(本発明者による知見)
特許文献1には、2つのトランス101及び102と、電圧増幅器110と、を用いて、漏れ電流を抑制することが記載されている。しかしながら、これらの部品は、装置100の構成を複雑にしている。
回転機の制御に用いられる変調方式によっては、回転機のコモンモード電圧は、回転機の回転周波数の整数倍の周波数の成分を有する。以下では、この成分を、整数倍成分と称することがある。変調方式が2相変調方式、ヒップ変調方式等である場合に、コモンモード電圧は、整数倍成分を有する。具体的には、整数倍成分は、回転機の回転周波数と相数と極対数とによって決定される周波数成分である。この成分は、キャリア周波数に比べて低周波数の成分である。ここで、回転機のコモンモード電圧は、回転機の中性点の対地電圧を指す。また、本明細書では、回転機の回転周波数は、電気角ではなく機械角に基づいたものであり、回転機の回転数と同じである。
コモンモード電圧の上記整数倍成分は、回転機の漏れ電流を発生させる。具体的には、整数倍成分は、低周波数、例えば回転機の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流を発生させる。特許文献2の技術では、2つのPWMキャリア信号の位相を互いに180°ずらすことによって、漏れ電流を抑制しようとしている。しかし、この技術では、整数倍成分に由来する漏れ電流を抑制することはできない。
回転機の用途によっては、回転機に液冷媒等が浸漬し、回転機の低周波領域における対地寄生容量が大きくなることがある。例えば、モータがポンプに内蔵されており、かつ、モータ周囲に存する外郭部が接地されている場合がある。この場合にモータのステータ部分に液冷媒等が浸漬すると、モータと外郭部との間の低周波領域における寄生容量が大きくなる。低周波領域における寄生容量が大きいと、低周波領域の漏れ電流が大きくなる。
以上を踏まえ、本発明者は、回転機の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が該回転機で発生することを簡易な構成で抑制することができる技術を検討した。
本開示の第1態様は、
第1回転機と、
第2回転機と、
前記第1回転機を第1変調方式で駆動する第1電力変換器と、
前記第2回転機を第2変調方式で駆動する第2電力変換器と、
前記第1変調方式で使用される第1変調信号と、前記第2変調方式で使用される第2変調信号と、を生成する制御装置と、を備えた電気機器であって、
前記第1変調方式及び前記第2変調方式は、3相変調方式と同じ線間電圧を生じさせる変調方式であり、
前記第2回転機のコモンモード電圧は、前記第2回転機の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有し、
前記制御装置は、前記整数倍成分と逆位相で周期的に変化する重畳成分を前記第1変調信号に含ませる制御モードである重畳モードを有している、電気機器を提供する。
第1態様によれば、第2回転機の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、
前記第2回転機として、
(a)前記第1回転機よりも中性点の対地静電容量が大きい、
(b)前記第1回転機よりも漏れ電流が大きい、及び/又は、
(c)前記第1回転機よりも消費電力が大きい、回転機が用いられている、電気機器を提供する。
第2回転機が(b)の特徴を有している場合には、第2回転機の漏れ電流を抑制する効果が好適に発揮される。(a)の特徴を有する回転機は、漏れ電流が大きくなり易い。(c)の特徴を有する回転機は、大型となり易く、中性点の対地静電容量が大きくなり易く、漏れ電流が大きくなり易い。このため、第2回転機が(a)又は(c)の特徴を有している場合には、第2回転機の漏れ電流を抑制する効果が好適に発揮される可能性が高い。また、第2回転機が(c)の特徴を有している場合には、単位消費電力当たりの第2回転機の漏れ電流抑制効果が大きくなり易い。
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様に加え、
前記制御装置は、前記第2回転機の回転数が閾値回転数未満であると判断したときに、前記重畳モードを実行する、電気機器を提供する。
第3態様によれば、第2回転機の回転数が閾値回転数以上であるときに、重畳モードが実行されることが原因で第1電力変換器が過変調領域で動作することを防止できる。
本開示の第4態様は、第1態様〜第3態様のいずれか1つに加え、
前記重畳モードにおいて、前記制御装置は、前記第2変調信号の振幅と、前記第1回転機の中性点の対地静電容量の周波数特性と、前記第2回転機の中性点の対地静電容量の周波数特性と、に応じて、前記重畳成分の振幅を逐次変化させる、電気機器を提供する。
第4態様によれば、重畳成分の振幅を適切に調整することができる。この調整により、漏れ電流を効果的に抑制し易くなる。
本開示の第5態様は、第1態様〜第4態様のいずれか1つに加え、
前記第2回転機のコモンモード電圧は、直流成分を有し、
前記制御装置は、前記重畳モードにおいて前記重畳成分を生成する重畳部であって、仮信号生成部及び直流成分除去部を含む重畳部を有し、
前記重畳モードにおいて、前記仮信号生成部は、前記第2回転機のコモンモード電圧の前記直流成分及び前記整数倍成分の合成成分に−1を乗算することによって仮信号を生成し、
前記重畳モードにおいて、前記直流成分除去部は、前記仮信号の直流成分の一部又は全部を除去することによって前記重畳信号を生成する、電気機器を提供する。
第5態様の直流成分除去部によれば、第2回転機のコモンモード電圧が直流成分を有している場合であっても、重畳成分の直流成分が過度に大きくなることを防止することができる。これにより、第1電力変換器が過変調領域で動作することを防止しつつ、重畳成分の振幅を大きくすることができる。このようにすれば、第1回転機を安定して動作させつつ、第2回転機における漏れ電流を効果的に抑制することが可能となる。
