JP2021059665A - (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム - Google Patents

(メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム Download PDF

Info

Publication number
JP2021059665A
JP2021059665A JP2019184646A JP2019184646A JP2021059665A JP 2021059665 A JP2021059665 A JP 2021059665A JP 2019184646 A JP2019184646 A JP 2019184646A JP 2019184646 A JP2019184646 A JP 2019184646A JP 2021059665 A JP2021059665 A JP 2021059665A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meth
acrylic resin
acrylic
mass
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019184646A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7321868B2 (ja
Inventor
浩晃 杉井
Hiroaki Sugii
浩晃 杉井
英明 武田
Hideaki Takeda
英明 武田
東田 昇
Noboru Higashida
昇 東田
勤 桜井
Tsutomu Sakurai
勤 桜井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2019184646A priority Critical patent/JP7321868B2/ja
Publication of JP2021059665A publication Critical patent/JP2021059665A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7321868B2 publication Critical patent/JP7321868B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】機械的物性が高い(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長期間製造可能な、すなわち連続生産性が良好な(メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いて得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供する。【解決手段】(メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含むアクリル系ブロック共重合体(C)と、を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、250℃、せん断速度122/秒での溶融粘度が800〜1150Pa・sである(メタ)アクリル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、(メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルムに関する。
(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いたフィルムやシートは、透明性や耐候性に優れていることから、光学用製品、加飾用製品、車両用製品、電気用機器、看板等の多くの用途に使用されており、さらなる改良を求めて各種検討がなされている。
例えば、透明性、表面硬度、表面平滑性などに優れ、かつ延伸した時、折り曲げた時、加熱した時に白化が小さいフィルムとして、メタクリル樹脂と特定のブロック共重合体の組成物からなるアクリル系樹脂フィルムが検討されている(特許文献1参照)。
また、透明性が高く、ガラス転移温度が高く、耐薬品性、耐白化性を有し、表面硬度の高いアクリル系フィルムとして、シンジオタクティシティが高いメタクリル樹脂とエラストマー成分とを含む樹脂組成物からなるアクリル系フィルムが検討されている(特許文献2参照)。
さらに、(メタ)アクリル系樹脂とアクリル系ブロック共重合体とを含有し、活性エネルギー線硬化樹脂との接着性に優れ、靭性が高く、かつ光学特性に優れるアクリル系樹脂組成物からなる成形体が検討されている(特許文献3参照)。
国際公開第2015/076398号 国際公開第2016/080124号 国際公開第2018/003788号
光学用途や加飾用途等で高品位外観が要求されるフィルムやシートは、外観品位を損なうフィッシュアイ欠点等を低減するために、フィルム製膜時に、ポリマーフィルターと呼ばれる濾過装置を用いる方法が一般的に行われている。
しかし、用いるアクリル系樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、ポリマーフィルター内の初期差圧が大きくなり、その結果、濾過部の目開きが拡大しフィルムの外観品位を低減させる可能性のある耐樹脂圧力値に到達するまでの時間が短くなる、つまり長期の連続生産性を確保できないという問題があった。
連続生産性を高くするには、用いるアクリル系樹脂組成物の溶融粘度を低くすることがひとつの方法として考えられるが、その場合、機械的強度が低下することがよく知られている。それに対して機械的物性を向上させるためにゴム粒子等を添加すると溶融粘度が上昇し、それに伴って初期差圧も上昇するため、機械的物性と連続生産性を両立させるには、溶融粘度の調整だけでは十分でなかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、機械的物性が高い(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長期間製造可能な、すなわち連続生産性が良好な(メタ)アクリル系樹脂組成物、およびそれを用いて得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、(メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル系ブロック共重合体(C)とを含み、250℃、せん断速度122/秒での溶融粘度が特定の範囲内である(メタ)アクリル系樹脂組成物が、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[10]を提供するものである。
[1](メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含むアクリル系ブロック共重合体(C)と、を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、250℃、せん断速度122/秒での溶融粘度が800〜1150Pa・sである(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[2]前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中の、前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)の合計含有量が10〜40質量%である、上記[1]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[3]前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]が70/30〜30/70である上記[1]または[2]に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[4]前記(メタ)アクリル樹脂(A)が、重量平均分子量の異なる2種類以上の(メタ)アクリル樹脂(A)を含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
[6]厚さが20〜200μmである上記[5]に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
[7]JIS P8115:2001に準じて測定したフィルム幅方向中央部MD方向の耐屈折回数が、20回以上である、上記[5]または[6]に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
[8]上記[5]〜[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、少なくとも1層含む積層体。
[9]上記[5]〜[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
[10]上記[5]〜[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる加飾フィルム。
本発明によれば、機械的物性が高い(メタ)アクリル系樹脂フィルムを長期間製造可能な、すなわち連続生産性が良好な(メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いて得られる(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供することができる。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態又は実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリル系樹脂フィルム」とは、(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂フィルムを意味する。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含むアクリル系ブロック共重合体(C)と、を含有する。
<(メタ)アクリル樹脂(A)>
