JP2019005845A - 樹脂フィルムの切断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】欠けや切粉が少なく、かつ安定して連続的に切断できる樹脂フィルムの切断方法の提供。【解決手段】ガラス転移温度が90℃以上である樹脂フィルム3を切断する樹脂フィルムの切断方法であって、少なくとも一対の上刃1と下刃2を有する切断装置を用い、上刃の下刃側への押し込み量を0.05〜0.35mmとし、樹脂フィルムの張力を30〜300N/mとする、切断方法である。樹脂フィルムが熱可塑性樹脂フィルムであり、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。上刃と下刃のかみ合わせ量が0.02〜0.60mmであることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は樹脂フィルムの切断方法に関する。
種々の方法で製膜された樹脂フィルムの多くは、用途や製品形状などに応じて所望の幅に切断されて使用される。しかしながら、機械的強度が低い樹脂フィルムは切断時に多量の切粉(切削屑)を生じる。切粉が付着した樹脂フィルムは切粉が異物となるだけでなく、切粉によって傷ついたり、印刷等の後工程で印刷抜けを生じたりすることがあり、切粉の発生が少ない樹脂フィルムの切断方法が求められている。切粉の発生を低減する樹脂フィルムの切断方法として、例えば特許文献1は補助フィルムをあてた状態で樹脂フィルムを切断する方法を開示している。また、特許文献2は、走行するポリエステルフィルムを、上刃の傾き、上刃の刃先角度、上刃と下刃のかみ合わせ量、上刃の下刃への接圧、およびフィルムの走行張力を特定の範囲として切断するポリエステルフィルムロールの製造方法を開示している。
特開2014−69295号公報 特開2014−180716号公報
上記の従来技術は設備投資に多額の費用を要したり、十分に樹脂フィルムの欠けや切粉を低減することが困難だった。本発明は、欠けや切粉が少なく、かつ安定して連続的に切断できる樹脂フィルムの切断方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、以下の態様を包含する本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]〜[10]に関する。
[1] ガラス転移温度が90℃以上である樹脂フィルムを切断する樹脂フィルムの切断方法であって、少なくとも一対の上刃と下刃を有する切断装置を用い、上刃の下刃側への押し込み量を0.05〜0.35mmとし、樹脂フィルムの張力を30〜300N/mとする、切断方法。
[2] 前記樹脂フィルムが熱可塑性樹脂フィルムである、[1]の切断方法。
[3] 前記熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である、[2]の切断方法。
[4] 前記(メタ)アクリル系樹脂が硬質メタクリル系樹脂とエラストマーとを含む組成物である、[3]の切断方法。
[5] 前記エラストマーが(メタ)アクリル系エラストマーである、[4]の切断方法。
[6] 上刃と下刃のかみ合わせ量が0.02〜0.60mmである、[1]〜[5]のいずれかの切断方法。
[7] 前記上刃および前記下刃が丸刃であり、下刃の周速度に対する上刃の周速度の比が0.8超1.2未満である、[1]〜[6]のいずれかの切断方法。
[8] 前記上刃および前記下刃を構成する素材が、高速度工具鋼、合金工具鋼、炭素工具鋼、ステンレス鋼、または、超硬合金鋼である、[1]〜[7]のいずれかの切断方法。
[9] 前記樹脂フィルムと前記下刃の抱き角が10〜150度である、[1]〜[8]のいずれかの切断方法。
[10] 前記樹脂フィルムの厚さが10〜500μmである、[1]〜[9]のいずれかの切断方法。
本発明によれば、欠けや切粉が少なく、かつ安定して連続的に切断できる樹脂フィルムの切断方法が提供される。
本発明の樹脂フィルムの切断方法の一態様を、樹脂フィルムの幅方向から観察して例示する概略図である。 本発明の樹脂フィルムの切断方法の一態様を、樹脂フィルムの流れ方向から観察して例示する概略図である。 本発明の樹脂フィルムの切断方法の一態様における、樹脂フィルムと下刃の抱き角を例示する概略図である。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。
本発明の樹脂フィルムの切断方法は、ガラス転移温度が90℃以上である樹脂フィルムを切断するものであって、少なくとも一対の上刃と下刃を有する切断装置を用い、上刃の下刃への押し込み量を0.05〜0.35mmとし、樹脂フィルムの張力を30〜300N/mとするものである。
(切断方法)
本発明の切断方法について、図を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。図1は、本発明の樹脂フィルムの切断方法の一態様を、樹脂フィルムの幅方向から観察して例示する概略図である。切断装置は少なくとも一対の上刃1と下刃2を有し、二対以上の上刃1と下刃2を有してもよい。上刃1と下刃2は、樹脂フィルム3を挟み込むように、且つ該樹脂フィルム3の搬送方向と平行に、該樹脂フィルム3の上面側に上刃1が配置され、さらに該樹脂フィルム3の下面側に下刃2が配置されている。また、樹脂フィルム3は、搬送されながら、上刃1と下刃2の間に挿入されて切断される。また、上刃1は例えば回転軸Pにより回転できるよう支持されていてもよい。
上刃1および下刃2の切断方式として、例えば、ゲーベル式、ギャング式、ディスク式、スコアーカッター、コアカッター、ディッシュ式、カップ式、ストレート式、丸ナイフ等を採用できる。これらの中でも、樹脂フィルムをより安定して連続的に切断できる点(切断安定性)からゲーベル式が好ましい。また、更なる切断安定性の観点から、上刃1および下刃2は丸刃であることが好ましい。