本開示の第6態様は、第1態様〜第5態様のいずれか1つに加え、
前記制御装置は、第1変調信号生成部と、第2変調信号生成部と、重畳部と、を有し、
前記第2変調信号生成部は、前記第2変調信号を生成し、
前記重畳モードにおいて、前記重畳部は、前記第2変調信号生成部を参照して前記重畳成分を決定し、決定された前記重畳成分を前記第1変調信号生成部に与え、
前記重畳モードにおいて、前記第1変調信号生成部は、前記重畳部から与えられた前記重畳成分を用いて前記第1変調信号を生成する、電気機器を提供する。
第6態様によれば、第1変調信号に重畳成分を容易に含ませることができる。
本開示の第7態様は、第1態様〜第6態様のいずれか1つに加え、
前記第2変調方式は、
(v)2相変調方式である、
(w)ヒップ変調方式である、又は、
(x)3相変調の各相の変調信号のうち中央値となる変調信号の値の1/2倍を、3相変調の各相の変調信号に対して加算することによって、各相の変調信号を得る変調方式である、電気機器を提供する。
第7態様の第2変調方式は、第2変調方式の具体例である。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る電気機器1の構成図である。電気機器1は、商用電源8に接続され得る。電気機器1は、第1回転機2と、第2回転機3と、第1電力変換器4と、第2電力変換器5と、制御装置11と、を備えている。また、電気機器1は、第1機械6と、第2機械7と、整流回路9と、コンデンサ10と、を備えている。
本実施の形態では、第1回転機2及び第2回転機3は、モータである。第1機械6及び第2機械7は、負荷である。具体的には、第1機械6は、ファンである。第2機械7は、ポンプである。
電気機器1には、商用電源8から交流電力が供給される。整流回路9は、この交流電力を直流電力に変換する。コンデンサ10は、この直流電力を平滑化する。第1電力変換器4及び第2電力変換器5には、平滑化された直流電力が供給される。第1電力変換器4は、第1回転機2を駆動する。第1回転機2は、第1機械6を駆動する。第2電力変換器5は、第2回転機3を駆動する。第2回転機3は、第2機械7を駆動する。
商用電源8と整流回路9との間に、力率改善回路が挿入されていてもよい。商用電源8と整流回路9との間に、端子雑音の抑制回路が挿入されていてもよい。商用電源8と整流回路9との間に、外来ノイズを低減させるフィルタ回路が挿入されていてもよい。
第1電力変換器4は、第1回転機2を第1変調方式で駆動する。第2電力変換器5は、第2回転機3を第2変調方式で駆動する。制御装置11は、第1変調信号と第2変調信号とを生成する。第1変調信号は、第1変調方式で使用される信号である。第2変調信号は、第2変調方式で使用される信号である。なお、本実施の形態及び後述の実施の形態では、変調信号は、電圧波である。
第1変調方式及び第2変調方式は、3相変調方式と同じ線間電圧を生じさせる変調方式である。この点は、後述の実施の形態でも同様である。
図2Aに、3相変調方式における変調信号を示す。図2Bに、3相変調方式における線間電圧を示す。3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *は、互いに位相が120°ずつずれた正弦波信号である。
先に述べたとおり、回転機のコモンモード電圧は、回転機の中性点の対地電圧を指す。回転機のコモンモード電圧は、各相の変調信号の平均値の変化周期と同じ周期で変化する交流成分を有する場合がある。しかしながら、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *の平均値は、上記周期では変化しない。このため、図2Cに示すように、3相変調方式におけるコモンモード電圧は、上記周期で変化する交流成分を有さない。なお、図2Cでは、コモンモード電圧がそのような交流成分を有さないことを分かり易く示すために、キャリア信号等に由来する高周波成分を無視している。
本実施の形態では、第2変調方式は、2相変調方式である。2相変調方式によれば、スイッチング損失を低減させ、回転機を高効率に駆動させることができる。具体的には、本実施の形態の第2変調方式は、下固定方式の2相変調方式である。下固定方式では、U相、V相及びW相の変調信号のうち最も小さい相のものが、低レベルに固定される。低レベルは、キャリア信号の最低レベルを指す。低レベルに固定された相のデューティは、0%に固定される。
本実施の形態の第2変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、以下の式(1−1)で与えられる。ここで、「min(A,B,C)」は、A、B及びCの最小値を指す。以下では、第2変調方式における各相の変調信号を、まとめて第2変調信号と称することがある。また、Δm1を、重畳成分と称することがある。
変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を用いた場合の第2回転機3の線間電圧及び相電圧は、変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *を用いた場合の第2回転機3の線間電圧及び相電圧と同じとなる。この点は、後述の実施の形態でも同様である。
図3Aに、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を示す。図3Bに、第2回転機3の線間電圧を示す。図3Cに、第2回転機3のコモンモード電圧を示す。第2回転機3のコモンモード電圧は、3相変調方式におけるコモンモード電圧とは異なり、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有している。
なお、図3Cでは、キャリア信号等に由来する高周波成分を無視している。この点は、図4C、図8C、図9C、図10C及び図11Cについても同様である。