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂(A)としては、例えばメタクリル酸メチルに由来する構造単位(MMA単位)から主としてなるものを挙げることができる。
(メタ)アクリル樹脂(A)におけるMMA単位の含有量は、耐熱性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることがより更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、全ての構造単位がMMA単位であってもよい。また、(メタ)アクリル樹脂(A)が共重合体の場合、ランダム共重合体が好適である。
(メタ)アクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチル以外の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。このような他の単量体としては、メタクリル酸メチルと共重合可能であれば特に制限なく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはその酸無水物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセン等の共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂(A)の立体規則性に特に制限はなく、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有する(メタ)アクリル樹脂(A)を用いることができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、1種の(メタ)アクリル樹脂(A)のみを含んでいてもよいが、低粘度かつ高い機械的物性という特性をより実現しやすくする観点から、2種以上の(メタ)アクリル樹脂(A)を含んでいることが好ましく、特に重量平均分子量の異なる2種類(A−1、A−2)の(メタ)アクリル樹脂(A)を少なくとも含むことが好ましい。重量平均分子量の異なる2種類(A−1、A−2)の(メタ)アクリル樹脂(A)を含むことにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶融粘度を容易に後述の範囲内とすることができる。
耐熱性と高物性を確保する観点から、(メタ)アクリル樹脂(A−1)の好ましい重量平均分子量は80,000〜150,000であり、より好ましくは85,000〜120,000であり、更に好ましくは90,000〜100,000である。(メタ)アクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量が80,000以上であると機械物性が良好となり、(メタ)アクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量が150,000以下であると溶融粘度が高くなり過ぎるのを抑制することができ、加工性が良好となる。
連続生産性を確保する観点から、(メタ)アクリル樹脂(A−2)の好ましい重量平均分子量は40,000以上80,000未満であり、より好ましくは50,000〜70,000であり、更に好ましくは55,000〜65,000である。(メタ)アクリル樹脂(A−2)の重量平均分子量が40,000以上であると機械物性が良好となり、(メタ)アクリル樹脂(A−2)の重量平均分子量が80,000未満であると溶融粘度が高くなり過ぎるのを抑制することができ、加工性が良好となる。
(メタ)アクリル樹脂(A)の分子量分布は、1.05〜4.0であることが好ましく、1.3〜3.0であることがより好ましい。分子量分布が1.05以上であると成形加工がしやすくなり、分子量分布が4.0以下であるとクリープ特性などの物性が良好になる。分子量分布は、GPCで測定した際の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表され、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
(メタ)アクリル樹脂(A)の製造方法に特に制限はなく、例えば、メタクリル酸メチルを主体とする単量体を重合することによって得ることができ、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等により製造できる。この中で塊状重合法および溶液重合法のいずれかが好ましい。中でも塊状重合法が好ましく、塊状重合法の中でも連続塊状重合法が好ましい。なお、(メタ)アクリル樹脂(A)の重合度は、重合開始剤および連鎖移動剤の量によって調整することができる。
(メタ)アクリル樹脂(A)としては、市販品を用いてもよい。かかるメタクリル樹脂としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は80〜140℃であることが好ましく、より好ましくは95〜130℃であり、更に好ましくは110〜120℃である。ガラス転移温度はメタクリル酸メチルと共重合する単量体の種類や量、重合温度などにより立体規則性を変更することなどによって調整することができる。なおガラス転移温度はJIS K7121:2012に準拠して測定した値である。すなわち、(メタ)アクリル樹脂(A)を200℃まで一度昇温し、次いで30℃以下まで冷却し、その後30℃から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にて示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度とすることができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物中の(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。また、(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量の上限値は、90質量%であることが好ましい。
<アクリル系架橋弾性体粒子(B)>
本発明に用いられるアクリル系架橋弾性体粒子(B)は、コアシェル型グラフト共重合体が好ましく、最外層と内層とを有する架橋ゴム粒子を用いることができる。このような架橋ゴム粒子の種類としては、最外層と内層を有すれば特に限定されず、例えば、芯(内層)が架橋ゴム重合体(I)−外殻(最外層)が熱可塑性重合体(II)の2層重合体粒子;芯(内層)が重合体(III)−内殻(内層)が架橋ゴム重合体(I)−外殻(最外層)が熱可塑性重合体(II)の3層重合体粒子;芯(内層)が架橋ゴム重合体(I)−第一内殻(内層)が重合体(III)−第二内殻(内層)が架橋ゴム重合体(I)−外殻(最外層)が熱可塑性重合体(II)の4層重合体粒子などのさまざまな積層構造が可能であるが、3層重合体粒子が好ましい。
架橋ゴム重合体(I)は、架橋ゴム重合体(I)の質量に対して、アルキル基の炭素原子数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を70〜98質量%含むことが好ましく、75〜90質量%含むことがより好ましく、80〜85質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、柔軟なゴム材料となり耐衝撃性を付与しやすくなる。また架橋ゴム重合体(I)は、架橋ゴム重合体(I)の質量に対して、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位を2〜30質量%含むことが好ましく、10〜25質量%含むことがより好ましく、15〜20質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、架橋ゴム重合体(I)の屈折率を(メタ)アクリル樹脂(A)と合わせるように調整でき、高い透明性を持つ(メタ)アクリル系樹脂組成物を得ることができる。
また、架橋ゴム重合体(I)は、架橋ゴム重合体(I)の質量に対して、架橋性単量体に由来する構造単位を1〜5質量%含むことが好ましく、1〜3質量%含むことがより好ましい。上記含有量であることによって、適度な架橋密度となり、ゴム材料としての振る舞いが良好となる。
熱可塑性重合体(II)は、熱可塑性重合体(II)の質量に対して、MMA単位を80〜100質量%含むことが好ましく、85〜97質量%含むことがより好ましく、90〜96質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、(メタ)アクリル樹脂(A)との相容性が良くなる。
また、熱可塑性重合体(II)は、熱可塑性重合体(II)の質量に対して、アルキル基の炭素原子数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を0〜20質量%含むことが好ましく、3〜15質量%含むことがより好ましく、4〜10質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、(メタ)アクリル樹脂(A)との相容性が良くなる。
重合体(III)は、重合体(III)の質量に対して、MMA単位を80〜99.95質量%含むことが好ましく、85〜98質量%含むことがより好ましく、90〜96質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、硬度が良好となり好ましい。
重合体(III)は、重合体(III)の質量に対して、アルキル基の炭素原子数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を0〜19.95質量%、架橋性単量体を0.05〜2質量%含むことが好ましく、アルキル基の炭素原子数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を2〜15質量%、架橋性単量体に由来する構造単位を0.05〜1.5質量%含むことがより好ましく、アルキル基の炭素原子数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構造単位を4〜10質量%、架橋性単量体に由来する構造単位を0.1〜1質量%含むことが更に好ましい。上記含有量であることによって、硬度が良好となり好ましい。
