JP7321868B2 - (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム - Google Patents
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Description
例えば、透明性、表面硬度、表面平滑性などに優れ、かつ延伸した時、折り曲げた時、加熱した時に白化が小さいフィルムとして、メタクリル樹脂と特定のブロック共重合体の組成物からなるアクリル系樹脂フィルムが検討されている(特許文献1参照)。
また、透明性が高く、ガラス転移温度が高く、耐薬品性、耐白化性を有し、表面硬度の高いアクリル系フィルムとして、シンジオタクティシティが高いメタクリル樹脂とエラストマー成分とを含む樹脂組成物からなるアクリル系フィルムが検討されている(特許文献2参照)。
さらに、(メタ)アクリル系樹脂とアクリル系ブロック共重合体とを含有し、活性エネルギー線硬化樹脂との接着性に優れ、靭性が高く、かつ光学特性に優れるアクリル系樹脂組成物からなる成形体が検討されている(特許文献3参照)。
しかし、用いるアクリル系樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、ポリマーフィルター内の初期差圧が大きくなり、その結果、濾過部の目開きが拡大しフィルムの外観品位を低減させる可能性のある耐樹脂圧力値に到達するまでの時間が短くなる、つまり長期の連続生産性を確保できないという問題があった。
連続生産性を高くするには、用いるアクリル系樹脂組成物の溶融粘度を低くすることがひとつの方法として考えられるが、その場合、機械的強度が低下することがよく知られている。それに対して機械的物性を向上させるためにゴム粒子等を添加すると溶融粘度が上昇し、それに伴って初期差圧も上昇するため、機械的物性と連続生産性を両立させるには、溶融粘度の調整だけでは十分でなかった。
[1](メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含むアクリル系ブロック共重合体(C)と、を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、250℃、せん断速度122/秒での溶融粘度が800~1150Pa・sである(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[2]前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中の、前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)の合計含有量が10~40質量%である、上記[1]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[3]前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]が70/30~30/70である上記[1]または[2]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[4]前記(メタ)アクリル樹脂(A)が、重量平均分子量の異なる2種類以上の(メタ)アクリル樹脂(A)を含む上記[1]~[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
[6]厚さが20~200μmである上記[5]に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
[7]JIS P8115:2001に準じて測定したフィルム幅方向中央部MD方向の耐屈折回数が、20回以上である、上記[5]または[6]に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
[8]上記[5]~[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、少なくとも1層含む積層体。
[9]上記[5]~[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
[10]上記[5]~[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる加飾フィルム。
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂(A)としては、例えばメタクリル酸メチルに由来する構造単位(MMA単位)から主としてなるものを挙げることができる。
(メタ)アクリル樹脂(A)におけるMMA単位の含有量は、耐熱性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることがより更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、全ての構造単位がMMA単位であってもよい。また、(メタ)アクリル樹脂(A)が共重合体の場合、ランダム共重合体が好適である。
本発明に用いられるアクリル系架橋弾性体粒子(B)は、コアシェル型グラフト共重合体が好ましく、最外層と内層とを有する架橋ゴム粒子を用いることができる。このような架橋ゴム粒子の種類としては、最外層と内層を有すれば特に限定されず、例えば、芯(内層)が架橋ゴム重合体(I)-外殻(最外層)が熱可塑性重合体(II)の2層重合体粒子;芯(内層)が重合体(III)-内殻(内層)が架橋ゴム重合体(I)-外殻(最外層)が熱可塑性重合体(II)の3層重合体粒子;芯(内層)が架橋ゴム重合体(I)-第一内殻(内層)が重合体(III)-第二内殻(内層)が架橋ゴム重合体(I)-外殻(最外層)が熱可塑性重合体(II)の4層重合体粒子などのさまざまな積層構造が可能であるが、3層重合体粒子が好ましい。
また、架橋ゴム重合体(I)は、架橋ゴム重合体(I)の質量に対して、架橋性単量体に由来する構造単位を1~5質量%含むことが好ましく、1~3質量%含むことがより好ましい。上記含有量であることによって、適度な架橋密度となり、ゴム材料としての振る舞いが良好となる。
また、熱可塑性重合体(II)は、熱可塑性重合体(II)の質量に対して、アルキル基の炭素原子数が1~8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を0~20質量%含むことが好ましく、3~15質量%含むことがより好ましく、4~10質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、(メタ)アクリル樹脂(A)との相容性が良くなる。
