JP2022128416A - 圧力モータを用いたダンパ - Google Patents

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滋樹 中南
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千秋 籠宮
Chiaki Kagomiya
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Abstract

【課題】圧力モータにフライホイールによる過大な荷重が作用するのを防止できることで、圧力モータを長期にわたって安定して使用することができ、また内部の作動流体の状態を外部から容易に把握することができる圧力モータを用いたダンパを提供する。【解決手段】作動流体HFが充填されたシリンダ2と、シリンダ2内を第1流体室2eと第2流体室2fに区画するピストン3と、第1流体室2eと第2流体室2fを連通する連通路4と、連通路4に連通するケーシング14に回転自在に収容された回転体16を有し、ピストン3の摺動に伴う作動流体HFの流動を回転体16の回転運動に変換する圧力モータ5と、圧力モータ5とシリンダ2の間に配置され、回転体16に同軸状に連結されたフライホイール6と、シリンダ2の外周面上に設けられ、フライホイール6を回転自在に支持するフライホイール支持装置7と、を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、構造物などの振動を抑制するためのダンパに関し、特に作動流体の圧力を回転運動に変換する圧力モータを用いたダンパに関する。
従来、この種のダンパとして、例えば本出願人がすでに出願した特許文献1に開示されたものが知られている。このダンパでは、作動油が充填されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室及び第2流体室に区画するピストンと、ピストンをバイパスし、シリンダ内の第1流体室と第2流体室を連通する連通路と、この連通路に設けられ、圧力モータとしての歯車モータと、この歯車モータに連結されたフライホイールとを備えている。
歯車モータは、内接式のものであり、連通路に連通するケーシング内には、内側に複数の歯(内歯)を有するアウターロータと、外側に複数の歯(外歯)を有し、内歯に噛み合うとともに、その内歯よりも外歯が1つ少なく形成されたインナーロータとが、回転自在に設けられている。また、インナーロータの中心部には、ケーシングの外部に突出する出力軸が一体に連結されており、その出力軸の先端部に、フライホイールが同心状に連結されている。
上記のように構成されたダンパは、例えば構造物において相対変位する2つの部位の間に取り付けられる。地震時などに構造物が振動し、上記2つの部位が相対変位すると、ダンパのピストンがシリンダ内を移動する。それに伴い、ダンパの作動油は、第1流体室及び第2流体室の一方から連通路に流入し、歯車モータのケーシング内を通って、第1流体室及び第2流体室の他方に向かって流動する。上記のケーシング内での作動油の流動による圧力が、歯車モータのアウターロータ及びインナーロータの回転運動に変換され、歯車モータの出力軸に連結されたフライホイールが回転する。このように、フライホイールが回転することにより、その慣性質量効果が得られ、構造物の振動が抑制される。
特開2020-94680号公報
上記のダンパでは、フライホイールが比較的重い重量を有するため、歯車モータの出力軸(回転軸)などにおいて、その径方向や長さ方向に対し、比較的大きな荷重(ラジアル荷重及び/又はスラスト荷重)が作用することがある。これらの荷重が、歯車モータの許容荷重を超えると、歯車モータ内のアウターロータ及びインナーロータにおいて焼き付きが生じ、その結果、歯車モータが適切に作動できなくなったり、歯車モータの寿命が低下したりするという問題がある。
また、フライホイールの回転時に、そのフライホイールが、回転による慣性力によってエネルギを有し、そのエネルギが駆動力として歯車モータに作用すると、連通路における歯車モータの上流側の作動油が歯車モータで吸引され、それにより、その上流側の作動油の圧力が負圧に移行し、キャビテーションが発生するおそれがある。キャビテーションでは、作動油に溶存していた気泡(エア)が発生し、そのエアが歯車モータ内に混入すると、内部部品の破損や摩耗などの不具合が生じるおそれがあり、特に、回転するアウターロータやインナーロータにエアが衝突することで、大きな音鳴りや振動の原因になる。このため、前述した特許文献1のダンパでは、連通路にアキュムレータを設置し、このアキュムレータによって、作動油の圧力を蓄えるとともに、その蓄えた圧力によって、作動油を加圧し、負圧になるのを回避することで、キャビテーションの発生を防止している。
しかし、上記のダンパでは、シリンダ、連通路及びアキュムレータ内の作動油は外部から視認することができず、そのため、作動油の圧力状態も外部から把握することが困難である。例えば、ダンパのシリンダや連通路に亀裂が生じることで、作動油が本来の適正な充填量や圧力よりも減少している場合に、その不具合を簡単に発見することができないという問題もある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、圧力モータにフライホイールによる過大な荷重が作用するのを防止できることで、圧力モータを長期にわたって安定して使用することができ、また内部の作動流体の状態を外部から容易に把握することができる圧力モータを用いたダンパを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、作動流体が充填されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、ピストンをバイパスし、第1流体室と第2流体室を連通する連通路と、連通路に配置され、連通路に連通するケーシングに回転自在に収容された回転体を有し、ピストンの摺動に伴う作動流体の流動を回転体の回転運動に変換する圧力モータと、圧力モータとシリンダとの間に配置されるとともに、回転体に同軸状に連結されたフライホイールと、シリンダの外周面上に設けられ、フライホイールを、シリンダの径方向に延びる軸線を中心として回転自在に支持するフライホイール支持装置と、を備えていることを特徴とする。
このダンパは、圧力モータを用いるものであり、ダンパが設置された構造物が振動すると、シリンダ内のピストンが摺動し、それに伴い、作動流体が連通路内及び圧力モータのケーシング内において流動し、その流動による作動流体の圧力が圧力モータの回転体の回転運動に変換され、その回転体に同軸状に連結されたフライホイールが回転駆動される。このようなフライホイールの回転により、その回転慣性質量に応じた反力が構造物に作用する回転慣性効果が得られ、その結果、構造物の振動が抑制される。
また、シリンダの外周面上には、フライホイール支持装置が設けられており、このフライホイール支持装置によって、フライホイールが、シリンダの径方向に延びる軸線を中心として回転自在に支持されている。このように、比較的重いフライホイールを、ダンパにおいて比較的強固なシリンダの外周面上に設けられたフライホイール支持装置によって回転自在に支持するので、圧力モータの出力軸(回転軸)にフライホイールによる過大な荷重(ラジアル荷重及び/又はスラスト荷重)が作用するのを防止することができる。これにより、圧力モータを長期にわたって安定して使用することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、フライホイールには、その中心部からシリンダ側に突出する突出軸部が設けられており、フライホイール支持装置は、突出軸部を回転自在に支持する軸受と、軸受をシリンダの外周面上に保持する軸受保持部と、を有していることを特徴とする。
