以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示す本発明の第1実施形態による振動抑制装置1は、ラック倉庫Rの振動(主に水平方向の振動)を抑制するためのものであり、ラック倉庫Rの上端部に設けられている。図1に示すように、振動抑制装置1は、質量体2、複数の伝達部材3、当接板4、支持体5及び可変減衰ダンパ6を備えている。質量体2は、比較的比重の大きい材料、例えば鉄で構成されており、直方体状に形成されている。なお、図1では、便宜上、細部の構成要素の符号を省略している。
図2に示すように、各伝達部材3は、一般的なゴムタイプの免震装置と同様に構成されており、上下一対の矩形板状のフランジ11、11と、両フランジ11、11の間に、互いに一体に積層された円板状の複数の内部ゴム12と、内部ゴム12の外表を覆う円筒状の被覆ゴム13を有している。内部ゴム12は、上下の内部鋼板14、14をそれぞれ介して、上下のフランジ11、11に取り付けられている。なお、図2では、便宜上、内部ゴム12の一部の符号と、内部ゴム12、被覆ゴム13及び内部鋼板14、14の断面のハッチングを省略している。
各フランジ11の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する3つの取付孔11aが形成されており、各取付孔11aには、ボルト(図示せず)が挿入されている。上側のフランジ11の取付孔11aに挿入されたボルトは、質量体2の底面にねじ込まれており、下側のフランジ11の取付孔11aに挿入されたボルトは、ラック倉庫Rの上端部にねじ込まれている。以上により、質量体2は、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられた伝達部材3によって支持されている。
前記複数の当接板4の各々は、摩擦係数が安定した材料、例えばステンレスで構成されており、質量体2の底面に貼り付けられている。複数の支持体5は、複数の当接板4に対応して設けられている。図3に示すように、複数の支持体5の各々は、円板状の滑り板21と、矩形板状のフランジ22と、滑り板21とフランジ22の間に、互いに一体に積層された円板状の複数の内部ゴム23と、内部ゴム23の外表を覆う円筒状の被覆ゴム24を有している。内部ゴム23は、上下の内部鋼板25、25をそれぞれ介して、滑り板21及びフランジ22に取り付けられている。滑り板21は、摩擦係数が安定した材料、例えばフッ素樹脂で構成されている。なお、図3では、便宜上、内部ゴム23の一部の符号と、滑り板21、内部ゴム23、被覆ゴム24及び内部鋼板25、25の断面のハッチングを省略している。
フランジ22の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する3つの取付孔22aが形成されており、各取付孔22aには、ボルト(図示せず)が挿入されている。これらのボルトはラック倉庫Rの上端部にねじ込まれており、それにより、支持体5は、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられている。図1及び図11(a)に示すように、ラック倉庫Rが振動していないときには、支持体5の滑り板21は、当接板4に所定の間隔DIを存した状態で上下方向に対向している。この所定の間隔DIの設定手法については後述する。
また、前記複数の可変減衰ダンパ6の各々は、いわゆるパッシブタイプの可変減衰ダンパとして構成されており、図4に示すように、円筒状のシリンダ31と、シリンダ31内に軸線方向に摺動自在に設けられたピストン32と、ピストン32に一体に設けられ、シリンダ31内に軸線方向に移動自在に部分的に収容されたロッド33を有している。以下、可変減衰ダンパ6について、図4の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として説明する。
シリンダ31は、互いに対向する左壁31a及び右壁31bと、両者31a、31bの間に一体に設けられた周壁31cで構成されている。これらの左右の壁31a、31b及び周壁31cによって画成された油室は、ピストン32によって左側の第1油室31dと右側の第2油室31eに区画されており、両油室31d、31eには、シリコンオイルで構成された作動油HFが充填されている。また、右壁31bの径方向の中央には、左右方向(軸線方向)に貫通するロッド案内孔31fが形成されており、ロッド案内孔31fには、シール41が設けられている。さらに、左壁31aには、左方に突出する凸部31gが一体に設けられており、凸部31gには、自在継手を介して、第1取付具FL1が設けられている。
前記ロッド33は、上記のロッド案内孔31fに、シール41を介して挿入され、軸線方向に延びるとともに、シリンダ31に対して軸線方向に移動自在であり、その左端部がピストン32に取り付けられている。また、ロッド33の右端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2が設けられている。
前記ピストン32は、円柱状に形成され、その周面には、シール42が設けられており、ラック倉庫Rが振動していないときには、図4に示すように、シリンダ31内の軸線方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ31内の軸線方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。また、ピストン32の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁43及び第2リリーフ弁44が設けられている。
第1リリーフ弁43は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、ラック倉庫Rの振動に伴うピストン32の移動によって第1油室31d内の作動油HFの圧力が所定の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室31d、31eが互いに連通されることによって、第1油室31d内の作動油HFの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁44は、第1リリーフ弁43と同様、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、ラック倉庫Rの振動に伴うピストン32の移動によって第2油室31e内の作動油HFの圧力が上記の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室31d、31eが互いに連通されることによって、第2油室31e内の作動油HFの圧力の過大化が防止される。
また、シリンダ31の周壁31cには、径方向に貫通する各一対の第1連通孔31h、31h、第2連通孔31i、31i、左側の第3連通孔31jL、31jL、右側の第3連通孔31jR、31jRが形成されている。第1連通孔31h、31hは、周壁31cの中央部に配置されており、それらの前述した中立位置側の内壁面が、シリンダ31内の中立位置を含む所定の第1区間IN1の端と面一になっている。第1実施形態では、第1区間IN1の軸線方向の中心は、中立位置と一致しているが、ずれていてもよい。
また、第2連通孔31i、31iの一方及び他方は、周壁31cの左部及び右部にそれぞれ配置されており、それらの中立位置側の内壁面は、シリンダ31内の所定の合同区間IUの端と面一になっている。この合同区間IUは、第1区間IN1と、第1区間IN1よりも軸線方向の両外側の所定の第2区間IN2とから成っている。第1実施形態では、左側の第2区間IN2の軸線方向の長さと、右側の第2区間IN2のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
左側の第3連通孔31jL、31jLは、周壁31cの左部に配置されており、両者31jL、31jLのうち、中立位置と反対側(左側)に位置する第3連通孔31jLの中立位置と反対側の内壁面は、シリンダ31の左壁31aの内壁面と面一になっている。また、図5に示すように、中立位置側(右側)に位置する第3連通孔31jLの中立位置側の内壁面は、ピストン32が合同区間IUの端に位置しているときに、当該ピストン32の中立位置側の壁面と面一になっている。右側の第3連通孔31jR、31jRは、中立位置を中心として、左側の第3連通孔31jL、31jLと左右対称に配置されており、上述したような左側の第3連通孔31jL、31jLの配置は、右側の第3連通孔31jR、31jRについても同様である。
さらに、シリンダ31の周壁31cの内面には、後述する閉鎖機構46の弁体47を収容するための左右一対の収容凹部31k、31kが形成されており、各収容凹部31kは、第1連通孔31hと同心状に配置されている。
また、可変減衰ダンパ6は、シリンダ31に接続された、断面円形の第1連通管34、第2連通管35、左側及び右側の第3連通管36L、36Rをさらに有している。第1〜第3連通管34、35、36L、36Rの断面積(軸線方向に直交する面の面積)は、シリンダ31の断面積(軸線方向に直交する面の面積)よりも小さな値に設定されており、第1及び第2連通管34、35の断面積は、互いに同じ値に設定されている。
第1連通管34は、前述した第1連通孔31h、31hに連通しており、ピストン32が第1区間IN1に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第1連通孔31h、31hを介して、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させる。第2連通管35は、第2連通孔31i、31iに連通しており、ピストン32が合同区間IUに位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第2連通孔31i、31iを介して、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させる。
左側の第3連通管36Lは、左側の第3連通孔31jL、31jLに連通しており、ピストン32がシリンダ31内の第2区間IN2よりも軸線方向の左外側(最も左側)の所定の第3区間IN3に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第3連通孔31jL、31jLを介して、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させる。右側の第3連通管36Rは、右側の第3連通孔31jR、31jRに連通しており、ピストン32がシリンダ31内の第2区間IN2よりも軸線方向の右外側(最も右側)の所定の第3区間IN3に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第3連通孔31jR、31jRを介して、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させる。第1実施形態では、左側の第3区間IN3の軸線方向の長さと、右側の第3区間IN3のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