重合体(III)は、重合体(III)の質量に対して、アルキル基の炭素原子数が1~8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を0~19.95質量%、架橋性単量体を0.05~2質量%含むことが好ましく、アルキル基の炭素原子数が1~8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を2~15質量%、架橋性単量体に由来する構造単位を0.05~1.5質量%含むことがより好ましく、アルキル基の炭素原子数が1~8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を4~10質量%、架橋性単量体に由来する構造単位を0.1~1質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、硬度が良好となり好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(C)は、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)とが結合した樹脂である。(c1)と(c2)の結合状態については特に制限はなく、(c1)-(c2)で表現されるジブロック共重合体、(c1)-(c2)-(c1)、(c2)-(c1)-(c2)で表現されるトリブロック共重合体、(c1)-((c2)-(c1))n、(c1)-((c2)-(c1))n-(c2)、(c2)-((c1)-(c2))nで表現されるマルチブロック共重合体、((c1)-(c2))n-X、((c2)-(c1))n-X(Xはカップリング残基)で表現されるスターブロック共重合体いずれでもよい。高温時の粘着性およびそれに起因する成形ロールへの密着を防止する観点、並びにコストの観点、さらに耐衝撃性などの物性の観点から、トリブロック共重合体が好ましく、(c2)-(c1)-(c2)のトリブロック共重合体がより好ましい。この場合、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)の両末端に結合する二つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)は、構成する単量体の種類、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合、重量平均分子量および立体規則性の其々が独立に、同一であっても異なっていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の重合体ブロックが含まれていてもよい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(メタ)アクリル樹脂(A)、アクリル系架橋弾性体粒子(B)、アクリル系ブロック共重合体(C)以外の他の重合体をさらに含むことができる。当該他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネン等のポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の250℃、せん断速度122/秒における溶融粘度は800~1150Pa・sであることが重要である。上記範囲を外れると、得られるフィルムの物性が大幅に低下したり、連続生産性が悪化する。これらの観点から、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の250℃、せん断速度122/秒における溶融粘度は850~1100Pa・sであることが好ましく、900~1050Pa・sであることがより好ましい。上記溶融粘度は、(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量、(メタ)アクリル系樹脂組成物中の(メタ)アクリル樹脂(A)、アクリル系架橋弾性体粒子(B)、アクリル系ブロック共重合体(C)の質量比、その他の添加剤の含有量などによって調節することができる。上記溶融粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は成形して(メタ)アクリル系樹脂フィルム(以下、単にフィルムともいう)とすることができる。上記フィルムの製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘーズのフィルムが得られる観点から、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を溶融混練してTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含むことが好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、溶融混練物(フィルムになっていてもよい)を鏡面ロールまたは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、20N/mm以上であることがより好ましい。また、挟み込む鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また、130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。溶融混練物を挟み込む鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度が60℃以上であると、得られるフィルムの表面平滑性、ヘーズが良好となり、表面温度が130℃以下であると、フィルムと鏡面ロールまたは鏡面ベルトが密着しすぎるのを抑制することができ、鏡面ロールまたは鏡面ベルトからフィルムを引き剥がす際に表面荒れや横皺が生じにくく、フィルムの外観を良好にすることができる。
なお、上記初期差圧は、下記式(1)により算出することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
(初期差圧)=P1-P2 (1)
式(1)中、P1はポリマーフィルター入口の樹脂圧力(MPa)、P2はポリマーフィルター出口の樹脂圧力(MPa)である。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。また、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値から、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HLC-8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZM-M」と「SuperHZ4000」を直結
・検出器 :東ソー株式会社製「RI-8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.35mL/分
・サンプル濃度:8mg/10mL