上刃1および下刃2を構成する素材としては、金属やセラミックスなどを挙げることができる。上刃1および下刃2を構成する素材は、耐久性の観点から、好ましくは金属であり、より好ましくは、高速度工具鋼、合金工具鋼、炭素工具鋼、ステンレス鋼、または、超硬合金鋼であり、さらに好ましくは超硬合金鋼である。また、これらの素材に窒化チタン、炭化チタン、炭化タングステン等で表面処理を施した物を採用することもできる。上刃1および下刃2を構成するこれらの素材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上刃1および下刃2を構成する素材は、互いに同じでもよいし、異なってもよいが、耐久性の観点から、同じであることが好ましい。
上刃1および下刃2が丸刃である場合において、上刃1および下刃2の直径は、好ましくは50〜300mmであり、より好ましくは80〜200mmである。直径が係る範囲にあることで切粉をさらに低減できる。上刃1と下刃2の直径は同じでも異なってもよいが、切断安定性および安定して搬送できるという観点から、下刃2の直径よりも上刃1の直径の方が小さいことが好ましく、上刃1の直径が下刃2の直径の1/3〜2/3であることがより好ましい。
上刃1と下刃2のかみ合わせ量Lは、好ましくは0.02〜0.60mmであり、より好ましくは0.05〜0.50mmであり、さらに好ましくは0.10〜0.30mmである。かみ合わせ量Lが0.02mm以上であることで樹脂フィルムをさらに安定して連続的に切断でき、0.60mm以下であることで上刃1と樹脂フィルム3の摩擦が小さくなり樹脂フィルムの欠けをさらに低減できる。
図2は、本発明の樹脂フィルムの切断方法の一態様を、樹脂フィルムの流れ方向から観察して例示する概略図である。図2の(a)は、上刃1を樹脂フィルムの幅方向に押し込んでいない状態の概略図であり、図2の(b)は、上刃1を樹脂フィルムの幅方向に押し込んだときの概略図である。これらの概略図では、上刃1を押し込む前後における当該上刃1の変形の様子が分かりやすくなるように、当該上刃1の形態的な特徴が強調されて描かれている。上刃1の下刃2側への押し込み量は、下刃2の側面より当該側面に対して垂直な方向から上刃1を近づけた際における、上刃1と下刃2が接してから上刃1の中心が上記側面に対して垂直な方向にさらに移動するまでの変位量(mm)を意味する。係る押し込み量は、押し当て寸法調節機構を上刃1の中心や軸Pに配し、該押し当て寸法調節機構によって上刃1を樹脂フィルムの幅方向に移動させることで調節できる。また、上記押し込み量は、ダイヤルゲージを上刃1や軸Pに配し、その樹脂フィルムの幅方向の移動寸法を測定することで求められる。例えば、上刃1と下刃2が接した瞬間の上刃1の押し込み量は0.00mmである。上刃1の押し込み量が0.00mm超のとき、上刃1は軸Pと下刃2から受ける力により僅かに変形している。一方、上刃1の押し込み量が負の値のとき、上刃1は下刃2と接していない。
上刃1の下刃2側への押し込み量は0.05〜0.35mmであり、好ましくは0.10〜0.30mmであり、より好ましくは0.15〜0.25mmである。押し込み量が0.05mm以上であると上刃1と下刃2の間に間隙が生じず、樹脂フィルムを安定して連続的に切断できる。押し込み量が0.35mm以下であると樹脂フィルムの欠けや切粉を低減でき、且つ上刃1および下刃2の欠けや損傷を低減できる。
切断される際の樹脂フィルムの張力は30〜300N/mであり、好ましくは50〜250Nであり、より好ましくは100〜200Nである。樹脂フィルムの張力が30N/m以上であるとフィルム搬送時の振動、撓み、およびシワを抑制し、欠けを低減できる。また、樹脂フィルムの張力が300N/m以下であると破断を低減できる。
図3は、本発明の樹脂フィルムの切断方法の一態様における、樹脂フィルムと下刃の抱き角を例示する概略図である。樹脂フィルム3と下刃2の抱き角θは、搬送される樹脂フィルム3が下刃2に初めて接触する点と下刃2の中心を結ぶ線分と、搬送される樹脂フィルム3が下刃2から離れる点と下刃2の中心を結ぶ線分と、が為す角度である。樹脂フィルム3と下刃2の抱き角は好ましくは10〜150度であり、より好ましくは30〜120度である。抱き角が10度以上であると樹脂フィルムの振動が抑制され、切粉をさらに低減できる。また、抱き角が150度以下であると樹脂フィルム3と下刃2との間の抵抗が小さくなり、樹脂フィルムの欠けをさらに低減できる。なお、上刃1および下刃2は、本技術分野において理解されるものであり、樹脂フィルム3の切断時における上刃1と下刃2との相対的な位置関係において、必ずしも上刃1が下刃2の上に位置する必要はない。例えば、樹脂フィルム3の切断時において当該樹脂フィルム3を抱かせる側の刃物を下刃2とすることができる。
上刃1および下刃2が丸刃である場合において、下刃2の周速度に対する上刃1の周速度の比([上刃1の周速度(m/分)]/[下刃2の周速度(m/分)])は、好ましくは0.8超1.2未満であり、より好ましくは0.95超1.05未満であり、さらに好ましくは0.98超1.02未満である。下刃2と上刃1の周速度の比が係る範囲にあることで、さらに安定して連続的に樹脂フィルムを切断できる。下刃2と上刃1の周速度の比を係る範囲に制御するため、上刃1および下刃2は駆動モーターによって周速度を制御できることが好ましい。
樹脂フィルムを切断する位置は特に限定されず、例えば樹脂フィルムの幅方向において端から50mm以下の位置を切断してもよいし、端から樹脂フィルムの幅の1%以下の位置を切断してもよいし、中心を切断してもよい。樹脂フィルムを切断する位置は、さらに切断安定性を向上させるため、端から1mm以上であることが好ましい。