上記各単量体の含有量は、層ごとに計算される。例えば、4層重合体粒子において、芯(内層)と第二内殻(内層)がともに架橋ゴム重合体(I)で構成される場合、各単量体に由来する構造単位の含有量は、芯(内層)と第二内殻(内層)、別々に計算される。
コアシェル型グラフト共重合体の透明性の観点から、隣り合う層の屈折率の差が、好ましくは0.005未満であり、より好ましくは0.004未満であり、更に好ましくは0.003未満になるように各層に含有される重合体を選択することが好ましい。
本発明に用いられるコアシェル型グラフト共重合体における内層と最外層との質量比は、好ましくは前者/後者=30/70〜95/5であり、より好ましくは70/30〜90/10である。本明細書では、コアシェル型グラフト共重合体の最外層は粒子の最も外側にある層を、内層は最外層より内側にある全ての層を、それぞれ指すこととする。内層において、架橋ゴム重合体(I)を含有する層が占める割合は、好ましくは20〜70質量%であり、より好ましくは30〜50質量%である。
本発明におけるコアシェル型グラフト共重合体の平均粒子径は、好ましくは0.05〜1μmであり、より好ましくは0.07〜0.5μmであり、更に好ましくは0.1〜0.4μmであり、特に好ましくは0.15〜0.3μmである。このような範囲内の平均粒子径を有するコアシェル型グラフト共重合体を用いると、少量の配合で、靭性を発現することができ、剛性や表面硬度を損なう可能性を低く抑えることができる。なお、本明細書における平均粒子径は、光散乱法によって測定される体積基準の粒径分布における算術平均値であり、具体的には実施例に記載の方法で求めることができる。
コアシェル型グラフト共重合体の製造方法は特に制限されず、公知の方法で行うことができるが、乳化重合法が好適である。具体的には、芯(内層)を構成する単量体の乳化重合を行ってシード粒子を得、このシード粒子の存在下に各層を構成する単量体を逐次添加して順次最外層までの重合を行うことによって得ることができる。
(メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)との質量比[(A)/(B)]は、60/40〜96/4であることが好ましく、65/35〜95/5であることがより好ましく、70/30〜94/6であることが更に好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)との質量比[(A)/(B)]がこの範囲にあることにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶融粘度を後述の範囲内に調整しやすくなる。
<アクリル系ブロック共重合体(C)>
アクリル系ブロック共重合体(C)は、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)とが結合した樹脂である。(c1)と(c2)の結合状態については特に制限はなく、(c1)−(c2)で表現されるジブロック共重合体、(c1)−(c2)−(c1)、(c2)−(c1)−(c2)で表現されるトリブロック共重合体、(c1)−((c2)−(c1))n、(c1)−((c2)−(c1))n−(c2)、(c2)−((c1)−(c2))nで表現されるマルチブロック共重合体、((c1)−(c2))n−X、((c2)−(c1))n−X(Xはカップリング残基)で表現されるスターブロック共重合体いずれでもよい。高温時の粘着性およびそれに起因する成形ロールへの密着を防止する観点、並びにコストの観点、さらに耐衝撃性などの物性の観点から、トリブロック共重合体が好ましく、(c2)−(c1)−(c2)のトリブロック共重合体がより好ましい。この場合、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)の両末端に結合する二つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)は、構成する単量体の種類、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合、重量平均分子量および立体規則性の其々が独立に、同一であっても異なっていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の重合体ブロックが含まれていてもよい。
アクリル系ブロック共重合体(C)がアクリル酸エステル重合体ブロック(c1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含む(c2)−(c1)−(c2)のトリブロック共重合体である場合、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)の両末端に結合する二つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)は、質量%が実質的に同一であってもよいが、溶融時の流動性を向上させる観点、また均一分散を容易にさせる観点から、二つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)の質量%は異なることが好ましい。即ち、アクリル系ブロック共重合体(C)を100質量%としたときに、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)の両末端に其々結合するメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)の質量%が互いに異なるものとすることが好ましい。溶融時の流動性を向上させることにより、高品位なフィルムや成形体を得ることができ、更に均一分散させることによりフィッシュアイが低減したり、弾性率と耐衝撃性のバランスが良好になる。
二つのメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)の質量%が互いに異なるとき、質量%が小さい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2(L))の質量%に対する質量%が大きい方のメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2(H))の質量%の比が1.5以上であることがより好ましく、更に好ましくは1.8以上であり、その上限は4であることが好ましく、3であることが更に好ましい。(c2(L))の質量%に対する(c2(H))の質量%が上記範囲内であると、溶融時の流動性を向上させることができ、高品位なフィルムや成形体を得やすくなる。
アクリル系ブロック共重合体(C)を構成するアクリル酸エステル重合体ブロック(c1)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、より更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
かかるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)を形成できる。なかでも、コスト、低温特性などの観点からアクリル酸n−ブチル単独で重合したものが好ましい。
アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下であり、全ての構造単位がアクリル酸エステルに由来する構造単位であってもよい。
かかるアクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。アクリル酸エステル以外の単量体を用いる場合には、1種単独でまたは2種以上併用して、前述のアクリル酸エステルと共重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構造単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは98質量%以上であり、全ての構造単位がメタクリル酸エステルに由来する構造単位であってもよい。
かかるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
かかるメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のメタクリル酸エステルと共重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を形成できる。
アクリル系ブロック共重合体(C)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)の割合は、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)の合計100%に対して、透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性、耐衝撃性の観点から、40質量%以上であることが好ましく、43質量%以上であることがより好ましく、47質量%以上であることが更に好ましい。また、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(C)中に含まれるアクリル酸エステル重合体ブロック(c1)とメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)との合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)の立体規則性は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が60%以上であることが好ましい。シンジオタクティシティを60%以上とすることにより、ガラス転移温度を高め、本発明の樹脂組成物において優れた耐熱性を示す。メタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)のrrは、より好ましくは65%以上であり、更に好ましくは70%以上であり、特に好ましくは75%以上である。
