JP2019007529A - 作業車用トランスミッション及びこれを備えた作業車 - Google Patents

作業車用トランスミッション及びこれを備えた作業車 Download PDF

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Abstract

【課題】多段式の変速装置に対する操作系を容易に構成できるようにする。【解決手段】作業車用トランスミッションは、平行に配置された3本の伝動軸51〜53と、4段に変速する第1変速機構54と、第1変速機構54からの動力を2段に変速する第2変速機構55とを有する多段式の変速装置32を備え、第1変速機構54は、4組の変速ギアセット56〜59と4個の変速用多板クラッチ60〜63とを有し、第2変速機構55は、2組の減速ギアセット64,65と2個の減速用多板クラッチ66,67とを有し、各変速用多板クラッチ60〜63は、3本の伝動軸51〜53のうちの単一の変速軸51の軸上に隣接して配置され、各減速用多板クラッチ66,67は、3本の軸のうちの単一の減速軸53の軸上に隣接して配置され、4個の変速用多板クラッチ60〜63と2個の減速用多板クラッチ66,67とが、それらの径方向で隣接している。【選択図】図2

Description

本発明は、軸心方向が車体の前後方向に設定された状態で平行に配置された3本の伝動軸と、入力された動力を複数段に変速する第1変速機構と、前記第1変速機構による変速後の動力を前記第1変速機構よりも少数の複数段に変速する第2変速機構とを有する多段式の変速装置を備えた作業車用トランスミッション及びこれを備えた作業車に関する。
上記のような作業車用トランスミッションとしては、4個の多板クラッチ(油圧クラッチ)の断続操作によって1〜4速に変速可能な主変速装置と、2個の多板クラッチ(油圧クラッチ)の断続操作によって高速と低速とに変速可能な副変速装置とを備えることにより、全体として8段に変速可能に構成されたものがある。そして、この作業車用トランスミッションにおいては、全体として8段の変速を可能にする主変速装置と副変速装置とが、トランスミッションケースの前部側と後部側とに前後方向に分散して配置されている(例えば特許文献1参照)。
特開2001−105912号公報(段落番号0015、0026、図3〜5)
特許文献1に記載の構成では、主変速装置と副変速装置とが前後方向に分散して配置されていることから、8段の変速を可能にする主変速装置と副変速装置とに対する操作系も前後方向に分散して構成されることになる。そのため、主変速装置と副変速装置とに対する操作系が複雑化して操作系の構成に手間を要することになる。
つまり、多段式の変速装置に対する操作系を容易に構成できるようにすることが望まれている。
上記の課題を解決するための手段として、
本発明に係る作業車用トランスミッションは、軸心方向が車体の前後方向に設定された状態で平行に配置された3本の伝動軸と、入力された動力を複数段に変速する第1変速機構と、前記第1変速機構による変速後の動力を前記第1変速機構よりも少数の複数段に変速する第2変速機構とを有する多段式の変速装置を備え、
前記第1変速機構は、複数の変速ギアセットと、複数の前記変速ギアセットに対する伝動を断続する複数の変速用多板クラッチとを有し、
前記第2変速機構は、複数の減速ギアセットと、複数の前記減速ギアセットに対する伝動を断続する複数の減速用多板クラッチとを有し、
複数の前記変速用多板クラッチは、3本の前記伝動軸のうちの単一の変速軸の軸上に前後方向に隣接して配置され、
複数の前記減速用多板クラッチは、3本の前記軸のうちの単一の減速軸の軸上に前後方向に隣接して配置され、
複数の前記変速用多板クラッチと複数の前記減速用多板クラッチとが、それらの径方向で隣接するように並列に配置されている。
この手段によると、複数の変速用多板クラッチと複数の減速用多板クラッチとが、それらの径方向又は前後方向で隣接するように纏めた状態で配置されていることから、各変速用多板クラッチと各減速用多板クラッチとのそれぞれに対する操作系も纏めた状態で容易に構成することができる。
又、この手段によると、第2変速機構が有する減速用多板クラッチの数量は、第2変速機構の変速段数が第1変速機構の変速段数よりも少ないことから、第1変速機構が有する変速用多板クラッチの数量よりも少なくなる。そして、各減速用多板クラッチにおいては、減速ギアセットによる減速後のトルクが大きい動力を断続することから、減速前のトルクが小さい動力を断続する各変速用多板クラッチよりも負荷条件が厳しくなる。そのため、各減速用多板クラッチは、各変速用多板クラッチよりもクラッチ板の装備枚数が多くなり、それらの軸心方向(前後方向)の長さが長くなる。
この点を考慮して、この変速装置においては、数量は多いが軸心方向の長さが短くなる複数の変速用多板クラッチが変速軸の軸上に前後方向に隣接して配置されている。又、数量は少ないが軸心方向の長さが長くなる複数の減速用多板クラッチが減速軸の軸上に前後方向に隣接して配置されている。
これにより、例えば、軸心方向の長さが短くなる複数の変速用多板クラッチが、変速軸の軸上と減速軸の軸上とに分散して、各軸上において前後方向に隣接して配置され、かつ、軸心方向の長さが長くなる複数の減速用多板クラッチが、いくつかの変速用多板クラッチとともに減速軸の軸上に前後方向に隣接して配置される場合に比較して、変速装置の軸心方向(前後方向)の長さを短くすることができる。
その結果、この変速装置を備える作業車用トランスミッションの前後長さを短くしながら、変速装置の各多板クラッチに対する操作系を容易に構成することができる。
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記伝動軸として、前記変速軸と前記減速軸の間に配置された中間軸を備えている。
この手段によると、変速軸から中間軸に伝動する複数の変速ギアセットは、それぞれ、変速軸の軸上に配置された第1変速ギアと、中間軸の軸上に配置された第2変速ギアによって構成することができる。又、中間軸から減速軸に伝動する複数の減速ギアセットは、それぞれ、中間軸の軸上に配置された第1減速ギアと、減速軸の軸上に配置された第2減速ギアによって構成することができる。
つまり、複数の変速ギアセット及び複数の減速ギアセットのそれぞれを、最少のギア数量(2枚)で構成することができる。その結果、部品点数の削減による変速装置のコンパクト化及び構成の簡素化などを図ることができる。
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
3本の前記伝動軸は、中間軸を上部頂点とする略二等辺三角形を形成するように配置されている。
この手段によると、変速装置においては、複数の変速用多板クラッチ又は複数の減速用多板クラッチが軸上に配置されることで重くなる変速軸と減速軸とが、変速装置の下部において左右に並んで配置されることになる。又、変速用多板クラッチ及び減速用多板クラッチが軸上に配置されないことで軽くなる中間軸が、変速軸と減速軸との中間で、かつ、変速軸及び減速軸よりも上方の位置に配置されることになる。
つまり、変速装置を、低重心で左右バランスの向上が図られた状態で作業車用トランスミッションに備えることができ、これにより、作業車用トランスミッションの低重心化及び左右バランスの向上を図れることから、作業車用トランスミッションの安定性を向上させることができる。
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
複数の前記変速用多板クラッチ及び複数の前記減速用多板クラッチは、それらの径方向の大きさが同じ大きさに設定されている。
この手段によると、複数の変速用多板クラッチ及び複数の減速用多板クラッチに使用されるクラッチ板(ドライブプレートとドリブンプレート)、プレッシャプレート、及び、ピストン、などを、それらの径方向の大きさが全ての多板クラッチにおいて共通する共通部品にすることができる。その結果、部品管理の容易化などを図ることができる。
又、例えば、複数の変速用多板クラッチ及び複数の減速用多板クラッチの断続操作を電子油圧制御によって制御する場合には、ピストンなどが共通部品であることにより、各変速用多板クラッチ及び各減速用多板クラッチに対する初期圧を同じにすることで、各多板クラッチにおけるクラッチミートのタイミングを同じにすることができる。その結果、各変速用多板クラッチ及び各減速用多板クラッチの断続操作を電子油圧制御によって適正に制御する場合に必要な各制御プログラムの作成が容易になる。
上記の課題を解決するための手段として、
本発明に係る作業車は、前記作業車用トランスミッションを備えている。
この手段によると、前述した作業車用トランスミッションを備えることにより、作業車の前後長さが長くなる作業車の大型化を抑制することができ、又、作業車の安定性を向上させることができる。
トラクタの左側面図である。 トラクタの伝動系を示す作業車用トランスミッションなどの概略図である。 トラクタの伝動系を示す作業車用トランスミッションの横断平面図である。 主変速装置における第1変速機構の構成を示す要部の横断平面図である。 主変速装置の第2変速機構及びクリープ変速装置の構成を示す要部の横断平面図である。 副変速装置における第1変速軸側の構成を示す要部の縦断左側面図である。 副変速装置における第2変速軸側の構成を示す要部の縦断左側面図である。 伝動軸の配置などを示す作業車用トランスミッションの縦断正面図である。 バルブユニット取付部及び収納室の形状などを示す作業車用トランスミッションの縦断正面図である。 作業車用トランスミッションにおけるバルブユニット取付部の斜視図である。 図9におけるXII−XII断面図(バルブユニット取付部の縦断左側面図)である。 バルブユニットの右側面図である。 トランスミッションケースをクリープ変速装置の配置箇所にて前後に分割した状態を示す要部の縦断左側面図である。 別実施形態のクリープ変速装置を備えたトランスミッションケースをクリープ変速装置の配置箇所にて前後に分割した状態を示す要部の縦断左側面図である。
