以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示す本発明の第1実施形態による振動抑制装置1は、ラック倉庫Rの振動(主に水平方向の振動)を抑制するためのものであり、ラック倉庫Rの上端部に設けられている。図1に示すように、振動抑制装置1は、質量体2、複数の伝達部材3、当接板4、支持体5及び可変減衰ダンパ6を備えている。質量体2は、比較的比重の大きい材料、例えば鉄で構成されており、直方体状に形成されている。なお、図1では、便宜上、細部の構成要素の符号を省略している。
図2に示すように、各伝達部材3は、一般的なゴムタイプの免震装置と同様に構成されており、上下一対の矩形板状のフランジ11、11と、両フランジ11、11の間に、互いに一体に積層された円板状の複数の内部ゴム12と、内部ゴム12の外表を覆う円筒状の被覆ゴム13を有している。内部ゴム12は、上下の内部鋼板14、14をそれぞれ介して、上下のフランジ11、11に取り付けられている。なお、図2では、便宜上、内部ゴム12の一部の符号と、内部ゴム12、被覆ゴム13及び内部鋼板14、14の断面のハッチングを省略している。
各フランジ11の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する3つの取付孔11aが形成されており、各取付孔11aには、ボルト(図示せず)が挿入されている。上側のフランジ11の取付孔11aに挿入されたボルトは、質量体2の底面にねじ込まれており、下側のフランジ11の取付孔11aに挿入されたボルトは、ラック倉庫Rの上端部にねじ込まれている。以上により、質量体2は、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられた伝達部材3によって支持されている。
前記複数の当接板4の各々は、摩擦係数が安定した材料、例えばステンレスで構成されており、質量体2の底面に貼り付けられている。複数の支持体5は、複数の当接板4に対応して設けられている。図3に示すように、複数の支持体5の各々は、円板状の滑り板21と、矩形板状のフランジ22と、滑り板21とフランジ22の間に、互いに一体に積層された円板状の複数の内部ゴム23と、内部ゴム23の外表を覆う円筒状の被覆ゴム24を有している。内部ゴム23は、上下の内部鋼板25、25をそれぞれ介して、滑り板21及びフランジ22に取り付けられている。滑り板21は、摩擦係数が安定した材料、例えばフッ素樹脂で構成されている。なお、図3では、便宜上、内部ゴム23の一部の符号と、滑り板21、内部ゴム23、被覆ゴム24及び内部鋼板25、25の断面のハッチングを省略している。
フランジ22の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する3つの取付孔22aが形成されており、各取付孔22aには、ボルト(図示せず)が挿入されている。これらのボルトはラック倉庫Rの上端部にねじ込まれており、それにより、支持体5は、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられている。図1及び図7(a)に示すように、ラック倉庫Rが振動していないときには、支持体5の滑り板21は、当接板4に所定の間隔DIを存した状態で上下方向に対向している。この所定の間隔DIの設定手法については後述する。
また、前記複数の可変減衰ダンパ6の各々は、いわゆるパッシブタイプの可変減衰ダンパとして構成されており、図4に示すように、円筒状のシリンダ31と、シリンダ31内に軸線方向に摺動自在に設けられたピストン32と、ピストン32に一体に設けられ、シリンダ31内に軸線方向に移動自在に部分的に収容されたロッド33を有している。以下、可変減衰ダンパ6について、図4の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として説明する。
シリンダ31は、互いに対向する左壁31a及び右壁31bと、両者31a、31bの間に一体に設けられた周壁31cで構成されている。これらの左右の壁31a、31b及び周壁31cによって画成された油室は、ピストン32によって左側の第1油室31dと右側の第2油室31eに区画されており、両油室31d、31eには、シリコンオイルで構成された作動油HFが充填されている。また、右壁31bの径方向の中央には、左右方向(軸線方向)に貫通するロッド案内孔31fが形成されており、ロッド案内孔31fには、シール41が設けられている。さらに、左壁31aには、左方に突出する凸部31gが一体に設けられており、凸部31gには、自在継手を介して、第1取付具FL1が設けられている。
前記ロッド33は、上記のロッド案内孔31fに、シール41を介して挿入され、軸線方向に延びるとともに、シリンダ31に対して軸線方向に移動自在であり、その左端部がピストン32に取り付けられている。また、ロッド33の右端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2が設けられている。
前記ピストン32は、円柱状に形成され、その周面には、シール42が設けられており、ラック倉庫Rが振動していないときには、図4に示すように、シリンダ31内の軸線方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ31内の軸線方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。また、ピストン32の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁43及び第2リリーフ弁44が設けられている。
第1リリーフ弁43は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、ラック倉庫Rの振動に伴うピストン32の移動によって第1油室31d内の作動油HFの圧力が所定の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室31d、31eが互いに連通されることによって、第1油室31d内の作動油HFの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁44は、第1リリーフ弁43と同様、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、ラック倉庫Rの振動に伴うピストン32の移動によって第2油室31e内の作動油HFの圧力が上記の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室31d、31eが互いに連通されることによって、第2油室31e内の作動油HFの圧力の過大化が防止される。
また、可変減衰ダンパ6は、シリンダ31に接続された、断面円形の第1連通管34、第2連通管35、第3連通管36及び第4連通管37L、37Rをさらに有している。第1〜第4連通管34〜36、37L、37Rの断面積(軸線方向に直交する面の面積)は、シリンダ31の断面積(軸線方向に直交する面の面積)よりも小さな値に設定されており、第1〜第3連通管34〜36の断面積は、互いに同じ値に設定されている。
第1連通管34は、ピストン32がシリンダ31内の上記の中立位置を含む所定の第1区間IN1に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させるように、設けられている。より具体的には、第1連通管34は、そのシリンダ31との接続部分における中立位置側の内壁面が第1区間IN1の端と面一になるように、配置されている。第1実施形態では、第1区間IN1の軸線方向の中心は、中立位置と一致しているが、ずれていてもよい。
第2連通管35は、ピストン32が、第1区間IN1と、シリンダ31内の第1区間IN1よりも軸線方向の両外側の所定の第2区間IN2とから成る第1合同区間IU1に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させるように、設けられている。より具体的には、第2連通管35は、そのシリンダ31との接続部分における中立位置側の内壁面が第1合同区間IU1の端と面一になるように、配置されている。第1実施形態では、左側の第2区間IN2の軸線方向の長さと、右側の第2区間IN2のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
また、上記の第3連通管36は、ピストン32が、第1区間IN1及び第2区間IN2と、シリンダ31内の第2区間IN2よりも軸線方向の両外側の所定の第3区間IN3とから成る第2合同区間IU2に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させるように、設けられている。より具体的には、第3連通管36は、そのシリンダ31との接続部分における中立位置側の内壁面が第2合同区間IU2の端と面一になるように、配置されている。第1実施形態では、左側の第3区間IN3の軸線方向の長さと、右側の第3区間IN3のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
