以下、本発明による電力変換装置を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における電力変換装置300を示す構成図である。なお、図1では、電力変換装置300の入力側に電源装置100が接続され、出力側に負荷装置200が接続される場合を例示している。
電力変換装置300は、電源装置100から供給された電力を変換し、変換後の電力を負荷装置200に給電する。電力変換装置300は、電源装置100および負荷装置200の種類に応じて、DC−DC変換、DC−AC変換、AC−AC変換、AC−DC変換等の電力変換を行うように構成されている。
電力変換装置300は、複数の部品によって構成されており電力を変換する電力変換器310と、電力変換器310を構成する複数の部品のうちの対象部品の温度である部品温度T0を検出する変換器用温度センサ320と、電力変換器310を構成する複数の部品を冷却する冷却器330と、冷却器330の温度である冷却器温度T1を検出する冷却器用温度センサ340と、電力変換器310の動作を制御する制御器350とを備える。
負荷装置200は、電力を消費するだけの片方向負荷の形態であってもよいし、モータのような力行/回生を行う、またはバッテリのような充電/放電を行う双方向負荷の形態であってもよい。
続いて、電力変換器310の具体的な構成例について、図2および図3を参照しながら説明する。図2は、図1の電力変換器310の構成の一例を示す回路図である。図3は、図1の電力変換器310の構成の別例を示す回路図である。なお、以下で例示する各電力変換器の動作原理については既知のため説明を省略する。
電力変換器310の構成の一例として、図2に示すような昇圧コンバータ(DC−DC変換器)の形態が考えられる。具体的には、図2に示す昇圧コンバータ310Aは、複数の部品として、高圧側の半導体スイッチング素子311Ahと、ダイオード312Ahと、低圧側の半導体スイッチング素子311Alと、ダイオード312Alと、昇圧リアクトル313Aと、平滑コンデンサ314Aと、平滑コンデンサ315Aとを備えて構成される。
なお、半導体スイッチング素子311Ah,311Alとしては、例えば、シリコン半導体素子を用いたIGBT、ワイドバンドギャップ半導体(例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド等)素子を用いたMOSFET等を用いればよい。ダイオード312Ah,312Alとしては、例えば、シリコン半導体素子を用いたPN接合ダイオード、ワイドバンドギャップ半導体素子を用いたショットキーバリアダイオード等を用いればよい。ダイオード312Ah,312Alは、半導体スイッチング素子311Ah,311AlがMOSFETである場合には、寄生ダイオードであってもよい。
電力変換器310の構成の別例として、図3に示すようなインバータ(DC−AC変換器)の形態が考えられる。具体的には、図3に示すインバータ310Bは、複数の部品として、高圧側の半導体スイッチング素子311BUh,311BVh,311BWhと、ダイオード312BUh,312BVh,312BWhと、低圧側の半導体スイッチング素子311BUl,311BVl,311BWlと、ダイオード312BUl,312BVl,312BWlと、平滑コンデンサ315Bとを備えて構成される。
このように、電力変換器310は、半導体スイッチング素子、コンデンサ、リアクトル等といった、動作中に発熱する複数の部品によって構成されている。従来の電力変換器においては、電力変換器を構成する複数の部品のそれぞれの部品温度を検出する温度センサを各部品に設け、各部品を故障から保護する。
これに対して、本実施の形態1における電力変換器310においては、電力変換器を構成する複数の部品のうちの対象部品の部品温度を検出する温度センサを変換器用温度センサ320としてその対象部品に設ける。なお、対象部品は、複数の部品のうち、電力変換器310の通常動作時に最も発熱が大きくなる部品とする。
次に、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例について、図4を参照しながら説明する。図4は、図1の冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。つまり、制御器350は、電力変換器310を通常動作させる通常制御に従って、電力変換器310の動作を制御する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が正常である場合には、時刻t2において、部品温度T0および冷却器温度T1が飽和する。以下、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合に冷却器温度T1が飽和したときの温度を冷却器正常時最大温度T0_maxと呼ぶ。
次に、冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例について、図5を参照しながら説明する。図5は、図1の冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。なお、ここでは、冷却器330の異常として、冷却器330内の冷却水が抜けてしまう場合を想定する。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が異常である場合には、冷却器330が正常である場合と比較して、冷却器330の熱抵抗および熱容量が大きくなる。そのため、部品温度T0と冷却器温度T1は、図4に示す温度推移よりもゆっくりと温度上昇する。冷却器330の異常により、部品を冷却することができないため、冷却器温度T1とともに部品温度T0は上がり続ける。
時刻t3において、部品温度T0は、部品温度の上限許容値を規定する部品上限温度T0_limを超えてしまうため、電力変換器310が故障する虞がある。
そこで、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えないようにするため、制御器350は、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_ot以上になった場合には、電力変換器310の制御を、通常制御から、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御に切り替える。制御器350は、その過熱停止制御に従って、電力変換器310の動作を制御する。
なお、過熱停止閾値Tth_otは、予め設定される値であり、例えば、上述した冷却器正常時最大温度T0_maxよりも高く、部品上限温度T0_limよりも低くなるように設定される。
次に、制御器350によって行われる過熱停止制御について、図6を参照しながら説明する。図6は、図1の冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合に電力変換器310の制御が切り替わったときの、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。制御器350によって過熱停止制御が行われるまでの部品温度T0と冷却器温度T1は、図5に示す温度推移と同等の動きとなる。
