JP2019014641A - シリコン単結晶の製造装置及び製造方法 - Google Patents

シリコン単結晶の製造装置及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】原料ロッドの振れの影響による抵抗率の面内分布のミクロな変動を抑制することが可能なシリコン単結晶製造装置及び製造方法を提供する。【解決手段】シリコン単結晶製造装置10は、原料ロッド1を支持する上軸11と、上軸11を回転させる上軸駆動機構12と、原料ロッド1を加熱する誘導加熱コイル13と、原料ロッド1の下方においてシリコン単結晶2を支持する下軸14と、上軸11の下端部に原料ロッド1を取り付けるための取り付け治具20とを備える。取り付け治具20は、原料ロッド1の上端部を保持する原料ロッド保持部材と、上軸11の中心軸に対する原料ロッド保持部材の中心軸の水平方向の位置を調整する軸ズレ調整機構を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、シリコン単結晶の製造装置及び製造方法に関し、特に、浮遊帯域溶融法(FZ法)によりシリコン単結晶を製造する際の原料の保持構造に関する。
シリコン単結晶を育成する方法の一つとしてFZ(Floating Zone)法が知られている。FZ法では多結晶シリコンからなる原料ロッドの一部を加熱して溶融帯域を作り、溶融帯域を表面張力で支えながら溶融帯域の上方及び下方にそれぞれ位置する原料ロッド及び単結晶を下方に移動させることにより単結晶を徐々に成長させる。FZ法はCZ法のようにシリコン融液を支持するための石英ルツボを用いる必要がなく、融液中の酸素濃度が非常に低いことから、格子間酸素濃度が非常に低い高品質なシリコン単結晶を製造することができ、高い絶縁耐圧が要求されるパワー半導体(ディスクリート半導体)の基板材料として好ましく用いられている。
シリコン単結晶を半導体として機能させるためにはp型或いはn型の不純物のドーピングが必要である。FZ法では溶融帯域にドーパントガスを吹き付けるガスドーピングによってシリコン単結晶への不純物のドーピングが行われている。例えば特許文献1には、単結晶の回転方向を交互に変更するとともに、原料ロッドの回転方向及び/又は回転数を変更することにより、単結晶中に取り込まれるドーパントの面内分布を制御し、単結晶から製造されるウェーハの抵抗率の面内ばらつきを低減する方法が記載されている。
また特許文献2には、単結晶をベース角度で回転させるベース回転と、ベース回転とは逆方向にベース角度よりも小さなカウンター角度で回転させるカウンター回転とを交互に繰り返しながらガスドーピングする際に、固液界面における原料ロッドの直径に応じてベース角度とカウンター角度の組み合わせを定めることにより、単結晶の抵抗率の面内ばらつきを抑え、これにより製造ロット内の単結晶ウェーハの耐圧ばらつきを小さくすることが記載されている。
また特許文献3には、原料結晶棒を保持する上軸と、単結晶棒を保持する下軸と、誘導加熱コイルに高周波電力を供給する電極と、上軸、下軸、及び電極のいずれかが一つ以上の中心軸の傾きあるいは基準位置からの変位を検出する機構と、検出された中心軸の傾きあるいは基準位置からの変位を自動調整する機構と、調整量を演算する演算機構とを備えた半導体単結晶棒の製造装置が記載されている。
特開2011−225451号公報 特開2015−229612号公報 特開2016−56036号公報
最近、FZ法により製造されるシリコンウェーハの抵抗率の面内分布に対する要求は厳しさを増しており、特に、抵抗率の面内ばらつきを例えば±10%以内に収めることが望まれている。そのためには、シリコン単結晶の抵抗率の面内分布のミクロな変動を低減する必要があり、単結晶を安定的に育成するためのさらなる改善が必要である。
したがって、本発明の目的は、シリコン単結晶の抵抗率の面内分布のミクロな変動を抑制することが可能なシリコン単結晶製造装置及び製造方法を提供することにある。
本願発明者らは、FZ法により製造されるシリコン単結晶の抵抗率の面内分布がばらつくメカニズムについて鋭意研究を重ねた結果、原料ロッドのわずかな振れが要因の一つとなっていることを見出した。