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明にかかる作業車用トランスミッションを、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、図1、図11に記載された符号Fの矢印が指し示す方向がトラクタの前側であり、符号Uの矢印が指し示す方向がトラクタの上側である。
図1に示すように、本実施形態に例示されたトラクタは、車体の前半部に配置された原動部1、車体の後半部に配置された搭乗式の運転部2と作業車用トランスミッション(以下、トランスミッションと称する)3、トランスミッション3の左側に隣接して配置された燃料タンク4、原動部1の左右に駆動可能かつ操舵可能に配置された左右の前輪5、トランスミッション3の左右に駆動可能に配置された左右の後輪6、及び、トランスミッション3の後端部に昇降揺動可能に取り付けられた作業装置連結用のリンク機構7、などを備えている。
原動部1は、車体の前部側に配置された前部フレーム8、前部フレーム8の後部側に支持されたエンジン9、及び、エンジン9などを覆う揺動開閉式のボンネット10、などを備えている。エンジン9は、後方のトランスミッション3に向けて後向きに突出する出力軸9A(図2参照)を有している。
運転部2は、トランスミッション3に防振支持されたキャビン11、キャビン11における内部の前側に配置された前論操舵用のステアリングホイール12、及び、キャビン11における内部の後側に配置された運転座席13、などを備えている。
図1〜3に示すように、トランスミッション3は、車体の後部フレームとオイルタンクとを兼ねるトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)14、エンジン9からの動力が入力される入力軸15、前輪駆動用の動力を出力する前輪用の第1出力軸16、後輪駆動用の動力を出力する後輪用の左右の第2出力軸17、作業用の動力を出力するPTO軸18、入力軸15に入力された動力を第1出力軸16と左右の第2出力軸17とに伝える走行伝動系19、及び、入力軸15に入力された動力をPTO軸18に伝える作業伝動系20、などを備えている。第1出力軸16及びPTO軸18は、それらの軸心方向が車体の前後方向に設定されている。左右の第2出力軸17は、それらの軸心方向が車体の左右方向に設定されている。
T/Mケース14は、エンジン9の後端にボルト連結された第1ケース21、第1ケース21の後端にボルト連結された第2ケース22、第2ケース22の後端にボルト連結された第3ケース23、第3ケース23の後端にボルト連結された第4ケース24、第2ケース22の下端にボルト連結された第5ケース25、及び、第4ケース24の左右両側端にボルト連結された左右の第6ケース26、などを備えている。つまり、T/Mケース14は、7つのケース21〜26に分けることができる7分割構造に構成されている。第2ケース22は、その内部フランジ22Aにボルト連結された前カバー27、及び、第2ケース22の後端にボルト連結された第1支持壁28、などを有している。第2ケース22には、その内部空間を前側空間と後側空間とに分ける隔壁22Bが一体形成されている。第3ケース23は、その内部の連結部23Aにボルト連結された第2支持壁29などを有している。第3ケース23の後端には、その内部空間と第4ケース24の内部空間とを仕切る仕切壁23Bが一体形成されている。第4ケース24は、その後端にボルト連結された後カバー30などを備えている。
図2〜9に示すように、走行伝動系19は、入力軸15に入力された動力を前進走行用の動力と後進走行用の動力とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置31、前後進切換装置31からの走行用の動力を8段に変速する電子油圧制御式の主変速装置32、主変速装置32からの走行用の動力を2段に変速するクリープ変速装置33、クリープ変速装置33からの走行用の動力を3段に変速する副変速装置34、副変速装置34からの走行用の動力を前後に振り分ける分配軸35、分配軸35にて振り分けられた走行用の動力を前輪駆動用に減速する減速ギアセット36、減速ギアセット36から第1出力軸16への伝動状態を切り換える電子油圧制御式の駆動切換ユニット37、左右の後輪6の差動を許容しながら分配軸35からの走行用の動力を左右の後輪6に振り分ける後輪用差動装置38、後輪用差動装置38からの走行用の動力を後輪駆動用に減速する左右の遊星ギア式減速装置39、及び、後輪用差動装置38の左右の差動軸38Aに制動作用する左右のサイドブレーキ40、などを備えている。
後輪用差動装置38は、その作動状態を差動許容状態と差動停止状態とに切り換える油圧式の差動切換機構38Bを備えている。左右の遊星ギア式減速装置39は、それらによる減速後の動力を左右の第2出力軸17を介して左右の後輪6に伝える。
図1に示すように、第1出力軸16からの前輪駆動用の動力は、第1出力軸16と一体回転する外部伝動軸41、及び、左右の前輪5の差動を許容しながら外部伝動軸41からの前輪駆動用の動力を左右の前輪5に振り分ける前輪用差動装置(図示せず)、などを介して左右の前輪5に伝えられる。前輪用差動装置は、その作動状態を差動許容状態と差動停止状態とに切り換える油圧式の差動切換機構を備えている。
図2〜3、図8に示すように、作業伝動系20は、入力軸15と一体回転する状態で入力軸15と同一軸心上に配置された作業動力伝達用の上手側中継軸42と下手側中継軸43、下手側中継軸43からPTO軸18への伝動状態を切り換える作業動力切換装置44、などを備えている。
図2〜3、図9に示すように、前後進切換装置31は、入力軸15の軸上に配置された前進用多板クラッチ45と後進用多板クラッチ46、入力軸15の下方に入力軸15と平行に配置された逆回転軸47、前進用多板クラッチ45を介して伝えられた動力を前進用の動力として出力する前進用出力ギア48、後進用多板クラッチ46を介して伝えられた動力を逆回転軸47に伝える逆転ギアセット49、及び、逆回転軸47の逆回転動力を後進用の動力として出力する後進用出力ギア50、などを備えている。つまり、前後進切換装置31には、前輪用と後進用の2個の多板クラッチ45,46の断続操作によって伝動状態が切り換わる多板クラッチ式の伝動切換装置が採用されている。
前後進切換装置31は、入力軸15の前端側及び逆回転軸47の前端部が前カバー27に支持され、かつ、入力軸15の後端部及び逆回転軸47の後端部が第2ケース22の隔壁22Bに支持されることにより、第2ケース22の内部における前側空間に配置されている。
図2〜5、図8〜9に示すように、主変速装置32は、入力用の第1伝動軸51、中継用の第2伝動軸52、出力用の第3伝動軸53、第1伝動軸51に入力された動力を4段に変速する第1変速機構54、及び、第1変速機構54による変速後の動力を高低2段に変速する第2変速機構55、などを有する8段変速式に構成されている。第1変速機構54は、異なる変速比で第1伝動軸51から第2伝動軸52に伝動する4組の変速ギアセット56〜59、及び、対応する変速ギアセット56〜59への伝動を断続する4個の変速用多板クラッチ60〜63、などを有している。第2変速機構55は、異なる変速比で第2伝動軸52から第3伝動軸53に伝動する2組の減速ギアセット64,65、及び、対応する減速ギアセット64,65からの動力を断続する2個の減速用多板クラッチ66,67、などを有している。つまり、主変速装置32には、4個の変速用多板クラッチ60〜63及び2個の減速用多板クラッチ66,67の断続操作によって伝動状態が切り換わる多板クラッチ式の伝動切換装置が採用されている。
主変速装置32は、各伝動軸51〜53の前端部が第2ケース22の隔壁22Bに支持され、かつ、各伝動軸51〜53の後端部が第1支持壁28に支持されることにより、第2ケース22の内部における後側空間に配置されている。
主変速装置32において、3本の伝動軸51〜53は、それらの軸心方向が車体の前後方向に設定された状態で平行に配置されている。第2伝動軸52には、作業伝動系20の上手側中継軸42に相対回転可能に外嵌された筒軸が採用されている。第3伝動軸53は、副変速装置34における入力用の第1変速軸68と同一軸心上に前後に隣接して配置されている。
図2〜3、図5に示すように、クリープ変速装置33は、主変速装置32の第3伝動軸53がクリープ変速装置33に対する上手側伝動軸となり、かつ、副変速装置34の第1変速軸68がクリープ変速装置33に対する下手側伝動軸となるように、主変速装置32の第3伝動軸53と副変速装置34の第1変速軸68との間に配置されている。
クリープ変速装置33は、主変速装置32の第3伝動軸53からの動力を減速する減速機構69、及び、主変速装置32の第3伝動軸53から副変速装置34の第1変速軸68への伝動状態を、第3伝動軸53からの動力が第1変速軸68に直に伝わる等速状態と減速機構69を経由して伝わる減速状態とに切り換えるシンクロメッシュ式の切換機構70、などを有している。つまり、クリープ変速装置33には、シンクロメッシュ式の切換機構70の切り換え操作によって伝動状態が切り換わるシンクロメッシュ式の伝動切換装置が採用されている。