時刻t4において、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otに達したので、制御器350は、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御を行う。このような過熱停止制御が行われることで、電力変換器310の出力が0となる。時刻t4以降では、部品の損失による発熱が無くなるため、部品温度T0が低下し、併せて冷却器温度T1も低下する。
このように、制御器350は、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1に基づいて、対象部品の部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えないように電力変換器310の動作を制御する。具体的には、制御器350は、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1に基づいて、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えて、電力変換器310の動作を制御する。したがって、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えることを防止することができる。
次に、本実施の形態1における制御器350が、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1を用いて、電力変換器310の制御を切り替える動作について、図7を参照しながら説明する。図7は、図1の制御器350の動作を示すフローチャートである。
ステップS701において、制御器350は、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1を取得し、処理がステップS702へと進む。
ステップS702において、制御器350は、ステップS701で取得した冷却器温度T1と、過熱停止閾値Tth_otを比較する。その比較の結果、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otよりも小さい場合には、処理がステップS703へと進み、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_ot以上である場合には、処理がステップS704へと進む。
ステップS703において、制御器350は、電力変換器310の制御を通常制御として、電力変換器310を通常動作させる。
ステップS704において、制御器350は、電力変換器310の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替え、電力変換器310の動作を停止させる。
このように、制御器350は、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_ot以上となれば、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替える。
以上、本実施の形態1によれば、電力変換装置は、電力変換器を構成する複数の部品を冷却する冷却器の冷却器温度を検出する冷却器用温度センサを備えて構成される。また、電力変換装置は、この構成に対して、冷却器用温度センサから冷却器温度を取得し、その冷却器温度に基づいて、対象部品の部品温度が部品上限温度を超えないように電力変換器の動作を制御する制御器を備えて構成される。
上記の制御器は、冷却器温度に基づいて、対象部品の部品温度が部品上限温度を超えないように電力変換器の動作を制御する具体例として、冷却器温度に基づいて、電力変換器の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えて、電力変換器の動作を制御するように構成されている。
このように、冷却器用温度センサによって検出される冷却器温度を用いて冷却器が異常であると判断すれば電力変換器の動作を停止させるようにしたため、部品そのものの部品温度とは切り離して部品の過熱保護が可能となる。その結果、部品のハイスペック化を抑制することができる。
なお、本実施の形態1では、複数の部品のそれぞれに温度センサを設ける形態であってもよいし、複数の部品に個別に温度センサを設けるのではなく、電力変換器310の通常動作時に温度が高くなる部品にだけ温度センサを設けてもよい。ただし、後者の形態の方が、温度センサの数が少なくてすむので、コストを低減することができる。また、図7から分かるように、電力変換器310の制御を切り替えるにあたって、冷却器温度T1を用いる一方、部品温度T0を用いていないので、複数の部品のいずれにも温度センサを設けない形態であってもよい。
また、本実施の形態1では、電力変換器310の通常動作時に電力変換器310の出力が最大出力P_maxとなる場合を例示したが、電力変換器310の出力がその他の出力となる場合であってもよい。この場合も同様に部品の過熱保護が可能となるように、適切な過熱停止閾値Tth_otを設定することが望ましい。
また、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otに達したと制御器350が判断してから、実際に電力変換器310の動作が停止するまでには、遮断遅れ時間が発生することが考えられる。そのため、遮断遅れの影響による温度上昇によって部品が部品上限温度に達することがないよう、適切な過熱停止閾値Tth_otを設定することが重要である。
また、本実施の形態1では、電力変換器310の構成例として、図2に示す昇圧コンバータおよび図3に示すインバータを例示したが、これらに限定されない。すなわち、電力変換器310は、例えば、パワーコンディショナー等のDC−AC変換器、車載用充電器等のAD−DC変換器、絶縁型DC−DC変換器等の形態も考えられる。電源装置100としては、例えば、バッテリ、燃料電池、太陽電池、系統電源等の形態であることが考えられる。これらの形態を取り得る電源装置100および電力変換器310を組み合わせることで実現される電力変換装置に対して本発明が適用可能であることはいうまでもない。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、電力変換器310を構成する複数の部品を冷却器330に配置する際のレイアウトの第1の例について説明する。なお、本実施の形態2では、先の実施の形態1と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
図8は、本発明の実施の形態2における電力変換装置300の電力変換器310を構成する複数の部品の冷却器330への配置を示すレイアウト図である。
なお、実施の形態2では、具体例として、電力変換器310の構成が先の図2に示す昇圧コンバータを想定しており、図8では、複数の部品として、半導体スイッチング素子311A、ダイオード312A、昇圧リアクトル313Aおよび平滑コンデンサ314A,315Aが図示されている。
