JP2019002082A - 電界紡糸方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ナノファイバ製造における紡糸安定性を高めるとともに、ナノファイバの生産性を高め、且つナノファイバ製品の品質を高める電界紡糸方法を提供すること。【解決手段】原料液を噴射する導電性のノズル22と、ノズル22と電気的に絶縁して配置された電極23と、ノズル22と電極23との間に電圧を印加する電圧印加部26と、ノズル22の先端22aよりも後方に位置し、且つノズル22の先端22aに向けて空気流を噴射する空気流噴射部29とを備えた電界紡糸装置10。空気流噴射部29からノズル22の先端22aに向けて空気流を噴射した状態下に、ノズル22から原料液を噴射し、原料液を噴射させながらノズル22に付着した原料液の固化物を除去し、然る後にノズル22と電極23との間に電圧を印加して電界紡糸を行う電界紡糸方法。【選択図】図5

Description

本発明は、電界紡糸方法に関する。
電界紡糸法(エレクトロスピニング法)は、機械力や熱力を使わずにナノサイズの直径の繊維(以下、ナノファイバともいう)を比較的簡単に製造できる技術として注目を浴びている。電界紡糸法では、ナノファイバの原料となる樹脂の溶液又は溶融液に高電圧を作用させて繊維を形成する。樹脂溶液を用いた電界紡糸法においては、樹脂溶液をシリンジに入れ、シリンジ先端に取り付けられたノズルと、ノズルから所定距離を隔てた位置に対向して設置された捕集用電極との間に高電圧を印加する。ノズルの先端から吐出された樹脂溶液は、クーロン力で延伸されるとともに溶媒が瞬時に蒸発する。溶媒が蒸発した樹脂は凝固しながら細長く引き伸ばされることによってナノファイバが形成され、捕集用電極に引き寄せられる。形成されたナノファイバは捕集用電極の表面に堆積する。
このナノファイバ製造の安定性を高めることを目的として、特許文献1においては、原料液を噴射するノズルと凹曲面を有する電極との間に発生した電圧、及び該ノズルと該電極との間に備えられた空気流噴射部から噴射された空気流によって、原料液を延伸しながらナノファイバを形成する電界紡糸装置が開示されている。
同様の目的から、特許文献2においては、樹脂溶液を噴射するノズルと回転体コレクタとの間に高電圧を印加する高圧電源と、予め定められたタイミングでノズルをクリーニングステーションに移動させて、樹脂の固化物が付着したノズルをクリーニングするクリーニング手段とを備えたナノ・ファイバ製造装置が開示されている。
特開2017−031517号公報 特開2008−202169号公報
特許文献1の電界紡糸装置では、ノズルから樹脂溶液が吐出される際に空気流が噴射されていること、及び樹脂溶液の溶媒に揮発性の高い溶媒が使用されていることに起因して、ノズルから吐出された樹脂溶液が瞬時に乾燥し、樹脂溶液を噴射するノズル先端で樹脂の固化物が形成される場合がある。樹脂の固化物はナノファイバの紡糸安定性及び生産性に影響を及ぼし得るところ、樹脂の固化物を除去することによって、ナノファイバ製造における紡糸安定性及び生産性をより向上させることが望まれている。
また、特許文献2の電界紡糸装置では、ノズル先端のクリーニング工程が密閉された筐体内で自動で行われているため、実際にノズル先端に付着している樹脂の固化物が完全に除去できているか否かを確認することは困難である。また、樹脂の固化物が意図せずノズルから剥落した場合、樹脂の固化物がナノファイバ表面に堆積してしまい、ナノファイバ製品の品質が損なわれる。
したがって、本発明の課題は、ナノファイバの紡糸安定性及び生産性を更に高めるとともに、ナノファイバ製品の品質を高める電界紡糸方法を提供することにある。
本発明は、原料液を噴射する導電性のノズルと、該ノズルと電気的に絶縁して配置された電極と、該ノズルと該電極の間に電圧を印加する電圧印加部と、該ノズルの先端よりも後方に位置し、且つ該先端に向けて空気流を噴射する空気流噴射部とを備えた電界紡糸装置を用いた電界紡糸方法であって、
前記空気流噴射部から前記ノズルの先端に向けて前記空気流を噴射した状態下に、前記ノズルから前記原料液を噴射し、該原料液を噴射させながら該ノズルに付着した該原料液の固化物を除去し、然る後に該ノズルと前記電極との間に電圧を印加して電界紡糸を行う、電界紡糸方法を提供するものである。
また、本発明は、原料液を噴射する導電性のノズルと、該ノズルと電気的に絶縁して配置された電極と、該ノズルと該電極の間に電圧を印加する電圧印加部と、該ノズルの先端よりも後方に位置し、且つ該先端に向けて空気流を噴射する空気流噴射部とを備えた電界紡糸装置を用いた電界紡糸方法であって、
前記空気流噴射部から前記ノズルの先端に向けて前記空気流を噴射した状態下に、前記ノズルに付着した前記原料液の固化物を除去し、然る後に該ノズルから該原料液を噴射し、該原料液を噴射させながら該ノズルと前記電極との間に電圧を印加して電界紡糸を行う、電界紡糸方法を提供するものである。
本発明によれば、ノズルの先端付近に意図せず付着した原料液の固化物を除去した状態で、安定的に電界紡糸を行うことができる。また本発明によれば、ノズルの先端付近に付着した原料液の固化物が、目的とする製品に混入しづらいので、ナノファイバの生産性が向上し、且つナノファイバ製品の品質の低下を抑制できる。
