以下、実施形態の電力変換装置を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
本明細書で言う「XXに基づく」とは、特段の説明がない場合であっても「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。さらに「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
(第1の実施形態)
図1から図3を参照し、第1の実施形態の電力変換装置1について説明する。本実施形態では、電力変換装置1は、モータMを駆動するドライブシステムに適用される装置である。ただし、電力変換装置1は、ドライブシステム以外のシステムに用いられる装置でもよい。例えば、電力変換装置1は、直流電力を交流電力に変換する装置でもよく、交流電力を直流電力に変換する装置でもよい。また、電力変換装置1は、交流電力と直流電力との間で電力を変換する装置に限定されず、ある電力を周波数や電圧が異なる別の電力に変換する装置などでもよい。
<1.電力変換装置の全体構成>
図1は、第1の実施形態の電力変換装置1の全体構成の一例を示す図である。電力変換装置1は、例えば、変圧器11、開閉器12、コンバータ13、インバータ14、平滑用のコンデンサ15A,15B、初期充電回路16、および制御部(電力変換装置制御部)17を有する。
変圧器11は、外部電源である交流電源PSに電気的に接続されている。変圧器11には、交流電源PSから交流電力が供給される。変圧器11は、交流電源PSから供給された交流電力を所望の電圧に変圧するとともに、変圧した交流電力を、開閉器12を介してコンバータ13に供給する。開閉器12は、例えば、変圧器11とコンバータ13との間に設けられ、変圧器11とコンバータ13との間の電気的接続状態を切り替える。
コンバータ13は、変圧器11を介して供給される交流電力を、直流電力に変換する。コンバータ13は、例えば、3レベルコンバータであり、3相交流の各相に対して、4つのスイッチング素子21a,21b,21c,21dと、4つのフリーホイールダイオード22a,22b,22c,22dと、2つのクランプダイオード23a,23bとを有する。4つのスイッチング素子21a,21b,21c,21dは、正極Pと負極Nとの間で互いに直列に接続されている。スイッチング素子21a,21b,21c,21dは、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)であるが、これに限定されない。4つのフリーホイールダイオード22a,22b,22c,22dは、スイッチング素子21a,21b,21c,21dに対して逆並列に接続されている。第1クランプダイオード23aは、スイッチング素子21a,21bの間の接続点と、中性点Cとの間に接続されている。第2クランプダイオード23bは、スイッチング素子21c,21dの間の接続点と、中性点Cとの間に接続されている。コンバータ13は、「電力変換回路」の一例である。
インバータ14は、コンバータ13により変換された直流電力を所望の交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷の一例であるモータMに出力する。インバータ14は、例えば、3レベルインバータであり、3相交流の各相に対して、4つのスイッチング素子31a,31b,31c,31dと、4つのフリーホイールダイオード32a,32b,32c,32dと、2つのクランプダイオード33a,33bとを有する。4つのスイッチング素子31a,31b,31c,31dは、正極Pと負極Nとの間で互いに直列に接続されている。4つのフリーホイールダイオード32a,32b,32c,32dは、スイッチング素31a,31b,31c,31dに対して逆並列に接続されている。第1クランプダイオード33aは、スイッチング素子31a,31bの間の接続点と、中性点Cとの間に接続されている。第2クランプダイオード33bは、スイッチング素子31c,31dの間の接続点と、中性点Cとの間に接続されている。インバータ14は、「電力変換回路」の一例である。
なお上述したように、本明細書における「電力を変換する」とは、交流電力と直流電力との間で電力を変換する場合に限定されず、ある電力を周波数や電圧が異なる別の電力に変換するのみの場合も含む。
一方のコンデンサ(正側コンデンサ)15Aは、コンバータ13とインバータ14との間において、正極Pと中性点Cとの間に接続されている。他方のコンデンサ(負側コンデンサ)15Bは、コンバータ13とインバータ14との間において、負極Nと中性点Cとの間に接続されている。言い換えると、コンデンサ15A,15Bは、正極P、負極N、および中性点Cを介して、コンバータ13およびインバータ14に電気的に接続されている。コンデンサ15A,15Bは、コンバータ13およびインバータ14が動作する場合に、コンバータ13からインバータ14に供給される直流電力を平滑化する。
