JP2019014352A - 乗物用シート - Google Patents
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Abstract
Description
シートクッション4は、乗員の着座が可能な上面視で略矩形の部材であり、図1及び図2を参照して、基本構成4F,4P,4Sと、シートカバーの関連構成(縫合部20,22,一対の規制部材40,42)を有している(各部材等の詳細は適宜後述)。このシートクッション4では、シートパッド4P(詳細後述)が、シートフレーム4F上に配置されてシートカバー4S(詳細後述)で被覆されている。ここでシートフレーム4F(図示省略)は、典型的に上面視で略矩形の枠体であり、金属や硬質樹脂などの剛性に優れる素材にて形成できる。
シートパッド4Pは、図2〜図4を参照して、シートクッション4の外形をなす上面視で略矩形の部材であり、乗員を弾性的に支持できる。ここでシートパッド4Pの材質は特に限定しないが、ポリウレタンフォーム(密度:10kg/m3〜60kg/m3)等の発泡樹脂を例示できる。そしてシートパッド4Pの外面となるべき部分は、図3及び図4を参照して、天板メイン部4aと、左側天板サイド部4baと、右側天板サイド部4bbと、左右のカマチ部4cに区分けでき、さらに複数の溝部10,12が設けられている。天板メイン部4aは、シート幅方向である左右方向の中央に形成されている略平坦な部位であり、乗員の着座が可能な幅寸法を有して前後方向に延びている。また各天板サイド部4ba,4bb(詳細後述)は、天板メイン部4aの左方と右方において相対的に上側に突出している部位であり、コーナリング走行時等に乗員の側方を支持することができる。また各カマチ部4cは、それぞれシート幅方向におけるシートクッション4の左右の側面をなす部位である。
図3及び図4を参照して、天板メイン部4a及び左右の天板サイド部4ba,4bbは、上面が概ね平坦な面形状を有しているが、これらの前面は、前方に凸の湾曲面で構成されている。そして各天板サイド部4ba(4bb)の天板メイン部側の周縁には、各々、一般領域16a(16b)と、湾曲領域18a(18b)とが形成されている。ここで本実施例では、左右の天板サイド部4ba,4bbに、概ね同一構成の一般領域と湾曲領域が左右対称となるように設けられている。例えば左側天板サイド部4baの一般領域16aは、左側天板サイド部4baの上面右縁(前面を除く部分)をなす部分であり、概ね水平な状態で前後方向に直線的に延びている。この一般領域16aをなす上面右縁は、上述の縦溝部10が設けられている箇所に概ね一致しており、後述するシートカバー4Sの一部が引き込み状に取付けられる。また湾曲領域18aは、左側天板サイド部4baの前面右縁をなす部分であり、前方に向かうにつれて次第に下方に湾曲している。この湾曲領域18aをなす前面右縁は、縦溝部10の前方に設けられており、後述する図2の第一表皮ピースSP1の薄肉端部34aを配置できる。そして右側天板サイド部4bbの左縁においても、左側天板サイド部4baと左右対称となるように一般領域16bと湾曲領域18bとが設けられ、この湾曲領域18bに、後述する図2の薄肉端部34bを配置できる。
シートカバー4Sは、図1及び図2を参照して、シートパッド4Pを被覆する面材である。このシートカバー4Sは、複数の表皮ピース(第一表皮ピースSP1〜第三表皮ピースSP3等)と、後述する縫合部20,22及び一対の規制部材40,42とを有している(図1及び図2では、便宜上、特定の表皮ピースにのみ特定の符号を付し、その他の表皮ピースには共通の符号SPを付す)。そして第一表皮ピースSP1は、天板メイン部4aの前部を覆う表皮ピースであり、上方視で左右に長尺な矩形状をなしている。また第二表皮ピースSP2は、左側天板サイド部4baを覆う表皮ピースであり、上方視で前後方向に長尺な略矩形をなしている。また第三表皮ピースSP3は、右側天板サイド部4bbを覆う表皮ピースであり、上方視で前後方向に長尺な略矩形をなしている。そして本実施例においては、天板メイン部4aの前部を覆う第一表皮ピースSP1が本発明の「一方の表皮ピース」に相当し、左側の天板サイド部4baを覆う第二表皮ピースSP2が本発明の「他方の表皮ピース」に相当する。さらに右側の天板サイド部4bbを覆う第三表皮ピースSP3も、本発明の別の「他方の表皮ピース」に相当する。