本実施の形態の第1変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、以下の式(1−2)で与えられる。以下では、第1変調方式における各相の変調信号を、まとめて第1変調信号と称することがある。
変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を用いた場合の第1回転機2の線間電圧及び相電圧は、変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#を用いた場合の第1回転機2の線間電圧及び相電圧と同じとなる。この点は、後述の実施の形態でも同様である。
本実施の形態では、変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#の位相と変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *の位相はずれている。ただし、変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#の位相と変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *の位相は同じであってもよい。また、本実施の形態では、変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#の振幅と変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *の振幅は同じである。ただし、変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#の振幅と変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *の振幅は異なっていてもよい。これらの点は、後述の実施の形態においても同様である。
図4Aに、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を示す。図4Bに、第1回転機2の線間電圧を示す。図4Cに、第1回転機2のコモンモード電圧を示す。第1回転機2のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分を有している。この成分は、第2回転機3のコモンモード電圧の上記整数倍成分と逆位相で周期的に変化している。
上述のように、第2回転機3のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有している。そして、式(1−2)に従う制御により、第1変調信号が、この整数倍成分と逆位相で周期的に変化する重畳成分を含むことになる。以下では、重畳成分を第1変調信号に含ませる制御装置11の制御モードを、重畳モードと称することがある。なお、制御装置11は、重畳モードのみを有していてもよく、重畳モードとともに他の制御モードを有していてもよい。
本実施の形態の制御装置11は、図5に示す構成を有している。制御装置11は、第1の第1減算部13と、第1の第1PI制御部14と、第1の第2減算部15と、第1の第2PI制御部16と、第1の2相/3相変換部17と、第1変調信号生成部18と、第1の搬送波比較部19と、を有している。制御装置11は、第2の第1減算部23と、第2の第1PI制御部24と、第2の第2減算部25と、第2の第2PI制御部26と、第2の2相/3相変換部27と、第2変調信号生成部28と、第2の搬送波比較部29と、を有している。また、制御装置11は、重畳部12を有している。
第2の第1減算部23は、第2回転機3の回転数の指令値rpm2_refから第2回転機3の回転数の瞬時値rpm2_tを差し引いた差分を計算する。指令値rpm2_refは、例えば、外部から制御装置11に与えられる。瞬時値rpm2_tは、例えば、レゾルバ又はエンコーダ等のセンサを用いて特定することができる。また、電流センサにより第2回転機3の電流を検出し、電流の検出値から瞬時値rpm2_tを推定することもできる。
第2の第1PI制御部24は、第2回転機3のq軸電流の指令値Iq2_refを特定する。具体的には、第2の第1PI制御部24は、比例積分制御によって、指令値rpm2_refから瞬時値rpm2_tを差し引いた差分をゼロに収束させる指令値Iq2_refを演算する。
第2の第2減算部25は、指令値Iq2_refから第2回転機3のq軸電流の瞬時値Iq2_tを差し引いた差分を計算する。瞬時値Iq2_tは、例えば、第2回転機3の3相座標上の電流をセンサで検出し、この電流をdq座標上の電流に座標変換することによって得ることができる。
第2の第2PI制御部26は、第2回転機3のq軸電圧の指令値Vq2_refを特定する。具体的には、第2の第2PI制御部26は、比例積分制御によって、指令値Iq2_refから瞬時値Iq2_tを差し引いた差分をゼロに収束させる指令値Vq2_refを演算する。
第2の2相/3相変換部27は、第2回転機3のd軸電圧の指令値Vd2_refとq軸電圧の指令値Vq2_refの組み合わせを、3相座標上のU相、V相、W相の電圧に座標変換する。これにより、第2回転機3のU相、V相及びW相の相電圧の指令値が生成される。指令値Vd2_refは、例えば、外部から制御装置11に与えられる。
第2変調信号生成部28は、第2変調信号を生成する。具体的には、第2変調信号生成部28は、第2回転機3のU相、V相及びW相の相電圧の指令値のそれぞれを、コンデンサ10の端子間電圧の半分の値で割る。これにより、第2回転機3のU相、V相及びW相の3相変調方式用の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *が得られる。第2変調信号生成部28は、式(1−1)に基づいて、変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *から、第2変調方式用の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を生成する。