アクリル系ブロック共重合体(C)の220℃、せん断速度122/秒における溶融粘度は、75〜1500Pa・sの範囲であることが好ましい。上記溶融粘度は、150Pa・s以上であることがより好ましく、300Pa・s以上とすることが更に好ましい。また、1000Pa・s以下であることがより好ましく、700Pa・s以下であることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、溶融押出成形において良好な溶融張力を保持することができ、良好なフィルムを容易に得ることができ、得られたフィルムの破断強度などの力学物性を良好に保つことができる。更に、溶融押出成形で得られるフィルムの表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツの発生を効果的に抑制し、良好なフィルムを得ることができる。
アクリル系ブロック共重合体(C)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
アクリル系ブロック共重合体(C)の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いてアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いて有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用いて重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用いて銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるアクリル系ブロック共重合体(C)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、アクリル系ブロック共重合体(C)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、且つ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いて有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物中のアクリル系架橋弾性体粒子(B)とアクリル系ブロック共重合体(C)の合計含有量は、10〜40質量%であることが好ましく、13〜33質量%であることがより好ましく、17〜25質量%であることが更に好ましい。アクリル系架橋弾性体粒子(B)とアクリル系ブロック共重合体(C)の合計含有量がこの範囲にあることにより、硬度と耐衝撃性のバランスに優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物が得られる。
また、アクリル系架橋弾性体粒子(B)とアクリル系ブロック共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]は、70/30〜30/70であることが好ましく、60/40〜30/70であることがより好ましく、45/55〜30/70であることが更に好ましい。アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル系ブロック共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]がこの範囲にあることにより、低粘度でありながら、製膜したフィルムが高い引張破断強度を発現することができる。
アクリル系架橋弾性体粒子(B)とアクリル系ブロック共重合体(C)との両方を用いることによって、溶融粘度を上昇させることなく(すなわち連続生産性が良好で)機械的物性が高い樹脂組成物を得るという本発明の効果を発現する機序は、明確ではないが、以下のように考えらえる。例えば、アクリル系ブロック共重合体(C)が(メタ)アクリル樹脂(A)とアクリル系架橋弾性体粒子(B)の相容化材として働くことによって、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を用いたフィルムに変形を生じさせるような力が加わった際、アクリル系ブロック共重合体(C)の軟質部分が変形してフィルムに加わった力を吸収することにより、マトリクス樹脂である(メタ)アクリル樹脂(A)とアクリル系架橋弾性体粒子(B)との剥離を抑制し、機械的物性を向上させているものと考えられる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、高分子加工助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤などの添加剤を添加してもよい。なお、本発明のフィルムの力学物性および表面硬度の観点から発泡剤、充填剤、艶消し剤、光拡散剤、軟化剤、可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。
<他の重合体>
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(メタ)アクリル樹脂(A)、アクリル系架橋弾性体粒子(B)、アクリル系ブロック共重合体(C)以外の他の重合体をさらに含むことができる。当該他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物中の(メタ)アクリル樹脂(A)とアクリル系架橋弾性体粒子(B)とアクリル系ブロック共重合体(C)との合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい。
<(メタ)アクリル系樹脂組成物>
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の250℃、せん断速度122/秒における溶融粘度は800〜1150Pa・sであることが重要である。上記範囲を外れると、得られるフィルムの物性が大幅に低下したり、連続生産性が悪化する。これらの観点から、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の250℃、せん断速度122/秒における溶融粘度は850〜1100Pa・sであることが好ましく、900〜1050Pa・sであることがより好ましい。上記溶融粘度は、(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量、(メタ)アクリル系樹脂組成物中の(メタ)アクリル樹脂(A)、アクリル系架橋弾性体粒子(B)、アクリル系ブロック共重合体(C)の質量比、その他の添加剤の含有量などによって調節することができる。上記溶融粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を調製する方法は特に制限されないが、溶融混練して混合する方法が好ましい。具体的には、(メタ)アクリル樹脂(A)、アクリル系架橋弾性体粒子(B)、アクリル系ブロック共重合体(C)、必要に応じてさらに高分子加工助剤、紫外線吸収剤などのその他の添加剤や他の重合体を事前にドライブレンドし、溶融混練する方法が一般的に用いられる。混合操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行うことができる。特に、混練性、生産性の観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。溶融混練する際のせん断速度は10〜1,000/秒であることが好ましい。混合・混練時の温度は、通常150〜320℃であると良く、好ましくは200〜300℃である。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融混練または窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。このようにして本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を例えばペレット状の形態で得ることができる。
<(メタ)アクリル系樹脂フィルム>
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は成形して(メタ)アクリル系樹脂フィルム(以下、単にフィルムともいう)とすることができる。上記フィルムの製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘーズのフィルムが得られる観点から、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を溶融混練してTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含むことが好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、溶融混練物(フィルムになっていてもよい)を鏡面ロールまたは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロールまたは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、20N/mm以上であることがより好ましい。また、挟み込む鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また、130℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。溶融混練物を挟み込む鏡面ロールまたは鏡面ベルトの表面温度が60℃以上であると、得られるフィルムの表面平滑性、ヘーズが良好となり、表面温度が130℃以下であると、フィルムと鏡面ロールまたは鏡面ベルトが密着しすぎるのを抑制することができ、鏡面ロールまたは鏡面ベルトからフィルムを引き剥がす際に表面荒れや横皺が生じにくく、フィルムの外観を良好にすることができる。
Tダイ法による製造方法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は好ましくは230℃以上であり、より好ましくは240℃以上である。また、溶融押出温度は290℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。また、溶融押出装置を使用する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用して減圧下で溶融押出し、均一膜厚のフィルムを製造する観点からギアポンプを付け、更にフィッシュアイ欠点を低減させるためにポリマーフィルターを付けて溶融押出することが好ましい。更に、酸化劣化を抑制する観点から窒素気流下での溶融押出を行うことが好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなるフィルムを、押出機、ギアポンプ、ポリマーフィルターおよびTダイをこの順に備えた設備で製造する場合、押出機から、ギアポンプ、ポリマーフィルターを含め、Tダイまでの温度を230〜290℃の範囲で制御することが好ましい。このような温度範囲で製造することにより、劣化が少なく、フィッシュアイが少なく、機械的物性、光学特性に優れたフィルムが得られる。