減速機構69には、主変速装置32の第3伝動軸53からの動力を、変速比の大きい2組の減速ギアセット71,72などを介して超低速に減速するクリープ変速機構が採用されている。
図2〜3、図6〜7に示すように、副変速装置34は、前述した第1変速軸68、第1変速軸68と平行に配置された第2変速軸73、異なる変速比で第1変速軸68から第2変速軸73に伝動する3組の変速ギアセット74〜76、第1変速軸68から高速用の減速ギアセット72への伝動を断続するシンクロメッシュ式の第1切換機構77、中速用と低速用の各変速ギアセット75,76から第2変速軸73への伝動を断続するシンクロメッシュ式の第2切換機構78、及び、第2変速軸73に伝えられた変速後の動力を分配軸35に出力する出力ギアセット79、などを有している。つまり、副変速装置34には、2個のシンクロメッシュ式の切換機構70の切り換え操作によって伝動状態が切り換わるシンクロメッシュ式の伝動切換装置が採用されている。
副変速装置34は、第1変速軸68の前端部及び第2変速軸73の前端部が第2支持壁29に支持され、かつ、第1変速軸68の後端部及び第2変速軸73の後端部が第3ケース23の仕切壁23Bに支持されることにより、第3ケース23の内部空間に配置されている。
図2、図8〜9に示すように、駆動切換ユニット37は、第1出力軸16の真上に第1出力軸16と平行に配置された前輪用伝動軸80、前輪駆動用の第1駆動切換装置81、及び、前輪増速用の第2駆動切換装置82、などを有している。駆動切換ユニット37は、前輪用伝動軸80の前端部が第2ケース22の隔壁22Bに支持され、かつ、前輪用伝動軸80の後端部が第1支持壁28されるとともに、第1出力軸16が第5ケース25に支持されることにより、第2ケース22の内部における後側空間と第5ケース25の内部空間とにわたって配置されている。
第1駆動切換装置81は、減速ギアセット36からの前輪駆動用の動力を等速駆動用に減速する減速ギアセット83、及び、減速ギアセット83への伝動を断続する等速伝動用の多板クラッチ84、などを有している。減速ギアセット83は、左右の前輪5が左右の後輪6と同じ周速で駆動されるように前輪駆動用の動力を減速して前輪用伝動軸80から第1出力軸16に伝える。等速伝動用の多板クラッチ84は、左右の前輪5を左右の後輪6と同じ周速で駆動させる伝動状態と、左右の前輪5を左右の後輪6による推進力で従動させる遮断状態とに切り換わる。つまり、第1駆動切換装置81には、等速伝動用の多板クラッチ84の断続操作によって伝動状態が切り換わる多板クラッチ式の伝動切換装置が採用されている。
第2駆動切換装置82は、減速ギアセット36からの前輪駆動用の動力を増速駆動用に増速する増速ギアセット85、及び、増速ギアセット85への伝動を断続する増速伝動用の多板クラッチ86、などを有している。増速ギアセット85は、左右の前輪5が左右の後輪6の約2倍の周速で駆動されるように前輪駆動用の動力を増速して前輪用伝動軸80から第1出力軸16に伝える。増速伝動用の多板クラッチ84は、左右の前輪5を左右の後輪6の約2倍の周速で駆動させる伝動状態と、左右の前輪5を左右の後輪6による推進力で従動させる遮断状態とに切り換わる。つまり、第2駆動切換装置82には、増速伝動用の多板クラッチ84の断続操作によって伝動状態が切り換わる多板クラッチ式の伝動切換装置が採用されている。
駆動切換ユニット37において、等速伝動用の多板クラッチ84及び増速伝動用の多板クラッチ86は、等速伝動用の多板クラッチ84が前輪用伝動軸80の前部側に支持され、かつ、増速伝動用の多板クラッチ86が前輪用伝動軸80の後部側に支持された状態で、前輪用伝動軸80の軸上に前後に並べて配置されている。
図2〜3に示すように、作業動力切換装置44は、下手側中継軸43からの作業用の動力を断続する油圧式のPTOクラッチ87、PTOクラッチ87を介して伝えられた動力を高低2段に変速するコンスタントメッシュ式の第1変速機構88、及び、第1変速機構88による変速後の動力を高低2段に変速するコンスタントメッシュ式の第2変速機構89、などを有している。そして、PTOクラッチ87には多板クラッチが採用されている。つまり、作業動力切換装置44には、作業用の多板クラッチ(PTOクラッチ)87の断続操作、及び、2個のコンスタントメッシュ式の変速機構88,89の切り換え操作によって伝動状態が切り換わる多板クラッチ式でコンスタントメッシュ式の伝動切換装置が採用されている。作業動力切換装置44は、後カバー30などによって支持されることにより、第4ケース24の内部空間に配置されている。
以上の構成により、トランスミッション3は、多板クラッチ式に構成された複数の伝動切換装置として、前輪用と後進用の2個の多板クラッチ45,46を有する前後進切換装置31、4個の変速用多板クラッチ60〜63と2個の減速用多板クラッチ66,67とを有する主変速装置32、等速伝動用の多板クラッチ84を有する第1駆動切換装置81、増速伝動用の多板クラッチ84を有する第2駆動切換装置82、及び、作業用の多板クラッチ87を有する作業動力切換装置44、を備えている。
図2〜5、図8に示すように、主変速装置32において、4個の変速用多板クラッチ60〜63は、平行に配置された3本の伝動軸51〜53のうちの伝動方向上手側に配置された第1伝動軸51の軸上に前後方向に並べて配置されている。これにより、第1伝動軸51は、4個の変速用多板クラッチ60〜63を支持する変速軸として機能する。2個の減速用多板クラッチ66,67は、平行に配置された3本の伝動軸51〜53のうちの伝動方向下手側に配置された第3伝動軸53の軸上に前後方向に並べて配置されている。これにより、第3伝動軸53は、2個の減速用多板クラッチ66,67を支持する減速軸として機能する。そして、主変速装置32においては、4個の変速用多板クラッチ60〜63と2個の減速用多板クラッチ66,67とが、それらの径方向で隣接するように並列に配置されている。
つまり、主変速装置32においては、4個の変速用多板クラッチ60〜63と2個の減速用多板クラッチ66,67とが、車体の前後方向において同じ位置に配置されている。これにより、例えば、4個の変速用多板クラッチ60〜63と2個の減速用多板クラッチ66,67とが、車体の前後方向において異なる位置に位置ずれして配置される場合に比較して、主変速装置32の前後長さを短くすることができ、この主変速装置32を備えたトランスミッション3の前後長さを短くすることができる。その結果、トランスミッション3の前後長さが長くなることに起因してトラクタの全長が長くなるトラクタの大型化を防止することができる。
図2、図8に示すように、主変速装置32において、平行に配置された3本の伝動軸51〜53のうちの第2伝動軸52は、中間軸として第1伝動軸(変速軸)51と第3伝動軸(減速軸)53の間に配置されている。
これにより、第1伝動軸51から第2伝動軸52に伝動する4組の変速ギアセット56〜59は、それぞれ、第1伝動軸51の軸上に配置された第1変速ギア56A〜59Aと、第2伝動軸52の軸上に配置された第2変速ギア56B〜59Bによって構成することができる。又、第2伝動軸52から第3伝動軸53に伝動する2組の減速ギアセット64,65は、それぞれ、第2伝動軸52の軸上に配置された第1減速ギア64A,65Aと、第3伝動軸53の軸上に配置された第2減速ギア64B,65Bによって構成することができる。
つまり、4組の変速ギアセット56〜59及び2組の減速ギアセット64,65のそれぞれを、最少のギア数量(2枚)で構成することができる。その結果、部品点数の削減による主変速装置32のコンパクト化及び構成の簡素化などを図ることができる。
又、この主変速装置32においては、4組の変速ギアセット56〜59のうちの2速用ギアセット57の第2変速ギア56Bが、2組の減速ギアセット64,65のうちの高速用の減速ギアセット65の第1減速ギア65Aを兼ねている。これにより、部品点数の削減による主変速装置32のコンパクト化及び構成の簡素化などを更に図ることができる。
図8に示すように、主変速装置32において、平行に配置された3本の伝動軸51〜53は、車体の前後方向視において、第2伝動軸(中間軸)52を上部頂点とする略二等辺三角形を形成するように配置されている。
これにより、主変速装置32においては、4個の変速用多板クラッチ60〜63又は2個の減速用多板クラッチ66,67が軸上に配置されることで重くなる第1伝動軸51と第3伝動軸53とが、主変速装置32の下部において左右に並んで配置されることになる。又、変速用多板クラッチ60〜63及び減速用多板クラッチ66,67が軸上に配置されないことで軽くなる第2伝動軸52が、第1伝動軸51と第3伝動軸53との中間で、かつ、第1伝動軸51及び第3伝動軸53よりも上方の位置に配置されることになる。
つまり、主変速装置32を、低重心で左右バランスの向上が図られた状態で第2ケース22の内部空間に配置することができる。その結果、この主変速装置32を含むトランスミッション3を備えたトラクタの安定性を向上させることができる。
図8に示すように、主変速装置32において、平行に配置された3本の伝動軸51〜53は、それらのうちの変速用多板クラッチ60〜63及び減速用多板クラッチ66,67が軸上に配置されない第2伝動軸(中間軸)52が、変速用多板クラッチ60〜63と減速用多板クラッチ66,67との間に形成された略三角形状の上下一対の空間90,91のうちの上側の空間90に入り込んでいる。