(樹脂フィルム)
樹脂フィルムの種類は、ガラス転移温度が90℃以上であれば特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルムなどが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂として、例えば、ビスフェノールAポリカーボネート等のポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−マレイミド樹脂、スチレン系熱可塑エラストマー等の芳香族ビニル系樹脂またはその水素添加物;非晶性ポリオレフィン、結晶相を微細化した透明なポリオレフィン、エチレン−メタクリル酸メチル樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、スチレン−メタクリル酸メチル樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸などで部分変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルサルホン系樹脂;トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂;ポリフェニレンオキサイド系樹脂などが挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル系樹脂とはメタクリル系樹脂および/またはアクリル系樹脂を指す。また、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂フィルムを「アクリル樹脂フィルム」と称することがある。(メタ)アクリル系樹脂は、イミド環化、ラクトン環化、メタクリル酸変性などにより改質した耐熱性(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。また熱硬化性樹脂フィルムを構成する熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。樹脂フィルムを構成するこれらの樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂フィルムにおける熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の合計の含有率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
樹脂フィルムのガラス転移温度は90℃以上であり、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。また、ガラス転移温度の上限は特に制限されないが、さらに切粉を低減する観点から、好ましくは180℃以下であり、より好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下である。ガラス転移温度は、樹脂フィルムを構成する樹脂について、JIS K 7121に準拠して求めることができ、具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。なお、樹脂が複数のガラス転移温度を有する場合、最も高いガラス転移温度の値を採用する。
透明性および成形性の点から、樹脂フィルムは熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましく、特に当該熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂であることがより好ましい。また耐衝撃性の点から、(メタ)アクリル系樹脂はエラストマーを含むことが好ましく、このような(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、硬質メタクリル系樹脂とエラストマーとを含む組成物が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂が硬質メタクリル系樹脂とエラストマーとを含む組成物である場合、当該組成物における硬質メタアクリル系樹脂とエラストマーとの合計の含有率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であってもよい。
上記の硬質メタクリル系樹脂におけるメタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、よりさらに好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。つまり、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位の割合が、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
係るメタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;エテン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−オクテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセン等の共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬質メタクリル系樹脂の製造方法は特に限定されず、メタクリル酸メチルを好ましくは80質量%以上含有する1種または複数種の単量体を、適した条件で重合することで得られる。