また、ポリマーフィルターの入口と出口の樹脂圧力の差(初期差圧)は、好ましくは5.5MPa以下であり、より好ましくは5.0MPa以下であり、更に好ましくは4.5MPa以下であり、特に好ましくは4.0MPa以下であり、その下限値は2.5MPaであってもよく、3.0MPaであってもよく、3.5MPaであってもよい。初期差圧が上記範囲にあることにより、フィルムの長期連続生産が可能となる。
なお、上記初期差圧は、下記式(1)により算出することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
(初期差圧)=P1−P2 (1)
式(1)中、P1はポリマーフィルター入口の樹脂圧力(MPa)、P2はポリマーフィルター出口の樹脂圧力(MPa)である。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚さは、20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜150μmであり、更に好ましくは40〜80μmである。厚さが20μm以上であることにより、剛性、こしを有したフィルムとなる。一方、200μm以下であることにより、ラミネート性、ハンドリング性、切断性、打抜き性などの二次加工性が向上し、また単位面積あたりの単価を抑えることができ、経済性に優れるフィルムとなる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、JIS K 7127:1999に準じて測定したフィルム幅方向中央部からMD方向(押出方向)の引張破断強度が、45MPa以上であることができ、より好ましくは50MPa以上であり、更に好ましくは53MPa以上であり、より更に好ましくは55MPa以上である。本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの引張破断強度の上限値は90MPaであってもよく、80MPaであってもよく、70MPaであってもよい。(メタ)アクリル系樹脂フィルムの引張破断強度が上記性能を有することにより、当該樹脂フィルムを加飾フィルム、偏光子保護フィルムなどにして使用して、積層体から再剥離する際、最終製品の取り扱い時に引き裂きを抑制でき好ましい。なお、上記引張破断強度は具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、JIS P8115:2001に準じて測定したフィルム幅方向中央部MD方向の耐屈折回数が、20回以上であることができ、より好ましくは40回以上であり、更に好ましくは70回以上であり、より更に好ましくは150回以上である。耐屈折回数が上記範囲であることにより、当該樹脂フィルムを加飾フィルム、偏光子保護フィルムなどとして使用する際にも、衝撃を受けた時や加工、最終製品の取り扱い時に割れを抑制でき好ましい。耐屈折回数は試験片が破断するまでの往復折曲げ回数として測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、延伸処理が施されたものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られる観点から、下限値は(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度よりも5℃高い温度であることが好ましく、上限値は(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度よりも40℃高い温度であることが好ましい。延伸温度が上記下限値以上であると、延伸中にフィルムが破断しにくくなり、延伸温度が上記上限値以下であると、延伸処理の効果が十分に発揮されフィルムの強度を高めることができる。延伸は、通常、100〜5,000%/分の延伸速度で行われる。延伸速度が100%/分以上であると、フィルムの強度を高めることができ、また生産性も向上する。また延伸速度が5,000%/分以下であると、フィルムを均一に延伸することができる。また、延伸の後、熱固定を行うことが更に好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色法としては、顔料又は染料を含有させて、フィルム化前の(メタ)アクリル系樹脂組成物自体を着色する方法;染料が分散した液中に(メタ)アクリル系樹脂組成物からなるフィルムを浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩を付与することができる。模様は有彩色のものであってもよいし、無彩色のものであってもよい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、当該樹脂フィルムを少なくとも1層含む積層体(積層フィルム)であってもよい。具体的には、本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に、(i)金属および/または金属酸化物よりなる層、(ii)熱可塑性樹脂層および(iii)基材層のうち少なくとも1層が他の層としてさらに積層された積層フィルムであってもよい。他の層を積層する方法は特に限定されず、直接または接着層を介して接合することができる。基材層としては、例えば、木製基材、ケナフ等の非木質繊維などを用いてもよい。他の層は、1層のみ積層してもよいし、複数の層を積層してもよい。
積層に適した熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(A)以外の(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
上記の積層フィルムの厚さは、用途により変動し得るもので特に限定されないが、二次加工性の観点からは500μm以下であることが好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、加飾フィルムや光学用フィルムなどとして好適に用いられる。光学用フィルムの具体例としては、例えば、偏光子保護フィルムが挙げられる。当該偏光子保護フィルムは、それを含む偏光板、さらにはその偏光板を少なくとも1枚含む液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置などに用いることができる。また本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、導光フィルム、モスアイフィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、液晶ASFフィルム、透明導電フィルム、遮熱フィルム、各種バリアーフィルム等の光学関係の基材フィルムなどとして好適に用いることができる。
より具体的な例として、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、意匠性の要求される成形品や高度な光学特性が要求される成形品、即ち、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク等の表面の加飾フィルム兼保護フィルム、壁紙、マーキングフィルムなどに好適に用いることができる。
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、上記特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせてなる全ての態様を包含する。なお、実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)〕
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。また、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値から、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZM−M」と「SuperHZ4000」を直結
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.35mL/分
・サンプル濃度:8mg/10mL
・カラム温度 :40℃
〔平均粒子径〕
平均粒子径は、試料粒子を含むラテックスを水で200倍に希釈し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名「LA−950V2」)を用いて25℃で係る希釈液を分析し、粒子径を測定した。この際、(メタ)アクリル系架橋ゴム粒子(B)及び水の絶対屈折率をそれぞれ、1.4900、1.3333とした。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
JIS K7121:2012に準拠して測定した。すなわち、試料を200℃まで一度昇温し、次いで30℃以下まで冷却し、その後30℃から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
〔溶融粘度〕
キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製 型式1D、キャピラリー 直径1mmφ、長さ40mm)を用いて、250℃、せん断速度122/秒で測定した。
〔フィルムの厚さ〕
各実施例または比較例で製造したフィルムの、幅方向中央部、両端部から100mmの位置、計3点での厚さをマイクロメーターで測定し、その平均値をフィルムの厚さとした。
〔引張破断強度〕
各実施例及び比較例で製造したフィルムの幅方向中央部からMD方向に、JIS K 7127:1999のタイプ1Bの試験片を切り出した。この試験片を用いて、引張速度20mm/minの条件で3回測定を行い、その平均値を引張破断強度とした。
〔耐屈折回数〕