図1は、本発明の電界紡糸装置を模式的に示す平面図である。 図2は、図1に示す電界紡糸装置におけるナノファイバ生成部の一実施形態を示す斜視図である。 図3は、図2に示すナノファイバ生成部の断面構造を示す模式図である。 図4は、本発明の電界紡糸方法の一実施形態における空気流噴射、電圧印加、原料液噴射及び固化物除去の各工程を示すタイムチャートである。 図5は、図1に示す電界紡糸装置におけるナノファイバ生成部の別の実施形態の断面構造を示す模式図である。 図6は、本発明の電界紡糸方法の別の実施形態における空気流噴射、電圧印加、原料液噴射及び固化物除去の各工程を示すタイムチャートである。 図7は、比較例の電界紡糸方法の実施形態における空気流噴射、電圧印加、原料液噴射及び固化物除去の各工程を示すタイムチャートである。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の電界紡糸方法に用いられる電界紡糸装置の一実施形態が模式的に示されている。これらの図に示す電界紡糸装置10は、ナノファイバ生成部20及びナノファイバ捕集部30に大別される。
ナノファイバ生成部20は、ナノファイバ捕集部30と対向するように配置されている。
ナノファイバ捕集部30は、ナノファイバの捕集用電極31を備えている。またナノファイバ捕集部30は、捕集用電極31に隣接するように、該捕集用電極31とナノファイバ生成部20との間に、ナノファイバが捕集される捕集体32が配置されている。
図2及び図3には、ナノファイバ生成部20の詳細が示されている。ナノファイバ生成部20は、ナノファイバの原料液を紡出するノズル22を備えている。またナノファイバ生成部20は、原料液を帯電させる電極23を備えている。電極23はノズル22を囲う形状になっている。具体的には、電極23は全体として略椀形をしており、その内面に凹曲面24を備えている。電極23は、その内面が凹曲面24となっている限りにおいて、その全体の形状は略椀形になっていることを要せず、その他の形状となっていてもよい。凹曲面24は金属などの導電性材料から構成されている。電極23は、電気絶縁性材料からなる基台25に固定されている。電極23は、図3に示すとおり接地されている。
凹曲面24をその開口端側から見たとき、該開口端は円形をしている。この円形は、真円形でもよく、あるいは楕円形でもよい。ノズル22の先端に電荷を集中させる観点からは、凹曲面24の開口端は真円形であることが好ましい。凹曲面24は、そのいずれの位置においても曲面になっていることが好ましい。ここで言う曲面とは、(イ)平面部を全く有していない曲面のことであるか、(ロ)平面部を有する複数のセグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっていることであるか、又は(ハ)互いに直交する三軸のうち一軸が曲率を有さない帯状部を有する複数の環状セグメントを繋ぎ合わせて全体として凹曲面とみなせる形状となっていることのいずれかを言う。
凹曲面24は、その任意の位置における法線がノズル22の先端又はその近傍を通るような値となっていることが好ましい。この観点から、凹曲面24は、真球の球殻の内面と同じ形状をしていることが特に好ましい。
図2及び図3に示すとおり、凹曲面24の最底部は開口しており、その開口部にノズルアセンブリ27が取り付けられている。ノズルアセンブリ27は、先に述べたノズル22と、該ノズル22を支持する支持部28とを有している。ノズル22は金属などの導電性材料から構成されている。一方、支持部28は電気絶縁性材料から構成されている。したがって、先に述べたノズル22と電極23とは、支持部28によって電気的に絶縁されている。ノズル22は支持部28を貫通しており、ノズル22の先端22aは凹曲面24からなる電極23内に露出している。ノズル22の後端22bは、電極23の背面側(すなわち、凹曲面24と反対側)において露出している。ノズル22の後端22bは、原料液の供給源(図示せず)に接続されている。原料液の供給源には圧力を負荷する装置が設けられており、原料液をノズルから噴射できるようになっている。
導電性材料からなるノズル22は、針状の直管から構成されている。ノズル22内には、原料液が流通可能になっている。ノズル22の内径は、その下限値を好ましくは100μm以上、更に好ましくは300μm以上に設定することができる。一方、その上限値を好ましくは3000μm以下、更に好ましくは2000μm以下に設定することができる。ノズル22の内径は、好ましくは100μm以上3000μm以下、更に好ましくは300μm以上2000μm以下に設定することができる。ノズルの内径をこの範囲内に設定することで、高分子である原料液を容易に、かつ定量的に送液できるとともに、原料液を効率よく帯電させられるので好ましい。