ここでシートカバー4Sは、図5〜図7を参照して、シートの意匠面を構成する表材4Saと、この表材4Saの裏側に積層されている弾性材4Sbとを有している。この種の表材4Saの素材として、例えば布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)を用いることができ、本実施例では、合成皮革製の表材4Saを用いている。また弾性材4Sbの素材として、ウレタンラミなどの弾性的に伸縮可能な発泡樹脂を用いることができる。そして表材4Saと弾性材4Sbは、例えばフレームラミネーションなどの手法で積層状に一体化することができる。
そして第一表皮ピースSP1は、図5及び図6を参照して、意匠面を構成する一般部30と、左縁部(左側一般端部32a,左側薄肉端部34a)と、右縁部(右側一般端部32b,右側薄肉端部34b)とを有している。ここで一般部30は、図2に示すシートパッド4Pの天板メイン部4aの外面を被覆する部分であり、表材4Saと弾性材4Sbで構成されている。そして第一表皮ピースSP1の左縁部は、左側第一縫い代21aを含む左縁部分であり、左側一般端部32aと左側薄肉端部34aで構成されている。また第一表皮ピースSP1の右縁は、右側第一縫い代21bを含む右縁部分であり、右側一般端部32bと右側薄肉端部34bで構成されている。ここで第一表皮ピースSP1の左縁部と右縁部は、左右対称に配置されている以外は略同一の基本構成を有している。そこで以下に、専ら第一表皮ピースSP1の左縁部(左側一般端部32a及び左側薄肉端部34a)を一例にその詳細を説明する。なおその他の表皮ピース(SP2,SP3等)は、便宜上、符号を省略しているが一般部と一般端部だけを有している。
一対の規制部材(左側規制部材40,右側規制部材42)は、図2、図8及び図9を参照して、後述するように対応する縫合部20,22の倒れ方向を規制する部材である。これら各規制部材40,42は、それぞれ適度な可撓性を備えた帯状の面材であり、左右方向に長尺とされている。これら各規制部材40,42の素材として、シートカバー4S(特に表材)で例示の素材を使用でき、張引によっても破損しない程度の剛性を有する素材であることが好ましい。そして本実施例では、左右一対の規制部材40,42が、シートカバー4Sの裏側に配置された状態とされて、第一表皮ピースSP1を左右に横断するように連結される。
図2に示すシートカバー4Sの形成に際しては、各縫合部20(22a)で縫い代同士を縫合する縫目SEW1(SEW2)を形成し、各縫目SEW1(SEW2)の適所に対応する規制部材40(42)を取付ける。例えば図8に示す第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2の縫合に際しては、これら両表皮ピースを中表状に重ね、さらに両表皮ピースの縫い代同士21a,22aの末端を位置合わせしておく。この状態で両表皮ピースの縫い代同士21a,22aを、前後に延びる左側縫目SEW1で縫合していく(規制部材の取付け手法は後述)。そして上述の縫合作業では、左側縫目SEW1を、図5に示す第一表皮ピースSP1の左縁部をなす左側一般端部32aと左側薄肉端部34aを前後に横断するように形成していく(図5の二点破線の部分を参照)。このとき第一表皮ピースSP1の左縁部の一部に左側薄肉端部34aを形成するとともに、その他の左縁部を、相対的に肉厚である左側一般端部32aとしている。こうすることで相対的に薄い薄肉端部34aのめくれ上がり等を、前後の一般端部32aで抑えることができ、縫合作業の作業性向上に資する構成となる。そして図8を参照して、第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2が左側縫目SEW1を基点に面状に展開されることにより、各表皮ピースの一般部30によって意匠面を構成可能な状態となる(図8では、便宜上、第一表皮ピースの一般部にのみ符号を付す)。さらにこの展開状態では、両表皮ピースSP1,SP2の裏側に、これらの縫い代同士21a,22aが中表状に重ねられた左側縫合部20が配置される。また同様の手法によって、図2に示す第一表皮ピースSP1と第三表皮ピースSP3を縫合することにより、右側第一縫い代21bと第三縫い代23bとが中表状に重ねられた右側縫合部22と、右側縫目SEW2とを形成することができる。
