以下、本発明を適用した画像形成装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
本実施の形態の画像形成装置1は、長尺紙LSまたは用紙S(非長尺紙)を記録媒体として使用し、これら長尺紙LSまたは用紙S上に画像を形成する装置である。
本実施の形態において、長尺紙LSは、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙であり、機内の給紙トレイユニット51a〜51cに収容できない長さを有する。かかる長尺紙LSのサイズすなわち搬送方向の長さ等の寸法は、本装置のメモリ等に定義データとして格納されている。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙LSおよび用紙Sの両方が含まれ得る。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100等を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニングブレード等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを、かかるクリーニングブレードによって除去する。
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
定着部60は、用紙の定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニット60Dが配置されている。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。なお、搬送経路部53の詳細については後述する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
次に、搬送経路部53について詳述する。
搬送経路部53は、用紙がその片面(上面)に画像を形成される際に搬送される経路であって、画像形成部40で画像が形成される用紙が搬送される主搬送路530を備える。主搬送路530は、搬送方向上流側から、レジストローラー対53a(レジストニップ)、画像形成部40の二次転写ニップ、および定着部60(定着ニップ)を経由して用紙を搬送する経路である。また、搬送経路部53は、用紙の表裏を反転させる反転搬送路533を備える。
搬送経路部53は、外部給紙口2aから給紙された長尺紙LS等の用紙を主搬送路530に搬送する外部給紙搬送路531と、給紙トレイユニット51a〜51cから給紙された用紙Sを主搬送路530に搬送する給紙搬送路532を備える。
主搬送路530は、装置本体2の内部で給紙トレイユニット51a〜51cの上方に設けられ、装置本体2の一方の側部から他方の側部へ延在する。主搬送路530は、一方の端部が外部給紙搬送路531及び給紙搬送路532と繋がる。また、主搬送路530は、他方の端部が、装置本体2の他方の側部に設けられた排出部52の排出口と繋がる。
外部給紙搬送路531は、一方の端部が外部給紙口2aと繋がり、他方の端部が主搬送路530と繋がる。給紙搬送路532は、装置本体2内の一方の側部の近傍に設けられ、給紙トレイユニット51a〜51cから主搬送路530へ上下方向に延在する。給紙搬送路532は、装置本体2の一方の側部に設けられた不図示の開閉扉が開かれることで、給紙搬送路532の経路の一部が外方に露出され、ジャム処理等が可能になる。給紙搬送路532は、上方の端部が主搬送路530と繋がり、下方の端部が給紙トレイユニット51a〜51cと繋がる。
反転搬送路533は、装置本体2の内部で給紙トレイユニット51a〜51cと主搬送路530の間に設けられ、装置本体2の他方の側部から一方の側部へ延在する。反転搬送路533は、主搬送路530を搬送される用紙の搬送方向において、定着部60より下流側で主搬送路530から下方へ分岐する第1の還流搬送路533aと、画像形成部40の二次転写ニップより上流側で主搬送路530と合流する第2の還流搬送路533bを備える。