図8に示すように、冷却器330は、複数の部品を搭載する搭載面(ベースプレート)を有し、流路、すなわち内部に配設された配管820を、冷却水840が上流側から下流側に流れることで搭載面に搭載された複数の部品を冷却するように構成されている。つまり、ここでは、冷却器330の冷却方式は、水冷方式である場合を例示している。
具体的には、ポンプ810によって配管820内を流れる冷却水840が冷却器330の流入口850から流入し、冷却器330内に流入した冷却水840によって複数の部品が冷却され、その冷却水840が冷却器330の排出口860から排出される。排出口860から排出される冷却水840は、ラジエータ830によって冷却され、再び流入口850から冷却器330内に流入する。なお、ここでは、冷媒として冷却水840を用いたが、冷却水の代わりに、LLC、油等の液体を用いてもよい。
冷却器用温度センサ340は、冷却器330の流路の上流側、具体的には、冷却器330の流入口850付近に配置されている。
ここで、冷却水が流入する流入口850付近では、複数の部品の発熱による水温上昇が小さい。そのため、冷却器用温度センサ340を冷却器330の流入口850付近に配置することで、上述した過熱停止閾値Tth_otを低く設定することができる。この場合、冷却器330の異常として、例えば冷却器330内の冷却水が抜けてしまう異常が発生すると、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に素早く切り替えることができる。
また、冷却器用温度センサ340を配置する位置が冷却器330内を流れる冷却水の流路の上流側であればあるほど、複数の部品の発熱による水温上昇が小さくなる。そのため、冷却器用温度センサ340を冷却器330の上流側に配置することで、冷却器330の異常が発生すると、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御により早く切り替えることができる。
次に、冷却器330内を流れる冷却水の流路の具体的な構成例について、図9および図10を参照しながら説明する。図9は、図8の冷却器330内の流路の一例を示す平面図である。図10は、図8の冷却器330内の流路の別例を示す平面図である。
図9および図10に示すように、冷却水が流れる流路の上流870は、図中の破線で囲った部分である。冷却器330内の流路の形態が図9または図10に示す形態である場合、冷却器用温度センサ340は、例えば、冷却器330の上流870側のベースプレート上に配置されていればよい。
なお、図9および図10に示す流路の形状は一例であり、これらと形状が異なる流路においても、冷却水が排出される排出口よりも、冷却水が流入する流入口に近い方の冷却器330のベースプレート上に冷却器用温度センサ340を配置すればよい。
また、冷却器330のベースプレート上において、冷却器用温度センサ340を配置している位置付近に、複数の部品のうち、電力変換器310の通常動作時に最も発熱が大きくなる部品(例えば、半導体スイッチング素子311A)を配置する。つまり、このような最も発熱が大きくなる部品を、冷却器用温度センサ340に可能な限り近付けて配置する。
このような構成とすることで、冷却器330の異常が発生した場合、その部品の損失による発熱の影響によって、冷却器用温度センサ340を配置している位置が加熱されやすくなる。したがって、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otに達するタイミングが早くなる。その結果、電力変換器310の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替えるタイミングを早めることが可能となる。
以上、本実施の形態2によれば、電力変換装置は、冷却器用温度センサが、冷却器の流路の上流側に配置されるように構成される。これにより、冷却器の異常時に電力変換器の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替えるタイミングを早めることが可能となる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、電力変換器310を構成する複数の部品を冷却器330に配置する際のレイアウトの第2の例について説明する。なお、本実施の形態3では、先の実施の形態1、2と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1、2と異なる点を中心に説明する。
図11は、本発明の実施の形態3における電力変換装置300の電力変換器310を構成する複数の部品の冷却器330への配置を示すレイアウト図である。
なお、実施の形態3では、具体例として、電力変換器310の構成が先の図2に示す昇圧コンバータを想定しており、図8では、複数の部品として、半導体スイッチング素子311A、ダイオード312A、昇圧リアクトル313Aおよび平滑コンデンサ314A,315Aが図示されている。
図11に示すように、冷却器330は、先の実施の形態2と同様の構成である。ただし、冷却器用温度センサ340は、冷却器330の流路の下流側、具体的には、冷却器330の排出口860付近に配置されている。複数の部品のうち、電力変換器310の通常動作時に最も発熱が大きくなる部品(例えば、半導体スイッチング素子311A)は、冷却器330の流入口850付近に配置されている。
ここで、冷却水が排出される排出口860付近では、複数の部品の発熱による水温上昇が大きい。具体的には、電力変換器310が通常動作している場合、流入口850の水温と比べて、排出口860の水温が10℃以上高くなる場合もある。冷却器330の異常として、ポンプ810の故障等で冷却水の流量が低下する異常が発生すると、排出口860の水温と、流入口850の水温の差は、さらに顕著な値となって現れる。
したがって、冷却器用温度センサ340を、冷却器330の排出口860付近に配置することで、上記のような冷却器330の異常が発生した場合に冷却器温度T1の温度上昇が大きくなる。そのため、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otに達するタイミングが早くなり、結果として、電力変換器310の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替えるタイミングを早めることが可能となる。
以上、本実施の形態3によれば、電力変換装置は、冷却器用温度センサが、冷却器の流路の下流側に配置されるように構成される。これにより、冷却器の異常時に電力変換器の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替えるタイミングを早めることが可能となる。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4では、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1に基づいて、電力変換器310の制御を、パワーセーブ制御と過熱停止制御に切り替えるように制御器350を構成する場合について説明する。なお、本実施の形態4では、先の実施の形態1〜3と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1〜3と異なる点を中心に説明する。