初期充電回路16は、例えば、開閉器41、変圧器42、および整流器43を有する。開閉器41は、交流電源PSに電気的に接続されている。ただし、開閉器41は、交流電源PSとは異なる電源に接続され、その電源から電力が供給されてもよい。変圧器42は、開閉器41と整流器43との間に接続されている。変圧器42は、開閉器41を介して供給された交流電力を所望の電圧に変圧するとともに、変圧した交流電力を整流器43に供給する。整流器43は、コンバータ13とインバータ14との間において、正極Pおよび負極Nに電気的に接続されている。整流器43は、変圧器42から供給された交流電力を直流電力に整流して正極Pおよび負極Nに供給する。
初期充電回路16の開閉器41は、後述する制御部17の制御によって、コンバータ13およびインバータ14の動作に先立ち閉じられる。これにより、初期充電回路16は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始前に正極Pおよび負極Nに直流電力を供給し、コンデンサ15A,15Bに対して電荷を供給する。これにより、コンデンサ15A,15Bの初期充電が行われる。コンデンサ15A,15Bの初期充電が行われると、コンバータ13およびインバータ14の動作時において正極Pおよび負極Nの電圧が安定しやすくなる。
制御部17は、電力変換装置1の全体を制御する。例えば、制御部17は、コンバータ13およびインバータ14をPWM(Pulse Width Modulation)制御することで、所望の交流電力をモータMに供給し、モータMを駆動する。また制御部17は、初期充電回路16を制御することで、コンバータ13およびインバータ14の動作開始前にコンデンサ15A,15Bの初期充電を行う。さらに本実施形態では、制御部17は、電力変換装置1に設けられた温度センサ81,82,83(後述)の検出結果に基づき、外部装置である冷却装置50の故障の有無を検知する。なおこの機能については詳しく後述する。
<2.冷却装置および電力変換装置の一部の構成>
<2.1 冷却装置の構成>
図2は、冷却装置50および冷却装置50に関係する電力変換装置1の構成の一例を示す図である。冷却装置50は、電力変換装置1を冷却する水冷式の冷却装置(いわゆる純水冷却装置)である。冷却装置50は、例えば、第1熱交換器51、第2熱交換器52、第1配管53、第2配管54、第1ポンプ55、第1流量計56、第3配管57、第2ポンプ58、第2流量計59、および制御部(冷却装置制御部)60を有する。
本実施形態では、第1配管53、第2配管54、および第1ポンプ55により、第1熱交換器51と電力変換装置1との間で冷却水(純水、第1冷却水)を循環させる第1循環系統S1が形成されている。一方で、第3配管57および第2ポンプ58により、第1熱交換器51と第2熱交換器52との間で外水(第2冷却水)を循環させる第2循環系統S2が形成されている。ここで「外水」とは、純水でない工業用水を広く意味する。
第1熱交換器51は、冷却水(第1冷却水)が流れる流路51aと、外水(第2冷却水)が流れる流路51bとを有する。第1熱交換器51では、冷却水と外水との間で熱交換が行われる。冷却水は、第1熱交換器51と、後述する電力変換装置1のヒートシンク71,72との間で循環され、電力変換装置1のヒートシンク71,72を冷却する冷却水である。一方で、外水は、第1熱交換器51と第2熱交換器52との間で循環され、電力変換装置1のヒートシンク71,72で温められた冷却水を第1熱交換器51で冷却する冷却水である。
第2熱交換器52は、例えばクーリングタワーであり、外水を大気と直接または間接的に接触させることで外水を冷却する。ただし、第2熱交換器52の構成は、上記例に限定されず、例えば送風機を伴う熱交換器などでもよい。
第1配管53は、第1熱交換器51と、電力変換装置1の第1ヒートシンク71とを繋ぎ、第1熱交換器51と第1ヒートシンク71との間で冷却水を循環させる。例えば、第1配管53は、第1配管部53aと、第2配管部53bとを有する。第1配管部53aは、第1熱交換器51の冷却水出口51cと、第1ヒートシンク71の冷却水入口71aとの間に延びており、第1熱交換器51で冷却された冷却水を第1ヒートシンク71に導く。一方で、第2配管部53bは、第1ヒートシンク71の冷却水出口71bと、第1熱交換器51の冷却水入口51dとの間に延びており、第1ヒートシンク71の内部を通ることで温められた冷却水を第1熱交換器51に導く。
第2配管54は、例えば第1配管53の途中から分岐し、第1配管53と第2ヒートシンク72とを繋ぐ。例えば、第2配管54は、第1配管部54aと、第2配管部54bとを有する。第1配管部54aは、第1配管53の第1配管部53aと、第2ヒートシンク72の冷却水入口72aとの間に延びており、第1配管53を流れる冷却水の一部を第2ヒートシンク72に導く。一方で、第2配管部54bは、第2ヒートシンク72の冷却水出口72bと、第1配管53の第2配管部53bとの間に延びており、第2ヒートシンク72の内部を通ることで温められた冷却水を第1配管53の第2配管部53bに導く。