さらに、左側及び右側の第3連通管36L、36Rには、逆止弁45L、45Rがそれぞれ設けられている。左側の逆止弁45Lは、ピストン32が左側の第3区間IN3において中立位置と反対側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第3連通管36Lを介して第1油室31dから第2油室31eに流動するのを、阻止する。また、逆止弁45Lは、ピストン32が左側の第3区間IN3において中立位置側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第3連通管36Lを介して第2油室31eから第1油室31dに流動するのを、許容する。
右側の逆止弁45Rは、ピストン32が右側の第3区間IN3において中立位置と反対側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第3連通管36Rを介して第2油室31eから第1油室31dに流動するのを、阻止する。また、逆止弁45Rは、ピストン32が右側の第3区間IN3において中立位置側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第3連通管36Rを介して第1油室31dから第2油室31eに流動するのを、許容する。
また、可変減衰ダンパ6は、第1連通管34を閉鎖するための左右一対の閉鎖機構46、46をさらに有している。これらの閉鎖機構46、46は互いに同様に構成されているので、以下、両者46、46を代表して、左側の閉鎖機構46についてのみ説明する。図6に示すように、閉鎖機構46は、弁体47、ヒンジ48及び磁石49などで構成されている。弁体47は、板状に形成され、周壁31cの内周面と同じ曲率で湾曲しており、その内周面には、凹部47aが形成されている。また、弁体47の外周面には、その中央部に、シール47bが取り付けられるとともに、外縁部に、磁石47cがシール47bを囲むように取り付けられている。
ヒンジ48は、いわゆるトルクヒンジであり、ヒンジピン48aと、ヒンジピン48aに回動自在に設けられた第1羽部48b及び第2羽部48cと、弾性材(図示せず)などで構成されている。第1及び第2羽部48b、48cには、ねじ孔が形成されている。第1羽部48bは、弁体47の凹部47aに係合した状態で、そのねじ孔を介して、ねじSCを弁体47にねじ込むことによって、弁体47に取り付けられている。また、第2羽部48cは、周壁31cの内面の前述した収容凹部31kよりも中立位置側の部分に形成された凹部31lに係合した状態で、そのねじ孔を介して、ねじSCを周壁31cにねじ込むことによって、周壁31cに取り付けられている。ヒンジピン48aは、収容凹部31kと上記の凹部31lに連なる凹部31mに収容されており、周壁31cの内周面の接線方向(図4及び図6の奥行き方向)に延びている。
以上のように、弁体47は、ヒンジ48を介して周壁31cの内周面に取り付けられており、ヒンジピン48aを中心として、図6に示す開放位置と、図7に示す閉鎖位置との間で回動自在である。この場合、弁体47は、閉鎖位置に向かって回動する際に、中立位置と反対側に向かって回動する。また、弁体47は、開放位置に位置しているときには、周壁31cからシリンダ31内に突出しており、閉鎖位置に位置しているときには、周壁31cの収容凹部31kに収容されており、シリンダ31内から退避している。弁体47が閉鎖位置に位置しているときには、弁体47の内周面と、第1及び第2羽部48b、48cの主面は、周壁31cの内周面と面一になっている。また、弁体47が閉鎖位置に位置しているときには、第1連通孔31hが弁体47のシール47bで完全にふさがれており、それにより第1連通管34が閉鎖されている。
上記の弾性材は、例えばトーションばねで構成されており、第1及び第2羽部48b、48cを介して、弁体47を開放位置側に付勢している。弾性材の付勢力は、第1区間IN1を移動するピストン32で押圧された作動油HFの圧力によっては弁体47が閉鎖位置側に移動せず、第1区間IN1から第2区間IN2に移動するピストン32で押圧されることによって閉鎖位置側に移動するように、設定されている。
前記磁石49は、弁体47の磁石47cとともに、弁体47を閉鎖位置に保持するためのものであり、その磁極の種類が磁石47cのそれと異なっていて、収容凹部31kの底部の外縁部に、埋め込まれた状態で取り付けられている。また、磁石49は、弁体47が閉鎖位置に位置しているときに、磁石47cと当接するとともに、磁石47cとの間に発生する吸引力によって、弁体47を閉鎖位置に保持する。磁石49及び磁石47cの磁力は、両者49、47cの間に発生する吸引力がヒンジ48の弾性材による付勢力よりも大きくなるように、設定されている。
また、図8に示すように、可変減衰ダンパ6の前述した第1取付具FL1は第1連結部材EN1に、第2取付具FL2は第2連結部材EN2に、それぞれ取り付けられており、第1連結部材EN1は質量体2の底面に、第2連結部材EN2はラック倉庫Rの上端部に、それぞれ取り付けられている。以上により、可変減衰ダンパ6は、そのシリンダ31が質量体2に連結され、ピストン32がロッド33とともにラック倉庫Rに連結されており、水平方向に延びている。なお、図8では、便宜上、第1〜第3連通管34、35、36L、36Rを省略している。
以上の構成の振動抑制装置1では、質量体2、伝達部材3及び可変減衰ダンパ6は、付加振動系を構成しており、付加振動系は、ラック倉庫Rが振動するのに伴って振動(共振)することにより、ラック倉庫Rの振動を吸収し、抑制する。また、可変減衰ダンパ6のピストン32は、ラック倉庫Rの振動に伴って、シリンダ31内を往復移動する。ラック倉庫Rの振動が比較的小さいときには、ピストン32は、第1区間IN1を往復移動し、当該移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1及び第2連通管34、35を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。この場合、第1区間IN1を移動するピストン32で押圧された作動油HFの圧力が、閉鎖機構46、46の弁体47、47を閉鎖位置側に押圧するように作用するものの、弁体47、47は、前述したように設定されたヒンジ48の弾性材の付勢力によって、開放位置に保持される。
以上により、ラック倉庫Rの振動が比較的小さく、それによりピストン32が第1区間IN1に位置しているときには、可変減衰ダンパ6の減衰係数は比較的小さくなる。また、ラック倉庫Rの振動が大きくなると、ピストン32は、第1区間IN1を超えて第2区間IN2を往復移動するようになる。図9及び図10に示すように、閉鎖機構46、46の弁体47、47は、第1区間IN1から第2区間IN2に移動するピストン32で押圧されることによって、閉鎖位置に移動し、その後、前述した磁石47c及び磁石49による吸引力によって閉鎖位置に保持される。以上の結果、第1連通管34が閉鎖機構46、46によって閉鎖される。この状態では、各弁体47は、前述した収容凹部31kに収容されており、シリンダ31内から退避している。
ラック倉庫Rの振動中、第1連通管34が閉鎖機構46、46で閉鎖された以後には、移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1連通管34を介さずに第2連通管35を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動の中期以後で、その振動が比較的大きく、それによりピストン32が第2区間IN2に位置することで第1連通管34が閉鎖された以後には、閉鎖されていないときよりも、可変減衰ダンパ6の減衰係数は大きくなる。
なお、閉鎖位置に位置した弁体47、47は、その後のメンテナンス時に、保守者によって開放位置に戻される。
また、ラック倉庫Rの振動が非常に大きくなると、ピストン32は、第1及び第2区間IN1、IN2を超えて第3区間IN3を往復移動するようになる。ピストン32が第3区間IN3において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、前述した逆止弁45L、45Rによって、作動油HFが第3連通管36L、36Rを介して第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動するのが阻止される。
以上の構成から明らかなように、ピストン32が第3区間IN3において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室31d、31eは、第1〜第3連通管34、35、36L、36Rを介しては互いに連通されず、当該ピストン32で押圧された第1又は第2油室31d、31e内の作動油HFの圧力が前記上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁43、44が開弁することで互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1又は第2リリーフ弁43、44を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときには、可変減衰ダンパ6の減衰係数は非常に大きくなる。
一方、ピストン32が第3区間IN3において中立位置側に向かって移動しているときには、逆止弁45L、45Rによって、作動油HFが第3連通管36L、36Rを介して第1及び第2油室31d、31eの他方から一方に流動するのが許容される。
以上のように、可変減衰ダンパ6の減衰係数は、ラック倉庫Rの振動の増大によりピストン32の移動範囲が大きくなるのに伴って、より大きくなる。
また、伝達部材3、支持体5及び可変減衰ダンパ6は、質量体2とラック倉庫Rの間に、次のようにして配置されている。すなわち、図1に示すように、伝達部材3は、質量体2の水平方向の両端部及び中央部に配置されている。支持体5及び可変減衰ダンパ6は、質量体2の水平方向の両端部に配置された伝達部材3と中央部に配置された伝達部材3との間に、質量体2の中央部に向かって、支持体5、可変減衰ダンパ6及び支持体5の順で配置されている。なお、図1に示す伝達部材3、支持体5及び可変減衰ダンパ6の配置は、あくまで一例であり、これに限定されないことはもちろんである。
また、前述した当接板4と支持体5の滑り板21との間の所定の間隔DIは、次のようにして設定されている。すなわち、ラック倉庫Rの振動中、付加振動系が振動するのに伴い、質量体2が水平方向に往復移動することによって、質量体2を支持する伝達部材3は、図11(b)に示すように剪断変形するようになる。この場合、ラック倉庫Rの振動が大きいほど、付加振動系の振動が大きくなるので、伝達部材3の剪断変形の度合いがより大きくなる。