これにより、主変速装置32の上下長さを短くすることができるとともに、この主変速装置32を備えたトランスミッション3の上下長さを短くすることができる。その結果、トランスミッション3の上方に配置される運転部2の高さ位置を低くすることができ、トラクタの車高を低くすることができる。
又、前述したように、第2伝動軸52は、作業伝動系20の上手側中継軸42に相対回転可能に外嵌された筒軸であることから、上手側中継軸42も、変速用多板クラッチ60〜63と減速用多板クラッチ66,67との間に形成された上側の空間90に入り込むことになる。これにより、上手側中継軸42を通すための専用の配置空間を確保することなく、上手側中継軸42を第2ケース22の内部空間に配置することができる。
図8に示すように、3本の伝動軸51〜53のうち、第1伝動軸51及び第2伝動軸52は、それらの軸心が、前輪用伝動軸80及び第1出力軸16の少なくともいずれか一方の軸心と第2伝動軸52の軸心とを結ぶ線を基準にして略左右対称の位置関係になるように、左右に振り分けて配置されている。
図8に示すように、駆動切換ユニット37において、等速伝動用の多板クラッチ84及び増速伝動用の多板クラッチ86は、それらの上部側が、変速用多板クラッチ60〜63と減速用多板クラッチ66,67との間に形成された下側の空間91に入り込む状態で主変速装置32の下方に配置されている。
これにより、主変速装置32と駆動切換ユニット37とが内部空間に配置される第2ケース22の上下長さを短くすることができ、それらを備えたトランスミッション3の上下長さを短くすることができる。その結果、T/Mケース14の上方に配置される運転部2の高さ位置を低くすることができ、トラクタの車高を低くすることができる。
又、等速伝動用の多板クラッチ84と増速伝動用の多板クラッチ86とが主変速装置32の下方に配置されることにより、それらの多板クラッチ84,86が主変速装置32の上方に配置される場合に比較して、主変速装置32と駆動切換ユニット37とを備えたトランスミッション3の低重心化を図ることができる。その結果、このトランスミッション3を備えたトラクタの安定性を向上させることができる。
図2〜5、図8に示すように、前述した5基の伝動切換装置31,32,44,81,82のうち、走行伝動系19に備えられた前後進切換装置31、主変速装置32、第1駆動切換装置81、及び、第2駆動切換装置82は、走行用の伝動切換装置として第2ケース22の内部空間に配置されている。作業伝動系20に備えられた作業動力切換装置44は、作業用の伝動切換装置として第4ケース24の内部空間に配置されている。
つまり、このトランスミッション3においては、電子油圧制御によって断続操作される多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86を有する走行用の各伝動切換装置31,32,81,82が第2ケース22の内部空間に纏めて配置されていることから、走行用の各伝動切換装置31,32,81,82に対する油圧操作系を、第2ケース22において纏めた状態で容易に構成することができる。
走行用の伝動切換装置として備えられた前後進切換装置31、主変速装置32、第1駆動切換装置81、及び、第2駆動切換装置82は、それらの全てに備えられた多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86の径方向の大きさが同じ大きさに設定されている。
これにより、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86に使用されるクラッチ板(ドライブプレートとドリブンプレート)92、プレッシャプレート93、及び、ピストン94、などを、それらの径方向の大きさが全ての多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86において共通する共通部品にすることができる。その結果、部品管理の容易化などを図ることができる。
又、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86の断続操作を電子油圧制御によって制御する上においては、ピストン94などが共通部品であることにより、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86に対する初期圧を同じにすることで、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86におけるクラッチミートのタイミングを同じにすることができる。その結果、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86の断続操作を電子油圧制御によって適正に制御するために必要な各制御プログラムの作成が容易になる。
走行伝動系19において、主変速装置32の第2変速機構55に備えられた低速側の減速用多板クラッチ66は、主変速装置32における低速用の減速ギアセット64による減速後で、かつ、前輪駆動用と後輪駆動用とに分岐される前のトルクが大きい走行用の動力を断続することから、前後進切換装置31と主変速装置32と第1駆動切換装置81と第2駆動切換装置82とのそれぞれに備えられた他の多板クラッチ45,46,60〜63,67,84,86よりも負荷条件が厳しくなっている。
前後進切換装置31、主変速装置32、第1駆動切換装置81、及び、第2駆動切換装置82は、それらの全てに備えられた多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86の径方向の大きさが、負荷条件が最も厳しくなる低速側の減速用多板クラッチ66に適した大きい大きさで同じ大きさに設定されている。
これにより、低速側の減速用多板クラッチ66よりも負荷条件の面で余裕がある他の多板クラッチ45,46,60〜63,67,84,86においては、それらにおけるクラッチ板92の装備枚数を減らすことができ、それらの軸心方向(車体前後方向)の長さを短くすることができる。そして、軸心方向の長さを短くすることができる多板クラッチ45,46,60〜63,67,84,86を有する前後進切換装置31、主変速装置32、第1駆動切換装置81、及び、第2駆動切換装置82においては、それらの車体前後方向の長さを短くすることができ、それらを備えたトランスミッション3の前後長さを短くすることができる。その結果、トランスミッション3の前後長さが長くなることに起因してトラクタの全長が長くなるトラクタの大型化を防止することができる。
又、上記の構成では、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86の径方向の大きさが大きくなることにより、変速用多板クラッチ60〜63と減速用多板クラッチ66,67との間に形成される略三角形状の上下一対の空間90,91も大きくなる。これにより、前述したように上側の空間90に入り込む第2伝動軸52及び上手側中継軸42を、より深く上側の空間90に入り込ませることができる。又、前述したように下側の空間91に入り込む等速伝動用の多板クラッチ84及び増速伝動用の多板クラッチ86の上部側を、より深く下側の空間91に入り込ませることができる。
その結果、各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86の径方向の大きさを、負荷条件が最も厳しくなる低速側の減速用多板クラッチ66に適した大きい大きさで同じ大きさに設定しながらも、それらを備えたトランスミッション3の上下長さが長くなる不具合の発生を抑制することができる。
ところで、主変速装置32において、低速側の減速用多板クラッチ66及び高速側の減速用多板クラッチ67は、低速用の減速ギアセット64又は高速用の減速ギアセット65による減速後のトルクが大きい走行用の動力を断続することから、減速前のトルクが小さい走行用の動力を断続する各変速用多板クラッチ60〜63よりも負荷条件が厳しくなる。そのため、上記のように主変速装置32に備えられた多板クラッチ60〜63,66,67の径方向の大きさが同じ大きさに設定されると、各減速用多板クラッチ66は、各変速用多板クラッチ60〜63よりもクラッチ板92の装備枚数が多くなり、それらの軸心方向(車体前後方向)の長さが長くなる。
この点を考慮して、主変速装置32においては、軸心方向の長さが短くなる4個の変速用多板クラッチ60〜63が第1伝動軸51の軸上に前後方向に隣接して配置されている。又、軸心方向の長さが長くなる2個の減速用多板クラッチ66,67が第3伝動軸53の軸上に前後方向に隣接して配置されている。
これにより、例えば、軸心方向の長さが短くなる4個の変速用多板クラッチ60〜63のうちの2個が第1伝動軸51の軸上に前後方向に隣接して配置され、かつ、残りの2個が軸心方向の長さが長くなる2個の減速用多板クラッチ66,67とともに第3伝動軸53の軸上に前後方向に隣接して配置される場合に比較して、主変速装置32の前後長さを短くすることができる。その結果、この主変速装置32を備えたトランスミッション3の前後長さを短くすることができ、このトランスミッション3を備えたトラクタにおいては、その全長が長くなるトラクタの大型化を防止することができる。
図4〜5に示すように、前述したように大径化が図られた各多板クラッチ45,46,60〜63,66,67,84,86において、ピストン94は、その全体が大径化されるのではなく、クラッチ板92を押圧する押圧部94Aのみが拡径された段付き形状に形成されている。