原料ロッドの振れによって単結晶の抵抗率の面内分布がばらつく理由は以下のように推察できる。原料ロッドが回転時に振れると誘導加熱コイルとの位置関係、特に、原料ロッドの下端部のネック部と誘導加熱コイルとの位置関係が変化し、原料ロッドはコイル側に寄ったり離れたりする。溶融帯域には原料のまだ溶融していない固体部が存在しているが、ネック部を取り囲む誘導加熱コイルの周方向の電流分布は全周にわたって必ずしも一定ではなく、電流密度が高い部位や低い部位があるため、原料ロッドの下端部が近づいた部位の電流密度が高ければ原料の溶融量が多くなるが、電流密度が低ければ原料の溶融量が少なくなる。これにより、単位時間当たり一定量のドーパントの供給に対する融液供給量が変化し、融液中のドーパント濃度の変化が抵抗率の面内分布の変動につながる。このような抵抗率の変動は、単結晶の径方向の中央部において特に生じやすい。
原料ロッドはこれまでも上軸に対してある程度高い精度で軸合わせされてきており、原料ロッドの振れはそれほど問題にならなかった。本発明は、シリコン単結晶の抵抗率の面内変動を±10%以下に抑えるという新たな要求によって顕在化した新たな課題を解決するものである。
本発明はこのような技術的知見に基づくものであり、本発明によるシリコン単結晶製造装置は、原料ロッドを支持する上軸と、前記上軸を回転させる上軸駆動機構と、前記原料ロッドを加熱する誘導加熱コイルと、前記原料ロッドの下方においてシリコン単結晶を支持する下軸と、前記上軸の下端部に前記原料ロッドを取り付けるための取り付け治具とを備え、前記取り付け治具は、前記原料ロッドの上端部を保持する原料ロッド保持部材と、前記上軸の中心軸に対する前記原料ロッド保持部材の中心軸の水平方向の位置を調整する軸ズレ調整機構を含むことを特徴とする。
本発明によれば、原料ロッドの回転時の振れを抑制することが可能なシリコン単結晶製造装置を提供することができる。したがって、抵抗率の面内分布のミクロな変動が抑制されたシリコン単結晶を製造することができる。
本発明において、前記軸ズレ調整機構は、水平面内のX軸方向に進退移動して当該X軸方向における前記原料ロッド保持部材の位置を調整するX軸調整ネジ部と、前記X軸方向と直交する前記水平面内のY軸方向に進退移動して当該Y軸方向おける前記原料ロッド保持部材の位置を調整するY軸調整ネジ部とを有することが好ましい。この構成によれば、上軸に対する原料ロッドの軸合わせを簡単な構成により実現することができる。なおX軸とはシリコン単結晶製造装置の方向性に基づいて水平面内の任意の一方向に設定した軸であり、Y軸は水平面内のX方向と直交する方向に設定した軸である。
前記取り付け治具は、前記原料ロッドの中心軸の傾きを調整する傾き調整機構をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、原料ロッドの回転時の振れを抑制することが可能なシリコン単結晶製造装置を提供することができる。
本発明によるシリコン単結晶製造装置は、前記上軸と共に前記原料ロッドを回転させたときの当該原料ロッドの振れ幅を測定する変位測定装置をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、原料ロッドの回転時の振れを抑制することが可能なシリコン単結晶製造装置を提供することができる。
前記変位測定装置は、前記原料ロッドの直胴部の上端部及び下端部を含む2箇所以上で前記振れ幅を測定することが好ましい。このように、原料ロッドの直胴部の上端部及び下端部の振れ幅を測定することにより、原料ロッドの回転時の振れを正確に測定し抑制することが可能となる。
本発明によるシリコン単結晶製造装置は、前記上軸及び前記原料ロッドの周囲を取り囲むチャンバーをさらに備え、前記変位測定装置は、前記チャンバー又は前記チャンバーに取り付けられた構造物に対して着脱自在に構成されていることが好ましい。この構成によれば、原料ロッドの振れを調整するときだけ変位測定装置を設置して使用することができ、その利便性を高めることができる。
また、本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、上軸の下端部に取り付け治具を介して原料ロッドを取り付ける準備工程と、前記上軸と共に前記原料ロッドを回転させたときの前記原料ロッドの振れ幅が閾値以下となるように調整する振れ調整工程と、前記原料ロッドの下端部を加熱して溶融帯域を形成し、前記溶融帯域の上方及び下方にそれぞれ位置する前記原料ロッド及びシリコン単結晶を降下させて前記単結晶を成長させる単結晶育成工程とを備え、前記振れ調整工程は、前記原料ロッドを前記上軸と共に回転させたときの当該原料ロッドの振れ幅を測定する測定ステップと、前記振れ幅の測定結果に基づいて、前記上軸の中心軸に対する前記原料ロッドの中心軸の軸ズレを調整する軸ズレ調整ステップを含むことを特徴とする。