所定の間隔DIは、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいことでピストン32が第3区間IN3に位置しているときに、伝達部材3の上述した剪断変形により質量体2がラック倉庫Rに近づくことによって当接板4及び滑り板21が互いに当接するように、設定されている。この場合、ラック倉庫Rの振動が大きいことで伝達部材3の剪断変形の度合いが大きいほど、質量体2がラック倉庫Rにより近づくため、当接板4及び滑り板21の間の当接度合いは、より大きくなる。なお、当接板4及び支持体5の滑り板21が互いに当接している状態では、質量体2は、伝達部材3及び支持体5の両方に支持される。
図12(a)は、伝達部材3の水平方向の変形量(以下「伝達部材変形量DE」という)と、その抵抗力(以下「伝達部材抵抗力RE」という)との関係を示している。図12(b)は、伝達部材変形量DEと、当接板4及び滑り板21の間の摩擦力(以下「当接摩擦力FR」という)との関係を示しており、図12(c)は、伝達部材変形量DEと、伝達部材抵抗力RE及び当接摩擦力FRの和(以下「合同抵抗力UR」という)との関係を示している。
伝達部材3が前述したようにゴムで構成されているため、図12(a)に示すように、伝達部材抵抗力REは、伝達部材変形量DEが大きいほど、リニアにより大きくなる。また、当接板4と滑り板21との間の所定の間隔DIが上述したように設定されていることと、伝達部材変形量DEが大きいほど、両者4、21の間の当接度合いがより大きくなることから、図12(b)に示すように、当接摩擦力FRは、伝達部材変形量DEが比較的小さいときには0になり、伝達部材変形量DEが比較的大きい範囲では、DEが大きくなるほど、リニアにより大きくなる。なお、当接摩擦力FRは、伝達部材変形量DEが増大するときと、減少するときとでは、伝達部材抵抗力REと異なり、その向きが互いに反対方向になる。
また、合同抵抗力URは、伝達部材抵抗力REと当接摩擦力FRとの和であるので、伝達部材変形量DEと合同抵抗力URの間の関係は、図12(a)及び図12(b)に示す関係を互いに足し合わせることによって得られた図12(c)に示すような関係になる。同図に示すように、伝達部材変形量DEが増大しているときには、合同抵抗力URは、DEが大きいほど、図12(c)に示す履歴特性により大きくなる。
また、付加振動系(質量体2、伝達部材3及び可変減衰ダンパ6)の諸元は、ラック倉庫Rの振動中、第1連通管34が閉鎖機構46、46で閉鎖されているときに、付加振動系の固有振動数がラック倉庫Rの固有振動数(例えば1次モードの固有振動数)に同調するように、設定されている。当該設定は、例えば定点理論に基づいて行われる。ここで、付加振動系の固有振動数は、質量体2の質量md及び伝達部材3の剛性θTによって定まる(=sqrt(θT/md)/2π)。また、付加振動系の諸元には、質量体2の質量md、伝達部材3の剛性θT、作動油HFの粘性係数、シリンダ31の断面積、第2連通管35の断面積及び長さなどが含まれる。
以上のように、第1実施形態によれば、質量体2が、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられた伝達部材3に、載置された状態で支持されており、可変減衰ダンパ6のシリンダ31が質量体2に、ピストン32がラック倉庫Rに、それぞれ連結されている。また、質量体2、伝達部材3及び可変減衰ダンパ6によって付加振動系が構成されており、付加振動系は、ラック倉庫Rの振動に伴って振動(共振)し、その振動中、ピストン32がシリンダ31内を往復移動する。
ピストン32が図4に示す中立位置を含むシリンダ31内の所定の第1区間IN1に位置しているときには、シリンダ31の第1及び第2油室31d、31eは、第1連通管34を介して互いに連通される。また、第1及び第2油室31d、31eは、ピストン32がシリンダ31内の第1及び第2区間IN1、IN2を含む合同区間IUに位置しているときには、第2連通管35を介して互いに連通される。
前述したように、ラック倉庫Rの振動の初期で、その振動が比較的小さいことによりピストン32が第1区間IN1に位置しているときには、第1及び第2油室31d、31eが第1及び第2連通管34、35を介して互いに連通されることによって、可変減衰ダンパ6の減衰係数は比較的小さくなる。また、ラック倉庫Rの振動の中期以後には、閉鎖機構46、46の弁体47、47が、移動するピストン32で押圧されることで閉鎖位置に駆動されることによって、第1連通管34が閉鎖機構46、46で閉鎖される。その結果、第1及び第2油室31d、31eが第1連通管34を介さずに第2連通管35を介して互いに連通されることにより、可変減衰ダンパ6の減衰係数は、第1連通管34が閉鎖されていないときよりも大きくなる。以上のように、可変減衰ダンパ6では、ラック倉庫Rの振動の初期で、ピストン32が第1区間IN1に位置している場合において、第1連通管34が閉鎖機構46、46により閉鎖されていないときには、閉鎖されているときよりも、その減衰係数が小さくなる。
また、付加振動系の諸元は、ラック倉庫Rの振動中、第1連通管34が閉鎖されているときに、付加振動系の固有振動数がラック倉庫Rの固有振動数に同調するように、設定されている。以上により、ラック倉庫Rの振動の初期に、可変減衰ダンパ6を含む付加振動系の減衰係数が前述した最適減衰係数よりも小さくなるので、付加振動系の応答性を高めることができ、ひいては、ラック倉庫Rの振動をより適切に抑制することができる。また、ラック倉庫Rの振動の中期以後で、第1連通管34が閉鎖機構46、46により閉鎖されているときに、付加振動系の固有振動数をラック倉庫Rの固有振動数に同調させることができるので、ラック倉庫Rの振動を適切に抑制することができる。以上のように、ラック倉庫Rの振動の初期における付加振動系の応答性を高めることができるとともに、ラック倉庫Rの振動の中期以後における振動を適切に抑制することができる。
また、閉鎖機構46、46の弁体47、47が、第1連通管34を開放する所定の開放位置と、第1連通管34を閉鎖する所定の閉鎖位置との間で回動自在に設けられており、ピストン32で押圧されることによって閉鎖位置に駆動される。したがって、閉鎖機構46、46を駆動するための駆動源や制御するための制御装置が不要になるので、その分、振動抑制装置1の部品点数を削減でき、その小型化及び製造コストの削減を図ることができる。さらに、閉鎖位置に位置した弁体47、47を磁石47c及び磁石49によって閉鎖位置に保持するので、第1連通管34を弁体47、47で確実に閉鎖することができる。また、閉鎖位置に位置する弁体47を収容凹部31kに収容するので、ピストン32を円滑に移動させることができる。
なお、弁体47、47は一旦、閉鎖位置に移動した後には、保守者により開放位置に戻されない限り、閉鎖位置に位置したままであるものの、この場合でも、付加振動系の諸元は、その固有振動数がラック倉庫Rの固有振動数に同調するように設定されているので、ラック倉庫Rの振動の初期における応答性が低下するだけで、ラック倉庫Rの振動を適切に抑制することができる。
また、第1リリーフ弁43は、第1油室31d内の作動油HFの圧力が上限値に達したときに開弁し、第2リリーフ弁44は、第2油室31e内の作動油HFの圧力が上限値に達したときに開弁し、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させる。さらに、可変減衰ダンパ6には、ピストン32が第3区間IN3に位置しているときに、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させるための第3連通管36L、36Rが設けられており、第3連通管36L、36Rには、逆止弁45L、45Rが設けられている。逆止弁45L、45Rは、ピストン32が第3区間IN3において中立位置と反対側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方への第3連通管36L、36Rを介した作動油HFの流動を阻止するとともに、ピストン32が第3区間IN3において中立位置側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室31d、31eの他方から一方への第3連通管36L、36Rを介した作動油HFの流動を許容する。
前述したように、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいことでピストン32が第3区間IN3において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室31d、31eは、第1〜第3連通管34、35、36L、36Rを介しては互いに連通されず、第1又は第2油室31d、31e内の作動油HFの圧力が上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁43、44の開弁により互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1又は第2リリーフ弁43、44を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに、可変減衰ダンパ6の非常に大きな減衰力が得られるので、付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置1及びラック倉庫Rの破損を防止することができる。
また、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいことでピストン32が第3区間IN3において中立位置側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室31d、31eの他方における作動油HFを、第3連通管36L、36Rを介して第1及び第2油室31d、31eの一方に逃がせるので、ピストン32が中立位置に戻れなくなるのを防止することができる。この場合、第3連通管36L、36Rが図5を参照して説明したように配置されているので、ピストン32が第2区間IN2と第3区間IN3との境界線(同図に一点鎖線で図示)上に位置しているときに、第3連通管36L、36Rがピストン32で完全にふさがれることがなく、上述した効果を適切に得ることができる。
なお、第1実施形態では、第3連通管36L、36Rの断面積や長さは、ピストン32が第3区間IN3において中立位置側に向かって移動しているときの可変減衰ダンパ6の減衰係数が、第1連通管34が閉鎖されているときの可変減衰ダンパ6の減衰係数と同じになるように、設定されているが、これに限定されないことはもちろんである。
さらに、質量体2には当接板4が、ラック倉庫Rには支持体5が、それぞれ取り付けられており、支持体5の滑り板21は、当接板4と所定の間隔DIを存した状態で対向している。前述したように、ラック倉庫Rが振動していないときや、ラック倉庫Rの振動が非常に大きくないことでピストン32が合同区間IUに位置しているときには、当接板4及び滑り板21は互いに当接せず、ラック倉庫Rの振動が比較的大きくなることでピストン32が第3区間IN3に位置するようになると、当接板4及び滑り板21は互いに当接するようになる。これにより、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに、前述した可変減衰ダンパ6のより大きな減衰力に加え、当接板4及び滑り板21の間の当接摩擦力FRがさらに得られる。したがって、前述した効果、すなわち、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置1及びラック倉庫Rの破損を防止できるという効果を、確実に得ることができる。