この構成によれば、フライホイールの中心部からシリンダ側に突出する突出軸部が、フライホイール支持装置の軸受によって回転自在に支持され、この軸受が、軸受保持部によって、シリンダの外周面上に保持される。このように、上記の軸受及び軸受保持部を有するフライホイール支持装置により、回転自在のフライホイールを安定した状態でしっかりと支持することができる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載に圧力モータを用いたダンパにおいて、突出軸部は、所定の径を有する軸本体と、この軸本体のシリンダ側の端部に設けられ、軸本体の径よりも大きな径を有するフランジと、を有しており、軸受は、フランジに外嵌されたラジアル軸受と、フランジを、一方の面側と他方の面側から挟んだ状態に設けられた一対のスラスト軸受と、を有していることを特徴とする。
この構成によれば、突出軸部は、所定の径を有する軸本体を有し、その軸本体のシリンダ側の端部に、軸本体の径よりも大きな径を有するフランジが設けられている。また、突出軸部を支持する軸受は、ラジアル軸受と一対のスラスト軸受を有しており、ラジアル軸受がフランジに外嵌され、一対のスラスト軸受が、フランジを一方の面側と他方の面側から挟んだ状態に設けられている。上記のラジアル軸受により、突出軸部のラジアル荷重を支持するので、フライホイールの回転に伴い圧力モータの回転体に作用するラジアル荷重を大幅に低減することができる。また、上記の一対のスラスト軸受により、突出軸部のスラスト荷重を支持するので、圧力モータの回転体に作用するスラスト荷重を大幅に低減することができる。
請求項4に係る発明は、請求項2に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、突出軸部は、所定の径を有しており、軸受は、突出軸部に外嵌されたラジアル軸受を有していることを特徴とする。
この構成によれば、突出軸部が所定の径を有しており、この突出軸部を回転自在に支持する軸受が、突出軸部に外嵌されたラジアル軸受で構成されている。このような比較的簡易な構成の軸受により、フライホイール支持装置を構成することができる。
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、シリンダは、水平に延びるように配置され、フライホイールは、シリンダの下側に配置されており、突出軸部は、所定の径を有する軸本体と、この軸本体のシリンダ側の端部に設けられ、軸本体の径よりも大きな径を有するフランジと、を有しており、軸受は、フランジを下方から支持した状態で回転自在に支持するスラスト軸受を有していることを特徴とする。
この構成によれば、シリンダが水平に延びるように配置されるとともに、フライホイールがシリンダの下側に配置される。また、突出軸部は、軸本体のシリンダ側の端部にフランジを有しており、このフランジがスラスト軸受を有する軸受で下方から支持した状態で回転自在に支持されている。これにより、フライホイールがシリンダの下側に配置される場合でも、フライホイールの重量をしっかりと支持できるとともに、圧力モータの回転体に作用するスラスト荷重を大幅に低減することができる。
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれかに記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、連通路に連通するように設けられ、作動流体におけるキャビテーションを防止するために、作動流体の圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力によって作動流体を加圧するアキュムレータを、さらに備えており、アキュムレータは、連通路に連通するケーシングと、このケーシング内に摺動自在に設けられたアキュムレータ用ピストンと、このアキュムレータ用ピストンを連通路側に付勢するばねと、アキュムレータ用ピストンと一体に設けられ、アキュムレータ用ピストンの摺動方向に沿って延びかつケーシングから外部に突出し、作動流体の圧力状態を検知するための検知棒と、を有していることを特徴とする。
この構成によれば、連通路に連通するように設けられたアキュムレータにより、作動流体の圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力によって、作動流体を例えば飽和蒸気圧以上に加圧する。これにより、圧力モータの作動に伴う作動流体におけるキャビテーションを防止でき、キャビテーションに起因する音鳴りなどの不具合を回避することができる。
また、アキュムレータでは、連通路に連通するケーシング内に、アキュムレータ用ピストンが摺動自在に設けられ、このアキュムレータ用ピストンがばねで連通路側に付勢されるとともに、アキュムレータ用ピストンに、ケーシングから外部に突出する検知棒が一体に設けられている。アキュムレータ用ピストンは、連通路における作動流体の内圧に応じて、ケーシング内を摺動し、それに伴い、ケーシングからの検知棒の突出長さが変化する。このように、検知棒の突出長さを外部から視認することで、作動流体の内圧の状態、例えば、検知棒の突出長さが短いときには作動流体の内圧が低いことがわかる一方、検知棒の突出長さが長いときには、作動流体の内圧が高いことがわかる。このように、ダンパの外部から、作動流体の内圧の状態を、容易に把握することができる。
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、ケーシング内には、作動流体が所定の内圧を有する初期状態において、作動流体で押圧されるアキュムレータ用ピストンが、ばねの付勢力に抗して当接し、それ以上の移動が阻止されるストッパが設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、作動流体が所定の内圧を有する初期状態では、アキュムレータ用ピストンは、作動流体で押圧され、ばねの付勢力に抗してストッパに当接する。このような初期状態から、例えばダンパのシリンダや連通路に亀裂が生じることなどによって、作動流体が漏出すると、作動流体の内圧が低下し、それにより、アキュムレータ用ピストンがばねの付勢力で、ストッパから離れ、連通路側に移動する。これに伴い、アキュムレータ用ピストンと一体の検知棒において、ケーシングからの突出長さが短くなるように変化する。したがって、検知棒の突出長さの変化を視認することで、作動流体の漏出などによるダンパの不具合を容易に発見することが可能になる。
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれかに記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、連通路に設けられ、連通路を流れる作動流体の流動度合を調整することにより、ダンパの減衰性能を調整する減衰性能調整機構を、さらに備えていることを特徴とする。
この構成によれば、連通路に設けられた減衰性能調整機構によって、連通路を流れる作動流体の流動度合を調整することにより、ダンパの減衰性能を容易に調整することができる。
