JP2019006683A - 魚節由来の血糖値低下組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
DPPIVの阻害活性を有する物質として、以前は化学合成品が主流であったが、近年、安全性の点から、天然物又は食品由来のものが、具体的には天然又は食品由来のジ−、トリ−、又はオリゴ−ペプチドが、そのような物質として推奨されつつある。
例えば、本出願人による特許文献1は、食品である魚節、例えば鰹節由来のペプチドを含有するDPPIV阻害活性組成物に関し、当該組成物を投与することによって、DPPIV活性を阻害して、血糖値を低下させ得ることを開示している。
また、異なる生理活性を有する複数の有効成分を併用する必要がなくなるため、有効成分間の拮抗作用の懸念がなく、それぞれの活性効果が有効に発揮されることも期待される。
そのような有効成分が、食品由来のものから見出されれば、安全性も高く、且つ、単一の有効成分で複数の生理活性を発揮し得る効率の良い保健機能食品又は医薬品への用途が期待される。
そこで本発明は、食品、例えば魚節由来のペプチドから、そのような有効成分、及びそれを含有する組成物を見出すことを課題とした。
これまで、DPPIV阻害活性とカテプシン阻害活性とを併せ持つ単一のペプチドの存在は知られていなかったため、この事実は非常に驚くべきことであった。
本発明の好ましい態様は、少なくとも3000μg/mL(IC50)のカテプシン阻害活性を有することを特徴とする、請求項1に記載のDPPIV阻害組成物に関する。
本発明の別の態様において、前記Trp−Val又はその塩を、前記組成物の乾燥物に基づき0.001〜0.1質量%の量で含有することを特徴とする、前述のDPPIV阻害組成物に関する。
本発明のさらに好ましい態様は、前記DPPIV阻害組成物は、魚節由来であることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のDPPIV阻害組成物に関する。
また本発明の別の態様は、前述のDPPIV阻害組成物を含有することを特徴とする、医薬組成物又は保健機能食品に関する。
そして、これらカテプシンの過剰な亢進が、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、骨粗鬆症などの結合組織の破壊を伴う疾患(結合組織疾患と呼ぶ)又は骨吸収の阻害が指摘されている骨疾患の原因と考えられていることから、カテプシン阻害剤(システインプロテアーゼ阻害剤)はこれら疾患の予防又は治療に有効であると考えられている。
また、カテプシン阻害剤は、腫瘍(特に腫瘍浸潤及び腫瘍転位)、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化(アテローム性プラーク破壊及び不安定化を含む)を含むシステインカテプシン依存疾患及び症状の処置にも使用され得る。
従って、DPPIV阻害剤は、抗糖尿病剤としての利用が期待される。
この場合、医薬品はもちろんのこと、特定保健用食品などの保健機能食品への応用も可能である。
このような本発明の組成物は、下記のようにして、得ることができる。
魚節は古くから食されてきた食材であり、安全性の面で非常に好ましい。本発明において用いられる魚節としては、例えば、鰹節、宗田鰹節、鯖節、鰯節、鯵節又は鮪節等を挙げることができる。これら魚節は、当業者に既知の手法により製造されたものであれば十分であり、もちろん市場に流通しているものでも構わない。
なお、プロテアーゼ処理は、加熱等により酵素を失活させることで終了させることができる。また、酵素反応後のpHは、その後の市販適用のために中和することが望ましい。
次いで、吸着したプロテアーゼ分解物の溶離には、酸、アルカリ又は種々の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールや、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン等のケトン類を用いることできるが、これらに限定されるものではない。又は、酸、アルカリとの混合溶媒としてもよい。なお、経済性と安全性の点からは、濃度50%以下のエタノール水溶液又は水を用いて溶離するのが好ましい。樹脂精製法は、バッチ法又はカラム法にて行うことができる。回収した画分は減圧又は限外濾過により濃縮し、さらに必要に応じて溶媒を完全に除去して乾固するか凍結乾燥を行ってもよい。