第4連通管37L、37Rは、左右一対の連通管で構成されており、ピストン32が、シリンダ31内の第3区間IN3よりも軸線方向の両外側の最も外側の所定の第4区間IN4に位置しているときに、ピストン32をバイパスし、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させるように、設けられている。より具体的には、図6に示すように、左側の第4連通管37Lは、そのシリンダ31との中立位置側(右側)の接続部分における中立位置側の内壁面が第2合同区間IU2の端に位置するピストン32の中立位置側の壁面と面一になるように、配置されている。また、左側の第4連通管37Lは、そのシリンダ31との中立位置と反対側(左側)の接続部分における中立位置と反対側の内壁面が左壁31aの内壁面と面一になるように、配置されている。右側の第4連通管37Rは、左側の第4連通管37Lと左右対称に配置されており、上述したような左側の第4連通管37Lの配置は、右側の第4連通管37Rについても同様である。
第1実施形態では、左側の第4区間IN4の軸線方向の長さと、右側の第4区間IN4のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
さらに、左側及び右側の第4連通管37L、37Rには、逆止弁45L、45Rがそれぞれ設けられている。左側の逆止弁45Lは、ピストン32が左側の第4区間IN4において中立位置と反対側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第4連通管37Lを介して第1油室31dから第2油室31eに流動するのを、阻止する。また、逆止弁45Lは、ピストン32が左側の第4区間IN4において中立位置側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第4連通管37Lを介して第2油室31eから第1油室31dに流動するのを、許容する。
右側の逆止弁45Rは、ピストン32が右側の第4区間IN4において中立位置と反対側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第4連通管37Rを介して第2油室31eから第1油室31dに流動するのを、阻止する。また、逆止弁45Rは、ピストン32が右側の第4区間IN4において中立位置側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HFが当該ピストン32で押圧されることで第4連通管37Rを介して第1油室31dから第2油室31eに流動するのを、許容する。
また、図5に示すように、可変減衰ダンパ6の前述した第1取付具FL1は第1連結部材EN1に、第2取付具FL2は第2連結部材EN2に、それぞれ取り付けられており、第1連結部材EN1は質量体2の底面に、第2連結部材EN2はラック倉庫Rの上端部に、それぞれ取り付けられている。以上により、可変減衰ダンパ6は、そのシリンダ31が質量体2に連結され、ピストン32がロッド33とともにラック倉庫Rに連結されており、水平方向に延びている。なお、図5では、便宜上、第1〜第4連通管34〜36、37L、37Rを省略している。
以上の構成の振動抑制装置1では、質量体2、伝達部材3及び可変減衰ダンパ6は、付加振動系を構成しており、付加振動系は、ラック倉庫Rが振動するのに伴って振動(共振)することにより、ラック倉庫Rの振動を吸収し、抑制する。また、可変減衰ダンパ6のピストン32は、ラック倉庫Rの振動に伴って、シリンダ31内を往復移動する。ラック倉庫Rの振動が比較的小さいときには、ピストン32は、第1区間IN1を往復移動し、当該移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1〜第3連通管34〜36を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。
以上により、ラック倉庫Rの振動が比較的小さく、それによりピストン32が第1区間IN1に位置しているときには、可変減衰ダンパ6の減衰係数は比較的小さくなる。また、ラック倉庫Rの振動が大きくなると、ピストン32は、第1区間IN1を超えて第2区間IN2を往復移動するようになり、第2区間IN2を移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1連通管34を介さずに第2及び第3連通管35、36を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動が比較的大きく、それによりピストン32が第2区間IN2に位置しているときには、第1区間IN1に位置しているときよりも、可変減衰ダンパ6の減衰係数は大きくなる。
ラック倉庫Rの振動がさらに大きくなると、ピストン32は、第1及び第2区間IN1、IN2を超えて第3区間IN3を往復移動するようになり、第3区間IN3を移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1及び第2連通管34、35を介さずに第3連通管36を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動が比較的大きく、それによりピストン32が第3区間IN3に位置しているときには、第1及び第2区間IN1、IN2から成る第1合同区間IU1に位置しているときよりも、可変減衰ダンパ6の減衰係数は大きくなる。
また、ラック倉庫Rの振動が非常に大きくなると、ピストン32は、第1〜第3区間IN1〜IN3を超えて第4区間IN4を往復移動するようになる。ピストン32が第4区間IN4において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、前述した逆止弁45L、45Rによって、作動油HFが第4連通管37L、37Rを介して第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動するのが阻止される。
以上の構成から明らかなように、ピストン32が第4区間IN4において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室31d、31eは、第1〜第4連通管34〜36、37L、37Rを介しては互いに連通されず、当該ピストン32で押圧された第1又は第2油室31d、31e内の作動油HFの圧力が前記上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁43、44が開弁することで互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1又は第2リリーフ弁43、44を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときには、可変減衰ダンパ6の減衰係数は非常に大きくなる。
一方、ピストン32が第4区間IN4において中立位置側に向かって移動しているときには、逆止弁45L、45Rによって、作動油HFが第4連通管37L、37Rを介して第1及び第2油室31d、31eの他方から一方に流動するのが許容される。
以上のように、可変減衰ダンパ6の減衰係数は、ラック倉庫Rの振動の増大によりピストン32の移動範囲が大きくなるのに伴って、より大きくなる。
また、伝達部材3、支持体5及び可変減衰ダンパ6は、質量体2とラック倉庫Rの間に、次のようにして配置されている。すなわち、図1に示すように、伝達部材3は、質量体2の水平方向の両端部及び中央部に配置されている。支持体5及び可変減衰ダンパ6は、質量体2の水平方向の両端部に配置された伝達部材3と中央部に配置された伝達部材3との間に、質量体2の中央部に向かって、支持体5、可変減衰ダンパ6及び支持体5の順で配置されている。なお、図1に示す伝達部材3、支持体5及び可変減衰ダンパ6の配置は、あくまで一例であり、これに限定されないことはもちろんである。
また、前述した当接板4と支持体5の滑り板21との間の所定の間隔DIは、次のようにして設定されている。すなわち、ラック倉庫Rの振動中、付加振動系が振動するのに伴い、質量体2が水平方向に往復移動することによって、質量体2を支持する伝達部材3は、図7(b)に示すように剪断変形するようになる。この場合、ラック倉庫Rの振動が大きいほど、付加振動系の振動が大きくなるので、伝達部材3の剪断変形の度合いがより大きくなる。
所定の間隔DIは、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいことでピストン32が第2区間IN2〜第4区間IN4から成る区間に位置しているときに、すなわち、第1区間IN1以外の区間に位置しているときに、伝達部材3の上述した剪断変形により質量体2がラック倉庫Rに近づくことによって当接板4及び滑り板21が互いに当接するように、設定されている。この場合、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいことで伝達部材3の剪断変形の度合いが大きいほど、質量体2がラック倉庫Rにより近づくため、当接板4及び滑り板21の間の当接度合いは、より大きくなる。なお、当接板4及び支持体5の滑り板21が互いに当接している状態では、質量体2は、伝達部材3及び支持体5の両方に支持される。
図8(a)は、伝達部材3の水平方向の変形量(以下「伝達部材変形量DE」という)と、その抵抗力(以下「伝達部材抵抗力RE」という)との関係を示している。図8(b)は、伝達部材変形量DEと、当接板4及び滑り板21の間の摩擦力(以下「当接摩擦力FR」という)との関係を示しており、図8(c)は、伝達部材変形量DEと、伝達部材抵抗力RE及び当接摩擦力FRの和(以下「合同抵抗力UR」という)との関係を示している。