請求項9に係る発明は、作動流体が充填されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、ピストンをバイパスし、第1流体室と第2流体室を連通する連通路と、連通路に配置され、連通路に連通するケーシングに回転自在に収容された回転体を有し、ピストンの摺動に伴う作動流体の流動を回転体の回転運動に変換する圧力モータと、回転体に同軸状に連結されたフライホイールと、シリンダの外周面上に固定され、圧力モータを支持するとともに、フライホイールを回転自在に支持する圧力モータ・フライホイール支持装置と、を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、前述した請求項1と同様、フライホイールの回転によって、その回転慣性質量に応じた反力が構造物に作用する回転慣性効果が得られることにより、構造物の振動を抑制することができる。また、シリンダの外周面上には、圧力モータ・フライホイール支持装置が固定されており、この支持装置によって、圧力モータが支持されるとともに、フライホイールが回転自在に支持される。これにより、圧力モータを安定して支持しながら、圧力モータにフライホイールによる過大な荷重が作用するのを防止でき、圧力モータを長期にわたって安定して使用することができる。
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、圧力モータは、回転体と一体に回転可能に構成されるとともに、ケーシングから外部に突出する出力軸を、さらに有しており、フライホイールは、その中心部に設けられた中心軸部を有しており、圧力モータ・フライホイール支持装置は、シリンダの外周面上に固定されるベース部と、このベース部に設けられた支持壁部とを有するホルダと、ホルダの支持壁部に設けられ、フライホイールの中心軸部を回転自在に支持する軸受と、を有しており、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸とが、同軸状に連結されていることを特徴とする。
この構成によれば、圧力モータ・フライホイール支持装置は、ホルダ及び軸受を有しており、そのホルダが、ベース部を介して、シリンダの外周面上に固定され、ホルダの支持壁部に設けられた軸受に、フライホイールの中心軸部が回転自在に支持されている。そして、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸とが同軸状に連結されている。これにより、圧力モータの出力軸の回転に伴い、フライホイールを安定した状態で回転させることができる。
請求項11に係る発明は、請求項10に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸とが、直結されていることを特徴とする。
この構成によれば、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸が直結されているので、圧力モータによる回転力を、出力軸を介して、フライホイールに直接、伝えることができる。また、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸とを連結するために、特別な連結具などを必要とすることがない。これにより、特別な連結具を用いることなく、フライホイールと圧力モータを連結することができ、圧力モータによるフライホイールの回転を効率よく行うことができる。
請求項12に係る発明は、請求項10に記載の圧力モータを用いたダンパにおいて、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸とが、互いに間隔を隔てた状態で、所定の連結具を介して連結されていることを特徴とする。
この構成によれば、フライホイールの中心軸部と圧力モータの出力軸とが、所定の連結具を介して連結され、加えて、上記の中心軸部と出力軸が互いに間隔を隔てた状態になっている。これにより、例えばシリンダの外径やサイズ、中心軸部や出力軸の長さなどに応じて、圧力モータとフライホイールの間の距離を調整することができ、また、圧力モータによるフライホイールの円滑な回転を確保することができる。
本発明の第1実施形態によるダンパについて、部分的に切り欠いた状態で示す断面図であり、(a)は(b)のダンパにおける歯車モータ及びフライホイールの横断面図、(b)はダンパ全体の縦断面図である。 図1(b)に示すダンパにおけるフライホイール支持装置及びその周囲を拡大して示す図である。 フライホイール支持装置の変形例を示す図である。 図1(b)に示すダンパにおけるアキュムレータを拡大して示す図である。 アキュムレータに作動油の内圧が作用するときの状態を説明するための図であり、(a)は初期状態、(b)は初期状態よりも作動油が高圧の状態、(c)は初期状態よりも作動油が低圧の状態を示す。 ダンパの動作を説明するための図であり、ピストンが左方に移動するときの作動油の流動方向及び歯車モータの回転方向を示している。 図6と同様の図であり、ピストンが右方に移動するときの作動油の流動方向及び歯車モータの回転方向を示している。 本願発明の第2実施形態によるダンパについて、部分的に切り欠いた状態で示す断面図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、(c)のダンパにおける左右の減衰性能調整機構を拡大して示す図、(c)はダンパ全体の縦断面図である。 ダンパの動作を説明するための図であり、ピストンが左方に移動するときの作動油の流動方向を示している。 図9と同様の図であり、ピストンが右方に移動するときの作動油の流動方向を示している。 本発明の第3実施形態によるダンパについて、部分的に切り欠いた状態で示す断面図であり、(a)はダンパ全体の縦断面図、(b)は(a)のダンパにおけるフライホイール支持装置及びその周囲を拡大して示す図である。 本発明の第4実施形態によるダンパについて、部分的に切り欠いた状態を示し、ダンパ全体の縦断面図である。 シリンダ上に設置された歯車モータ及びフライホイールを拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。 シリンダ上に設置された歯車モータとフライホイールの連結構造の変形例を拡大して示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)はホルダの側壁部を省略した状態の側面図である。 (a)及び(b)はそれぞれ、図8(a)及び(b)に対応し、左右の減衰性能調整機構の変形例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1(b)は、本発明の第1実施形態によるダンパを示している。同図に示すように、このダンパ1は、水平に延びるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に設けられたピストン3と、ピストン3をバイパスし、シリンダ2内に連通する連通路4と、連通路4に設けられた歯車モータ5(圧力モータ)と、歯車モータ5とシリンダ2との間に配置され、歯車モータ5の出力軸17に連結されたフライホイール6と、シリンダ2に設けられ、フライホイール6を回転自在に支持するフライホイール支持装置7と、連通路4において、歯車モータ5の両側の所定位置に設けられた一対のアキュムレータ8、8などを備えている。