さらに、振動抑制装置1がラック倉庫Rの上端部に設けられているので、ラック倉庫Rの上端部以外の部分に設けた場合と異なり、ラック倉庫R内の荷物などを別の場所に移動させずに、その設置作業を行うことができる。
なお、第1実施形態では、シリンダ31を質量体2に、ピストン32をラック倉庫Rに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、シリンダ31をラック倉庫Rに、ピストン32を質量体2に、それぞれ連結してもよい。また、第1実施形態では、シリンダ31、ピストン32及び第1〜第3連通管34、35、36L、36Rの断面形状は、円形であるが、三角形や四角形などでもよく、また、第1〜第3連通管34、35、36L、36Rの断面積を互いに異なる大きさに設定してもよい。さらに、第1実施形態では、第1及び第2連通管34、35を、互いに並列に設けているが、それらのシリンダの軸線方向に延びる部分を共通化して1つの連通管で構成するとともに、シリンダの径方向に延びる部分で互いに分岐して第1及び第2油室に連通するように構成してもよい(後述する図19参照)。
また、第1実施形態では、本発明における外側連通路として、第2連通管35を用いているが、シリンダ内の互いに異なる区間において第1及び第2流体室を互いに連通させる2つ以上の連通管を用いてもよい。また、図13に示すように、その一端部及び他端部がシリンダ31の左壁31a及び右壁31bにそれぞれ接続された外側連通路OPを用いてもよい。あるいは、図14に示すように、外側連通路として、ピストン32に形成された軸線方向に貫通する比較的小さい孔Vを用いてもよい。図13及び図14に示すような外側連通路を用いる場合には、第1及び第2リリーフ弁を省略してもよく、また、第3連通管36L、36Rが不要になる。あるいは、外側連通路として、図14に示す孔Vに代えて、第1及び第2リリーフ弁を用いてもよく、その場合には、第3連通管36L、36Rを設けるのが好ましい。
さらに、第1実施形態では、内側連通路として、シリンダ31に接続された第1連通管34を用いているが、シリンダの周壁に形成された連通路を用いてもよい。この場合、内側連通路は、周壁の内部において軸線方向に延びるとともに、その両端で径方向に延びて第1及び第2流体室に連通する孔状の通路で構成される。以上の内側連通路に関するバリエーションは、外側連通路及び連通路にも同様に当てはまる。また、外側連通路としてシリンダの周壁に形成された連通路を用いた場合にも、その数は任意である。
また、第1実施形態では、本発明における作動流体として、シリコンオイルで構成された作動油HFを用いているが、粘性を有する他の適当な流体を用いてもよい。さらに、第1実施形態では、弁体47、47が回動するタイプの閉鎖機構46、46を用いているが、弁体がピストンで押圧されることによって閉鎖位置に駆動される他の適当なタイプの閉鎖機構を用いてもよい。図15〜図17は、変形例による閉鎖機構51を示している。なお、図15〜図17では、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。
これらの図15〜図17に示すように、閉鎖機構51は、シリンダ31の周壁31cに軸線方向に移動自在に設けられた弁体52と、弁体52に設けられた複数(例えば2つ)の当接機構53などで構成されている。弁体52は、板状に形成され、周壁31cと同じ曲率で湾曲しており(図15参照)、本体部52aと、本体部52aの径方向の外端部から周方向の両側に突出する係合部52b、52bとを一体に有している。係合部52bの表面には、滑性を有する材料、例えばフッ素樹脂で構成されたシート(図示せず)が貼り付けられている。
周壁31cには、弁体52を収容するための収容凹部31nが形成されており、収容凹部31nは、第1連通孔31hに連通するとともに、第1連通孔31hよりも中立位置側に延びている。また、収容凹部31nの底部には、周方向の両側に突出する案内溝31o、31oが設けられており、これらの案内溝31o、31oには、弁体52の係合部52b、52bがそれぞれ係合している。以上により、弁体52は、収容凹部31n内を、図16に示す中立位置側の開放位置と、図17に示す中立位置と反対側の閉鎖位置との間でシリンダ31の軸線方向に移動自在、かつ、径方向に移動不能であり、弁体52の内周面は、周壁31cの内周面と面一になっている。また、弁体52の外周面には、シール(図示せず)が取り付けられていて、弁体52が閉鎖位置に位置しているときには、第1連通孔31hがこのシールで完全にふさがれており、それにより第1連通管が閉鎖されている。
また、収容凹部31nの底部には、中立位置と反対側の端部に、当接機構53と同じ数の嵌合穴31pが形成されている。各嵌合穴31pは、シリンダ31の径方向に延びており、シリンダ31の軸線方向において、第1連通孔31hとオーバーラップしないように配置されている。さらに、弁体52には、中立位置と反対側の端部に、前記複数の当接機構53の各々を収容するための収容孔52cが形成されている。収容孔52cは、シリンダ31の径方向に延びていて、その径方向の外側の部分がより大きな拡孔部になっており、径方向の内側の部分がより小さな縮孔部になっている。また、収容孔52c及び嵌合穴31pは、シリンダ31の軸線方向において、互いにオーバーラップするように配置されている。
前記当接機構53は、移動するピストン32に当接され、弁体52とともに押圧されるものであり、棒状の当接部53aと、当接部53aの途中に一体に設けられた鍔部53bと、ばね53cなどで構成されている。当接部53a、鍔部53b及びばね53cは、収容孔52cに収容されている。ばね53cは、鍔部53bと、収容孔52cの縮孔部を画成する壁部との間に、配置されており、当接部53a及び鍔部53bを、シリンダ31の径方向の外方に付勢している。図15及び図16に示すように、弁体52が開放位置に位置しているときには、当接部53aの一端部は、周壁31c(収容凹部31nの底部)に接触しており、他端部は、収容孔52cの縮孔部を介してシリンダ31内に突出している。
弁体52が開放位置に位置しているときに、ピストン32が第1区間から第2区間に移動すると、それに伴って当接部53aがピストン32に当接され、押圧されることによって、弁体52が閉鎖位置側に駆動される。図17に示すように、弁体52が閉鎖位置に位置するのに伴い、当接部53aは、ばね53cの付勢力でシリンダ31の径方向の外方に移動することによって、その一端部が前記嵌合穴31pに嵌合するとともに、他端部が、収容孔52cの縮孔部に収容され、シリンダ31内から退避する。
また、第1実施形態では、左右一対の弁体47、47を設けているが、両者の一方を省略してもよい。さらに、本発明における閉鎖機構として、その開閉動作を制御可能な電磁弁や油圧弁などを用いてもよい。この場合、シリンダに対するピストンの位置がセンサで検出されるとともに、検出されたピストンの位置に基づいて、ピストンが内側区間から第1外側区間に位置したと判定された以後に、内側連通路を閉鎖するように閉鎖機構をECUなどの制御装置により制御してもよい。
また、第1実施形態では、弁体47、47を閉鎖位置に保持する保持機構として、磁石47c及び磁石49を用いているが、他の適当な機構、例えば弁体及び周壁の一方に設けられた係合部と、弁体及び周壁の他方に設けられ、この係合部に係合する係合凹部とを有する保持機構を用いてもよい。さらに、第1実施形態では、積層ゴムで構成された伝達部材3を介して、質量体2をラック倉庫Rに連結しているが、弾性を有する他の適当な伝達部材、例えば、従来の振動抑制装置と同様に鋼線などで構成されたワイヤを介して、質量体をラック倉庫に振り子状に連結してもよい。また、第1実施形態では、質量体2をラック倉庫Rの上端部に連結しているが、他の適当な部分に連結してもよい。
さらに、第1実施形態では、当接板4を質量体2に、支持体5をラック倉庫Rに、それぞれ取り付けているが、これとは逆に、当接板をラック倉庫に、支持体を質量体に、それぞれ取り付けてもよい。また、第1実施形態では、支持体5の滑り板21に当接される被当接体として、質量体2に取り付けられた当接板4を用いているが、質量体に一体に設けられた被当接体を用いてもよく、あるいは、質量体の一部を被当接体として兼用してもよい。さらに、第1実施形態では、支持体5を積層ゴムで構成しているが、他の適当な材料、例えば鋼材で構成してもよい。また、第1実施形態では、第1及び第2リリーフ弁43、44が開弁する作動油HFの圧力を、互いに同じ上限値に設定しているが、互いに異なる値に設定してもよい。
さらに、第1実施形態は、本発明による振動抑制装置1を、ラック倉庫Rに適用した例であるが、他の適当な構造物、例えば高層の建築物などに適用してもよい。以上の第1実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
次に、図18〜図20を参照しながら、本発明の第2実施形態による振動抑制装置61について説明する。この振動抑制装置61は、基礎(図示せず)に立設された高層の建物Bの振動を抑制するためのものであり、建物Bの上下の梁BU、BDの間に設けられている。振動抑制装置61は、上下の梁BU、BDにそれぞれ取り付けられた第1伝達部材TM1及び第2伝達部材TM2と、可変減衰マスダンパ62を備えている。第1及び第2伝達部材TM1、TM2は、弾性を有する柱材、例えばH型鋼で構成されている。
可変減衰マスダンパ62は、マスダンパとパッシブタイプの可変減衰ダンパを一体に組み合わせたものであり、図19に示すように、円筒状のシリンダ63と、シリンダ63内に軸線方向に摺動自在に設けられたピストン64と、ピストン64に一体に設けられ、シリンダ63内に軸線方向に移動自在に部分的に収容されたロッド65を有している。以下、可変減衰マスダンパ62について、図19の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として説明する。
シリンダ63は、第1実施形態で説明したシリンダ31と同様、互いに対向する左壁63a及び右壁63bと、両者63a、63bの間に一体に設けられた周壁63cで構成されている。これらの左右の壁63a、63b及び周壁63cによって画成された油室は、ピストン64によって左側の第1油室63dと右側の第2油室63eに区画されており、両油室63d、63eには、シリコンオイルで構成された作動油HOが充填されている。また、右壁63bの径方向の中央には、左右方向(軸線方向)に貫通するロッド案内孔63fが形成されており、ロッド案内孔63fには、シール71が設けられている。さらに、左壁63aには、左方に突出する凸部63gが一体に設けられており、凸部63gには、自在継手を介して、第1取付具FL1’が設けられている。
前記ロッド65は、上記のロッド案内孔63fに、シール71を介して挿入され、軸線方向に延びるとともに、シリンダ63に対して軸線方向に移動自在であり、その左端部がピストン64に取り付けられている。また、ロッド65の右端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2’が設けられている。