導電性材料からなるノズル22は、図3に示すとおり、電圧印加部26に接続され、正電圧が印加されている。電圧印加部26に用いられる電源としては、直流高圧電源などの公知の装置を用いることができる。これに対して電極23は先に述べたとおり接地されており、電位がゼロになっている。したがって、ノズル22と電極23との間には電界が生じる。ノズル22及び電極23に印加される電圧はこれに限らず、ノズル22が接地され、電極23に正電圧又は負電圧が印加されていてもよく、ノズル22と電極23との間に電位差が生じていればよい。電極23とノズル22との間に加わる電位差は、1kV以上、特に10kV以上とすることが、原料液を十分に帯電させる点から好ましい。一方、この電位差は100kV以下、特に50kV以下とすることが、ノズル22と電極23間における放電を防止する点から好ましい。電位差は例えば1kV以上100kV以下、特に10kV以上50kV以下とすることが好ましい。
ノズル22の先端に電荷が一層集中するようにするために、該ノズル22は、その延びる方向が、電極23の凹曲面24における開口端によって画成される円の中心か、又はその中心の近傍を通り、かつ該ノズル22の先端22aが、該開口端によって画成される円を含む平面内に位置するか、又は該平面の近傍に位置するように配置されることが有利である。
特にノズル22は、その延びる方向が、電極23の凹曲面24における開口端によって画成される円の中心か、又はその中心の近傍と、該凹曲面24における最底部とを通るように配置されることが好ましい。とりわけ、凹曲面24の開口端によって画成される円を含む平面と、ノズル22の延びる方向とが直交していることが好ましい。このようにノズル22を配置することで、ノズル22の先端に電荷が更に一層集中するようになる。この観点から、電極23の凹曲面24は、真球の球殻の略半球面の形状をしていることが特に好ましい。
ノズル22の先端22aの位置に関しては、該先端22aが、電極23の凹曲面24における開口端によって画成される円を含む平面内に位置するか、又は該平面よりも該凹曲面24の内側に位置するように該ノズル22を配置することが好ましい。具体的には該平面よりも1〜10mm内側に配置することが好ましい。ノズル22の先端22aの位置をこのようにすることで、ノズル22の先端22aから吐出された原料液が、電極23の凹曲面24に引き寄せられにくくなり、該凹曲面24が該原料液によって汚染されづらくなる。
ナノファイバ生成部20においては、図2及び図3に示すとおり、ノズルアセンブリ27におけるノズル22の基部の近傍に、貫通孔からなる空気流噴射部29が設けられている。空気流噴射部29は、ノズル22の延びる方向に沿って形成されている。空気流噴射部29は、ノズル22の先端22aよりも後方に位置しており、ノズル22の先端22aの方向に向けて気体流を噴射させることが可能なように形成されている。電極23の開口端側から見たとき、空気流噴射部29は、ノズル22を取り囲むように2個設けられている。各空気流噴射部29は、ノズル22を挟んで対称な位置に形成されている。貫通孔からなる空気流噴射部29は、その後端側の開口部が気体流の供給源(図示せず)に接続されている。この供給源から気体が供給されることで、ノズル22の周囲から気体が噴出されるようになっている。噴出した気体は、ノズル22の先端22aから吐出され、かつ電界の作用によって細長く引き伸ばされた原料液を、後述する捕集用電極に向けて搬送する。
なお、図2及び図3においては、空気流噴射部29が2個設けられている状態が示されているが、空気流噴射部29を設ける個数はこれに限られず、1個又は3個以上であってもよい。均一な空気流を得る観点から、空気流噴射部29は、ノズル22を囲むように環状に設けられていることが望ましい。空気流噴射部29の形状は特に制限はなく、円形、矩形、楕円形、二重円環形、三角形、ハニカム形などの形状をとることができる。空気流噴射部29から噴出させる気体としては、空気を用いることが簡便である。
以上は、電界紡糸装置10におけるナノファイバ生成部20に関するものであったところ、ナノファイバ捕集部30は、以下の構成となっている。すなわち、ナノファイバ捕集部30は、先に述べたとおりナノファイバの捕集用電極31を備えている。捕集用電極31は金属等の導電性材料から構成されている平板状のものである。捕集用電極31の板面と、ノズル22の延びる方向とは略直交している。捕集用電極31には、ノズル22に印加されている電圧と異なる電圧が印加される。例えばノズルに正の電圧が印加されている場合には、捕集用電極31に負の電圧を印加することができる。
捕集用電極31とノズル22の先端との距離は、その下限値を好ましくは100mm以上、更に好ましくは500mm以上とすることができる。上限値は好ましくは2000mm以下、更に好ましくは1500mm以下とすることができる。例えば好ましくは100mm以上2000mm以下、更に好ましくは500mm以上1500mm以下とすることができる。
ナノファイバ捕集部30においては、捕集用電極31とノズル22との間に、ナノファイバが捕集される捕集体32が配置されている。捕集体32は、搬送コンベア33によって搬送される。捕集体32は例えば長尺帯状のものであり、ロール状の原反(図示せず)から繰り出されるようになっている。繰り出された捕集体32は、ノズル22と対向する位置を通過して、ワインダー(図示せず)に巻き取られるようになっている。捕集体32としては、例えばフィルム、メッシュ、不織布、紙などを用いることができる。