伝達部材3が前述したようにゴムで構成されているため、図8(a)に示すように、伝達部材抵抗力REは、伝達部材変形量DEが大きいほど、リニアにより大きくなる。また、当接板4と滑り板21との間の所定の間隔DIが上述したように設定されていることと、伝達部材変形量DEが大きいほど、両者4、21の間の当接度合いがより大きくなることから、図8(b)に示すように、当接摩擦力FRは、伝達部材変形量DEが比較的小さいときには0になり、伝達部材変形量DEが比較的大きい範囲では、DEが大きくなるほど、リニアにより大きくなる。なお、当接摩擦力FRは、伝達部材変形量DEが増大するときと、減少するときとでは、伝達部材抵抗力REと異なり、その向きが互いに反対方向になる。
また、合同抵抗力URは、伝達部材抵抗力REと当接摩擦力FRとの和であるので、伝達部材変形量DEと合同抵抗力URの間の関係は、図8(a)及び図8(b)に示す関係を互いに足し合わせることによって得られた図8(c)に示すような関係になる。同図に示すように、伝達部材変形量DEが増大しているときには、合同抵抗力URは、DEが大きいほど、図8(c)に示す履歴特性により大きくなる。
また、付加振動系(質量体2、伝達部材3及び可変減衰ダンパ6)の諸元は、ラック倉庫Rの振動中、ピストン32が第1区間IN1に位置しているときに、付加振動系の固有振動数がラック倉庫Rの固有振動数(例えば1次モードの固有振動数)に同調するように、設定されている。当該設定は、例えば定点理論に基づいて行われる。ここで、付加振動系の固有振動数は、質量体2の質量md及び伝達部材3の剛性θTによって定まる(=sqrt(θT/md)/2π)。また、付加振動系の諸元には、質量体2の質量md、伝達部材3の剛性θT、作動油HFの粘性係数、シリンダ31の断面積、第1〜第3連通管34〜36の断面積及び長さなどが含まれる。
以上のように、第1実施形態によれば、質量体2が、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられた伝達部材3に、載置された状態で支持されており、可変減衰ダンパ6のシリンダ31が質量体2に、ピストン32がラック倉庫Rに、それぞれ連結されている。また、質量体2、伝達部材3及び可変減衰ダンパ6によって付加振動系が構成されており、付加振動系は、ラック倉庫Rの振動に伴って振動(共振)し、その振動中、ピストン32がシリンダ31内を往復移動する。
ピストン32が図4に示す中立位置を含むシリンダ31内の所定の第1区間IN1に位置しているときには、シリンダ31の第1及び第2油室31d、31eは、第1連通管34を介して互いに連通される。また、第1及び第2油室31d、31eは、ピストン32がシリンダ31内の第1及び第2区間IN1、IN2を含む第1合同区間IU1に位置しているときには、第2連通管35を介して互いに連通され、ピストン32がシリンダ31内の第1〜第3区間IN1〜IN3を含む第2合同区間IU2に位置しているときには、第3連通管36を介して互いに連通される。
前述したように、ラック倉庫Rの振動が比較的小さいことでピストン32が第1区間IN1に位置しているときには、第1及び第2油室31d、31eが第1〜第3連通管34〜36を介して互いに連通されることによって、可変減衰ダンパ6の減衰係数は比較的小さくなる。また、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいことでピストン32が第2区間IN2に位置しているときには、第1及び第2油室31d、31eが第2及び第3連通管35、36を介して互いに連通されることによって、可変減衰ダンパ6の減衰係数は、ピストン32が第1区間IN1に位置しているときよりも大きくなる。ラック倉庫Rの振動がさらに大きいことでピストン32が第3区間IN3に位置しているときには、第1及び第2油室31d、31eが第3連通管36を介して互いに連通されることによって、可変減衰ダンパ6の減衰係数は、ピストン32が第2区間IN2に位置しているときよりも大きくなる。
また、付加振動系の諸元は、ラック倉庫Rの振動中、ピストン32が第1区間IN1に位置しているときに、すなわち、ラック倉庫Rの振動が比較的小さいときに、付加振動系の固有振動数がラック倉庫Rの固有振動数に同調するように、設定されている。したがって、ラック倉庫Rの振動が比較的小さいときに、その振動を適切に抑制することができる。さらに、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいときに、質量体2及びラック倉庫Rに連結された可変減衰ダンパ6のより大きな減衰力が得られるので、付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置1及びラック倉庫Rの破損を防止することができる。また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、第1及び第2調圧弁ならびに第1及び第2スプール弁などから成る複雑な油圧回路ではなく、第1〜第3連通管34〜36という比較的簡易な構成によって、上述した効果を得ることができる。
また、質量体2には当接板4が、ラック倉庫Rには支持体5が、それぞれ取り付けられており、支持体5の滑り板21は、当接板4と所定の間隔DIを存した状態で対向している。前述したように、ラック倉庫Rが振動していないときや、ラック倉庫Rの振動が比較的小さいことでピストン32が第1区間IN1に位置しているときには、当接板4及び滑り板21は互いに当接せず、ラック倉庫Rの振動が比較的大きくなることでピストン32が第2区間IN2〜第4区間IN4に位置するようになると、当接板4及び滑り板21は互いに当接するようになる。これにより、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいときに、前述した可変減衰ダンパ6のより大きな減衰力に加え、当接板4及び滑り板21の間の当接摩擦力FRがさらに得られる。したがって、前述した効果、すなわち、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいときに付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置1及びラック倉庫Rの破損を防止できるという効果を、確実に得ることができる。
また、第1リリーフ弁43は、第1油室31d内の作動油HFの圧力が上限値に達したときに開弁し、第2リリーフ弁44は、第2油室31e内の作動油HFの圧力が上限値に達したときに開弁し、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させる。さらに、可変減衰ダンパ6には、ピストン32が第4区間IN4に位置しているときに、第1及び第2油室31d、31eを互いに連通させるための第4連通管37L、37Rが設けられており、第4連通管37L、37Rには、逆止弁45L、45Rが設けられている。逆止弁45L、45Rは、ピストン32が第4区間IN4において中立位置と反対側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方への第4連通管37L、37Rを介した作動油HFの流動を阻止するとともに、ピストン32が第4区間IN4において中立位置側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室31d、31eの他方から一方への第4連通管37L、37Rを介した作動油HFの流動を許容する。
前述したように、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいことでピストン32が第4区間IN4において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室31d、31eは、第1〜第4連通管34〜36、37L、37Rを介しては互いに連通されず、第1又は第2油室31d、31e内の作動油HFの圧力が上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁43、44の開弁により互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン32で押圧された作動油HFは、第1又は第2リリーフ弁43、44を介して、第1及び第2油室31d、31eの一方から他方に流動する。以上により、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいときに、可変減衰ダンパ6の非常に大きな減衰力が得られるので、付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置1及びラック倉庫Rの破損を防止することができる。
また、ラック倉庫Rの振動が非常に大きいことでピストン32が第4区間IN4において中立位置側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室31d、31eの他方における作動油HFを、第4連通管37L、37Rを介して第1及び第2油室31d、31eの一方に逃がせるので、ピストン32が中立位置に戻れなくなるのを防止することができる。この場合、第4連通管37L、37Rが図6を参照して説明したように配置されているので、ピストン32が第3区間IN3と第4区間IN4との境界線(同図に一点鎖線で図示)上に位置しているときに、第4連通管37L、37Rがピストン32で完全にふさがれることがなく、上述した効果を適切に得ることができる。