シリンダ2は、円筒状の周壁2aと、周壁2aの両端部に設けられた第1及び第2端壁2b、2cを一体に有し、これらの3つの壁2a~2cによって、シリンダ2の内部空間が画成されている。第1端壁2bには、同心状の突出部2dが一体に形成され、その端部には、自在継手を介して、第1取付具FL1が設けられている。
ピストン3は、シリンダ2内に、その軸線方向に摺動自在に設けられており、ピストン3により、シリンダ2の内部空間が、第1流体室2eと第2流体室2fに区画されている。これらの第1及び第2流体室2e、2f、並びに連通路4には、適度な粘性を有する作動油HF(作動流体)が充填されている。
ピストン3には、ピストンロッド9が同心状に一体に設けられている。ピストンロッド9は、ピストン3から第2端壁2cの側(図1の右側)に延び、さらに、第2端壁2cのロッド案内孔2gを液密に貫通した状態で、外方に延びている。ピストンロッド9の外側(図1の右側)の端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2が設けられている。
また、ピストン3には、軸線方向に貫通する第1連通孔3a及び第2連通孔3bが形成されている。第1及び第2連通孔3a、3bには、第1リリーフ弁11及び第2リリーフ弁12がそれぞれ設けられている。第1及び第2リリーフ弁11、12は、互いに同じ構成を有し、常閉弁として構成されており、弁体と、その弁体を閉弁方向に付勢するばねとを有している。
第1リリーフ弁11は、第1流体室2e内の作動油HFの圧力が所定の第1所定圧に達するまで、第1連通孔3aを閉鎖し、第1所定圧に達したときに、第1連通孔3aを開放する。これにより、第1流体室2e内の圧力が、第1連通孔3aを介して第2流体室2f側に逃がされ、第1所定圧以下に制限される。同様に、第2リリーフ弁12は、第2流体室2f内の圧力が第1所定圧に達するまで、第2連通孔3bを閉鎖し、第1所定圧に達したときに、第2連通孔3bを開放する。これにより、第2流体室2f内の圧力が、第2連通孔3bを介して第1流体室2e側に逃がされ、第1所定圧以下に制限される。
シリンダ2の周壁2aの両端上部には、一対の連通口2h、2hが形成されており、両連通口2h、2hに、連通路4が接続されている。
連通路4は、シリンダ2の長さ方向とほぼ平行に延び、歯車モータ5が設けられた主通路部4aと、この主通路部4aの両端部からほぼ直角に延び、シリンダ2の連通口2h、2hに接続された一対のシリンダ接続通路部4b、4bで構成されている。この構成により、連通路4は、両連通口2h、2hを介して、シリンダ2内の第1流体室2eと第2流体室2fを連通している。
歯車モータ5は、内接式のものであり、連通路4の主通路部4aに配置されている。図1(a)に示すように、歯車モータ5は、2つの出入り口14a、14aを介して、連通路4に連通するケーシング14と、ケーシング14に回転自在に収容され、内側に複数の内歯を有するアウターロータ15と、このアウターロータ15に噛み合い、上記内歯よりも歯数が1つ少ない複数の外歯を有するインナーロータ16(回転体)と、インナーロータ16の中心部に一体に設けられた出力軸17とを有している。なお、図示しないが、歯車モータ5として、外接式のものを用いることも可能である。
フライホイール6は、比重が比較的大きな材料(例えば鋼材)から成り、所定の径及び厚さを有する円板状に形成されている。また、フライホイール6の中心部には、所定の径を有する貫通した連結孔6aが形成されており、この連結孔6aに歯車モータ5の出力軸17が上方から挿入された状態で、フライホイール6に回転トルク伝達キー18を介して一体に連結されている。さらに、フライホイール6は、その下方から、フライホイール支持装置7によって回転自在に支持されている。
図2は、フライホイール支持装置7及びその周囲を拡大して示している。同図に示すように、フライホイール支持装置7は、フライホイール6の下面の中心部に突設された突出軸部20を回転自在に支持する複数(本実施形態では3つ)の軸受21と、これらの軸受21をシリンダ2の周壁2a上に保持する軸受保持部22とを有している。
突出軸部20は、上下方向に所定長さ延びるとともに所定の径を有する軸本体20aと、この軸本体20aの上部及び下端部にそれぞれ設けられ、軸本体20aよりも大きい所定の径を有する上フランジ20b及び下フランジ20cとを有している。また、突出軸部20は、軸本体20aの上端部がフライホイール6の連結孔6aに下方から挿入されるとともに、上フランジ20bがフライホイール6の下面に当接した状態で、複数(図2では2つのみ図示)のボルト24で固定されている。これにより、突出軸部20は、フライホイール6の下面に一体に連結されている。また、突出軸部20の下フランジ20cは、その周囲が軸受21で支持された状態で、シリンダ2の周壁2aに凹状に形成された軸受保持部22に収容されている。
上記の軸受21は、突出軸部20の下フランジ20cに外嵌されたラジアル軸受21Aと、下フランジ20cを、その上面側と下面側から挟んだ状態に設けられた一対のスラスト軸受21B、21Bとを有している。そして、これらの軸受21A、21B、21Bは、突出軸部20の下フランジ20cとともに、軸受保持部22に収容されている。
また、軸受保持部22の上端部には、その開放した上面を覆うカバープレート25が、複数(図2では2つのみ図示)のボルト26で固定されている。このカバープレート25により、軸受保持部22内に収容された軸受21A、21B、21Bの外方への移動が阻止され、それにより、フライホイール6に連結されている突出軸部20は、安定した状態でしっかりと回転自在に支持されている。
なお、上記のフライホイール支持装置7では、シリンダ2の周壁2aに凹状に形成した軸受保持部22に、軸受21A、21B、21Bを収容するように構成したが、例えば、既存の円筒状のシリンダの周壁に、軸受を保持することも可能である。
図3は、上述したフライホイール支持装置7の変形例を示している。同図に示すように、このフライホイール6Aでは、下面の中心部から下方に凸状に突出し、所定の径を有する突出軸部20Aがフライホイール6Aと一体に構成されている。上記の突出軸部20Aには、ラジアル軸受21Cが外嵌され、そのラジアル軸受21Cを保持する軸受ホルダ27が、複数(図3では2つのみ図示)のボルト28でシリンダ2Aの周壁2a上に固定されている。このように構成されたフライホイール支持装置7Aにより、既存のシリンダ2Aの周壁2a上に、フライホイール6Aを回転自在に支持するための軸受21Cを、比較的容易に設置することが可能である。
また、図1に示すように、連通路4の主通路部4aの両端部には、一対のアキュムレータ8、8が設けられている。アキュムレータ8は、歯車モータ5などにおける作動油HFのキャビテーションを防止するために、作動油HFの圧力を蓄えるとともに、蓄えた圧力によって作動油HFを加圧するためのものである。
図4は、アキュムレータ8を拡大して示している。同図に示すように、アキュムレータ8は、連通路4に連通するケーシング31と、ケーシング31内に収容され、上下方向に摺動自在のアキュムレータ用ピストン32(以下、「ACピストン32」という)と、このACピストン32に一体にかつ上方に延びるように設けられ、ケーシング31の貫通孔31aから外方に突出し、作動油HFの圧力状態を検知するための検知棒33と、ケーシング31内に設けられ、ACピストン32を連通路4側(図4の下側)に付勢するセットばね34と、を有している。また、ケーシング31内の所定位置には、ストッパ35が設けられており、そのストッパ35にACピストン32が下方から当接することにより、ACピストン32のそれ以上の上方への移動が阻止されるようになっている。