これにより、ピストン94の全体を大径化した場合に、ピストン94の容積が大きくなることに起因して生じるピストン94の応答性の低下を防止することができる。又、ピストン94の容積が大きくなることに起因して、ピストン94の回転時に発生する遠心力が大きくなることを防止することができ、これにより、その遠心力に打ち勝つためのバネ力を要する復帰バネ95として、バネ力の弱い小径のものを採用することができる。
図2〜5に示すように、前後進切換装置31においては、前後に隣接する前進用多板クラッチ45と後進用多板クラッチ46とが単一のクラッチハウジング96を共用している。主変速装置32においては、4個の変速用多板クラッチ60〜63のうちの前後に隣接する1速用多板クラッチ60と2速用多板クラッチ61とが単一のクラッチハウジング97を共用し、又、前後に隣接する3速用多板クラッチ62と4速用多板クラッチ63とが単一のクラッチハウジング98を共用している。そして、前後に隣接する2個の減速用多板クラッチ66,67が単一のクラッチハウジング99を共用している。
これにより、前後に隣接する多板クラッチ45,46,60〜63,66,67がクラッチハウジング97〜99を共用することによる前後進切換装置31及び主変速装置32の前後方向でのコンパクト化、並びに、部品点数の削減による組み付け性の向上などを図ることができる。
前後進切換装置31、主変速装置32、第1駆動切換装置81、及び、第2駆動切換装置82は、それらのクラッチハウジング96〜99とクラッチハブ100〜103とのそれぞれがクラッチ板92の増設を許容する長さを有している。
これにより、トランスミッション3の大型化を招くことなく、トランスミッション3に備えられた前後進切換装置31、主変速装置32、第1駆動切換装置81、及び、第2駆動切換装置82のそれぞれを、例えば馬力の大きいエンジン9が搭載されることによって負荷条件が厳しくなる他のトラクタなどにも、クラッチ板92の増設によって容易に対応させることができる。つまり、このトランスミッション3を、仕様の異なる他のトラクタなどにも採用することができる汎用性の高いものにすることができる。
図2に示すように、駆動切換ユニット37において、第1駆動切換装置81は、前輪用伝動軸80の軸上に配置された減速ギアセット83の第1減速ギア83A、及び、等速伝動用の多板クラッチ84、などが前輪用伝動軸80とユニット化されている。第2駆動切換装置82は、前輪用伝動軸80の軸上に配置された増速ギアセット85の第1増速ギア85A、及び、増速伝動用の多板クラッチ84、などがユニット化されている。
つまり、駆動切換ユニット37においては、第1駆動切換装置81と第2駆動切換装置82とが、第1出力軸16の軸上に配置された減速ギアセット83の第2減速ギア83Bと増速ギアセット85の第2増速ギア85Bとを除いた状態で個別にユニット化されている。
これにより、この駆動切換ユニット37においては、第1駆動切換装置81と第2駆動切換装置82との間に増速ギアセット85を配置することができ、第1駆動切換装置81と第2駆動切換装置82とが一体的にユニット化された場合のように、増速ギアセット85を第2駆動切換装置82の後方に配置する必要がなくなる。
その結果、この増速ギアセット85と、第1駆動切換装置81よりも車体前側に配置されている減速ギアセット83との離間距離を短くすることができ、減速ギアセット83の第2減速ギア83Bと増速ギアセット85の第2増速ギア85Bとが軸上に配置される第1出力軸16の前後長さ、及び、この第1出力軸16を支持する第5ケース25の前後長さを短くすることができる。これにより、それらを備えるトランスミッション3の軽量化などを図ることができる。
図2に示すように、駆動切換ユニット37は、上記のようにユニット化された第2駆動切換装置82を前輪用伝動軸80に対して着脱可能に備えている。
これにより、前輪用伝動軸80に対してユニット化された第2駆動切換装置82を着脱させる簡単な作業を行うことにより、駆動切換ユニット37を、第1駆動切換装置81のみを備えることによって二輪駆動状態と四輪駆動状態とに切り換え可能な標準仕様と、第1駆動切換装置81と第2駆動切換装置82とを備えることによって二輪駆動状態と四輪駆動状態と前輪増速状態とに切り換え可能な前輪増速仕様とに、容易に仕様変更することができる。その結果、このトランスミッション3の汎用性を高めることができる。
図2に示すように、第1出力軸16は、その軸上に第2減速ギア83Bと第2増速ギア85Bとが一体回転する状態で配置されることにより、第2駆動切換装置82が装着されない標準仕様(未装着仕様)と、第2駆動切換装置82が装着された前輪増速仕様(装着仕様)とのそれぞれにおいて使用可能に構成されている。
これにより、駆動切換ユニット37を標準仕様と前輪増速仕様とに仕様変更する場合に、その仕様変更に応じて第1出力軸16を交換する必要がなくなる。その結果、駆動切換ユニット37の仕様変更を容易にすることができる。
図示は省略するが、このトラクタは、運転部2に備えられた前後進切替レバー、主変速レバー、前輪駆動選択スイッチ、及び、デフロックペダル、などの操作に基づいて、前後進切り換え指令、変速指令、及び、前輪駆動切り換え指令、などの各種の制御指令を出力する電子制御ユニットを備えている。
図2〜3、図8に示すように、このトラクタにおいて、前後進切換装置31、主変速装置32、駆動切換ユニット37、後輪用差動装置38、及び、前輪用差動装置などは、電子制御ユニットの制御作動によって電子油圧制御される油圧機器である。そして、これらの油圧機器のうち、前後進切換装置31、主変速装置32、駆動切換ユニット37、及び、後輪用差動装置38、などがT/Mケース14の内部に備えられている。
図2〜3、図9に示すように、トランスミッション3は、T/Mケース14の内部に貯留されたオイルを前後進切換装置31などの各油圧機器に向けて圧送するポンプユニット104、及び、前後進切換装置31などの各油圧機器に対するオイルの流れを制御するバルブユニット105、などを備えている。
ポンプユニット104及びバルブユニット105は、これらがT/Mケース14の上端部に配置された場合には、走行時の振動に起因して、トランスミッション3に防振支持されたキャビン11と接触する虞があることから、この接触を回避するために、T/Mケース14の右側部に配置されている。そして、T/Mケース14の右側部は、燃料タンク4が隣接していない外部に向けて開放された横側部であることから、ポンプユニット104及びバルブユニット105に対するメンテナンスが行い易くなる。
図2〜3、図9〜10に示すように、T/Mケース14は、その右外側からポンプユニット104が取り付けられるポンプユニット取付部106と、T/Mケース14の右外側からバルブユニット105が取り付けられるバルブユニット取付部107とを有している。ポンプユニット取付部106は、T/Mケース14における第3ケース23の右側部から右外方に向けて膨出している。バルブユニット取付部107は、T/Mケース14における第2ケース22の右側部に形成されている。
図2〜3に示すように、ポンプユニット104は、ポンプユニット取付部106の前端に取り付けられた二連式の第1油圧ポンプ104Aと、ポンプユニット取付部106の後端に取り付けられた第2油圧ポンプ104Bとを有している。第1油圧ポンプ104A及び第2油圧ポンプ104Bは、作業伝動系20からポンプ駆動用のギアセット108を介して伝えられた動力によって駆動される。ポンプ駆動用のギアセット108は、作業伝動系20の上手側中継軸42と下手側中継軸43とを連動連結するカップリングを兼ねる第1ギア108A、中継用の第2ギア108B、及び、出力用の第3ギア108C、などを有している。
図3、図9、図11〜12に示すように、バルブユニット105は、バルブユニット取付部107に取り付けられるベースプレート110、及び、複数の電磁バルブを有する第1バルブブロック111と第2バルブブロック112、などを有している。
第1バルブブロック111は、複数の電磁バルブとして、前進用多板クラッチ45に対するオイルの流れを切り換える前進用の電磁オンオフバルブ113、後進用多板クラッチ46に対するオイルの流れを切り換える後進用の電磁オンオフバルブ114、1速用多板クラッチ60に対するオイルの流れを切り換える1速用の電磁オンオフバルブ115、2速用多板クラッチ61に対するオイルの流れを切り換える2速用の電磁オンオフバルブ116、3速用多板クラッチ62に対するオイルの流れを切り換える3速用の電磁オンオフバルブ117、4速用多板クラッチ63に対するオイルの流れを切り換える4速用の電磁オンオフバルブ118、等速伝動用の多板クラッチ84に対するオイルの流れを切り換える等速伝動用の電磁オンオフバルブ119、増速伝動用の多板クラッチ86に対するオイルの流れを切り換える増速伝動用の電磁オンオフバルブ120、後輪用差動装置38の差動切換機構38Bに対するオイルの流れを切り換える後輪差動用の電磁オンオフバルブ121、及び、前輪用差動装置の差動切換機構に対するオイルの流れを切り換える前輪差動用の電磁オンオフバルブ122を有している。
第2バルブブロック112は、複数の電磁バルブとして、前進用多板クラッチ45及び後進用多板クラッチ46に対するオイルの流れを連続制御する前後進用の電磁比例バルブ123、2個の減速用多板クラッチ66,67のうちの低速側の減速用多板クラッチ66に対するオイルの流れを連続制御する低速用の電磁比例バルブ124、及び、2個の減速用多板クラッチ66,67のうちの高速側の減速用多板クラッチ67に対するオイルの流れを連続制御する高速用の電磁比例バルブ125を有している。