本発明によれば、原料ロッドの回転時の振れを抑制することが可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することができる。したがって、抵抗率の面内分布のミクロな変動が抑制されたシリコン単結晶を製造することができる。
本発明において、前記軸ズレ調整ステップは、水平面内のX軸方向における前記原料ロッド保持部材の中心位置を調整すると共に、前記X軸方向と直交する前記水平面内のY軸方向おける前記原料ロッド保持部材の中心位置を調整することが好ましい。これによれば、上軸に対する原料ロッドの軸合わせを簡単に行うことができる。
本発明において、前記振れ調整工程は、前記振れ幅の測定結果に基づいて、前記原料ロッドの中心軸の傾きを調整する傾き調整ステップをさらに含むことが好ましい。これにより、原料ロッドの回転時の振れを抑制することが可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することができる。
本発明において、前記測定ステップは、前記原料ロッドの直胴部の上端部及び下端部を含む2箇所以上で前記振れ幅を測定することが好ましい。このように、原料ロッドの直胴部の上端部及び下端部の振れ幅を測定することにより、原料ロッドの回転時の振れを正確に測定して抑制することが可能となる。
本発明において、前記振れ調整工程は、各測定箇所における前記振れ幅が0.5mm/回転以下となるように前記原料ロッドの傾き及び軸ズレを調整することが好ましい。これにより、抵抗率の面内分布のミクロな変動が抑制されたシリコン単結晶を製造することができる。
本発明によれば、シリコン単結晶の抵抗率の面内分布のミクロな変動を抑制することが可能なシリコン単結晶製造装置及び製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態によるシリコン単結晶製造装置の構成を概略的に示す断面図である。 図2は、原料ロッド1を上軸11に取り付ける際に用いられる取り付け治具20の構造を示す略断面図である。 図3(a)及び(b)は、原料ロッド1の中心軸の傾きを調整する方法を説明するための略側面断面図である。 図4(a)及び(b)は、原料ロッド1の中心軸の軸ズレを調整する方法を説明するための略平面断面図である。 図5は、原料ロッド1の振れ幅の測定方法を説明するための略平面断面図である。 図6は、原料ロッド1の振れ幅の測定方法を説明するための略側面断面図である。 図7は、本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図8は、原料ロッドの振れ調整工程S2を説明するためのフローチャートである。 図9は、実施例による原料ロッドの振れ幅と抵抗率の面内分布(RRG平均値)との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施の形態によるシリコン単結晶製造装置の構成を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、このシリコン単結晶製造装置10は、原料ロッド1を支持する上軸11と、上軸11を回転及び昇降駆動する上軸駆動機構12と、原料ロッド1を加熱するためのヒーターである誘導加熱コイル13と、シリコン単結晶2を支持する下軸14と、下軸14を回転及び昇降駆動する下軸駆動機構15と、原料ロッド1とシリコン単結晶2との間の溶融帯域3にパージガスを吹き付けるためのパージガス供給ノズル16と、溶融帯域3を撮影するCCDカメラ17と、CCDカメラ17が撮影した画像データを処理する画像処理部18と、画像データに基づいて上軸駆動機構12、下軸駆動機構15及び誘導加熱コイル13を制御する制御部19とを有している。
原料ロッド1は取り付け治具20を介して上軸11の下端部に吊設されている。上軸駆動機構12は、制御部19からの指示に従って上軸11の降下速度及び回転速度を制御し、これにより原料ロッド1の降下速度及び回転速度が制御される。誘導加熱コイル13は原料ロッド1の周囲を取り囲むループ導体であり、発振器から誘導加熱コイル13に高周波電流が供給されることで原料ロッド1が誘導加熱されて溶融する。