図12は、本発明の実施の形態4における冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合に電力変換器の制御が切り替わったときの、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。なお、ここでは、冷却器330の異常として、冷却器330内の冷却水が抜けてしまう場合を想定する。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が異常である場合には、冷却器330が正常である場合と比較して、冷却器330の熱抵抗および熱容量が大きくなる。そのため、部品温度T0と冷却器温度T1は、先の図4に示す温度推移よりもゆっくりと温度上昇する。冷却器330の異常により、部品を冷却することができないため、冷却器温度T1とともに部品温度T0は上がり続ける。
時刻t5において、冷却器温度T1がパワーセーブ閾値Tth_psに達したので、制御器350は、通常制御よりも電力変換器310の出力を低くして電力変換器310をパワーセーブ動作させるパワーセーブ制御を行う。パワーセーブ制御では、具体的には、電力変換器310の出力として、出力電圧または出力電流を制限する制御が行われる。このような制御によって、部品の損失を低減することで発熱を抑制し、部品が過熱故障することを防ぐ。
ただし、冷却器330の異常として、冷却器330内の冷却水が抜けてしまう異常、ポンプ810の故障等で冷却水の流量が低下する異常等が発生した場合、電力変換器310の制御を通常制御からパワーセーブ制御に切り替えても、部品を冷却することができない。したがって、パワーセーブ制御が行われても、部品温度T0は上がり続け、併せて、冷却器温度T1も上がり続ける。
なお、パワーセーブ閾値Tth_psは、予め設定される値であり、例えば、上述した冷却器正常時最大温度T0_maxよりも高く、過熱停止閾値Tth_otよりも低くなるように設定される。
時刻t6において、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otに達したので、制御器350は、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御を行う。このような過熱停止制御が行われることで、電力変換器310の出力が0となる。時刻t6以降では、部品の損失による発熱が無くなるため、部品温度T0が低下し、併せて冷却器温度T1も低下する。
このように、制御器350は、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1に基づいて、電力変換器310の制御を、通常制御から、パワーセーブ制御と過熱停止制御に切り替えて、電力変換器310の動作を制御する。したがって、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えることを防止することができる。
次に、実施の形態4における制御器350が、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1を用いて、電力変換器310の制御を切り替える動作について、図13を参照しながら説明する。図13は、本発明の実施の形態4における制御器350の動作を示すフローチャートである。
ステップS1301において、制御器350は、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1を取得し、処理がステップS1302へと進む。
ステップS1302において、制御器350は、ステップS1301で取得した冷却器温度T1と、過熱停止閾値Tth_otを比較する。その比較の結果、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otよりも小さい場合には、処理がステップS1303へと進み、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_ot以上である場合には、処理がステップS1306へと進む。
ステップS1303において、制御器350は、ステップS1301で取得した冷却器温度T1と、パワーセーブ閾値Tth_psを比較する。その比較の結果、冷却器温度T1がパワーセーブ閾値Tth_psよりも小さい場合には、処理がステップS1304へ進み、冷却器温度T1がパワーセーブ閾値Tth_ps以上である場合には、処理がステップS1305へ進む。
ステップS1304において、制御器350は、電力変換器310の制御を通常制御として、電力変換器310を通常動作させる。
ステップS1305において、制御器350は、電力変換器310の制御をパワーセーブ制御に切り替え、電力変換器310をパワーセーブ動作させる。
このように、制御器350は、冷却器用温度340センサから取得した冷却器温度T1がパワーセーブ閾値Tth_ps以上となれば、電力変換器310の制御を、通常制御からパワーセーブ制御に切り替える。
ステップS1306において、制御器350は、電力変換器310の制御を過熱停止制御に切り替え、電力変換器310の動作を停止させる。
このように、制御器350は、冷却器用温度340センサから取得した冷却器温度T1がパワーセーブ閾値Tth_psよりも高い過熱停止閾値Tth_ot以上となれば、電力変換器310の制御を、パワーセーブ制御から過熱停止制御に切り替える。
以上、本実施の形態4によれば、電力変換装置の制御器は、冷却器温度に基づいて、電力変換器の制御を、通常制御から、パワーセーブ制御と過熱停止制御に切り替えて、電力変換器の動作を制御するように構成されている。
このように、冷却器用温度センサによって検出される冷却器温度を用いて冷却器が異常であると判断すれば電力変換器のパワーセーブ動作を経て電力変換器の動作を停止させるようにしたため、部品そのものの部品温度とは切り離して部品の過熱保護が可能となる。その結果、部品のハイスペック化を抑制することができる。
また、電力変換器の動作を停止させる前に、電力変換器をパワーセーブ動作させるようにしているので、電力変換器の動作可能時間を延長するとともに、電力変換器が通常動作している状態から突然停止して動かなくなることを防ぐことができる。
なお、本実施の形態4では、先の実施の形態2、3で説明したとおりに冷却器330のベースプレート上に冷却器用温度センサ340を配置してもよいし、ベースプレートの側面に冷却器用温度センサ340を配置してもよい。また、冷却器330のウォータジャケット内に冷却器用温度センサ340を配置してもよい。
また、冷却器330の冷媒を液体としてもよいし、冷却器330の冷媒を気体としてもよい。冷媒が気体である場合、冷却系の構成部品として、先の図8および図11に示すようなポンプ810、配管820およびラジエータ830の代わりに、空冷ファン、ダクト等の機器が用いられる。