第2の搬送波比較部29は、PWM変調により、制御信号を生成する。具体的には、第2の搬送波比較部29は、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *とキャリア信号とを比較する。第2の搬送波比較部29は、この比較を通じて、第2回転機3のU相、V相及びW相の制御信号を生成する。キャリア信号は、例えば三角波である。
生成された制御信号は、第2電力変換器5に出力される。第2電力変換器5は、制御信号に基づいて第2回転機3を駆動させる。
第1の第1減算部13は、第1回転機2の回転数の指令値rpm1_refから第1回転機2の回転数の瞬時値rpm1_tを差し引いた差分を計算する。指令値rpm1_refは、例えば、外部から制御装置11に与えられる。瞬時値rpm1_tは、例えば、レゾルバ又はエンコーダ等のセンサを用いて特定することができる。また、電流センサにより第1回転機2の電流を検出し、電流の検出値から瞬時値rpm1_tを推定することもできる。
第1の第1PI制御部14は、第1回転機2のq軸電流の指令値Iq1_refを特定する。具体的には、第1の第1PI制御部14は、比例積分制御によって、指令値rpm1_refから瞬時値rpm1_tを差し引いた差分をゼロに収束させる指令値Iq1_refを演算する。
第1の第2減算部15は、指令値Iq1_refから第1回転機2のq軸電流の瞬時値Iq1_tを差し引いた差分を計算する。瞬時値Iq1_tは、例えば、第1回転機2の3相座標上の電流をセンサで検出し、この電流をdq座標上の電流に座標変換することによって得ることができる。
第1の第2PI制御部16は、第1回転機2のq軸電圧の指令値Vq1_refを特定する。具体的には、第1の第2PI制御部16は、比例積分制御によって、指令値Iq1_refから瞬時値Iq1_tを差し引いた差分をゼロに収束させる指令値Vq1_refを演算する。
第1の2相/3相変換部17は、第1回転機2のd軸電圧の指令値Vd1_refとq軸電圧の指令値Vq1_refの組み合わせを、3相座標上のU相、V相及びW相の電圧に座標変換する。これにより、第1回転機2のU相、V相及びW相の相電圧の指令値が生成される。指令値Vd1_refは、例えば、外部から制御装置11に与えられる。
重畳部12は、第2変調信号生成部28を参照して重畳成分Δm1を決定する。そして、重畳部12は、決定された重畳成分Δm1を第1変調信号生成部18に与える。
第1変調信号生成部18は、重畳部12から与えられた重畳成分Δm1を用いて第1変調信号を生成する。具体的には、第1変調信号生成部18は、第1回転機2のU相、V相及びW相の相電圧の指令値のそれぞれを、コンデンサ10の端子間電圧の半分の値で割る。これにより、第1回転機2のU相、V相及びW相の3相変調方式用の変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#が得られる。第1変調信号生成部18は、式(1−2)に基づいて、変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#及び重畳成分Δm1から、第1変調方式用の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を生成する。
第1の搬送波比較部19は、PWM変調により、制御信号を生成する。具体的には、第1の搬送波比較部19は、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *とキャリア信号とを比較する。第1の搬送波比較部19は、この比較を通じて、第1回転機2のU相、V相及びW相の制御信号を生成する。キャリア信号は、例えば三角波である。
生成された制御信号は、第1電力変換器4に出力される。第1電力変換器4は、制御信号に基づいて第1回転機2を駆動させる。
本実施の形態によれば、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
図6及び図7に、シミュレーションにより得た各種波形を示す。
図6の1段目は、第2回転機3の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を示す。2段目は、第1回転機2の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を示す。3段目は、重畳成分Δm1を示す。4段目は、第1回転機2及び第2回転機3のコモンモード電圧を示す。なお、4段目の2つの波形は、キャリア成分由来の高周波ノイズをローパスフィルタを用いてカットすることによって得たものである。5段目は、第1回転機2の相電流を示す。6段目は、第2回転機3の相電流を示す。
1段目から、第2変調信号が下固定方式の2相変調方式の波形を有していることが把握される。2段目から、第1変調信号が3相変調方式の変調信号に重畳成分Δm1を重畳させた波形を有していることが把握される。本実施の形態では、第1回転機2及び第2回転機3は、それぞれ、相数が3であり、極対数が2である。このため、4段目に示されているように、モータ第1回転機2及び第2回転機3のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の6倍の周波数の脈動成分を有している。また、4段目から、これらのコモンモード電圧の位相が互い反転していることが把握される。5段目から、第1回転機2の各相の変調信号が重畳成分Δm1を含んでいても、第1回転機2に正弦波状の相電流を印加できることが把握される。
図7の上側のグラフは、第1変調方式として3相変調方式を採用した点を除いて本実施の形態に従って回転機2及び3を制御した場合における、第2回転機3の漏れ電流を示す。図7の下側のグラフは、本実施の形態に従って回転機2及び3を制御した場合における、第2回転機3の漏れ電流を示す。なお、各グラフの波形は、キャリア成分由来の高周波ノイズをローパスフィルタを用いてカットすることによって得たものである。