下軸14の上端部には種結晶4が取り付けられており、この種結晶4を大きく成長させることによりシリコン単結晶2が製造される。下軸駆動機構15は、制御部19からの指示に従って下軸14の降下速度及び回転速度を制御し、これによりシリコン単結晶2の降下速度及び回転速度が制御される。パージガス供給ノズル16からはドーパントを含む不活性ガスが供給される。
上軸11、誘導加熱コイル13及び下軸14はチャンバー30内に設けられており、シリコン単結晶2はチャンバー30内で育成される。CCDカメラ17はチャンバー30の外側に設置されており、チャンバー30に設けられた覗き窓を通してチャンバー30内を撮影することができる。本実施形態において、CCDカメラ17は複数台設けられていてもよい。チャンバー30の壁体は上軸11及び原料ロッド1の全周を取り囲んでいるが、原料ロッド1を上軸11に取り付ける際はチャンバー30の壁体の一部が開かれ、チャンバー30内が開放状態になるので、上軸11の下端部に原料ロッド1を取り付けることが可能となる。種結晶4を下軸14の上端部に取り付ける場合も同様である。
図2は、原料ロッド1を上軸11に取り付ける際に用いられる取り付け治具20の構造を示す略断面図である。
図2に示すように、取り付け治具20は、原料ロッド1の上端部を保持する原料ロッド保持部材21と、上軸11の下端部に取り付けられた第1の嵌合部材22と、原料ロッド保持部材21の上端部に取り付けられ、原料ロッド保持部材21を第1の嵌合部材22に連結させるための第2の嵌合部材23とで構成されている。原料ロッド1は、直径が一定の直胴部1aと、直胴部1aの下端から下方に向かって徐々に縮径する略円錐形状のテーパー部1bとを有しており、テーパー部1bが下向きの状態で取り付け治具20に保持されている。
上軸11の下端部は中空構造であり、第1の嵌合部材22は補強部材24を介して上軸11の下端に固定されている。第1の嵌合部材22の中心部には貫通孔22aが形成されており、また第1の嵌合部材22はフランジ部22bを有している。第1の嵌合部材22がフランジ形状を有することにより、上軸11の下端部に第1の嵌合部材22を嵌合させることができ、上軸11に対する第1の嵌合部材22のガタつきを抑えて確実に取り付けることができる。また第1の嵌合部材22の主面が上軸11の中心軸と直交するように正確に取り付けることができ、第1の嵌合部材22の取り付け精度を向上させることができる。
第2の嵌合部材23は、第1の嵌合部材22の貫通孔22aに挿入可能な細長い棒状の部材であり、第2の嵌合部材23の下端部は貫通孔22aの下端よりも下方に突出しており、原料ロッド保持部材21は第2の嵌合部材23の下端部に接続されている。
本実施形態において、第2の嵌合部材23は、ヘッド部23aと、ヘッド部23aの下方に設けられヘッド部23aよりも小さな直径を有するシャフト部23bと、ヘッド部23aとシャフト部23bとの間に設けられたテーパー部23cとを有し、テーパー部23cは下方に向かって直径が徐々に縮径するテーパー形状を有している。第2の嵌合部材23はシャフト部23bとテーパー部23cだけで構成されヘッド部23aが省略されたものであってもよく、ヘッド部23aとテーパー部23cだけで構成されシャフト部23bが省略されたものであってもよく、テーパー部23cだけで構成されヘッド部23aとシャフト部23bが省略されたものであってもよい。
第2の嵌合部材23のシャフト部23bが貫通孔22aに挿入された状態ではテーパー部23cの外周面(テーパー面)が第1の嵌合部材22の貫通孔22aの上端開口の内周エッジに当接し、これにより第2の嵌合部材23は第1の嵌合部材22に嵌合している。テーパー部23cの下端側の直径は貫通孔22aの直径よりも小さいが、テーパー部23cの上端側の直径は貫通孔22aの直径よりも大きいので、第2の嵌合部材23が貫通孔22aを通過して下方に抜け落ちることはなく、第1の嵌合部材22に嵌合した状態が維持される。またテーパー面に当接しているので、第2の嵌合部材23を貫通孔22aに挿入するだけで第2の嵌合部材23はテーパー面にガイドされながら降下して両者の中心軸が一致すると共に、両者を全周にわたって密着させることができる。
第2の嵌合部材23は単に貫通孔22aに挿入されているだけであるため、上向きの応力が加わったときに持ち上がり可能である。第2の嵌合部材23の持ち上がり量は第2の嵌合部材23の上方を覆う補強部材24によって制限されてもよい。このように、第2の嵌合部材23の高さ方向の動きに遊びを持たせているので、第2の嵌合部材23が熱膨張し、あるいは原料ロッド1に意図しない上向きの応力がかかったとしても第2の嵌合部材23が持ち上がるだけで上軸駆動機構12にかかる応力を逃がすことができ、上軸駆動機構12の故障を回避することができる。