前記ピストン64は、円柱状に形成され、その周面には、シール72が設けられており、建物Bが振動していないときには、図19に示すように、シリンダ63内の軸線方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ63内の軸線方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。また、ピストン64の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁73及び第2リリーフ弁74が設けられている。
これらの第1及び第2リリーフ弁73、74は、第1実施形態で説明した第1及び第2リリーフ弁43、44と同様に構成されている。第1リリーフ弁73は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、建物Bの振動に伴うピストン64の移動によって第1油室63d内の作動油HOの圧力が所定の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室63d、63eが互いに連通されることによって、第1油室63d内の作動油HOの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁74は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、建物Bの振動に伴うピストン64の移動によって第2油室63e内の作動油HOの圧力が上記の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室63d、63eが互いに連通されることによって、第2油室63e内の作動油HOの圧力の過大化が防止される。
また、シリンダ63の周壁63cには、第1実施形態の周壁31cと同様、径方向に貫通する各一対の第1連通孔63h、63h、第2連通孔63i、63i、左側の第3連通孔63jL、63jL、右側の第3連通孔63jR、63jRが形成されている。第1連通孔63h、63hは、周壁63cの中央部に配置されており、それらの前述した中立位置側の内壁面が、シリンダ63内の中立位置を含む所定の第1区間IN1’の端と面一になっている。第2実施形態では、第1区間IN1’の軸線方向の中心は、中立位置と一致しているが、ずれていてもよい。
また、第2連通孔63i、63iの一方及び他方は、周壁63cの左部及び右部にそれぞれ配置されており、それらの中立位置側の内壁面は、シリンダ63内の所定の合同区間IU’の端と面一になっている。この合同区間IU’は、第1区間IN1’と、第1区間IN1’よりも軸線方向の両外側の所定の第2区間IN2’とから成っている。第2実施形態では、左側の第2区間IN2’の軸線方向の長さと、右側の第2区間IN2’のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
左側の第3連通孔63jL、63jLは、周壁63cの左部に配置されており、両者63jL、63jLのうち、中立位置と反対側(左側)に位置する第3連通孔63jLの中立位置と反対側の内壁面は、シリンダ63の左壁63aの内壁面と面一になっている。また、図20に示すように、中立位置側(右側)に位置する第3連通孔63jLの中立位置側の内壁面は、ピストン64が合同区間IU’の端に位置しているときに、当該ピストン64の中立位置側の壁面と面一になっている。右側の第3連通孔63jR、63jRは、左側の第3連通孔63jL、63jLと左右対称に配置されており、上述したような左側の第3連通孔63jL、63jLの配置は、右側の第3連通孔63jR、63jRについても同様である。
さらに、シリンダ63の周壁63cの内面には、後述する閉鎖機構76の弁体77を収容するための左右一対の収容凹部63k、63kが形成されており、各収容凹部63kは、第1連通孔63hと同心状に配置されている。
また、可変減衰マスダンパ62は、シリンダ63に接続された、断面円形の第1連通管D1、第2連通管D2及び第3連通管D3L、D3Rをさらに有している。第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rの断面積は、シリンダ63の断面積よりも小さな値に設定されており、第1及び第2連通管D1、D2の断面積は、互いに同じ値に設定されている。なお、図18では、便宜上、第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rを省略している。
第1及び第2連通管D1、D2は、シリンダ63と平行に延びる断面円形の合流管DCを互いに共有している。また、第1連通管D1は、左右一対の連通管D1a、D1bをさらに有している。左右の連通管D1a、D1bは、合流管DCに連通するとともに、前述した第1連通孔63h、63hにそれぞれ連通している。以上の構成により、合流管DC及び左右の連通管D1a、D1bから成る第1連通管D1は、ピストン64が第1区間IN1’に位置しているときに、ピストン64をバイパスし、第1連通孔63h、63hを介して、第1及び第2油室63d、63eを互いに連通させる。
第2連通管D2は、左右一対の連通管D2a、D2bをさらに有している。左右の連通管D2a、D2bは、合流管DCに連通するとともに、第2連通孔63i、63iにそれぞれ連通している。以上の構成により、合流管DC及び左右の連通管D2a、D2aから成る第2連通管D2は、ピストン64が合同区間IU’に位置しているときに、ピストン64をバイパスし、第2連通孔63i、63iを介して、第1及び第2油室63d、63eを互いに連通させる。
前記左側の第3連通管D3Lは、左側の第3連通孔63jL、63jLに連通しており、ピストン64がシリンダ63内の第2区間IN2’よりも軸線方向の左外側(最も左側)の所定の第3区間IN3’に位置しているときに、ピストン64をバイパスし、第3連通孔63jL、63jLを介して、第1及び第2油室63d、63eを互いに連通させる。右側の第3連通管D3Rは、右側の第3連通孔63jR、63jRに連通しており、ピストン64がシリンダ63内の第2区間IN2’よりも軸線方向の右外側(最も右側)の所定の第3区間IN3’に位置しているときに、ピストン64をバイパスし、第3連通孔63jR、63jRを介して、第1及び第2油室63d、63eを互いに連通させる。第2実施形態では、左側の第3区間IN3’の軸線方向の長さと、右側の第3区間IN3’のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
さらに、左側及び右側の第3連通管D3L、D3Rには、逆止弁75L、75Rがそれぞれ設けられている。左側の逆止弁75Lは、ピストン64が左側の第3区間IN3’において中立位置と反対側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン64で押圧されることで第3連通管D3Lを介して第1油室63dから第2油室63eに流動するのを、阻止する。また、逆止弁75Lは、ピストン64が左側の第3区間IN3’において中立位置側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン64で押圧されることで第3連通管D3Lを介して第2油室63eから第1油室63dに流動するのを、許容する。
右側の逆止弁75Rは、ピストン64が右側の第3区間IN3’において中立位置と反対側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン64で押圧されることで第3連通管D3Rを介して第2油室63eから第1油室63dに流動するのを、阻止する。また、逆止弁75Rは、ピストン64が右側の第3区間IN3’において中立位置側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン64で押圧されることで第3連通管D3Rを介して第1油室63dから第2油室63eに流動するのを、許容する。
また、可変減衰マスダンパ62は、第1連通管D1の連通管D1a、D1bを閉鎖するための左右一対の閉鎖機構76、76をさらに有している。これらの閉鎖機構76、76の各々は、シリンダ63の周壁63cの内周面に回動自在に設けられた弁体77などを有しており、第1実施形態の閉鎖機構46と同様に構成されているので、その詳細な説明については省略する。
さらに、可変減衰マスダンパ62は、合流管DCの途中に設けられた歯車モータ81と、歯車モータ81に連結された回転マス87をさらに有している。歯車モータ81及び回転マス87は、本出願人による特許第5191579号の図12などに記載されたものと同様に構成されている。具体的には、歯車モータ81は、外接歯車型のものであり、ケーシング82と、ケーシング82に収容された第1ギヤ83及び第2ギヤ84などで構成されている。ケーシング82は、合流管DCの中央部に一体に設けられており、その内部が互いに対向する2つの出入口82a、82aを介して、合流管DCに連通している。
また、第1ギヤ83は、スパーギヤで構成され、第1回転軸85に一体に設けられている。第1回転軸85は、合流管DCに直交する方向に水平に延び、ケーシング82に回転自在に支持されており、ケーシング82の外部に若干、突出している。第2ギヤ84は、第1ギヤ83と同様、スパーギヤで構成され、第2回転軸86に一体に設けられており、第1ギヤ83と噛み合っている。第2回転軸86は、第1回転軸85と平行に延び、ケーシング82に回転自在に支持されている。また、第1及び第2ギヤ83、84の互いの噛合い部分は、ケーシング82の出入口82a、82aに臨んでいる。
回転マス87は、比重の比較的大きな材料、例えば鉄から成る円板で構成されている。また、回転マス87は、第1回転軸85に同軸状に固定されており、第1ギヤ83及び第1回転軸85と一体に回転自在である。
また、可変減衰マスダンパ62の前述した第1取付具FL1’は第1伝達部材TM1に、第2取付具FL2’は第2伝達部材TM2に、それぞれ取り付けられており、可変減衰マスダンパ62は、水平に延びている。以上により、可変減衰マスダンパ62のシリンダ63は上梁BUに、ピストン64は下梁BDに、それぞれ連結されている。
以上の構成の振動抑制装置61では、回転マス87を含む可変減衰マスダンパ62、第1及び第2伝達部材TM1、TM2は、付加振動系を構成しており、付加振動系は、建物Bが振動するのに伴って振動(共振)することにより、建物Bの振動を吸収し、抑制する。また、可変減衰マスダンパ62のピストン64は、建物Bの振動に伴って、シリンダ63内を往復移動する。建物Bの振動が比較的小さいときには、ピストン64は、第1区間IN1’を往復移動し、当該移動するピストン64で押圧された作動油HOは、第1及び第2連通管D1、D2を介して、第1及び第2油室63d、63eの一方から他方に流動する。