各実施例または比較例で製造したフィルムを15mm×110mmに切り出して試験片とし、MIT試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS P8115:2001に従って、荷重2.45N、折り曲げ角度135°、折り曲げ速度175rpm、試験片つかみ具の先端半径0.38mmの条件で、折り曲げを繰り返し、破断するまでの折り曲げ往復回数をカウントした。これをMD方向についてそれぞれ5回行い、当該折り曲げ往復回数の平均値(耐折強度)を算出した。
〔ポリマーフィルター前後での差圧(初期差圧)〕
各実施例および比較例で製造した(メタ)アクリル系樹脂組成物を製膜する際の、濾過精度10μmのキャンドル型ポリマーフィルター入口と出口の樹脂圧力(それぞれP1(MPa)、P2(MPa))をモニターから読み取り、下記式(1)より初期差圧(MPa)を計算した。
(初期差圧)=P1−P2 (1)
なおP1、P2は(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶融樹脂が立上りからポリマーフィルター出口を流れた直後に、モニターに表示される値を30秒間観察し、その平均値とした。
[製造例1]
(メタ)アクリル樹脂(A−1)の製造
メタクリル酸メチル99質量部およびアクリル酸メチル1質量部に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.24質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、当該混合液420質量部と上記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル樹脂(A−1)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A−1)は、MMA単位の含有量が99質量%であり、アクリル酸メチル単位の含有量が1質量%であり、重量平均分子量(Mw)が95,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.1、ガラス転移温度が120℃であった。
[製造例2]
(メタ)アクリル樹脂(A−2)の製造
使用した単量体をメタクリル酸メチル90質量部およびアクリル酸メチル10質量部に変更し、連鎖移動剤の量を0.39質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂(A−2)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A−2)は、MMA単位の含有量が90質量%であり、アクリル酸メチル単位の含有量が10質量%であり、重量平均分子量が60,000、分子量分布が2.1、ガラス転移温度が111℃であった。
[製造例3]
(メタ)アクリル樹脂(A−3)の製造
ブライン冷却できるジャケットおよび撹拌機つきのグラスライニング製5m反応容器内を窒素で置換した。これに、室温(23℃)下にて、トルエン1600kg、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン3.19kg(13.9mol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液68.6kg(39.6mol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95質量%、n−ヘキサン5質量%)7.91kg(13.2mol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、20℃に保ちながら、蒸留精製したメタクリル酸メチル550kgを30分間かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチルの重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500kgを加えて希釈した。次いで、当該希釈液を多量のメタノールに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、(メタ)アクリル樹脂(A−3)を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂(A−3)は、MMA単位の含有量が100質量%であり、重量平均分子量が58,900、分子量分布は1.1、ガラス転移温度が130℃であった。
[製造例4]
(メタ)アクリル樹脂(A−4)の製造
メタクリル酸メチル100質量部からなる単量体に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.21質量部を加え、溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、上記混合液420質量部と上記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル樹脂(A−4)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A−4)は、MMA単位の含有量が100質量%であり、重量平均分子量が115,000、分子量分布が2.0、ガラス転移温度が120℃であった。
[製造例5]
アクリル系架橋弾性体粒子(B−1)の製造
(1)撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管および還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部および炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間撹拌した。これに、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した。その後、アクリル酸ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%およびメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(3)次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%およびn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行った。
以上の操作によって、コアシェル型グラフト共重合体であるアクリル系架橋弾性体粒子(B−1)を含むラテックスを得た。アクリル系架橋弾性体粒子(B−1)を含むラテックスを凍結して凝固させた。次いで水洗・乾燥して粒子状のアクリル系架橋弾性体粒子(B−1)を得た。当該粒子の平均粒子径は0.23μmであった。
[製造例6]
アクリル系ブロック共重合体(C−1)の製造
トルエン溶液中、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの触媒下で、sec−ブチルリチウムを重合開始剤として重合した。20質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2−1)を重合した後、50質量部のアクリル酸n−ブチルを滴下してアクリル酸エステル重合体ブロック(c1)を重合、さらに30質量部のメタクリル酸メチルを滴下してメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2−2)を重合し、最後にメタノールで停止して、トリブロック共重合体であるアクリル系ブロック共重合体(C−1)を得た。得られたアクリル系ブロック共重合体(C−1)は、(c2−1)−(c1)−(c2−2)のトリブッロク構造をしており、(c2−1)−(c1)−(c2−2)の組成比は、30質量%−50質量%−20質量%であった。アクリル系ブロック共重合体(C−1)の220℃、せん断速度122/秒の溶融粘度は377Pa・sであった。ブロック(c2−1)とブロック(c2−2)は、ブロック(c2−1)の方がブロック(c2−2)より質量%が高く、(c2(H))/(c2(L))は1.5であった。
[実施例1]
表1に示す組成比の各原料を重量フィーダーでコントロールしながら41mmφの二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、TEM41−SS)のホッパーに投入し、ホッパー下の温度を150℃、バレル温度を230℃にそれぞれ設定して、(メタ)アクリル系樹脂組成物をストランド状に押出し、ペレタイザーでカットすることで、(メタ)アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットを、ベント付きの65mmφの一軸押出機にギアポンプ、キャンドル型ポリマーフィルター(濾過精度10μm、濾過面積0.4m)がこの順に設置され、さらにその先端に幅900mmのTダイが付いた押出装置を用いて、溶融押出温度(ベント付き押出機からTダイまでの温度を含めた製膜温度)260℃、吐出量60kg/hにて押出し、92℃の金属鏡面弾性ロールと88℃の金属鏡面剛体ロール間で挟み込んで製膜し、10.8m/分で引き取り、厚さ60μmのフィルムを製膜した。得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物と(メタ)アクリル系樹脂フィルムの評価結果を表1に示す。なお、表1中空欄は配合なしを表す。
[実施例2〜3]
表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造し、それを用いてフィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
表1に示す組成比に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造し、それを用いてフィルムを製造した。評価結果を表1に示す。
比較例1、3、4は、溶融粘度が高く、初期差圧が高い傾向にあり、長期の連続生産性を確保できない可能性があった。なお、比較例3、4は比較例1同様に溶融粘度が高いことから、得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルムの評価を行わなかった。一方で、比較例2は低粘度で、耐屈折回数が低く、フィルムとしての物性が不足していた。
Figure 2021059665