このように、水冷方式の冷却器を備えた電力変換装置だけでなく、空冷方式の冷却器を備えた電力変換装置に対しても本発明が適用可能である。冷却器330が空冷方式である場合、水冷方式の場合と比較して、冷却器330の熱抵抗および熱容量が大きくなる傾向にある。そのため、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合において、部品温度T0および冷却器温度T1は、長い時定数で上昇する傾向となる。この場合の温度上昇は、冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の温度上昇とは差がある。
したがって、冷却器330が空冷方式である場合においても、冷却器330が水冷方式である場合と同様に、パワーセーブ閾値Tth_psおよび過熱停止閾値Tth_otを設定することで、電力変換器310のパワーセーブ動作および過熱保護を適切に行うことができる。
なお、電力変換器310がパワーセーブ動作している場合の冷却器温度T1、または電力変換器310がパワーセーブ動作している場合の或る時間における冷却器温度T1の温度変化ΔT1を用いて、電力変換器310の動作を停止させるようにしてもよい。
冷却器330の正常である場合、電力変換器310が通常動作からパワーセーブ動作に切り替わると、部品温度T0および冷却器温度T1がともに低下し、温度変化ΔT1がマイナスの値となる。
一方、冷却器330が異常である場合、電力変換器310が通常動作からパワーセーブ動作に切り替わったとしても、必ずしも部品温度T0および冷却器温度T1がともに低下するとは限らない。例えば、電力変換器310が通常動作からパワーセーブ動作に切り替わった直後では、部品の損失が低下することで部品温度T0および冷却器温度T1が一旦低下することもあるが、冷却器330が異常であるため、部品を冷却することができない。その結果、時間の経過とともに、部品温度T0および冷却器温度T1が再び上昇する。
したがって、電力変換器310がパワーセーブ動作している場合の温度変化ΔT1がプラスの値となれば、冷却器330が異常であると判断可能である。そこで、制御器350は、電力変換器310がパワーセーブ動作している場合の温度変化ΔT1が、予め設定される設定閾値(例えば、0以上の値)以上となれば、電力変換器310の制御を過熱停止制御に切り替え、電力変換器310の動作を停止させる。
また、電力変換器310がパワーセーブ動作している場合の冷却器温度T1が、一旦低下した後に再びパワーセーブ閾値Tth_psに到達すれば、冷却器330が異常であると判断可能である。そこで、制御器350は、電力変換器310がパワーセーブ動作している場合の冷却器温度T1が、予め設定される設定閾値(例えば、パワーセーブ閾値Tth_ps以上の値)以上となれば、電力変換器310の制御を過熱停止制御に切り替え、電力変換器310の動作を停止させる。
実施の形態5.
本発明の実施の形態5では、電力変換器310を構成する複数の部品を冷却器330に配置する際のレイアウトの第3の例について説明する。なお、本実施の形態5では、先の実施の形態1〜4と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1〜4と異なる点を中心に説明する。
図14は、本発明の実施の形態5における電力変換装置300の電力変換器310を構成する複数の部品の冷却器330への配置を示すレイアウト図である。
なお、実施の形態5では、具体例として、電力変換器310の構成が先の図2に示す昇圧コンバータを想定しており、図14では、複数の部品として、半導体スイッチング素子311A、ダイオード312A、昇圧リアクトル313Aおよび平滑コンデンサ314A,315Aが図示されている。
図14に示すように、冷却器330は、先の実施の形態2と同様の構成である。ただし、冷却器用温度センサ340は、冷却器330の排出口860付近に配置されている。また、電力変換器310の通常動作時に最も発熱が大きくなる部品(例えば、半導体スイッチング素子311A)は、冷却器330の排出口860付近に配置されている。変換器用温度センサ320は、半導体スイッチング素子311Aの部品温度を検出する。
次に、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例について、図15を参照しながら説明する。図15は、本発明の実施の形態5における冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、各部品は損失により発熱し、冷却器330は、各部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が正常である場合には、時刻t2において、部品温度T0および冷却器温度T1が飽和する。先の実施の形態1で説明したとおり、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合に冷却器温度T1が飽和したときの温度を冷却器正常時最大温度T0_maxと呼ぶ。
ここで、本実施の形態5では、冷却器330の排出口860付近に冷却器用温度センサ340を配置しているので、各部品の発熱の影響を受けて、冷却器温度の上昇が大きくなる。したがって、流入口850付近に冷却器用温度センサ340を配置している場合と比較して、排出口860付近に冷却器用温度センサ340を配置している場合には、電力変換器310が通常動作しているときの部品温度T0と冷却器温度T1との差分である温度差ΔTが小さくなる。
以下、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合に、部品温度T0が飽和したときの温度と、冷却器温度T1が飽和したときの温度との差分を、冷却器正常時最大温度差ΔT0_maxと呼ぶ。
次に、冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例について、図16を参照しながら説明する。図16は、本発明の実施の形態5における冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。なお、ここでは、冷却器330の異常として、ポンプ810の故障等で冷却水の流量が低下する場合を想定する。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が異常である場合には、冷却器330が正常である場合と比較して、冷却器330の熱抵抗および熱容量が大きくなる。そのため、部品温度T0と冷却器温度T1は、図15に示す温度推移よりもゆっくりと温度上昇する。冷却器330の異常により、冷却水の流量が低下しているものの、冷却水は冷却器330内を流れているので、部品を冷却することができる。
その結果、時刻t4において、部品温度T0および冷却器温度T1が飽和する。しかしながら、時刻t3において、部品温度T0は、部品上限温度T0_limを超えてしまうため、電力変換器310が故障する虞がある。
