、この圧力差は、ピストンに減衰抵抗力として作用する。また、上述した構成によれば、連通路内を流動する作動流体の流動抵抗が、調整弁で調整される。以上から明らかなように、シリンダ、ピストン、連通路、作動流体及び調整弁は、可変減衰ダンパとして機能し、作動流体の流動抵抗を調整弁で調整することによって、その減衰係数を変更することができる。以上のように、本発明によれば、回転マスの回転慣性質量に応じた慣性質量に加え、作動流体などによる減衰係数も変更できるので、振動をより適切に抑制することが可能になる。
本発明の第1実施形態による回転慣性質量ダンパを示す断面図である。 図1の回転慣性質量ダンパのアクチュエータを制御するための制御装置などを示すブロック図である。 図1の回転慣性質量ダンパを、これを適用した構造物の一部とともに概略的に示す図である。 本発明の第2実施形態による回転慣性質量ダンパを示す断面図である。 図4の回転慣性質量ダンパのアクチュエータや調整弁を制御するための制御装置などを示すブロック図である。 図4の回転慣性質量ダンパを、これを適用した構造物の一部とともに概略的に示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による回転慣性質量ダンパ1を示しており、回転慣性質量ダンパ1は、シリンダ2と、シリンダ2内に軸線方向に摺動自在に設けられたピストン3と、ピストン3と一体のピストンロッド4と、シリンダ2に接続された連通路5を備えている。
シリンダ2は、円筒状の周壁2aと、周壁2aの軸線方向の両端部にそれぞれ設けられた円板状の第1端壁2b及び第2端壁2cを、一体に有している。これらの周壁2a、第1及び第2端壁2b、2cで画成された空間は、ピストン3によって第1流体室2dと第2流体室2eに区画されている。第1及び第2流体室2d、2eには、作動流体HFが充填されている。作動流体HFは、粘性を有する適当な流体、例えばシリコンオイルや作動油などで構成されている。
また、シリンダ2の第1端壁2bには、軸線方向に外方に突出する凸部2fが同心状に一体に設けられており、この凸部2fには、自在継手を介して、第1取付具FL1が設けられている。さらに、上記の第2端壁2cの中心にはロッド案内孔2gが形成されている。ピストンロッド4は、一端部がピストン3に一体に連結され、シリンダ2内に軸線方向に延びるとともに、ロッド案内孔2gにシールを介して液密に挿入されており、第2端壁2cから外方に延びている。ピストンロッド4の他端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2が設けられている。
また、ピストン3の外周面は、シールを介して、シリンダ2の周壁2aの内周面に液密に接しており、ピストン3の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の第1連通孔3a及び第2連通孔3b(それぞれ1つのみ図示)が形成されている。第1連通孔3aには第1リリーフ弁11が、第2連通孔3bには第2リリーフ弁12が、それぞれ設けられている。
第1リリーフ弁11は、弁体と、これを閉弁方向に付勢するばねなどで構成されており、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定の上限値よりも小さいときには、第1連通孔3aを閉鎖し、上限値に達したときには、第1連通孔3aを開放する。これにより、第1及び第2流体室2d、2eが第1連通孔3aを介して互いに連通し、第1流体室2d内の圧力が第2流体室2e側に逃がされる。
同様に、第2リリーフ弁12は、弁体と、これを閉弁方向に付勢するばねなどで構成されており、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が上記の上限値よりも小さいときには、第2連通孔3bを閉鎖し、上限値に達したときには、第2連通孔3bを開放する。これにより、第1及び第2流体室2d、2eが第2連通孔3bを介して互いに連通し、第2流体室2e内の圧力が第1流体室2d側に逃がされる。なお、第1及び第2リリーフ弁11、12の上限値を互いに異なる値に設定してもよい。