第1ポンプ55は、第1配管53に設けられている。第1ポンプ55が駆動されると、冷却水は、第1配管53内および第2配管54内を流れ、第1熱交換器51とヒートシンク71,72との間で冷却水が循環される。
第1流量計56は、第1配管53に設けられている。第1流量計56は、第1配管53内を流れる冷却水の流量を検出する。第1流量計56の検出結果は、冷却装置50の制御部60に出力される。
第3配管57は、第1熱交換器51と第2熱交換器52とを繋ぎ、第1熱交換器51と第2熱交換器52との間で外水を循環させる。例えば、第3配管57は、第1配管部57aと、第2配管部57bとを有する。第1配管部57aは、第1熱交換器51の外水出口51eと、第2熱交換器52の外水入口52aとの間に延びており、第1熱交換器51で温められた外水を第2熱交換器52に導く。一方で、第2配管部57bは、第2熱交換器52の外水出口52bと、第1熱交換器51の外水入口51fとの間に延びており、第2熱交換器52の内部を通ることで冷やされた外水を第1熱交換器51に導く。
第2ポンプ58は、第3配管57に設けられている。第2ポンプ58が駆動されると、外水は、第3配管57内を流れ、第1熱交換器51と第2熱交換器52との間で外水が循環される。
第2流量計59は、第3配管57に設けられている。第2流量計59は、第3配管57内を流れる外水の流量を検出する。第2流量計59の検出結果は、冷却装置50の制御部60に出力される。
制御部60は、冷却装置50の全体を制御する。例えば、制御部60は、第1ポンプ55および第2ポンプ58を駆動させ、冷却水および外水を循環させることで電力変換装置1を冷却する。
また制御部60は、第1流量計56および第2流量計59の検出結果に基づき、冷却装置50の状態を監視する。例えば、制御部60は、第1ポンプ55を駆動させる制御信号を出力しているにも関わらず第1流量計56で検出される流量が閾値未満である場合や、逆に第1ポンプ55を駆動させる制御信号を出力していないにも関わらず第1流量計56で検出される流量が閾値以上である場合に、冷却装置50に故障が生じたことを検知する。同様に、制御部60は、第2ポンプ58を駆動させる制御信号を出力しているにも関わらず第2流量計59で検出される流量が閾値未満である場合や、逆に第2ポンプ58を駆動させる制御信号を出力していないにも関わらず第2流量計59で検出される流量が閾値以上である場合に、冷却装置50に故障が生じたことを検知する。制御部60は、冷却装置50に故障が生じたことが検知された場合、冷却装置50に故障が生じたことを示す故障信号を電力変換装置1の制御部17に出力する。
<2.2 冷却装置に関係する電力変換装置の構成>
次に、冷却装置50に関係する電力変換装置1の構成について説明する。
図2に示すように、電力変換装置1は、例えば、第1ヒートシンク71、第2ヒートシンク72、第1温度センサ81、第2温度センサ82、および第3温度センサ83を有する。
第1ヒートシンク71には、コンバータ13またはインバータ14に含まれる第1部品14aが熱的に接続されている。第1部品14aは、例えば、グリースのような熱伝導率が高い部材を間に介在させて第1ヒートシンク71に取り付けられている。第1部品14aは、例えば、コンバータ13またはインバータ14に含まれるスイッチング素子21a,21b,21c,21d,31a,31b,31c,31d、フリーホイールダイオード22a,22b,22c,22d,32a,32b,32c,32d、およびクランプダイオード23a,23b,33a,33bのうち1つ以上の部品と、その部品を収容したケースを含むモジュール部品である。
第2ヒートシンク72は、第1ヒートシンク71とは別体のヒートシンクである。第2ヒートシンク72には、初期充電回路16に含まれる第2部品16aが熱的に接続されている。第2部品16aは、例えば、グリースのような熱伝導率が高い部材を間に介在させて第2ヒートシンク72に取り付けられている。第2部品16aは、例えば、初期充電回路16の整流器43に含まれる半導体素子(例えばダイオード)や変圧器42に含まれる抵抗素子などのうち1つ以上の部品と、その部品を収容したケースを含むモジュール部品である。
第1温度センサ81は、第2ヒートシンク72の温度を検出する。例えば、第1温度センサ81は、第2ヒートシンク72のなかで第2部品16aの近傍に取り付けられ、第2部品16aによって温められた第2ヒートシンク72の温度を検出する。別の観点で見ると、第1温度センサ81は、第2ヒートシンク72において、冷却水入口72aよりも第2部品16aの近くに位置する。なおこれに代えて、第1温度センサ81は、第2部品16aと接するように設けられ、第2部品16aの温度を検出してもよい。すなわち、第1温度センサ81は、冷却水の温度ではなく、第2ヒートシンク72の温度または第2部品16aの温度を直接に検出する。第1温度センサ81の検出結果は、電力変換装置1の制御部17に出力される。