そこで、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えないようにするため、制御器350は、部品温度T0と冷却器温度T1との温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_ot以上になった場合には、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御を行う。
なお、過熱停止閾値ΔTth_otは、予め設定される値であり、例えば、上述した冷却器正常時最大温度差ΔT0_maxよりも高くなるように設定される。
次に、本実施の形態5における制御器350によって行われる過熱停止制御について、図17を参照しながら説明する。図17は、本発明の実施の形態5における冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合に電力変換器310の制御が切り替わったときの、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。制御器350によって過熱停止制御が行われるまでの部品温度T0と冷却器温度T1は、図16に示す温度推移と同等の動きとなる。
時刻t5において、温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_otに達したので、制御器350は、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御を行う。このような過熱停止制御が行われることで、電力変換器310の出力が0となる。時刻t5以降では、部品の損失による発熱が無くなるため、部品温度T0は低下し、併せて冷却器温度T1も低下する。
このように、制御器350は、変換器用温度センサ320から取得した部品温度T0と、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1とに基づいて、対象部品の部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えないように電力変換器310の動作を制御する。具体的には、制御器350は、変換器用温度センサ320から取得した部品温度T0と、冷却器用温度センサか340から取得した冷却器温度T1との温度差ΔT(=T0−T1)を算出し、算出した温度差ΔTに基づいて、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えて、電力変換器310の動作を制御する。したがって、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えることを防止することができる。
次に、本実施の形態5における制御器350が、変換器用温度センサ320によって検出される部品温度T0と、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1を用いて、電力変換器310の制御を切り替える動作について、図18を参照しながら説明する。図18は、本発明の実施の形態5における制御器350の動作を示すフローチャートである。
ステップS1801において、制御器350は、冷却器用温度センサ340によって検出される冷却器温度T1を取得し、処理がステップS1802へと進む。
ステップS1802において、制御器350は、変換器用温度センサ320によって検出される部品温度T0を取得し、処理がステップS1803へと進む。
ステップS1803において、制御器350は、ステップS1802で取得した部品温度T0と、ステップS1801で取得した冷却器温度T1との差分である温度差ΔTを算出し、処理がステップS1804へと進む。
ステップS1804において、ステップS1803で算出した温度差ΔTと、過熱停止閾値ΔTth_otを比較する。その比較の結果、温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_otよりも小さい場合には、処理がステップS1805へと進み、温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_ot以上である場合には、処理がステップS1806へ進む。
ステップS1805において、制御器350は、電力変換器310の制御を通常制御として、電力変換器310を通常動作させる。
ステップS1806において、制御器350は、電力変換器310の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替え、電力変換器310の動作を停止させる。
このように、制御器350は、温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_ot以上となれば、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替える。
以上、本実施の形態5によれば、電力変換装置は、変換器用温度センサから部品温度を取得し、冷却器用温度センサから冷却器温度を取得し、その部品温度および冷却器温度に基づいて、対象部品の部品温度が部品上限温度を超えないように電力変換器の動作を制御する制御器を備えて構成される。
上記の制御器は、部品温度および冷却器温度に基づいて、対象部品の部品温度が部品上限温度を超えないように電力変換器の動作を制御する具体例として、部品温度と冷却器温度との温度差を算出し、算出した温度差に基づいて、電力変換器の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えて、電力変換器の動作を制御するように構成されている。
このように、変換器用温度センサによって検出される部品温度と、冷却器用温度センサによって検出される冷却器温度の両方を用いて冷却器が異常であると判断すれば電力変換器の動作を停止させるようにした。したがって、部品のハイスペック化を抑制するとともに、過熱停止制御の信頼性が上がって部品が部品上限温度を超えることを防止する精度の向上が図れる。
なお、本実施の形態5では、制御器350は、温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_ot以上であれば電力変換器310の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替えるように構成されている。しかしながら、信頼性をより向上させるために、制御器350は、温度差ΔTが過熱停止閾値ΔTth_ot以上である状態の継続する時間が、予め設定される時間閾値tth以上であれば、電力変換器310の制御を通常制御から過熱停止制御に切り替えるように構成されていてもよい。
また、過熱停止閾値ΔTth_otおよび時間閾値tthは、例えば、予め、電力変換器310の状態(出力電圧、出力電流、出力電力、入力電圧、入力電流、入力電力、部品温度特性、ばらつき、経年変動等)に応じて取りうる値を導出しておき、その値から外れた値をそれぞれの閾値として設定すればよい。
実施の形態6.