なお、図1(b)に示すように、歯車モータ5のケーシング14には、作動油HF用のドレン14bが設けられており、このドレン14bに、ドレン用アキュムレータ37が接続されている。このドレン用アキュムレータ37は、連通路4に接続された上記アキュムレータ8に対し、検知棒33及びストッパ35を有していないこと以外は、アキュムレータ8とほぼ同様に構成されている。
また、図1(b)に示すように、ピストン3及びピストンロッド9には、ピストン用アキュムレータ41が設けられている。このピストン用アキュムレータ41は、ピストン3を貫通しかつピストンロッド9内に延びるように設けられた流路部42と、この流路部42に連なり、ピストンロッド9の所定端部(図1(b)の左側の端部)内に、所定容量を有するように設けられた作動油保留部43と、この作動有保留部43に摺動自在に設けられたピストン44と、このピストン44を流路部42側に付勢するばね45とを有している。このように構成されたピストン用アキュムレータ41により、作動油HFが熱膨張した場合には、作動油HFが、流路部42を介して、作動油保留部43に流入する一方、作動油HFが熱収縮した場合には、作動油保留部43内の作動油HFが、流路部42を介して、シリンダ2の第1及び第2流体室2e、2fに供給される。このように、ピストン用アキュムレータ41により、作動油HFの熱膨張及び熱収縮が吸収されることで、作動油HFの内圧を所定範囲内に保持しながら、その内圧が負圧になるのを効果的に防止している。
以上のように構成されたダンパ1は、例えば構造物内の相対変位する2つの部位(例えば上梁と下梁)の間に、第1取付具LF1及び第2取付具LF2を介して取り付けられる。以下、ダンパ1の動作について説明する。
まず、構造物が振動していないときには、ダンパ1は、図1に示す初期状態にあり、ピストン3は、シリンダ2の軸線方向の中心に位置している。またこの場合、作動油HFには、一定の内圧が作用している。これにより、図1及び図5(a)に示すように、連通路4に接続された左右のアキュムレータ8、8ではいずれも、ACピストン32が、作動油HFの内圧によって、セットばね34の付勢力に抗して押圧され、ストッパ35に下方から当接し、それ以上の上方への移動が阻止される。したがって、この場合には、各アキュムレータ8では、検知棒33は、ケーシング31の上面から所定長さ突出した状態に維持される。
この初期状態から、地震時などに構造物が振動すると、構造物の2つの部位間の相対変位に応じて、ピストン3がシリンダ2内を移動する。図6は、ピストン3が左側の第1流体室2e側に移動するときの状態を示している。この場合、第1流体室2e内の作動油HFがピストン3で押し出され、左側の連通口2hを介して連通路4に流入し、さらに歯車モータ5のケーシング14に流入する。
図6(a)に示すように、歯車モータ5では、ケーシング14の左側の出入り口14aから流入した作動油HFは、その流動による圧力によって、ケーシング14内のアウターロータ15及びインナーロータ16を、図6(a)において時計方向に回転させながら、右側の出入り口14aから流出し、連通路4を介して、シリンダ2内の第2流体室2fに流入する。
図7は、図6とは逆に、シリンダ2内のピストン3が右側の第2流体室2f側に移動するときの状態を示している。この場合、第2流体室2f内の作動油HFがピストン3で押し出され、右側の連通口2hを介して連通路4に流入し、さらに歯車モータ5のケーシング14及び連通路4を通って、シリンダ2内の第1流体室2eに流入する。この場合、図7(a)に示すように、歯車モータ5では、ケーシング14の右側の出入り口14aから流入しかつ左側の出入り口14aから流出する作動油HFにより、ケーシング14内のアウターロータ15及びインナーロータ16が、図7(a)において反時計方向に回転する。
上記のように、歯車モータ5のインナーロータ16が、時計方向又は反時計方向に回転することにより、これと一体の出力軸17が回転し、この出力軸17に回転トルク伝達キー18を介して一体に連結されたフライホイール6も回転する。このように、フライホイール6が回転することにより、ダンパ1において、回転慣性質量効果(慣性力)が発揮される。また、作動油HFが連通路4などを流動する際の粘性抵抗により、ダンパ1において、粘性減衰効果(粘性力)が発揮される。これらの回転慣性質量効果及び粘性減衰効果による反力が構造物に作用することにより、構造物の振動が抑制される。
また、上記のように歯車モータ5が作動する際、連通路4内の作動油HFの圧力は、初期状態に比べて上昇する。この場合、連通路4に接続された左右のアキュムレータ8、8では、作動油HFの内圧の上昇に伴い、ACピストン32を、セットばね34の付勢力に抗して押圧するものの、図5(b)に示すように、ACピストン32がストッパ35に当接しているため、ACピストン32のそれ以上の上方への移動が阻止される。つまり、作動油HFの内圧は、アキュムレータ8、8によって、上昇した状態に維持される。またこの場合、各アキュムレータ8のACピストン32の位置は、初期状態の場合と同じであるため、アキュムレータ8の検知棒33も、初期状態と同様、ケーシング31の上面から所定長さ突出した状態に維持される。
さらに、フライホイール6の回転時に、その回転力が、歯車モータ5に駆動力として作用することがあり、その場合には、歯車モータ5によって作動油HFが吸引される連通路4(以下、適宜「吸引側連通路4」という)側では、作動油HFの内圧が低下する。この場合、図5(c)に示すように、ACピストン32が、セットばね34で吸引側連通路4側(同図の下側)に付勢されることで、その吸引側連通路4内の作動油HFを、所定圧(例えば飽和蒸気圧)以上に加圧し、負圧になるのを防止する。
上記のようにACピストン32が動作する一対のアキュムレータ8、8が、歯車モータ5の付近でかつその両側に配置されているので、各アキュムレータ8による作動油HFの加圧を、効率的にバランス良く行うことができる。以上により、歯車モータ5の作動に伴う作動油HFの内圧が負圧になるのを防止することで、作動油HFにおけるキャビテーションを防止でき、それにより、キャビテーションに起因する音鳴りなどの不具合を回避することができる。
なお、初期状態におけるダンパ1では、アキュムレータ8の検知棒33は、前記図5(a)に示すように、ケーシング31から外部に所定長さ突出しているものの、例えば、図5(c)に示すように、検知棒33の突出長さが、初期状態における本来の長さに比べて短い場合には、作動油HFの内圧が本来の圧力に比べて低下しているおそれがある。これは、例えば、シリンダ2や連通路4からの作動油HFの漏出などの不具合が考えられる。したがって、検知棒33の突出長さの変化を視認することで、ダンパ1の不具合を容易に発見することが可能である。
また、本実施形態のダンパ1では、フライホイール6は、シリンダ2の周壁2aに設けられたフライホイール支持装置7により、強固にかつ安定した状態で回転自在に支持されている。これにより、フライホイール6が回転する際に、歯車モータ5の出力軸(回転軸)17に対し、過大な荷重(ラジアル荷重及び/又はスラスト荷重)が作用するのを防止することができる。また、上記のフライホイール支持装置7は、ラジアル軸受21A及び一対のスラスト軸受21B、21Bを有しており、これらの軸受21A、21Bによって、フライホイール6の突出軸部20におけるラジアル荷重及びスラスト荷重を支持するので、フライホイール6の回転に伴い歯車モータ5のアウターロータ15及びインナーロータ16に作用するラジアル荷重及びスラスト荷重を、大幅に低減することができる。