第2温度センサ82は、冷却装置50から第2ヒートシンク72に向けて流れる冷却水の温度を検出する。例えば、第2温度センサ82は、第1配管53の第1配管部53aに取り付けられ、第1配管部53a内を流れる冷却水の温度を検出する。本実施形態では、第2温度センサ82は、第1配管53の第1配管部53aのなかで、第2配管54が分岐する位置よりも上流側に設けられている。このため本実施形態では、第2温度センサ82は、冷却装置50から第1および第2ヒートシンク71,72に向けて流れる冷却水の温度を検出可能である。
なおこれに代えて、第2温度センサ82は、第2ヒートシンク72のなかで冷却水入口72aの近傍に設けられ、第2ヒートシンク72の温度を検出してもよい。すなわち、第2温度センサ82は、第2ヒートシンク72において第2部品16aよりも第2ヒートシンク72の冷却水入口72aの近くに配置され、第2ヒートシンク72の冷却水入口72aの近くの位置で第2ヒートシンク72の温度を検出してもよい。第2温度センサ82の検出結果は、電力変換装置1の制御部17に出力される。
第3温度センサ83は、第1ヒートシンク71の温度を検出する。例えば、第3温度センサ83は、第1ヒートシンク71のなかで第1部品14aの近傍に取り付けられ、第1部品14aによって温められた第1ヒートシンク71の温度を検出する。別の観点で見ると、第3温度センサ83は、第1ヒートシンク71において、冷却水入口71aよりも第1部品14aの近くに位置する。これに代えて、第3温度センサ83は、第1部品14aと接するように設けられ、第1部品14aの温度を検出してもよい。すなわち、第3温度センサ83は、冷却水の温度ではなく、第1ヒートシンク71の温度または第1部品14aの温度を直接に検出する。第3温度センサ83の検出結果は、電力変換装置1の制御部17に出力される。
<3.電力変換装置の制御部による冷却装置の故障の検知>
次に、電力変換装置1の制御部17による冷却装置50の故障の検知について説明する。本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、少なくとも第1温度センサ81の検出結果に基づき、初期充電回路16による初期充電の開始からコンバータ13およびインバータ14の動作開始前までの期間における冷却装置50の状態を監視し、冷却装置50の故障の有無を検知する。
本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、冷却装置50から故障信号が出力された場合に冷却装置50に故障が生じたことを検知するとともに、冷却装置50から故障信号が出力されていない場合でも、第1温度センサ81の検出結果に基づいて得られる値が所定条件を満たす場合に冷却装置50に故障が生じたことを検知する。
本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で、第1温度センサ81により検出された温度T1と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分に基づき、冷却装置50の状態を監視する。なお本明細書で「初期充電回路16による初期充電が行われている状態」とは、初期充電が開始されてからコンデンサ15A,15Bが満充電状態になるまでの期間に限定されず、コンデンサ15A,15Bが満充電状態に達した後の状態(例えば、コンデンサ15A,15Bが満充電状態に達した後であって、コンバータ13およびインバータ14の動作が開始されるまでの待機状態)も含む。
詳しく述べると、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で、第1温度センサ81により検出された温度T1と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分(T1-T2)(以下、説明の便宜上「温度差(T1-T2)」と称する)を、所定の周期で算出する。そして、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T1-T2)と、不図示の記憶部に記憶された「初期充電時の温度差上側閾値」とを所定の周期で比較する。初期充電時の温度差上側閾値は、「第1温度差閾値」の一例である。
そして、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に故障が生じたことを検知する。本実施形態では、温度差(T1-T2)は、「第1温度センサ81の検出結果に基づいて得られる値」の一例である。また温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えることは、「第1温度センサ81の検出結果に基づいて得られる値が所定条件を満たす場合」の一例である。
本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に第1種類の故障が生じたことを検知する。「第1種類の故障」とは、冷却装置50の第1循環系統S1に関する故障である。例えば、第1種類の故障は、第1ポンプ55の故障、または冷却装置50の制御部60のなかで第1ポンプ55を制御する機能部の故障である。別の観点では、第1種類の故障は、第1循環系統S1における冷却水の循環が停止または正常よりも滞留する状態になる故障である。
