JP2019011403A - 筆記具用インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents
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Abstract
Description
「1.着色剤、有機溶剤、環状リン化合物を含んでなり、前記環状リン化合物が下記一般式(化1)であることを特徴とする筆記具用インキ組成物。
2.前記環状リン化合物の重量平均分子量が、30000以下であることを特徴とする第1項に記載の筆記具用インキ組成物。
3.前記環状リン化合物の含有量が、インキ組成物全量に対して、5.0〜25.0質量%であることを特徴とする第1項または第2項に記載の筆記具用インキ組成物。
4.前記筆記具用インキ組成物に、界面活性剤を含有することを特徴とする第1項〜第3項のいずれか1項に記載の筆記具用インキ組成物。
5.第1項〜第4項のいずれか1項に記載の筆記具用インキ組成物が収容されてなることを特徴とする筆記具。
6.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。」とする。
本発明では、筆記具用インキ組成物に、下記一般式(化1)の環状リン化合物を含んでなることで、インキ粘度を増粘させ、インキ漏れを抑制することが可能であることが解った。これは、筆記先端部が乾燥した時に、筆記先端部で局部的にインキが増粘し筆記先端部のインキ流動性を下げ、筆記先端隙間部の表面乾燥時間をかせぐことでインキ漏れ(ボールペンの場合はボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制するためである。特に、下記一般式(化1)の環状リン化合物は、油性インキ組成物とすると、インキ漏れを抑制する効果が得られ、好適である。
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、一般式(化1)の環状リン化合物との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料との塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましい。染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASE OF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、筆記具用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
その中でも、グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。これは、グリコールエーテル溶剤を用いると、吸湿しやすいため、チップ先端部が乾燥したときに形成する被膜の強度を軟化させ、書き出し性能も向上しやすいためであり、前記環状リン化合物と併用するとより効果的で、インキ中での安定性を考慮すれば、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。さらに、グリコールエーテル溶剤以外の有機溶剤については、アルコール溶剤を用いることが好ましいが、これは、アルコ−ル溶剤は揮発して、チップ先端での乾燥をしやすく、一般式(化1)の環状リン化合物を含有することで、筆記先端部内(チップ先端部内)をより早く増粘させることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制して、インキ漏れ抑制性能を向上するためで、好ましい。さらに、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ−ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が好ましい。
また、インキ漏れ抑制をより向上するためには、樹脂をインキ粘度調整剤として、用いることが好ましい、樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でもケトン樹脂を含んでなることが好ましい。これは、インキ漏れ抑制効果をより向上しやすいためである。また、ケトン樹脂は、一般式(化1)の環状リン化合物とケトン樹脂とを併用することで、インキ漏れ抑制効果の他に、さらに、泣きボテを抑制する効果もあるためである。
本発明のように環状リン化合物や樹脂を用いる場合は、筆記先端部で形成した被膜による書き出し性能を考慮して、界面活性剤を用いることが好ましく、その中でも、より考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸を用いることが好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸を用いると、形成される被膜を軟化する傾向があり、書き出し性能を改良できることがある。その中でも、リン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸のアルキル基に含まれる炭素数が10〜20であることが好ましく、さらに考慮すれば、前記炭素数が12〜18であることがより好ましい。さらに、高筆圧下(300〜500gf)での潤滑性(高荷重性能)を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい、これは、ボールペンの場合は、高筆圧下(300〜500gf)においてもボールとチップ本体との間の潤滑性を向上して、ボール座の摩耗を抑制し、カスレなどのない良好な筆跡としやすいため、本発明ではより好適に用いることが可能である。
本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性を考慮すれば、有機アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましい。特にリン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、中和することで、インキ中で安定することで、書き出し性能や書き味を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
実施例1の筆記具用インキ組成物は、着色剤として染料、有機溶剤としてベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、環状リン化合物、ケトン樹脂、界面活性剤としてリン酸エステル系界面活性剤、有機アミンとしてオキシエチレンアルキルアミン、曳糸性付与剤としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて筆記具用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
着色剤(染料、酸性染料と塩基性染料との造塩染料) 15.0質量%
着色剤(染料、油溶性染料) 10.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 32.4質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)21.6質量%
環状リン化合物(化1) 10.0質量%
界面活性剤(リン酸エステル系界面活性剤) 2.0質量%
有機アミン(オキシエチレンアルキルアミン) 1.0質量%
ケトン樹脂 7.5質量%
曳糸性付与剤(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.5質量%
表1に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順でインキ配実施例2〜4の筆記具用インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
実施例1〜4および比較例1〜4で作製した筆記具用インキ組成物(0.27g)を、インキ収容筒(ポリプロピレン)に、ボール径がφ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペン用チップ(金属製)を装着した筆記具用レフィルに充填し、筆記具を作製した。筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験および評価を行った。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
カスレが生じなかった ・・・◎
カスレが生じたが、実用上問題のないレベルであった・・・○
カスレが生じ、実用上懸念が残るレベルであった ・・・×
金属光沢性があり、変色がないまたは、変色がほとんどないもの ・・・○
金属光沢性がなく、変色があるもの ・・・×
尚、インキ粘度については、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して、インキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度5sec−1、実施例1のインキ粘度=10000mPa・s、実施例2のインキ粘度=15000mPa・sであった。
Claims (6)
- 前記環状リン化合物の重量平均分子量が、30000以下であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
- 前記環状リン化合物の含有量が、インキ組成物全量に対して、5.0〜25.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具用インキ組成物。
- 前記筆記具用インキ組成物に、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筆記具用インキ組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の筆記具用インキ組成物が収容されてなることを特徴とする筆記具。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の筆記具用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。
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