なお、第1実施形態では、第4連通管37L、37Rの断面積や長さは、ピストン32が第4区間IN4において中立位置側に向かって移動しているときの可変減衰ダンパ6の減衰係数が、ピストン32が第3区間IN3に位置しているときの可変減衰ダンパ6の減衰係数と同じになるように、設定されているが、これに限定されないことはもちろんである。
さらに、振動抑制装置1がラック倉庫Rの上端部に設けられているので、ラック倉庫Rの上端部以外の部分に設けた場合と異なり、ラック倉庫R内の荷物などを別の場所に移動させずに、その設置作業を行うことができる。
なお、第1実施形態では、シリンダ31を質量体2に、ピストン32をラック倉庫Rに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、シリンダ31をラック倉庫Rに、ピストン32を質量体2に、それぞれ連結してもよい。また、第1実施形態では、シリンダ31、ピストン32及び第1〜第4連通管34〜36、37L、37Rの断面形状は、円形であるが、三角形や四角形などでもよい。さらに、第1実施形態では、第1〜第3連通管34〜36を、互いに並列に設けているが、それらのシリンダの軸線方向に延びる部分を共通化して1つの連通管で構成するとともに、シリンダの径方向に延びる部分で互いに分岐して第1及び第2油室に連通するように構成してもよい(後述する図12参照)。
また、第1実施形態では、本発明における外側連通路として、第2及び第3連通管35、36を用いているが、両者35、36の一方を用いてもよく、あるいは、シリンダ内の互いに異なる区間において第1及び第2流体室を互いに連通させる3つ以上の連通管を用いてもよい。また、図9に示すように、その一端部及び他端部がシリンダ31の左壁31a及び右壁31bにそれぞれ接続された外側連通路OPを用いてもよい。あるいは、図10に示すように、外側連通路として、ピストン32に形成された軸線方向に貫通する比較的小さい孔Vを用いてもよい。図9及び図10に示すような外側連通路を用いる場合には、第1及び第2リリーフ弁を省略してもよく、また、第4連通管37L、37Rが不要になる。あるいは、外側連通路として、図10に示す孔Vに代えて、第1及び第2リリーフ弁を用いてもよく、その場合には、第4連通管37L、37Rを設けるのが好ましい。
さらに、第1実施形態では、内側連通路として、シリンダ31に接続された第1連通管34を用いているが、シリンダの周壁に形成された連通路を用いてもよい。この場合、内側連通路を、周壁の内部において軸線方向に延びるとともに、その両端で径方向に延びて第1及び第2流体室に連通する孔状の通路で構成してもよく、あるいは、周壁の内周面に形成された溝で構成してもよい。内側連通路をこのような溝で構成する場合、当該溝を周壁の周方向に部分的に設けても、周方向の全体に設けてもよく、後者の場合には、ロッドをピストンの軸線方向の両外側に延びるように設けるとともに、ロッドを、シリンダの左右の壁の各々に形成されたロッド案内孔に挿入して支持するのが好ましい。以上の内側連通路に関するバリエーションは、外側連通路及び連通路にも同様に当てはまる。また、外側連通路としてシリンダの周壁に形成された連通路を用いた場合にも、その数は任意である。
また、第1実施形態では、本発明における作動流体として、シリコンオイルで構成された作動油HFを用いているが、粘性を有する他の適当な流体を用いてもよい。さらに、第1実施形態では、積層ゴムで構成された伝達部材3を介して、質量体2をラック倉庫Rに連結しているが、弾性を有する他の適当な伝達部材、例えば、従来の振動抑制装置と同様に鋼線などで構成されたワイヤを介して、質量体をラック倉庫に振り子状に連結してもよい。また、第1実施形態では、質量体2をラック倉庫Rの上端部に連結しているが、他の適当な部分に連結してもよい。
さらに、第1実施形態では、当接板4を質量体2に、支持体5をラック倉庫Rに、それぞれ取り付けているが、これとは逆に、当接板をラック倉庫に、支持体を質量体に、それぞれ取り付けてもよい。また、第1実施形態では、本発明における当接体として、質量体2に取り付けられた当接板4を用いているが、質量体に一体に設けられた当接体を用いてもよく、あるいは、質量体の一部を当接体として兼用してもよい。さらに、第1実施形態では、支持体5を積層ゴムで構成しているが、他の適当な材料、例えば鋼材で構成してもよい。また、第1実施形態では、第1及び第2リリーフ弁43、44が開弁する作動油HFの圧力を、互いに同じ上限値に設定しているが、互いに異なる値に設定してもよい。
さらに、第1実施形態は、本発明による振動抑制装置1を、ラック倉庫Rに適用した例であるが、他の適当な構造物、例えば高層の建築物などに適用してもよい。以上の第1実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
次に、図11〜図13を参照しながら、本発明の第2実施形態による振動抑制装置51について説明する。この振動抑制装置51は、基礎(図示せず)に立設された高層の建物Bの振動を抑制するためのものであり、建物Bの上下の梁BU、BDの間に設けられている。振動抑制装置51は、上下の梁BU、BDにそれぞれ取り付けられた第1伝達部材TM1及び第2伝達部材TM2と、可変減衰マスダンパ52を備えている。第1及び第2伝達部材TM1、TM2は、弾性を有する柱材、例えばH型鋼で構成されている。
可変減衰マスダンパ52は、マスダンパとパッシブタイプの可変減衰ダンパを一体に組み合わせたものであり、図12に示すように、円筒状のシリンダ53と、シリンダ53内に軸線方向に摺動自在に設けられたピストン54と、ピストン54に一体に設けられ、シリンダ53内に軸線方向に移動自在に部分的に収容されたロッド55を有している。以下、可変減衰マスダンパ52について、図12の左側及び右側をそれぞれ「左」及び「右」として説明する。
シリンダ53は、第1実施形態で説明したシリンダ31と同様、互いに対向する左壁53a及び右壁53bと、両者53a、53bの間に一体に設けられた周壁53cで構成されている。これらの左右の壁53a、53b及び周壁53cによって画成された油室は、ピストン54によって左側の第1油室53dと右側の第2油室53eに区画されており、両油室53d、53eには、シリコンオイルで構成された作動油HOが充填されている。また、右壁53bの径方向の中央には、左右方向(軸線方向)に貫通するロッド案内孔53fが形成されており、ロッド案内孔53fには、シール61が設けられている。さらに、左壁53aには、左方に突出する凸部53gが一体に設けられており、凸部53gには、自在継手を介して、第1取付具FL1’が設けられている。
前記ロッド55は、上記のロッド案内孔53fに、シール61を介して挿入され、軸線方向に延びるとともに、シリンダ53に対して軸線方向に移動自在であり、その左端部がピストン54に取り付けられている。また、ロッド55の右端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2’が設けられている。
前記ピストン54は、円柱状に形成され、その周面には、シール62が設けられており、建物Bが振動していないときには、図12に示すように、シリンダ53内の軸線方向の中央の中立位置に位置している。この中立位置は、これに限らず、シリンダ31内の軸線方向の中央よりも左側又は右側の位置でもよい。また、ピストン54の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁63及び第2リリーフ弁64が設けられている。
これらの第1及び第2リリーフ弁63、64は、第1実施形態で説明した第1及び第2リリーフ弁43、44と同様に構成されている。第1リリーフ弁63は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、建物Bの振動に伴うピストン54の移動によって第1油室53d内の作動油HOの圧力が所定の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室53d、53eが互いに連通されることによって、第1油室53d内の作動油HOの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁64は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、建物Bの振動に伴うピストン54の移動によって第2油室53e内の作動油HOの圧力が上記の上限値に達したときに開弁する。これにより、第1及び第2油室53d、53eが互いに連通されることによって、第2油室53e内の作動油HOの圧力の過大化が防止される。
また、可変減衰マスダンパ52は、シリンダ53に接続された、断面円形の第1連通管D1、第2連通管D2及び第3連通管D3L、D3Rをさらに有している。第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rの断面積は、シリンダ53の断面積よりも小さな値に設定されており、第1及び第2連通管D1、D2の断面積は、互いに同じ値に設定されている。なお、図11では、便宜上、第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rを省略している。