なお、静置温度は低温で行うことが好ましい。また、回収した上清画分は減圧又は限外濾過により濃縮し、さらに必要に応じて溶媒を完全に除去して乾固するか凍結乾燥を行ってもよい。
このような本発明のDPPIV阻害組成物は、少なくともおよそ200μg/mLのDPPIV阻害活性値(IC50)を有する(数値として200>)。一方で、少なくともおよそ3000μg/mLのカテプシン阻害活性値(IC50)をも有する(数値として3000>)。
これらの阻害活性値は、本発明のDPPIV阻害組成物を保健機能食品用途として用いるには十分な数値であると考えられる。
また、本発明のDPPIV阻害組成物を含有する保健機能食品は、当該組成物を、1回の摂取量として100mg〜400mg、好ましくは、120mg〜300mg添加して製造される。
さらにまた、本発明のDPPIV阻害組成物は、乾燥させることによって、取り扱いが容易で安定な固体ないし粉末形態とすることができ、当該形態の水への溶解性もよい。また、胃腸管からの吸収もよい。したがって、食品組成物への添加の時期、及び方法に特別の制限はなく、粉末状、溶液状、懸濁液状等として、食品組成物製造の原料段階、中間工程、最終工程に、食品分野で慣用の方法で添加することが可能である。
半流動状の形態としては、ペースト状、ゼリー状、ゲル状などが挙げられる。
また、流動状の形態としては、ジュース、清涼飲料、茶飲料、ドリンク剤などが挙げられる。
これら種々の形態の保健機能食品を、栄養ドリンクや調味料として、本発明の組成物を継続して摂取することにより、血糖の上昇を抑制し、及び/又は、結合組織疾患又は腫瘍を予防又は治療し得ることも期待できる。
医薬組成物としての形態は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ等の経口投与剤が好ましい。液剤は、用時溶解できる乾燥固体であってもよい。
かような本発明のDPPIV阻害組成物は、哺乳動物の糖尿病、結合組織疾患又は腫瘍の予防又は治療用途として有用である。
また、本発明のDPPIV阻害組成物を、食品である魚節由来のものとすれば、安全性はさらに高まるため、保健機能食品としてより一層適するものであると言える。
また、本発明においては、一回のプロテアーゼ処理工程のみでDPPIV阻害組成物を得ることができるため、生産効率も高いという利点をも有する
各試料のDPPIV阻害活性は、下記のとおり行った。
試料を凍結乾燥後、それらの16mg、8mg、4mg、2mg、1mgを50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)1mLにそれぞれ溶解し、そして得られた各試料溶液のDPPIV阻害活性を、DPPIV阻害活性測定キット(Bio Vision製;K780−100型)を用いて測定した。
なお、DPPIV阻害測定は、測定条件励起波長380nm、測定波長460nmの蛍光マイクロプレートリーダー(Thermo Fisher製)にて測定した。
各試料のカテプシン阻害活性は、原則、下記のとおり行った。
カテプシンL又はカテプシンSの含有溶液と試料(1mg)とを混合し、pH5.0にて30分間反応させた。その後、Z−Val−Val−Arg−MCAを基質として加え、37℃にて30分間反応させた。その後、切断されたAMCの蛍光を蛍光分光光度計にて測定した(なお、記号MCAは4−メチルクマリル−7−アミドの略称であり、記号AMCは7−アミノ−4−メチルクマリンの略称である)。
水溶出分画と、10%エタノール溶出分画により、DPPIV阻害活性を9倍の比率で分け得て、酵素分解物(C1)のIC50よりも3〜4倍高いIC50=102.93μg/mLの画分を得た(以降、この得られた画分をA−2画分と呼ぶ)。酵素分解物(C1)からの収率は、20%量得られ、阻害活性の回収率は、約100%であった。
用いたUPLCクロマトグラフィーの分析条件は、下記のとおりである。
装置:Waters製 UPLC
カラム:Waters製 Acquity UPLC BEH C18(2.1mmID×150mmL,1.7μm)
移動相A:5%アセトニトリル in 0.1%トリフルオロ酢酸
B:25%アセト二トリルin 0.1%トリフルオロ酢酸 のイソクラティ
ック溶出
なお、移動相A,Bの割合は、下表3及び4の通りである。
流速:0.2mL/分
温度:40℃
検出器:フォトダイオードアレイ
検出:UV200nm〜300nm
試料濃度:固形分0.1mg〜0.5mg/5〜10μL
標品(合成ジペプチド)濃度:0.1μg/1〜10μL