図示は省略するが、ベースプレート110、第1バルブブロック111、及び、第2バルブブロック112には、前後進切換装置31、主変速装置32、及び、駆動切換ユニット37などの電子油圧制御に関する複数の内部油路が形成されている。
図9〜11に示すように、バルブユニット取付部107には、ベースプレート110との間に第1バルブブロック用の収納室126を区画形成する凹部107Aが形成されている。第1バルブブロック111は、ベースプレート110においてバルブユニット取付部107の凹部107Aとの間に収納室126を形成する収納室形成面110Aに組み付けられている。第2バルブブロック112は、ベースプレート110における収納室形成面110Aとは反対側の外面110Bに組み付けられている。
これにより、バルブユニット105は、T/Mケース14のバルブユニット取付部107に取り付けられた状態では、10個の電磁オンオフバルブ113〜122を有する第1バルブブロック111が、T/Mケース14の右側部においてT/Mケース14の内部空間とは別に形成された収納室126に収納されるように構成されている。又、3個の電磁比例バルブ123〜125を有する第2バルブブロック112が、T/Mケース14の右側部における収納室126よりも横外側の位置に配置されるように構成されている。
上記の構成により、T/Mケース14の内部に貯留されたオイルに含まれている鉄粉などが、各電磁オンオフバルブ113〜122及び各電磁比例バルブ123〜125の励磁により、バルブユニット105に向けて吸い寄せられることを阻止することができる。その結果、その吸い寄せに起因して、T/Mケース14の内部のオイルに含まれている鉄粉などが、バルブユニット105の内部に入り込んで、各電磁オンオフバルブ113〜122及び各電磁比例バルブ123〜125のいずれかに噛み込む虞を回避することができる。
又、第1バルブブロック111をT/Mケース14の内部空間に配置する場合のように、第1バルブブロック111をT/Mケース14の内部空間に入り込ませるための開口をバルブユニット取付部107に形成する必要がないことから、その開口を形成することに起因したT/Mケース14における強度の低下を防止することができる。
そして、オイル漏れが生じる虞の高い電磁オンオフバルブ113〜122を有する第1バルブブロック111を収納室126に収納し、オイル漏れが生じる虞の低い電磁比例バルブ123〜125を有する第2バルブブロック112をT/Mケース14の外部に配置することにより、オイルの外部への漏れ出しを防止しながら、T/Mケース14に形成する収納室用の凹部107Aを狭くすることができ、T/Mケース14の内部空間を広くすることができる。その結果、T/Mケース14の内部空間に配置される走行伝動系19及び作業伝動系20などの配置設定及び組み付けなどが行い易くなる。
バルブユニット105は、T/Mケース14のバルブユニット取付部107に取り付けられた状態では、少なくとも第1バルブブロック111の上端部が、T/Mケース14の内部に貯留されたオイルのオイル面の高さ位置よりも高い位置に位置するように、その取り付け高さ位置が設定されている。
図3、図9〜11に示すように、バルブユニット取付部107は、凹部107Aにおける第1バルブブロック111よりも車体上側の位置に、第1バルブブロック111からの余剰オイルをT/Mケース14の内部に戻す7つの戻り油路107Bが形成されている。
これにより、第1バルブブロック111の各電磁オンオフバルブ113〜122から漏れ出たオイルを、潤滑オイルとして収納室126における第1バルブブロック111よりも車体上側の位置まで貯留することができる。そして、この潤滑オイルのオイル面が収納室126の戻り油路形成箇所に達した場合には、戻り油路形成箇所に達した潤滑オイルを余剰オイルとして各戻り油路107BからT/Mケース14の内部に戻すことができる。又、トラクタが大きく傾くことなどに起因して、T/Mケース14の内部に貯留されたオイルが、このオイルに含まれている鉄粉などとともに、各戻り油路107Bから収納室126に流れ込む不具合を生じ難くすることができる。
図9〜11に示すように、バルブユニット取付部107においては、7つの戻り油路107Bが上下2段に分けて形成されている。これにより、全ての戻り油路107Bを同じ高さ位置に形成する場合に比較して、T/Mケース14の内部に貯留されたオイルが、このオイルに含まれている鉄粉などとともに、各戻り油路107Bから収納室126に流れ込む不具合を生じ難くすることができる。
上下2段の戻り油路107Bは、上段に3つの戻り油路107Bが形成され、下段に4つの戻り油路107Bが形成されることにより、上段の戻り油路107Bによる開口面積が下段の戻り油路107Bによる開口面積よりも狭くなるように形成されている。
これは、戻り油路107Bが上下2段に分けて形成されている場合、余剰オイルの多くが下段の戻り油路107BからT/Mケース14の内部に戻るようになり、上段の戻り油路107Bは、各電磁オンオフバルブ113〜122から漏れ出るオイル量が多いときなどにおいて補助的に使用されることを考慮したものであり、これにより、補助的に使用される上段の戻り油路107Bによる開口面積を不必要に広くすることに起因したT/Mケース14における強度の低下を防止することができる。
図3、図9、図11に示すように、各戻り油路107Bにはオイルフィルタ127が備えられている。これにより、T/Mケース14の内部に貯留されたオイルが、各戻り油路107Bから収納室126に流れ込むようになったとしても、このオイルに含まれている鉄粉などが収納室126に流れ込むことを防止することができる。又、前述したように、7つの戻り油路107Bが上下2段に分けて形成されていることにより、下段の戻り油路107Bに備えられたオイルフィルタ127において目詰まりが生じた場合には、収納室126の余剰オイルを上段の戻り油路107BからT/Mケース14の内部に戻すことができる。
図9〜11に示すように、バルブユニット取付部107において、凹部107Aは、第1バルブブロック111が収納される下側凹入部分107aと、各戻り油路107Bを介してT/Mケース14の内部に連通される上側凹入部分107bとを有している。上側凹入部分107bは、下側凹入部分107aよりも浅い凹入深さで下側凹入部分107aよりも狭く形成されている。
これにより、例えば、第1バルブブロック111が収納されない上側凹入部分107bが、下側凹入部分107aと同じ凹入深さや同じ広さを有するように形成される場合に比較して、T/Mケース14の内部空間を広くすることができる。その結果、T/Mケース14の内部空間に配置される走行伝動系19及び作業伝動系20などの配置設定及び組み付けなどが行い易くなる。
図示は省略するが、トランスミッション3の入力軸15には、前カバー27に支持された入力軸15の前部と前進用多板クラッチ45とにわたる前進用油路、及び、前カバー27に支持された入力軸15の前部と後進用多板クラッチ46とにわたる後進用油路、などが形成されている。駆動切換ユニット37の前輪用伝動軸80には、第1支持壁28に支持された前輪用伝動軸80の後端部と等速伝動用の多板クラッチ84とにわたる等速用油路、及び、第1支持壁28に支持された前輪用伝動軸80の後端部と増速伝動用の多板クラッチ84とにわたる増速用油路、などが形成されている。
図4〜5、図8〜11に示すように、主変速装置32において、3本の伝動軸51〜53は、第2伝動軸(中間軸)52の下端が第1伝動軸(変速軸)51の上端及び第3伝動軸(減速軸)53の上端よりも車体上側に位置するように、又、第1伝動軸51の上端が第3伝動軸53の上端よりも車体下側に位置するように配置されている。第1伝動軸51には、第2ケース22の隔壁22Bに支持された第1伝動軸51の前端部と1速用多板クラッチ60とにわたる1速用油路51A、第2ケース22の隔壁22Bに支持された第1伝動軸51の前端部と2速用多板クラッチ61とにわたる2速用油路51B、第2ケース22の隔壁22Bに支持された第1伝動軸51の前端部と3速用多板クラッチ62とにわたる3速用油路51C、及び、第2ケース22の隔壁22Bに支持された第1伝動軸51の前端部と4速用多板クラッチ63とにわたる4速用油路51D、などが形成されている。第3伝動軸(減速軸)53には、第2ケース22の隔壁22Bに支持された第3伝動軸53の前端部と低速側の減速用多板クラッチ66とにわたる低速用油路53A、及び、第2ケース22の隔壁22Bに支持された第3伝動軸53の前端部と高速側の減速用多板クラッチ67とにわたる高速用油路53B、などが形成されている。
バルブユニット取付部107は、T/Mケース14の第2ケース22において隔壁22Bが形成された車体前後方向の所定位置に形成されている。隔壁22Bには、バルブユニット105に形成された1速用の接続ポート105Aと第1伝動軸51に形成された1速用油路51Aとにわたる1速用の内部油路22C、バルブユニット105に形成された2速用の接続ポート105Bと第1伝動軸51に形成された2速用油路51Bとにわたる2速用の内部油路22D、バルブユニット105に形成された3速用の接続ポート105Cと第1伝動軸51に形成された3速用油路51Cとにわたる3速用の内部油路22E、バルブユニット105に形成された4速用の接続ポート105Dと第1伝動軸51に形成された4速用油路51Dとにわたる4速用の内部油路22F、バルブユニット105に形成された低速用の接続ポート105Eと第3伝動軸53に形成された低速用油路53Aとにわたる低速用の内部油路22G、及び、バルブユニット105に形成された高速用の接続ポート105Fと第3伝動軸53に形成された高速用油路53Bとにわたる高速用の内部油路22H、などが形成されている。