第1及び第2連通管D1、D2は、シリンダ53と平行に延びる断面円形の合流管DCを互いに共有している。また、第1連通管D1は、左右一対の連通管D1a、D1bをさらに有している。左右の連通管D1a、D1bは、合流管DCに連通するとともに、それらのシリンダ53との接続部分における中立位置側の内壁面がシリンダ53内の上記の中立位置を含む所定の第1区間IN1’の左端及び右端とそれぞれ面一になるように、配置されている。ピストン54が第1区間IN1’に位置しているときには、左側の連通管D1aは第1油室53dに連通し、右側の連通管D1bは第2油室53eに連通している。以上の構成により、ピストン54が第1区間IN1’に位置しているときには、合流管DCを含む第1連通管D1は、ピストン54をバイパスし、第1及び第2油室53d、53eを互いに連通させる。第2実施形態では、第1区間IN1’の軸線方向の中心は、中立位置と一致しているが、ずれていてもよい。
第2連通管D2は、左右一対の連通管D2a、D2bをさらに有している。左右の連通管D2a、D2bは、合流管DCに連通するとともに、合流管DCからシリンダ53と平行に延び、それらの軸線方向の端部においてシリンダ53に向かって延びており、それらのシリンダ53との接続部分における中立位置側の内壁面がシリンダ53内の所定の合同区間IUの左端及び右端とそれぞれ面一になるように、配置されている。この合同区間IUは、上記の第1区間IN1’と、シリンダ53内の第1区間IN1’よりも軸線方向の両外側の所定の第2区間IN2’とから成っている。
ピストン54が合同区間IUに位置しているときには、左側の連通管D2aは第1油室53dに連通し、右側の連通管D2bは第2油室53eに連通している。以上の構成により、ピストン54が合同区間IUに位置しているときには、合流管DC及び左右の連通管D2a、D2bから成る第2連通管D2は、ピストン54をバイパスし、第1及び第2油室53d、53eを互いに連通させる。
なお、第2区間IN2’の軸線方向の長さは、ピストン54が第2区間IN2’に位置しているときに、第1連通管D1の連通管D1a、D1bがピストン54でふさがれるように設定するのが好ましい。これにより、第2区間IN2’に位置するピストン54が、第2連通管D2の連通管D2a(D2b)と第1連通管D1の連通管D1a(D1b)とでバイパスされるのが、防止される。あるいは、左右の連通管D1a、D1bに、合流管DC側から第1及び第2油室53d、53e側への作動油HOの流動を阻止するとともに、第1及び第2油室53d、53e側から合流管DC側への作動油HOの流動を許容する逆止弁を設けてもよい。これにより、ピストン54が第2区間IN2’において中立位置と反対側に移動しているときに、作動油HOが連通管D2a(D2b)及び連通管D1a(D1b)を介して第1及び第2油室53d、53eの一方から他方に流動するのが、防止される。また、第2実施形態では、左側の第2区間IN2’の軸線方向の長さと、右側の第2区間IN2’のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
前記第3連通管D3L、D3Rは、左右一対の連通管で構成されており、ピストン54が、シリンダ53内の第2区間IN2’よりも軸線方向の両外側の最も外側の所定の第3区間IN3’に位置しているときに、ピストン54をバイパスし、第1及び第2油室53d、53eを互いに連通させるように、設けられている。より具体的には、図13に示すように、左側の第3連通管D3Lは、そのシリンダ53との中立位置側(右側)の接続部分における中立位置側の内壁面が合同区間IUの端に位置するピストン54の中立位置側の壁面と面一になるように、配置されている。また、左側の第3連通管D3Lは、そのシリンダ53との中立位置と反対側(左側)の接続部分における中立位置と反対側の内壁面が左壁53aの内壁面と面一になるように、配置されている。右側の第3連通管D3Rは、左側の第3連通管D3Lと左右対称に配置されており、上述したような左側の第3連通管D3Lの配置は、右側の第3連通管D3Rについても同様である。
第2実施形態では、左側の第3区間IN3’の軸線方向の長さと、右側の第3区間IN3’のそれとは、互いに同じであるが、異なっていてもよい。
さらに、左側及び右側の第3連通管D3L、D3Rには、逆止弁56L、56Rがそれぞれ設けられている。左側の逆止弁56Lは、ピストン54が左側の第3区間IN3’において中立位置と反対側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン54で押圧されることで第3連通管D3Lを介して第1油室53dから第2油室53eに流動するのを、阻止する。また、逆止弁56Lは、ピストン54が左側の第3区間IN3’において中立位置側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン54で押圧されることで第3連通管D3Lを介して第2油室53eから第1油室53dに流動するのを、許容する。
右側の逆止弁56Rは、ピストン54が右側の第3区間IN3’において中立位置と反対側(右側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン54で押圧されることで第3連通管D3Rを介して第2油室53eから第1油室53dに流動するのを、阻止する。また、逆止弁56Rは、ピストン54が右側の第3区間IN3’において中立位置側(左側)に向かって移動しているときに、作動油HOが当該ピストン54で押圧されることで第3連通管D3Rを介して第1油室53dから第2油室53eに流動するのを、許容する。
また、可変減衰マスダンパ52は、合流管DCの途中に設けられた歯車モータ71と、歯車モータ71に連結された回転マス77をさらに有している。歯車モータ71及び回転マス77は、本出願人による特許第5191579号の図12などに記載されたものと同様に構成されている。具体的には、歯車モータ71は、外接歯車型のものであり、ケーシング72と、ケーシング72に収容された第1ギヤ73及び第2ギヤ74などで構成されている。ケーシング72は、合流管DCの中央部に一体に設けられており、その内部が互いに対向する2つの出入口72a、72aを介して、合流管DCに連通している。
また、第1ギヤ73は、スパーギヤで構成され、第1回転軸75に一体に設けられている。第1回転軸75は、合流管DCに直交する方向に水平に延び、ケーシング72に回転自在に支持されており、ケーシング72の外部に若干、突出している。第2ギヤ74は、第1ギヤ73と同様、スパーギヤで構成され、第2回転軸76に一体に設けられており、第1ギヤ73と噛み合っている。第2回転軸76は、第1回転軸75と平行に延び、ケーシング72に回転自在に支持されている。また、第1及び第2ギヤ73、74の互いの噛合い部分は、ケーシング72の出入口72a、72aに臨んでいる。
回転マス77は、比重の比較的大きな材料、例えば鉄から成る円板で構成されている。また、回転マス77は、第1回転軸75に同軸状に固定されており、第1ギヤ73及び第1回転軸75と一体に回転自在である。
また、可変減衰マスダンパ52の前述した第1取付具FL1’は第1伝達部材TM1に、第2取付具FL2’は第2伝達部材TM2に、それぞれ取り付けられており、可変減衰マスダンパ52は、水平に延びている。以上により、可変減衰マスダンパ52のシリンダ53は上梁BUに、ピストン54は下梁BDに、それぞれ連結されている。
以上の構成の振動抑制装置51では、回転マス77を含む可変減衰マスダンパ52、第1及び第2伝達部材TM1、TM2は、付加振動系を構成しており、付加振動系は、建物Bが振動するのに伴って振動(共振)することにより、建物Bの振動を吸収し、抑制する。また、可変減衰マスダンパ52のピストン54は、建物Bの振動に伴って、シリンダ53内を往復移動する。建物Bの振動が比較的小さいときには、ピストン54は、第1区間IN1’を往復移動し、当該移動するピストン54で押圧された作動油HOは、第1及び第2連通管D1、D2を介して、第1及び第2油室53d、53eの一方から他方に流動する。
以上により、建物Bの振動が比較的小さく、それによりピストン54が第1区間IN1’に位置しているときには、可変減衰マスダンパ52の減衰係数は比較的小さくなる。また、建物Bの振動が大きくなると、ピストン54は、第1区間IN1’を超えて第2区間IN2’を往復移動するようになり、第2区間IN2’を移動するピストン54で押圧された作動油HOは、第1連通管D1を介さずに第2連通管D2を介して、第1及び第2油室53d、53eの一方から他方に流動する。以上により、建物Bの振動が比較的大きく、それによりピストン54が第2区間IN2’に位置しているときには、第1区間IN1’に位置しているときよりも、可変減衰マスダンパ52の減衰係数は大きくなる。
また、建物Bの振動が非常に大きくなると、ピストン54は、第1及び第2区間IN1’、IN2’を超えて第3区間IN3’を往復移動するようになる。ピストン54が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、前述した逆止弁56L、56Rによって、作動油HOが第3連通管D3L、D3Rを介して第1及び第2油室53d、53eの一方から他方に流動するのが阻止される。