本発明の実施の形態6では、電力変換器310を構成する複数の部品を冷却器330に配置する際のレイアウトの第4の例について説明する。なお、本実施の形態6では、先の実施の形態1〜5と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1〜5と異なる点を中心に説明する。
図19は、本発明の実施の形態6における電力変換装置300の電力変換器310を構成する複数の部品の冷却器330への配置を示すレイアウト図である。
なお、実施の形態6では、具体例として、電力変換器310の構成が先の図2に示す昇圧コンバータを想定しており、図19では、複数の部品として、半導体スイッチング素子311A、ダイオード312A、昇圧リアクトル313Aおよび平滑コンデンサ314A,315Aが図示されている。
図19に示すように、冷却器330は、先の実施の形態2と同様の構成である。ただし、冷却器用温度センサ340は、電力変換器310の通常動作時に冷却器温度が低くなる位置、すなわち、構成部品からの熱干渉が小さくかつ冷却水による熱引きがよい位置に配置されている。図19では、冷却器330の流路の上流側、具体的には、冷却器330の流入口850付近に冷却器用温度センサ340が配置されている。
次に、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例について、図20を参照しながら説明する。図20は、本発明の実施の形態6における冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、各部品は損失により発熱し、冷却器330は、各部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が正常である場合には、時刻t2において、部品温度T0および冷却器温度T1が飽和する。先の実施の形態1で説明したとおり、冷却器330が正常であって、電力変換器310が通常動作している場合に冷却器温度T1が飽和したときの温度を冷却器正常時最大温度T0_maxと呼ぶ。
ここで、本実施の形態6では、構成部品からの熱干渉が小さくかつ冷却水による熱引きがよい位置に冷却器用温度センサ340を配置しているので、各部品の発熱の影響を受けにくく、冷却器温度の上昇がほとんどない。したがって、過熱停止閾値Tth_otを低く設定することが可能となる。
次に、冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例について、図21を参照しながら説明する。図21は、本発明の実施の形態6における冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合の、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。なお、ここでは、冷却器330の異常として、冷却器330内の冷却水が抜けてしまう場合を想定する。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1はほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は、部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。
冷却器330が異常である場合には、冷却器330が正常である場合と比較して、冷却器330の熱抵抗および熱容量が大きくなる。そのため、部品温度T0と冷却器温度T1は、図20に示す温度推移よりもゆっくりと温度上昇する。冷却器330の異常により、部品を冷却することができないため、冷却器温度T1とともに部品温度T0は上がり続ける。
時刻t3において、部品温度T0は、部品上限温度T0_limを超えてしまうため、電力変換器310が故障する虞がある。そこで、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えないようにするため、制御器350は、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1に基づいて、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御を行う。
次に、本実施の形態6における制御器350によって行われる過熱停止制御について、図22を参照しながら説明する。図22は、本発明の実施の形態6における冷却器330が異常であって、電力変換器310が通常動作している場合に電力変換器310の制御が切り替わったときの、部品温度T0と冷却器温度T1の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
時刻t0において、電力変換器310の出力は0であり、部品温度T0と冷却器温度T1は、ほぼ等しい値になる。
時刻t1において、電力変換器310は、最大出力P_maxで出力を開始する。電力変換器310が動作すると、部品は損失により発熱し、冷却器330は部品の発熱の影響を受けて温度上昇する。制御器350によって過熱停止制御が行われるまでの部品温度T0と冷却器温度T1は、図21に示す温度推移と同等の動きとなる。
時刻t4において、冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_otに達したので、制御器350は、電力変換器310の動作を停止させる過熱停止制御を行う。時刻t4以降では、部品の損失による発熱が無くなるため、部品温度T0は低下し、併せて冷却器温度T1も低下する。
このように、制御器350は、冷却器用温度センサ340から取得した冷却器温度T1が過熱停止閾値Tth_ot以上となれば、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えて、電力変換器310の動作を制御する。したがって、部品温度T0が部品上限温度T0_limを超えることを防止することができる。
以上、本実施の形態6によれば、電力変換装置の制御器は、冷却器用温度センサから取得した冷却器温度が過熱停止閾値以上となれば、電力変換器の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えるように構成されている。
このように、冷却器用温度センサによって検出される冷却器温度を用いて冷却器が異常であると判断すれば電力変換器の動作を停止させるようにしたため、部品そのものの温度部品温度とは切り離して部品の過熱保護が可能となる。その結果、部品のハイスペック化を抑制することができる。
なお、制御器350は、冷却器温度の温度変化ΔT1が過熱停止閾値ΔT1_ot以上である状態の継続する時間が、時間閾値t_ΔT1_ot以上となれば、電力変換器310の制御を、通常制御から過熱停止制御に切り替えるように構成されていてもよい。このように制御器350を構成した場合であっても、同様の効果が得られる。
なお、過熱停止閾値ΔT1_otは、予め設定される値であり、例えば、0よりも大きい値とする。また、時間閾値t_ΔT1_otは、予め設定される値であり、例えば、冷却器330の正常動作時の熱容量と熱抵抗から決まる時定数とする。
実施の形態7.