上記のエラストマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系エラストマー;シリコーン系エラストマー;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。これらのうち、透明性や靭性の観点から、(メタ)アクリル系エラストマーが好ましい。
(メタ)アクリル系エラストマーの種類に特に制限はなく、例えば、アクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含むアクリル系弾性重合体が挙げられる。当該アクリル系弾性重合体において、アクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは70〜99.8質量%である。当該アクリル酸非環状アルキルエステルにおける非環状アルキル基は、炭素数4〜8のもの、具体的には、例えばn−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基およびこれらの異性体基などが好ましい。また、当該アクリル系弾性重合体はアクリル酸非環状アルキルエステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよく、このような単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル;スチレン、アルキルスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;2−クロロエチルビニルエーテル;(メタ)アクリル酸エチレングリコール、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アクリル系弾性重合体は、上記のアクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位とをランダムに有するものであってもよい。当該架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル、マレイン酸ジアリル、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを挙げることができる。アクリル系弾性重合体における架橋性単量体に由来する構造単位の含有率は、靭性の観点から、好ましくは0.2〜30質量%である。
また、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、(メタ)アクリル系エラストマーは、(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)、および、アクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが結合した(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)は、単一重合体からなる粒子であってもよいし、異なる弾性率の重合体が少なくとも2つ層を形成した粒子であってもよい。(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)は、前述のアクリル系弾性重合体(アクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含む重合体)を含有する層と他の重合体を含有する層とからなる多層構造のコアシェル粒子であることが好ましく、アクリル系弾性重合体を含有する層とその外側を覆うメタクリル系重合体を含有する層とからなる2層構造のコアシェル粒子、または、メタクリル系重合体を含有する層と、その外側を覆うアクリル系弾性重合体を含有する層と、そのさらに外側を覆うメタクリル系重合体を含有する層とからなる3層構造のコアシェル粒子であることがより好ましく、3層構造のコアシェル粒子であることがさらに好ましい。
コアシェル粒子を構成するメタクリル系重合体は、メタクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位を主成分として含む重合体であることが好ましい。当該メタクリル系重合体において、メタクリル酸非環状アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%である。当該メタクリル酸非環状アルキルエステルは、メタクリル酸メチルであることが好ましく、コアシェル粒子を構成するメタクリル系重合体は、メタクリル酸メチル単位を80〜100質量%を含有することが硬質メタクリル系樹脂との混和性の観点から最も好ましい。
(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)は、透明性、靭性、接着性の観点から、その数平均粒径が、好ましくは150〜350nm、より好ましくは200〜300nmである。なお、(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)の数平均粒径は、(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)を硬質メタクリル系樹脂に溶融混練してなる試料を酸化ルテニウムで染色して観察される顕微鏡写真に基いて決定するものである。ここで、酸化ルテニウムはアクリル系弾性重合体を含有する層を染色するが、メタクリル系重合体を含有する層を染色しないので、上述の2層構造のコアシェル粒子や3層構造のコアシェル粒子の数平均粒径は、最外側にあるメタクリル系重合体を含有する層の厚さを含まない値に相当すると推定する。
(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)の製造方法に特に制限はなく、公知の手法(例えば、国際公開第2016/121868号等)に準じた方法により製造することができる。