一方で、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で、第1温度センサ81により検出された温度T1と、不図示の記憶部に記憶された「初期充電時の温度閾値」とを所定の周期で比較する。初期充電時の温度閾値は、「第1温度閾値」の一例である。
また、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で、温度差(T1-T2)と、不図示の記憶部に記憶された「初期充電時の温度差下側閾値」とを所定の周期で比較する。初期充電時の温度差下側閾値は、「第2温度差閾値」の一例である。初期充電時の温度差下側閾値は、初期充電時の温度差上側閾値よりも低い値である。初期充電時の温度差下側閾値は、冷却装置50が正常であれば温度差(T1-T2)が所定値以上になることに対して、温度差(T1-T2)が上記所定値を下回ることを判定するための閾値である。
そして、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で、第1温度センサ81により検出された温度T1が初期充電時の温度閾値を超え、且つ、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差下側閾値を下回る場合に、冷却装置50に第2種類の故障が生じたことを検知する。「第2種類の故障」とは、例えば、冷却装置50の第2循環系統S2に関する故障である。例えば、第2種類の故障は、第2ポンプ58の故障、または冷却装置50の制御部60のなかで第2ポンプ58を制御する機能部の故障である。別の観点では、第2種類の故障は、第2循環系統S2における外水の循環が停止または正常よりも滞留する状態になる故障である。なお、第2種類の故障の判定は、第1温度センサ81により検出された温度T1が初期充電時の温度閾値を超えるか否かに代えて、第2温度センサ82により検出された温度T2が初期充電時の温度閾値を超えるか否かに基づいて行われてもよい。
また本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、第3温度センサ83により検出された温度T3と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分(T3-T2)(以下、説明の便宜上「温度差(T3-T2)」と称する)を、所定の周期で算出する。そして、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T3-T2)と、不図示の記憶部に記憶された「通常運転時の温度差上側閾値」とを所定の周期で比較する。通常運転時の温度差上側閾値は、「第3温度差閾値」の一例である。
そして、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T3-T2)が通常運転時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に故障が生じたことを検知する。本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T3-T2)が通常運転時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に第1種類の故障が生じたことを検知する。
ここで、通常運転時の温度差上側閾値は、例えば、初期充電時の温度差上側閾値よりも大きな値である。言い換えると、初期充電時の温度差上側閾値は、通常運転時の温度差上側閾値よりも小さな値(故障が生じていることがより検知されやすい値)に設定されている。なお、初期充電時の温度差上側閾値は、通常運転時の温度差上側閾値と同じ値でもよい。
一方で、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、第3温度センサ83により検出された温度T3と、不図示の記憶部に記憶された「通常運転時の温度閾値」とを所定の周期で比較する。通常運転時の温度閾値は、「第2温度閾値」の一例である。
また、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、温度差(T3-T2)と、不図示の記憶部に記憶された「通常運転時の温度差下側閾値」とを所定の周期で比較する。通常運転時の温度差下側閾値は、「第4温度差閾値」の一例である。通常運転時の温度差下側閾値は、通常運転時の温度差上側閾値よりも低い値である。通常運転時の温度差下側閾値は、冷却装置50が正常であれば温度差(T3-T2)が所定値以上になることに対して、温度差(T3-T2)が上記所定値を下回ることを判定するための閾値である。