原料ロッド保持部材21は、上側支持プレート26と、上側支持プレート26と略平行に設けられ、連結ネジ26bを介して上側支持プレート26に連結された下側支持プレート27と、下側支持プレート27の下面側に取り付けられた3つの爪部27aとを有しており、爪部27aは原料ロッド1の上端部の外周面に形成された溝1cに係合して原料ロッド1の外周の3点をチャッキングしている。
上側支持プレート26は連結ネジ26bを介して下側支持プレート27に連結されている。上側支持プレート26及び連結ネジ26bは、下側支持プレート27に取り付けられた原料ロッド1の傾きを調整するための傾き調整機構を構成している。上側支持プレート26に対する下側支持プレート27の角度は、連結ネジ26bを回転させることで調整することができる。したがって、図3(a)に示すように原料ロッド1の中心軸が斜めに傾いた状態で下側支持プレート27に取り付けられたとしても、図3(b)に示すように上側支持プレート26の角度を調節することによって原料ロッド1の中心軸を鉛直にすることが可能である。
原料ロッド1が回転時に振れる主な原因は、取り付け治具20に対して原料ロッド1が斜めに取り付けられてしまうからである。上記のように取り付け治具20は原料ロッド1の上端部に形成された取り付け溝1cに係合させた3つの爪部27aによって保持されており、作業者が原料ロッド1を垂直に取り付けることは非常に困難であり、特に原料ロッド1の溝1cの加工精度によっては原料ロッド1を垂直に取り付けることが不可能な場合もある。しかし、本実施形態のように原料ロッド1が取り付けられる下側支持プレート27の角度を調整することにより、原料ロッド1の中心軸を鉛直にすることが可能である。
上側支持プレート26の上面側の中心部には軸ズレ調整機構28が設けられており、上側支持プレート26は軸ズレ調整機構28を介して第2の嵌合部材23の下端部に接続されている。軸ズレ調整機構28は、原料ロッド保持部材21の水平方向の位置を調整して原料ロッド1の中心軸を上軸11の中心軸に合わせるためのものであり、原料ロッド保持部材21のX軸方向の位置を調整するX軸調整ネジ部28x,28xと、X軸方向と直交するY軸方向の位置を調整するY軸調整ネジ部28y,28yとを有している。例えば図4(a)に示すように、上軸11の中心軸Oから見て原料ロッド1の中心軸Oの位置がX軸方向にLx、Y軸方向にLyずれている場合、X軸調整用ネジ部の長さをLx、Y軸調整ネジ部の長さをLyそれぞれ調整して原料ロッド保持部材21の中心位置をオフセットする。これにより、図4(b)に示すように原料ロッド1の中心軸Oを上軸11の中心軸Oに合わせることができる。
原料ロッド1の傾き及び軸ズレの調整は、上軸11と共に回転させた原料ロッド1の水平方向の振れ幅の測定結果に基づいて行うことができる。
図5及び図6は、原料ロッド1の振れ幅の測定方法を説明するための図であって、特に、図5は略平面断面図、また図6は略側面断面図である。
図5に示すように、原料ロッド1を回転させたときの振れ幅は、例えば透過型レーザセンサなどの変位測定装置40を用いて測定することができる。本実施形態による変位測定装置40は投光部41と受光部42とを有し、投光部41から受光部42までの光路は例えばX軸と平行に設定され、且つ、光路の一部が原料ロッド1に遮られるように設定される。そして原料ロッド1を一回転させたときに投光部41からの光が原料ロッド1によって遮られる領域(面積)の変化から、原料ロッド1のX方向の振れ幅Dx及びY方向の振れ幅Dyをそれぞれ求めることができる。
図6に示すように、原料ロッド1の振れ幅の測定では、原料ロッド1の直胴部1aの上端部及び下端部の2箇所の振れ幅を測定することが好ましい。これにより、原料ロッド1が短くなった時の振れ幅を測定することができ、原料ロッド1の傾きのみならず軸ズレも正確に測定して調整することが可能となる。原料ロッド1の振れ幅の測定精度をさらに高めるため、直胴部1aの上端部及び下端部を含む3箇所以上の振れ幅を測定しても構わない。上下2箇所の振れ幅の測定では、図示のように2台の変位測定装置40を同時に用いて測定してもよく、あるいは1台の変位測定装置40を順に用いて測定してもよい。