また上述の縫合作業と同時に、図2及び図9を参照して、各縫合部20(22)中の各薄肉端部34a(34b)で構成された箇所に対応する規制部材40(42)を取付ける。すなわち上述の縫合作業の際に、図2を参照して、左側規制部材40の左端を、左側縫合部20の第二縫い代22a側にあてがって左側縫目SEW1に共縫いしておく。また右側規制部材42の右端を、右側縫合部22の第三縫い代23b側にあてがって右側縫目SEW2に共縫いしておく。そして各規制部材40,42を、図2及び図9を参照して、シート幅方向中央に向けて張引しつつ(左右方向にテンションをかけつつ)、これら規制部材40,42の自由端同士を縫合線SEWで縫合して連結する。このように各規制部材40,42を引き締めて張った状態とすることで、各縫合部20,22中の各薄肉端部34a(34b)で構成された箇所を、第一表皮ピースSP1の裏側に倒すように張引できる。こうして左側縫合部20は、左側規制部材40にて右側に張引されることにより第一表皮ピースSP1の裏側に倒れた状態となる。また右側縫合部22も、右側規制部材42にて左側に張引されることにより第一表皮ピースSP1の裏側に倒れた状態となる。
図1及び図2を参照して、シートパッド4Pを、シートフレーム4F(図示省略)上に配置してシートカバー4Sで被覆する。このとき図2に示すように第一表皮ピースSP1で天板メイン部4aの前部を覆い、第二表皮ピースSP2で左側天板サイド部4baを覆い、第三表皮ピースSP3で右側天板サイド部4bbを覆う。そして本実施例では、第一表皮ピースSP1と第二表皮ピースSP2の縫合箇所となる左側縫合部20を、左側天板サイド部4baの右縁(図4の一般領域16aと湾曲領域18a)に沿って配置する。また同様に第一表皮ピースSP1と第三表皮ピースSP3の縫合箇所となる右側縫合部22を、右側天板サイド部4bbの左縁(図4の一般領域16bと湾曲領域18b)に沿って配置する。この種の構成では、各縫合部20,22が、一定の方向に倒されることで相対的に肉厚になるなどして、シートカバー4Sに部分的な盛り上がりが生じることは、シートの形状再現性向上の観点から極力回避すべきである。特に本実施例では、左右の天板サイド部4ba,4bb前部の湾曲領域18a,18b上に、対応する縫合部20,22が配置されることで、シートカバー4Sが部分的に過度に盛り上がるおそれがある。
図1を参照して、左右の天板サイド部4ba,4bbの周縁に沿って、シートカバー4Sの各縫合部20,22が配置されている。このとき本実施例では、図2を参照して、左右の天板サイド部4ba,4bb前部の湾曲領域18a,18b上に、対応する薄肉端部34a,34bで構成された縫合部20,22を配置している。このためシートカバー4Sが、各湾曲領域18a,18b上で過度に盛り上がることを極力回避することができる。こうして本実施例においては、シートパッド4Pの外面形状と、シートカバー4Sの意匠面形状とを概ね一致させることが可能となり、シートの形状再現性向上に資する構成となっている。さらに各規制部材40,42は、可撓性を備えた面材で構成されて必要以上に肉厚とされていない。このため本実施例では、各規制部材40,42がシートカバー4Sに浮き出る(ハイライトが生じる)といった不具合を好適に回避できる。