前記連通路5は、シリンダ2内におけるピストン3の移動範囲の全体においてピストン3をバイパスし、第1及び第2流体室2d、2eに連通するように、シリンダ2に接続されている。また、連通路5の断面積は、シリンダ2の断面積よりも小さな値に設定されており、連通路5には、第1及び第2流体室2d、2eと同様、作動流体HFが充填されている。なお、図1では便宜上、連通路5内の作動流体HFの符号の図示を省略している。
また、回転慣性質量ダンパ1は、可変容量型の流体圧モータ6と、回転マス7をさらに備えている。流体圧モータ6は、例えば周知の斜板式の可変容量型油圧モータであるため、以下、その構成及び動作について簡単に説明する。流体圧モータ6は、回転軸6aや、アクチュエータ6b、斜板、シリンダブロック、ピストン、シュー(いずれも図示せず)などを有するとともに、連通路5の途中に設けられている。このシリンダブロックには、流入ポート及び流出ポートが設けられており、これらの流入ポートと流出ポートは、連通路5及びチェック弁(図示せず)などを介して第1及び第2流体室2d、2eに、互いに並列に接続されている。
流体圧モータ6では、この流入ポートに作動流体HFが流入すると、流入した作動流体HFの圧力エネルギが、上記のシリンダブロックや、ピストン、シュー、斜板により回転軸6aの回転エネルギに変換され、回転軸6aが回転する。斜板の傾転角は、アクチュエータ6bで連続的に変更されるように構成されており、斜板の傾転角の変更により、流体圧モータ6の押しのけ容積(回転軸6aの1回転当たりに押しのける幾何学的容積)vmが連続的に変更されることによって、同じ作動流体HFの圧力に対する回転軸6aの回転量が連続的に変化する。
アクチュエータ6bは、例えば電磁式のものであり、図2に示す制御装置21に接続されている。制御装置21は、CPUや、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されるとともに、電源22に接続されており、アクチュエータ6bを介して斜板の傾転角を変更することによって、流体圧モータ6の押しのけ容積vmを調整する。なお、アクチュエータ6bに制御装置21を有線及び無線のいずれで接続してもよいことは、もちろんである。
回転マス7は、比重の比較的大きな材料、例えば鉄で構成され、円板状に形成されており、回転軸6aに一体に設けられている。流体圧モータ6で作動流体HFの圧力エネルギが回転軸6aの回転エネルギに変換されると、回転マス7は、回転軸6aと一体に回転する。
以上の構成の回転慣性質量ダンパ1は、例えば、図3に示す構造物Bの上下の梁BU、BDに連結され、両者BU、BDの間に水平に延びる。この構造物Bは、商用や居住用の高層の建築物であり、上下の梁BU、BDを含む複数の梁と、複数の柱を互いに井桁状に組み合わせたラーメン構造を有している。この場合、回転慣性質量ダンパ1の第1取付具FL1は、上梁BUから下方に延びる第1連結部材EN1に取り付けられ、それにより、シリンダ2が、第1連結部材EN1を介して上梁BUに連結される。また、第2取付具FL2は、下梁BDから上方に延びる第2連結部材EN2に取り付けられており、それにより、ピストンロッド4が、第2連結部材EN2を介して下梁BDに連結される。第1及び第2連結部材EN1、EN2は、剛性が比較的高い材料、例えば、H形鋼で構成されている。なお、図3では便宜上、連通路5などの一部の構成要素の図示を省略している。
なお、上述した構造物Bに対する回転慣性質量ダンパ1の連結手法は、あくまで一例であり、第1及び第2連結部材EN1、EN2に代えて、V字状や逆V字状のブレース材を用いてもよく、回転慣性質量ダンパ1を上下方向に延びるように連結してもよい。また、シリンダ2及びピストン3を連結する構造物の部位も、上下の梁BU、BDに限らず、任意である。
次に、回転慣性質量ダンパ1の動作について説明する。構造物Bが振動するのに伴い、上下の梁BU、BDの間に水平方向の相対変位が発生すると、この相対変位が、第1及び第2連結部材EN1、EN2を介して、シリンダ2及びピストンロッド4に外力として伝達されることにより、シリンダ2とピストンロッド4が軸線方向に相対的に移動し、ピストン3がシリンダ2内を摺動する。
この場合、ピストン3が第1流体室2d側(図1の左方)に移動したときには、第1流体室2d内の作動流体HFの一部が、ピストン3によって連通路5に押し出されることで、連通路5内に第2流体室2e側(右方)への作動流体HFの流動が生じる。これとは逆に、ピストン3が第2流体室2e側(右方)に移動したときには、第2流体室2e内の作動流体HFの一部が、ピストン3によって連通路5に押し出されることで、連通路5内に第1流体室2d側(左方)への作動流体HFの流動が生じる。