これにより、バルブユニット105と主変速装置32の各多板クラッチ60〜63,66,67とにわたる主変速用の6系統の各油圧経路を形成する上において、T/Mケース14の内部に油圧管を組み付ける必要がなくなる。又、バルブユニット105と第1伝動軸51又は第3伝動軸53とにわたる隔壁22Bの各内部油路22C〜22Hを、単純な直線形状で最短に形成することができる。その結果、主変速用の各油圧経路を形成するのに必要な作業工数を削減することができる。
又、隔壁22Bの各内部油路22C〜22Hが単純な直線形状で最短に形成されることにより、バルブユニット105と主変速装置32の各多板クラッチ60〜63,66,67とにわたる主変速用の6系統の各油圧経路を単純な形状で最短に形成することができる。その結果、主変速装置32における各多板クラッチ60〜63,66,67の応答性が向上する。
図3、図9に示すように、バルブユニット取付部107は、2個の減速用多板クラッチ66,67を支持する第3伝動軸53よりも、4個の変速用多板クラッチ60〜63を支持する第1伝動軸51の近くに配置されている。
これにより、バルブユニット取付部107が、第1伝動軸51よりも第3伝動軸53の近くに配置される場合に比較して、隔壁22Bに形成される長い内部油路22G,22Hの数量を少なくすることができる。その結果、隔壁22Bに形成される長い内部油路22G,22Hの数量が多くなることに起因して、隔壁22Bの強度が低下することを防止することができる。
図2〜3、図5、図13に示すように、クリープ変速装置33において、減速機構69は、主変速装置32の第3伝動軸53及び副変速装置34の第1変速軸68と平行に配置された減速軸130、第3伝動軸53と一体回転する状態で第3伝動軸53の軸上に配置された第1減速ギア71A、減速軸130と一体回転する状態で減速軸130の軸上に配置された第2減速ギア71Bと第3減速ギア72A、及び、第1変速軸68と相対回転する状態で第1変速軸68の軸上に配置された第4減速ギア72B、などを有している。そして、第1減速ギア71Aと第2減速ギア71Bにより、前述した2組の減速ギアセット71,72のうち、大きい変速比で第3伝動軸53から減速軸130に減速伝動する伝動方向上手側の減速ギアセット71が構成されている。又、第3減速ギア72Aと第4減速ギア72Bにより、前述した2組の減速ギアセット71,72のうち、大きい変速比で減速軸130から第1変速軸68に減速伝動する伝動方向下手側の減速ギアセット72が構成されている。
減速機構69は、第1減速ギア71Aが第3伝動軸53に組み付けられ、第4減速ギア72Bが第1変速軸68に組み付けられている。
切換機構70は、第3伝動軸53に対する軸心方向への移動が許容された状態で第3伝動軸53と一体回転するように第3伝動軸53の軸上に配置された第1被噛合回転体131、第4減速ギア72Bと一体回転する状態で第1変速軸68と相対回転するように第1変速軸68の軸上に配置された第2被噛合回転体132、及び、第1被噛合回転体131と噛み合う等速位置と第2被噛合回転体132と噛み合う減速位置とにわたる軸心方向への移動が許容された状態で第1変速軸68と一体回転するように第1変速軸68の軸上に配置された噛合回転体133、などを有して、第1変速軸68に組み付けられている(図13参照)。
これにより、切換機構70を第1変速軸68に組み付けることにより、噛合回転体133が、第1被噛合回転体131と噛み合う等速位置と第2被噛合回転体132と噛み合う減速位置とにわたって無理なく正常に移動するか否かの動作確認を行うことができる。そして、この動作確認において不具合が生じた場合は、第1変速軸68に組み付けられた各回転体131〜133の微調整などを行うことにより、その不具合を解消することができる。その結果、切換機構70の動作確認を含めた組み付けを容易にすることができる。
そして、このクリープ変速装置33においては、減速機構69の第1減速ギア71Aと切換機構70の第1被噛合回転体131とが個々に独立して形成されていることから、第1減速ギア71Aにかかる負荷が第1被噛合回転体131に及ばないようになっている。これにより、第1減速ギア71Aにかかる負荷が第1被噛合回転体131に及ぶことに起因して、第1被噛合回転体131の耐久性が低下する虞を回避することができる。
図13に示すように、切換機構70は第4減速ギア72Bとユニット化されている。これにより、第4減速ギア72B及び切換機構70の第1変速軸68に対する着脱を容易にすることができる。
図2〜3、図5、図13に示すように、T/Mケース14は、クリープ変速装置33の配置箇所において、第3伝動軸53を備える伝動方向上手側の第2ケース22と第1変速軸68を備える伝動方向下手側の第3ケース23とに分割されるように、第2ケース22と第3ケース23との分割位置が設定されている。減速機構69は、第1減速ギア71Aのみが第3伝動軸53とともに第2ケース22に組み付けられ、かつ、第1減速ギア71Aを除いた減速機構69の略全体が第1変速軸68及び切換機構70とともに第3ケース23に組み付けられている。
これにより、クリープ変速装置33をT/Mケース14に組み付ける場合は、減速機構69の第1減速ギア71Aを、第2ケース22における第3ケース23との分割端側から、第3伝動軸53などとともに第2ケース22に組み付けることができる。又、第1減速ギア71Aを除いた減速機構69の略全体及び切換機構70を、第3ケース23における第2ケース22との分割端側から、第1変速軸68などとともに第3ケース23に組み付けることができる。そして、第3ケース23に組み付けられた第1被噛合回転体131が第2ケース22に組み付けられた第3伝動軸53の軸上に配置され、かつ、第3ケース23に組み付けられた第2減速ギア71Bが第2ケース22に組み付けられた第1減速ギア71Aと噛み合うように、第2ケース22と第3ケース23とを連結することにより、クリープ変速装置33を、第3伝動軸53と第1変速軸68とにわたる状態でT/Mケース14に組み付けることができる。つまり、クリープ変速装置33のT/Mケース14への組み付けを簡単にすることができる。
又、クリープ変速装置33をT/Mケース14から取り外す場合は、第2ケース22と第3ケース23との連結を解除して第2ケース22と第3ケース23とを分離させることにより、クリープ変速装置33を、第2ケース22に組み付けられた第1減速ギア71Aと、第1減速ギア71Aを除いて第3ケース23に組み付けられた減速機構69の略全体及び切換機構70とに分割することができる。そして、この分割により、第1減速ギア71Aを、第2ケース22における第3ケース23との分割端側から、第3伝動軸53などとともに第2ケース22から取り外すことができる。又、第1減速ギア71Aを除いた減速機構69の略全体及び切換機構70を、第3ケース23における第2ケース22との分割端側から、第1変速軸68などとともに第3ケース23から取り外すことができる。つまり、クリープ変速装置33のT/Mケース14からの取り外しを簡単にすることができ、これにより、クリープ変速装置33のメンテナンスなどが行い易くなる。
図2、図5、図13に示すように、クリープ変速装置33において、減速軸130は、その前端部が第1支持壁28に支持され、かつ、その後端部が分配軸35の前端部に支持されている。第1減速ギア71Aは、第3伝動軸53の後部にスプライン嵌合されるとともに、止め輪134によって抜け止めされている。第2減速ギア71Bは、減速軸130の前端側にスプライン嵌合されている。第3減速ギア72Aは、減速軸130の後端部に一体形成されている。第1被噛合回転体131は、第1変速軸68の前端部にスプライン嵌合された回転体135に相対回転可能に支持された状態で第3伝動軸53の後端部にスプライン嵌合されている。第2被噛合回転体132は、第4減速ギア72Bと一体回転するように第4減速ギア72Bに係合連結されている。噛合回転体133は、回転体135の外周部にスプライン嵌合されている。つまり、クリープ変速装置33においては、減速軸130と第2減速ギア71Bと第3減速ギア72Aとが、第1ユニット33Aとしてユニット化された状態で第3ケース23に着脱可能に備えられている。又、第4減速ギア72Bと第1被噛合回転体131と第2被噛合回転体132と噛合回転体133と回転体135などが、第2ユニット33Bとしてユニット化された状態で第3ケース23に着脱可能に備えられている。
図14には、前述したクリープ変速装置33とは減速機構69の第1減速ギア71A及び切換機構70の第1被噛合回転体131に関する構成が異なるクリープ変速装置33の別実施形態が示されている。
図14に示すクリープ変速装置33においては、減速機構69の第1減速ギア71Aが、第3伝動軸53に対する軸心方向への移動が許容された状態で第3伝動軸53と一体回転するように第3伝動軸53の軸上に配置されている。そして、減速機構69の第1減速ギア71Aと切換機構70の第1被噛合回転体131とが一体形成されている。
これにより、第1減速ギア71Aと第1被噛合回転体131とが個々に独立して形成される場合に比較して、部品点数の削減による構成の簡素化などを図ることができる。