(メタ)アクリル系樹脂が硬質メタクリル系樹脂と(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)とを含む組成物である場合における、硬質メタアクリル系樹脂と(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)との含有割合は、透明性、硬度、溶融粘度、靭性、滑り性、保護フィルムとの密着性などの観点から、硬質メタクリル系樹脂と(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)との合計100質量部に対する(メタ)アクリル系弾性体粒子(A)の含有量として、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部、さらに好ましくは15〜20質量部である。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)において、重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)の結合状態に特に制限はなく、例えば(b1)−(b2)で表現されるジブロック共重合体;(b1)−(b2)−(b1)または(b2)−(b1)−(b2)で表現されるトリブロック共重合体;(b1)−((b2)−(b1))、(b1)−((b2)−(b1))−(b2)、(b2)−((b1)−(b2))(nは整数)で表現されるマルチブロック共重合体;((b1)−(b2))−X、((b2)−(b1))−X(Xはカップリング残基)で表現されるスターブロック共重合体などが挙げられる。生産性の観点から、(b1)−(b2)で表現されるジブロック共重合体、(b2)−(b1)−(b2)または(b1)−(b2)−(b1)で表現されるトリブロック共重合体が好ましく、溶融時の樹脂組成物の流動性、並びに樹脂フィルムの表面平滑性およびヘーズの観点から、(b2)−(b1)−(b2)で表現されるトリブロック共重合体がより好ましい。この場合、重合体ブロック(b1)の両末端に結合する2つの重合体ブロック(b2)は、構成する単量体の種類、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合、重量平均分子量および立体規則性の其々が独立に、同一であっても異なっていてもよい。また、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)は他の重合体ブロックをさらに含有してもよい。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)を構成する重合体ブロック(b1)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。重合体ブロック(b1)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
係るアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらのアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、重合体ブロック(b1)を形成できる。中でも、経済性、耐衝撃性などの観点から、重合体ブロック(b1)はアクリル酸n−ブチルを単独で重合したものが好ましい。
重合体ブロック(b1)はアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、その割合は好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
係るアクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらのアクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上併用して前述のアクリル酸エステルと共重合することで重合体ブロック(b1)を形成できる。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)を構成する重合体ブロック(b2)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。重合体ブロック(b2)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
係るメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらのメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、重合体ブロック(b2)を形成できる。
重合体ブロック(b2)はメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、その割合は好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
係るメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらのメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を併用して前述のメタクリル酸エステルと共重合することで重合体ブロック(b2)を形成できる。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)における重合体ブロック(b2)の割合は、透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性、耐衝撃性の観点から、重合体ブロック(b1)と重合体ブロック(b2)の合計100質量%に対して、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは43質量%以上であり、さらに好ましくは47質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)の製造方法は特に限定されず、公知の手法(例えば、国際公開第2016/121868号等)に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用され、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いてアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法;有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いて有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法;有機希土類金属錯体を重合開始剤として用いて重合する方法;α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用いて銅化合物の存在下でラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂が硬質メタクリル系樹脂と(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)とを含む組成物である場合における、硬質メタクリル系樹脂と(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)との含有割合は、表面硬度および耐衝撃性の観点から、硬質メタクリル系樹脂と(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)との合計100質量部に対する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(B)の含有量として、好ましくは1〜35質量部、より好ましくは8〜25質量部、さらに好ましくは12〜21質量部である。
樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば高分子加工助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、充填剤、耐衝撃助剤などを含有してもよい。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で併用してもよい。なお、樹脂フィルムの力学物性および表面硬度の観点から、発泡剤、充填剤、艶消し剤、光拡散剤、軟化剤や可塑剤は多量に含有しないことが好ましい。樹脂フィルムにおける添加剤の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であってもよい。
(樹脂フィルムの成形方法)
樹脂フィルムの材料の調製方法に特に制限はなく、例えば、上記した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を、あるいはこれと必要に応じて添加される上記各種添加剤とを溶融混練する方法が挙げられる。混練を行うための装置としては、例えばニーダールーダー、二軸押出機、一軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。これらのうち二軸押出機が混練性の観点から好ましく、ベント付二軸押出機が着色抑制の観点からより好ましい。ベント付二軸押出機では減圧にしてまたは窒素を流通させて運転することが好ましい。溶融混練する際のせん断速度は10〜1000/secであることが好ましい。混練時の温度は好ましくは110〜300℃、より好ましくは180〜300℃、さらに好ましくは230〜270℃である。押出機で溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、ペレタイザ等でカットしてペレットにすることができる。
樹脂フィルムは、前述の樹脂フィルムの材料を成形することによって得られる。成形方法は特に限定されない。例えば押出成形(Tダイ法など)、射出成形、圧縮成形、インフレーション成形、ブロー成形、カレンダー成形、キャスト成形、真空成形などの公知の成形方法を採用することができ、押出成形法が好ましく採用される。押出成形法、特にTダイ法によれば、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れた樹脂フィルムを得ることができる。押出成形法、特にTダイ法に用いられる押出機は、1軸スクリューまたは2軸スクリューを有することが好ましい。また、樹脂フィルムの着色を抑制する観点から、ベントを使用して減圧下で溶融押出しすることが好ましい。さらに、均一な厚さの樹脂フィルムを得る観点から、押出機にギアポンプを接続し、更にフィッシュアイ欠点を低減させるためにポリマーフィルターを通して溶融押出しすることが好ましい。さらに、酸化劣化を抑制する観点から、窒素気流下での溶融押出しを行うことが好ましい。押出機から吐出される材料の温度は好ましくは230〜290℃、より好ましくは240〜280℃である。
樹脂フィルムの表面平滑性および厚さ均一性の観点から、押し出されたフィルム状溶融樹脂を、鏡面ロールまたは鏡面ベルトの間に引き取り挟圧することが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルト間の線圧は、表面平滑性の観点から、好ましくは10N/mm以上であり、より好ましく30N/mm以上である。鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は、表面平滑性、ヘーズ、外観などの観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。