そして、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、第3温度センサ83により検出された温度T3が通常運転時の温度閾値を超え、且つ、温度差(T3-T2)が通常運転時の温度差下側閾値を下回る場合に、冷却装置50に第2種類の故障が生じたことを検知する。なお、第2種類の故障の判定は、第3温度センサ83により検出された温度T3が通常運転時の温度閾値を超えるか否かに代えて、第2温度センサ82により検出された温度T2が通常運転時の温度閾値を超えるか否かに基づいて行われてもよい。また、通常運転時の温度差下側閾値は、初期充電時の温度差下側閾値と同じでもよく、異なってもよい。
<4.電力変換装置の制御部による冷却装置の故障の検知フロー>
次に、電力変換装置1の制御部17による冷却装置50の故障の検知フローについて説明する。図3は、電力変換装置1の制御部17による冷却装置50の故障の検知フローの一例を示すフローチャートである。なお図3は、電力変換装置1の初期充電開始からコンバータ13およびインバータ14の動作開始前までの期間について示すものである。
まず、制御部17は、コンバータ13およびインバータ14を動作させる前に、初期充電回路16を用いてコンデンサ15A,15Bの初期充電を開始する(S101)。次に、制御部17は、冷却装置50の制御部60から故障信号が出力されたか否かを判定する(S103)。制御部17は、冷却装置50の制御部60から故障信号が出力された場合(S103:YES)、ステップS113に進む。
制御部17は、冷却装置50の制御部60から故障信号が出力されていない場合(S103:NO)、第1温度センサ81の検出結果と第2温度センサ82の検出結果とに基づき、温度差(T1-T2)を算出する。そして、制御部17は、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えたか否かを判定する(S105)。制御部17は、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えた場合(S105:YES)、ステップS113に進む。
制御部17は、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えていない場合(S105:NO)、第1温度センサ81により検出された温度T1が初期充電時の温度閾値を超え、且つ、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差下側閾値を下回るか否かを判定する(S107)。制御部17は、第1温度センサ81により検出された温度T1が初期充電時の温度閾値を超え、且つ、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差下側閾値を下回る場合(S107:YES)、ステップS113に進む。
制御部17は、第1温度センサ81により検出された温度T1が初期充電時の温度閾値を超えない、または、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差下側閾値を下回らない場合、(S107:NO)、冷却装置50に故障が生じていない(冷却装置50が正常である)と判定する(S109)。この場合、制御部17は、コンバータ13およびインバータ14による電力変換動作が開始されたか否かを判定する(S111)。
制御部17は、コンバータ13およびインバータ14による電力変換動作が開始された場合(S111:YES)、本フローの処理を終了し、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後のフローに移行する。一方で、制御部17は、コンバータ13およびインバータ14による電力変換動作が開始されていない場合(S111:NO)、ステップS103に戻る。そして、制御部17は、ステップS103~S111の処理を所定の周期で繰り返す。
一方で、制御部17は、冷却装置50の制御部60から故障信号が出力された場合(S103:YES)、温度差(T1-T2)が初期充電時の温度差上側閾値を超えている場合(S105:YES)、または、第1温度センサ81により検出された温度T1が初期充電時の温度閾値を超え、且つ、温度差(T1-T2)が温度差下側閾値を下回る場合(S107:YES)、冷却装置50に故障が生じていると判定する(S113)。
この場合、制御部17は、初期充電回路16の開閉器41を開放し、電力変換装置1の初期充電を停止させる(S115)。次に、制御部17は、冷却装置50に故障が生じていることを、電力変換装置1のユーザに報知する。この報知としては、制御部17は、電力変換装置1の表示装置に所定の表示を行うこと、電力変換装置1のブザーにより警告音を出力すること、および電力変換装置1と通信可能な上位装置に所定の信号を出力することなどのうち1つ以上を行う。そして、制御部17は、本フローの処理を終了する。
<5.利点>