図14に示すクリープ変速装置33において、減速機構69及び切換機構70は、第2ケース22と第3ケース23との連結に伴って、第1減速ギア71Aと第1被噛合回転体131とが第3伝動軸53の軸上に配置され、第2ケース22と第3ケース23との連結解除に伴って、第1減速ギア71Aと第1被噛合回転体131とが第3伝動軸53の軸上から取り外されるように、減速機構69の全体と切換機構70の全体とが第1変速軸68とともに第3ケース23に組み付けられている。
これにより、このクリープ変速装置33をT/Mケース14に組み付ける場合は、減速機構69及び切換機構70を、第3ケース23における第2ケース22との分割端側から、第1変速軸68とともに第3ケース23に組み付けることができる。そして、この組み付け後に、第1減速ギア71Aと第1被噛合回転体131とが第3伝動軸53の軸上に配置されるように第2ケース22と第3ケース23とを連結することにより、減速機構69及び切換機構70を、第3伝動軸53と第1変速軸68とにわたる状態でT/Mケース14に組み付けることができる。つまり、クリープ変速装置33を、T/Mケース14の内部において、第3伝動軸53と第1変速軸68とにわたる状態に簡単に組み付けることができる。
又、このクリープ変速装置33をT/Mケース14から取り外す場合は、第2ケース22と第3ケース23との連結を解除して第2ケース22と第3ケース23とを分離させることにより、第1減速ギア71Aと第1被噛合回転体131とを第3伝動軸53の軸上から取り外すことができ、減速機構69の全体と切換機構70の全体とを第1変速軸68などとともに第3ケース23に残すことができる。そして、第3ケース23に残った減速機構69及び切換機構70を、第3ケース23における第2ケース22との分割端側から、第1変速軸68などとともに第3ケース23から取り外すことができる。つまり、クリープ変速装置33のT/Mケース14からの取り外しを簡単にすることができ、これにより、クリープ変速装置33のメンテナンスなどが行い易くなる。
そして、このクリープ変速装置33においては、前述したクリープ変速装置33と同様に、減速軸130と第2減速ギア71Bと第3減速ギア72Aとが、第1ユニット33Aとしてユニット化された状態で第3ケース23に着脱可能に備えられている(図2、図7参照)。一方、このクリープ変速装置33においては、前述したクリープ変速装置33とは異なり、第1減速ギア71Aと第4減速ギア72Bと第1被噛合回転体131と第2被噛合回転体132と噛合回転体133と回転体135などが、第2ユニット33Bとしてユニット化された状態で第3ケース23に着脱可能に備えられている。
図2〜3、図6〜7に示すように、主変速装置32及び副変速装置34は、T/Mケース14の内部において、主変速装置32が伝動方向上手側に配置され、副変速装置34が伝動方向下手側に配置されている。T/Mケース14は、主変速装置32を備える伝動方向上手側の第2ケース22と、副変速装置34を備える伝動方向下手側の第3ケース23とに分割された場合に、第3ケース23における第2ケース22との分割端となる第3ケース23の前端に開口136が形成されるようになっている。そして、副変速装置34においては、第3ケース23の開口136に近い副変速装置34における最前端の位置に前述した出力ギアセット79が交換可能に配置されている。
これにより、このトラクタにおいては、出力ギアセット79を変速比が異なる別の出力ギアセット79と交換することにより、トラクタの最高車速を、ユーザーが行う作業形態などに適した車速に容易に設定変更することができる。そして、出力ギアセット79の交換は、その交換のためにT/Mケース14を第2ケース22と第3ケース23とに分割した場合に露出される第3ケース23の開口136から簡単に行うことができる。つまり、トラクタの最高車速を、第3ケース23の開口136から行う簡単な出力ギアセット79の交換作業により、ユーザーが行う作業形態などに適した車速に容易に設定変更することができる。
ところで、前述したように、T/Mケース14は、クリープ変速装置33の配置箇所において、伝動方向上手側の第2ケース22と伝動方向下手側の第3ケース23とに分割されるように構成されている。クリープ変速装置33は、第2支持壁29を隔てて出力ギアセット79と隣接する箇所となる第3ケース23の内部における開口側の位置に組み付けられている。そして、クリープ変速装置33は、その略全体又は全体が第1ユニット33Aと第2ユニット33Bとにユニット化された状態で第3ケース23に着脱可能に備えられる。
これにより、出力ギアセット79を交換する場合は、先ず、T/Mケース14における第2ケース22と第3ケース23との連結を解除して第2ケース22と第3ケース23とを分離させる。次に、この分離によって露出された第3ケース23の開口136から、第3ケース23の開口側に配置されたクリープ変速装置33の第1ユニット33Aと第2ユニット33Bとを取り外し、その後、第2支持壁29を取り外すことにより、第3ケース23の開口136からの出力ギアセット79の交換を可能にすることができる。そして、第3ケース23の開口136から出力ギアセット79の交換を行うことにより、トラクタの最高車速をユーザーが行う作業形態などに適した車速に容易に設定変更することができる。
つまり、T/Mケース14における第2ケース22と第3ケース23との分割箇所にクリープ変速装置33が配置された構成でありながら、第3ケース23の開口136からの出力ギアセット79の交換を容易にすることができ、トラクタの最高車速を、ユーザーが行う作業形態などに適した車速に容易に設定変更することができる。
〔別実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明に関する代表的な別実施形態を例示する。
〔1〕変速装置32の変速段数は種々の変更が可能である。例えば、変速装置32は、入力された動力を6段に変速する第1変速機構54と、第1変速機構54による変速後の動力を2段に変速する第2変速機構55とを有する12段変速式に構成されていてもよく、又、入力された動力を6段に変速する第1変速機構54と、第1変速機構54による変速後の動力を3段に変速する第2変速機構55とを有する18段変速式に構成されていてもよい。
〔2〕変速装置32は、複数の変速用多板クラッチ60〜63と複数の減速用多板クラッチ66,67とが、車体の上下方向(径方向の一例)で隣接するように並列に配置されていてもよい。
〔3〕変速装置32は、3本の伝動軸51〜53が、中間軸52を下部頂点とする略二等辺三角形を形成するように配置されていてもよい。
〔4〕変速装置32は、複数の変速用多板クラッチ60〜63及び複数の減速用多板クラッチ66,67における径方向の大きさが異なる大きさに設定されていてもよい。
本発明は、軸心方向が車体の前後方向に設定された状態で平行に配置された3本の伝動軸と、入力された動力を複数段に変速する第1変速機構と、前記第1変速機構による変速後の動力を前記第1変速機構よりも少数の複数段に変速する第2変速機構とを有する多段式の変速装置を備えた作業車用トランスミッション、及び、この作業車用トランスミッションを備えたトラクタ、草刈機、コンバイン、田植機、運搬作業車、などの作業車に適用することができる。
3 作業車用トランスミッション
32 変速装置
51 伝動軸(変速軸)
52 伝動軸(中間軸)
53 伝動軸(減速軸)
54 第1変速機構
55 第2変速機構
56 変速ギアセット
57 変速ギアセット
58 変速ギアセット
59 変速ギアセット
60 変速用多板クラッチ
61 変速用多板クラッチ
62 変速用多板クラッチ
63 変速用多板クラッチ
64 減速ギアセット
65 減速ギアセット
66 減速用多板クラッチ
67 減速用多板クラッチ

Claims (5)

  1. 軸心方向が車体の前後方向に設定された状態で平行に配置された3本の伝動軸と、入力された動力を複数段に変速する第1変速機構と、前記第1変速機構による変速後の動力を前記第1変速機構よりも少数の複数段に変速する第2変速機構とを有する多段式の変速装置を備え、
    前記第1変速機構は、複数の変速ギアセットと、複数の前記変速ギアセットに対する伝動を断続する複数の変速用多板クラッチとを有し、
    前記第2変速機構は、複数の減速ギアセットと、複数の前記減速ギアセットに対する伝動を断続する複数の減速用多板クラッチとを有し、
    複数の前記変速用多板クラッチは、3本の前記伝動軸のうちの単一の変速軸の軸上に前後方向に隣接して配置され、
    複数の前記減速用多板クラッチは、3本の前記軸のうちの単一の減速軸の軸上に前後方向に隣接して配置され、
    複数の前記変速用多板クラッチと複数の前記減速用多板クラッチとが、それらの径方向で隣接するように並列に配置されている作業車用トランスミッション。
  2. 前記伝動軸として、前記変速軸と前記減速軸の間に配置された中間軸を備えている請求項1に記載の作業車用トランスミッション。
  3. 3本の前記伝動軸は、中間軸を上部頂点とする略二等辺三角形を形成するように配置されている請求項1又は2に記載の作業車用トランスミッション。
  4. 複数の前記変速用多板クラッチ及び複数の前記減速用多板クラッチは、それらの径方向の大きさが同じ大きさに設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車用トランスミッション。
  5. 前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の作業車用トランスミッションを備えている作業車。
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