樹脂フィルムは、フィルム状に成形した後、延伸処理を施したものでもよい。延伸処理によって樹脂フィルムの機械的強度が向上し、ひび割れし難くなる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。延伸時の温度は、好ましくは材料のガラス転移温度より5℃高い温度以上であり、好ましくは材料のガラス転移温度より40℃高い温度以下である。材料が複数のガラス転移温度を有する場合、最も高い値を係る延伸温度の基準として採用する。延伸の速度は好ましくは100〜5000%/分である。延伸処理は延伸工程の後に熱固定工程を有することが好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ない樹脂フィルムを得ることができる。
樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色方法としては、例えば樹脂フィルムを形成する材料自体に顔料および/または染料を含有させて、フィルム化前の材料自体を着色する方法;染料が分散した液中に樹脂フィルムを浸漬して着色させる染色法などが挙げられる。
樹脂フィルムは少なくとも一方の面に印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであってもよいし、無彩色のものであってもよい。
樹脂フィルムは単層フィルムであってもよいが、少なくとも一方の面に、金属および/または金属酸化物よりなる層、他の熱可塑性樹脂層などの他の層が積層された積層フィルムであってもよい。他の層を積層する方法は特に限定されず、直接または接着層を介して接合することができる。他の層は、1層または複数層を積層することができる。
上記他の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、他の(メタ)アクリル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。樹脂フィルムが、他の熱可塑性樹脂層などの他の層が積層された積層フィルムである場合、少なくとも1層のガラス転移温度が上記範囲内にあればよい。
樹脂フィルムの厚さは、好ましくは10〜500μmであり、より好ましくは20〜300μmであり、さらに好ましくは30〜250μmであり、よりさらに好ましくは50〜100μmである。
(用途)
本発明の切断方法で得られる切断された樹脂フィルムの用途は特に限定されず、例えば、車両外装、車両内装等の車両加飾部品;壁材、ウィンドウフィルム、窓枠、浴室壁材等の建材部品;食器、玩具、楽器等の日用雑貨;掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電加飾部品;キッチンドア表装材等のインテリア部材;船舶部材;タッチパネル表装材、パソコンハウジング、携帯電話ハウジング等の電子通信機;液晶保護板、導光板、導光フィルム、偏光子保護フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、各種ディスプレイの前面板および表装材、拡散板等の光学関係部品;太陽電池または太陽光発電用パネル表装材等の太陽光発電部材などが挙げられる。
中でも、液晶表示装置等の表示装置に用いられる部材、例えば、偏光子保護フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、液晶基板、光拡散シート、プリズムシート等の光学用途に好適に用いることができ、特に、偏光子保護フィルムや位相差フィルムにより好適に用いることができる。
また、本発明の切断方法で得られる切断された樹脂フィルムは、金属調加飾などの加飾用途にも好適に用いることができる。加飾方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において採用された、樹脂フィルムの切断方法の各評価方法を以下に示す。
[ガラス転移温度]
樹脂フィルムを構成する樹脂を、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計を用いて、230℃まで昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃まで10℃/分で昇温させたときの、2回目の昇温時の示差走査熱量測定で得られる中間点ガラス転移温度を採用した。樹脂が複数のガラス転移温度を有する場合、最も高いガラス転移温度の値を採用した。
[切断の安定性]
長さ3000mの樹脂フィルムを連続して切断するときの安定性を以下の通り評価した。下記評価基準でB以上であれば実用に供することができる。
A:各切断できなかった部分の長さが1m未満である。
B:各切断できなかった部分の長さが1〜500mである。
C:各切断できなかった部分の長さが500m超である。
[欠け]
切断した樹脂フィルムの切断面から任意で5点を選定し、レーザー顕微鏡(オリンパス社製、LEXT OLS4100)を用いて倍率50倍で観察し、以下の通り評価した。下記評価基準でB以上であれば実用に供することができる。
A:1点以下の位置で欠けがある。
B:2〜3点の位置で欠けがある。
C:4〜5点の位置で欠けがある。
[切粉]
切断した樹脂フィルムを流れ方向に1m切り出し、樹脂フィルムの厚さ方向から電灯(LED LENDSER M−17R)を照射して、樹脂フィルムの切断部付近を観察した。樹脂フィルムの流れ方向において、切粉が纏まって観察される位置の間隔を以下の通り評価した。下記評価基準でB以上であれば実用に供することができる。