この流動による作動流体HFの圧力エネルギは、流体圧モータ6により回転軸6aの回転エネルギに変換され、回転軸6aが回転マス7とともに回転する。以上の作動流体HFの流動及び回転マス7の回転に伴い、回転マス7による慣性質量(回転マス7の回転慣性質量に基づく慣性質量)Mrと、連通路5内の作動流体HFによる慣性質量Mhとを合わせた慣性質量Md(Md=Mr+Mh)が発生する。この慣性質量Mdは、シリンダ2及びピストン3に入力された振動による外力に対する軸線方向の慣性質量であり、また、回転マス7による慣性質量Mr及び作動流体HFによる慣性質量Mhは、次式(1)及び(2)によりそれぞれ表される。
Mr=(2π/Xm)2・Im
={2π・Ap/vm}2・Im ……(1)
Mh=ρ・Ae・l・α2 ……(2)
式(1)において、Xmは、作動流体HFの流動により回転軸6aが1回転するのに要する、シリンダ2に対するピストン3の移動量であり、ボールねじ機構を用いた回転慣性質量ダンパにおけるボールねじのリード長Ldに相当する。また、Apは、ピストン3の横断面積であり、Imは、回転マス7の慣性モーメントであり、回転マス7の実質量及び径によって定まる。なお、ピストン3の横断面積Apは、ピストン3が第1流体室2d側に摺動しているときには、ピストン3の横断面積そのものの値(円周率・ピストン3の半径の二乗)になり、ピストン3が第2流体室2e側に摺動しているときには、ピストン3の横断面積からピストンロッド4の横断面積を減算した値になる。
式(2)において、ρは作動流体HFの密度であり、Aeは連通路5の横断面積、lは連通路5の長さであって、αは、連通路5の横断面積Aeに対するピストン3の横断面積Apの比である。また、作動流体HFが連通路5内を流動するのに伴って、作動流体HFの粘性抵抗による反力が発生する。
上記の式(1)から明らかなように、制御装置21により流体圧モータ6の押しのけ容積vmが調整されることによって、回転マス7による慣性質量Mrを含む回転慣性質量ダンパ1全体の慣性質量Mdが制御される。この場合、押しのけ容積vmが小さいほど、同じ作動流体HFの圧力エネルギに対して回転軸6a及び回転マス7の回転量が大きくなるため、慣性質量Mdは大きくなる。このことは、式(1)からも明らかである。
制御装置21は、例えば、構造物Bの振動度合を表すパラメータ(例えば振動による上下の梁BU、BDの間の相対加速度)で表される振動度合が大きいほど、押しのけ容積vmをより小さな値に調整することによって、慣性質量Mdをより大きな値に制御する。これにより、構造物Bの振動度合が大きいほど、回転慣性質量ダンパ1の慣性質量Mdによる反力がより大きくなることによって、構造物Bの振動が適切に抑制される。上下の梁BU、BDの間の相対加速度などといった構造物Bの振動度合は、センサなどを用いて取得(検出/算出)される。
なお、回転慣性質量ダンパ1を、例えば、第1及び第2連結部材EN1、EN2に代えて、比較的剛性の低い弾性部材(図示せず)を介して、上下の梁BU、BDに連結し、この弾性部材とともに付加振動系を構成してもよい。その場合には、例えば、構造物Bに入力される振動のうちの卓越する周波数成分の周波数である卓越周波数を取得し、構造物Bの振動中、構造物Bの所定の複数の固有振動数のうちの、取得された卓越周波数に最も近い固有振動数である近傍固有振動数に、付加振動系の固有振動数が同調するように、慣性質量Mdを制御してもよい。
この付加振動系の固有振動数は、弾性部材の剛性(ばね定数)をkとすると、sqrt(k/Md)/2πで表される。また、卓越周波数は、例えば次のようにして取得(算出)される。すなわち、地震計で計測された地震動を高速フーリエ変換によって周波数解析し、それにより、地震動のフーリエ振幅スペクトルを、地震動の周波数(振動数)ごとに算出する。そして、算出された複数のフーリエ振幅スペクトルを互いに比較し、それらのうちの最も大きいフーリエ振幅スペクトルに対応する周波数を、卓越周波数として設定(算出)する。以上により、構造物に入力されるそのときどきの振動に応じて慣性質量Mdが適切に変更されることによって、構造物の振動が付加振動系で適切に抑制される。