図7から、第2回転機3の回転周波数の6倍の周波数の漏れ電流が減衰していることが把握される。図7から、第2回転機3の漏れ電流が好適に補償されていることが分かる。
(実施の形態2)
以下、実施の形態2の電気機器について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と重複する説明を省略することがある。
実施の形態2では、実施の形態1の第2変調方式とは異なる第2変調方式が用いられる。このため、制御装置11は、式(1−1)とは異なる式に基づいて、第2変調方式用のU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を生成する。また、制御装置11は、式(1−2)とは異なる式に基づいて、第1変調方式用の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を生成する。
実施の形態2では、第2変調方式は、2相変調方式である。具体的には、本実施の形態の第2変調方式は、上固定方式の2相変調方式である。上固定方式では、U相、V相及びW相の変調信号のうち最も大きい相のものが、高レベルに固定される。高レベルは、キャリア信号の最大レベルを指す。高レベルに固定された相のデューティは、100%に固定される。
本実施の形態の第2変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *とキャリア信号の振幅Kと用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、以下の式(2−1)で与えられる。ここで、「max(A,B,C)」は、A、B及びCの最大値を指す。式(1−1)及び式(2−1)から理解されるように、実施の形態2の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、実施の形態1の重畳成分Δm1とは異なる重畳成分Δm2に基づいている。
図8Aに、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を示す。図8Bに、第2回転機3の線間電圧を示す。図8Cに、第2回転機3のコモンモード電圧を示す。第2回転機3のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有している。
本実施の形態の第1変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、以下の式(2−2)で与えられる。
図9Aに、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を示す。図9Bに、第1回転機2の線間電圧を示す。図9Cに、第1回転機2のコモンモード電圧を示す。第1回転機2のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分を有している。この成分は、第2回転機3のコモンモード電圧の上記整数倍成分と逆位相で周期的に変化している。
実施の形態2でも、制御装置11は、図5と同様の構成を有している。ただし、実施の形態2では、制御装置11、より具体的には第2変調信号生成部28は、式(1−1)ではなく式(2−1)に基づいて、第2変調信号を生成する。制御装置11、より具体的には第1変調信号生成部18は、式(1−2)ではなく式(2−2)に基づいて、第1変調信号を生成する。重畳部12は、重畳成分Δm1ではなく重畳成分Δm2を決定し、重畳成分Δm2を第1変調信号生成部18に与える。
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
(実施の形態3)
以下、実施の形態3の電気機器について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と重複する説明を省略することがある。
実施の形態3では、実施の形態1の第2変調方式とは異なる第2変調方式が用いられる。このため、制御装置11は、式(1−1)とは異なる式に基づいて、第2変調方式用のU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を生成する。また、制御装置11は、式(1−2)とは異なる式に基づいて、第1変調方式用の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を生成する。
実施の形態3では、第2変調方式は、2相変調方式である。具体的には、本実施の形態の第2変調方式は、上下固定方式の2相変調方式である。上下固定方式によれば、第2電力変換器5のスイッチング素子がパワー半導体を用いたものである場合において、各スイッチング素子のパワー半導体の発熱のバランスをとることができる。
式(1−1)に示す下固定方式では、電気角120°毎に、変調信号が低レベルに固定される相が、U相、V相及びW相の順に切り替わる。式(2−1)に示す上固定方式では、電気角120°毎に、変調信号が高レベルに固定される相が、U相、V相及びW相の順に切り替わる。
これに対し、本実施の形態の上下固定方式は、以下のようなものである。U相の変調信号が高レベルに固定される第1期間がある。V相の変調信号が低レベルに固定される第2期間がある。W相の変調信号が高レベルに固定される第3期間がある。U相の変調信号が低レベルに固定される第4期間がある。V相の変調信号が高レベルに固定される第5期間がある。W相の変調信号が低レベルに固定される第6期間がある。本実施の形態の上下固定方式では、第1期間、第2期間、第3期間、第4期間、第5期間及び第6期間がこの順で繰り返される。また、3相変調方式が採用された場合と同じ線間電圧が得られるように、低レベル又は高レベルに固定されていない相の変調信号が生成される。