ここで薄肉端部の形成位置は、上述の位置のほか、乗物用シートの適宜の位置に設定することができる。例えば図11に示す乗物用シート2Aは、シートクッション4Aとシートバック6Aとヘッドレスト8Aを有し、これらシート構成部材の基本構成は、実施例1の対応する部材と概ね同一である。そしてシートバック6Aは、乗員の背凭れが可能な正面視で略矩形の部材であり、天板メイン部6aと天板サイド部6bとカマチ部6cとを有している。そして本変形例では、シートバック6の右側のカマチ部6cに、シートカバー6Sの薄肉端部34cが配置されている点が実施例1と異なっている。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4F シートフレーム
4P シートパッド
4a 天板メイン部
4ba 左側天板サイド部(本発明のシートパッドの外面をなす一つの部分)
4bb 右側天板サイド部(本発明のシートパッドの外面をなす一つの部分)
4c カマチ部
4S シートカバー
SP1 第一表皮ピース(本発明の一方の表皮ピース)
SP2 第二表皮ピース(本発明の他方の表皮ピース)
SP3 第三表皮ピース(本発明の他方の表皮ピース)
4Sb 弾性材
4Sa 表材
10 縦溝部
12 横溝部
13 切欠き部
14 段差部位
16a,16b 一般領域
18a 左側湾曲領域
18b 右側湾曲領域
20 左側縫合部
22 右側縫合部
21a 左側第一縫い代
21b 右側第一縫い代
23b 第三縫い代
26 吊布
30 一般部
32a 左側一般端部
32b 右側一般端部
34a 左側薄肉端部
34b 右側薄肉端部
40 左側規制部材
42 右側規制部材
SEW1 左側縫目
SEW2 右側縫目
W1 吊ワイヤ
W2 固定ワイヤ
Claims (6)
- シート外形をなすシートパッドと、前記シートパッドの外面を被覆しているシートカバーとを備え、
前記シートカバーは、隣り合った一対の表皮ピースと、前記一対の表皮ピースの縫い代同士を中表状に重ねて縫合している縫合部とを有し、前記縫合部を基点に面状に展開された前記一対の表皮ピースが、その裏側に配置されている前記縫合部の少なくとも一部を一方の表皮ピースの裏側に向けて倒した状態で、前記シートパッドの表面を被覆している乗物用シートにおいて、
前記一方の表皮ピースは、シートの意匠面をなす一般部と、前記一般部の縁から張出して前記一般部よりも厚み寸法が小さい薄肉端部とを有し、
倒れた状態の前記縫合部において、前記薄肉端部が前記一般部の裏側に向けて横U字をなすように曲げ返されているとともに、前記薄肉端部の裏側に配置された部分が、前記一方の表皮ピースの縫い代とされて、前記一方とは異なる他方の表皮ピースの縫い代に重なって縫合されている乗物用シート。 - 前記シートカバーには、前記一方の表皮ピースの裏側に向けて前記縫合部を倒しておく面状の規制部材が取付けられている請求項1に記載の乗物用シート。
- 前記シートパッドの外面が複数の部分に区分けされているとともに、前記シートパッドの外面をなす一つの部分の周縁には、一方向に延びている一般領域と、前記一方向とは異なる他方向に向けて湾曲している湾曲領域とが隣接して設けられており、
前記シートパッドをなす一つの部分の周縁に沿って前記縫合部を配置した状態で、前記薄肉端部が前記湾曲領域に沿って配置されている請求項1又は2に記載の乗物用シート。 - 前記一方の表皮ピースの縫い代の一部が前記薄肉端部で構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
- 前記一般部から張出す方向の前記薄肉端部の長さ寸法は、前記縫合部の対応する長さ寸法の二倍以上に設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
- 前記シートカバーは、シートの意匠面をなす表材と、弾性的に伸縮可能な弾性材とを積層した状態で有し、前記薄肉端部では、前記弾性材が除去されることにより、前記一般部よりも厚み寸法が小さくされている請求項1〜5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
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