本発明の電界紡糸装置10には、電界紡糸装置10の運転を停止した際におけるノズル22からの原料液の液漏れを防ぐことを目的として、サックバック装置(図示せず)が設けられていてもよい。サックバック装置とは、電界紡糸装置10の運転を停止した際に、原料液が残留しているノズル22内に負圧を発生させ、ノズル22内の原料液を外気とともに電界紡糸装置10の内部へ吸引する装置である。ノズル22内の原料液を電界紡糸装置10の内部へ吸引することによって、原料液がノズル22の先端22aから外部へ垂れ落ちること(液漏れ)を防止することができる。
サックバック装置としては、例えばバキュームなどの、原料液の供給源に負荷する圧力を負圧にすることによってノズル内22に負圧を発生させる装置が挙げられる。このようなサックバック装置は、原料液の供給源に圧力(正圧)を負荷する装置との間に圧力負荷切替装置を設けて接続することができる。
以上の説明は、図1ないし図3で示す構成を具備する電界紡糸装置10の説明であったところ、以下に電界紡糸装置10を用いた本発明の電界紡糸方法を説明する。本電界紡糸方法は第1工程〜第3工程の3つの工程に大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
電界紡糸装置10によってナノファイバを製造する場合には、原料液がノズル22の先端で乾燥し固化することで生じた固化物が、先端付近に付着する現象が生じることがしばしばある。例えば電界紡糸装置10の運転を停止して、ノズルから原料液の噴射を停止した時に、原料液に負荷されている圧力の残圧によってノズル22の先端22aから液漏れが生じることがある。液漏れによって生じた原料液の液滴は、乾燥によってノズル22に付着した状態で固化し、この現象が固化物発生の原因の一つとなっている。この固化物は、紡糸時において、ノズル22から噴射される原料液の液滴に欠陥を生じさせる原因や、紡糸不良の原因となる。ひいては、ナノファイバの製造安定性や品質安定性を低下させる原因となる。これに対して本発明の電界紡糸方法によれば、特に電界紡糸装置の運転を一旦停止した後で再運転する際に、固化物に起因した液滴の欠陥を生じることなく電界紡糸を行うことができる。これに起因して、ナノファイバの製造安定性や品質を向上させることができる。
<第1工程>
まず図4に示すとおり、電界紡糸装置10による紡糸が停止している状態で、ナノファイバ生成部20に設けられた空気流噴射部29から空気流を噴射する。そして空気流を噴射した状態下でノズル22の先端22aから原料液の噴射を開始する。本工程では、ノズル22と電極23との間には電圧が印加されていない。したがって、ノズル22と電極23との間に電位差が生じておらず、空気流及び原料液が噴射されていてもナノファイバは紡糸されない。
空気流噴射部29から噴射される空気流としては、例えばドライヤー等の乾燥手段によって相対湿度(RH)40%以下に乾燥させたものを用いることができる。また空気流は、製造されるナノファイバの状態が一定に維持されるようにするために、温度が一定に保たれていることが好ましい。空気流の風速は、例えば120m/sec以上、特に190m/sec以上とすることが好ましい。120m/sec以上であると、ナノファイバの進行方向を、ノズル22と電極23との間の電界に逆らって、ナノファイバ捕集部30のある方向に搬送するのが容易になる。空気流の風速の上限は、例えば450m/sec以下、特に350m/sec以下とすることが好ましい。450m/sec以下であると、空気流でファイバが千切れる心配がない。このような観点から、空気流の風速は、120m/sec以上450m/sec以下にすることが好ましく、特に190m/sec以上350m/sec以下であることが好ましい。空気流の風速は、原料液の組成によって適宜調節することができる。
製造されるナノファイバの状態が一定に維持されるようにする観点、及びノズル22に原料液の固化物の付着を防止する観点から、空気流噴射部29から噴射される空気流の流量は、上述の空気流の風速を満たすことを条件として、例えば60L/min以上、特に80L/min以上とすることが好ましい。空気流の流量の上限は、例えば190L/min以下、特に150L/min以下とすることが好ましい。空気流の流量は、60L/min以上190L/min以下にすることが好ましく、特に80L/min以上150L/min以下であることが好ましい。空気流の流量は、原料液の組成によって適宜調節することができる。
<第2工程>
次に、図4に示すとおり、第1工程からの引き続きで原料液の噴射を継続しながら、ノズル22に付着した原料液の固化物を除去する。例えば、電界紡糸装置の運転停止時に発生したノズル22の先端22aからの液漏れ等に起因して、ノズル22に付着した状態となっている原料液の固化物を除去する。原料液の固化物を除去することによって、ナノファイバ製品の品質低下や生産効率の低下を抑制することができる。固化物を除去する方法には特に制限はない。例えばノズル22の先端22aに向けて空気を更に噴射することができる。またはノズル22の先端22aに繊維状物を擦りつけることによって、固化物を除去することができる。本工程においても、ノズル22と電極23との間には電圧が印加されていない。したがって、ノズル22と電極23との間に電位差が生じておらず、原料液が噴射されていてもナノファイバは紡糸されない。