本実施の形態の第2変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *と重畳成分Δm3とを用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、以下の式(3−1)で与えられる。Δm3は、上述のように第1〜第6期間が設定される数式である。また、Δm3は、3相変調方式が採用された場合と同じ線間電圧が得られるように低レベル又は高レベルに固定されていない相の変調信号が規定される数式である。式(1−1)及び式(3−1)から理解されるように、実施の形態3の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、実施の形態1の重畳成分Δm1とは異なる重畳成分Δm3に基づいている。
本実施の形態でも、第2回転機3のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有している。
本実施の形態の第1変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、以下の式(3−2)で与えられる。
本実施形態でも、第1回転機2のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分を有している。この成分は、第2回転機3のコモンモード電圧の上記整数倍成分と逆位相で周期的に変化している。
実施の形態3でも、制御装置11は、図5と同様の構成を有している。ただし、実施の形態3では、制御装置11、より具体的には第2変調信号生成部28は、式(1−1)ではなく式(3−1)に基づいて、第2変調信号を生成する。制御装置11、より具体的には第1変調信号生成部18は、式(1−2)ではなく式(3−2)に基づいて、第1変調信号を生成する。重畳部12は、重畳成分Δm1ではなく重畳成分Δm3を決定し、重畳成分Δm3を第1変調信号生成部18に与える。
実施の形態3によれば、実施の形態1と同様、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
(実施の形態4)
以下、実施の形態4の電気機器について説明する。実施の形態4では、実施の形態1と重複する説明を省略することがある。
実施の形態4では、実施の形態1の第2変調方式とは異なる第2変調方式が用いられる。このため、制御装置11は、式(1−1)とは異なる式に基づいて、第2変調方式用のU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を生成する。また、制御装置11は、式(1−2)とは異なる式に基づいて、第1変調方式用の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を生成する。
実施の形態4では、第2変調方式は、ヒップ変調方式である。ヒップ変調方式によれば、回転機を駆動する際の電圧利用率を向上させることができる。本実施の形態の第2変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *,Vv3 *及びVw3 *を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、以下の式(4−1)で与えられる。式(1−1)及び式(4−1)から理解されるように、実施の形態4の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、実施の形態1の重畳成分Δm1とは異なる重畳成分Δm4に基づいている。
図10Aに、変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を示す。図10Bに、第2回転機3の線間電圧を示す。図10Cに、第2回転機3のコモンモード電圧を示す。第2回転機3のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有している。
本実施の形態の第1変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、以下の式(4−2)で与えられる。
図11Aに、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を示す。図11Bに、第1回転機2の線間電圧を示す。図11Cに、第1回転機2のコモンモード電圧を示す。第1回転機2のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分を有している。この成分は、第2回転機3のコモンモード電圧の上記整数倍成分と逆位相で周期的に変化している。
実施の形態4でも、制御装置11は、図5と同様の構成を有している。ただし、実施の形態4では、制御装置11、より具体的には第2変調信号生成部28は、式(1−1)ではなく式(4−1)に基づいて、第2変調信号を生成する。制御装置11、より具体的には第1変調信号生成部18は、式(1−2)ではなく式(4−2)に基づいて、第1変調信号を生成する。重畳部12は、重畳成分Δm1ではなく重畳成分Δm4を決定し、重畳成分Δm4を第1変調信号生成部18に与える。
実施の形態4によれば、実施の形態1と同様、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
(実施の形態5)
以下、実施の形態5の電気機器について説明する。実施の形態5では、実施の形態1と重複する説明を省略することがある。
実施の形態5では、実施の形態1の第2変調方式とは異なる第2変調方式が用いられる。このため、制御装置11は、式(1−1)とは異なる式に基づいて、第2変調方式用のU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *を生成する。また、制御装置11は、式(1−2)とは異なる式に基づいて、第1変調方式用の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *を生成する。