Claims (10)

  1. (メタ)アクリル樹脂(A)と、アクリル系架橋弾性体粒子(B)と、アクリル酸エステル重合体ブロック(c1)およびメタクリル酸エステル重合体ブロック(c2)を含むアクリル系ブロック共重合体(C)と、を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、250℃、せん断速度122/秒での溶融粘度が800〜1150Pa・sである(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  2. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物中の、前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)の合計含有量が10〜40質量%である、請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  3. 前記アクリル系架橋弾性体粒子(B)と前記アクリル系ブロック共重合体(C)との質量比[(B)/(C)]が70/30〜30/70である請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  4. 前記(メタ)アクリル樹脂(A)が、重量平均分子量の異なる2種類以上の(メタ)アクリル樹脂(A)を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
  6. 厚さが20〜200μmである請求項5に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
  7. JIS P8115:2001に準じて測定したフィルム幅方向中央部MD方向の耐屈折回数が、20回以上である、請求項5または6に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを、少なくとも1層含む積層体。
  9. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
  10. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる加飾フィルム。
JP2019184646A 2019-10-07 2019-10-07 (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム Active JP7321868B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019184646A JP7321868B2 (ja) 2019-10-07 2019-10-07 (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019184646A JP7321868B2 (ja) 2019-10-07 2019-10-07 (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021059665A true JP2021059665A (ja) 2021-04-15
JP7321868B2 JP7321868B2 (ja) 2023-08-07