ここで第1比較例として、本実施形態のような制御部17を有しない電力変換装置を考える。第1比較例の電力変換装置は、冷却装置50から故障信号が出力された場合に、冷却装置50に故障が生じたことを検知する。ただし、冷却装置50の制御部60などに故障が生じた場合、冷却装置50から故障信号が出力されずに冷却装置50が停止することがある。
ここで、電力変換装置において、主発熱部品であるコンバータ13またはインバータ14に含まれる部品14aが取り付けられる第1ヒートシンク71に温度センサを取り付け、この温度センサの検出結果に基づいて冷却装置50の故障を検知することも考えられる。しかしながら、この場合、初期充電回路16による初期充電の開始からコンバータ13およびインバータ14の動作開始前までの間に冷却装置50が故障し、故障信号が出力されないまま冷却装置50が停止してしまうと、上記温度センサの検出結果からでは異常が検知できないまま、初期充電回路16に含まれる部品16aの温度上昇が続き、電力変換装置に不具合が生じてしまう可能性がある。また、部品16aが過熱された状態で何らかの理由で冷却装置50が再稼働すると、過熱された部品16aと低温の冷却水との温度差に起因して部品16aがヒートショックを起こす可能性がある。
また第2比較例として、第1配管53に温度センサを取り付け、第1配管53の温度(すなわち冷却水の温度)に基づいて冷却装置50の故障を検出する構成について考える。この場合、故障信号を出さずに冷却装置50が故障しても、冷却水の温度上昇に基づいて冷却装置50の故障を検知することができる場合がある。しかしながら、冷却水の温度がある程度上昇するまでには時間がかかり、その間に初期充電回路16の部品16aの温度が大きく上昇し、保護が間に合わない可能性がある。
そこで本実施形態では、電力変換装置1は、初期充電回路16に含まれる第2部品16aが熱的に接続された第2ヒートシンク72と、第2ヒートシンク72または第2部品16aの温度を検出する第1温度センサ81と、少なくとも第1温度センサ81の検出結果に基づき、初期充電回路16による初期充電の開始からコンバータ13およびインバータ14の動作開始前までの期間における冷却装置50の状態を監視する制御部17とを備える。このような構成によれば、初期充電回路16による初期充電の開始からコンバータ13およびインバータ14の動作開始前までの間に冷却装置50が故障し、故障信号が出力されないまま冷却装置50が停止してしまった場合でも、冷却装置50の故障を早い段階で検知することができる。これにより、例えば初期充電回路16に含まれる部品16aの過熱を抑制することができる。その結果、電力変換装置1の信頼性をさらに高めることができる。
本実施形態では、電力変換装置1は、冷却装置50から第2ヒートシンク72に向けて流れる冷却水の温度、または第2部品16aよりも第2ヒートシンク72の冷却水入口72aの近くで第2ヒートシンク72の温度を検出する第2温度センサ82をさらに備える。電力変換装置1の制御部17は、少なくとも第1温度センサ81により検出された温度T1と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分に基づき、冷却装置50の状態を監視する。このような構成によれば、冷却装置50から冷却水が正常に循環していない場合などにおいて、冷却装置50の故障をより高い精度で検知することができる。これにより、電力変換装置1の信頼性をさらに高めることができる。
本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で第1温度センサ81により検出された温度T1と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分が初期充電時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に第1種類の故障が生じたことを検知する。一方で、電力変換装置1の制御部17は、初期充電回路16による初期充電が行われている状態で、第1温度センサ81(または第2温度センサ82)により検出された温度が初期充電時の温度閾値を超え、且つ、第1温度センサ81により検出された温度T1と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分が通常運転時の温度差下側閾値を下回る場合に、冷却装置50に第2種類の故障が生じたことを検知する。このような構成によれば、温度センサ81,82の検出結果に基づき、冷却装置50の故障箇所の候補を絞り込むことができる。これにより、冷却装置50の復旧までの負担を小さくすることができる場合がある。