次に、図8~10を参照しながら、本発明の第2実施形態によるダンパ51について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態によるダンパ1と同じ構成部分については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略するものとする。
図8(c)に示すように、このダンパ51は、第1実施形態のダンパ1に対し、減衰性能を調整するための減衰性能調整機構52を付加したものである。この減衰性能調整機構(以下、単に「調整機構」という)52は、連通路4の主通路部4aにおいて、歯車モータ5の両側に設けられた一対の調整機構52、52を備えている。なお、これらの調整機構52、52は、図8(a)及び(b)において、上下及び左右に対称に記載されているが、実質的に同一構成であるので、以下の説明では、同一の構成部分については同一の符号を付すものとする。また、図8(c)において、歯車モータ5の左側及び右側の調整機構52、52を区別する場合には、それぞれ52A及び52Bの符号を付すものとする。
図8(a)又は(b)に示すように、各調整機構52は、2つの出入り口53a、53aを介して連通路4に連通するともに、両出入り口53a、53aをつなぐ2つの通路(第1通路54a及び第2通路54b)を有するケーシング53と、第1通路54aに設けられた逆止弁55と、第2通路54bに設けられた調整弁56とを備えている。
逆止弁55は、常閉弁として構成されており、弁体55aと、これを閉弁方向に付勢するばね55bとを有している。図8(a)に示すように、左側の調整機構52Aの逆止弁55は、連通路4内の作動油HFが右側の歯車モータ5からケーシング53内の第1通路54aを流れる際にのみ開放されるようになっている。また、図8(b)に示すように、右側の調整機構52Bの逆止弁55は、連通路4内の作動油HFが左側の歯車モータ5からケーシング53内の第1通路54aを流れる際にのみ開放されるようになっている。
一方、調整弁56は、上記の逆止弁55と同様、常閉弁として構成されており、弁体56aと、これを閉弁方向に付勢するばね56bと、ばね56bの付勢力を調整可能な調整ねじ56cとを有している。調整ねじ56cを回転操作することにより、ばね56bの付勢力の増減が調整され、それに伴い、作動油HFが第2通路54bを流れる際の流れやすさが調整される。それにより、ダンパ51の減衰性能の調整が行われる。
図9は、ピストン3が左側の第1流体室2e側に移動するときの状態を示している。この場合、第1流体室2e内の作動油HFがピストン3で押し出され、左側の連通口2hを介して連通路4に流入し、左側の調整機構52Aを通って、歯車モータ5のケーシング14に流入する。この場合、同図(a)に示すように、左側の調整機構52Aでは、ケーシング53の左側の出入り口53aから流入した作動油HFは、調整弁56が設けられた第2通路54bを通り、右側の出入り口53aから流出する。
また、歯車モータ5のケーシング14から流出した作動油HFは、右側の調整機構52Bを通り、連通路4及び右側の連通口2hを介して、シリンダ2の第2流体室2fに流入する。この場合、図9(b)に示すように、右側の調整機構52Bでは、ケーシング53の左側の出入り口53aから流入した作動油HFは、逆止弁55が設けられた第1通路54aを通り、右側の出入り口53aから流出する。
図10は、図9とは逆に、ピストン3が右側の第2流体室2f側に移動するときの状態を示している。この場合、第2流体室2f内の作動油HFがピストン3で押し出され、右側の連通口2hを介して連通路4に流入し、右側の調整機構52Bを通って、歯車モータ5のケーシング14に流入する。この場合、同図(b)に示すように、右側の調整機構52Bでは、ケーシング53の右側の出入り口53aから流入した作動油HFは、調整弁56が設けられた第2通路54bを通り、左側の出入り口53aから流出する。
また、歯車モータ5のケーシング14から流出した作動油HFは、左側の調整機構52Aを通り、連通路4及び左側の連通口2hを介して、シリンダ2の第1流体室2eに流入する。この場合、図10(a)に示すように、左側の調整機構52Aでは、ケーシング53の右側の出入り口53aから流入した作動油HFは、逆止弁55が設けられた第1通路54aを通り、左側の出入り口53aから流出する。
以上のように、第2実施形態のダンパ51によれば、前述した第1実施形態のダンパ1による効果を得ることができ、加えて、連通路4を流れる作動油HFの流動度合の調整により、ダンパ51の減衰性能を容易に調整することができる。
次に、図11を参照しながら、本発明の第3実施形態によるダンパ61について説明する。なお、以下の説明では、前述した第1実施形態によるダンパ1と同じ構成部分については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略するものとする。
図11に示すように、このダンパ61は、シリンダ2Bの下側において、フライホイール支持装置7B、フライホイール6B及び歯車モータ5が上から順に配置されたものである。同図に示すように、フライホイール支持装置7Bでは、フライホイール6Bの上面中心部から上方に突出するように設けられた突出軸部20Bを、軸受21Dを介して、回転自在に支持している。
上記の突出軸部20Bは、下方に開放する円筒状に形成された軸本体62と、その上端部に一体に設けられ、軸本体62の径よりも大きな所定の径を有するフランジ63とで構成されている。また、フライホイール6Bには、歯車モータ5の出力軸17が、中心部の連結孔6aを下方から貫通した状態で、回転トルク伝達キー18を介して一体に連結されている。加えて、上記出力軸17の上端部が、突出軸部20Bの軸本体62に下方から挿入した状態で、回転トルク伝達キー18を介して一体に連結されている。そして、突出軸部20Bのフランジ63の下面と、そのフランジ63を覆いかつその下側に回り込むように設けられた軸受ホルダ64との間に、スラスト軸受で構成された軸受21Dが設けられている。上記の軸受ホルダ64は、シリンダ2の周壁2aの下面に、複数(図11では2つのみ図示)のボルト28で固定されている。
上記のように構成されたフライホイール支持装置7Bにより、フライホイール6Bの突出軸部20Bのフランジ63が、軸受21Dで下方から支持した状態で回転自在に支持されている。これにより、フライホイール6Bがシリンダ2Bの下側に配置される場合でも、フライホイール6Bの重量をしっかりと保持できるとともに、歯車モータ5に作用するスラスト荷重を大幅に低減することができる。
次に、図12~14を参照しながら、本発明の第4実施形態によるダンパ71について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態によるダンパ1と同じ構成部分については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略するものとする。
図12は、ダンパ71の全体を示しており、図13は、シリンダ2C上に設置された歯車モータ5及びフライホイール6Cを拡大して示している。両図に示すように、このダンパ71では、歯車モータ・フライホイール支持装置72(圧力モータ・フライホイール支持装置)によって、歯車モータ5がシリンダ2Cの上側に配置されるとともに、フライホイール6Cが歯車モータ5の前側に配置されている。