実施の形態5では、第2変調方式は、3相変調の各相の変調信号のうち中央値となる変調信号の値の1/2倍を、3相変調の各相の変調信号に対して加算することによって、各相の変調信号を得る変調方式である。具体的には、本実施の形態の第2変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、以下の式(5−1)で与えられる。ここで、「median(A,B,C)」は、A、B及びCの中央値を指す。中央値は、有限個のデータを小さい順に並べたとき中央に位置する値である。例えば、「−2」と「1」と「5」の中央値は、「1」である。式(1−1)及び式(5−1)から理解されるように、実施の形態5の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *は、実施の形態1の重畳成分Δm1とは異なる重畳成分Δm5に基づいている。
実施の形態5によれば、実施の形態4の変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *と同じ変調信号Vu2 *,Vv2 *及びVw2 *が得られる。
本実施の形態の第1変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、3相変調方式におけるU相、V相及びW相の変調信号Vu3 *#,Vv3 *#及びVw3 *#を用いて表現できる。具体的には、変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *は、以下の式(5−2)で与えられる。
実施の形態5によれば、実施の形態4の変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *と同じ変調信号Vu1 *,Vv1 *及びVw1 *が得られる。
実施の形態5でも、制御装置11は、図5と同様の構成を有している。ただし、実施の形態5では、制御装置11、より具体的には第2変調信号生成部28は、式(1−1)ではなく式(5−1)に基づいて、第2変調信号を生成する。制御装置11、より具体的には第1変調信号生成部18は、式(1−2)ではなく式(5−2)に基づいて、第1変調信号を生成する。重畳部12は、重畳成分Δm1ではなく重畳成分Δm5を決定し、重畳成分Δm5を第1変調信号生成部18に与える。
実施の形態5によれば、実施の形態1と同様、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
実施の形態1〜5では、第2回転機3のコモンモード電圧は、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分である整数倍成分を有している。制御装置11は、その整数倍成分と逆位相で周期的に変化する重畳成分を第1変調信号に含ませる制御モードである重畳モードを有している。重畳モードによれば、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生し難くなる。
重畳成分に基づく漏れ電流抑制は、特別な部品を追加することなく達成できる。従って、実施の形態1〜5によれば、第2回転機3からの漏れ電流を簡易な構成で抑制することができる。なお、実施の形態1〜5の電気機器に、特別な部品を追加して、漏れ電流抑制効果を高めてもよい。その場合、重畳成分に基づく漏れ電流抑制効果の分だけ、電気機器の構成が簡易化することになる。
以上の理由で、実施の形態1〜5によれば、第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の漏れ電流が第2回転機3で発生することを、簡易な構成で抑制することができる。
実施の形態1〜5の第2回転機3として、(a)第1回転機2よりも中性点の対地静電容量が大きい回転機を用いることができる。第2回転機3として、(b)第1回転機2よりも漏れ電流が大きい回転機を用いることができる。また、第2回転機3として、(c)第1回転機2よりも消費電力が大きい回転機を用いることができる。第2回転機3が(b)の特徴を有している場合には、第2回転機3の漏れ電流を抑制する効果が好適に発揮される。(a)の特徴を有する回転機は、漏れ電流が大きくなり易い。(c)の特徴を有する回転機は、大型となり易く、中性点の対地静電容量が大きくなり易く、漏れ電流が大きくなり易い。このため、第2回転機3が(a)又は(c)の特徴を有している場合には、第2回転機3の漏れ電流を抑制する効果が好適に発揮される可能性が高い。また、第2回転機3が(c)の特徴を有している場合には、単位消費電力当たりの第2回転機3の漏れ電流抑制効果が大きくなり易い。ここで、「単位消費電力」の消費電力は、第1回転機2及び第2回転機3の合計の消費電力を指す。
制御装置11は、第2回転機3の回転数が閾値回転数未満であると判断したときに、重畳モードを実行するものであってもよい。このようにすれば、第2回転機の回転数が閾値回転数以上であるときに、重畳モードが実行されることが原因で第1電力変換器4が過変調領域で動作することを防止できる。このようにした場合であっても、上記閾値回転数と第2回転機3の相数と第2回転機3の極対数との積で表される周波数までの周波数範囲の漏れ電流が第2回転機3で発生することを抑制できる。さらに、上記の積で表される周波数とその側帯波周波数の間の周波数範囲の漏れ電流が第2回転機3で発生することも抑制できる。
なお、一例では、制御装置11は、第2回転機3の回転数が閾値回転数以上であると判断したときに、第1変調方式として3相変調方式を用いる。
制御装置11は、重畳モードにおいて、第2変調信号の振幅と、第1回転機2の中性点の対地静電容量C1の周波数特性と、第2回転機3の中性点の対地静電容量C2の周波数特性と、に応じて、重畳成分の振幅を逐次変化させるものであってもよい。このようにすれば、重畳成分の振幅を適切に調整することができる。この調整により、漏れ電流を効果的に抑制することが可能となる。なお、対地静電容量C1の周波数特性及び対地静電容量C2の周波数特性は、回転機2及び3の試験運転等を通じて知ることができる。