ノズル22の先端22aに向けて空気を更に噴射する方法としては、空気流噴射部29とは異なる第2空気流噴射部を設置して、電極の外側からノズルの先端に向けて空気を噴射することにより、固化物を吹き飛ばして除去することができる。例えば本発明の一実施形態である図5に示すように、ノズル22の先端22aよりも後方の位置に第2空気流噴射部29aを設置することができる。図5では、電極23における凹曲面24に第2空気流噴射部29aを設置した状態が示されている。第2空気流噴射部29aは、その後端側の開口部が空気流の供給源(図示せず)に接続されている。この供給源からクリーニング用エアー29bが連続的又は断続的に供給されることで、第2空気流噴射部29aからノズル22の先端22aに向けてクリーニング用エアー29bが連続的又は断続的に噴射されるようになっている。このように第2空気流噴射部29aを設けることで、ノズル22の先端22aに付着した固化物を吹き飛ばして除去することができる。
ノズル22の先端22aに向けて空気を更に噴射する他の方法としては、ブロワー等の片手で把持可能であって、且つ局所的に空気を噴射可能な器具や装置を用いて、ノズル22の先端22aに付着した固化物を吹き飛ばして除去することができる。
ノズル22の先端22aに繊維状物を擦りつける方法としては、ノズル22の先端22aに人手又は装置などの手段によって繊維状物を擦りつけて、拭う又は削ぎ落とすことにより、ノズルの先端に付着した固化物を除去することができる。本工程に用いられる繊維状物としては、例えば、各種の植物繊維、木材パルプ、非木材パルプ、木綿、麻等の天然繊維や、ナイロン、レーヨン、アセテート等の化学繊維を用いることができる。
<第3工程>
最後に、図4に示すとおり、空気流の噴射及び原料液の噴射を継続しつつ、ノズル22と電極23との間に電圧を印加して電界紡糸を行う。この工程により、電界紡糸装置10による紡糸を開始することができる。ノズル22と電極23との間に電圧が印加されると、原料液はノズル22から噴射されるまでの間に静電誘導によって帯電し、帯電した状態で噴射される。ノズル22の先端22aには電場が集中しているので、原料液の単位質量当たりの帯電量は極めて高くなる。帯電した状態で噴射された原料液は電界の作用によって、その液面が円錐状に変形する。電極23に引き付けられる力が原料液の表面張力を超えると、電極23の方向に原料液が一気に引き寄せられる。このとき、噴射した原料液に向けて空気流噴射部29から気体流を噴出させていることで、原料液の自己反発の連鎖によってファイバはナノサイズにまで細くなる。原料液に含まれる溶媒は、ファイバの細径化と同時に比表面積が大きくなることで、該溶媒の揮発が進行する。その結果、生成したナノファイバが、ノズル22と対向する位置に配置された捕集体32の表面にランダムに堆積する。捕集体32の表面に堆積したナノファイバは、捕集体32を繰り出して、所定の一方向に搬送することによって、製造されたナノファイバを搬送させることができる。所望の量のナノファイバが製造された後は、原料液噴射、電圧印加、空気流噴射をこの順で停止させることによって、電界紡糸装置10の運転を停止することができる。原料液噴射、電圧印加、空気流噴射をこの順で停止させることによって、電界紡糸装置10の運転再開時にノズル22の先端22aの原料の固化物の発生を抑制できると共に、捕集体32への液滴の欠陥を抑制するという効果が奏される。
本発明の電界紡糸方法として、図6に示す実施形態を採用することもできる。同図に示す実施形態では、第1工程及び第2工程に代えて、第1’工程及び第2’工程をそれぞれ行う。以下に各工程を説明する。本実施形態に関し、特に説明しない点については、上述の実施形態についての説明が適宜適用される。
<第1’工程>
まず図6に示すとおり、電界紡糸装置10による紡糸が停止している状態で、ナノファイバ生成部20に設けられた空気流噴射部29から空気流を噴射する。そして空気流を噴射した状態下でノズル22に付着した原料液の固化物を除去する。本工程では、原料液は噴射されておらず、且つノズル22及び電極23には電圧が印加されていない。したがって、空気流が噴射されていてもナノファイバは紡糸されない。
<第2’工程>
次に図6に示すとおり、固化物の除去終了後、空気流の噴射を継続しながらノズル22から原料液を噴射させる。本工程においては、ノズル22及び電極23には電圧が印加されていない。したがって、ノズル22と電極23との間に電位差が生じておらず、原料液が噴射されていてもナノファイバは紡糸されない。
第1’工程及び第2’工程を行った後、先に述べた第3工程を行うことができる。これによって、第1ないし第3工程を行った場合と同様に、固化物に起因した液滴の欠陥を生じることなく電界紡糸を行うことができる。これに起因して、ナノファイバの製造安定性や品質を向上させることができる。