また、上述したように、回転慣性質量ダンパ1及び弾性部材で付加振動系を構成する場合にも、その構造物への連結手法は任意であり、また、連結する構造物の部位も任意である。
以上のように、第1実施形態によれば、振動による外力がシリンダ2及びピストン3に入力されることにより、ピストン3がシリンダ2内を摺動し、第1流体室2d及び第2流体室2eの一方の側に移動すると、その一方の流体室内の作動流体HFがピストン3で連通路5に押し出されることによって、連通路5内に他方の流体室側への作動流体HFの流動が生じる。この作動流体HFの圧力エネルギは、流体圧モータ6により回転エネルギに変換され、変換された回転エネルギが回転マス7に伝達されることによって、回転マス7が回転する。それに伴い、回転マス7の回転慣性質量に応じた慣性質量Mdによる反力が発生する。
この場合、流体圧モータ6の押しのけ容積vmを変更することによって、同じ作動流体HFの圧力エネルギに対する回転マス7の回転量を変化させることができるので、慣性質量Mdを変更でき、それにより、振動を適切に抑制することが可能になる。
また、ピストン3に第1及び第2リリーフ弁11、12が設けられており、第1リリーフ弁11は、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定圧力に達したときに開弁し、第2リリーフ弁12は、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が上記所定圧力に達したときに開弁し、第1及び第2流体室2d、2eを互いに連通させる。これにより、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力の過大化を防止し、回転慣性質量ダンパ1(シリンダ2及びピストン3)に作用する軸力を適切に制限することができる。
次に、図4〜図6を参照しながら、本発明の第2実施形態による回転慣性質量ダンパ31について説明する。この回転慣性質量ダンパ31は、第1実施形態と比較して、連通路5に設けられた調整弁32をさらに備える点が主に異なっている。図4〜図6において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図4に示す調整弁32は、連通路5内を流動する作動流体HFの流動抵抗を調整するためのものであって、例えば、常開タイプの電磁弁で構成されており、その開度を連続的に変更可能である。また、図5に示すように、調整弁32は、前記制御装置21に接続されており、その開度が制御装置21によって変更される。なお、調整弁32に制御装置21を有線及び無線のいずれで接続してもよいことは、もちろんである。
以上の構成の回転慣性質量ダンパ31は、例えば、第1実施形態の場合と同様に、図6に示す構造物Bの上下の梁BU、BDに連結され、両者BU、BDの間に水平に延びる。シリンダ2は第1連結部材EN1を介して上梁BUに、ピストンロッド4は第2連結部材EN2を介して下梁BDに、それぞれ連結される。なお、図6では便宜上、連通路5などの一部の構成要素の図示を省略している。
なお、上述した構造物Bに対する回転慣性質量ダンパ31の連結手法は、あくまで一例であり、また、シリンダ2及びピストン3を連結する構造物の部位も、上下の梁BU、BDに限らず、任意である。
次に、回転慣性質量ダンパ31の動作について説明する。構造物Bが振動するのに伴い、上下の梁BU、BDの間に水平方向の相対変位が発生すると、この相対変位が第1実施形態の場合と同様にシリンダ2及びピストンロッド4に伝達される。これにより、シリンダ2とピストンロッド4が軸線方向に相対的に移動し、ピストン3がシリンダ2内を摺動するのに伴い、第1実施形態で説明したように、作動流体HFが、連通路5、第1及び第2流体室2d、2eの間を流動するとともに、連通路5内を流動する作動流体HFの圧力エネルギが、流体圧モータ6により回転軸6aの回転エネルギに変換され、回転軸6aが回転マス7とともに回転する。
以上の作動流体HFの流動及び回転マス7の回転に伴い、慣性質量Md(回転マス7による慣性質量Mrと作動流体HFによる慣性質量Mh)が発生し、慣性質量Mdは、制御装置21による流体圧モータ6の押しのけ容積vmの調整によって、制御される。制御装置21による慣性質量Mdの制御は、第1実施形態で説明したように行ってもよい。