原料ロッド1の振れの調整は、原料ロッド1を上軸11に取り付けた後であって単結晶育成工程を開始する前に行われる。上記のようにチャンバー30の略円筒状の壁体の一部は取り外し可能であり、開放状態のチャンバー30内の上軸11に原料ロッド1が取り付けられた後、変位測定装置40がチャンバー30の壁体に直接又はチャンバー30に取り付けられた炉内構造物に取り付けられる。このように、変位測定装置40はチャンバー30等に対して着脱自在であり、原料ロッド1の振れ調整工程のときにだけ設置され、単結晶育成工程中は取り外されている。
図7は、本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法は、チャンバー30内の上軸11及び下軸14に原料ロッド1及び種結晶4をそれぞれ取り付ける準備工程S1と、原料ロッド1の振れを調整する振れ調整工程S2と、原料ロッド1の下端部を誘導加熱コイル13により加熱して溶融帯域を生成し、溶融帯域3の下端部に晶出するシリコン単結晶を成長させる単結晶育成工程S3とを有している。なお種結晶4の下軸14への取り付けは、原料ロッド1を上軸11に取り付けてその振れ調整を完了させた後に行ってもよい。単結晶育成工程でS3は、溶融帯域3の下端部に種結晶4の先端部を接触させて馴染ませた後、原料ロッド1及び種結晶4をそれぞれ独立に回転させながら降下させることにより、種結晶4の上方にそれよりも大きな直径のシリコン単結晶2を成長させる。
図8は、原料ロッドの振れ調整工程S2を説明するためのフローチャートである。
図8に示すように、原料ロッド1の振れ調整工程でS2は、まず原料ロッド1を回転させたときの直胴部1aの上端部及び下端部の2箇所の振れ幅Dt、Dbを測定する(ステップS21)。次に、原料ロッド1の直胴部1aの上端部の振れ幅Dtと下端部の振れ幅Dbとの差(Dt−Db)が許容範囲に収まっているかどうかを判断し(ステップS22)、収まっていない場合には原料ロッド1の中心軸の傾きを調整する(ステップS22Y,S23)。
原料ロッド1の中心軸の傾きは、原料ロッド1の直胴部1aの上端部の振れ幅と下端部の振れ幅との差と2点間の垂直方向の距離から求めることができる。その後、図3に示したように、原料ロッド1の中心軸の向きがほぼ鉛直になるように、上側支持プレート26の角度を調整する。原料ロッド1の振れ幅の測定から原料ロッド1の中心軸の傾き調整までの一連のステップ(ステップS21〜S23)は、原料ロッド1の直胴部1aの上端部の振れ幅Dtと下端部の振れ幅Dbとの差(Dt−Db)が許容範囲に収まるまで交互に繰り返し行われる。
また、原料ロッド1の直胴部1aの上端部の振れ幅Dtと下端部の振れ幅Dbとの差(Dt−Db)が許容範囲に収まっている場合(ステップS22Y)には、振れ幅Dt,Dbが共に閾値以下(例えば0.5mm/回転以下)であるかどうかを判断し(ステップS24)、閾値以下でない場合には原料ロッド1の中心軸の軸ズレ量を調整する(ステップS24N,S25)。このように、原料ロッド1の中心軸の軸ズレ量の調整(ステップS25)は、原料ロッド1の中心軸の傾きを調整した後に行われる。
原料ロッド1の中心軸の軸ズレ量は、原料ロッド1の中心軸の傾きを許容範囲内に調整した後の直胴部1aの上端部の振れ幅Dt及び下端部の振れ幅Dtから求めることができる。その後、図4に示したように、振れ幅Dt,Dtが閾値以下になるように、軸ズレ調整機構28を調整する。原料ロッド1の振れ幅の測定から原料ロッド1の軸ズレ調整までの一連のステップ(ステップS21,S24,S25)は、振れ幅Dt、Dbが閾値以下となるまで交互に繰り返し行われる。
原料ロッド1が回転時に振れる主な要因は、原料ロッド1の中心軸の向きが鉛直ではなく斜めに傾いているからである。しかし、原料ロッド1の中心軸が斜めに傾いていなかったとしても、上軸11の中心軸に対して原料ロッド1の中心軸がずれている場合には、原料ロッド1の振れを抑えることができない。本実施形態による取り付け治具20は軸ズレ調整機構28を備え、原料ロッド1の中心軸の傾きのみならず中心軸の軸ズレも調整することができるので、原料ロッド1の振れを十分に抑えることができる。
以上説明したように、本実施形態によるシリコン単結晶製造装置は、上軸11の下端部に原料ロッド1を取り付けるための取り付け治具20を備え、取り付け治具20は、原料ロッド1の上端部を保持する原料ロッド保持部材21と、上軸11の中心軸に対する原料ロッド保持部材21の中心軸の水平方向の位置を調整する軸ズレ調整機構28を有し、原料ロッド1の中心軸の傾きを調整するだけでなく、上軸11の中心軸に対する原料ロッド1の中心軸のずれも調整するので、原料ロッド1が回転したときの振れを十分に抑制することができる。したがって、原料ロッド1のわずかな振れに起因するシリコン単結晶の抵抗率の面内ばらつきを抑えて高品質なシリコン単結晶を製造することができる。