以上の構成から明らかなように、ピストン54が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室53d、53eは、第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rを介しては互いに連通されず、当該ピストン54で押圧された第1又は第2油室53d、53e内の作動油HOの圧力が前記上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁63、64が開弁することで互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン54で押圧された作動油HOは、第1又は第2リリーフ弁63、64を介して、第1及び第2油室53d、53eの一方から他方に流動する。以上により、建物Bの振動が非常に大きいときには、可変減衰マスダンパ52の減衰係数は非常に大きくなる。
一方、ピストン54が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときには、逆止弁56L、56Rによって、作動油HOが第3連通管D3L、D3Rを介して第1及び第2油室53d、53eの他方から一方に流動するのが許容される。
以上のように、可変減衰マスダンパ52の減衰係数は、建物Bの振動の増大によりピストン54の移動範囲が大きくなるのに伴って、より大きくなる。
また、作動油HOが上述したように第1及び第2連通管D1、D2又は第2連通管D2内を流動しているときに、第1及び第2連通管D1、D2の合流管DC内における作動油HOの流動が、歯車モータ71によって回転運動に変換された状態で回転マス77に伝達され、それにより回転マス77が回転する。
付加振動系(可変減衰マスダンパ52、第1及び第2伝達部材TM1、TM2)の諸元は、建物Bの振動中、ピストン54が第1区間IN1’に位置しているときに、付加振動系の固有振動数が建物Bの固有振動数(例えば1次モードの固有振動数)に同調するように、設定されている。当該設定は、例えば定点理論に基づいて行われる。ここで、付加振動系の固有振動数は、第1実施形態と同様、回転マス77の質量、第1及び第2伝達部材TM1、TM2の剛性によって定まる。また、付加振動系の諸元には、回転マス77の質量、第1及び第2伝達部材TM1、TM2の剛性、作動油HOの粘性係数、シリンダ53の断面積、ならびに、第1及び第2連通管D1、D2の断面積及び長さなどが含まれる。
以上のように、第2実施形態によれば、可変減衰マスダンパ52のシリンダ53及びピストン54がそれぞれ、第1及び第2伝達部材TM1、TM2を介して、建物Bの上梁BU及び下梁BDに連結されている。また、可変減衰マスダンパ52、第1及び第2伝達部材TM1、TM2によって付加振動系が構成されており、付加振動系は、建物Bの振動に伴って振動(共振)する。建物Bの振動中、上梁BU及び下梁BDの間の相対変位は、ピストン54及びシリンダ53に伝達され、それによりピストン54がシリンダ53内を往復移動する。
ピストン54が図12に示す中立位置を含むシリンダ53内の所定の第1区間IN1’に位置しているときには、シリンダ53の第1及び第2油室53d、53eは、第1連通管D1を介して互いに連通される。また、第1及び第2油室53d、53eは、ピストン54がシリンダ53内の第1及び第2区間IN1’、IN2’を含む合同区間IUに位置しているときには、第2連通管D2を介して互いに連通される。
前述したように、建物Bの振動が比較的小さいことでピストン54が第1区間IN1’に位置しているときには、第1及び第2油室53d、53eが第1及び第2連通管D1、D2を介して互いに連通されることによって、可変減衰マスダンパ52の減衰係数は比較的小さくなる。また、建物Bの振動が比較的大きいことでピストン54が第2区間IN2’に位置しているときには、第1及び第2油室53d、53eが第2連通管D2を介して互いに連通されることによって、可変減衰マスダンパ52の減衰係数は、ピストン54が第1区間IN1’に位置しているときよりも大きくなる。
また、建物Bの振動中、シリンダ53内を移動するピストン54で押圧された作動油HOは、第1及び第2連通管D1、D2の合流管DCを流動し、当該作動油HOの流動は、歯車モータ71によって回転運動に変換された状態で回転マス77に伝達され、それにより回転マス77が回転する。以上のように、上梁BU及び下梁BDの間の相対変位は、第1及び第2伝達部材TM1、TM2、シリンダ53、ピストン54ならびに作動油HOを介して歯車モータ71に伝達される。歯車モータ71に伝達された上梁BU及び下梁BDの間の相対変位は、回転運動に変換された状態で回転マス77に伝達される。
また、付加振動系の諸元は、建物Bの振動中、ピストン54が第1区間IN1’に位置しているときに、すなわち、建物Bの振動が比較的小さいときに、付加振動系の固有振動数が建物Bの固有振動数に同調するように、設定されている。したがって、建物Bの振動が比較的小さいときに、その振動を適切に抑制することができる。この場合、回転マス77による回転慣性質量効果が得られることによって、付加振動系による建物Bの振動抑制効果が高められる。さらに、建物Bの振動が比較的大きいときに、上梁BU及び下梁BDに連結された可変減衰マスダンパ52のより大きな減衰力が得られるので、付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置51及び建物Bの破損を防止することができる。また、前述した従来の振動抑制装置と異なり、第1及び第2調圧弁ならびに第1及び第2スプール弁などから成る複雑な油圧回路ではなく、第1及び第2連通管D1、D2という比較的簡易な構成によって、上述した効果を得ることができる。
さらに、マスダンパ及び可変減衰ダンパを互いに別個に構成せずに(後述する図14参照)、両者を互いに一体に構成した可変減衰マスダンパ52を用いているので、振動抑制装置51全体として小型化を図ることができる。
また、第1リリーフ弁63は、第1油室53d内の作動油HOの圧力が上限値に達したときに開弁し、第2リリーフ弁64は、第2油室53e内の作動油HOの圧力が上限値に達したときに開弁し、第1及び第2油室53d、53eを互いに連通させる。さらに、可変減衰マスダンパ52には、ピストン54が第3区間IN3’に位置しているときに、第1及び第2油室53d、53eを互いに連通させるための第3連通管D3L、D3Rが設けられており、第3連通管D3L、D3Rには、逆止弁56L、56Rが設けられている。逆止弁56L、56Rは、ピストン54が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室53d、53eの一方から他方への第3連通管56L、56Rを介した作動油HOの流動を阻止するとともに、ピストン54が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときに、第1及び第2油室53d、53eの他方から一方への第3連通管56L、56Rを介した作動油HOの流動を許容する。
前述したように、建物Bの振動が非常に大きいことでピストン54が第3区間IN3’において中立位置と反対側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室53d、53eは、第1及び第2連通管D1、D2を介しては互いに連通されず、第1又は第2油室53d、53e内の作動油HOの圧力が上限値に達したときに、第1又は第2リリーフ弁63、64の開弁により互いに連通される。それに伴い、当該移動するピストン54で押圧された作動油HOは、第1又は第2リリーフ弁63、64を介して、第1及び第2油室53d、53eの一方から他方に流動する。以上により、建物Bの振動が非常に大きいときに、可変減衰マスダンパ52の非常に大きな減衰力が得られるので、付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置51及び建物Bの破損を防止することができる。
また、建物Bの振動が非常に大きいことでピストン54が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときには、第1及び第2油室53d、53eの他方における作動油HOを、第3連通管D3L、D3Rを介して第1及び第2油室53d、53eの一方に逃がせるので、ピストン54が中立位置に戻れなくなるのを防止することができる。この場合、第3連通管D3L、D3Rが図13を参照して説明したように配置されているので、ピストン54が第2区間IN2’と第3区間IN3’との境界線(同図に一点鎖線で図示)上に位置しているときに、第3連通管D3L、D3Rがピストン54で完全にふさがれることがなく、上述した効果を適切に得ることができる。
なお、第2実施形態では、第3連通管D3L、D3Rの断面積や長さは、ピストン54が第3区間IN3’において中立位置側に向かって移動しているときの可変減衰マスダンパ52の減衰係数が、ピストン54が第2区間IN2’に位置しているときの可変減衰マスダンパ52の減衰係数と同じになるように、設定されているが、これに限定されないことはもちろんである。
また、第2実施形態では、マスダンパ及び可変減衰ダンパを互いに一体に構成した可変減衰マスダンパ52を用いているが、図14に示すように、マスダンパ81及び可変減衰ダンパ82を互いに別個に構成するとともに、両者81、82を互いに並列に、上梁BU及び下梁BDに連結してもよい。このマスダンパ81は、本出願人による特許第5314201号に開示されたマスダンパと同様に構成されており、回転マス(図示せず)を有している。また、可変減衰ダンパ82は、第2実施形態による可変減衰マスダンパ52と比較して、歯車モータ及び回転マスが設けられていない点のみが異なっており、可変減衰ダンパ82の第1〜第3連通管(図示省略)などの他の構成要素は、可変減衰マスダンパ52のそれらと同様に構成されている。ちなみに、この可変減衰ダンパ82に代えて、第1実施形態による可変減衰ダンパ6(図9及び図10に示す変形例を含む)を用いてもよく、この場合にも、本発明における外側連通路として、第1及び第2リリーフ弁63、64を用いてもよい。また、マスダンパ81を可変減衰マスダンパ52と並列に設けてもよい。