また、上述したように作動流体HFが連通路5を流動するのに伴い、第1及び第2流体室2d、2eの間で作動流体HFの圧力差が発生し、この圧力差は、ピストン3に減衰抵抗力として作用する。さらに、連通路5内の作動流体の流動抵抗は、調整弁32により調整される。以上から明らかなように、シリンダ2、ピストン3、連通路5、作動流体HF及び調整弁32は、可変減衰ダンパとして機能し、制御装置21による調整弁32の開度の変更により連通路5内を流動する作動流体HFの流動抵抗が調整されることによって、その減衰係数が制御される。この場合、調整弁32の開度が小さいほど、作動流体HFの流動抵抗が大きくなるため、可変減衰ダンパ(回転慣性質量ダンパ31)の減衰係数はより大きくなる。
制御装置21は、例えば、構造物Bの振動度合を表すパラメータ(例えば振動による上下の梁BU、BDの間の相対加速度)で表される振動度合が大きいほど、調整弁32の開度をより小さな値に変更することによって、回転慣性質量ダンパ31の減衰係数をより大きな値に制御する。これにより、構造物Bの振動度合が大きいほど、回転慣性質量ダンパ31の減衰抵抗力がより大きくなることによって、構造物Bの振動が適切に抑制される。
なお、回転慣性質量ダンパ31を、例えば前述したように、第1及び第2連結部材EN1、EN2に代えて、比較的剛性の低い弾性部材(図示せず)を介して、上下の梁BU、BDに連結し、この弾性部材とともに付加振動系を構成するとともに、構造物Bの振動中、取得された卓越周波数に最も近い固有振動数である近傍固有振動数に、付加振動系の固有振動数が同調するように、慣性質量Mdを制御してもよい。その場合には、構造物Bの振動中、定点理論に従い、近傍固有振動数と、制御された回転慣性質量ダンパ31の慣性質量Mdとに応じて、構造物Bの応答倍率の最大値が最小になるように、回転慣性質量ダンパ31の減衰係数を制御することによって、構造物Bの振動が、付加振動系でより適切に吸収(抑制)される。また、この場合、減衰係数は、例えば「建築物の変位制御設計 井上範夫/五十子幸樹共著 丸善出版」の第104頁〜第110頁などに記載された手法により算出された最適値になるように、制御される。
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様、流体圧モータ6の押しのけ容積vmを変更することによって、回転慣性質量ダンパ31の慣性質量Mdを変更することができる。また、回転慣性質量ダンパ31のシリンダ2、ピストン3、連通路5、作動流体HF及び調整弁32が可変減衰ダンパとして機能し、連通路5内を流動する作動流体HFの流動抵抗を調整弁32で調整することによって、その減衰係数を変更することができる。以上により、振動をより適切に抑制することが可能になる。
なお、第2実施形態では、調整弁32として、開度を連続的に変更可能な電磁弁を用いているが、開度を段階的に変更可能な電磁弁を用いてもよい。あるいは、調整弁として、例えば、ピストン3と連動して駆動されるタイプの弁や、流体圧の作用で駆動されるタイプの弁を用いてもよい。前者の場合には、例えば、本出願人による特願2017−096599号の図1〜図11などに開示されたような弁を用いることができ、後者の場合には、例えば、特願2017−096599号の図13〜図23などに開示されているように、作動流体HFの圧力の作用で駆動されるタイプの弁を用いることができる。
あるいは、回転慣性質量ダンパの減衰係数を変更するための構成として、調整弁32に代えて、流体圧モータ6が設けられた連通路5と並列に第1及び第2流体室2d、2eに連通するとともに作動流体が充填された連通路と、この連通路の開度(作動流体の流動抵抗)を変更可能な弁とを用いてもよい。この場合の減衰係数変更用の連通路として、シリンダに接続された連通路やピストンに形成された連通路(連通孔)を用いてもよく、また、減衰係数変更用の弁として、適宜、上記の電磁弁や流体圧駆動式の弁などを用いてもよい。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、流体圧モータ6は、斜板式のものであるが、他の適当な可変容量型の流体圧モータ、例えば、斜軸式のものや、ベーン式のものなどでもよく、また、流体圧モータ6は、押しのけ容積を連続的に変更可能に構成されているが、段階的に変更可能に構成されていてもよい。また、実施形態では、ピストン3に第1及び第2リリーフ弁11、12を設けているが、これらの少なくとも一方を省略してもよい。