以上により、建物Bの振動が比較的小さく、それによりピストン64が第1区間IN1’に位置しているときには、可変減衰マスダンパ62の減衰係数は比較的小さくなる。また、建物Bの振動が大きくなると、ピストン64は、第1区間IN1’を超えて第2区間IN2’を往復移動するようになる。図21及び図22に示すように、閉鎖機構76、76の弁体77、77は、第1区間IN1’から第2区間IN2’に移動するピストン64で押圧されることによって、閉鎖位置に移動し、その後、第1実施形態と同様、各弁体77に取り付けられた磁石と周壁63cに取り付けられた磁石(いずれも図示せず)とによる吸引力によって、閉鎖位置に保持される。その結果、第1連通管D1が閉鎖機構76、76によって閉鎖される。この状態では、弁体77、77は、前述した収容凹部63kに収容されており、シリンダ63内から退避している。
建物Bの振動中、第1連通管D1が閉鎖機構76、76で閉鎖された以後には、移動するピストン64で押圧された作動油HOは、第1連通管D1を介さずに第2連通管D2を介して、第1及び第2油室63d、63eの一方から他方に流動する。以上により、建物Bの振動の中期以後で、その振動が比較的大きく、それによりピストン64が第2区間IN2’に位置することで第1連通管D1が閉鎖された以後には、閉鎖されていないときよりも、可変減衰マスダンパ62の減衰係数は大きくなる。
なお、閉鎖位置に位置した弁体77、77は、その後のメンテナンス時に、保守者によって開放位置に戻される。
また、建物Bの振動が非常に大きくなると、ピストン64は、第1及び第2区間IN1’、IN2’を超えて第3区間IN3’を往復移動するようになる。ピストン64が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、前述した逆止弁75L、75Rによって、作動油HOが第3連通管D3L、D3Rを介して第1及び第2油室63d、63eの一方から他方に流動するのが阻止される。
以上の構成から明らかなように、ピストン64が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室63d、63eは、第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rを介しては互いに連通されず、当該ピストン64で押圧された第1又は第2油室63d、63e内の作動油HOの圧力が前記上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁73、74が開弁することで互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン64で押圧された作動油HOは、第1又は第2リリーフ弁73、74を介して、第1及び第2油室63d、63eの一方から他方に流動する。以上により、建物Bの振動が非常に大きいときには、可変減衰マスダンパ62の減衰係数は非常に大きくなる。
一方、ピストン64が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときには、逆止弁75L、75Rによって、作動油HOが第3連通管D3L、D3Rを介して第1及び第2油室63d、63eの他方から一方に流動するのが許容される。
以上のように、可変減衰マスダンパ62の減衰係数は、建物Bの振動の増大によりピストン64の移動範囲が大きくなるのに伴って、より大きくなる。
また、作動油HOが上述したように第1及び第2連通管D1、D2又は第2連通管D2内を流動しているときに、第1及び第2連通管D1、D2の合流管DC内における作動油HOの流動が、歯車モータ81によって回転運動に変換された状態で回転マス87に伝達され、それにより回転マス87が回転する。
付加振動系(可変減衰マスダンパ62、第1及び第2伝達部材TM1、TM2)の諸元は、建物Bの振動中、第1連通管D1が閉鎖機構76、76で閉鎖されているときに、付加振動系の固有振動数が建物Bの固有振動数(例えば1次モードの固有振動数)に同調するように、設定されている。当該設定は、例えば定点理論に基づいて行われる。ここで、付加振動系の固有振動数は、第1実施形態と同様、回転マス87の質量、第1及び第2伝達部材TM1、TM2の剛性によって定まる。また、付加振動系の諸元には、回転マス87の質量、第1及び第2伝達部材TM1、TM2の剛性、作動油HOの粘性係数、シリンダ63の断面積、ならびに、第2連通管D2の断面積及び長さなどが含まれる。
以上のように、第2実施形態によれば、可変減衰マスダンパ62のシリンダ63及びピストン64がそれぞれ、第1及び第2伝達部材TM1、TM2を介して、建物Bの上梁BU及び下梁BDに連結されている。また、可変減衰マスダンパ62、第1及び第2伝達部材TM1、TM2によって付加振動系が構成されており、付加振動系は、建物Bの振動に伴って振動(共振)する。建物Bの振動中、上梁BU及び下梁BDの間の相対変位は、ピストン64及びシリンダ63に伝達され、それによりピストン64がシリンダ63内を往復移動する。
ピストン64が図19に示す中立位置を含むシリンダ63内の所定の第1区間IN1’に位置しているときには、シリンダ63の第1及び第2油室63d、63eは、第1連通管D1を介して互いに連通される。また、第1及び第2油室63d、63eは、ピストン64がシリンダ63内の第1及び第2区間IN1’、IN2’を含む合同区間IU’に位置しているときには、第2連通管D2を介して互いに連通される。
前述したように、建物Bの振動の初期で、その振動が比較的小さいことによりピストン64が第1区間IN1’に位置しているときには、第1及び第2油室63d、63eが第1及び第2連通管D1、D2を介して互いに連通されることによって、可変減衰マスダンパ62の減衰係数は比較的小さくなる。また、建物Bの振動の中期以後には、閉鎖機構76、76の弁体77、77が、移動するピストン64で押圧されることで閉鎖位置に駆動されることによって、第1連通管D1が閉鎖機構76、76で閉鎖される。その結果、第1及び第2油室63d、63eが第1連通管D1を介さずに第2連通管D2を介して互いに連通されることにより、可変減衰マスダンパ62の減衰係数は、第1連通管D1が閉鎖されていないときよりも大きくなる。以上のように、可変減衰マスダンパ62では、建物Bの振動の初期で、ピストン64が第1区間IN1’に位置している場合において、第1連通管D1が閉鎖機構76、76により閉鎖されていないときには、閉鎖されているときよりも、その減衰係数が小さくなる。
また、建物Bの振動中、シリンダ63内を移動するピストン64で押圧された作動油HOは、第1及び第2連通管D1、D2の合流管DCを流動し、当該作動油HOの流動は、歯車モータ81によって回転運動に変換された状態で回転マス87に伝達され、それにより回転マス87が回転する。以上のように、上梁BU及び下梁BDの間の相対変位は、第1及び第2伝達部材TM1、TM2、シリンダ63、ピストン64ならびに作動油HOを介して歯車モータ81に伝達される。歯車モータ81に伝達された上梁BU及び下梁BDの間の相対変位は、回転運動に変換された状態で回転マス87に伝達される。
また、付加振動系の諸元は、建物Bの振動中、第1連通管D1が閉鎖されているときに、付加振動系の固有振動数が建物Bの固有振動数に同調するように、設定されている。以上により、建物Bの振動の初期に、可変減衰マスダンパ62を含む付加振動系の減衰係数が前述した最適減衰係数よりも小さくなるので、付加振動系の応答性を高めることができ、ひいては、建物Bの振動をより適切に抑制することができる。また、建物Bの振動の中期以後で、第1連通管D1が閉鎖機構76、76により閉鎖されているときに、付加振動系の固有振動数を建物Bの固有振動数に同調させることができるので、建物Bの振動を適切に抑制することができる。以上のように、建物Bの振動の初期における付加振動系の応答性を高めることができるとともに、建物Bの振動の中期以後における振動を適切に抑制することができる。この場合、回転マス87による回転慣性質量効果が得られることによって、付加振動系による建物Bの振動抑制効果が高められる。
さらに、マスダンパ及び可変減衰ダンパを互いに別個に構成せずに(後述する図23参照)、両者を互いに一体に構成した可変減衰マスダンパ62を用いているので、振動抑制装置61全体として小型化を図ることができる。
また、第1実施形態と同様、閉鎖機構76、76の弁体77、77が、第1連通管D1を開放する所定の開放位置と、第1連通管D1を閉鎖する所定の閉鎖位置との間で回動自在に設けられており、ピストン64で押圧されることによって閉鎖位置に駆動される。したがって、閉鎖機構76、76を駆動するための駆動源や制御するための制御装置が不要になるので、その分、振動抑制装置61の部品点数を削減でき、その小型化及び製造コストの削減を図ることができる。さらに、閉鎖位置に位置した弁体77、77を弁体に取り付けられた磁石と周壁63cに取り付けられた磁石とによって閉鎖位置に保持するので、第1連通管D1を弁体77、77で確実に閉鎖することができる。また、閉鎖位置に位置する弁体77、77を収容凹部63k、63kに収容するので、ピストン64を円滑に移動させることができる。
なお、弁体77、77は一旦、閉鎖位置に移動した後には、保守者により開放位置に戻されない限り、閉鎖位置に位置したままであるものの、この場合でも、付加振動系の諸元は、その固有振動数が建物Bの固有振動数に同調するように設定されているので、建物Bの振動の初期における応答性が低下するだけで、建物Bの振動を適切に抑制することができる。
また、第1リリーフ弁73は、第1油室63d内の作動油HOの圧力が上限値に達したときに開弁し、第2リリーフ弁74は、第2油室63e内の作動油HOの圧力が上限値に達したときに開弁し、第1及び第2油室63d、63eを互いに連通させる。さらに、可変減衰マスダンパ62には、ピストン64が第3区間IN3’に位置しているときに、第1及び第2油室63d、63eを互いに連通させるための第3連通管D3L、D3Rが設けられており、第3連通管D3L、D3Rには、逆止弁75L、75Rが設けられている。逆止弁75L、75Rは、ピストン64が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室63d、63eの一方から他方への第3連通管75L、75Rを介した作動油HOの流動を阻止するとともに、ピストン64が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室63d、63eの他方から一方への第3連通管75L、75Rを介した作動油HOの流動を許容する。
前述したように、建物Bの振動が非常に大きいことでピストン64が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室63d、63eは、第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rを介しては互いに連通されず、第1又は第2油室63d、63e内の作動油HOの圧力が上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁73、74の開弁により互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン64で押圧された作動油HOは、第1又は第2リリーフ弁73、74を介して、第1及び第2油室63d、63eの一方から他方に流動する。以上により、建物Bの振動が非常に大きいときに、可変減衰マスダンパ62の非常に大きな減衰力が得られるので、付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置61及び建物Bの破損を防止することができる。