さらに、第2実施形態では、シリンダ53を上梁BUに、ピストン54を下梁BDに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、シリンダ53を下梁BDに、ピストン54を上梁BUに、それぞれ連結してもよい。また、第2実施形態では、シリンダ53、ピストン54及び第1〜第3連通管D1、D2、D3L、D3Rの断面形状は、円形であるが、三角形や四角形などでもよい。さらに、第2実施形態では、第1及び第2連通管D1、D2が共有する合流管DCに、歯車モータ71を設けているが、第1連通管全体と第2連通管全体を互いに別個に設けるとともに、両者を歯車モータ71に接続してもよい。
また、第2実施形態では、第2連通管D2の左右の連通管D2a、D2bを、シリンダ53の周壁53cに接続しているが、図15に示すように、シリンダ53の左壁53a及び右壁53bにそれぞれ接続してもよい。この場合、第1及び第2リリーフ弁を省略してもよく、また、第3連通管D3L、D3Rが不要になる。さらに、第2実施形態では、本発明における外側連通路として、第2連通管D2を用いているが、シリンダ内の互いに異なる区間において第1及び第2流体室を互いに連通させる複数の連通管を用いてもよい。
さらに、第2実施形態では、内側連通路として、シリンダ53に接続された第1連通管D1を用いているが、シリンダの周壁に形成された連通路を用いてもよい。この場合、マスダンパ及び可変減衰ダンパが互いに一体に構成された可変減衰マスダンパを用いるときには、内側連通路を、周壁の内部において軸線方向に延びるとともに、その両端で径方向に延びて第1及び第2流体室に連通する孔状の通路で構成してもよい。
また、図14に示すようにマスダンパ81及び可変減衰ダンパ82を互いに並列に設けるときには、内側連通路を上述した孔状の通路で構成してもよく、あるいは、周壁の内周面に形成された溝で構成してもよい。内側連通路をこのような溝で構成する場合、当該溝を周壁の周方向に部分的に設けても、周方向の全体に設けてもよく、後者の場合には、ロッドをピストンの軸線方向の両外側に延びるように設けるとともに、ロッドを、シリンダの左右の壁の各々に形成されたロッド案内孔に挿入して支持するのが好ましい。以上の内側連通路に関するバリエーションは、外側連通路及び連通路にも同様に当てはまる。また、外側連通路としてシリンダの周壁に形成された連通路を用いた場合にも、その数は任意である。
また、第2実施形態では、本発明における作動流体として、シリコンオイルで構成された作動油HOを用いているが、粘性を有する他の適当な流体を用いてもよい。さらに、第2実施形態では、第1及び第2伝達部材TM1、TM2を、H型鋼で構成しているが、弾性を有する他の適当な材料、例えばゴムなどで構成してもよい。また、第2実施形態では、シリンダ53を、第1伝達部材TM1を介して上梁BUに連結するとともに、ピストン54を、第2伝達部材TM2を介して下梁BDに連結しているが、シリンダ及びピストンの一方を、当該一方が連結される上梁及び下梁の一方に伝達部材を介さずに直接、連結するとともに、シリンダ及びピストンの他方を、当該他方が連結される上梁及び下梁の他方に伝達部材を介して連結してもよい。さらに、第2実施形態では、第1及び第2リリーフ弁63、64が開弁する作動油HOの圧力を、互いに同じ上限値に設定しているが、互いに異なる値に設定してもよい。
また、第2実施形態では、本発明における動力変換機構として、外接歯車型の歯車モータ71を用いているが、内接歯車型の歯車モータを用いてもよく、さらに、作動流体の流動を回転運動に変換した状態で回転マスに伝達する他の適当な機構を用いてもよい。例えば、本出願人による特許第5191579号の図5などに記載されたスクリュー機構や、本出願人による特許第5161395号の図2などに記載されたピストンがナットに一体に設けられたボールねじ、あるいは、ベーンモータなどを用いてもよい。動力変換機構としてこのボールねじを用いる場合には、内側連通路及び外側連通路におけるピストンが移動する部分を、シリンダ状に形成してもよいことは、もちろんである。さらに、第2実施形態では、ロッド55をピストン54に直接、連結しているが、本出願人による特許第5191579号の図2などに記載されているように、皿ばねを介して連結してもよい。この場合、シリンダの一端部に設けられた第1取付具及びロッドの一端部に設けられた第2取付具をそれぞれ、第1及び第2伝達部材を介さずに、上梁及び下梁に直接、ブレース状に連結してもよい。あるいは、本出願人による特願2014-197837号の図2などに記載されているように、ロッドをピストンに、ケーブル、定滑車及び動滑車を介して連結してもよい。また、第2実施形態では、ピストン54を下梁BDに、ロッド55を介して連結しているが、本出願人による特願2014-183201号の図2などに記載されているように、ケーブル、定滑車及び動滑車を介して連結してもよい。
さらに、第2実施形態では、本発明における第1及び第2部位はそれぞれ、上梁及び下梁であるが、建物Bが立設された基礎及び建物Bを含む系内の他の適当な所定の2つの部位、例えば基礎及び建物の上端部でもよい。また、第2実施形態は、本発明による振動抑制装置51を、建物Bに適用した例であるが、他の適当な構造物、例えばラック倉庫などに適用してもよい。以上の第2実施形態に関するバリエーションを適宜、組み合わせて採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
次に、図16〜図20を参照しながら、本発明の第3実施形態による振動抑制装置91について説明する。図16〜図19に示すように、この振動抑制装置91は、第1実施形態と比較して、支持体5とラック倉庫Rの間に設けられたフラットジャッキ92と、フラットジャッキ92の動作を制御するための制御装置101を備える点が主に異なっている。図16〜図18において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、図16では、図1と同様に便宜上、細部の構成要素の符号を省略している。
図17及び図18に示すように、フラットジャッキ92は、上下一対の円板状の押圧板93、93と、両押圧板93、93の間に設けられた中空の伸縮部94を一体に有しており、上下方向に伸縮可能に構成されている。伸縮部94は、互いに接合された上下一対の比較的薄い軟鋼板で構成されており、その内側には、流体圧(例えば油圧)を供給可能な流体室94aが画成されている。また、伸縮部94は、その内周部分が円板状に形成され、その外周部分が、リング状に形成されるとともに、全体として押圧板93、93と同心状に配置されており、押圧板93、93から径方向の外方に突出している。
また、上側の押圧板93の上面には矩形板状の上フランジ95が、下側の押圧板93の底面には矩形板状の下フランジ96が、それぞれ同心状に一体に設けられている。上フランジ95には、前述した支持体5が載置された状態で、支持体5のフランジ22の取付孔22aに挿入された前記ボルトがねじ込まれており、それにより、支持体5のフランジ22は、フラットジャッキ92の上フランジ95に取り付けられている。
さらに、下フランジ96の4つの角部の各々には、上下方向に貫通する取付孔(図示せず)が形成されている。下フランジ96の取付孔には、ボルト(図示せず)が挿入されていて、これらのボルトはラック倉庫Rの上端部にねじ込まれており、それにより、フラットジャッキ92の下フランジ96は、ラック倉庫Rの上端部に取り付けられている。以上の構成により、支持体5は、フラットジャッキ92を介してラック倉庫Rに、水平方向に移動不能にかつ上下方向に移動可能に設けられている。
また、図17に示すように、第1実施形態と同様、支持体5の滑り板21は、質量体2の当接板4に、上下方向に間隔を存した状態で対向している。この間隔は、前記間隔DIよりも若干、大きな値に設定されている。さらに、伸縮部94は、流体室94aに連通する注入管及び排出管をそれぞれ介して、ポンプ及びドレン(いずれも図示せず)に接続されている。注入管及び排出管の途中には、例えばリニア電磁弁で構成された第1制御弁97及び第2制御弁98がそれぞれ設けられている(図19参照)。
フラットジャッキ92では、第1制御弁97が開弁状態にあるときには、ポンプからの流体圧が伸縮部94に供給され、第1制御弁97が閉弁状態にあるときには、ポンプから伸縮部94への流体圧の供給が停止される。また、第2制御弁98が開弁状態にあるときには、伸縮部94内の流体圧がドレンに排出され、第2制御弁98が閉弁状態にあるときには、伸縮部94からドレンへの流体圧の排出が停止される。
また、フラットジャッキ92では、第1及び第2制御弁97、98の制御モードとして、ジャッキアップモードとジャッキダウンモードが設定されている。このジャッキアップモードでは、第1制御弁97が開弁されるとともに、第2制御弁98が全閉されることによって、ポンプからの流体圧が伸縮部94に供給されるとともに、伸縮部94からドレンへの流体圧の排出が停止される。これにより、図18に示すように、伸縮部94が上下方向に膨らむ結果、上下のフランジ95、96の間隔が大きくなり、フラットジャッキ92が伸長させられる(ジャッキアップ)。また、フラットジャッキ92の伸長によって、支持体5は、押し上げられ、当接板4側に押圧される。この場合、ポンプから伸縮部94に供給される流体圧は、第1制御弁97の開度が大きいほど、より大きくなり、それにより、フラットジャッキ92の伸長量がより大きくなる。