また、本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法は、上軸の下端部に取り付け治具を介して原料ロッド1を取り付ける準備工程S1と、上軸と共に回転する原料ロッドの振れ量を調整する振れ調整工程(S2)と、原料ロッドを加熱して溶融帯域を形成し、原料ロッド及び単結晶を降下させることにより単結晶を成長させる単結晶育成工程S3とを備え、振れ調整工程S2は、上軸と共に原料ロッド1を回転させたときの原料ロッド1の振れ幅を測定する測定ステップ(S25、S25)と、振れ幅の測定結果に基づいて、上軸の中心軸に対する原料ロッド1の中心軸のずれを調整する軸ズレ量調整ステップ(S28)を有するので、原料ロッド1が回転したときの振れを十分に抑制することができる。したがって、原料ロッド1のわずかな振れに起因するシリコン単結晶の抵抗率の面内ばらつきを抑えて高品質なシリコン単結晶を製造することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態においては、単結晶育成工程前において原料ロッド1の振れ幅を調整しているが、単結晶育成工程中において原料ロッド1の振れ幅を調整することも可能である。原料ロッド1の振れ幅の測定は、例えば溶融帯域付近を撮影するカメラの撮影画像を処理することにより行うことができ、撮影画像に写る原料ロッド1の下端部の変位量から求めることが可能である。2台のカメラ17を用いて溶融帯域をX方向及びY方向からそれぞれ撮影する場合には、単結晶育成工程中における原料ロッド1の振れ幅の測定精度を高めることができ、単結晶育成工程中における原料ロッド1の振れ幅の調整も可能である。
FZ単結晶製造装置の上軸に取り付け治具を介して原料ロッドを吊設した後、原料ロッドの振れ幅を直胴部の上端部及び下端部の2箇所において測定すると共に、振れ幅が0.5mm/回転以下となるようにまず原料ロッドの傾きの修正を行い、次に原料ロッドの水平方向の軸ズレの修正を行った。
その後、シリコン単結晶の育成を行った。シリコン単結晶育成工程では、結晶回転速度を15rpmで回転方向を交互に変えながら結晶直径が200mmのシリコン単結晶を製造した。単結晶育成中における原料ロッドの振れをCCDカメラで測定したところ、従来方法では振れ幅が0.6〜2.2mm/回転であったのに対し、本実施例では振れ幅が0.3〜0.5mm/回転に抑えられていた。こうして製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの抵抗率ρの径方向の分布を2mmピッチで測定し、さらに10mmごとにRRG(Radial Resistivity Gradient)を算出し、さらにそれらのRRGの平均値(RRG Ave[%])を求めた。なお、測定範囲内(10mm)における抵抗率の最大値をρMax、最小値をρMinとするとき、RRGの計算式は、(ρMaxMin)/ρMinとなる。原料ロッドの振れ幅とRRG平均値の結果を図9に示す。
図9から明らかなように、振れ幅が0.6〜2.2mm/回転となる従来方法により製造されたシリコンウェーハのRRG平均値は4%前後であるが、振れ幅が0.3〜0.5mm/回転となる本実施例により製造されたシリコンウェーハのRRG平均値は3%以下となり、抵抗率の面内ばらつきを抑制できることが分かった。
1 原料ロッド
1a 原料ロッドの直胴部
1b 原料ロッドのテーパー部
1c 原料ロッドの溝
2 シリコン単結晶
3 溶融帯域
4 種結晶
10 シリコン単結晶製造装置
11 上軸
12 上軸駆動機構
13 誘導加熱コイル(ヒーター)
14 下軸
15 下軸駆動機構
16 パージガス供給ノズル
17 CCDカメラ
18 画像処理部
19 制御部
20 取り付け治具
21 原料ロッド保持部材
22 第1の嵌合部材
22a 第1の嵌合部材の貫通孔
22b 第1の嵌合部材のフランジ部
23 第2の嵌合部材
23a 第2の嵌合部材のヘッド部
23b 第2の嵌合部材のシャフト部
23c 第2の嵌合部材のテーパー部
24 補強部材
26 上側支持プレート
26b 連結ネジ
27 下側支持プレート
27a 爪部
28 軸ズレ調整機構
28x,28x X軸調整ネジ
28y,28y Y軸調整ネジ
30 チャンバー
40 変位測定装置