図13(a)~(c)に示すように、歯車モータ・フライホイール支持装置72は、上面から背面にわたって開放し、内側に歯車モータ5を保持するとともに、前方にフライホイール6Cを回転自在に支持する金属製のホルダ73を有している。このホルダ73は、シリンダ2Cの外周面上にねじ止めなどで固定されるベース部74と、このベース部74の前端部に立設された支持壁部75とを有しており、これらが一体に構成されている。
ホルダ73の支持壁部75は、歯車モータ5の出力軸17が貫通する貫通孔75aを有している。また、支持壁部75の背面には、歯車モータ5が複数のねじによって固定される一方、支持壁部75の前面には、上記貫通孔75aと同心状で、フライホイール6Cの後述する中心軸部77との間に、軸受21(21E)が設けられている。なお、この軸受21Eは、スラスト軸受で構成されている。
また、ホルダ73は、ベース部74の左右両端部に立設された左右一対の側壁部76、76を有しており、各側壁部76には、連通路4が貫通する貫通孔76aが形成されている。
フライホイール6Cは、所定の径及び厚さを有する円板状に形成され、その中心部に、厚さ方向に突出する中心軸部77が設けられている。この中心軸部77は、肉厚の円筒状に形成されており、中心部に所定の径を有する貫通孔77aが形成されている。
また、フライホイール6Cは、その中心軸部77の貫通孔77aに、歯車モータ5の出力軸17が挿入された状態で、図示しない回転トルク伝達キーを介して、出力軸17に直結されている。これにより、歯車モータ5の出力軸17とフライホイール6Cは、一体に回転可能になっている。
なお、本実施形態では、連通路4においてアキュムレータ8を省略したが、前述した各実施形態と同様に、アキュムレータ8を連通路4に設けてもよいことはもちろんである。
以上のように、第4実施形態のダンパ71によれば、歯車モータ・フライホイール支持装置72によって、歯車モータ5が支持されるとともに、フライホイール6Cが回転自在に支持される。これにより、歯車モータ5を安定して支持しながら、歯車モータ5にフライホイール6Cによる過大な荷重が作用するのを防止でき、歯車モータ5を長期にわたって安定して使用することができる。また、ダンパ71では、フライホイール6Cの中心軸部77と歯車モータ5の出力軸17が直結されるので、特別な連結具を用いることなく、フライホイール6Cと歯車モータ5を連結することができ、歯車モータ5によるフライホイール6Cの回転を効率よく行うことができる。
図14は、上述した第4実施形態において、歯車モータ5とフライホイール6Cの連結構造の変形例について、図13と同様に示している。なお、便宜上、図14(b)及び(c)では、中心軸部77及び出力軸17、並びにその周囲の一部を切り欠いた状態で示すとともに、同図(c)では、ホルダ73Aにおいて左右の側壁部76、76を省略して示している。
前述した図13に示すダンパ71では、歯車モータ5の出力軸17がフライホイール6Cの中心軸部77に直結しているのに対し、図14に示すダンパ71では、歯車モータ5の出力軸17と、フライホイール6Cの中心軸部77が、軸本体78及び連結具79を介して、同軸状に連結されている。つまり、歯車モータ5の出力軸17と、フライホイール6Cの中心軸部77が、互いに前後方向(図14(a)の上下方向、同図(c)の左右方向)に間隔を隔てた状態で連結されている。
また、図14に示すホルダ73Aは、前述した図13のホルダ73に対し、支持壁部75の後方の所定位置に、歯車モータ5を支持するためのモータ支持壁部81が設けられている。このモータ支持壁部81は、ベース部74の所定位置に立設されており、歯車モータ5の出力軸17が貫通する貫通孔81aが形成されている。そして、このモータ支持壁部81の背面には、歯車モータ5が複数のねじによって固定されている。
また、ホルダ73Aの支持壁部75には、軸本体78を回転自在に支持する軸受21(21F)が設けられている。なお、この軸受21Fは、ラジアル軸受で構成されている。
フライホイール6Cの中心軸部77には、その貫通孔77aに、所定長さを有する軸本体78が挿入された状態で固定されている。そして、上記の軸本体78の後端部と、歯車モータ5の出力軸17の先端部とが、所定長さを有する円柱状の連結具79を介して、連結されている。上記の軸本体78及び出力軸17は、連結具79に挿入された状態で、図示しない回転トルク伝達キーを介して、連結されている。
上記の変形例によれば、例えば、シリンダ2Cの外径やサイズ、フライホイール6Cの中心軸部77や歯車モータ5の出力軸17の長さなどに応じて、歯車モータ5とフライホイール6Cの間の距離を調整することができ、また、歯車モータ5によるフライホイール6Cの円滑な回転を確保することができる。
なお、本発明は、説明した各実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1及び第2実施形態のダンパ1及び51のフライホイール支持装置7では、3つの軸受21(21A、21B及び21B)を用いたが、本発明においてこれらの軸受21の数は特に限定されるものではない。すなわち、前述した図3及び図11にそれぞれ示すフライホイール支持装置7A及び7Bのように、単一の軸受21を用いることはもちろん、2つ又は4つ以上の軸受を用いることも可能である。
また、各実施形態では、ダンパ1(51、61及び71を含む。以下同じ)について、シリンダ2(2A、2B及び2Cを含む。以下同じ)が水平に延びるように示したが、ダンパ1を構造物に設置する場合には、シリンダ2を水平に延びるように設置する他、鉛直に延びるように設置したり、斜めに延びるように設置したりすることも可能である。
さらに、第1~第3実施形態では、ダンパ1における作動油HFの状態を検知するために、左右のアキュムレータ8、8において、ACピストン32と一体の検知棒33を設けたが、この検知棒33に代えて、例えば、シリンダ2内や連通路4内に圧力センサを設置し、作動油HFの内圧を、外部から検知できるようにしてもよい。また、本実施形態では、圧力モータとして、歯車モータ(内接式、外接式)を例示したが、歯車モータに限らず、ベーンモータやピストンモータなどの圧力モータを用いても良いことはもちろんである。
また、図8に示すダンパ51では、減衰性能を調整するための左右の調整機構52A、52Bにおいて、調整弁56、56をそれぞれ設けたが、例えば図15(a)及び(b)に示すように、上記の調整弁56、56を省略し、オリフィス58の孔径を調整するようにしてもよい。この場合、オリフィス58の孔径を小さくすることによって、減衰効果を増大させることができる。
また、実施形態で示したダンパ1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
1 ダンパ
2 シリンダ
2A シリンダ
2B シリンダ
2C シリンダ
2a シリンダの周壁
2e 第1流体室
2f 第2流体室
3 ピストン
4 連通路
5 歯車モータ(圧力モータ)
6 フライホイール
6A フライホイール
6B フライホイール
6C フライホイール
7 フライホイール支持装置
7A フライホイール支持装置
7B フライホイール支持装置
8 アキュムレータ
14 歯車モータのケーシング
15 アウターロータ
16 インナーロータ(回転体)
17 出力軸