Family

ID=75381264

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019184646A Active JP7321868B2 (ja) 2019-10-07 2019-10-07 (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7321868B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022230547A1 (ja) * 2021-04-30 2022-11-03 株式会社クラレ 積層体とその製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015098095A1 (ja) * 2013-12-24 2015-07-02 株式会社カネカ 光学フィルムの製造方法
WO2018003788A1 (ja) * 2016-06-27 2018-01-04 株式会社クラレ アクリル系樹脂組成物からなる成形体

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015098095A1 (ja) * 2013-12-24 2015-07-02 株式会社カネカ 光学フィルムの製造方法
WO2018003788A1 (ja) * 2016-06-27 2018-01-04 株式会社クラレ アクリル系樹脂組成物からなる成形体

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022230547A1 (ja) * 2021-04-30 2022-11-03 株式会社クラレ 積層体とその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7321868B2 (ja) 2023-08-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6324406B2 (ja) アクリル系樹脂フィルム
JP6846337B2 (ja) 樹脂組成物およびその製造方法、成形体、フィルム並びに物品
JP6284483B2 (ja) メタクリル樹脂組成物
KR102381502B1 (ko) 아크릴계 필름
JP5649974B2 (ja) 熱可塑性重合体組成物およびそれからなるシート状成形体
JP6594404B2 (ja) 樹脂組成物、フィルムおよびそれらの製造方法、成形体、並びに物品
JP7328989B2 (ja) (メタ)アクリル系樹脂組成物及び(メタ)アクリル系樹脂フィルム
WO2021193922A1 (ja) アクリル系組成物及び成形体
JP6317131B2 (ja) メタクリル樹脂組成物からなる板状成形体
JP6742158B2 (ja) アクリル系樹脂フィルムおよびそれを用いた積層フィルム並びに積層体
JP6783112B2 (ja) アクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法
JP7322002B2 (ja) (メタ)アクリル樹脂組成物、フィルムおよびその製造方法
JP6571111B2 (ja) 加飾用複層シートおよび立体成型体
JP7321868B2 (ja) (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを用いた(メタ)アクリル系樹脂フィルム
JP5186415B2 (ja) メタクリル系樹脂フィルム
WO2016190276A1 (ja) 樹脂組成物及び樹脂組成物からなるフィルム
JP7278810B2 (ja) アクリル系樹脂フィルム及びその製造方法
JP2022053846A (ja) (メタ)アクリル系樹脂フィルム及びその製造方法
JP2022010980A (ja) 熱可塑性樹脂フィルム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220616

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230209

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230214

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230407

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230711

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230726

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7321868

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150