さらに、実施形態では、連通路5を、シリンダ2内におけるピストン3の移動範囲の全体においてピストン3をバイパスし、第1及び第2流体室2d、2eに連通するように、シリンダ2に接続しているが、本出願人による特開2015−206381号公報に開示されているように、シリンダ内におけるピストンの移動範囲の一部においてピストンをバイパスし、第1及び第2流体室に連通するように、シリンダに接続してもよい。
また、実施形態では、流体圧モータ6の回転軸6aに回転マス7を、一体に設けているが、ギヤなどの伝達機構を介して連結してもよい(本出願人による特願2017−111622号など参照)。あるいは、本出願人による特許第5191579号の図15などに記載されているように、粘弾性ゴムを介して連結してもよく、さらには、特許第5191579号の図17に記載されているように、回転軸6aに複数の回転マスを設けてもよい。この場合、複数の回転マスの実質量を、互いに同じ値に設定してもよく、互いに異なる値に設定してもよい。さらに、実施形態では、シリンダ2及びピストン3はそれぞれ1つずつであるが、本出願人による特願2016−015130号に開示されているように、それぞれ複数、設けてもよい。
また、実施形態では、ピストンロッド4がピストン3の軸線方向の一方の側に延びているが、両側に延びるように設けてもよく、その場合には、ピストンロッドをシリンダの両外側に延びるように設けてもよい。さらに、実施形態では、ピストンロッド4をピストン3に直接、連結しているが、本出願人による特許第5191579号の図2などに記載されているように、皿ばねを介して連結してもよい。また、実施形態では、ピストン3に、ピストンロッド4を一体に設けているが、可撓性を有する部材、例えばケーブルを一体に設けてもよく、この場合、本出願人による特開2016−070307号公報の図2などに記載されているように、このケーブルを定滑車及び動滑車に折り返した状態で巻き回してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
1 回転慣性質量ダンパ
2 シリンダ
2d 第1流体室
2e 第2流体室
3 ピストン
5 連通路
6 流体圧モータ
7 回転マス
11 第1リリーフ弁
12 第2リリーフ弁
HF 作動流体
31 回転慣性質量ダンパ
32 調整弁

Claims (3)

  1. 作動流体が充填されたシリンダと、
    当該シリンダ内に軸線方向に摺動自在に設けられ、前記シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、
    当該ピストンをバイパスし、前記第1及び第2流体室に連通するとともに、作動流体が充填された連通路と、
    前記連通路内を流動する作動流体の圧力エネルギを回転エネルギに変換するとともに、押しのけ容積を変更可能に構成された可変容量型の流体圧モータと、
    当該流体圧モータにより変換された回転エネルギが伝達されることによって回転する回転マスと、
    を備えることを特徴とする回転慣性質量ダンパ。
  2. 前記ピストンには、前記第1流体室内の作動流体の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、前記第1及び第2流体室を互いに連通させる第1リリーフ弁と、前記第2流体室内の作動流体の圧力が前記所定圧力に達したときに開弁し、前記第1及び第2流体室を互いに連通させる第2リリーフ弁が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の回転慣性質量ダンパ。
  3. 前記連通路に設けられ、開度の変更によって当該連通路内を流動する作動流体の流動抵抗を調整する調整弁をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の回転慣性質量ダンパ。
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