特に、何らかの理由で電界紡糸装置10の運転を一旦停止し、その後再運転した場合には、原料液の固化物がノズルに付着することに加えて、ノズル内に残留している原料液が溶媒の揮発等により固化が進行し流動性を失っていたり、固化物を形成していたりすることがある。流動性を失った原料液及び固化物は、ノズル22に付着した原料液の固化物と同様に、紡糸開始の際に原料液の液滴の欠陥が生じる原因や、紡糸不良の原因となる。さらに原料液の噴射に伴って、ノズル内に存在する流動性を失った原料液及び/又は固化物も併せて噴射されてしまい、捕集部に堆積することになる。その結果、ナノファイバの品質が低下することになる。ナノファイバの品質をより向上させる観点から、ノズル22からの原料液の噴射によって、ノズル22内に存在する流動性を失った原料液及び/又は原料液の固化物をノズル22外へ押し出すようにして除去することが好ましい。具体的には、ナノファイバの品質をより向上させる観点から、ノズル22から原料液を噴射して、ノズル22内に存在する原料液の固化物がノズル22外に排出された後に、ノズル22と電極23との間に電圧を印加して電界紡糸することが好ましい。
ノズル22内に存在する流動性を失った原料液及び/又は原料液の固化物をノズル22外に排出する方法としては、図4及び図6に示す実施形態における第3工程よりも前の任意の段階で、ノズル22から原料液を一定時間噴射していればよい。例えば、図4に示す実施形態では、ノズルから原料液を噴射した状態で一定時間経過後、ノズル22に付着した原料液の固化物を除去し、然る後に第3工程を行うことができる。また、図6に示す実施形態では、ノズル22に付着した原料液の固化物を除去した後、ノズルから原料液を一定時間噴射し、然る後に第3工程を行うことができる。
以上の電界紡糸方法は、電界紡糸装置10にサックバック装置を設けない実施形態に係るものであるが、電界紡糸装置10にサックバック装置を設ける実施形態についても同様に実施することができる。電界紡糸装置10にサックバック装置を設けた実施形態では、サックバック装置を設けない実施形態と比較して、ノズル先端からの液漏れを低減させることができる。一方、電界紡糸装置10にサックバック装置を設けた実施形態では、電界紡糸装置10の運転停止時に、ノズル内に空気を過度に吸引することがある。ノズル内への過度な空気の吸引は、ナノファイバの紡糸時に原料液に空気が混入し紡糸に不具合が発生したり、空気を吸引することに起因してノズル内の原料液が乾燥しやすくなり固化物が発生したりする原因となる。また逆に、サックバック装置におけるノズル内への原料液の吸引が不十分であることに起因してノズル先端からの液漏れを生じ、ノズル先端に固化物が発生する原因ともなる。これらの原因によって発生した固化物も、本発明の電界紡糸方法によって効果的に除去することができる。
以上のとおり、本発明の電界紡糸方法によれば、電界紡糸装置10におけるサックバック装置を設けた実施形態だけでなく、サックバック装置を設けない実施形態においても、ノズルからの液漏れに起因した固化物を効果的に除去することができる。ノズルに付着した原料液の固化物は、紡糸開始の際に原料液の液滴の欠陥が生じる原因や、紡糸不良の原因となる。本発明の電界紡糸方法によって、電界紡糸開始前に固化物を除去することにより、液滴の欠陥や紡糸不良が生じることなく安定的にナノファイバを紡糸でき、その結果、ナノファイバの品質を向上させることができる。
電界紡糸装置10において用いられる原料液としては、繊維形成の可能な高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いることができる。高分子化合物としては、水溶性高分子化合物及び水不溶性高分子化合物のいずれもが用いられる。本明細書において「水溶性高分子化合物」とは、1気圧、常温(20℃±15℃)の環境下において、高分子化合物を、該高分子化合物に対して10倍以上の質量の水に浸漬し、十分な時間(例えば24時間以上)が経過したときに、浸漬した高分子化合物の50質量%以上が溶解する程度に水に溶解可能な性質を有する高分子化合物をいう。一方、「水不溶性高分子化合物」とは、1気圧、常温(20℃±15℃)の環境下において、高分子化合物を、該高分子化合物に対して10倍以上の質量の水に浸漬し、十分な時間(例えば24時間以上)が経過したときに、浸漬した高分子化合物の80質量%以上が溶解しない程度に水に溶解しづらい性質を有する高分子化合物をいう。原料液には適宜、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を配合することができる。
水溶性高分子化合物としては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、変性コーンスターチ、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(後述する架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性高分子化合物のうち、ナノファイバの製造が容易である観点から、プルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。