反転搬送路533は、一方の端部が第1の還流搬送路533a及び第2の還流搬送路533bと繋がる。ここで、第1の還流搬送路533a及び第2の還流搬送路533bと繋がる反転搬送路533の一方の端部は、両面印刷時において用紙の進行方向(搬送方向)の正逆が切り替わるスイッチバックポイントSBPとなる。以下、反転搬送路533において、第1の還流搬送路533aから用紙が搬送される矢印aで示す搬送方向を正方向と称し、第2の還流搬送路533bへ用紙が搬送される矢印bで示す搬送方向を逆方向と称する。
また、反転搬送路533は、スイッチバックポイントSBPに対して、正方向の搬送方向における下流側に、スイッチバックローラーとしての搬送ローラー53bを備える。搬送ローラー53bは、図示しないモーターの駆動力が伝達され、正方向および逆方向の両方向に用紙を搬送する。
なお、簡明のため図示しないが、主搬送路530から排紙部52または第1の還流搬送路533aに分岐する分岐路には、公知の切り替えゲートが設けられている。かかる切り替えゲートは、制御部100により制御される図示しないアクチュエーター等に接続され、制御部100の制御の下、定着部60でトナー画像が定着された用紙を排紙部52または第1の還流搬送路533aの一方に導くように動作する。
ところで、従来、給紙トレイユニット51a〜51cや手差しトレイなどから搬送された定型紙などの用紙Sを両面印刷するために、スイッチバックポイントSBPからの反転搬送路533の正方向の経路を、図3中に両矢印で示す距離Dだけ確保していた。他方、かかる距離Dよりも長いサイズの長尺紙LSを使用する場合、反転搬送路533における正方向の搬送時に当該長尺紙LSの後端がスイッチバックポイントSBPを抜けることができないため、第2の還流搬送路533bを経由した両面印刷を行うことができない。
ここで、距離Dよりも長いサイズの長尺紙LSの両面印刷を実現するため、スイッチバックポイントSBPからの反転搬送路533の正方向の経路を、例えば給紙搬送路532の近傍まで延長する構成とすることも考えられるが、かかる構成では、延長させる長さの制約が大きい。
さらには、装置本体2の右側面に開口を設けるとともに、スイッチバックポイントSBPからの反転搬送路533の正方向の経路を、給紙搬送路532と交わるように延長して、長尺紙LSの端側を上記開口から突出させる(垂らす)ようにする構成も考えられる。他方、かかる構成によれば、例えば、長尺紙LSの後に給紙トレイユニット51a〜51cからの用紙Sを連続的に搬送するような場合に、先行する長尺紙LSと後続の用紙Sとの干渉を防止する必要があるため、用紙搬送の制御が複雑になり両面印刷の生産性の点で制約を受ける。また、長尺紙LSが開口から突出した状態でジャムが生じると、当該長尺紙LSを除去する際に引きちぎれ(ギロチン)が発生するおそれがある。
そこで、本実施の形態では、図1および図3に示すように、反転搬送路533における正方向の下流側を、主搬送路530の下方で折り返すように延ばす構成とした。より具体的には、反転搬送路533における正方向すなわちスイッチバック前の搬送方向の下流側は、上方に曲がって主搬送路530の下方で折り返すように湾曲し、主搬送路530と並行して延びる並行搬送路533cとした。並行搬送路533cは、レジストローラー対53aや二次転写ニップなどの方向を臨むように湾曲して延びる。この並行搬送路533cは、専ら長尺紙LSを両面印刷するために使用される両面経路である。
並行搬送路533cは、反転搬送路533と主搬送路530との間の空間に配置されている。また、並行搬送路533cの先端(終端)は、主搬送路530の下方において、第2の還流搬送路533bの上流側の近傍まで延びている。
また、本実施の形態では、反転搬送路533における正方向の端部側に、スイッチバックローラーとしての搬送ローラー53cを設けている。搬送ローラー53cは、上述した搬送ローラー53bと同様に、図示しないモーターの駆動力が伝達され、正方向および逆方向の両方向に用紙を搬送する。より詳しくは、この搬送ローラー53cと上述した搬送ローラー53bは、制御部100の制御の下、同期して回転し、互いに搬送方向および周速度(用紙搬送速度)が同じになるように回転駆動される。
このように、本実施の形態では、両面搬送経路のスイッチバック前における終端が、主搬送路530の下方かつ第2の還流搬送路533bの上流側の近傍まで延びる構成となっている。このため、距離Dよりも長いサイズの長尺紙LSの両面に画像を形成する場合、並行搬送路533cを用いて両面印刷を行うことができる。かかる両面印刷時の搬送制御の具体例は後述する。