上記のジャッキダウンモードでは、第1制御弁97が全閉されるとともに、第2制御弁98が全開されることによって、ポンプから伸縮部94への流体圧の供給が停止されるとともに、伸縮部94からドレンに流体圧が排出される。これにより、図17に示すように、伸縮部94が上下方向に縮む結果、上下のフランジ95、96の間隔が小さくなり、フラットジャッキ92が短縮させられる(ジャッキダウン)。
第1及び第2制御弁97、98は、前記制御装置101に接続されており、両者97、98の開度は、制御装置101によって制御される。制御装置101は、バッテリや、電気回路、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されており、ラック倉庫Rとともに建物(図示せず)内に設けられている。
また、質量体2には、変位センサ102が設けられている。変位センサ102は、例えばレーザー式のものであり、ラック倉庫Rに対する質量体2の水平方向の変位(以下「質量体変位」という)DISMを検出し、その検出信号を制御装置101に出力する。制御装置101は、ラック倉庫Rの振動中、検出された質量体変位DISMに基づいて、第1及び第2制御弁97、98の開度を制御し、それにより、フラットジャッキ92を制御する。
図20は、フラットジャッキ92を制御するために、制御装置101によって実行される処理を示している。本処理は、所定時間(例えば10msec)ごとに、繰り返し実行される。まず、図20のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、検出された質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上であるか否かを判別する。この第1所定変位DREM1は、前記第1区間IN1の1/2よりも大きく、かつ、前記第1又は第2合同区間IU1、IU2の1/2以下の値に設定されている。
上記ステップ1の答がNO(DISM<DREM1)のときには、第1及び第2制御弁97、98をジャッキダウンモードで制御し(ステップ2)、本処理を終了する。これにより、前述したように、第1及び第2制御弁97、98が全閉状態及び全開状態にそれぞれ制御されることによって、フラットジャッキ92が短縮される。
一方、ステップ1の答がYESで、ラック倉庫Rの振動により変位した質量体2の質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上であるときには、第1及び第2制御弁97、98をジャッキアップモードで制御し(ステップ3)、本処理を終了する。これにより、前述したように、第1及び第2制御弁97、98が開弁状態及び全閉状態にそれぞれ制御されることによって、フラットジャッキ92が伸長される。
また、ステップ3によるジャッキアップモードの実行中、質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上でかつ第2所定変位DREM2(>DREM1)よりも小さいときには、第1制御弁97の開度は所定の第1開度に制御される。この第1開度は、フラットジャッキ92の伸長により支持体5の滑り板21が当接板4に当接するような値に設定されている。以上により、支持体5がフラットジャッキ92で当接板4側に押圧されることによって、滑り板21が当接板4に当接する。上記の第2所定変位DREM2は、第1又は第2合同区間IU1、IU2の1/2よりも大きな値に設定されている。
さらに、ステップ3によるジャッキアップモードの実行中、質量体変位DISMが第2所定変位DREM2以上であるときには、第1制御弁97の開度は、第1開度よりも大きな所定の第2開度に制御される。これにより、フラットジャッキ92の伸長量がより大きくなることによって、フラットジャッキ92による当接板4側への滑り板21の押圧力がより大きくなる。以上のように、ステップ3によるジャッキアップモードの実行中には、質量体変位DISMが大きいほど、フラットジャッキ92による当接板4側への滑り板21の押圧力は、段階的により大きくなるように制御される。この場合の段数は1段であるが、複数段でもよい。
以上のように、第3実施形態によれば、質量体2は、ラック倉庫Rに取り付けられた伝達部材3に、載置された状態で支持されていて、質量体2には、当接板4が一体に設けられており、ラック倉庫Rには、支持体5が、フラットジャッキ92を介して水平方向に移動不能にかつ上下方向に移動可能に設けられている。支持体5は、当接板4と上下方向に間隔を存した状態で対向しており、フラットジャッキ92によって、支持体5が当接板4側に押圧される。また、振動によるラック倉庫Rに対する質量体2の水平方向の変位である質量体変位DISMが、変位センサ102によって検出され、検出された質量体変位DISMが第1所定変位DREM1よりも小さいとき(図20のステップ1:NO)には、第1及び第2制御弁97、98が制御装置101によりジャッキダウンモードで制御される(ステップ2)。これにより、ラック倉庫Rが振動していないときや、ラック倉庫Rの振動が比較的小さく、それにより質量体変位DISMが小さいときには、支持体5の滑り板21は、フラットジャッキ92で当接板4側に押圧されず、当接板4に当接しないように保持される(図17参照)。
一方、ラック倉庫Rの振動により質量体2がラック倉庫Rに対して水平方向に変位し、質量体変位DISMが第1所定変位DREM1に達したとき(ステップ1:YES)には、第1及び第2制御弁97、98がジャッキアップモードで制御されることによって、支持体5の滑り板21を当接板4に当接させるように、フラットジャッキ92が制御され(ステップ3)、その結果、滑り板21が当接板4に当接する(図18参照)。これにより、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいときに、第1実施形態の説明で述べた可変減衰ダンパ6のより大きな減衰力に加え、当接板4及び滑り板21の間の摩擦による抵抗力がさらに得られる。したがって、第1実施形態による効果、すなわち、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいときに付加振動系の変位(質量体の変位)の過大化に起因する振動抑制装置91及びラック倉庫Rの破損を防止できるという効果を、確実に得ることができる。
また、ジャッキアップモードの実行中、質量体変位DISMが大きいほど、フラットジャッキ92による当接板4側への滑り板21の押圧力が、より大きくなるように制御される。これにより、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいことで質量体変位DISMが第1所定変位DREM1以上であるときに、質量体変位DISMが大きいほど、当接板4及び滑り板21の間の摩擦によるより大きな抵抗力を得ることができるので、ラック倉庫Rの振動が比較的大きいときに付加振動系の変位の過大化に起因する振動抑制装置91及びラック倉庫Rの破損を防止できるという効果を、より有効に得ることができる。
さらに、伝達部材3を交換する際、フラットジャッキ92の伸長により滑り材21を当接板4に当接させることによって、質量体2を支持体5で支持した状態で、当該交換を容易に行うことができる。その他、第3実施形態によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第3実施形態では、当接板4を質量体2に、支持体5をラック倉庫Rに、それぞれ設けているが、これとは逆に、当接板をラック倉庫に、支持体を質量体に、それぞれ設けてもよい。また、第3実施形態では、振動抑制装置91を、フラットジャッキ92によって支持体5を当接板4に押圧して当接させるように構成しているが、これとは逆に、当接板4を支持体5に押圧して当接させるように構成してもよい。さらに、第3実施形態では、本発明における押圧機構として、フラットジャッキ92を用いているが、当接体を被当接体側に押圧可能な他の適当な機構、例えば、ピストン式のジャッキや、ギヤ式のジャッキなどを用いてもよい。
また、第3実施形態では、変位センサ102は、レーザー式のものであるが、超音波式のものなどを用いてもよい。さらに、第3実施形態では、質量体変位DISMを、変位センサ102で検出しているが、構造物に対する質量体の相対速度を超音波式などのセンサで検出するとともに、検出された相対速度を積分することによって、算出してもよい。また、第3実施形態では、本発明における変位パラメータとして、質量体変位DISMを検出しているが、構造物に対する質量体の変位を表す他の適当なパラメータ、例えば、可変減衰ダンパ6のシリンダ31に対するピストン32の変位を検出してもよい。
さらに、第3実施形態では、ジャッキアップモードにおいて、フラットジャッキ92の押圧力を、質量体変位DISMが大きいほど、段階的により大きくなるように制御しているが、連続的に(例えばリニアに)より大きくなるように制御してもよい。また、第3実施形態に関し、前述した第1実施形態に関するバリエーションを採用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。