20 突出軸部
20A 突出軸部
20B 突出軸部
20a 軸本体
20b 上フランジ
20c 下フランジ
21 軸受
21A ラジアル軸受
21B スラスト軸受
21C ラジアル軸受
21D スラスト軸受
21E スラスト軸受
22 軸受保持部
27 軸受ホルダ(軸受保持部)
32 アキュムレータ用ピストン
33 検知棒
34 セットばね
35 ストッパ
51 ダンパ
52 減衰性能調整機構
55 逆止弁
56 調整弁
56c 調整ねじ
58 オリフィス
61 ダンパ
62 軸本体
63 フランジ
64 軸受ホルダ
71 ダンパ
72 歯車モータ・フライホイール支持装置
73 ホルダ
73A ホルダ
74 ベース部
75 支持壁部
77 中心軸部
78 軸本体
79 連結具
81 モータ支持壁部
HF 作動油(作動流体)

Claims (12)

  1. 作動流体が充填されたシリンダと、
    当該シリンダ内に摺動自在に設けられ、前記シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、
    当該ピストンをバイパスし、前記第1流体室と前記第2流体室を連通する連通路と、
    当該連通路に配置され、当該連通路に連通するケーシングに回転自在に収容された回転体を有し、前記ピストンの摺動に伴う作動流体の流動を前記回転体の回転運動に変換する圧力モータと、
    当該圧力モータと前記シリンダとの間に配置されるとともに、前記回転体に同軸状に連結されたフライホイールと、
    前記シリンダの外周面上に設けられ、前記フライホイールを、前記シリンダの径方向に延びる軸線を中心として回転自在に支持するフライホイール支持装置と、
    を備えていることを特徴とする圧力モータを用いたダンパ。
  2. 前記フライホイールには、その中心部から前記シリンダ側に突出する突出軸部が設けられており、
    前記フライホイール支持装置は、
    前記突出軸部を回転自在に支持する軸受と、
    当該軸受を前記シリンダの外周面上に保持する軸受保持部と、
    を有していることを特徴とする請求項1に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  3. 前記突出軸部は、
    所定の径を有する軸本体と、
    この軸本体の前記シリンダ側の端部に設けられ、前記軸本体の径よりも大きな径を有するフランジと、
    を有しており、
    前記軸受は、
    前記フランジに外嵌されたラジアル軸受と、
    前記フランジを、一方の面側と他方の面側から挟んだ状態に設けられた一対のスラスト軸受と、
    を有していることを特徴とする請求項2に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  4. 前記突出軸部は、所定の径を有しており、
    前記軸受は、前記突出軸部に外嵌されたラジアル軸受を有していることを特徴とする請求項2に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  5. 前記シリンダは、水平に延びるように配置され、
    前記フライホイールは、前記シリンダの下側に配置されており、
    前記突出軸部は、
    所定の径を有する軸本体と、
    この軸本体の前記シリンダ側の端部に設けられ、前記軸本体の径よりも大きな径を有するフランジと、を有しており、
    前記軸受は、前記フランジを下方から支持した状態で回転自在に支持するスラスト軸受を有していることを特徴とする請求項2に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  6. 前記連通路に連通するように設けられ、作動流体におけるキャビテーションを防止するために、作動流体の圧力を蓄えるとともに、当該蓄えた圧力によって作動流体を加圧するアキュムレータを、さらに備えており、
    前記アキュムレータは、
    前記連通路に連通するケーシングと、
    このケーシング内に摺動自在に設けられたアキュムレータ用ピストンと、
    このアキュムレータ用ピストンを前記連通路側に付勢するばねと、
    前記アキュムレータ用ピストンと一体に設けられ、当該アキュムレータ用ピストンの摺動方向に沿って延びかつ前記ケーシングから外部に突出し、作動流体の圧力状態を検知するための検知棒と、
    を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の圧力モータを用いたダンパ。
  7. 前記ケーシング内には、前記作動流体が所定の内圧を有する初期状態において、当該作動流体で押圧される前記アキュムレータ用ピストンが、前記ばねの付勢力に抗して当接し、それ以上の移動が阻止されるストッパが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  8. 前記連通路に設けられ、当該連通路を流れる作動流体の流動度合を調整することにより、ダンパの減衰性能を調整する減衰性能調整機構を、さらに備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の圧力モータを用いたダンパ。
  9. 作動流体が充填されたシリンダと、
    当該シリンダ内に摺動自在に設けられ、前記シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するピストンと、
    当該ピストンをバイパスし、前記第1流体室と前記第2流体室を連通する連通路と、
    当該連通路に配置され、当該連通路に連通するケーシングに回転自在に収容された回転体を有し、前記ピストンの摺動に伴う作動流体の流動を前記回転体の回転運動に変換する圧力モータと、
    前記回転体に同軸状に連結されたフライホイールと、
    前記シリンダの外周面上に固定され、前記圧力モータを支持するとともに、前記フライホイールを回転自在に支持する圧力モータ・フライホイール支持装置と、
    を備えていることを特徴とする圧力モータを用いたダンパ。
  10. 前記圧力モータは、前記回転体と一体に回転可能に構成されるとともに、前記ケーシングから外部に突出する出力軸を、さらに有しており、
    前記フライホイールは、その中心部に設けられた中心軸部を有しており、
    前記圧力モータ・フライホイール支持装置は、
    前記シリンダの外周面上に固定されるベース部と、このベース部に設けられた支持壁部とを有するホルダと、
    当該ホルダの前記支持壁部に設けられ、前記フライホイールの前記中心軸部を回転自在に支持する軸受と、
    を有しており、
    前記フライホイールの前記中心軸部と前記圧力モータの前記出力軸とが、同軸状に連結されていることを特徴とする請求項9に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  11. 前記フライホイールの前記中心軸部と前記圧力モータの前記出力軸とが、直結されていることを特徴とする請求項10に記載の圧力モータを用いたダンパ。
  12. 前記フライホイールの前記中心軸部と前記圧力モータの前記出力軸とが、互いに間隔を隔てた状態で、所定の連結具を介して連結されていることを特徴とする請求項10に記載の圧力モータを用いたダンパ。
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