水不溶性高分子化合物としては、例えばナノファイバ形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
その他の高分子化合物としては一般に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が挙げられる。これらの高分子化合物は単独で又は複数混合して用いることができる。
原料液の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は複数混合して用いることができる。
特に溶媒として水を用いる場合は、水への溶解度の高い下記のような天然高分子及び合成高分子を用いるのが好適である。天然高分子としては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。合成高分子としては、例えば部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの高分子化合物のうち、ナノファイバの調製が容易である観点から、プルラン等の天然高分子、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。
本発明の電界紡糸装置10によって製造されるナノファイバは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に100nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって測定することができる。このようなナノファイバをランダムに堆積させることでナノファイバシートが得られる。
本発明の電界紡糸装置10を使用して製造したナノファイバは、それを集積させたナノファイバ成型体として各種の目的に使用することができる。成型体の形状としては、シート、綿状体、糸状体などが挙げられる。ナノファイバ成型体は他のシートと積層したり、各種の液体、微粒子、ファイバなどを含有させたりして使用してもよい。ナノファイバシートは、例えば医療目的や、美容目的、装飾目的等の非医療目的でヒトの肌、歯、歯茎、毛髪、非ヒト哺乳類の皮膚、歯、歯茎、枝や葉等の植物表面等に付着されるシートとして好適に用いられる。また、高集塵性でかつ低圧損の高性能フィルタ、高電流密度での使用が可能な電池用セパレータ、高空孔構造を有する細胞培養用基材等としても好適に用いられる。ナノファイバの綿状体は防音材や断熱材等として好適に用いられる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、電極23の開口端部に延出部を有していてもよい。また電極23として、曲面を有さない平板状の電極を用いてもよい。
図5に示す実施形態では、第2空気流噴射部29aは電極23の凹曲面24に一箇所設けられているが、第2空気流噴射部29aは複数箇所設けられていてもよい。第2空気流噴射部29aは複数箇所設けられている場合は、例えばノズル22を挟んで対称な位置に形成されていてもよく、非対称な位置に形成されていてもよい。また、第2空気流噴射部29aを設ける位置は凹曲面24に限られない。更に第2空気流噴射部29aは貫通孔であってもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例の条件1ないし3〕
図1ないし図3に示す構成の電界紡糸装置10を用い、図4に示す手順で電界紡糸を行いナノファイバを製造した。電界紡糸装置10の運転は、23℃、相対湿度(RH)20%の環境下で行った。捕集用電極31は、ノズル22の先端22aから1200mm隔てた位置に配置した。
電界紡糸方法として、上述の第1ないし第3工程を行った。つまり、空気流噴射部29から空気を流量100L/min(風速235m/sec)で噴射させた状態下に、原料液を0.2MPaの噴射圧力で、20mL/hの流量で噴射させた。次に空気及び原料液を噴射させた状態下でノズル22の先端22aを繊維状物(日本製紙クレシア製、キムワイプ)で拭い、ノズル先端に付着した樹脂の固化物を除去した。その後、空気及び原料液を噴射させた状態下で電極23を接地し、ノズル22に以下の表1に示す直流電圧を印加するとともに、捕集用電極31に−30kVの直流電圧を印加し、電界紡糸を行った。紡糸時間は5分間とし、紡糸開始と紡糸停止とを3回繰り返した。原料液は化粧品用プルラン(株式会社林原製)17.1%、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製)10.2%、及びイオン交換水(オルガノ株式会社製純水器G−10型通過水道水)72.7%を含む水溶液を用いた。
〔実施例の条件4ないし6〕
ノズル22に+30kVの直流電圧を印加するとともに、捕集用電極31に以下の表1に示す直流電圧を印加した以外は、実施例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔実施例の条件7ないし9〕