41 投光部
42 受光部
Db 原料ロッドの直胴部の上端部の振れ幅
Dt 原料ロッドの直胴部の上端部の振れ幅
Dx X軸方向の振れ幅
Dy Y軸方向の振れ幅
上軸の中心軸
原料ロッドの中心軸

Claims (11)

  1. 原料ロッドを支持する上軸と、
    前記上軸を回転させる上軸駆動機構と、
    前記原料ロッドを加熱する誘導加熱コイルと、
    前記原料ロッドの下方においてシリコン単結晶を支持する下軸と、
    前記上軸の下端部に前記原料ロッドを取り付けるための取り付け治具とを備え、
    前記取り付け治具は、
    前記原料ロッドの上端部を保持する原料ロッド保持部材と、
    前記上軸の中心軸に対する前記原料ロッド保持部材の中心軸の水平方向の位置を調整する軸ズレ調整機構を含むことを特徴とするシリコン単結晶製造装置。
  2. 前記軸ズレ調整機構は、
    水平面内のX軸方向に進退移動して当該X軸方向における前記原料ロッド保持部材の位置を調整するX軸調整ネジ部と、
    前記X軸方向と直交する前記水平面内のY軸方向に進退移動して当該Y軸方向おける前記原料ロッド保持部材の位置を調整するY軸調整ネジ部とを有する、請求項1に記載のシリコン単結晶製造装置。
  3. 前記取り付け治具は、前記原料ロッドの中心軸の傾きを調整する傾き調整機構をさらに含む、請求項2に記載のシリコン単結晶製造装置。
  4. 前記上軸と共に前記原料ロッドを回転させたときの当該原料ロッドの振れ幅を測定する変位測定装置をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置。
  5. 前記変位測定装置は、前記原料ロッドの直胴部の上端部及び下端部を含む2箇所以上で前記振れ幅を測定する、請求項4に記載のシリコン単結晶製造装置。
  6. 前記上軸及び前記原料ロッドの周囲を取り囲むチャンバーをさらに備え、前記変位測定装置は、前記チャンバー又は前記チャンバーに取り付けられた構造物に対して着脱自在に構成されている、請求項4又は5に記載のシリコン単結晶製造装置。
  7. 上軸の下端部に取り付け治具を介して原料ロッドを取り付ける準備工程と、
    前記上軸と共に前記原料ロッドを回転させたときの前記原料ロッドの振れ幅が閾値以下となるように調整する振れ調整工程と、
    前記原料ロッドの下端部を加熱して溶融帯域を形成し、前記溶融帯域の上方及び下方にそれぞれ位置する前記原料ロッド及びシリコン単結晶を降下させて前記単結晶を成長させる単結晶育成工程とを備え、
    前記振れ調整工程は、前記原料ロッドを前記上軸と共に回転させたときの当該原料ロッドの振れ幅を測定する測定ステップと、
    前記振れ幅の測定結果に基づいて、前記上軸の中心軸に対する前記原料ロッドの中心軸の軸ズレを調整する軸ズレ調整ステップを含むことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  8. 前記軸ズレ調整ステップは、水平面内のX軸方向における前記原料ロッド保持部材の中心位置を調整すると共に、前記X軸方向と直交する前記水平面内のY軸方向おける前記原料ロッド保持部材の中心位置を調整する、請求項7に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  9. 前記振れ調整工程は、前記振れ幅の測定結果に基づいて、前記原料ロッドの中心軸の傾きを調整する傾き調整ステップをさらに含む、請求項7又は8に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  10. 前記測定ステップは、前記原料ロッドの直胴部の上端部及び下端部を含む2箇所以上で前記振れ幅を測定する、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
  11. 前記振れ調整工程は、各測定箇所における前記振れ幅が0.5mm/回転以下となるように前記原料ロッドの軸ズレを調整する、請求項10に記載のシリコン単結晶の製造方法。
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JP2004345909A (ja) * 2003-05-22 2004-12-09 Furukawa Co Ltd 単結晶成長装置の原料棒保持装置

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