具体的には、第2変調信号の振幅が大きいときほど、重畳成分の振幅を大きくすることができる。また、第2回転機3のコモンモード電圧の周波数をFCと定義したとき、周波数FCにおける対地静電容量C1に対する周波数FCにおける対地静電容量C2の比率が大きいときほど、重畳成分の振幅を大きくすることができる。なお、改めて断るまでもないが、重畳成分の振幅は、重畳成分に含まれた交流成分の大きさである。
重畳成分を、第2変調信号の振幅に関連する第1の成分と、対地静電容量C1の周波数特性に関連する第2の成分と、対地静電容量C2の周波数特性に関連する第3の成分と、に分けて考えることもできる。例えば、第1の成分を、第2変調信号の振幅に比例して大きくすることができる。あるいは、第1の成分を、第2回転機3の誘起電圧における第2回転機3の回転周波数の整数倍の周波数の成分に比例して大きくすることができる。具体的には、第1の成分を、誘起電圧の基本波成分に比例して大きくすることができる。第2成分は、周波数FCにおける対地静電容量C1が小さいときほど、大きくすることができる。第3成分は、周波数FCにおける対地静電容量C2が大きいときほど、大きくすることができる。
重畳成分は、直流成分を有していてもよく、直流成分を有していなくてもよい。念のために説明すると、「整数倍成分と逆位相で周期的に変化する重畳成分」は、交流成分のみならず、直流成分を含んでいてもよい成分を指す。
第2回転機3のコモンモード電圧は、直流成分を有している場合がある。上記実施の形態の制御装置11は、重畳モードにおいて重畳成分を生成する重畳部12を有している。重畳部12は、図12に示すように、仮信号生成部12aと、直流成分除去部12bと、を含んでいてもよい。仮信号生成部12aは、重畳モードにおいて、第2回転機3のコモンモード電圧の直流成分及び整数倍成分の合成成分に−1を乗算することによって仮信号を生成するものである。直流成分除去部12bは、重畳モードにおいて、仮信号の直流成分の一部又は全部を除去することによって重畳信号を生成するものである。このようにすれば、重畳成分の直流成分が過度に大きくなることを防止することができる。これにより、第1電力変換器4が過変調領域で動作することを防止しつつ、重畳成分の振幅を大きくすることができる。このようにすれば、第1回転機2を安定して動作させつつ、第2回転機3における漏れ電流を効果的に抑制することが可能となる。
実施の形態1〜5では、第1機械6はファンであり、第2機械7はポンプである。ただし、ただし、第1機械6は、ファン以外の負荷であってもよい。また、第2機械7は、ポンプ以外の負荷であってもよい。また、第1回転機2及び第2回転機3が発電機であり、第1機械6及び第2機械7が原動機であってもよい。
実施の形態1〜5では、第2変調方式は、式(1−1)、式(2−1)、式(3−1)、式(4−1)又は式(5−1)に基づいたものである。ただし、第2変調方式は、これらに限定されない。
実施の形態1〜5では、重畳成分の振幅は、第2回転機3のコモンモード電圧の整数倍成分の振幅と同じである。このようにすることは、重畳成分により第2回転機3のコモンモード電圧に由来する漏れ電流をキャンセル観点から有利である。
ただし、重畳成分の振幅は、整数倍成分の振幅よりも小さくてもよい。このようにすれば、第1電力変換器4が過変調領域で動作することを防止し易くなる。具体的には、漏れ電流が許容範囲に収まる程度に、重畳成分の振幅を小さくすることができる。漏れ電流の許容範囲は、例えば、実効値が1mA以下である範囲である。
第1回転機2の回転数及び第2回転数3の回転数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1変調信号と比較されるキャリア信号及び第2変調信号と比較されるキャリア信号の位相差は、0°であってもよく、180°であってもよく、それ以外であってもよい。いずれの場合も、第2回転機3における漏れ電流抑制効果が発揮される。
変形例では、実施の形態1〜5の電気機器に、第3回転機と、第3回転機を第3変調方式で駆動する第3電力変換器と、が追加される。第3変調方式は、3相変調方式と同じ線間電圧を生じさせる変調方式である。重畳モードにおいて、制御装置11は、第2回転機3の上記整数倍成分と逆位相で周期的に変化する重畳成分と第3回転機の上記整数倍成分と逆位相で周期的に変化する別の重畳成分とを第1変調信号に含ませる。このようにすれば、第2回転機3で発生する漏れ電流とともに、第3回転機で発生する漏れ電流を抑制することができる。
上記変形例では、第3回転機からの漏れ電流が、第1回転機2によって抑制される。第3変調方式は、特に限定されない。第3変調方式としては、2相変調方式、ヒップ変調方式が例示される。第3変調方式は、3相変調の各相の変調信号のうち中央値となる変調信号の値の1/2倍を、3相変調の各相の変調信号に対して加算することによって、各相の変調信号を得る変調方式であってもよい。第3変調方式は、3相変調方式であってもよい。
第3回転機に関する技術には、第2回転機3に関する技術に適用可能である。例えば、第3回転機を駆動させる電力変換装置として、第2電力変換装置5と同様の電力変換装置を用いることができる。第3変調信号で使用される第3変調信号を、制御装置11で生成することができる。具体的には、第2の第1減算部23、第2の第1PI制御部24、第2の第2減算部25、第2の2相/3相変換部27、第2変調信号生成部28及び第2の搬送波比較部29と同様の要素を用いて第3変調信号及び制御信号を生成することができる。第3回転機に関する技術には、3相変調方式に関する公知の技術も適用可能である。
実施の形態1〜5及び変形例の技術に、キャリア信号に由来する漏れ電流を抑制する技術を組み合わせてもよい。キャリア信号に由来する漏れ電流を抑制する技術としては、第2変調信号と比較されるキャリア信号の位相を、第1変調信号と比較されるキャリア信号の位相の逆位相とする技術が挙げられる。