本実施の形態において、上述した並行搬送路533cを含む反転搬送路533および搬送ローラー53cは、自動両面反転搬送ユニット(Auto Duplex Unit:ADU)の一部として、装置本体2に対して手前側に引き出し可能な構成となっている。ここで、並行搬送路533cを含む反転搬送路533内でジャムが発生した場合でも、ADUを引き出すことで、並行搬送路533cが反転搬送路533とともに装置本体2から一体的に引き出される。このとき、本実施の形態の両面印刷用の搬送経路は図示のように略環状の形状であることから、ジャムとなった長尺紙LSは、搬送経路(内側のガイド部材)に巻き付くように残る。従って、本実施の形態によれば、長尺紙LSのジャム発生時における所謂ギロチンの発生を防止して、ジャム処理の作業労力を軽減することができる。
次に、給紙トレイユニット51a〜51cから給紙された用紙Sに両面印刷を行う場合を説明する。画像形成装置1では、主搬送路530を正方向(図1の左方向)に搬送されて、画像形成部40および定着部60を通過した用紙Sは、上側を向いた面(第1面)にトナー画像が転写および定着される。続いて、用紙Sは、主搬送路530から第1の還流搬送路533aを経由して反転搬送路533に搬送されるように、上述した切り替えゲートや搬送ローラーなどが制御部100によって制御される。さらに、制御部100は、用紙Sの搬送方向後端がスイッチバックポイントSBPを通過すると、搬送ローラー53bの回転方向を切り替えて搬送方向を反転させ、用紙Sを反転搬送路533から第2の還流搬送路533bを経由して主搬送路530に搬送するように搬送制御する。
かかる搬送制御により、非長尺紙である用紙Sは、矢印aで示す正方向への搬送において、かかる用紙Sの先端が搬送ローラー53cに突入する手前で、当該用紙Sの後端がスイッチバックポイントSBPを通過する。続いて、用紙Sは、第2の還流搬送路533bを経て、画像形成面である第1面が下側を向いて主搬送路530に搬送され、上側を向いた第2面に画像形成される。両面にトナー画像が形成された用紙Sは、主搬送路530から排紙部52に排紙されるように、制御部100によって搬送制御される。したがって、非長尺紙である用紙Sが両面印刷される場合、用紙Sは、並行搬送路533cには搬送されない。
次に、図1および図4から図6を参照して、並行搬送路533cを用いて複数の長尺紙LSを連続的に両面印刷する場合の搬送制御の一例を説明する。なお、長尺紙LSに関し、図4〜図6では、搬送される順にLS1,LS2,LS3の符号を付している。
長尺紙LSは、装置本体2の外部給紙口2aから外部給紙搬送路531を経由して、主搬送路530を正方向(図1の左方向)に搬送される。この後、上述と同様に、画像形成部40および定着部60を通過した長尺紙LSは、上側の第1面にトナー画像が転写および定着され、主搬送路530から第1の還流搬送路533aを経由して反転搬送路533に搬送される(図4参照)。
また、制御部100は、最初の長尺紙LS1の搬送を開始した後の適宜のタイミングで、次の長尺紙LS2の搬送を開始するように給紙ローラー等を制御する(図5参照)。
最初の長尺紙LS1は、反転搬送路533を矢印aで示す正方向に搬送されると、図5に示すように、搬送方向の先端側が並行搬送路533cに入る(収容される)ように、搬送ローラー53bおよび53cにより搬送される。そして、制御部100は、長尺紙LS1の搬送方向の後端がスイッチバックポイントSBPを通過すると、搬送ローラー53bおよび53cの回転方向を切り替えて搬送方向を反転(逆行)させるスイッチバックの動作を実行する。かかる動作の後、制御部100は、最初の長尺紙LS1を反転搬送路533から第2の還流搬送路533bを経由して主搬送路530に搬送するように制御する(図6参照)。
また、制御部100は、図6に示すように、最初の長尺紙LS1の進行方向における後端がスイッチバックポイントSBPを抜けた後に次の長尺紙LS2の先端をスイッチバックポイントSBPに通すように、次の長尺紙LS2の搬送を制御する。さらに、制御部100は、主搬送路530に搬送されている最初の長尺紙LS1の手前で後続の長尺紙LS3を待機させ、最初の長尺紙LS1の進行方向の後端が第2の還流搬送路533bを抜けた後に後続の長尺紙LS3の1面目の印刷を行うように、搬送ローラー等を制御する。