また、A−2画分のDPPIV阻害活性は、上記表2に示すとおり、102.93μg/mL(IC50)であった。
また、A−2画分の組成物のカテプシン阻害活性は、2251.8μg/mL(IC50)であった。
上記実施例において得られた、本発明のDPPIV阻害組成物(A−2画分の乾燥物;水分量5質量%以下)についてヒト経口投与試験を行い、血糖値低下を有する保健機能食品として適した投与量の検討を行った。
被験者A、B及びCの3名(いずれも年齢50〜60代の男性)に対して、DPPIV阻害組成物の体内蓄積による影響がないように、まずは、白湯(ペプチドを含まないプラセボ)の摂取試験を一日目に行い、プラセボ効果が消える翌日にDPPIV阻害組成物を摂取した。夕食を早めに行い、食事の影響が無いように試験時まで絶食した。
1日目 18時間絶食後、プラセボ(白湯150mL)摂取30分後、グルコース摂取時から15分毎に180分まで、血糖値を測定した。
2日目 18時間絶食後、DPPIV阻害組成物(125mg/150mL,250mg/150mL,500mg/150mL)摂取30分後、グルコース摂取時から15分毎に180分まで、血糖値を測定した。
DPPIV阻害組成物の摂取量は、被験者A、B及びCに対して下記のとおり割り当てた。なお、今回は、2重盲検対照比較試験ではなく、プラセボ、血糖ペプチドをオープン識別して摂取した。
被験者A:一日目プラセボ150mL摂取〜二日目DPPIV阻害組成物125mg/150mL摂取
被験者B:一日目プラセボ150mL摂取〜二日目DPPIV阻害組成物250mg/150mL摂取
被験者C:一日目プラセボ150mL摂取〜二日目DPPIV阻害組成物500mg/150mL摂取
縦軸は血糖値を示し、そして横軸は摂取前後の時間を示し、プラセボを白丸、血糖ペプチドは黒丸で示した。
その結果、本発明のDPPIV阻害組成物は、少量で有意な効果及び用量依存性を有することが示された(図1及び2)。安全性は動物実験の結果から最大安全性反復量1g/kgを上限にして設定したが、 図3からも明らかなように、高用量の500mg/ヒトは、血糖値の抑制作用がやや効きすぎである結果が示された。
DPPIV阻害組成物125mg場合は、一錠固形250mg直径8mm(125mgDPPIV阻害組成物、賦形剤125mg)の品質で、1錠の商品設計が可能であることが分かった。
また、DPPIV阻害組成物250mgの場合は、一錠固形250mg直径8mm(125mgDPPIV阻害組成物、賦形剤125mg)の品質で、2錠の商品設計が可能であることが分かった。
なお、血糖ペプチド500mgの場合は、結果から、やや効きすぎによる作用が懸念された。
よって、保健機能食品としては、DPPIV阻害組成物125mg〜250mgの範囲内が好ましいとと判断された。
対照としての従来の血糖値低下作用を示す組成物、例えば、難消化性デキストリンでの同様のヒト試験による結果においては、一度の投与で5gを用いなければ有意の効果が得られなかったことを考慮すると、本発明の組成物の上記効果はそのおよそ40倍の強さであった。
Claims (6)
- 有効成分としてトリプトファン−バリン(Trp−Val)又はその塩を含有し、且つカテプシン阻害活性を有することを特徴とする、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)阻害組成物。
- 少なくとも3000μg/mL(IC50)のカテプシン阻害活性を有することを特徴とする、請求項1に記載のDPPIV阻害組成物。
- 前記Trp−Val又はその塩を、前記組成物の乾燥物に基づき0.001〜0.1質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のDPPIV阻害組成物。
- 前記DPPIV阻害組成物は、魚節由来であることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のDPPIV阻害組成物。
- 請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のDPPIV阻害組成物を含有することを特徴とする、医薬組成物。
- 請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のDPPIV阻害組成物を含有することを特徴とする、保健機能食品。
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