本発明の実施の形態7では、電力変換器310を構成する複数の部品を冷却器330に配置する際のレイアウトの第5の例について説明する。なお、本実施の形態7では、先の実施の形態1〜6と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1〜6と異なる点を中心に説明する。
図23は、本発明の実施の形態7における電力変換装置300の電力変換器310を構成する複数の部品の冷却器330への配置を示すレイアウト図である。
なお、本実施の形態7では、電力変換器310の構成が、先の図2に示す昇圧コンバータと先の図3に示すインバータを組み合わせた構成であることを想定しており、図23では、複数の部品として、半導体スイッチング素子311A,311B、ダイオード312A,312B、昇圧リアクトル313Aおよび平滑コンデンサ314A,315A,315Bが図示されている。
図23に示すように、冷却器330は、先の実施の形態2と同様の構成である。ただし、冷却器330のベースプレートの両面に複数の部品が分散して配置されている。具体的には、冷却器330は、複数の部品を分散して搭載する、第1の搭載面および第1の搭載面に対向する第2の搭載面を有し、冷媒が流路を上流側から下流側に流れることで第1の搭載面および第2の搭載面に分散して搭載された複数の部品を冷却するように構成されている。なお、図23では、第1の搭載面には、昇圧コンバータを構成する複数の部品が搭載され、第2の搭載面には、インバータを構成する複数の部品が搭載される場合を例示している。
冷却器用温度センサ340Aは、冷却器330の流路の上流側、具体的には、冷却器330の流入口850付近に配置されている。冷却器用温度センサ340Bは、冷却器330の流路の下流側、具体的には、冷却器330の排出口860付近に配置されている。変換器用温度センサ320Aは、半導体スイッチング素子311Aの部品温度を検出し、変換器用温度センサ320Bは、半導体スイッチング素子311Bの部品温度を検出する。
上記のような複数の電力変換器の構成を組み合わせた電力変換器310を備えた電力変換装置300に対しても、本発明が適用可能であり、先の実施の形態1〜6と同様の効果を得ることができる。また、冷却器330のベースプレートの両面に複数の部品を分散して配置した構成の電力変換装置300に対しても、本発明が適用可能であり、先の実施の形態1〜6と同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態7では、冷却器330のベースプレートの両面に1個ずつ冷却器用温度センサを配置する場合を例示したが、そのベースプレートの片側の面だけに冷却器用温度センサを配置してもよい。ベースプレートの両面に1個ずつ冷却器用温度センサを配置する場合には、冷却器330の異常を精度良く検出することができ、ベースプレートの片面に冷却器用温度センサを配置する場合には、センサの数を減らすことによる低コスト化が可能となる。
以上、本実施の形態7によれば、電力変換装置は、冷却器が電力変換器を構成する複数の部品を分散して搭載する第1の搭載面および第2の搭載面を有し、冷却器用温度センサが、冷却器の第1の搭載面および第2の搭載面の少なくとも一方に個別に配置されるように構成されている。このような構成を備えた電力変換装置300に対しても、本発明が適用可能であり、先の実施の形態1〜6と同様の効果が得られる。
以上の実施の形態1〜7において、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される半導体スイッチング素子を用いた場合、より顕著な効果が得られる。ワイドバンドギャップ半導体は、シリコン半導体と比較して高価であることが一般的であり、半導体スイッチ素子のハイスペック化を抑制することができれば、電力変換装置をより低コスト化することが可能となる。
また、以上の実施の形態1〜7では、冷却器用温度センサによって検出される冷却器温度を用いて部品を過熱から保護する場合を例示している。冷却器用温度センサ、変換器用温度センサ、構成部品の配置、過熱停止制御を行う判断方法、冷却器の冷却方式等は、様々な組合せが考えられ、これらの組合せは、各実施の形態1〜7で示した限りではない。これらを適切に組み合わせることによって、電力変換器を構成する部品が部品上限温度を超えないように部品を保護することが可能となる。
電力変換器を構成する複数の部品としては、先の実施の形態1〜7で示した半導体スイッチング素子、リアクトルおよび平滑コンデンサの他に、これらを電気的に接続する配線(例えばバスバー)、半導体スイッチング素子駆動信号を生成するマイクロコントローラ等を実装している制御基板等が考えられる。つまり、複数の部品は、半導体スイッチング素子、コンデンサ、磁性部品(例えばリアクトル)、制御基板およびバスバーの少なくとも1つを含む。複数の部品が、半導体スイッチング素子を含む場合、その半導体スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成されていることが望ましい。
また、先の実施の形態7で説明したとおり、複数の電力変換器の構成を組み合わせた電力変換器を備えて構成される電力変換装置に対しても本発明が適用可能である。このような電力変換装置に対して本発明を適用する場合であっても、冷却器用温度センサ、変換器用温度センサ、構成部品の配置、過熱停止制御を行う判断方法、冷却器の冷却方式等を適切に組み合わせることによって、電力変換装置を構成する部品が上限温度を超えないように部品を保護することが可能となる。
以上、本発明の実施例として、実施の形態1〜7について個別に説明したが、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜変形したり省略したりすることができる。