また、建物Bの振動が非常に大きいことでピストン64が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室63d、63eの他方における作動油HOを、第3連通管D3L、D3Rを介して第1及び第2油室63d、63eの一方に逃がせるので、ピストン64が中立位置に戻れなくなるのを防止することができる。この場合、第3連通管D3L、D3Rが図20を参照して説明したように配置されているので、ピストン64が第2区間IN2’と第3区間IN3’との境界線(同図に一点鎖線で図示)上に位置しているときに、第3連通管D3L、D3Rがピストン64で完全にふさがれることがなく、上述した効果を適切に得ることができる。
なお、第2実施形態では、第3連通管D3L、D3Rの断面積や長さは、ピストン64が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときの可変減衰マスダンパ62の減衰係数が、第1連通管D1が閉鎖されているときの可変減衰マスダンパ62の減衰係数と同じになるように、設定されているが、これに限定されないことはもちろんである。
また、第2実施形態では、マスダンパ及び可変減衰ダンパを互いに一体に構成した可変減衰マスダンパ62を用いているが、図23に示すように、マスダンパ91及び可変減衰ダンパ92を互いに別個に構成するとともに、両者91、92を互いに並列に、上梁BU及び下梁BDに連結してもよい。このマスダンパ91は、本出願人による特許第5314201号に開示されたマスダンパと同様に構成されており、回転マス(図示せず)を有している。また、可変減衰ダンパ92は、第2実施形態による可変減衰マスダンパ62と比較して、歯車モータ及び回転マスが設けられていない点のみが異なっており、可変減衰ダンパ92の第1〜第3連通管(図示省略)などの他の構成要素は、可変減衰マスダンパ62のそれらと同様に構成されている。ちなみに、この可変減衰ダンパ92に代えて、第1実施形態による可変減衰ダンパ6(図13及び図14に示す変形例を含む)を用いてもよく、この場合にも、本発明における外側連通路として、第1及び第2リリーフ弁73、74を用いてもよい。また、マスダンパ91を可変減衰マスダンパ62と並列に設けてもよい。
さらに、第2実施形態では、シリンダ63を上梁BUに、ピストン64を下梁BDに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、シリンダ63を下梁BDに、ピストン64を上梁BUに、それぞれ連結してもよい。また、第2実施形態では、シリンダ63、ピストン64及び第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rの断面形状は、円形であるが、三角形や四角形などでもよく、また、第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rの断面積を互いに異なる大きさに設定してもよい。さらに、第2実施形態では、第1及び第2連通管D1、D2が共有する合流管DCに、歯車モータ81を設けているが、第1連通管全体と第2連通管全体を互いに別個に設けるとともに、両者を歯車モータ81に接続してもよい。
また、第2実施形態では、第2連通管D2の左右の連通管D2a、D2bを、シリンダ63の周壁63cに接続しているが、図24に示すように、シリンダ63の左壁63a及び右壁63bにそれぞれ接続してもよい。この場合、第1及び第2リリーフ弁を省略してもよく、また、第3連通管D3L、D3Rが不要になる。さらに、第2実施形態では、本発明における外側連通路として、第2連通管D2を用いているが、シリンダ内の互いに異なる区間において第1及び第2流体室を互いに連通させる複数の連通管を用いてもよい。
さらに、第2実施形態では、内側連通路として、シリンダ63に接続された第1連通管D1を用いているが、シリンダの周壁に形成された連通路を用いてもよい。この場合、内側連通路は、周壁の内部において軸線方向に延びるとともに、その両端で径方向に延びて第1及び第2流体室に連通する孔状の通路で構成される。この内側連通路に関するバリエーションは、外側連通路及び連通路にも同様に当てはまる。また、外側連通路としてシリンダの周壁に形成された連通路を用いた場合にも、その数は任意である。
また、第2実施形態では、本発明における作動流体として、シリコンオイルで構成された作動油HOを用いているが、粘性を有する他の適当な流体を用いてもよい。さらに、第2実施形態では、弁体77、77が回動するタイプの閉鎖機構76、76を用いているが、弁体がピストンで押圧されることによって閉鎖位置に駆動される他の適当なタイプの閉鎖機構、例えば前述した変形例による閉鎖機構51(図15〜図17)を用いてもよい。また、第2実施形態では、左右一対の弁体77、77を設けているが、両者の一方を省略してもよい。
さらに、第1実施形態と同様、本発明における閉鎖機構として、その開閉動作を制御可能な電磁弁や油圧弁などを用いてもよい。この場合、シリンダに対するピストンの位置がセンサで検出されるとともに、検出されたピストンの位置に基づいて、ピストンが内側区間から第1外側区間に位置したと判定された以後に、内側連通路を閉鎖するように閉鎖機構をECUなどの制御装置により制御してもよい。また、第2実施形態では、弁体77を閉鎖位置に保持する保持機構として、弁体77に取り付けられた磁石と周壁に取り付けられた磁石を用いているが、他の適当な機構、例えば弁体及び周壁の一方に設けられた係合部と、弁体及び周壁の他方に設けられ、この係合部に係合する係合凹部とを有する保持機構を用いてもよい。
さらに、第2実施形態では、第1及び第2伝達部材TM1、TM2を、H型鋼で構成しているが、弾性を有する他の適当な材料、例えばゴムなどで構成してもよい。また、第2実施形態では、シリンダ63を、第1伝達部材TM1を介して上梁BUに連結するとともに、ピストン64を、第2伝達部材TM2を介して下梁BDに連結しているが、シリンダ及びピストンの一方を、当該一方が連結される上梁及び下梁の一方に伝達部材を介さずに直接、連結するとともに、シリンダ及びピストンの他方を、当該他方が連結される上梁及び下梁の他方に伝達部材を介して連結してもよい。さらに、第2実施形態では、第1及び第2リリーフ弁73、74が開弁する作動油HOの圧力を、互いに同じ上限値に設定しているが、互いに異なる値に設定してもよい。
また、第2実施形態では、本発明における動力変換機構として、外接歯車型の歯車モータ81を用いているが、作動流体の流動を回転運動に変換した状態で回転マスに伝達する他の適当な機構を用いてもよい。例えば、内接歯車型の歯車モータや、本出願人による特許第5191579号の図5などに記載されたスクリュー機構、本出願人による特許第5161395号の図2などに記載されたピストンがナットに一体に設けられたボールねじ、あるいは、ベーンモータなどを用いてもよい。動力変換機構としてこのボールねじを用いる場合には、内側連通路及び外側連通路におけるピストンが移動する部分を、シリンダ状に形成してもよいことは、もちろんである。さらに、第2実施形態では、ロッド65をピストン64に直接、連結しているが、本出願人による特許第5191579号の図2などに記載されているように、皿ばねを介して連結してもよい。この場合、シリンダの一端部に設けられた第1取付具及びロッドの一端部に設けられた第2取付具をそれぞれ、第1及び第2伝達部材を介さずに、上梁及び下梁に直接、ブレース状に連結してもよい。あるいは、本出願人による特願2014-197837号の図2などに記載されているように、ロッドをピストンに、ケーブル、定滑車及び動滑車を介して連結してもよい。また、第2実施形態では、ピストン64を下梁BDに、ロッド65を介して連結しているが、本出願人による特願2014-183201号の図2などに記載されているように、ケーブル、定滑車及び動滑車を介して連結してもよい。
さらに、第2実施形態では、本発明における第1及び第2部位はそれぞれ、上梁及び下梁であるが、建物Bが立設された基礎及び建物Bを含む系内の他の適当な所定の2つの部位、例えば基礎及び建物の上端部でもよい。また、第2実施形態は、本発明による振動抑制装置61を、建物Bに適用した例であるが、他の適当な構造物、例えばラック倉庫などに適用してもよい。以上の第2実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
次に、図27〜図31を参照しながら、本発明の第3実施形態による振動抑制装置101について説明する。図27〜図30に示すように、この振動抑制装置101は、第1実施形態と比較して、支持体5とラック倉庫Rの間に設けられたフラットジャッキ102と、フラットジャッキ102の動作を制御するための制御装置111を備える点が主に異なっている。図27〜図31において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、図27では、図1と同様に便宜上、細部の構成要素の符号を省略している。
図28及び図29に示すように、フラットジャッキ102は、上下一対の円板状の押圧板103、103と、両押圧板103、103の間に設けられた中空の伸縮部104を一体に有しており、上下方向に伸縮可能に構成されている。伸縮部104は、互いに接合された上下一対の比較的薄い軟鋼板で構成されており、その内側には、流体圧(例えば油圧)を供給可能な流体室104aが画成されている。また、伸縮部104は、その内周部分が円板状に形成され、その外周部分が、リング状に形成されるとともに、全体として押圧板103、103と同心状に配置されており、押圧板103、103から径方向の外方に突出している。
また、上側の押圧板103の上面には矩形板状の上フランジ105が、下側の押圧板103の底面には矩形板状の下フランジ106が、それぞれ同心状に一体に設けられている。上フランジ105には、前述した支持体5が載置された状態で、支持体5のフランジ22の取付孔22aに挿入された前記ボルトがねじ込まれており、それにより、支持体5のフランジ22は、フラットジャッキ102の上フランジ105に取り付けられている。
さらに、下フランジ106の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する取付孔(図示せず)が形成されている。下フランジ106の取付孔には、ボルト(図示せず)が挿入されていて、これらのボルトはラック倉庫Rの上端部にねじ込まれており、それにより、フラットジャッキ102の下フランジ106は、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられている。以上の構成により、支持体5は、フラットジャッキ102を介してラック倉庫Rに、水平方向に移動不能にかつ上下方向に移動可能に設けられている。