・カラム温度 :40℃
平均粒子径は、試料粒子を含むラテックスを水で200倍に希釈し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名「LA-950V2」)を用いて25℃で係る希釈液を分析し、粒子径を測定した。この際、(メタ)アクリル系架橋ゴム粒子(B)及び水の絶対屈折率をそれぞれ、1.4900、1.3333とした。
JIS K7121:2012に準拠して測定した。すなわち、試料を200℃まで一度昇温し、次いで30℃以下まで冷却し、その後30℃から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製 型式1D、キャピラリー 直径1mmφ、長さ40mm)を用いて、250℃、せん断速度122/秒で測定した。
各実施例または比較例で製造したフィルムの、幅方向中央部、両端部から100mmの位置、計3点での厚さをマイクロメーターで測定し、その平均値をフィルムの厚さとした。
各実施例及び比較例で製造したフィルムの幅方向中央部からMD方向に、JIS K 7127:1999のタイプ1Bの試験片を切り出した。この試験片を用いて、引張速度20mm/minの条件で3回測定を行い、その平均値を引張破断強度とした。
各実施例または比較例で製造したフィルムを15mm×110mmに切り出して試験片とし、MIT試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS P8115:2001に従って、荷重2.45N、折り曲げ角度135°、折り曲げ速度175rpm、試験片つかみ具の先端半径0.38mmの条件で、折り曲げを繰り返し、破断するまでの折り曲げ往復回数をカウントした。これをMD方向についてそれぞれ5回行い、当該折り曲げ往復回数の平均値(耐折強度)を算出した。
各実施例および比較例で製造した(メタ)アクリル系樹脂組成物を製膜する際の、濾過精度10μmのキャンドル型ポリマーフィルター入口と出口の樹脂圧力(それぞれP1(MPa)、P2(MPa))をモニターから読み取り、下記式(1)より初期差圧(MPa)を計算した。
(初期差圧)=P1-P2 (1)
なおP1、P2は(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶融樹脂が立上りからポリマーフィルター出口を流れた直後に、モニターに表示される値を30秒間観察し、その平均値とした。
(メタ)アクリル樹脂(A-1)の製造
メタクリル酸メチル99質量部およびアクリル酸メチル1質量部に重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n-オクチルメルカプタン)0.24質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、当該混合液420質量部と上記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル樹脂(A-1)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A-1)は、MMA単位の含有量が99質量%であり、アクリル酸メチル単位の含有量が1質量%であり、重量平均分子量(Mw)が95,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.1、ガラス転移温度が120℃であった。
(メタ)アクリル樹脂(A-2)の製造
使用した単量体をメタクリル酸メチル90質量部およびアクリル酸メチル10質量部に変更し、連鎖移動剤の量を0.39質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(A-2)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A-2)は、MMA単位の含有量が90質量%であり、アクリル酸メチル単位の含有量が10質量%であり、重量平均分子量が60,000、分子量分布が2.1、ガラス転移温度が111℃であった。
(メタ)アクリル樹脂(A-3)の製造
ブライン冷却できるジャケットおよび撹拌機つきのグラスライニング製5m3反応容器内を窒素で置換した。これに、室温(23℃)下にて、トルエン1600kg、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン3.19kg(13.9mol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液68.6kg(39.6mol)、および濃度1.3Mのsec-ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95質量%、n-ヘキサン5質量%)7.91kg(13.2mol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、20℃に保ちながら、蒸留精製したメタクリル酸メチル550kgを30分間かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500kgを加えて希釈した。次いで、当該希釈液を多量のメタノールに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、(メタ)アクリル樹脂(A-3)を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂(A-3)は、MMA単位の含有量が100質量%であり、重量平均分子量が58,900、分子量分布は1.1、ガラス転移温度が130℃であった。
(メタ)アクリル樹脂(A-4)の製造
メタクリル酸メチル100質量部からなる単量体に重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n-オクチルメルカプタン)0.21質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、上記混合液420質量部と上記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル樹脂(A-4)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A-4)は、MMA単位の含有量が100質量%であり、重量平均分子量が115,000、分子量分布が2.0、ガラス転移温度が120℃であった。
アクリル系架橋弾性体粒子(B-1)の製造