A:纏まった切粉がないか、1箇所のみである。
B:纏まった切粉が2箇所以上あり、その間隔のうち最小のものが10cm超である。
C:纏まった切粉が2箇所以上あり、その間隔のうちの最小のものが10cm以下である。
[製造例]
国際公開第2016/121868号の合成例4を参照して得たメタクリル系重合体(重量平均分子量30000)80質量部と、同公報の合成例8を参照して得た3層構造の(メタ)アクリル系弾性体粒子20質量部をヘンシェルミキサーで混合し、260℃に設定されたスクリュー径75mmのベント付き二軸押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。係るペレットをベント付き単軸押出機のホッパーに供給し、260℃で溶融混練してギアポンプ、フィルター装置、スタティックミキサーの順に通過させ、リップ開度1mmのTダイからフィルム状に吐出して、いずれも鏡面を有し、かつ表面温度が90℃である金属弾性ロールおよび金属剛体ロールでバンク無く挟持および冷却して、メタクリル系樹脂からなり、厚さ80μmかつ幅1400mmであるアクリル樹脂フィルムを作製し、ロール状に巻き取ってフィルムロールとした。得られたアクリル樹脂フィルムのガラス転移温度は117℃であった。
使用した上刃および下刃を以下に記載する。
上刃:丸刃、ゲーベル式、直径98mm、片刃、超硬合金鋼製
下刃:丸刃、ゲーベル式、直径150mm、片刃、超硬合金鋼製
[実施例1]
製造例で得たアクリル樹脂フィルムをフィルムロールから巻き出し、速度30m/分で搬送した。係る搬送中のアクリル樹脂フィルムを挟み込むように、且つ該アクリル樹脂フィルムの搬送方向と平行に、該アクリル樹脂フィルムの上面側に上刃を配置し、さらに該アクリル樹脂フィルムの下面側に下刃を配置して、該アクリル樹脂フィルムの両端部から10mmの位置をそれぞれ切断した。このとき、上刃と下刃のかみ合わせ量を0.05mmとし、上刃の下刃側への押し込み量を0.10mmとし、切断時のアクリル樹脂フィルムの張力を120N/mとし、下刃の周速度に対する上刃の周速度の比を1.0とし、アクリル樹脂フィルムと下刃の抱き角を70度とした。評価結果を表1に示す。
[実施例2〜11、比較例1〜8]
実施例1において、上刃と下刃のかみ合わせ量、上刃の下刃側への押し込み量、アクリル樹脂フィルムの張力、およびアクリル樹脂フィルムの厚さを表1に示す通り変更したこと以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂フィルムを切断した。評価結果を表1に示す。
Figure 2019005845
実施例1〜11は、比較例1〜7に対し、上刃と下刃のかみ合わせ量が0.02〜0.60mmであり、上刃の下刃側への押し込み量が0.05〜0.35mmであり、アクリル樹脂フィルムの張力が30〜300N/mであるため、切断の安定性に優れ、欠けと切粉を低減できた。
比較例1は、上刃の下刃側への押し込み量が0.05mm未満であるため、アクリル樹脂フィルムを切断できなかった。
比較例2は、上刃の下刃側への押し込み量が0.35mm超であるため、安定して連続的に切断できず、欠けが多く見られた。
比較例3は、上刃の下刃側への押し込み量が0.05mm未満であるため、アクリル樹脂フィルムを切断できなかった。
比較例4は、上刃の下刃側への押し込み量が0.35mm超であるため、切断は安定したものの、欠けおよび切粉が多く見られた。
比較例5は、切断時のアクリル樹脂フィルムの張力が30N未満であるため、欠けが多く見られた。
比較例6は、上刃の下刃側への押し込み量が0.05mm未満であるため、アクリル樹脂フィルムを切断できなかった。
比較例7は、上刃の下刃側への押し込み量が0.05mm未満であるため、安定して連続的に切断できなかった。
比較例8は、上刃の下刃側への押し込み量が0.35mm超であるため、切断は安定したものの、欠けが多く見られた。
1 上刃
2 下刃
3 樹脂フィルム
3a 切断された樹脂フィルム
P 上刃の軸
L 上刃と下刃のかみ合わせ量
θ 樹脂フィルムと下刃の抱き角

Claims (10)

  1. ガラス転移温度が90℃以上である樹脂フィルムを切断する樹脂フィルムの切断方法であって、少なくとも一対の上刃と下刃を有する切断装置を用い、上刃の下刃側への押し込み量を0.05〜0.35mmとし、樹脂フィルムの張力を30〜300N/mとする、切断方法。
  2. 前記樹脂フィルムが熱可塑性樹脂フィルムである、請求項1に記載の切断方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である、請求項2に記載の切断方法。
  4. 前記(メタ)アクリル系樹脂が硬質メタクリル系樹脂とエラストマーとを含む組成物である、請求項3に記載の切断方法。
  5. 前記エラストマーが(メタ)アクリル系エラストマーである、請求項4に記載の切断方法。
  6. 上刃と下刃のかみ合わせ量が0.02〜0.60mmである、請求項1〜5のいずれかに記載の切断方法。
  7. 前記上刃および前記下刃が丸刃であり、下刃の周速度に対する上刃の周速度の比が0.8超1.2未満である、請求項1〜6のいずれかに記載の切断方法。
  8. 前記上刃および前記下刃を構成する素材が、高速度工具鋼、合金工具鋼、炭素工具鋼、ステンレス鋼、または、超硬合金鋼である、請求項1〜7のいずれかに記載の切断方法。
  9. 前記樹脂フィルムと前記下刃の抱き角が10〜150度である、請求項1〜8のいずれかに記載の切断方法。
  10. 前記樹脂フィルムの厚さが10〜500μmである、請求項1〜9のいずれかに記載の切断方法。

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