本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、第3温度センサ83により検出された温度T3と第2温度センサ82により検出された温度T2との差分が通常運転時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に故障が生じたことを検知する。そして、上述した初期充電時の温度差上側閾値は、通常運転時の温度差上側閾値よりも小さい値である。このような構成によれば、例えば初期充電の完了後であってコンバータ13およびインバータ14の動作開始前の待機状態など、初期充電回路16に含まれる第2部品16aの発熱量が比較的小さくなる間に冷却装置50が故障した場合であっても、冷却装置50の故障を検知しやすくなる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の電力変換装置1について説明する。本実施形態では、冷却装置50から第1ヒートシンク71に向かう冷却水の温度を検出する第4温度センサ84が設けられた点で第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
図4は、第2の実施形態において、冷却装置50に関係する電力変換装置1の構成の一例を示す図である。電力変換装置1は、例えば、第1ヒートシンク71、第2ヒートシンク72、第1温度センサ81、第2温度センサ82、第3温度センサ83、および第4温度センサ84を有する。
第4温度センサ84は、冷却装置50から第1ヒートシンク71に向けて流れる冷却水の温度を検出する。例えば、第2温度センサ82は、第1配管53の第1配管部53aに取り付けられ、第1配管部53a内を流れる冷却水の温度を検出する。本実施形態では、第4温度センサ84は、第1配管53の第1配管部53aのなかで、第2配管54が分岐する位置よりも下流側に設けられている。なおこれに代えて、第4温度センサ84は、第1ヒートシンク71のなかで冷却水入口71aの近傍に設けられ、第1ヒートシンク71の温度を検出してもよい。すなわち、第4温度センサ84は、第1ヒートシンク71において第1部品14aよりも第1ヒートシンク71の冷却水入口71aの近くに配置され、第1ヒートシンク71の冷却水入口71aの近くの位置で第1ヒートシンク71の温度を検出してもよい。第4温度センサ84の検出結果は、電力変換装置1の制御部17に出力される。
本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、第3温度センサ83により検出された温度T3と第4温度センサ84により検出された温度T4との差分(以下、説明の便宜上「温度差(T3-T4)」と称する)を、所定の周期で算出する。そして、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T3-T4)と、通常運転時の温度差上側閾値とを所定の周期で比較する。そして、電力変換装置1の制御部17は、温度差(T3-T4)が通常運転時の温度差上側閾値を超えた場合に、冷却装置50に第1種類の故障が生じたことを検知する。
ここで、第1の実施形態と同様に、通常運転時の温度差上側閾値は、例えば、初期充電時の温度差上側閾値よりも大きな値である。言い換えると、初期充電時の温度差上側閾値は、通常運転時の温度差上側閾値よりも小さな値(故障が生じていることがより検知されやすい値)に設定されている。なお、初期充電時の温度差上側閾値は、通常運転時の温度差上側閾値と同じ値でもよい。
また本実施形態では、電力変換装置1の制御部17は、コンバータ13およびインバータ14の動作開始後の期間において、第3温度センサ83により検出された温度T3が通常運転時の温度閾値を超え、且つ、温度差(T3-T4)が通常運転時の温度差下側閾値を下回る場合に、冷却装置50に第2種類の故障が生じたことを検知する。なお、第2種類の故障の判定は、第3温度センサ83により検出された温度T3が通常運転時の温度閾値を超えるか否かに代えて、第4温度センサ84により検出された温度T4が通常運転時の温度閾値を超えるか否かに基づいて行われてもよい。
このような構成の電力変換装置1によっても、第1の実施形態と同様に、電力変換装置1における不具合の発生を抑制することができる。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。例えば、上述した実施形態における電力変換装置1の制御部17の全部または一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現される。ただし、制御部17の全部または一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなハードウェアプロセッサが不図示の記憶部に格納されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現されるソフトウェア機能部でもよく、ハードウェアとソフトウェア機能部との協働によって実現されてもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電力変換装置は、少なくとも第1温度センサの検出結果に基づき、初期充電回路による初期充電の開始から電力変換回路の動作開始前までの期間における冷却装置の状態を監視する制御部を持つことにより、電力変換装置における不具合の発生を抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。