(1)撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間撹拌した。これに、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した。その後、アクリル酸ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(3)次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびn-オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
以上の操作によって、コアシェル型グラフト共重合体であるアクリル系架橋弾性体粒子(B-1)を含むラテックスを得た。アクリル系架橋弾性体粒子(B-1)を含むラテックスを凍結して凝固させた。次いで水洗・乾燥して粒子状のアクリル系架橋弾性体粒子(B-1)を得た。当該粒子の平均粒子径は0.23μmであった。
アクリル系ブロック共重合体(C-1)の製造
トルエン溶液中、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、イソブチルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)アルミニウムの触媒下で、sec-ブチルリチウムを重合開始剤として重合した。20質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2-1)を重合した後、50質量部のアクリル酸n-ブチルを滴下してアクリル酸エステル重合体ブロック(c1)を重合、さらに30質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2-2)を重合し、最後にメタノールで停止して、トリブロック共重合体であるアクリル系ブロック共重合体(C-1)を得た。得られたアクリル系ブロック共重合体(C-1)は、(c2-1)-(c1)-(c2-2)のトリブッロク構造をしており、(c2-1)-(c1)-(c2-2)の組成比は、30質量%-50質量%-20質量%であった。アクリル系ブロック共重合体(C-1)の220℃、せん断速度122/秒の溶融粘度は377Pa・sであった。ブロック(c2-1)とブロック(c2-2)は、ブロック(c2-1)の方がブロック(c2-2)より質量%が高く、(c2(H))/(c2(L))は1.5であった。
表1に示す組成比の各原料を重量フィーダーでコントロールしながら41mmφの二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、TEM41-SS)のホッパーに投入し、ホッパー下の温度を150℃、バレル温度を230℃にそれぞれ設定して、(メタ)アクリル系樹脂組成物をストランド状に押出し、ペレタイザーでカットすることで、(メタ)アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットを、ベント付きの65mmφの一軸押出機にギアポンプ、キャンドル型ポリマーフィルター(濾過精度10μm、濾過面積0.4m2)がこの順に設置され、さらにその先端に幅900mmのTダイが付いた押出装置を用いて、溶融押出温度(ベント付き押出機からTダイまでの温度を含めた製膜温度)260℃、吐出量60kg/hにて押出し、92℃の金属鏡面弾性ロールと88℃の金属鏡面剛体ロール間で挟み込んで製膜し、10.8m/分で引き取り、厚さ60μmのフィルムを製膜した。得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物と(メタ)アクリル系樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。なお、表1中空欄は配合なしを表す。
表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造し、それを用いてフィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造し、それを用いてフィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
比較例1、3、4は、溶融粘度が高く、初期差圧が高い傾向にあり、長期の連続生産性を確保できない可能性があった。なお、比較例3、4は比較例1同様に溶融粘度が高いことから、得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルムの評価を行わなかった。一方で、比較例2は低粘度で、耐屈折回数が低く、フィルムとしての物性が不足していた。
Claims (8)
- (メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含むアクリル系ブロック共重合体(C)と、を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上、およびアクリル酸メチルに由来する構造単位を20質量%以下含有し、
前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)がアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を70~98質量%含む架橋ゴム重合体(I)からなる内層およびメタクリル酸メチルに由来する構造単位を80~100質量%含む熱可塑性重合体(II)からなる最外層を少なくとも有し、
前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)の合計含有量が前記(メタ)アクリル樹脂(A)に対して30~40質量%であり、
250℃、せん断速度122/秒での溶融粘度が800~1150Pa・sである(メタ)アクリル系樹脂組成物。 - 前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]が70/30~30/70である請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 前記(メタ)アクリル樹脂(A)が、重量平均分子量の異なる2種類以上の(メタ)アクリル樹脂(A)を含む請求項1または2項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
- 厚さが20~200μmである請求項4に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
- 請求項4~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、少なくとも1層含む積層体。
- 請求項4~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
- 請求項4~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる加飾フィルム。
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