また、図28に示すように、第1実施形態と同様、支持体5の滑り板21は、質量体2の当接板4に、上下方向に間隔を存した状態で対向している。この間隔は、前記間隔DIよりも若干、大きな値に設定されている。さらに、伸縮部104は、流体室104aに連通する注入管及び排出管をそれぞれ介して、ポンプ及びドレン(いずれも図示せず)に接続されている。注入管及び排出管の途中には、例えばリニア電磁弁で構成された第1制御弁107及び第2制御弁108がそれぞれ設けられている(図30参照)。
フラットジャッキ102では、第1制御弁107が開弁状態にあるときには、ポンプからの流体圧が伸縮部104に供給され、第1制御弁107が閉弁状態にあるときには、ポンプから伸縮部104への流体圧の供給が停止される。また、第2制御弁108が開弁状態にあるときには、伸縮部104内の流体圧がドレンに排出され、第2制御弁108が閉弁状態にあるときには、伸縮部104からドレンへの流体圧の排出が停止される。
また、フラットジャッキ102では、第1及び第2制御弁107、108の制御モードとして、ジャッキアップモードとジャッキダウンモードが設定されている。このジャッキアップモードでは、第1制御弁107が開弁されるとともに、第2制御弁108が全閉されることによって、ポンプからの流体圧が伸縮部104に供給されるとともに、伸縮部104からドレンへの流体圧の排出が停止される。これにより、図29に示すように、伸縮部104が上下方向に膨らむ結果、上下のフランジ105、106の間隔が大きくなり、フラットジャッキ102が伸長させられる(ジャッキアップ)。また、フラットジャッキ102の伸長によって、支持体5は、押し上げられ、当接板4側に押圧される。この場合、ポンプから伸縮部104に供給される流体圧は、第1制御弁107の開度が大きいほど、より大きくなり、それにより、フラットジャッキ102の伸長量がより大きくなる。
上記のジャッキダウンモードでは、第1制御弁107が全閉されるとともに、第2制御弁108が全開されることによって、ポンプから伸縮部104への流体圧の供給が停止されるとともに、伸縮部104からドレンに流体圧が排出される。これにより、図28に示すように、伸縮部104が上下方向に縮む結果、上下のフランジ105、106の間隔が小さくなり、フラットジャッキ102が短縮させられる(ジャッキダウン)。
第1及び第2制御弁107、108は、前記制御装置111に接続されており、両者107、108の開度は、制御装置111によって制御される。制御装置111は、バッテリや、電気回路、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されており、ラック倉庫Rとともに建物(図示せず)内に設けられている。
また、質量体2には、変位センサ112が設けられている。変位センサ112は、例えばレーザー式のものであり、ラック倉庫Rに対する質量体2の水平方向の変位(以下「質量体変位」という)DISMを検出し、その検出信号を制御装置111に出力する。制御装置111は、ラック倉庫Rの振動中、検出された質量体変位DISMに基づいて、第1及び第2制御弁107、108の開度を制御し、それにより、フラットジャッキ102を制御する。
図31は、フラットジャッキ102を制御するために、制御装置111によって実行される処理を示している。本処理は、所定時間(例えば10msec)ごとに、繰り返し実行される。まず、図31のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、検出された質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上であるか否かを判別する。この第1所定変位DREM1は、前記合同区間IUの1/2よりも大きく、かつ、合同区間IUの1/2と第3区間IN3との和よりも小さい値に設定されている。
上記ステップ1の答がNO(DISM<DREM1)のときには、第1及び第2制御弁107、108をジャッキダウンモードで制御し(ステップ2)、本処理を終了する。これにより、前述したように、第1及び第2制御弁107、108が全閉状態及び全開状態にそれぞれ制御されることによって、フラットジャッキ102が短縮される。
一方、ステップ1の答がYESで、ラック倉庫Rの振動により変位した質量体2の質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上であるときには、第1及び第2制御弁107、108をジャッキアップモードで制御し(ステップ3)、本処理を終了する。これにより、前述したように、第1及び第2制御弁107、108が開弁状態及び全閉状態にそれぞれ制御されることによって、フラットジャッキ102が伸長される。
また、ステップ3によるジャッキアップモードの実行中、質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上でかつ第2所定変位DREM2(>DREM1)よりも小さいときには、第1制御弁107の開度は所定の第1開度に制御される。この第1開度は、フラットジャッキ102の伸長により支持体5の滑り板21が当接板4に当接するような値に設定されている。以上により、支持体5がフラットジャッキ102で当接板4側に押圧されることによって、滑り板21が当接板4に当接する。上記の第2所定変位DREM2は、合同区間IUの1/2と第3区間IN3との和よりも小さい値に設定されている。
さらに、ステップ3によるジャッキアップモードの実行中、質量体変位DISMが第2所定変位DREM2以上であるときには、第1制御弁107の開度は、第1開度よりも大きな所定の第2開度に制御される。これにより、フラットジャッキ102の伸長量がより大きくなることによって、フラットジャッキ102による当接板4側への滑り板21の押圧力がより大きくなる。以上のように、ステップ3によるジャッキアップモードの実行中には、質量体変位DISMが大きいほど、フラットジャッキ102による当接板4側への滑り板21の押圧力は、段階的により大きくなるように制御される。この場合の段数は1段であるが、複数段でもよい。
以上のように、第3実施形態によれば、質量体2は、ラック倉庫Rに取り付けられた伝達部材3に、載置された状態で支持されていて、質量体2には、当接板4が一体に設けられており、ラック倉庫Rには、支持体5が、フラットジャッキ102を介して水平方向に移動不能にかつ上下方向に移動可能に設けられている。支持体5は、当接板4と上下方向に間隔を存した状態で対向しており、フラットジャッキ102によって、支持体5が当接板4側に押圧される。また、振動によるラック倉庫Rに対する質量体2の水平方向の変位である質量体変位DISMが、変位センサ112によって検出され、検出された質量体変位DISMが第1所定変位DREM1よりも小さいとき(図31のステップ1:NO)には、第1及び第2制御弁107、108が制御装置111によりジャッキダウンモードで制御される(ステップ2)。これにより、ラック倉庫Rが振動していないときや、ラック倉庫Rの振動が比較的小さく、それにより質量体変位DISMが小さいときには、支持体5の滑り板21は、フラットジャッキ102で当接板4側に押圧されず、当接板4に当接しないように保持される(図28参照)。
一方、ラック倉庫Rの振動により質量体2がラック倉庫Rに対して水平方向に変位し、質量体変位DISMが第1所定変位DREM1に達したとき(ステップ1:YES)には、第1及び第2制御弁107、108がジャッキアップモードで制御されることによって、支持体5の滑り板21を当接板4に当接させるように、フラットジャッキ102が制御され(ステップ3)、その結果、滑り板21が当接板4に当接する(図29参照)。これにより、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに、第1実施形態の説明で述べた可変減衰ダンパ6のより大きな減衰力に加え、当接板4及び滑り板21の間の摩擦による抵抗力がさらに得られる。したがって、第1実施形態による効果、すなわち、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに付加振動系の変位(質量体2の変位)の過大化に起因する振動抑制装置101及びラック倉庫Rの破損を防止できるという効果を、確実に得ることができる。
また、ジャッキアップモードの実行中、質量体変位DISMが大きいほど、フラットジャッキ102による当接板4側への滑り板21の押圧力が、より大きくなるように制御される。これにより、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいことで質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上であるときに、質量体変位DISMが大きいほど、当接板4及び滑り板21の間の摩擦によるより大きな抵抗力を得ることができるので、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置101及びラック倉庫Rの破損を防止できるという効果を、より有効に得ることができる。
さらに、伝達部材3を交換する際、フラットジャッキ102の伸長により滑り材21を当接板4に当接させることによって、質量体2を支持体5で支持した状態で、当該交換を容易に行うことができる。その他、第3実施形態によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第3実施形態では、当接板4を質量体2に、支持体5をラック倉庫Rに、それぞれ設けているが、これとは逆に、当接板をラック倉庫に、支持体を質量体に、それぞれ設けてもよい。また、第3実施形態では、振動抑制装置101を、フラットジャッキ102によって支持体5を当接板4に押圧して当接させるように構成しているが、これとは逆に、当接板4を支持体5に押圧して当接させるように構成してもよい。さらに、第3実施形態では、当接体としての支持体5を被当接体としての当接板4側に押圧するための押圧機構として、フラットジャッキ102を用いているが、当接体を被当接体側に押圧可能な他の適当な機構、例えば、ピストン式のジャッキや、ギヤ式のジャッキなどを用いてもよい。
また、第3実施形態では、変位センサ112は、レーザー式のものであるが、超音波式のものなどを用いてもよい。さらに、第3実施形態では、質量体変位DISMを、変位センサ112で検出しているが、構造物に対する質量体の相対速度を超音波式などのセンサで検出するとともに、検出された相対速度を積分することによって、算出してもよい。また、第3実施形態では、ラック倉庫Rに対する質量体2の水平方向の変位を表す変位パラメータとして、質量体変位DISMを検出しているが、他の適当なパラメータ、例えば、可変減衰ダンパ6のシリンダ31に対するピストン32の変位を検出してもよい。
さらに、第3実施形態では、ジャッキアップモードにおいて、フラットジャッキ102の押圧力を、質量体変位DISMが大きいほど、段階的により大きくなるように制御しているが、連続的に(例えばリニアに)より大きくなるように制御してもよく、あるいは、一定値に制御してもよい。また、第3実施形態に関し、前述した第1実施形態に関するバリエーションを採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。