電界紡糸装置10の運転を以下の表1に示す相対湿度の環境下で行い、ノズル22に+30kVの直流電圧を印加した以外は、実施例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔実施例の条件10及び11〕
空気流噴射部29から噴射される空気流の流量を以下の表1に示す流量とし、ノズル22に+30kVの直流電圧を印加した以外は、実施例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔実施例の条件12ないし14〕
原料液の吐出圧力を以下の表1に示す圧力とし、ノズル22に+30kVの直流電圧を印加した以外は、実施例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔比較例の条件1ないし3〕
図1ないし図3に示す構成の電界紡糸装置10を用い、図7に示す手順で電界紡糸を行いナノファイバを製造した。つまり、まずノズル22の先端22aをキムワイプで拭い、ノズル22の先端22aに付着した樹脂の固化物を除去した。次に空気流噴射部29から空気を噴射させた状態下に、電極23を接地し、ノズル22及び捕集用電極31に直流電圧を印加した。その後、空気噴射及び電圧印加を行っている状態で、原料液を噴射させて電界紡糸を行った。その他の紡糸条件は実施例の条件1ないし3と同様に行った。
〔比較例の条件4ないし6〕
ノズル22に+30kVの直流電圧を印加するとともに、捕集用電極31に以下の表1に示す直流電圧を印加した以外は、比較例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔比較例の条件7ないし9〕
電界紡糸装置10の運転を以下の表1に示す相対湿度の環境下で行い、ノズル22に+30kVの直流電圧を印加した以外は、比較例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔比較例の条件10及び11〕
空気流噴射部29から噴射される空気流の流量を以下の表1に示す流量とし、ノズル22に+30kVの直流電圧を印加した以外は、比較例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔比較例の条件12ないし14〕
原料液の吐出圧力を以下の表1に示す圧力とし、ノズル22に+30kVの直流電圧を印加した以外は、比較例の条件1と同様に電界紡糸を行った。
〔評価〕
実施例及び比較例の電界紡糸方法において、各条件でのノズル先端に付着した固化物の発生回数(3回中)を計測した。実施例及び比較例の方法における各条件での固化物の発生回数を以下の表1に示した。
表1に示されるとおり、空気及び原料液を噴射させた状態下でノズルへの電圧印加の前にノズル先端の固化物の除去を行った実施例では、比較例と比較して、表1に示したいずれの条件でもノズルの固化物の発生が生じていないことが判る。
10 電界紡糸装置
20 ナノファイバ生成部
22 ノズル
23 電極
24 凹曲面
25 基台
26 電圧印加部
27 ノズルアセンブリ
28 支持部
29 空気流噴射部
30 ナノファイバ捕集部
31 捕集用電極
32 捕集体
33 搬送コンベア

Claims (4)

  1. 原料液を噴射する導電性のノズルと、該ノズルと電気的に絶縁して配置された電極と、該ノズルと該電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、該ノズルの先端よりも後方に位置し、且つ該先端に向けて空気流を噴射する空気流噴射部とを備えた電界紡糸装置を用いた電界紡糸方法であって、
    前記空気流噴射部から前記ノズルの先端に向けて前記空気流を噴射した状態下に、前記ノズルから前記原料液を噴射し、該原料液を噴射させながら該ノズルに付着した該原料液の固化物を除去し、然る後に該ノズルと前記電極との間に電圧を印加して電界紡糸を行う、電界紡糸方法。
  2. 原料液を噴射する導電性のノズルと、該ノズルと電気的に絶縁して配置された電極と、該ノズルと該電極との間に電圧を印加する電圧印加部と、該ノズルの先端よりも後方に位置し、且つ該先端に向けて空気流を噴射する空気流噴射部とを備えた電界紡糸装置を用いた電界紡糸方法であって、
    前記空気流噴射部から前記ノズルの先端に向けて前記空気流を噴射した状態下に、前記ノズルに付着した前記原料液の固化物を除去し、然る後に該ノズルから該原料液を噴射し、該原料液を噴射させながら該ノズルと前記電極との間に電圧を印加して電界紡糸を行う、電界紡糸方法。
  3. 前記ノズルの先端に向けて空気を更に噴射するか、又は前記ノズルの先端に繊維状物を擦りつけて、前記固化物を除去する、請求項1又は2に記載の電界紡糸方法。
  4. 前記ノズルから前記原料液を噴射して、該ノズル内に存在する該原料液の固化物が該ノズル外に排出された後に、該ノズルと前記電極との間に電圧を印加する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電界紡糸方法。
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