このように、本実施の形態の画像形成装置1によれば、長尺紙LS(LS1〜LS3,以下同じ)は、反転搬送路533での正方向への搬送時に、用紙先端側の部位が並行搬送路533cに入り、主搬送路530の下方の装置本体2内に格納されるような状態となる。この後、スイッチバック動作すなわち搬送方向の反転により逆(矢印b)方向に搬送されると、長尺紙LSの搬送方向の後端側は、第2の還流搬送路533bを経て主搬送路530に引き込まれるように移動する。
この後、用紙Sの場合と同様に、長尺紙LSは、画像形成面である第1面が下側を向いて主搬送路530に搬送され(図6参照)、上側を向いた第2面に画像形成される。かくして、制御部100は、両面にトナー画像が形成された長尺紙LSを主搬送路530から排紙部52に排紙するように、上述した切り替えゲートや搬送ローラー等を制御する。
このように、本実施の形態の画像形成装置1によれば、従来の反転搬送路533の上方かつ主搬送路530の下方の空間(デッドスペース)を有効に活用して、反転搬送路533の経路長を装置本体2内で延長し、より長いサイズの長尺紙LSを両面印刷することができる。
また、本実施の形態では、他の用紙搬送経路と合流ないし交差しないように並行搬送路533cを設けていることから、複数の長尺紙LSを連続的に両面印刷する場合に、用紙搬送制御が複雑になるのを防止しつつ、印刷の生産性向上を図ることができる。具体的には、図6で例示したように、本実施の形態によれば、最初の長尺紙LS1が第2の還流搬送路533bを通って搬送されている間に次の長尺紙LS2を搬送し、後続の長尺紙LS3を最初の長尺紙LS1の直前の位置まで搬送して待機させることができる。総じて、本実施の形態によれば、両面印刷する長尺紙LSの長さの拡大と、両面印刷の生産性の両立を図ることができる。
次に、図7を参照して、並行搬送路533cの他の構成例を説明する。
図5中に示す最初の長尺紙LS1は、図3に示す距離Dよりも長いサイズ、かつ本実施の形態の構成において両面印刷できる最大限の長さの用紙を例示した。したがって、上述した並行搬送路533cの構成例では、図5に示す長尺紙LS1より長いサイズの長尺紙を両面印刷することができない。すなわち、かかる長いサイズの長尺紙を搬送すると、正方向の搬送時に当該長尺紙の後端がスイッチバックポイントSBPを抜けることができず、第2の還流搬送路533bにスイッチバック搬送させることができない。
ここで、長尺紙LS1よりも更に長いサイズの用紙を両面印刷できるようにするために、例えば並行搬送路533cの終端を主搬送路530に接続する構成とすることも考えられる。他方、このような構成とした場合、並行搬送路533cの終端から主搬送路530に露出された長尺紙によって、後続する用紙(図5の長尺紙LS2参照)の搬送が妨げられる場合があり、印刷の生産性向上の観点からは制限が多く、加えて、各用紙の搬送制御がより複雑になる。
かかる実情に鑑みて、本実施の形態では、印刷の生産性を確保しながら更に長いサイズの長尺紙の両面印刷を実現するために、図7に示すように、並行搬送路533cの終端側を、下方に延びるように延長している。図7に示す変形例では、並行搬送路533cの終端が反転搬送路533の正方向における上流側(直線的に延びる経路)を臨んでいる。図示しないが、さらなる変形例として、さらに一層長いサイズの長尺紙の両面印刷を実現するために、並行搬送路533cの終端側を渦巻き状の形状としてもよい。
以上のように、並行搬送路533cを設けた本実施の形態によれば、画像形成装置1を大型化することなく長尺紙の両面に画像を形成することができる。また、本実施の形態の並行搬送路533cによれば、装置本体2内における主搬送路530の下方の空間(デッドスペース)を利用して、種々の長さの長尺紙LSを連続的に搬送することができ、印刷の生産性を高めることができる。
また、並行搬送路533cは、反転搬送路533すなわち上述したADUの一部として構成されているので、ジャム処理等の際に装置本体2に対して引き出すことができる。したがって、本実施の形態によれば、ジャム処理の容易化を図ることができる。
上記実施の形態および変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。